米国郵政公社がアマゾンなどのラストワンマイル配達契約を再検討か

宅配便がこれまでになく重要になっている今、米国郵政公社(USPS)は極めて不安定な状態にある。トランプ米大統領は、この国で最も好かれている政府機関に対して一人で戦争を仕掛け、USPSを「ジョークだ」と評し、ホワイトハウスが航空会社やホテル業界に実施しているような救済手段を受けたければ、その前に値上げするよう求めた。

USPSにとってAmazon(アマゾン)などの企業契約は、アマゾンのCEOであるJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏に長年不満を持つトランプ大統領にとって特に癪の種だ。トランプ氏は独立機関であるUSPSが企業に有利な条件を与えていることを長年非難しているが、USPSはその指摘をずっと否定し続けている。

そして今、UPSPは将来に向けて取組むべく、外部コンサルティング会社とともにラストワンマイルの配達契約を再検討している。FedEx(フェデラルエクスプレス)、UPSなどの宅配サービスについても行ったと報じられている。この戦略については The Washington Post(ワシントン・ポスト紙)が報じ、5~6人の匿名情報源を挙げていた。

今回の行動は、Louis DeJoy(ルイ・デジョイ)氏が郵政公社総裁に就任する前に起きた、同氏はトランプ氏に近いビジネスパーソンであるとともに、生地であるノースカロライナ州で近く行われる共和党全国党大会の資金調達責任者でもある。つまり彼は、USPSがかつての繁栄の日々に戻ろうとするには、責任者として理想的とは言えない人物だ。おそらくUSPSは、あらゆる選択肢の可能性を、トップ交代前に検討しておきたいに違いない。

USPS、ホワイトハウスともに本件にコメントしていない。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

米国郵便公社が崩壊したら、中小企業も潰れてしまう

eコマースに多大な悪影響が及ぶ

米国に引っ越して以来 、私は米国郵便公社(USPS)を、米国の創造力と粘り強さの象徴として認識し、賞賛するようになった。

USPSは電気、電話、高速道路システムのように、私たちのより大きなストーリーの一部であり、米国を一つに結びつける存在だ。しかしそれはまた、あって当たり前のものだと思われてしまいやすいものだ。USPSは、法外な料金を請求することもなく、毎日1億8190万通の郵便を配達している。もし住所を持っているのなら、それはすでにUSPSによってサービスを受けているということだ。そして住所を持っていることに対して料金を求められることはない。

企業の配送の最適化を支援するeコマーステクノロジープラットフォームであるShippoのCEOである私は、USPSとそれがeコマースへ与える影響に独自の視点を持っている。USPSは、Shippoの初期の頃から、成長するビジネスたちが配送をより行いやすくするための重要なパートナーだった。私たちがUSPSと協力しながら、他にもいくつかの新技術(サイトビルダー、電子商取引プラットフォーム、決済処理など)を導入した結果、中小企業にとってeコマースがこれまで以上に身近なものになった。

また、USPSの重要性についてこれから述べる私の意見は、私の会社と郵政公社との利害関係に基づくものではないが、Shippoがその収益の一部を、USPSの出荷ラベルを(他社の出荷ラベルと同様に)私たちのプラットフォームを通して販売していることから得ていることはまず述べておきたい。仮にUSPSが営業を停止した場合には、それはShippoの収益に影響を与えることになる。とはいえその悪影響は、当社に対するものよりも膨大な数の中小企業に対するもののほうが、はるかに大きなものになるだろう。

私たちがこのことを知っているのは、Shippoで3万5000を超えるオンラインビジネスの運営方法と顧客へのリーチ方法を直接目にしているからだ。私たちは販売者が支払い時に顧客に提示するオプションから、返品の処理方法に至るまで、その間のプロセスのすべてを知り、サポートしている。また、すべてのビジネス毎に、製品、顧客への対応と戦略が異なり、独自の展開が行われているものの、配送を行わなければならないという点は共通している。

米国では、この出荷の大部分は、特に中小企業の場合には、USPSによって助けられている。状況を説明するならば、USPSは世界の全郵便のほぼ半分を扱い、トップの民間配送業者たちが毎年運ぶ合計量以上のものを、わずか16日で配送している。そしてこれらすべては、従業員にヘルスケアと年金を提供しながら税金を投入することなしに行われている。

