クリエイターのための経済オペレーティングシステム

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

先週のTechCrunchでは、Pico(ピコ)の650万ドル(約7億円)の資金調達を取り上げた。そこでは同社を「ニューヨークのPicoは、オンラインのクリエイターやメディア企業がお金を稼げて顧客データを管理できるようにする」と紹介した。The Exchangeは以前にもPicoを取り上げたことがある。最も近いところでは2020年半ばに、独立系出版やサブスクリプションメディアの世界での話題を紹介している。

関連記事:収益化ツールを統合したクリエイター向けCRMのPicoが7.1億円調達

Picoのラウンド記事では、Anthony Ha(アンソニー・ハー)記者がすばらしい仕事をお届けしたが、私もまた同社とZoom(ズーム)コールを行った。なぜなら、彼らの新しい資金調達は一種の再出発のようなものであり、その件について私はもっと理解したかったからだ。

Picoのチームは、クリエイティブなデジタルツールの歴史的変遷を説明しながら、彼らのビジネスの中で何が変わったのかを説明してくれた。彼らによれば、以前、この世界はコンテンツのホスティングや配信を中心に展開していたという。同社の考えでは、クリエイティブに特化した新世代のツールが登場することで、Substack(サブスタック)やWordPress(ワードプレス)のような、CMS(コンテンツ管理システム)がツールの中心ではなくなる時代がやってくる。むしろ、マネタイズが中心となるのだ。

そこに賭けたPicoは、クリエイター市場向けのオペレーティングシステムを開発することにしたのだ。私の直感では、マネタイズを中心としたクリエイティブなデジタルの世界は、それまでの時代よりも収益性が高いと思える。

Picoの想定では、クリエイターが最初にどこでオーディエンスを獲得したかに関わらず、最終的にはマルチSKU(管理単位)、あるいはマルチプラットフォームになるため、顧客データを一元管理することが重要になる。

スタートアップが提供する今回改良されたサービスは、これまでのようなちょっとしたマネタイズのためのツールであると同時に、CMS(コンテンツ管理システム)やその他プラットフォーム上のデジタルアウトプットの上に置くことができる、クリエイターに特化したCRM(顧客関係管理システム)なのだ。これまでのところ、同社の顧客数は順調に伸びていて、2020年は約5倍の伸びを記録した。この先、Picoがそのビジョンにどこまで乗れるのか、クリエイター経済中の中流階級の形成に貢献できるのかどうかを見極めていきたい。

現実世界の食料品店革命

コロナ禍の期間中、Instacart(インスタカート)の驚くべき飛躍が取り沙汰されるなかで、ほとんどの人びとが、まだ果物や野菜を買うために実店舗に行っているという事実がやや忘れられている。

もちろん食料品店はその事実を忘れてはいない。しかし、彼らは歴史的に薄利多売であり、Instacart時代には顧客獲得競争も激化しているため、あまり安心していることはできない。彼らが顧客との関係を第三者に委ねることなく、よりデジタル化された戦略を追求するにはどうすればよいのだろうか?

関連記事:買い物代行サービスのInstacartが283億円を調達、評価額は5カ月で2倍以上の4兆円超に

その答の1つが、Swiftly(スイフトリー)かもしれない。このスタートアップが開発している技術は、あらゆる規模の食料品チェーンがデジタル化を進め、最新のモバイル技術を活用し、広告によってより多くの収入を得るとともに、消費者により多くの買い物の選択肢を提供できるような技術だ。イイ感じかも?

Crunchbaseのデータによると、このスタートアップはこれまでに1500万ドル(約16億2000万円)強を調達しているが、米国で無数の店舗を展開する消費者向け小売業者Dollar Tree(ダラー・ツリー)との取引を開始したことで、再び私たちの記憶を呼び起こした。

私はSwiftlyについては昔から知っていた。共同創業者のHenry Kim(ヘンリー・キム)氏がSneakpeeq(スニークピーク)(後のSymphony Commerce[シンフォニー・コマース])を開発していた頃に会ったことがある。Symphony Commerceは、最終的にQuantum Retail(クオンタム・リテイル)に買収された。しかし、サンフランシスコ近辺で長年にわたってキム氏と会話をしてきた中では、Symphony Commerceを創業する前に彼が経験していた食料品市場の話が繰り返し出されていた。

5年以上前から、キム氏が食料品店とデジタルの可能性を声高に語っているのを聞いていたので、彼の希望と計画から生まれた会社が有力なパートナーを獲得したのを見るのはうれしい。

Swiftlyは2つの主要製品を提供している。リテールシステムとメディアサービスだ。リテール部門は、モバイルを使う買い物客に対して、レジ精算サービス、ロイヤリティプログラム、パーソナライズされた特典などを提供している。また、メディア部門は、実店舗に対して、通常は見逃されている消費者向けパッケージ商品(CPG)の広告費を手に入れるチャンスを提供する。同時にアナリティクスを活用することで、販売した広告の効果をより正確に把握することができる。

Swiftlyは、現在大きな公開取引案件を抱えているので、今後数四半期でより多くの資金を調達することになると思う。何か分かり次第お知らせする。

UiPath、SPACそしてすてきなベンチャーキャピタルラウンド

先の2週間、The ExchangeはUiPath(ユーアイパス)のIPOについてかなりの量の記事を書いてきた。おそらく書きすぎといわれるくらいに。しかし、念のためにいっておくなら、同社の最初のIPO価格帯は、出された評価額が予想よりも少し低くなったため、レイトステージ投資家に対する警告のようなものとなった。そして同社はその価格帯を引き上げて、私たちの懸念を払拭はしないまでも和らげてくれた。そして、最終的なプライベートラウンドに比べればまだ割安ではあるものの、調達した価格帯を上回る価格をつけた。その後、取引を開始してからは順調に推移して、CFOも「順調だ」と語っている。

同社のプライベート〜パブリック評価額の経緯を詳しく知ろうと、The Exchangeは、Battery VenturesのジェネラルパートナーでB2B投資家であるDharmesh Thakker(ダーメッシュ・タッカー)氏に、IPOの価格よりも少し高めだった同社の最終的なプライベートラウンドに対する彼の見解を尋ねた。彼の言葉を紹介しよう。

あのラウンドには、スマートマネーが絡んでいました。そうした人びとは、Twilio(トゥイリオ)、Atlassian(アトラシアン)、MongoDB(モンゴDB)、Okta(オクタ)、Crowdstrike(クラウドストライク)などがIPO後に価値を5~10倍に上げたように、重要な価値創造はIPO後3~5年で起こることを理解しているのです。

現在、UIPathは、600億ドル(約6兆5000億円)のオートメーション市場の中での普及率は、わずか1%に過ぎない6億800万ドル(約659億円)です。COVID以降、反復的なタスクのためのインテリジェントなプロセスオートメーションに関する緊急性は高まる一方なのです。企業は、自動化を使ったコスト管理を必要としています。よってUiPathは、ターゲット市場に徐々に普及し成長していく中で、継続的な価値をもたらして行くことになるでしょう。それをIPO直前やIPO段階での投資家たちが実感したのです。彼らは忍耐強く待つでしょう」。

つまり彼は強気だということだ。UiPathのIPOについては、PitchBook(ピッチブック)のアナリストであるBrendan Burke(ブレンダン・バーク)氏が、より辛辣な意見を述べている。彼は同社やその市場について以下のように語っている。

RPAは、自動化の需要に応じて急速に拡張されてきましたが、依然として限定的なソリューションであり、恒久的な価値を持たない可能性があります。私たちはカスタムスクリプトに依存しているRPAを、AIネイティブな挑戦者からの競争リスクに直面している、クラウドネイティブなAIオートメーションへの橋渡しをするテクノロジーであると考えています。エンタープライズオートメーションの未来は、フロントラインのユーザーに対して、ダイナミックなデータストリームに適応し、正確な判断を下すことができるクラウドネイティブな機械学習モデルを提供するところにあります。UiPathの実装はクラウドネイティブではありませんし、インテリジェントな意思決定のためには約75のAIモデルベンダーとのサードパーティ統合が必要です。さらに同社は、事業のリスク要因として、AIエンジニアの採用能力を挙げています。UiPathが、AIバリューチェーン全体に展開できる能力があるかどうかが、長期的な展望にとって重要となるのです。

このような発言を引用したのは、一般的なアナリストの世界では、失礼な発言であることを恐れるあまり、実際のネガティブな発言を引き出すのが難しい場合があるからだ。

関連記事:業務自動化のUiPathが約790億円調達、IPOもまもなく

先を急ごう。先週は紹介しておきたい新しいSPACの案件があった。SmartRent(スマートレント)がFifth Wall Acquisition Corp(フィフス・ウォール・アクイジション・コープ)と合併する。Crunchbaseのデータによれば、SmartRentは非公開時代にRET Ventures、Spark Capital、Bain Capital Venturesなどから1億ドル(約108億1000万円)以上を調達している。

そのため、SmartRentに22億ドル(約2377億3000万円)の株式評価額が与えられた今回のSPAC取引は、VC支援による重要なエグジットとなっている。その投資家向け資料はここから見ることができる。私たちがSmartRentに注目しているのは、やはりSPACを行おうとしているLatch(ラッチ)と同じような分野で活動しているからだ。賃貸住宅のインフラ企業同士の激突となるか?こいつは楽しみだ(LatchのSPAC案件についてはこちら)。

今回の主たる話題の最後になるが、HYPRが先週3500万ドル(約37億8000万円)を調達した。先週書きたかったけれど書けなかったベンチャーキャピタルのラウンドの中で、同社を取り上げたのは、HYPRがパスワードのない未来を約束しているからだ。そして、シリーズC調達を行ったばかりだが、その目的を達成できるチャンスがあるかもしれない。ああ神様、どうか実現しますように。

その他のことなど

先週は、Y Combinatorを卒業したばかりのメンバーが行った資金調達を取材した。Queenly(クイーンリー)とAlbedo(アルベド)の記事を書いている。読んでみて欲しい。

そうそう、Afterpay(アフターペイ)の最近の業績を見る限り、Buy-now-Pay-Later(後払い販売)の市場は今も急速に成長しているようだ。

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

数百億円台のAIラウンドがあってもおかしくない理由

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準備OK?ここではお金の話、スタートアップの話、IPOの噂話などをお伝えする。

先週、Scale AI(スケールAI)が3億2500万ドル(約353億5000万円)のシリーズE調達を行った。TechCrunchも書いたように、この会社はデータラベリングの分野で活躍している。そして、ここ数年は資金調達にも大いに力を入れてきた。2019年にTechCrunchは、同社の当時22歳のCEOが1億ドル(約109億円)のラウンドを組んだことを記事にしている。そして2020年12月には約35億ドル(約3807億3000万円)の評価額で1億5500万ドル(約168億6000万円)を調達した。今では70億ドル(約7兆6000億円)以上の価値がある。

