スマート配電盤で一般家庭の電化を進めるSpanが約110億円調達

あの地味なブレーカーパネルは、特に愛されることもなくすでにまるまる1世紀存在しているが、そこに登場したのがSpanだ。同社は現代的でスマート、そして魅力的な配電盤を作っており、その進化を継続するために、このほど9000万ドル(約110億円)を調達した。同社は電化とマイクログリッドの均衡化という問題の解決を目指しており、それにより未来のスマートホームが自らの電力消費の状況をもっとよく把握できるようにする。

Spanは2年前に1000万ドル(約12億円)を調達し、Alexaを統合して、さらに2022年初めにはスマートパネルと相性がいいよりスマートなEV充電器をローンチした。

SpanのCEOで創業者のArch Rao(アーチ・ラオ)氏は、2022年初めのインタビューで次のように語っている。「初期のTeslaに入って、後にTesla Energyになるもの設計に最初から関われたことは、とてもラッキーでした。私は、Energy Groupの初期のリーダーの1人でした。みんながよく知っているのはPowerwallバッテリーだと思いますが、私はそのプロダクトチームのリーダーで、一般住宅用製品や産業用製品、それに公益企業が使うような規模の製品をハードとソフトの両面で設計、開発そしてデプロイしていました。また、ソーラールーフや太陽光発電の導入など、ガラス屋根の製品も担当しました」。

「家庭用バッテリーやソーラーシステム、電気自動車の充電システムを世界中で展開する中、私が直接目にしたことの1つに、インフラと結びついた根本的な問題があることです。特に、電化が私たちの目指す『脱化石燃料』の重要な一部であると考えるのであれば、インフラは分散型クリーンエネルギー導入の足かせになってしまいます。化石燃料を使用した家電製品を優れた電気製品に置き換えるには、家庭用電気パネルから始まるインフラの大規模なアップグレードが必要になるのです」。

「私たちは家庭の電化を実現するために、拡張性のある方法の中核となる配電盤を再発明することから始めました。しかし消費者はそれ以上のものを求めています。新しい資本を投入して、家庭の脱炭素化を実現する製品を拡大し、Spanが独自に提供する家庭のエネルギー管理という比類のないアプローチを開発し続けられることに興奮しています。」とラオ氏は語る。

SpanのシリーズBをリードしたのはFifth Wall Climate TechとWellington Managementだ。その他の投資家はAngeleno Group、FootPrint Coalition、Obsidian Investment Partners、そしてA/O PropTechとなる。同社の説明によると、資金は主にSpan Homeシリーズのエネルギー製品およびソリューションの開発の継続により、同社の商業的成功を引っ張り家庭の新しい電化を加速していくことに向けられる。

画像クレジット:Span

原文へ

(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Hiroshi Iwatani)

家庭の電力利用をよりスマートにすることを使命とするSpan、新しいEV充電器Span Driveをリリース

エアコンや洗濯機、乾燥機などの電化製品が家庭で主役を務めた時代は終わった。最近は、EV(電気自動車)充電器、太陽光発電パネル、蓄電ソリューションなどにより、家庭の電力利用状況はますます複雑度を増している。Spanは、そうした状況にスマートさを組み込もうとしている会社の1つだ。同社がこのたびリリースしたSpan Driveは、さまざまなルールに基づいてEVをさらにパワフルな存在にするEV充電器だ。

米国の家庭はますます電化が進み、とりわけ最新の電化製品は古い設計の家では想定されていないような大量の電力を消費する。エアコン、ヒーター、ヒートポンプ、給湯器、洗濯機、乾燥機、電気コンロ、電気オーブン、EV充電器、蓄電装置などは、多大な電力を消費する可能性がある。それに加えて、ソーラーパネルを設置する家庭が増えたため、大量の電力が家庭に入ってくるようになった。こうした状況の中、米国家庭の電力状況は複雑度を増し、電力を大量消費するようになっているが、実際には、こうした電化製品をすべて同時に使用することはまずない。これは、最近の電子設計が直面している難題である。つまり、家庭に送電網から送電されてくる電力が最大100Aで、家庭にある電化製品の消費電力の合計が180Aであっても、実際にはそれらの電化製品をすべて同時に使用することはおそらくない。問題は、一時的に、すべての電化製品の電源を同時にオンにした場合、少なくともブレーカーが上がるまでは、電力会社にとって厳しい状況になるという点だ。

