VTuber「ゲーム部」運営のUnlimitedがBrave groupへ社名変更、約8億円の調達と役員体制の刷新も発表

ゲーム部プロジェクト」など複数のVTuberチャンネルを展開するUnlimitedは6月16日、Brave groupへ社名を変更したことと共に、複数の投資家を引受先とした第三者割当増資により総額8億円を調達したことを明らかにした。同社では合わせてCI(コーポレートロゴやミッションなど)や役員体制も刷新している。

Brave groupは2017年10月に上⻄恒輔氏と野⼝圭登氏が共同で立ち上げた。これまでは2人が代表取締役を務めていたが新体制では上西氏が退任。代表取締役は野口氏1人(代表取締役CEOに就任)となる。またCSO/経営企画室室⻑を担っていた吉弘⽂昭氏が取締役 CSO、コーポレート本部⻑を担っていた舩橋純氏が執⾏役員 CFOに就任し体制面をアップデートしている。

加えて複数のVC・事業会社やエンジェル投資家から約8億円を調達し資金面も強化した。主な新規の株主は以下の通り。事業会社とはVTuberやバーチャル体験を絡めた事業上の連携も視野に入っているようだ。

  • アニヴェルセル HOLDINGS
  • AG キャピタル
  • セプテーニ・ホールディングス
  • みずほ成⻑⽀援第 3 号投資事業有限責任組合
  • efu Investment
  • gumi ventures3 号投資事業有限責任組合
  • マイナビ
  • ⽚⼭晃氏など複数の個人投資家

なおBrave groupではこれまでグリー子会社のWright Flyer Live Entertainmentや中国のBilibiliから資金調達を実施していて、累計の調達額は約10億円となった。

独自の制作フローで複数のVTuberチャンネルを運営

Brave groupの主力事業はVTuberを軸としたIP開発事業だ。30万人強がチャンネル登録しているゲーム部プロジェクトを始め、独自のキャラクターを活かしたチャンネルを複数展開する。

VTuberのプロデュースやマネジメントを手がけるスタートアップは複数存在するが、同社の特徴は漫画の原作を考えるような役割を担うプロデューサーを社内で抱え、最初の段階でストーリーやキャラクターといったチャンネルのキモとなる部分を入念に設計していること。それが固まった後にキャラクターを演じる“中の人”を探し、YouTube上だけでなく様々なメディアに展開できるIPを目指して一緒に作品を作っていくケースが多いという。

その観点からBrave groupではキャラクターユーチューバーの略で「CTuber」と表現している。

「VTuberでは中の人を務める声優さんの個性をそのままバーチャル化することが多いが、自分たちは別のやり方をしている。チャンネルやコンテンツの制作フローは漫画やアニメに近く、ビジネスモデルも(芸能事務所やYouTuberが所属する事務所などではなく)集英社などIPの会社をかなりベンチマークしながら取り組んできた」(野口氏)

今まではエクイティファイナンスで調達した資金などを用いてオリジナルのIPを100%権利保有する形で運営してきたが、直近ではナショナルクライアントや地方自治体からVTuberを起用したプロモーションの引き合いが強くなってきているそう。そこでチャンネルにスポンサードしてもらう形で資金提供を受け、IPを50%ずつ保有しながら共同でIPを育てつつ収益をシェアするモデルも始めている。

Brave groupが運営する主要チャンネル。数字は6月15日時点のもの

体制変更や業務フローの見直しを経て、次世代IPの創出目指す

VTuber関連の事業はここ1〜2年で急速に盛り上がってきた領域だ。複数のチャンネルが立ち上がり、キズナアイや輝夜⽉を始め人気のバーチャルタレントが生まれた。

関連するスタートアップも続々と立ち上げってきていて、直近でもBrave groupだけでなくActiv8(小学館やホリプロなどから約10億円調達)やカバー(複数VCなどから約7億円調達)、にじさんじ(伊藤忠商事などから約19億円調達)が億単位の資金調達を実施。大手企業がそれらのスタートアップに出資をしたり、オリジナルのVtuberを手がけたりする例も増えてきた。

その反面まだまだ未成熟な業界で、トラブルの話を耳にしたりすることもある。Brave groupのゲーム部プロジェクトに関しても昨年4月に声優との間で問題が発生し、業務辞退の申し入れがあったことが発覚。最終的には関係者で協議を行った末、4人の声優陣が交代したことも明らかになった。