すごい話だよね?さて、先週初めにわかったのだが、どうやら2021年は、AIスタートアップにとって、全般的にとんでもない年になっているようだ。PitchBookのデータによれば、2021年の初めから4月12日までに、米国でのAIスタートアップの取引は442件、金額にして116億5000万ドル(約1兆2672億9000万円)に達している。そして、最近発表されたMicrosoftによるNuance AI(ニュアンスAI)の買収は、さらにこうした事象を加速させるかもしれない。

Sapphire VenturesのJai Das(ジェイ・ダス)氏に、AIベンチャー市場についての意見を、The Exchangeに寄せてもらった。同氏は、この分野の第1四半期における競争状況に対する、私たちからの質問に対し、第1四半期における「AI/MLスタートアップへの投資活動は、絶対にトチ狂っていますね」と答えた。

ダス氏によれば「AI / MLスタートアップは、日常的に一流のVCファームから5、6通の条件規定書を受け取っていますし、ARR(年間経常収益)の150~250倍の資金調達ができています」とのことだ。

このことを少し考えて欲しい。2020年私たちは、公開ソフトウェア企業が新たな高みに達したのを目にしてきたが、たとえ積極的なスタートアップのラウンドであったとしても、上の数字は非常に大きなものだ。経常収益が100万ドル(約1億1000万円)に過ぎないAIに特化したスタートアップが、25億ドル(約2719億5000万円)の評価を受けることを想像してみて欲しい。なんてこった。

しかし、AI投資のペースはどうだろうか?聞くところでは、多くのスタートアップで、ラウンド開始から終了までの時間に対する短縮に次ぐ短縮が行われているという。ダス氏は、この状況を説明するために「ほとんどの企業は、投資が実際に行われるはるか前にデューデリジェンスを完了しています」とメールで述べている。つまり「投資を行う時点ではもはやデューデリジェンスを行う必要がない」ということだ。

それって本当に意味があるのだろうか?もしラウンドが先制的なものならば、事前に徹底調査をしなければならない(これはダス氏が後ほどコメントで強調したことだ)。そうでなければ、盲目的に投資したり、動きの速い他の企業に取引を先取りされてしまうことになる。

今週のThe Exchangeでは、国内のベンチャーキャピタル市場についても、シード案件やニュースで話題になるような超レイトステージ投資に焦点を当てつつ掘り下げてみた。アーリーステージのベンチャー投資に関するコメントとして、EYの米国Venture Capital責任者であるJeff Grabow(ジェフ・グラボウ)氏からのコメントが寄せられた。

そのプレシード、シード、ポストシードについてのコメントの中で、私たちの注意を特に引くものがあった。予測に関するものだ。グラボウ氏は次のように語る。

2021年第1四半期のプレシード資金調達は、例年と比較すると好調でした。現在利用可能な資金が豊富で、技術的なソリューションで新市場を開拓できる、投資可能なテーマが数多くあることから、全体的な環境は引き続き堅調に推移すると考えています。このことから新型コロイナウイルス後の環境は、バラ色に描かれています。

これは私たちの社内での予測と同じだ。2021年第1四半期は、少なくとも米国のベンチャーキャピタル活動は非常に活発だったため(近々、海外事情も伝わってくるだろう)、2021年は多くの点で記録的な年になると思われる。大きく減速する傾向もみられないので、記録は更新されることだろう。そしてグラボウ氏もこうして新型コロナウイルスの流行が終了した後のベンチャー環境が、かなり魅力的なものになることを、はっきりと予想している。

ということで、記録は更新されるだろう。問題はその大きさがどれくらいになるのかということだ。

Coinbaseの直接上場に関するその他の情報

終わった話をあれこれいうつもりはないが、Coinbase(コインベース)の直接上場について、いくつか情報を追加しておこう。

消費者向け取引アプリRobinhood(ロビンフッド)の、ライバルであるPublic.com(パブリックコム)が、The Exchangeに対して、Coinbaseの株式に対する小口取引の関心がどれほどのものだったかを教えてくれた。いつもの広報担当者であるMo(モー)氏によれば、米国時間4月14日、Coinbaseは取引数で「公開されている全銘柄の中で最も人気があった」という。そしてさらに特筆すべきは、同じ日に「(投稿数で計測した)ソーシャルアクティビティが前日に比べて70%増加した」ことだ。

消費者トレーディングのブームがいつまで続くかはわからないが、これはかなりすばらしい指標値だ。

また、Similarweb(シミラーウェブ)は、2021年1月のcoinbase.comへのアクセス数が8640万件に達したことなどの、いくつかのデータを紹介している。いやあ、こいつはすごい。また、この月は新規訪問者数が再訪問者数を上回っている。このデータは、Coinbaseが第1四半期に大きな結果を出した理由を説明している。ということで現在の疑問は、こうした強気の動きを維持できるのかどうか、あるいは率直に言って、特に暗号資産の取引に対する消費者の関心が、株式取引のブームよりも長持ちするかどうかという点だ。

先週ポッドキャストなどでも何度か話題に出た、CoinbaseのシリーズDを主導した投資家のTom Loverro(トム・ラベロ)氏は「私たちはまだ暗号資産の第2ラウンドに立ったに過ぎません」と語っている。ということで、これらの話題は何度も何度も繰り返し出てくるだろう。ということでもう1度。

その他のことなど

さて記事の文字数の目標に達することができるように、先週のIPO市場に関するメモをいくつか。

まず、AppLovin(アプラビン)のIPOは計画どおりには進まなかった。モバイルアプリケーションに特化したハイテク企業の同社は、範囲の中央値である1株あたり80ドル(約8702円)という控えめな価格がついた後、最初の2日間の取引で価値が下落した。金曜(米国時間4月16日)終了時点では、1株あたり61ドル(約6636円)になった。

The Exchangeは、AppLovin社のCFOであるHerald Chen(ヘラルド・チェン)氏に、IPO当日にインタビューを行った。チェン氏との会話からは、上場したことで買収をより加速できるのではないかと感じることができた。流動性のある株式を所有しているということは、これまで以上に買収されやすくなったということだ。またS-1ファイリングによれば、AppLovin社は、他の企業を買収し、そのビジネスプロセスを実行して、収益を得ることができると主張している。

もしそれが実現できるなら、公開市場から同社に対する見方は少し厳し過ぎるかもしれない。現在の状況下で、ソフトウェア会社がIPO後に苦労しているのを見るのは少し奇妙なことだ。

また、チェン氏はThe Exchangeに対し、公開に先立つ会社説明会の際にマルチクラスの株式構造(株式に議決権などの差をつけること)についての反発は見られなかったと語っている。マルチクラス株式の悪影響については、同僚のRon Millerと一緒に書いたことがある。チェン氏は、たとえ議決権の異なる複数クラスの株式を保有していても、1人の人間が会社を完全にコントロールすることはできないと述べている。率直に言って、それが問題なのだが。

AppLovinの取引には注目して行くつもりだ(その数字に関する以前の記事はこちら)。

最後に。自動運転トラック会社のTuSimple(トゥーシンプル)が先週上場し、Similarwebが上場を申請した。また、UiPath(ユーアイパス)が価格帯を引き上げるか否かといった、幅広いIPO市場の動向にも注目している。私たちはその点について予測を行っている

そして週の終わりになって、Squarespace(スクエアスペース)がS-1(上場目論見書)を公開した。記事はこちら、続報も予定している。

ではまた。

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

スタートアップにとって今年はアツい夏になるかも

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準備OK?ここではお金の話、スタートアップの話、IPOの噂話などをお伝えする。

スタートアップたちにとって、忙しい夏になるかもしれない。

現在、経済が改善しつつあるからだ。失業率は低下しつつあるし、金利は低く保たれたままだ。市場にはたくさんの資金が溢れ、第3四半期には第1四半期のようなIPOの波が戻ってくることが期待されている。予防接種が広範囲に及んで、元に近い生活に戻ることで、ビジネスの世界も一気に加速できるようになるかもしれない。

もちろん、注意すべき点もある。多くの人々がこの復興から取り残されているのだ。そして、ワクチン接種へのためらいが、驚くほど一般的に見られるが、致命的に愚かな態度だ。しかし、期待される夏の経済状況、好調な市場、デジタルトランスフォーメーションの加速が続くという一般的な見方から、ハイテク業界はこれから(より)ホットな季節を迎えることになるだろう。

これは、スタートアップ企業にとっては朗報だ

すでにそうした動向を先取りした報告も始まっている。Wired(ワイアード)による、VCがスタートアップたちに迅速な投資を呼びかけているという最近の記事は、一読の価値がある。このことは、私が毎週のように話をしているスタートアップの多くが、順調な第1四半期を終え、第2四半期については心配していないようにみえることからも裏付けられる。もし私が、偶然にもうまくいっている創業者たちとばかり話していて、苦労しているスタートアップ企業を見落としているというわけではないなら、技術系の会社を作るにはかなりいい時期だと思われる。

先週初めに行われたPlaid(プレイド)のラウンドは、私が述べていることをよく表している。Plaidは、APIを活用したコンシューマー向けフィンテック企業だ。同社のCEOであるZach Perret(ザック・ペレット)氏は、TechCrunchの取材に対して、2020年1年間で金融サービスの世界のデジタル化がどれほど加速したかを語った。その通りだ。より平常なときならば、うまくやっていただろうスタートアップ企業たちも、彼らの市場が自分たちの方向に動いていることに気がつき始めた。それも急速に。だからこそPlaidには、現在2020年初頭の約3倍となる、130億ドル(約1兆4000億円)を超える価値があるのだ。

関連記事:Visaによる買収が破談になったフィンテックPlaidが約467億円調達

好調なスタートアップには、十分な資金が提供される。Ramp(ランプ)の最新のラウンドは、その点を明確にしている。そのため、経済全般や技術分野が加速すれば、投資家の財布の紐がさらに緩むことになる。暖かい季節になるにつれ、ビジネス環境も暖まっていくだろう。

つまり、それ以外には、Clubhouse(クラブハウス)のニュースTopps(トップス)のニュースを説明できないのだ(Toppsは有名なベースボールカード提供企業)。TechCrunchは、みんなが大好きなベースボールカードとNFTとお菓子の間の領域をカバーしなければならなかった。

来週のThe Exchangeでは、世界各国のベンチャーキャピタルの、2021年第1四半期の数字を掘り下げる予定だ。2021年のスタートがどれほど大きなものだったかはすぐにわかるだろうが、私たちにはなんとなく予想がついている。