Spanはこうした問題を解消してくれる。Spanは5月に、家庭用スマートブレーカーパネルをリリースし、その数カ月前に2000万ドル(約22億8000万円)の資金調達ラウンドを発表した。同社はこのたび、500ドル(約5万7000円)のEV充電器Span Driveをリリースし、それに合わせて、3500ドル(約40万円)のブレーカーパネルは、今家庭で最大の電力を消費する装置である電気自動車向けにスマート性能が強化された。

「当社は、家庭でアンペアを100から200、200から400に上げる際のコストや時間をかけることなく、電化製品を追加し続けることができるようにしたいと考えています」とSpanのCEO Arch Rao(アーチ・ラオ)氏はいう。

「ブレーカーパネルをアップグレードするというより、家庭内の電化製品の使われ方を基本的に考え直して、電源管理を改善し、クリーンエネルギーと電化製品の統合を強化したいと考えています。従来のブレーカーパネルは安全装置としては大変優れていました。家庭に入ってきた電気はこのパネルを経由して家庭内の各装置と回路に分配されます。回路の動作状況が危険なレベルに達すると、回路は遮断されます。これがブレーカーの仕事であり、その仕組みは約100年間進歩していません。つまり、受動的な安全装置として機能しているのです」とラオ氏は説明する。「ブレーカーパネルが設置されている場所こそ、まさしくイノベーションが必要な場所です。ブレーカーパネルはグリッドと家庭内のすべての電化製品の交差点に位置しています。電化製品だけではなく、ソーラーシステム、電気自動車、蓄電システムなども、ブレーカーパネルに接続されています。当社が開発した新しいパネルは、グリッドと安全に遮断または再接続するための装置であるという点で、単なる安全装置としての機能よりもはるかに多くの仕事をします」。

グリッドとの接続とグリッドからの遮断は、グリッドに依存して生活している人たちにとって重要な点だ。家庭を、少なくとも電気的には、島に変えることができるというのが、将来的な観点から見たときのSpanのシステムの興味深い点の1つだ。また、Spanのパネルを使用すれば、停電時に従来よりも長く自力で電力を供給できる。蓄電ソリューションが設置されている家庭では、このパネルはよりスマートに動作する。停電を検出すると、不要な電気製品の電源が落とされる。例えばサーモスタットをオフにして、食品が腐らないように冷蔵庫や冷凍庫をできるだけ長く稼働させる。

Span Driveはしゃれたデザインの低価格EV充電器で、Span製パネルの機能を拡張する(画像クレジット:Span)

このシステムはアプリで制御できる。このアプリで家の電気の使い方に関する「ルール」を設定できる。例えば太陽光発電でまかなえるときだけエアコンを稼働するよう選択できる。48Aを電気自動車に接続して高速充電するよう選択する場合は、他の大量に電力を消費する電化製品の電源を落として、総電力消費量を100A以下に抑えるようにする。逆のケースもある。つまり、できるだけ高アンペアで高速充電しているときに、乾燥機、エアコンが同時に稼働し、電気オーブンと電気コンロで料理を始めると、Span Driveは充電に使用する電流を下げ、子どもたちが食事を済ませ、衣類がすっかり乾いてみんなでハグできるようになったら元に戻す。

あるいは、電気自動車の充電を太陽光発電でのみまかなうようSpan Driveをプログラムすることもできる。Tesla(テスラ)のオーナーは信号待ちから静かに発信させてフェラーリを抜き去りたいといつも考えているようだが、Span Driveのこの機能でそうしたオーナーの自己満足度は何倍にもなるに違いない。

もちろん、Spanのパネル自体から回路をオン / オフすることもできるが、このパネルは各回路に分配されている電力量を把握しているため、家電製品が増えてもより細かい制御が可能になる。これにはおそらくAmazon(アマゾン)のアイデアも一部入っているのだろう。アマゾンはSpanの最近の投資ラウンドに参加し、Alexaとの互換性を実現することも発表した。