さて、多くの組織の場合と同様に、新型コロナウィルス(COVID-19)はUSPSに大きな影響を与えた。eコマースパッケージの出荷は増加し続けているもの(Shippoのデータに基けば、3月上旬から30%増加)、レターメールの大幅な減少を補完するには不十分なものだ。これに伴い私は「効率が悪い」という意見や、民営化を求める声、大幅な価格設定や構造改革を求める圧力、そしてUSPSが閉鎖される可能性に対する無関心な声さえも耳にしている。

だがこの危機の中で私たちは皆、今まで以上にUSPSとその重要なサービスを必要としているのだ。USPSが縮小または解体された世界で苦しむのは、Amazonや他の大企業(そしてShippo)ではない。もしUSPSを死なせてしまったら、それに伴って中小企業が殺されてしまうのだ。

USPSの効率性(またはその欠如)に関する意見は、かなり頻繁に、非常に狭い範囲で論じられている。もちろんUSPSは、面倒な配送ルートを回避し、価格を上げ、サービスを提供する相手を選択することで、バランスシートを改善し、営業損失を利益に変えるような方向転換を行うことができる。

ただし、その議論にはUSPSの全体像と真の価値が省かれている。一部の人々が非効率的な運用だと呼んでいるものは、実際には米国における中小企業の成長の鍵となる触媒なのだ。USPSは、規模、場所、財務リソースに関係なく、全国の企業にその顧客にリーチする能力を提供する。

USPSをバランスシート上の効率で厳しく評価したり、抽象的な「公共財」として評価したりすることはできない。私たちは、どれほど多くの中小企業が USPS のおかげで事業を開始することができたのか、いったい何千億ドルもの年間商取引が USPSによって可能になったのか、またUSPSがなければ商品を手に入れることができなかった消費者が、一体どれくらいいるのかに注目すべきなのだ。

米国では、eコマースの売上高は年間5000億ドル(約53兆7000億円)に迫り、毎年2桁のペースで成長している。eコマースの成長についての話を聞くと、Amazonが真っ先に出てくることが多い。だがあまり目立たないのは、中小企業の大いなる成長の部分だ。これは一般に、商取引の健全性に不可欠なものなのだ(独占を望むものはいない!)。実際、SMB(中小企業)セグメントは、Amazonと並ぶように着実に成長している。また、新型コロナウイルスで従来の企業が直面する課題によって、これまで以上に小規模企業がオンラインに移行している。

USPSのプライオリティメールは、米国のほぼどこでも2~3日で荷物を届けてくれる(平均配送時間はShippoのデータに基くと2.5日)。フルサービス(追跡、保険、無料の集荷、さらには無料の梱包さえ)が提供される1回の配送は、約7ドル(約750円)からスタートする。

消費者としての私たちが、オンラインショッピングで無料で迅速な配送に慣れている現在、USPSは中小企業が追いついていくために不可欠なものなのだ。消費者として、私たちがeコマースビジネスとやり取りするときに、その舞台裏を見ることはほとんどない。中小企業の経営者が自宅や小さな店先で注文を処理している姿は見られず、電子商取引のウェブサイトを見ているだけだからだ。USPS のサポートがなければ、中小企業のオーナーが消費者の高い期待に応えることはさらに難しく、場合によっては不可能に近いものになってしまう。状況を説明するなら、Shippoプラットフォームを利用している米国を拠点とする中小企業(月商1万ドル=約107万円未満)の89%がUSPSに依存している。

これまで私は、USPSとAmazonとのパートナーシップや、現在の状況に対する問題点、そして現在の問題点が民間モデルの下でどのように改善されるのかに関する多くの議論を目にしてきた。Amazonとそれがeコマース市場に与える影響については、私たち自身もはっきりとした意見を持っているが、AmazonはUSPSの課題を解決するための推進力ではない。なお事実としてはAmazonは、USPSの最も利益性の高い収益源である小包配送の、継続的な成長に対する主要な貢献者ではある。

USPSとAmazonの間の取引の正確な経済状況は不明だが、eコマースの配送おいては、量と効率性への引き換えに大幅な値引きが行われるのが一般的だ。Amazonの価格設定の一部は、平均的な配送業者と比較して、Amazonの注文を引き受けることが、USPSにとって実際に安くて簡単であることの結果として現れたものだ。このプロセスの場合、AmazonはUSPSの配送センターに貨物をまとめて配送する。これによって、USPSのコストと物流上の課題が大幅に削減される。