Kudo、Coinbase、Canva

技術系スタートアップの成長や、暑かったり、暖かかったりする状況というテーマに立ち返って、先週の話題にいくつかのデータを追加しよう。

先週Kudo(クド)のCEOにインタビューしたのは、同社が2100万ドル(約23億円)のシリーズAラウンドの資金調達を発表してから数日後のことだった。私はこの「サービスとしての翻訳」(translation-as-a-service)企業を2020年行ったシードラウンド後に取材している。同社のCEOであるFardad Zabetian(ファーダッド・ザベティアン)氏によれば、2020年3月の時点では従業員数は14名だった。それが現在は150名となり、さらに50名以上の人材を募集中とのことだ。普通数回の増資だけでは、このような成長を目にすることはない。まあそれが成長というものだ。

関連記事:リアルタイム通訳・ビデオ会議のKudoが6.5億円調達、新型コロナが追い風に

Coinbase(コインベース)の絶好調の第1四半期は、過去10年間に開発された技術が成熟し、利益を生むようになっていることを示している。この会社の驚異的な収益の伸びと、ほとんど笑ってしまうような利益率は、間近に迫った直接上場を、私の予想以上に大きな出来事にしてくれるだろう。米国時間14日を心待ちにしておこう(その他のCoinbaseについては こちら)。

関連記事:上場間近のCoinbase、絶好調の2021年第1四半期決算を読み解く

そして、Canva(キャンバ)だ。7100万ドル(約78億円)の2度目の調達を経て、評価額を変えた。Crunchbaseのデータによれば、このクラウドデザイン企業の評価額は、2020年6月の約60億ドル(約6583億円)から150億ドル(約1兆6457億円)に上昇している。さらに、同社は共有する価値のあるいくつかの成長指標を発表した。

  • Canvaは年商5億ドル(約549億円)を突破した
  • 2020年Canvaは130%成長し、利益を出した(ただし、どのような内容かはわからない)
  • Canvaの月間アクティブユーザー数が5500万人になった

そして、株式公開は予定していない。はい、笑ってよし。その理由を同社のCEOであるMelanie Perkins(メラニー・パーキンス)氏に聞いてみたところ、次のような答えが返ってきた。

急ぐ必要はありません。当社は利益を上げていますし、非常に幸運なことに当社のビジョンや価値観に賛同してくれる投資家をまだ見つけることができます。私はよく「Canvaではまだ1%しか達成できていない」と言っています。私たちは、ビジュアルコミュニケーションを通じて、すべてのチームが目標を達成できるようにするという大きなビジョンを持っています。まだまだ達成しなければならないことがたくさんあるので、すぐに上場する予定はありません。とにかく今は急ぐ必要はないのです。

まあ、これだけは言っておきたいが、公開しなければならないのは、急がなければならない理由があるときだけではない。ただ単に、報道に関わる私たちを、新しい数字を発表して張り切って働かせるためだけに公開することもできるのだ。

その他のことなど

先週は充電のために少し休んでいたので、今回のニュースレターに期待されていたニュースやメモがいくつか落ちているかもしれない。だが休養したことで、The Exchangeはもっと大きく、もっと良く、もっとデータ満載で、ジョークも増えることになるだろう。私たちの小さなチームに加わる人もいるようなので、大きな計画を立てている最中だ。

では今回はこの辺で。

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

スタートアップたちは売りどきを逃したかもしれない

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みなさん、お元気でお過ごしだろうか。みなさんが、心穏やかで健康であることを心から願っている。私は昼寝の習慣を身につけつつある。ニュースのサイクルが決して遅くならないことに気づいてからは、私の生活の必須項目となったのだ。また、パートナーと私は、早起きが好きな3匹目の犬を飼ったので「ワクチンの夏」に向けて私たちが休めるように「大人の昼寝」をみんなでクールなものにしていきたい。もうすぐだ。

さて仕事の話題だ。本日はいくつか、データに関する重要な話題をお伝えしたい。すなわち、2021年第1四半期のM&Aデータ、2021年3月のアフリカにおけるVCの結果、そして(少なくとも私にとっては)意外なポッドキャストの数字だ。

まず1つ目は、Dan Primack(ダン・プリマック)氏がRefinitiv(レフィニTV)を通じて紹介してくれた、いくつかの第1四半期の初期段階のデータだ。金融データ会社によると、2021年第1四半期の世界のM&A活動は1兆3000億ドル(約143兆9000億円)に達し、2020年第1四半期から93%増加した。米国のM&A活動も、第1四半期に過去最高を記録した。なぜこれを気にかけるのか?要するに、このデータは、この3カ月間がいかにホットであったかを強調するものだからだ。

同四半期のベンチャーキャピタルのデータ自体もまた、同様にすばらしいものになることを期待している。しかし、誰もが気がついているように、第2四半期の始まりである先週、IPO市場にいくつかの亀裂生じ、2021年の第2四半期はまったく異なるものになる可能性が出てきたのだ。といってもベンチャーキャピタルの世界自身が停滞するわけではない。特にTiger(タイガー)が67億ドル(約7416億円)という多額の調達をしたことを考えるとそれは明らかだ。

関連記事:Tiger Globalが同社最大のベンチャーファンドを約7351億円でクローズ

2つ目のベンチャーキャピタルについては、アフリカに特化したデータ会社であるBriter Bridges(ブライター・ブリッジ)の報告によると「Flutterwave(フラッターウェーブ)が、10億ドル(約1106億8000万円)の評価額の下に1億7000万ドル(約188億1000万円)という巨額のラウンドを実施したこともあり、2021年3月だけで2億8000万ドル(約309億9000万円)以上がアフリカで活動するハイテク企業に投入された」という。

このデータは、少なくとも2017年以降この3月が、アフリカ大陸のベンチャーキャピタル活動が最も活発だったことを示すものだ。私は歴史上最も活発だったのだろうと考えている。アフリカのスタートアップ企業は、下半期に多くの資金を調達する傾向があるため、この3月の結果は単月での史上最高記録ではない。しかし強気が続くことには変わりがないし、第2四半期のベンチャーキャピタルの業績は大きなものになるだろうという私たちの一般的な期待も高めてくれる。

そして最後に、Index VenturesのRex Woodbury(レックス・ウッドバリー)氏が、Edison(エジソン)のデータをツイートしたが、それによると「8000万人のアメリカ人(米国の12歳以上の人口の28%)が毎週ポッドキャストを聴いていて、前年比で17%増加している」らしい。ウッドバリー氏はさらに「米国の12歳以上の人口(約1億7600万人)の62%が毎週オンラインオーディオを聴いている」と付け加えている。

先週のEquityでもご紹介したが、ここ数カ月、消費者向けソーシャル企業としてブレイクしているClubhouse(クラブハウス)の成功を受けて、音楽以外のストリーミングオーディオ市場は多くのプレイヤーが賭けに乗り出している。Discord(ディスコード)やSpotify(スポティファイ)などによる賭けの背景には、上に挙げたようなデータの存在があるのだ。人間は、他の人間の話を聞くのが好きだ。それは音楽優先の私が想像していたものよりも、はるかに多い。

消費者向け投資に、力が注がれる時代に戻ってきたことが、どれほどうれしいことだろうか。B2Bはすばらしいものだが、すべてがエンタープライズSaaSになるわけではない(しかし、Clubhouseが自らの宣伝効果を維持するのに苦労していることには注目する必要がある)。

ベンチャーキャピタルのラウンドすべてにはついていけていない

先週はTechCrunch Early Stageが開催されたが、これはなかなかうまくいった。しかし、イベントを手伝ったことで、今週は思っていたよりも取り上げられるラウンド数が少なくなってしまった。そこで、もし時間に余裕があれば取り上げていたであろう2社を紹介する。

  • Striim(ストリーム)の5000万ドル(約55億3000万円)のシリーズC:Goldmanがこの取引を主導した。Striim(私は「ストリーム」と発音するのだろうと思っている)は、クラウドとオンプレミスの両方で、データをリアルタイムに移動させることができるソフトウェアを、企業向けに提供するスタートアップだ。現在のデータ市場の活発さを考えると、StriimのTAM(最大可能市場規模)は大きいのではないだろうか?「Quickly flowing」(超速流)とか?まあお暇なときに、ストリーム中心のもっとマシな言葉を考えて欲しい。
  • Kudo(クド)の2100万ドル(約23億2000万円)のシリーズA:2020年7月にKudoが600万ドルを調達した際に取材している。同社は、リアルタイム翻訳を備えたビデオチャットや会議サービスを提供している。ご想像の通り、COVID時代を謳歌している。シードラウンドに参加したFelicis(フェリシス)がシリーズAを主導した。今週、同社の新たな成長指標を引き出せるかどうか見てみることにする。注目すべき対象だ。

さらに、見逃してはいけない2つのラウンドがあった。Holler(ホラー)はシリーズBで3600万ドル(約39億9000万円)を調達した。当社のAnthony Ha(アンソニー・ハー)記者によれば「会話的メディアが何であるかを知らなくても、おそらくHollerの技術を使ったことはあるでしょう。例えばあなたがVenmoの支払いにステッカーやGIFを追加しようとしたなら、Hollerは実際にそのメディアのための、アプリによる検索やサジェッションを管理しています」ということだ。

老いを感じるね。

また、ラテンアメリカの技術に十分な注意を払っていないなら、このウルグアイの1億5千万ドル(約166億円)のラウンドが目を覚ますのに役立つだろう。

関連記事
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その他のことなど

先週は、良いニュースが飛び込んできた。当The Exchangeをある程度お読みの読者は、私が公開ソフトウェア企業の先行きを予測するために話題として取り上げているBessemer(ベッセマー)のクラウドインデックスのことはご存知だろう。このたび、また市場に新しいインデックスが登場したのでご紹介したい。

Lux(ラックス)の「Health + Tech」(ヘルス+テック)インデックスだ。Lux Capitalによれば、このインデックスは「急速に台頭してきたHealth + Techという投資テーマを最もよく代表する57の上場企業のインデックス」だということだ。もちろん、これはBessemerのコレクション同様に、支援しているベンチャーキャピタル(Lux)に結びついている内容だ。だが、Luxの新しいインデックスは、Bessemerのコレクションと同じように、特定のベンチャーファームが自分のポートフォリオ内の公開企業を、どのように追跡しているかを示してくれるものだ。

便利なものなので、もっと増えて欲しい。

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

クレイジーな1週間だった

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クレイジーな1週間だった

私が歳をとってしまったのかもしれないが、技術ニュースの勢いがトップギアに入りっぱなしになってしまったみたいだ。正気じゃないね。WeWork(ウィーワーク)がSPACで上場するというニュースが、どれだけ小さな扱いになってしまったかを考えて欲しい。この7日間に私たちをなぎ倒していったさまざまなニュースの中では、それは小さな出来事でしかなかった。

さて、Y Combinator(Yコンビネーター)のデモデイが行われてから、何週間も経ってしまったようにさえ思えるのに、実はあれは先週の出来事だったのだ。それでも、今回はそのことを読者と一緒に振り返ってみたい。アーリーステージのお披露目としてはおもしろかったといえるだろう。

1日限りのデモデイラッシュでは、数百のスタートアップたちが、自分たちのやっていることを1枚のスライドに凝縮して披露した。TechCrunchでもいくつかの お気に入り取り上げたものの、記事にできずに棚上げにしてしまったスタートアップの方がはるかに多かった。ということで、いくつかの名前をここに追加させて欲しいと思う。

フィンテック関連では、私が視聴できた時間帯では、いくつかの名前が目に留まった。Alinea(アリネア)は、Z世代向けのトレーディングアプリを作ろうとしている。Z世代は他のどの世代よりもはるかにクールだと思うので、私はそのアイデアを気に入っている。彼らには、彼らの世代特性に合わせたネイティブな投資体験をしてもらうべきではないだろうか?

