Spotifyからショーン・パーカーが去る――上場を控えて取締役会を一新

今やユーザー1億4000万人を擁する音楽ストリーミングの有力企業Spotifyは上場に向けて準備を進めているところだ。ここで取締役会に大きな変化があった。初期からの投資家でありデジタル音楽サービスのパイオニア、NapsterのファウンダーでFacebookの立ち上げにも大きな役割を果たしたショーン・パーカーがSpotifyの取締役会から離れた。もうひとりの初期からの投資家でヨーロッパを代表するエンジェル投資家のクラウス・ホメルズも取締役会を辞任した。

同時にSpotifyは業界の著名人4人を新たに取締役に任命した。Padmasree WarriorはCiscoの元CTO、CSOで現在、中国の電気自動車メーカーNIOのCEOを務めている。Thomas StaggsはDisneyの元COO、Shishir Mehrotraは元YouTube幹部、Cristina Stenbeckは投資家だ。

この4人以外の既存のSpotify取締役はDaniel Ek、Christopher Marshall、Martin Lorentzon、Pär-Jörgen Pärsson、Ted Sarandosの5人だ。

現在Spotifyの企業価値は130億ドル前後と評価されており、これまでに総額15億6000万ドルの資金を調達している。同社はTechCrunchの取材に対して、ショーン・パーカーらが取締役会を離れ、ほぼ同時に4人の新たな取締役が任命されたことを確認した。情報源によれば、パーカー、ホメルズともSpotifyに対する投資家であり、友人であることに変化はないという。

新取締役の変更は先月から噂が流れていたが、今回、ルクセンブルクにおける登記書類によって確認された(スウェーデンのサイト、Breakitが発見した)。

パーカーホメルズは共に2009年からSpotifyの取締役を務めていた。特にパーカーは単なる出資者という以上にSpotifyのビジネスの立ち上げに重要な役割を果たした。上の写真は2010年ごろ、パーカーがパートナーを務めたピーター・ティールのFounders FundがシリーズCでSpotifyの資金調達に加わったときのものだ。

Napsterが海賊版音楽サイトとして悪名を轟かせたことを考えれば皮肉ともいえるが、パーカーはSpotifyを助けてレーベルと交渉に当たり、リスナーがストリーミング再生した回数に合わせてライセンス料金を支払う交渉をまとめた(この契約によってSpotifyは音楽ストリーミングを始めることができたが、ビジネスとしては決して有利な内容ではなかった。Spotifyは現在レーベルと契約の再交渉を進めている)。

パーカーはまたヨーロッパ生まれのSpotifyをアメリカに導入する上でも重要な役割を果たした。アメリカ上陸は同社の成長にとって決定的な段階となった。こうした努力の結果、Spotifyは音楽ストリーミング・サービスにおいてユーザー数でも売上でも世界最大の企業となっている。

新取締役

新メンバーは上場IT企業となることを念頭に選ばれたようだ。Spotifyの上場は今年にも行われるという情報が流れていたが、むしろ2018年になる公算が高い。上場先はニューヨーク証券取引所となる模様だ。

Padmasree WarriorはCiscoの幹部として長く務め、テクノロジーだけでなくビジネスにも経験が深い。これはクラウドベースのテクノロジー企業であると同時にサードパーティーと複雑な権利関係をさばく必要があるSpotifyの取締役として重要な資質だろう。【略】

StaggsはDisneyのベテラン(1990年に加わった)で、2016年に同社を去る前はCOOを務めていた。報道によれば、CEOに昇格する可能性がなくなったためにDisneyを離れたのだという。Staggsはメディア界で契約をまとめた経験が豊富だ。これはSpotifyにとって今後必要性を増す分野だ。【略】

YouTubeで長年エンジニアリングと収益化のために働いてきたShishir Mehrotraについても同じことがいえる。またSpotifyは今後ビデオに注力していくという。ライバルのAppleもデジタル音楽を出発点としてビデオ・ストリーミングにビジネスを拡大した。こうした面からもMehrotraの果たす役割は重要だろう。またMehrotraはこれまでもSpotifyと密接な関係があった。2014年以来同社のスペシャル・アドバイザーとなっている。【略】