ある意味、Spanは、従来家庭内でスマートさを欠いていた部分に多くのスマートな機能を組み込んだように感じる。電力はそのままではローテクだが、電化製品のスマート性が向上し、IoTの波が日常的に使う多くの電化製品にまで押し寄せる中、Spanは家庭全体に、マイクログリッドを構築しているように思われる。それは、孤立したゾーンであり、まだ誰も使い方を知らない強力な機能を備えている。SpanのCEOもその点を認識しており、同社は家庭の未来の争奪戦の真っ只中にいることに同意する。

「ブレーカーパネルには、他のどんな製品にもない永続性があります。今後30年は、現在と変わらず壁に設置されたままでしょう。もちろん、将来を見据えた設計についても考えています。現在当社が提供している機能は、競合他社が提供するどのような機能とも一線を画すものです。未来に重点を置くことで、現行のさまざまなソリューションを基本的な部分で凌駕していると思います」とラオ氏は話す。

画像クレジット:Span

原文へ

(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Dragonfly)

価格を大幅に抑えた家庭用スマート分電盤の新製品をSpanが発表

エネルギー費が上昇し、多くの住宅所有者が太陽光発電などの実現可能性に注目している中、間違いなく消費者はエネルギーの使用を制御する方法を模索している。スマートホーム機器がこれほど普及した世界で、なぜエンドユーザーへのグリッドエネルギーの普及はなかなか進まないのか。元Tesla(テスラ)のエンジニアだったArch Rao(アーチ・ラオ)氏が設立したSpan(スパン)という会社は、こうした問題に応えようとしている。

3年前の今頃に設立されたSpanは、まだ若い会社だ。2020年の今頃はシリーズAラウンドで1010万ドル(約11億円)を調達し、年末までに全米の家庭に向けて製品を展開していった。そして2021年1月にはさらに2000万ドル(約21億8000万円)を調達した。

関連記事:スマート配電盤のSpanがAmazon Alexaと統合、家庭内の電気系統が音声操作で制御・監視可能に

実際の数字は公表していないものの、ラオ氏は、Spanが「米国のストレージ市場で、特に重要な市場であるカリフォルニアで、有意義なシェアを獲得し始めている」と筆者に語った。この言葉をどう受け取るかはともかく、しかし同社が特にターゲットとしているのは、太陽光発電と蓄電池システムを組み合わせているユーザーだ。

米国時間5月19日に発表されたSpanの第2弾の製品は、より小型で汎用性の高いユニットで、名称はシンプルに「Span Smart Panel(スパン・スマート・パネル)」という。希望小売価格は3500ドル(約38万円)と、第1世代の製品の5000ドル(約54万円)より大幅に安くなっている。もっとも、電力会社はこの技術を太陽光発電パネルなどの他の製品とセットで提供することが多いため、最終的な価格については顧客によって異なる可能性がある。

「これは、Nest(ネスト)で私たちが考えていた当初のビジョンの一部と重なります」と、Nestの共同設立者で、Spanの投資家であるMatt Rogers(マット・ロジャース)氏は、TechCrunchによるインタビューで語った。「自分の家できることはたくさんあります。NestとGoogleが目指す方向は異なるものの、家の中のエネルギーを理解し、それらをつなぎ合わせ、制御できる製品は、今も本当に求められています。特に、エネルギーコストが上昇し、太陽光発電や蓄電システムが普及していくこの世界では。Spanのようなものが存在しない未来の世界は想像できないでしょう」。

このシステムは、ほとんどの家庭用電気ブレーカーと連携でき、回路を細かく制御できる他、イーサネット、Wi-Fi、携帯電話通信網、Bluetooth接続にも対応している。同社が提供するモバイルアプリを使って簡単にコントロールすることもできる。

「私たちがやったことは、家庭の分電盤を根本的に再構築することです」と、ラオ氏はTechCrunchに語った。「私たちは単一のユースケースに縛られることなく、家庭内のあらゆるもののバックボーンとなります。サーモスタットがある家もあれば、ない家もあります。太陽光発電がある家もあれば、ない家もあります。しかし、ほぼすべての家庭には、100年前の技術を使った分電盤があります」。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:Spanスマートホーム電力