もしUSPSがなかったとしたら、Amazonは民間の運送業者と同様のプロセスと効率性について交渉することができる。だがこれは、中小企業にとっては不可能なことだ。USPSと民間配送業者の間の、日常の運用とインフラストラクチャの劇的な違いを考えると、中小企業が民間配送業者を使おうとした場合には、配送費が大幅に、場合によっては2倍以上に増加することになるだろう。これに加えて、USPSによる日常的なルートが存在しない状況で、中小企業が配送会社のシステムに荷物を取り込ませようとした場合には、新たな運用上の負担が発生することになるだろう。

全体として見たときに、米国では、もしUSPSがない、または利益優先の考え方で運営される民間のようなUSPSが使われる場合には、eコマースに対する起業家精神の勢いが削がれてしまうだろう。参入障壁はさらに高くなり、新しいビジネスにとって、最初に必要となるコストとインフラストラクチャ投資が大きくなる。Shippoの場合には、私たちの顧客が使用する配送業者の多様性がさらに大きくなるだろう。複数の配送業者を横断して最適化できるようにする当社の技術は、顧客企業にとってさらに重要なものになるだろう。ただし、そのような最適化を行ったとしても、依然として中小企業が最も苦しむグループだということには変わりはない。

現在、Shippoのデータによれば、ほとんどの中小eコマースブランドは、収益の10〜15%を配送に費やしているが、これは既に大きなコストを占めている。特に追加料金と集荷料金を考慮に入れると、これは優に20%を越える可能性があり、すでに厳しいスペースにいる企業にさらなる負担をかけることになる。

USPSは、中小企業が困難な時期に生き残り繁栄できるようにするための重要なサービスであり、市民がどこに住んでいたとしても、基本となるサービスにアクセスできるようにするための大切なものであることを、私は議員や指導者たちに強く訴えたいのだ。

これは、新型コロナウイルスの危機を乗り切るために、政府による財政的および精神的な支援が提供されるべきであることも意味する。こうすることで、USPSは従業員を保護し安全を保ちながら(それには最前線での仕事を適切な安全保護具を身に着けて遂行できることも含まれる)、中小企業と市民の両方にサービスを提供し続けることができる。

結局の所、USPSを単なるバランスシートと見なし続け、利益だけを見つめて最適化を行っていくならば、最終的に私たちは、手に入れるものよりも、はるかに多くのものを失うことになるのだ。

【編集部注】著者のLaura Behrens Wu(ローラ・ベーレンス・ウー)氏は、21世紀のeコマース向け発送プラットフォームを構築しているShippoの共同創設者兼CEOである。

新型コロナウイルス 関連アップデート

画像クレジット: Chad Springer (opens in a new window)/ Getty Images

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(翻訳:sako)

トランプ大統領、郵政公社にアマゾン配送料の倍増を要求

ワシントンポスト紙の新たな報道によると、トランプ大統領は郵政公社(USPS)のトップMegan Brennanに、アマゾンや他の企業の商品の配送料を上げるよう、個人的に圧力を加えた。

ネタ元は匿名だが、これまでのところ郵政公社の総裁はトランプ大統領の圧力に抵抗しているという。もし値上げが実施されると、オンライン小売やその他の企業にとって何十億ドルもの負担増になる。

ご存知の通り、いつからかアマゾンはトランプ大統領の攻撃の的となっている。3月下旬、大統領は自身のツイッターに「郵政公社に“何十億ドル”も負担させているのは“詐欺”だ」「もし郵便局が配送料を上げれば、アマゾンの送料負担は26億ドルに増える。この郵政詐欺をやめさせなければならない。アマゾンは本当のコストを(税金も)今すぐ払え!」と書き込んだ。

Brennanは、アマゾンのような企業との契約は郵政事業にとっていいものではない、という考えに反対の姿勢をとっているとされる。トランプ大統領とのミーティングで、アマゾンとの契約のメリットについて証拠を示し、また複数年にわたる契約を反故にするのは簡単ではないことも指摘している。

トランプのアマゾン攻撃は明らかに個人的な要素を含んでいる。何回にもわたって、少なくとも3月下旬に大統領がアマゾンとそのオーナーであるジェフ・ベゾスをツイッターで攻撃したことについての要約はこちらにうまくまとめられている。大統領のアマゾン批判は実際には2015年ごろに始まっている。ベゾスはワシントンポスト紙のオーナーでもあり、トランプは同紙の報道を事あるごとに“フェイクニュース”と声を大にして批判している。