Christina Stenbeckはスウェーデンのストックホルムを拠点とする投資会社Kinnevikの会長であり、原動力だ。多くのビジネスに関与しているが、Rocket Internet出身の多くのスタートアップの主要投資家でもある。KinnevikはこれまでSpotifyに出資していないが、われわれが以前報じたとおり、Spotifyはスウェーデン発でもっとも成功したテクノロジー企業であり、スウェーデンを代表する投資家を取締役に加えることを有利とみたのだろう。Stenbeckの取締役就任は上場を控えたSpotifyとしてスウェーデンの投資家に対するプロモーションの一環でもあるだろう。

画像: BillBoardBiz

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

重度のアレルギーに苦しむショーン・パーカー、アレルギー研究センター建設に2400万ドル寄付

Napsterの共同ファウンダー、Facebook初代CEOにして大株主のビリオネア、ショーン・パーカーは小さいときから重度のアレルギーと喘息に苦しんできた。ピーナツに触れた食べ物を知らずに食べて救急病棟に運び込まれた回数は文字通り数えきれないほどだという。 私の電話インタビューに対してパーカーは「結婚してからだけでも14回入院している。ピーナツ、アボカド、甲殻類、全部ダメだ。大学4年のときには集中治療室に3週間も入院した」と語った。

アレルギーには遺伝子が関係していることは2児の父であるパーカーには大いに気がかりな問題となった。そこでパーカーはアレルギーの原因解明と治療法の開発のためにスタンフォード大学に個人として2400万ドルを寄付することにした。

この資金はスタンフォード大学にショーン・N. パーカーアレルギー研究センターを建設するために使われる。アメリカにおけるアレルギー研究のための寄付としては過去最大となるそうだ。

全人類は30から40%がなんらかのアレルギーを持っていると推定されている。 全米アレルギー、喘息、免疫学アカデミーの調査によると、世界の小学生のアレルギー率は40から50%に近づいているという。

アレルギーに悩んだパーカーはFacebookで友達になったシェリル・サンドバーグに紹介してもらい、アメリカにおけるアレルギー治療の最高権威の一人、Kari Nadeau博士に相談した。しかしNadeau医師でもパーカーに完全な答えは与えられないことがわかった。

「食物アレルギーを持つ人の25%はアナフィラキシーショックで少なくとも1度は死にかけています。現在FDA(食品医薬品局)に承認された治療法は存在しません」とNadeau博士は言う。

現在の治療法は、患者にアレルギーの原因物質をアナフラキシーショックを起こさない程度の微量与えるというかなり危険度の高いものだ。繰り返しアレルゲンを与えることによって患者の免疫システムがこの物質を無視するようになることを期待するわけだ。この減感作療法はいつも成功するとは限らない。また成功した場合でもその理由は不明だ。実際、なぜ人はアレルギーになるのか、アレルギー患者が増えているのはなぜなのかも分かっていない。そもそもアレルギーについて分かっていることはほんのわずかしかない。パーカーはNadeau博士他の専門家が分子レベルでアレルギーのメカニズムを解明してくれることを期待している。

私自身、パーカーのアレルギーほど重症ではないが枯草熱の持病があることを話した。「きみの枯草熱も、結局は免疫システムの問題なんだ。基本的には同じ原因だ。特定の物質が体内のタンパク質と特異的に結合する。研究によってそのブラックボックスを開いて欲しいんだ」とパーカーは語った。

パーカーはこの寄付がかなり風変わりであることを認める。「むしろベンチャーキャピタルのアプローチに近いだろう。スタートアップに投資するのと同じ戦略だ。優秀なチーム、適切な環境、正しいタイミングを見極める必要がある。治療法の研究でも同じことだ」。

パーカーが医療分野で寄付をするのはこれが初めてではない。ガンの研究に2000万ドルを寄付しているし、マラリア・ノー・モア運動の寄付集めを手助けしている。またeシガレットのスタートアップ、NJOYはパーカーらから10億ドルの資金調達を行っている。

パーカーは「新センターは5年から10年で新しい治療法を発見できると思う。ある程度進捗したらスタンフォードから世界へ臨床治験を広げたい」と語った。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+