Hapi(ハピ)のアイデアも似たようなものだが、対象はラテンアメリカだ。繰り返しになるが、私はそれを気に入っている。最近目にすることが多く、好ましいと思っている傾向は、米国で成功したスタートアップのモデルを新しい市場に適用し、地域に合わせた調整を加えて、より多くの人々に提供することだ。投資は長い間、不自然に高価なものだった。ここでの動きは、それをもっと低コストで行えるようにするものだ。

Atrato(アトラト)も、Affirm(アファーム)スタイルのBNPL(Buy Now、Pay Later:先渡し、後払い)モデルをラテンアメリカで展開している。個人的には、消費者向け貯蓄アプリに比べて消費者向けクレジットアプリは好きではないが、AffirmやKlarna(クラーナ)などが成長していることから考えると、そうした製品には実際の需要があるのだろう。Atratoが何を見せてくれるかが楽しみだ。

ラテンアメリカから東南アジアに目を向けてみよう。OctiFi(オクティファイ)は、同地域市場向けのBNPL製品を開発している。Demo Dayで見たスタートアップの中で、この地域で活動していたのは同社だけではない、BrioHR(ブリオHR)もその1つだ。

Bueno Finance(ブエノ・ファイナンス)は、欧米以外の市場向けのフィンテックというテーマによくフィットする会社だ。同社は「Chime for India」(インド向けChime)という製品を開発している。もしChimeやその他のネオバンクが、一般的に、裕福でない消費者たちに、低コストで質の高い銀行サービスを提供できるのなら、問題はない。もちろんほとんどのスタートアップは失敗するが、私は彼らが焦点を当てている場所は気に入っている(NextPayはフィリピンの中小企業向けデジタルバンキングに取り組んでいるし、その他にもいろいろある)。

私が注目しているもう1つのテーマは、自社のソフトウェアをマネージドサービスとしてではなく、API経由で提供するスタートアップだ。昔からThe Exchangeでも取り上げてきた。今回のデモデイの中では、Dyte(ダイト、ライブビデオのためのStripe)、Pibit.ai(パイビットAI、データの構造化を支援するAPI)、Dayra(デイラ、エジプト人のためのAPI利用の金融サービス)、enode(イノード、エネルギープロバイダーと電気自動車をつなぐAPI)などの名前が挙げられる。

他には、非ネット型中小企業向けのサービスに取り組んでいるスタートアップがいくつかあった。The Third Place(ザ・サード・プレイス)は中小企業向けのサブスクリプションサービスを開発しているし、Per Diem(パー・ディエム)はAmazon以外の企業たちに迅速な配送手段を提供したいと考えている。

他にもすてきな会社がたくさんあった(GimBooksRecoverWaspAxiom.ai!)、とても書き切れない。さて、これからの半年間で最も成長するのはどれかを、じっくりと見届けたい。しかし、私はこのデモデイを終えて、世界のスタートアップたちの活動に大きな希望を抱くことができた。3月23日の締めくくりは悪くなかった。

後期ステージのいろいろ

IPOやSPACのニュース(もしあまりご存知ないなら、これとかこれとか)の中に、私たちの時間を割く価値のある大きなラウンドがいくつもあった。そのうちの2つはインシュアテック分野からのもので、Pie(パイ、労災保険)が1億1800万ドル(約129億4000万円)、Snapsheet(スナップシート、請求管理)が3000万ドル(約32億9000万円)を調達した。

ServiceTitan(サービスタイタン)は、4倍となった評価額83億ドル(約9102億6000万円)で、5億ドル(約548億4000万円)を調達したことを、Forbesが報じている。約2年の間に、まるまると太った評価額となった。来年は彼らのIPOを取材することになると思う。また、会計に特化したPilot(パイロット)は、12億ドル(約1316億円)の評価額で1億ドル(約109億7000万円)を調達した。2021年のユニコーン誕生のペースは、決してスローではないと感じる。

また、UiPathのIPO申請書は、同社がいかにして恐ろしい損失を合理的な経済性に変えたかを示したという点で、非常に興味深いものとなっていると言わざるを得ない。少なくともGAAP的な意味で、Snowflakeの再現になろうと動いているように見える。

今月のニュースだけに絞って、さらに17段落を追加しても、数十億円、数百億円規模のラウンド全部についてはご紹介できない。正気じゃないね!確かに、2021年第1四半期のベンチャーキャピタルの数字は、ホットで刺激的なものになりそうだ。詳しくはデータを入手し次第、ご報告しよう。

その他のことなど

とはいえ、私はただマイルドな食べ物を提供するために来たわけではない。近い将来には、私の好きなスポーツと自分の仕事を絡めたストーリーの芽が出てきている。正確にいうならF1(カーレース)と技術のことだ。

最近、Cognizant(コグニザント)がAston Martin(アストン・マーチン)F1チームのスポンサーになった。Splunk(スプランク)はMcLaren(マクラーレン)と提携している。Microsoft(マイクロソフト)はRenault(ルノー)のAlpine(アルパイン)ブランドにちなんだ名前のチームと契約している。Epson(エプソン)、Bose(ボーズ)、Hewlett Packard Enterprise(ヒューレット・パッカード・エンタープライズ)の3社は、Mercedes (メルセデス)・レーシング・チームのスポンサーだ。そしてOracle(オラクル)はRed Bull(レッドブル・レーシング)のスポンサーだ。このリストはまだまだ続く!

そして先週、Zoom(ズーム)がF1ゲームにも参加することを発表した。これは私にとって楽しみであるだけでなく、ある希望にもつながっている。一部のハイテク企業が、F1チームを業界内競争の手段として利用し始めていることが明らかになってきた。だとすると、今まさに書いているように、仕事でF1について書くこともできるし、業績発表会の場で、なぜ貴社のチームは速くないのかという質問で責められるテック系のCEOも増えるだろう。すでに、SplunkのCEOであるDouglas Merritt(ダグラス・メリット)氏は、彼のオレンジ色のチーム(McLarenのこと)についての私からの質問にうんざりしていることだろう。もちろん、質問をやめるつもりはない。

ということで、私はこれから、もしあなたがテック系のCEOで、その会社がF1チームのスポンサーになっていないなら、あなたの会社は小さすぎて重要ではない企業か、もしくは退屈すぎて楽しくない企業だと考えることにする(というのは、ほぼ冗談だけどね)。

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

テクノロジー企業たちが予測する(経済の)未来

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決算シーズンも終盤を迎え、上場ハイテク企業たちは第4四半期と2020年の開示を終えようとしている。TechCrunchは、大企業の業績はあまり気にしていないが、スタートアップだった頃から知っている中小のハイテク企業たちは、熟考に値するスタートアップ関連のデータを提供してくれる。そのため四半期毎に、The Exchangeは多くのCEOやCFOに話を聞き、非公開企業に対して情報をお伝えできるように、何が起こっているのかを把握している。

時にはそれが役に立つこともある。保守的な銀行業界でAIが受け入れられるようになってきたことに関連して、フィンテックのUpstart(アップスタート)について考察をした後に、同社と交わした会話がそれを証明している(Upstartは最近POを行ったばかりだ)。

先週は、Yext(イエクスト)のCEOであるHoward Lerman(ハワード・ラーマン)氏と、Smartsheet(スマートシート)のCEOであるMark Mader(マーク・メーダー)氏にインタビューを行った。Yextは中小企業向けのデータプロダクトを開発していて、将来を検索プロダクトに賭けている。一方Smartsheetは、コラボレーション、ノーコード、フューチャー・オブ・ワーク(新しい働き方)の領域で活動するソフトウェア企業だ。

両社はまったく内容の異なる企業だが、今回の決算では揃って、マクロノートと呼ばれる、今後の財務ガイダンスや彼らが予想する経済状況に関する詳細記述を公表した。マクロオタクの私は、大いに興味をそそられた。

Yextは、第4四半期の業績を発表する際に、いくつかのマクロ経済的な逆風要素を挙げている。そしてその中では、将来の業績を不確実なマクロ状況と結びつけて「これは、低迷を続けるマクロ経済と、慎重な姿勢を崩さない顧客など、現在の自社および顧客のビジネス状況に基いたガイダンスです」と書かいている

ラーマン氏はThe Exchangeに対して、世界がいつ再び「開かれた」ものになるのかが不明であるため(それは位置情報に関連するYextの製品にとって大問題なのだ)、2021年は何も変わらないという前提でガイダンスを書いたという。これはウォール街からは評価されなかったが、この先、経済が回復すればYextが超えるべきハードルは高くないことになる。これは、企業がガイダンスを語る際の1つのやり方だ。

Smartsheetは若干異なるアプローチをとっていて、業績報告の中では「会計年度2022年度のガイダンスでは、下半期のマクロ環境の緩やかな改善を想定しています」と述べている。メーダー氏はインタビューの中で、自分の会社はエコノミストは雇っておらず、ただ他の人の話を聞いているだけだと答えている。

同氏はまた、マクロ状況は飽和状態の市場ではより重要になると考えているが、Smartsheetが相手にしているのはそのような市場ではないと考えていると語った。そのため、Smartsheetの業績は、同社の業績報告会での言葉を借りれば「クラウドとデジタルトランスフォーメーションへの長期的なシフト」などの影響をより強く受けるはずだ。

2021年の経済がどうなるかは、スタートアップたちにとってかなり重要な問題だ。景気が良くなれば、金利が上昇し、お金を稼ぐコストが上昇し、債券がより魅力的になる。その場合、評価額には控え目な下降圧力がかかる可能性があり、ベンチャーキャピタルはわずかに減速する可能性がある。しかし、Yextがこの先を平坦な道と予想し、Smartsheetはペースアップは第3四半期からと予想していることを考えると、現在の状況がほぼそのまま続くことになりそうだ。