画像クレジット:Span

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

スマート配電盤のSpanがAmazon Alexaと統合、家庭内の電気系統が音声操作で制御・監視可能に

Span(スパン)のデジタルヒューズボックスと、Amazon(アマゾン)の音声認識インターフェース「Alexa(アレクサ)」の統合は、家庭内におけるエネルギー使用量の制御やデバイスの自動化を、少しだけ簡単にする可能性がある。

この統合に合わせて、AmazonのAlexa Fund(アレクサ・ファンド)と巨大保険会社Munich Re Ventures(ミュンヘン・リー・ベンチャーズ)のHSBファンドから、新たに2000万ドル(約20億8000万円)の資金が、このスタートアップ企業に投入された。

Alexaが統合されることで、Spanのスマート配電盤を使用している住宅では、家庭内のあらゆる電気回路や電化製品のオン / オフ、各電化製品が使用している電力の監視、どの電源が家庭で最も発電しているかの判断が可能になる。

たとえば「Alexa、Spanに確認して。今、最も電力を消費しているのは何?」と質問すると、答えが返ってくる。Spanの最高経営責任者であるArch Rao(アーチ・ラオ)氏によると、Alexaの統合によって、住宅所有者は家族が持つスマートフォンなどのデバイスや家電製品を、家庭内の配線と接続することが可能になるという。

Alexaの統合は、Spanにとってテック企業が長い間有望視してきたホームオートメーションのハブとなる方法だと、ラオ氏は考えている。

「今日の家庭には、あまりにも多くのデバイスがあり、あまりにも多くのアプリがあります。我々の利点は、一度設置してしまえば、今後30年から40年の間、家の中に永続的に存在し、家の中のすべての電気に接続されているということです」とラオ氏はいう。

エネルギー使用量や出力の監視に加えて、Alexaのコマンドを使えば、居住者はシステムにプログラムされている各デバイスの電源やスイッチをオフにすることもできる。

「私たちの配電パネルは、建築環境の中で家庭に仮想的なインターフェイスを提供します。それは非常に有能なエッジデバイスであり、住宅内の電気系統をリアルタイムで監視・制御することを可能にする、本当の意味での集約ポイントと神経中枢のようなものになります」とラオ氏は語っている。

今後は、Spanが家庭内の水センサーや火災報知器センサーなどの機器とも統合して、電気系統以外の制御も提供することをラオ氏は想定している。それが実現すれば、Munich Reのような保険会社にとって有益だ。

同社が調達した2000万ドルで、ラオ氏はSpanのデバイスをできるだけ多くの家庭に普及させるために、Munich Re保険会社やAmazonのようなパートナーと協力し、販売とマーケティングを大幅に強化させる予定だ。

ホームオートメーションとエネルギー効率のアップグレードに取り組んできたSpanは、現在大きな追い風を受けており、今後は同社の配電パネルのような技術を普及させるために、政府が補助金を設定する可能性もある。

ラオ氏はSpanの従業員数を増やすことも計画している。同社の従業員は現在35名で、ラオ氏は年末までにその数を2倍の約70名にしたいと考えている。

Spanの成長は、持続可能な選択肢の増加に向けて拡大するホームテクノロジーの分野に見られる幅広い動きのひとつだ。今や多くの家庭で電化が進む給湯器やコンロなどの製品だけでなく、電気自動車の充電ステーションや家庭用蓄電装置など、エネルギーの生成や管理を行うデバイスもすべて、電力網の一部として統合が推し進められている。

「それは家庭に天然ガスを供給するパイプを断ち、オール電化をもたらします。消費者が化石燃料への依存を断ち切ろうとしているように、既存の家庭システムは効率的ではありません。各製品が統合された1つのエコシステムの構築に向け、新たなパートナーシップの機会が見え始めています」とラオ氏はいう。「家電製品の状態を監視するようなアプリケーションや、家全体を見守るようなサービスに、我々が提供するデータを組み合わせれば、これまでにないことが可能になるでしょう」。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:SpanAlexaスマートホーム資金調達

画像クレジット:Span

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)