同社からも発表されている通り声優スタッフとのコミュニケーションや業務マネジメント体制の部分に課題があったため、この1年ほどは冒頭で触れた社内体制の変更も含めて体制や業務フローの改善を進めてきたという。

「演者さんや(演者の)親御さんとの密なコミュニケーションや評価制度の見直しなどに加えて、月の動画制作本数の適正化も進めた。ゲーム部ではピーク時に月間で50〜60本の動画をアップしていたが、それが過度な業務負担の一因にもなってしまっていた」(野口氏)

また演者だけでなくチャンネルを応援しているユーザーとの間のコミュニケーションも見直すべき点があった。ゲーム部ではユーザー向けに適切な情報開示などを行わずに声優陣の変更を進めたことがわかったため、ファン離れにも繋がった。

昨年末には同じくBrave groupが手がける「ここあMusic(道明寺ここあ)」を担当していた声優がバンド活動へ専念することを理由に卒業。今年3月から新声優のもと「COCOA CHANNEL」に名称を変える形で再スタートを切ったが、その際には演者だけでなくユーザーに対しても情報共有をしっかり行うことで新チャンネルにも少しずつユーザーが戻ってきているという。

今回の資金調達は体制を変更し社名も新たにした上で、再度「世代を超えて親しまれるようなIPをスマホ・Youtubeから生み出す」ことを目指していくために実施したものだ。Bilibiliが既存株主に入っていることからもわかるように、ゆくゆくは日本だけでなくIPを世界で展開することも計画している。

調達資金はIPコンテンツ制作や採用・マーケティング活動へ投資をするほか、新規事業の開発にも用いる方針。具体的には芸能人のバーチャル化プロジェクト(バーチャルライバー)やクリエイターの人材紹介事業などを考えているという。

xRスタートアップのバルスがVTuberとARを組み合わせた謎解きイベントをラゾーナ川崎で開催中、好評につき期間延長へ

VRやARなどのxRテックのサービスを開発・提供するバルスは、神奈川県川崎市にある大型ショッピングモール「ラゾーナ川崎プラザ」で、AR空間に出現するバーチャルアーティスト(VTuber)からヒントをもらい、謎を解いていくという期間限定イベントを開催中だ。「ナゾトキバレンタイン」というタイトルで当初は2月16日までの開催予定だったが、好評につき3月1日までの延長が決まった。

バルスは、2018年1月設立のスタートアップ。池袋の映画館や渋谷のライブハウスなどで、バーチャルタレントの公開ラジオやライブを開催するなど人気を博している。バーチャルタレントはライブを開催する際、同社所有のスタジオで高精度なカメラを利用したモーションキャプチャーによってダンスや歌をパフォーマンスする。そのほか、小型カメラとPCだけで身体の動きを捕捉してバーチャルアーティストと連動させることが可能な「どこでもVTuber」、東京・銀座でバーチャルタレントが「ママ」として接客する会員制スナック「バーチャルスナック」をオープンするなど、xRを活用したさまざまなサービスを展開している。

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ナゾトキバレンタインをプレイするには、謎解きキットとAR対応のスマートフォン、スマートフォンに接続するイヤフォン、同社が無償配布している「SPWN AR」アプリが必要だ。

謎解きキットは、SPWN公式サイトで事前購入、もしくはポップアップストアの「SPWN Store」で当日購入する必要がある。価格は2800円。

ポップアップストアは、2月16日まではラゾーナ川崎プラザの2FのPLAZA East、2月17日〜3月1日までは同じくラゾーナ川崎プラザの5Fにある109シネマズ川崎に設置される。謎解きに登場するのは、バルスに所属するバーチャルアーティストである、風宮 祭、夜子・バーバンク、銀河アリス、MonsterZ MATEのコーサカとアンジョーの4組。

キットには、暗号(ナゾ)を解くためのキーワードを書き込む用紙などが入っており、暗号がわかったらバルスが無償配布している「SPWN AR」アプリにそのキーワードを入力すると、次の暗号の手がかりとなる動画を見られる。キーワードがわからない場合に備えて、ヒント動画も用意されている。