現在、スタートアップやレイトステージのための流動性資金は、非常に良い状況だ。それでは、スタートアップの国はこの先順調なのだろうか?少なくとも、現在の私たちの視点で見定められる限りは。

さて、Splunk(スプランク)のCEOであるDouglas Merritt (ダグラス・メリット)氏からは、旧来のソフトウェア会社をクラウドファーストの会社にする方法について、そしてJamf(ジャムフ)のCEOであるDean Hager(ディーン・ヘイガー)氏は、個別のソフトウェア製品のパッケージングについて、それぞれ話を聞きメモが残されている。彼らからはさらに話を聞くことになるだろう。

その他のことなど

先週は大小のラウンドがあった。たとえばSquarespace(スクエアスペース)は3億ドル(約326億6000万円)、Airtable(エアテーブル)は2億7700万ドル(約301億6000万円)を調達した。小規模なものの中では、Copy.ai(コピーAI)の290万ドル(約3億2000万円)という控えめな資金調達が先週のお気に入りだった。

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しかし、TechCrunchがカバーしなかったラウンドの中にも、時間を割く価値のあるものがあった。ということで、これからでも気にして貰いたいものをいくつかご紹介しよう。

  • 英国を拠点とするスタートアップ企業であるLilliは、いわゆるプレシリーズAラウンドを実施した。同社はセンサーやその他の技術を用いて、支援が必要な1人暮らしの人々の健康状態を追跡する企業だ。私にとって、人々を技術を使ってケアすることは、いつでも良いことだ。UKTNによれば、この調達は450万ポンド(約6億8000万円)相当のものだったようだ。
  • 米国進出時に9億1500万ドル(約996億9000万円)を調達した中国のソフトウェア会社Tuya(ツヤ)のIPO。中国のIPOが米国の株価指数に入ることは、かつては大きな話題だった。今ではその頻度は減っている。これを見逃していたのは驚きだが、まあ、色々なことが一遍に起きていたので。
  • そして、最近拡大された米国のクラウドファンディング規制を利用した、3600万ドル(約39億2000万円)相当のRepublic(リパブリック)のラウンドがあった。Juked.gg(ジュークドgg)など、この手法で成功を収めたスタートアップがいくつかある。

今後のお楽しみ

今週はY Combinator(Yコンビネーター)のDemo Day(デモ・デイ)ウィークなので、アーリーステージの情報をたくさん紹介する予定だ。ここでは、そのプレビューを紹介しよう。The Exchangeは、インシュアテックについて振り返り(WeFoxとInsurifyのデータを使用)、さらにオースティンに拠点を置くソフトウェアスタートアップAlertMedia(アラートメディア)が、従来の資本調達ではなくプライベートエクイティに自社を売却することを決定したことについてカバーする。

また、手数料無料の株式売買アプリの評価、デュアルクラス株式の問題点、ニューヨークにおける最近のIPOの成功例、世界のベンチャーキャピタル市場の不平等性などについても紹介しているので、ご覧頂きたい。

最後に、このBigTechnology(ビッグテクノロジー)の記事は良かったし、このNot Boring(ノットボアリング)のエッセイも良かった。

ではまた。

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

年3回の調達を禁じる法律は必要なものだろうか?

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。準備OK?ここではお金の話、スタートアップの話、IPOの噂話などをお伝えする。

私たちは四半期ごとに、ベンチャーキャピタル市場の米国外米国内、そしてセクター別の内容を調査し、その時点での非公開市場の温度を把握している。こうしたざっくりしたスナップショットは役に立つ。しかし、時には1つのストーリーに集中した方が、本当の姿を見ることができる。

AgentSync(エージェントシンク)のストーリーを見てみよう。私が、APIに特化したインシュアテックプレイヤーであるAgentSyncを初めて取り上げたのは 2020年8月のことだった。このとき同社が440万ドル(約4億8000万円)のシードラウンド調達を行った。同社は、市場における個々のブローカーの適格性を第三者が追跡するのに役立つすばらしい企業だ。これは大きな分野であり、AgentSyncは急速に初期の牽引力を発揮して、その結果は190万ドル(約2億1000万円)の年間経常収益(ARR)という形で現れていた。

しかし、AgentSyncは12月に再び資金調達を行い、640万ドル(約6億9700万円)のラウンドを行った。このときは前回のラウンドから評価額が4倍になったことを公表している。そして、パンデミックが始まって以来、同社は4倍の収益増を達成た。

急成長しているソフトウェア会社が2回資金調達したなんて、ありきたりに聞こえるだろう。景気の良い話だ。

だが、AgentSyncは先週、新たな結果とともに再び調達を行ったのだ。Becca Szkutak(ベッカ・スクータック)氏とAlex Konrad(アレックス・コンラッド)氏が発行するニュースレター「Midas Touch」(マイダス・タッチ)が一連のデータを報告したので、The ExchangeはAgentSyncのCEOであるNiji Sabharwal(ニジ・サバーワル)氏にその数字について確認した。その内容は以下のとおりだ。

  • 現在の収益はまだ1000万ドル(約10億9000万円)未満だが、ARRは2019年に10倍に拡大した後、2020年には6倍に拡大した。
  • これまでに解約した顧客はいない。
  • 今回の2500万ドル(約27億2000万円)のシリーズAの評価額は2億2000万ドル(約239億8000万円)で、コンラッド氏とスクータック氏はそれを「8カ月前のAgentSyncの評価額のちょうど10倍」と表現している。

つまり、AgentSync社が以前440万ドル(約4億8000万円)を調達したときの評価額は2200万ドル(約24億円)だったということだ、また2020年12月のラウンドは約8000万ドル(約87億2000万円)の評価額で行われた。おもしろい。

最初の話に戻ると、大規模なデータは業界内での「現在地」を示すのに役立つが、AgentSyncのような話は、注目のスタートアップにとって現在の市場がどのようなものであるかをよりよく示すものだと思う。それは非常に速く、さらに、しばしば実質をともなう成長に裏打ちされている。

また、サバーワル氏はThe Exchangeに対し、最後の条件規定書以降、さらに100万ドル(約1億1000万円)分のARRを獲得したと語っている。ということで、そのニュースを公表する前にすでに数字は大きくなっている。

これが2021年だ。

Conscience.vcについて

また先週私は 、ベンチャーキャピタルファンドを構築中のAriana Thacker(アリアナ・サッカー)氏と会った。自身のVCを設立するまでに彼女は、Rhapsody Venture Partnersや、Predictive VCなどを経てきている。そして現在彼女が取り組んでいるのが Conscience.vc(コンシャス.vc)、あるいは単にConscience(コンシャス)と呼ばれるVCだ。

彼女の新しいファンドは、評価額1500万ドル(約16億3000万円)以下の企業に投資する。その企業は、何らかのかたちで消費者向けのビジネスモデルを持ち(B2B、B2B2Cどちらの形態でも構わないそうだ)、科学に関連する特許化可能な技術やその他の知的財産権(IP)などを対象としていることが条件だ。なぜ科学に注目するのか?それはサッカー氏のバックグラウンドから来ている。彼女は化学工学の知識を持ち、Exxon(エクソン)とShell(シェル)の共同プロジェクトでは設備エンジニアを務めていたこともある。

それはそれでおもしろい話なのだが、これまでThe Exchangeでは新しいファンドの発表を取り上げたことはなく、小規模なVCもほとんど取り上げては来なかった。では、なぜ今回はそのパターンを打ち破るのだろうか。というのも同業他社のほとんどとは異なり、サッカー氏がデータや測定基準を非常に重視していたからだ。

なんと、彼女の最初のメールには、さまざまな投資対象への自身の投資リストと、その取引に関する実際の情報の一覧が記載されていた。そして、さまざまな投資関連の資料をさらに共有してきた。もしも、もっと多くのVCが自分たちの情報を共有していたらと想像してみよう。それはすばらしいことだ。

Conscienceは、2021年1月中旬に最初のクローズを行ったが、彼女がその資金調達プロセスを終える前に、さらに多くの資金が集まる可能性があった。ファンドの上限は1000万ドル(約10億9000万円)だったが、彼女が集めた資金は400万ドル(約4億4000万円)から500万ドル(約5億4000万円)に達した。また、彼女はThe Exchangeに対して、2020年の夏までは1人のLP(リミテッドパートナー)も知らず、アンカー投資家を確保したのは2020年の10月だったと語った。

サッカー氏が何をするか見てみよう。しかし、最初のファンドから投資する際には、彼女は最低限ある程度の透明性を確保したいと考えているだろう。その点だけでも、ほとんどのマイクロファンドがこれまで受けた以上の注目を、このページで集めることになるだろう。

さて、他にも重要なことがたくさん

先週は超多忙だったので、本来ならば書きたいと思っていたことの数々を逃してしまった。以下、順不同で並べておこう。

  • プラットフォーム上で仮想通貨取引を支援するスタートアップのFalconX (ファルコンX)が5000万ドル(約54億5000万円)を調達した。今回のラウンドは、同社が2020年5月行った1700万ドルの調達以来のものだ。そのことについては報告済だ。このラウンドを主導したのは例によってTiger Globalだ、同社は2021年2月に、多くのラウンドに関わっている
  • そのFalconXのラウンドは、同社がささやかなものと考えられていた取引と収益ベースから、より大きなものへと成長するに従って存在感を増している。同社によれば「1年足らず」の間に「取引量」は12倍「純利益」は46倍になったという。大したものだ。
  • Privacera(プリバセラ)も先週5000万ドル(約54億5000万円)を調達した。このラウンドを主導したのはInsight Partnersだ。この案件が私の目を引いたのは「クラウドベースのデータガバナンスおよびセキュリティソリューション」を約束するものだったからだ。それは私に Skyflow(スカイフロー)のことを思い出させた。この急速に成長中のスタートアップも似たような製品を持っていたはずだと思ったからだ。PrivaceraのCEO であるBalaji Ganesan(バラジ・ガネッサ)氏は、私の思い違いを丁寧に修正する次のようなメールを送ってくれた「Skyflowはお客様のデータを保管する金庫のようなものです。顧客データをトークンに置き換えます。これに対して、私たちはデータガバナンスに焦点を当てていますので、より広い範囲をカバーしています。私たちのソリューションの中では、お客様のデータを保存していません」。大変結構。やはりまだまだおもしろい分野だ。
  • そして、 Woflow(ウォフロー)の件もあった。これは VentureBeatが私たちより先に記事にしている。先週、Woflowと話をしたが、残念ながら今日ここに書いた文字数よりもメモが長くなってしまった。ということで、構造化された販売データを売る同社のモデルは、非常にクールであるということを書くことで、今回は勘弁して欲しい。また、最初の業界(レストラン)で、すでにDoorDashのような顧客と連携している点もすばらしい。
  • 今回のラウンドは、Craft Venturesが主導した。同ファームは、ここ数カ月、APIを活用したスタートアップを相手にかなり積極的に活動している企業だ。Woflowについては続報を用意中だ。