郵政公社がアマゾンとの契約の料金体系について具体的に明らかにしていないのも、この問題を不透明なものにしている。公表していないのは、競合他社に“不当なアドバンテージ”を与える恐れがあるからだ。しかしながら、郵政事業が2017年に27億円の損失を出したという事実はあるものの、郵政公社はアマゾンとの契約で収益をあげているとも主張している。

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(翻訳:Mizoguchi)

郵便とAmazonの関係を非難したTrumpは米郵政公社の徹底調査を命令

大統領は昨晩(米国時間4/12)おそく、郵政公社(U.S. Postal Service, USPS)の評価を目的とする大統領令を発行した。その命令は、郵便サービスを“財政的に持続不可能”、と呼び、“特別調査団によるUSPSの財務と運営の徹底的な評価”を求めている。

Trumpはかねてから、郵便を標的にしてきた。その最初の攻撃的ツイートは2013年にさかのぼり、そのとき彼は、土曜日の郵便配達を廃止する計画を嘆いた。しかし最近では、郵便サービスは彼のAmazonに対するひたすらな攻撃の砲火を浴びてきたようだ。

12月にTrumpは、再びUSPSをTwitterで攻撃し、“1年に数十億ドルを失っているのに、Amazonなどに請求する荷物の送料があまりにも安く、Amazonをより裕福にし、郵便局をますます貧しく無力にしている”、と述べた。

ただしもちろん、AmazonとUSPSの関係は、それほど単純明快ではない

The New York Times言っているように、この大統領令はAmazonを名指ししてはいないが、しかしTrumpはこれまで、このオンラインリテールの巨人への攻撃を日に日に強めてきた。その怒りの多くはファウンダーのJeff Bezosに当てられたもののようで、彼はたまたまThe Washington Post紙のオーナーでもある。同紙はこれまで、大統領をおだてるような記事をあまり書いていない。

6月に彼は、Bezosをやっつけるときの二つのお気に入りの標的をくっつけたキャメルケース*のハッシュタグを作り、こう書いた: “ときどき、インターネット税を払わない(払うべきだ)Amazonの守護神と呼ばれる#AmazonWashingtonPostは、フェイクニュースだ!”。〔*: camel-case, 大文字小文字が入り混じって駱駝の背のこぶのようになっている綴り。〕

率直に言って、例をもっとたくさん挙げることは可能だが、でも先日本誌でTaylor Hatmakerが書いた記事のリンクをここに載せる方が簡単だ。この記事はTrumpのJeff Bezos攻撃ツイートを、すべて集めている。長いリストだから、のんびりくつろいでいるときにお読みいただきたい。ところで、大統領令の全文はここにある

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

郵便局が毎日あなた宛の郵便物のスキャン画像を配達前にメールで送ってくれる

Informed Delivery〔仮訳: 通知配達〕はアメリカ郵政公社(United States Postal Service, USPS)のサービスで、あなた宛の郵便物の外側をスキャンして、毎朝その画像をメールし、その後(その日のうちに)実際に配達をする。

USPSがこの無料サービスのテストを始めたのは1年あまり前だが、このほどやっと、(ほぼ)全国の居住住所に対して展開することになった。最初は主な大都市圏のみだが、4月14日からはそのほかのZIPコードのほとんどで可利用になる。

他人の郵便物を受け取らないためには、USPSに登録すると確認コードを通常の郵便で送ってくる。

郵便物の中身は実際に配達されないと見られないが、重要な手紙が今日届く/届かないことが分かると、ありがたい場合がある。

現在このサービスは、ふつうの手紙サイズの郵便物のモノクロのスキャン画像だが、今後は雑誌など、そのほかのサイズのフラットな郵便物が加わる。登録ユーザーは毎朝、最初の10通の郵便物の画像と、それ以上の郵便物があればそれらの画像のリンクを受け取る。

実はUSPSはメールの外観のスキャンを前からやっており、そのための自動化装置がZIPコードと住所による郵便物の分類(ソート)を行う。そのスキャン画像が、犯罪捜査のために、求めに応じて警察に提供されることもある

だからこのサービスを開始するための新しいハードウェアは要らないが、スキャンした画像を正しいアカウントにメールするソフトウェアは必要だ。

かつてOutboxというスタートアップが、郵便物の外と中をスキャンしてメールするサービスを提供していたが、需要が少なく、そして “郵便物のセキュリティ”を心配する郵便公社総裁の反対に遭って閉鎖した。

ご自分のZIPコードをここで入力すると、あなたの地区におけるサービスの可用性が分かり、ユーザー登録ができる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))