暗号を解く手がかりは、ラゾーナ川崎プラザ内のほか、VTuberの知識を動画で理解、SPWN AR内の動画を見るといった3つ方法がある。暗号は全部で5つあり、すべてを解き明かすっとエンディングのキーワードをわかるようになっている。なお、クリア画面をポップアップストアのスタッフに見せると、クリア特典として特別なARマーカーがもらえるほか、特典動画を見られるようになる。

このイベントは2月7日から開催されていたが、初日から謎解きキットを買い求める来場者が列を作るなど大好評を得ていた。謎解きイベント自体はショッピングモールや街中など各地で開催されているが、ARとバーチャルアーティストを使った新しい謎解き体験ということで、来場者の興味を引いたようだ。バルス所属のバーチャルアーティストのファンだけでなく、一般来場者も謎解きに参加していた。

 

xRテックのバルスが東京・銀座にバーチャルスナックをオープン

バルスは8月24日から、バーチャルタレントが「ママ」として接客する会員制スナック「バーチャルスナック」を東京・銀座にオープンする。

バルスCEOの林 範和氏

バルスは、VRやARなどのxRテックのサービスを開発・提供する2018年1月設立のスタートアップ。池袋の映画館や渋谷のライブハウスなどのバーチャルタレントの公開ラジオやライブを開催し人気を博している。例えば、9月21日の16時30分から東京・池袋のHUMAXシネマズで開催される「アメノセイ 1st LIVE -alone in the denshi-」は、1万9800円の特典付きプレミアムチケットがすでに売れ切れている。10月5日13時から東京・渋谷のVeats Shibuyaで開催される「富士葵 1st ソロライブ OVERTURE – 序曲 –」も、6800円のチケットが完売。なおバーチャルタレントは、同社所有のスタジオで高精度なカメラを利用したモーションキャプチャーによって動かしている。

バーチャルスナックは、東京・銀座にある「スナック十°」を隔週で借り切って営業。参加するには事前に同社のチケット販売サイト「SPWN」で税別4800円のチケットを購入する必要がある。このチケットは2ドリンク付きで、追加のドリンクは1杯1000円。ママへのドリンクは1杯2000円(特典付き)、ママへのリクエストは時価となる。チケットは20歳以上でないと購入できない。

風宮まつり

8月24日は、第1部が12時30分〜14時30分に開催され、風宮まつりがママを担当する。第2部は15時30分〜17時30分で、こちらのママは朝ノ瑠璃だ。その後、隔週土曜日の同じ時間帯に、さまざまなバーチャルタレントがママを務める。現在11月23日までスケジュールが決まっており、以降も続行していく計画だ。なお8月24日のチケットはすでに完売している。

朝ノ瑠璃

店内にはマイクとカメラが設置されており、もちろん双方向の映像と音声のやり取りが可能だ。店内ディスプレイにバーチャルタレントが映し出され、掛け合いを楽しめる。バーチャルタレントへのカラオケのリクエストなども可能。バーチャルタレントは、バルスが開発した「どこでもVTuber」と呼ばれるシステムを使って遠隔でママを務める。

実際に試してみたところ、違和感を覚えるのは最初の数分だけ。通信の遅延もほとんど気にならないので、自然なかたちで会話を楽しむことができた。バーチャルスナックは定員が10名程度と少人数で、バーチャルタレントと密度の濃いコミュニケーションを図れるため、ファンにとってはたまらないイベントになるだろう。

同社は、どこでもVTuberのシステムをバーチャルタレント向けだけでなく、法人向け接客ツールとしての販売も計画している。どこでもVTuberのシステムはノートパソコンとカメラ、マイクがあれば簡単に構築できるので、接客が必要な業務での採用が進めば、自宅はもちろん遠隔地で接客業務をこなすことができる。

ボイスチェンジャーも使えるので、性別や年齢も問わない。もちろん、メイクに時間をかける必要もない。バーチャルタレントは、エンターテインメントだけでなくビジネスの現場の働き方を変えるポテンシャルを秘めている。