その他のことなど

最後に、ソフトウェアの評価についてはこちらで大いに学び、すばらしいRoblox(ロブロックス)の直接上場についてはこちらで考察し、フィンテックのベンチャーの成功と弱点について調べ、Global-e(グローバルe)のIPO申請についても調査した。ああそれから、M1 Finance(M1ファイナンス)が再び調達を行い、Clara(クララ)とArist(アリスト)も小規模ながら楽しいラウンドを行った。

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投資家たちはパンデミックをどのように評価しているのか

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ちょっとした近況報告から始めよう。Equityはより多くのことを提供するようになる。そして、TechCrunchは現在JusticeEarly-Stageイベントの開催を計画中だ。私は後者のためにZoomのCROにインタビューを行っている。また、このThe Exchange自体でも、来週には懸案の内容をお届けする予定だ。たとえば5000万ドル(約53億3000万円)と1億ドル(約106億6000万円)の年間経常収益(ARR)を達成した企業の話(Druva[ドゥルーバ]など)、消費ベースの価格設定と従来のSaaSモデルの比較(Fastly[ファストリー]、Appian[アピアン]、BigCommerce[ビッグコマース]のCEOたちが登場)などだ。ふう。

今週はDoorDash(ドアダッシュ)とAirbnb(エアビーアンドビー)の両社が上場企業として初めて収益を報告し、エグジットを果たしたユニコーンたちへの真の仲間入りを果たした。私たちは、いつものようにひっそりと収益サイクルに目を光らせているが、今回はスタートアップの世界に向けてお話ししたい、いくつかの学びがある。

いくつかの基本的なことから始めてみよう。第4四半期におけるDoorDashの売上高は、予想されていた9億3800万ドル(約999億5000万円)に対して9億7000万ドル(約1033億6000万円)となり、予想を上回る成長結果となった。この2つの数字のギャップは、部分的にはDoorDash株の新しさと、パンデミックの影響で予測が難しくなっていることに起因しているのだろう。飛躍的な成長にもかかわらず、DoorDashの株式は、業績報告の発表後にまず急落したが、米国時間2月26日金曜日には大きく回復した。

なぜ初めに下落したのだろうか?おそらく公開後最初の四半期における(GAAPによる)赤字が、大きなものになることは一般的なこととはいえ、投資家が予想していた数字よりも、同社の純損失が大きかったことが下落の原因ではないだろうか、その懸念が、業績報告会における同社のCFOからの「第4四半期と同様に1月にも12月に比べて注文量の成長が加速しています」という発表によって和らげられたのだろう。それは安心材料だ。一方で、同社のCFOは「第2四半期以降、顧客の中には、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)以前の行動への回帰が見られるようになるでしょう」と述べている。

要点:大企業たちは、新型コロナウイルス流行以前の行動が復活することを期待しているが、まだまだそれには遠い。新型コロナの恩恵を受けた企業たちは、現在厳しい吟味を受けている。そして、2021年さらに進んでいくにつれて、その追い風は徐々に弱まっていくだろうと彼ら自身も考えている。

そこで目に入るのがAirbnbだ。同社の株は週末前には16%ほど上昇している。何故かって?Airbnbは売り上げの予想値を上回った一方で、大金も失っている。Airbnbの2020年第4四半期の純損失はDoorDashの10倍以上の額だ。ではなぜ、DoorDashが沈んだのに、Airbnbが上昇したのだろうか?収益が予想を大きく上回った(予想されていた7億4800万ドル[約797億1000万円]ではなく、8億5900万ドル[約915億4000万円]だった)こと、そして将来の成長の可能性がその要因だ。投資家たちはAirbnbの現在の期待を上回る成長が、将来にのさらなる成長につながると期待しているのだ。

要点: 将来の成長についてしっかりとしたストーリーを持っていれば、投資家は大幅な損失を受け入れてくれるだろう。成長が続くなら、企業がすでに成長していたとしても、一層厳しくなる吟味を乗り越えられるだろう。

スタートアップたちにとって、評価額に対する重圧や浮力は、結局企業がパンデミックのどちら側にいるかにかかっているのかもしれない。すなわちその追い風に乗る側なのか(たとえばリモートワークに注力するSaaSとか?)、もしくは逆風を受ける側なのか(たとえばレストランテックとか?)。調達をする前に良く検討すべきものがあるのだ。

マーケットノート

資金調達ラウンドで熱い1週間だった。私が以前ジャーナリストとして在籍していたCrunchbase Newsは、2021年これまでに、どれだけの大規模なラウンドが行われたのかについてすばらしい記事を残してくれた。しかし、規模的には一歩も二歩も下がったレベルでも、資金調達活動は超多忙だった。

先週、カバーすることはできなかったが、私の目を引いたいくつかのラウンドには、Terminus(ターミナス)の9000万ドル(約95億9000万円)のラウンド(ABM、Account Based Marketingに特化したGTM、Go To Markertサービス企業だと思う)、Anchorage(アンカレッジ)の8000万ドル(約85億2000万円)のシリーズC(大金を扱うための仮想通貨ストレージ)、Foxtrot Market(フォクストロット・マーケット)の4200万ドル(約44億8000万円)のシリーズB(ヤッピーとズーマー向けの必需品の迅速な配送)などがある。

今ここに座って、ようやくそれぞれのことを少し書いているが、技術市場の広さを思い知らされている。Terminusは他の企業の販売を支援し、Anchorageは顧客のETH(イーサリアム)を安全に保存したいと考えており、Foxtrotは顧客が飲み物のない朝に困らないようにすばやくロゼワインを補充したいと思っている。驚くべき多様性だ。そしてそれぞれがVCに受け容れられるような成長をしていなければならない。単により多額の資金を調達するだけではなく、自身の成熟のためのより大きなラウンドを行うのだ(それはシリーズのステージによって測られるが、ラウンドの呼称は目安になるよりも、目くらましになる可能性がある)。

私は当ニュースレターのこの小さなセクションを冗談でマーケットノートと呼んでいるが、実際気になるマーケット全体のノートを書くことなんて可能だろうか?上の企業たちと最近の資本注入は、この点を改めて認識させてくれる。

その他のことなど

最後に、決算説明会からの覚え書きを2つ紹介する。1つ目は不可解なRoot(ルート)について、2つ目はBooking Holdings(ブッキングホールディングス)についてだ。

私はRoot Insurance(ルート・インシュアランス)のCEOであるAlex Timm(アレックス・ティム)氏と決算発表後に話をした。私はその結果に対する投資家の反応という意味ではあまり情報を持っていなかった。私は、Rootは多額の資金を持ち、かなり大規模な拡大計画を持っていると理解した。ティム氏は、会社の経営状況の改善(損失率と損失調整後の経費ベース、保険テックファンについて)と、パンデミック中の成長について陽気に語った。

しかしその後、その株式は16%下落している。アナリストの分析を読み解くと、Rootの経済的プロファイルに動きがあり(次の四半期における再保険料の変動に関して)、私の立場からは通年の成長を完全に把握することは難しい。しかし、Rootのビジネスは、いまでも脱皮と言っていいほどの変容を続けているようにみえる。同社は現在のような進化を続けて2022年に公開を行うこともできたかもしれない、だがそうする代わりに、同社は2020年途方もない額を調達して公開を果たした。

少し見渡してみると、似たような新しい保険プレイヤーであるLemonade(レモネード)の印象的な評価額は継続しているものの、MetroMile(メトロマイル)の株価も軟化しており、Rootの株価はIPOの時点から半分以下になっている。現在のような、一部の新しい保険プレイヤーの価格調整が続けば、このスペースへの民間投資の動きが鈍化する可能性がある。(このようなものが少なくなるのだろうか?) 2021年はこの傾向に注目したいところだ。

次は、Priceline(プライスライン)などの旅行会社を所有するBooking Holdings(ブッキング・ホールディングス)だ。Bookingが、ビジネス旅行の将来に関する手がかりを持っている可能性があることを考えて(私たちはリモートワークやオフィス文化がどうなるのかの手がかりや、スタートアップハブの場所からソフトウェアの販売までのすべてに影響を与えるものを気にかけている)、The Exchangeは即座に同社へ電話してみることにした。

Booking HoldingsのGlenn Fogel(グレン・フォーゲル)CEOは、前年に比べて大幅な減収だったにもかかわらず、同社が史上最高値で取引されていることについてコメントをしなかった。彼は、パンデミックが会話へ期待するものを再構成し、現在はビデオ通話で行われているような、会議のための短期出張が、将来も抑制される可能性があることに言及した。彼は将来のカンファレンスのための旅行や将来の旅行全般については強気だった(TechCrunchにとっては良いニュースだと思う)。

旅行という観点からは、まだ何もわかっていない。Booking Holdingsが多くを語らないのは、いつ事態が好転するかわからないからかもしれない。無理もない。おそらく、あと3カ月ほどワクチンが展開されれば、オールドノーマルへの部分的な復帰がどのようなものになるかを、もう少しはっきりと垣間見ることができるようになるだろう。

最後に、Apex Holdings(エイペックス・ホールディングス)のSPAC(特別買収目的会社)プレゼンテーションはこちらで、Markforged(マークフォージド)のプレゼンテーションはこちらで読むことができる。また、こちらでは先渡し後払い(BNPL、buy-now-pay-later)のビジネスについて書き、こちらでははRon Miller記者とDigital Ocean(デジタル・オーシャン)のIPOについて書き、そしてこちらではToast(トースト)の評価額とOlo(オロ)の公開について簡単に書いている

ではまた。

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画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

データは米国の不公平なヘルスケア問題を解決できるだろうか?

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。準備OK?ここではお金の話、スタートアップの話、IPOの噂話などをお伝えする。

データはヘルスケアの問題を解決できるだろうか?

それだけでは無理だ。だが適切な使い手に適切なデータを手渡せば、おそらくかなり大きな前進を期待できるだろう。そしてそれこそが今回お話しするスタートアップの目的だ。

今回The Exchangeは、Truveta(トゥルベタ)社のCEOとCMOであるTerry Myerson(テリー ・ マイヤーソン)氏とLisa Gurry(リサ ・ ガリー)氏から話を聞いた。Truvetaは、ヘルスケア提供者から大量のデータを収集し、匿名化して集計し、それを第三者が研究のために利用できるようにすることを目指す若い企業だ【訳者注:米国英語の「ヘルスケア」は病院 / 医療を含む健康管理全般を意味する】。

これは大変な仕事だが、Truvetaを支えるチームは、大きなプロジェクトを遂行した経験を持っている。マイヤーソン氏は、Microsoft(マイクロソフト)時代にはトップの直下で、Windows(ウインドウズ)のようなよく知られたプロダクトを統括していたことで有名だ。またガリー氏はかつてMicrosoft内のリーダーの1人であり、直近ではMicrosoft Store(マイクロソフト・ストア)製品の戦略を担当していた。

その2人が、今はヘルステックデータの会社にいる。どうしてそうなったのだろう?Microsoftを退社した後、マイヤーソン氏はシアトルのベンチャーキャピタルであるMadrona(マドロナ)や、プライベートエクイティを得意とすろ巨大な投資グループのCarlyle Group(カーライル・グループ)で働いていた。その数年後、マイヤーソン氏のMicrosoft時代の元同僚数名が、ヘルスケア大手のProvidence(プロビデンス)に勤務していた。彼らは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が最初に米国をロックダウンしたときに、マイヤーソン氏に連絡してきた。マイヤーソン氏は、数回の通話に参加することには同意したが、家に閉じこもっていたため、チームに正式には参加しなかった。

その間、彼はProvidenceがTruvetaとなるアイデアについての白書をまとめたことを知った。それはヘルスケア提供者から十分な数と多様性のあるデータを収集することで、それを活用したあらゆる種類の研究が可能になるというものだった。マイヤーソン氏はそのコンセプトに強く惹かれ、後に会社を設立することとなった。そして、彼は創業を手伝ってもらうために、ガリー氏を含む元同僚たちを呼び寄せた。

Truvetaは現在約50人の従業員を抱えているが、2021年中に100人程度までその規模を拡大する予定だとマイヤーソン氏はいう。

読者の頭の中には疑問が溢れていると思う。Truvetaの事業はまだ早い段階だが、同社は米国時間2月11日に、そのデータ目標を達成するために、14のヘルスケア提供者と契約したことを発表した。それらの提携企業は同社に対する投資家でもある(マイヤーソン氏自身も資本を投入している)。

私は同社の事業計画に興味を惹かれた。マイヤーソン氏によれば、Truvetaはデータにアクセスしたいのが誰かによって異なる料金を請求するとのことだ。ご想像のとおり、営利団体は独立した個人研究者とは異なる対価を支払うことになる。

Truvetaの次の課題は、より多くのデータを取得し、内部のデータスキーマを整理し、研究者からのフィードバックを収集して、商業的なアクセスへつなげることだ。

米国のヘルスケアは不公平だ。これはTruvetaの2人の幹部が私たちとの通話中に繰り返し強調したことだが、それゆえに同社にはそれを改善し、人種差別や性差別を減らすための大きな市場が与えられる。

マイアーソン氏とガリー氏と彼らのスタートアップの話をするのは少し妙な感じがした。過去には彼らとMicrosoftの最大のプラットフォームのいくつかについて対談をしたことがあるからだ。彼らがTruvetaをどのくらいの速さで、すばらしいアイデアの段階から、成功した商業的な会社に変えられるのか、そして、どれだけ大きく育てることができるかを見守っていこう。

マーケットノート

ここ数日、手を伸ばせなかったことがたくさんあった。たとえばAdyen(アディエン)の利益について。この欧州発の決済プラットフォームは、下半期の売上を3億7940万ユーロ(約484億3800万円)と報告したが、これは前年同期比28%増である。そこから2億3680万ユーロ(約302億3000万円)のEBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前・その他償却前利益)を報告している。フィンテックは儲からないと言ったのは一体誰だったろう?(もしStripe(ストライプ)の評価額や今後の株式公開が気になるのならAdyenのこの報告は必読だ)。

そして、私たちの指からこぼれ落ちたラウンドもあった。最近730万ドル(約9億3200万円)のシリーズA調達を行ったCloudTalk(クラウドトーク)がその例の1つだ。このスロバキア発のスタートアップは2019年に160万ドル(約2億400万円)のシードラウンドを行っている。このスタートアップは、その名が示すとおり、コールセンター向けにクラウド電話サービスを提供している。

リモートワークの世界的な成長のおかげで、私たちは、おそらく2020年がCloudTalkにとって良い年になったのではないかと考えていた。そのとおりだった。メールの中でCloudTalkは「Zoomのような成長は達していない」が、2020年における同社のサービスへの需要は「期待を上回るものだった」と述べている。最新のラウンドをそれが説明している。

The Exchangeはまた、私を含むソフトウェアオタクの間で急速に関心の高まっているトピックのサブスクリプション価格づけと利用量に基づく価格づけの対比について、同社が何らかの見解を持っているかどうかにも興味を持っていた(来週はAppianやFastlyなどからのコメントを交えてさらに個の話題をとりあげる)。同社によれば、CloudTalkは「基本料金に加えて利用量にも課金する」ということなので、価格設定の観点からは同社はハイブリッド企業である。CloudTalkは、その価格設定に関して「お客さまは、事前にいくら支払えば良いかを知りたいと考えますので、このやり方は双方にとってバランスが取れているやり方です」という。

心に留めておきたいスタートアップだ。外国人が自由に金融システムにアクセスできるようにすることに焦点を当てた、世界を相手にしたネオバンクのZolve(ゾルブ)も同様に心に留めておきたい。私は記事を書けなかったが、TechCrunchではカバーされている。詳しくはこちらから

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さて、ここ数日仕事中にテレビを見る時間がなかった人のために、Robinhood(ロビンフッド)の話をしておこう。それは議会公聴会に出席する羽目になったが、フィンテック巨人である同社のビジネスモデルに関するいくつかの論点を除けば、ほとんど退屈な内容だった

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先週は込み合うニッチなスタートアップ界にとっては、忙しい1週間となった。OKRのスタートアップにはさらに多くの資金が流れ込んだ、このことから、私たちの念頭には、将来的にVCたちが関連企業にも資本を投入するのではないかという問いが浮かぶこととなった。Public(パブリック)も数億ドル(数百億円)を調達した。予想通りだ。そしてローコードサービスのOutSystems(アウトシステムズ)は、1億5000万ドル(約191億5000万円)を調達した。いや、とんでもない1週間だった。

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その他のことなど

いくつかのデータを残しておこう。まず第一に、Clubhouse(クラブハウス)のメトリクスがようやく製品にまつわる誇大広告と一致し始めているということだ。人びとが人々は大挙して押し寄せ、その総ダウンロード数を1000万以上に押し上げている。

そして、私が見逃したニュースの中では、Substack(サブスタック)の登録者数が50万人を突破していた。すばらしい!

そして最後に。先週はシカゴを拠点とするKin(キン)という名の保険テックのスタートアップが、「総被保険者資産総額」100億ドル(約1兆531億円)を突破した。The Exchangeは同社にその経営状況を問い合わせた。結局のところ、50セントで1ドルを売れば、保険料のボリュームを増やすことは難しくはないということだ。

同社のRuth Awad(ルース・アワド)氏は、私たちの問い合わせに対して、同社の「損失率は53%、粗利率は32%」だと回答している。悪くない。保険テックが実験的なものから社会的成功を収めるまでにどれほどのスピードで進んできたのかを考えると、Kinは今後も注目したい企業だ。

最後に、週末には地元のヘビメタバンドの応援をお忘れなく(1234)。

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タグ:ヘルスケアThe TechCrunch Exchange

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

株式取引スタートアップに注がれる無限の資金

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。準備OK?ここではお金の話、スタートアップの話、IPOの噂話などをお伝えする。

先週の初めにTechCrunchは、消費者向け株式取引サービスのPublic(パブリック)がさらに資金調達を進めているという速報をお届けした。それに続けてBusiness Insiderが詳細に、そのラウンドの内容は12億ドル(約1259億円)の評価額の下で、2億ドル(約210億円)の調達になる可能性があると報じた。ラウンドを主導する可能性があるのはTigerだ。

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PublicはRobinhood(ロビンフッド)とは違う方向を目指すつもりだ。Publicは、たとえばソーシャルに焦点を当てたり、Robinhoodのビジネスモデルを牽引すると同時に批判を集めてきた「Payment for order flow」(ペイメント・フォー・オーダー・フロー、PFOF、一般顧客の取引手数料を無料とする代わりにその取引情報を機関投資家に売り収益を上げる手法)を取り止めたりすることで、それを実現するつもりなのだ。投資家たちは、ライバルであるRobinhoodのトラブルを受けて、Publicをユニコーンにする準備を進めている。

このPublicのラウンドは、規模とスピードの両方で衝撃的だったRobinhoodの派手な34億ドル(約3568億円)の調達に続くものだ。Robinhoodの投資家たちは、消費者のトレードをサポートし続けるために必要な資本を、同社が確保できるように力を合わせたのだ。Robinhoodの2020年第4四半期の好調な業績と、2021年第1四半期の予想される成長のおかげで、こうした後押し投資が意味を持つことになった。

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Publicの場合も同様に(1)同社がユーザー数の大きな成長を見とおしていること、そして(2)タイミング良く永続的なビジネスモデルを見出せたことによって、資金が集まろうとしているのだろう。2点目についてはコメントできないが、1点目については少し話すことができる。

実際のところ、それはPublicの手柄ではなく、中西部に展開し株式投資機能を提供する消費者向けフィンテックM1 Financeが招いた結果だ(詳細はこちら)。同社はTechCrunchに対して、2020年12月に比べて1月のサインアップ数が4倍になったと語ったが、直近の2週間では、その前の2週間の6倍のサインアップがあったという。

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M1が株式の直接的な売買を提供していないことを考えると(このことは同社がTechCrunchに対して繰り返し強調した)、私たちはM1と、PublicならびにRobinhoodの間に完璧な線を引くことはできないが、最近の投資に対して消費者の巨大な関心があることは推定することができる。このことは、長期的な収益を得るための方法を模索しているPublicが、調達を完了したわずか数カ月後に、また別のラウンドを行うことができる理由を説明するのに役立つ。

フィンテックにとって、貯金と投資が2020年いかに新しい動きだったのかという私たちのノートは、偶然にも予想以上に真実味を帯びてきている。

マーケットノート

週の終わりを迎え、Coupang(クーパン)は公開を申請した。第一報はここで読めるが、大きなニュースになりそうだ。また、IPOの流れでは、Matterport(マターポート)がSPAC経由で公開を行おうとしている。私はまたMetromile(メトロマイル)のCEOであるDan Preston(ダン・プレストン)氏に対して、彼のインシュアランステックのSPAC経由の公開について話を聞いたし、他にも同じようなことは進んでいる。

Oscar Health(オスカー・ヘルス)も申請をしたが、並外れて強そうには見えない。なので、そのもうすぐ数字が出される評価額は、一般のトレーダーたちを試すことになる。それはBumble(バンブル)が先週レンジを超えた価格をつけ取引開始後に価格が急騰したときに抱えていたような問題ではない。Natashaと私(彼女はEquityにも出演している)は、BumbleのCEOであるWhitney Wolfe Herd(ホイットニー・ウルフ・ハード)氏からメモをいくつか受け取っているので、改めてご紹介する予定だ(また、私はBBCとこのIPOについて何度か話す機会があった、これはとても良かったが、その最初のものはここで聞くことができる)。

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差し迫ったRoblox(ロブロックス)の公開もまた、先週ニュースになっていた。同社は、2020年考えていたものよりも多少大きくなった(良い話)が、上場は3月まで遅れそうだ(残念な話)。

IPO関連の話題では、Carta(カルタ)が、その収益が約1億5000万ドル(約157億円)に増えているというニュースが出る中で、最近自社の株式の取引を行うようになった。Cartaは悪くないが、プライベートのままではなく、本当にIPOをしてみてはどうだろうか?同社の評価額は調達を重ねるうちに2倍以上になっている

さて、先週はとりあげることのできなかったクールなベンチャーキャピタルのラウンドがたくさんあった。たとえばこのKoa Health(コア・ヘルス)のラウンドだ。そして、中身は何であれこのSlync.io(スリンク.io)のニュースもそうだ(初期段階のものを知りたければ、Treinta(トレインタ)、Level(レベル)、Ramp(ランプ)、Monte Carlo(モンテ・カルロ)らの最近のラウンドをチェックしてほしい)。

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最後に、Ontic(オンティック)へも言及しておこう。同社は「保護インテリジェンスソフトウェア」を提供し、その収益は2020年 177%成長したと述べている。私は共有される数字には感謝しているので、ここではその数字を強調しておいた。

その他のことなど

最後のトピックとして、ノーコード、自動化、コラボレーションの市場で活躍する公開企業のSmartsheet(同社もかつてはスタートアップだった)のCEOであるMark Mader(マーク・メイダー)氏からのメッセージをご紹介しよう。これは、ざっくりとしたまとめである。自分が関心があるので、私は2021年のノーコードトレンドについてメイダー氏に聞いてみたのだ。彼からのメッセージはこんな内容だ:

もし突然のリモートワークへのシフトが、米国企業のデジタルへのシフトを加速させたと思っていたとしても、実はまだ何も目にしていないのです。2021年にはデジタルトランスフォーメーションがさらに加速しそうです。働く人たちは2020年、さまざまな異なる技術に、一挙に晒されることになりました。たとえば初めてZoom(ズーム)やDocuSign(ドキュサイン)を導入した企業もあるでしょう。しかし、このシフトの多くには、会議や、文書への署名・承認などの、アナログなプロセスをオンライン化することが関わっています。しかし、このようなことは、あくまでも第一歩に過ぎません。

2021年は、企業が大規模なデジタルイベントを、自動化と再現性のあるインフラに接続し始める年となります。1人がある書類に署名することと、何百人もの人がそれぞれルールの異なる何百種類もの書類に署名することは違います。それもまた単なる一例に過ぎません。その他のユースケースとしては、人事ソフトウェアとプロジェクト管理ソフトウェアを連携させて、自動化されたリアルタイムのリソース配分を実現することで、企業は両方のプラットフォームをより活用することができるだけでなく、人材もさらに活用することができるかもしれません。このような複雑なワークフローを自動化して簡素化できる企業は、効率性とテクノロジー投資からのリターンが劇的に向上し、真の変革と利益率の向上への道を歩むことになるでしょう。

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

金持ち連中はなぜくだらない資産をやりとりしているんだ?

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準備はOK?ここではお金の話、スタートアップの話、IPOの噂話などをお伝えする。

大変な数週間だった。Robinhood(ロビンフッド)が、荒れ狂う市場の中でその手数料無料モデルを維持するために新しい資金調達を行い、他の新興取引業者たちはそのビジネスモデルを変更し、さらに多くのことが起きていた。しかし、こうしたスタートアップの世界の中に、どうにも腑に落ちない動きがあった。なぜ一部のお金持ちたちは、下らない資産の取引をしているのだろうか?

個人投資家が自分の取引アイデアを実践するのは構わない、これまでもそうだったし、これからもそうだろう。いつになっても変わることはない。しかし私たちは、Elon Musk(イーロン・マスク)氏やChamath Palihapitiya(チャミス・パリハピティヤ)氏のような人たちが、彼らの幅広い市場への影響力を利用して、一般の人たちに対して直接的または間接的に、愚かな取引を奨励しているところを目にしてきた。それは多くの一般人には、失っても構わないとはとても言えない額の損失が出るかもしれない取引だ。

たとえばマスク氏が繰り返しTwitter(ツイッター)に登場してはDoge(ドージ)を称賛することを考えてほしい。Dogeは極めて不安定でほとんど価値を持たない冗談のような暗号通貨の1つだ。あるいは、パリハピティヤ氏が公にGameStop(ゲームショップ)にお金を注ぎ込んだことを考えてほしい。彼は他の人たちよりもより良く準備を整えてそれに臨んだ。彼はそうして金を稼いだ。だがGameStopカジノをプレイした人の多くは、それほど幸運ではなかった。多くの人が余剰資金以上の損失を出している。

もちろんそれは買い手の自己責任だ。しかし私は、抜け目がなく資本力もある人間が、普通の人たちを、長期的なファンダメンタルズに裏打ちされていない、短期的リターンを狙った資産に誘導するのは好きではない。やれやれ。

そうそう、公衆への迷惑というテーマといえば、Hawley(ホーリー)上院議員は先週、大手ハイテク企業による中小企業の買収を阻止するアイデアを発表し、注目を集めている(同議員はトランプ元大統領支持者で先の米議事堂での騒乱にもひと役買っている)。さすが反乱に寛容な議員さんだけあって、とてつもなくまじめな提案というわけではなく、ユーモラスと言えそうなほど曖昧な書き方がされている。

しかし、私の個人的なブログで書いたように、大抵はうんざりさせるようなこの政治家から出てくる意見の何が問題なのかといえば、大規模なハイテク企業による小さい会社の買収を制限しようとする動きに、超党派的な関心があるということなのだ。スタートアップにとってこれは良い報せとはいえない。M&Aによるエグジットはスタートアップにとって重要な流動性イベントであり、最も多くの資金を持っているのは大企業だからだ。

スタートアップの評価額が下がることは、うれしくはない。だが米国の民主党と共和党の一部が、トップダウン形式のテックM&Aを弱体化させようとしていることは注目されているものの、その動きがスタートアップの評価額や資金調達に何をもたらすのかについてはほとんど注目されていないと思う。もしそうした指標が低下した場合には、大企業に対抗しようと働くスタートアップの数が減る可能性がある。

よく考えよう。

マーケットノート

Echangeは、再びUnity(ユニティ)CFOのKim Jabal(キム・ジャバル)氏に話を聞いた。それは単に好きなゲームや、嫌いなゲームについて冗談を言い合うためだけではなく、彼女が入社したときには非公開で今は公開された同社の財務責任者として、ジャバル氏がどのように考えているかを把握しておきたかったからだ。その中からいくつかご紹介しよう。

  • GAAPと非GAAP:直近の第4四半期の純利益についての質問を行った。これは、 一般に公正認められた会計原則(GAAP)を使って計算したものだ。それは株式報酬費用にある程度影響を受けている。ジャバル氏は、彼女のチームや投資家が非GAAPの数字をより重視していることを明言した。なぜかって?それが株式報酬費用のような非現金費用を取り除き、企業業績に異なる視点を提供するからだ。これはスタートアップのやり方としては標準的だが、彼女のコメントは、会社がIPO後に急速に成長していたとしても、使い慣れた数字を使い続けてなんの問題もないことを示している。もし成長が鈍化すれば、きっと変わることになるだろう。
  • COVID: 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)はこの先影響があるのだろうか?ジャバル氏によれば、彼女の会社が過去エンゲージメントの上昇を見たときには、結果的には以前の状態には戻らない傾向があったという。私はこれが、スタートアップやビッグテック企業の中の、新型コロナで加速されたすべての部分に当てはまるかどうかを知りたいと思う。もしそうであれば、非常に朗報だ。
  • 数字を把握しよう:ジャバル氏は、彼女の主要な指標は非GAAP営業利益率とフリーキャッシュフローであると語った(成長以外の数字では、と私からつけ加えておこう)。超明快で理解しやすい。スタートアップのCEOのみなさん、最新ラウンドについて話をするときには、同様の数字を用意していてほしい。

スタートアップといえば、私が注目していて最近増資をした会社の話をしよう。Deepgram(ディープグラム)という会社だ。私は、2020年3月に1200万ドル(約12億6000万円)を調達した同社のシリーズAを取材した。それが今回はTigerの主導でさらに2500万ドル(約26億3000万円)を調達しているので、これは大金がアーリーステージに投資されているおもしろい事例だと思う。ともあれ、Deepgramは音声認識の特定のモデルとその市場に賭けていたし、新しい投資は、その双方への賭けがうまくいっていることを意味している。

最近私はDatabricks(データブリックス)のCEOを話をした(最新のメガラウンドについてはこちら)、彼はAI、特にGAN(Generative adversarial networks、敵対的生成ネットワーク)NLPなどから得られた大きな利益について語った。私たちの読みは、AIやそれに類似したデータへのアプローチ方法がワークフローに浸透していくにつれて、さらにDeepgram的ラウンドが増えることが予想できるというものだ。

そして、フィンテック企業のPayoneer(ペイオニア)が上場されることになった。SPACを使ってだ。投資家向け説明会の内容はここから閲覧できる。Payoneerは、収益を上げないままSPACを経由して上場するわけではない。同社の2020の収益は3億4600万ドル(約364億6000万円)になると予想されている。ここで取り上げたのは2つの理由からだ。まず、スライドを読んでほしい。そして「なんでSPACのスライドはこうも読みにくいのだろう?」と自問してほしい。私には意味がわからない。そして次に、「なぜ彼らはこれまでのようなIPOを行わないのだろう?」と自問してほしい。数字は32ページと40ページに書かれている。私には理由がわからない。もし何かわかったら教えてほしい。もっとも良い答えを送ってくれた方には、イーロン・マスク氏お勧めのDogeコインを差し上げよう。

その他のことなど

最後に。TechCrunchが注目アプリに関する新しいニュースレターを発行する。書くのはSarah Perez記者だ。申し込みはここから。無料だ。

何か新しい曲を聴きたいときには、こんな曲はいかがだろう。ではまた。

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画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)