どこでもVTuberのシステム。ノートPCとカメラ、マイクで構築できるので設置スペースをあまり取らない

スマホで全身をモーキャプし3Dキャラに反映、VTuber配信で利用可能な「Single3D」

ネクストシステムは3月26日、開発中の「VisionPose Single3D(Single3D)」のデモ映像を公開した。

映像からわかるように、Single3Dを使えば、スマホで全身をリアルタイムでモーションキャプチャーし、動きを3Dキャラクターに反映することができる。

Single3Dはネクストシステムが提供する「VisionPose」シリーズの1つで、WEBカメラとAIを利用して人間の骨格座標を検出するシステムだ。深度センサーに依存せず、ディープラーニングを使うことで骨格の3D座標の検出をWEBカメラ1台のみで可能にした。

モーションキャプチャを行う際は、通常、カメラを複数台用意し、対象にデバイスを装着する必要がある。だが、ネクストシステムいわく、Single3Dではカメラ1台で3D座標の取得が可能。

VisionPose Single3Dの検出ポイント図

デモ映像ではスマホのカメラを通して被写体の骨格をリアルタイムに検出し、アバターに動きを反映させた。

ネクストシステムは同社のVisionPoseシリーズが下記のような用途で利用されることを想定している。

  • フォームチェックや採点補助などスポーツの動作解析
  • 監視カメラを用いた不審者の検知や急病人の検知
  • 消費者の行動解析によるインサイト調査(無人レジなど)
  • VTuber配信やアーケードゲームなどエンタメ分野への応用

Single3Dの価格は未定だが、2019年6月に販売予定となっている。

提供方法は以下の通りだ。

  • PC版とiOS版をそれぞれSDKとして提供
  • PC版:C#/C++向けのライブラリ
  • iOS版:Swift向けのライブラリ

※Unityサンプルコードあり

キズナアイが参加するVTuber支援プロジェクト「upd8」運営のActiv8が6億円調達

バーチャルYouTuber(VTuber)など、バーチャルタレントを企画・運営・プロデュースするActiv8(アクティベート)は8月28日、Makers Fundgumiを引受先とした総額6億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

8月にユーザーローカルとCyberVが「VTuberが直近半年間で4000人以上増えた」と発表しているとおり、バーチャルタレント業界は今年に入り、急激に盛り上がっている。VTuber自体も増え、関連するサービスや取り組みも続々と現れている。4月にはグリーが総額40億円の「VTuberファンド」を開始、6月にはVTuber向け配信サービス「ホロライブ」運営のカバーが2億円を調達するなど、投資も活発だ。

4000体のVTuberが存在するといわれるこの業界で、Activ8ではバーチャルタレントによるUGC(User Generated Content:ユーザー生成コンテンツ)文化や関連産業の振興を目指し、個人・企業を問わずタレントを支援するプロジェクト「upd8(アップデート)」を運営する。upd8はバーチャルYouTuber人気ランキングでも上位常連のキズナアイも参加するプロジェクトだ。

upd8では、企業とのタイアップといった仕事をバーチャルタレントに紹介するエージェント機能の提供、コミュニティーの創出を行う。コミュニティーについては、リアル、バーチャルに関わらず、イベント実施など、タレントの活動する場を提供している。また、キャラクターの撮影環境についても、スクラッチで開発。サービスとして提供する。

Activ8代表取締役の大坂武史氏は同社の事業を「VTuber業界を活性化することを目的としている」と説明。つまり、UUUMなどのプロダクションがリアルなYouTuberの活動をさまざまな形で支援するのと同じようなことを、バーチャルタレントについて行うということのようだ。

「我々には“生きる世界の選択肢を増やす”という目標があって、その選択肢のひとつがVRの世界だと考えている。バーチャルタレントがVRシステムの上で活動できる舞台をつくり出すため、サイバースペースでのスタジオ事業も行っている」(大坂氏)

Activ8は2016年9月の設立。キズナアイをはじめとするVTuberたちを支援してきた。今年5月31日には、upd8をバーチャルタレントのサポート事業として公式にローンチ。支援プロジェクト、タレント募集を本格化した。

同社はこれまで資金調達については公表してこなかったが、Tokyo XR Startupsなどが既に投資をしており、今回の資金調達は3度目、シリーズBラウンドにあたる。

今回の調達では、VRに造詣の深いgumiと、世界規模でクリエイティブ産業への投資を行うMakers Fundが参加。大坂氏は「バーチャルタレントがVRシステム上で動けること、VR空間で価値創造を行うことにフォーカスしていきたい。人がVR空間で生産を行い、生きていくための仕組みづくりを目指す。また世界×エンタメ市場にも踏み出していくつもりだ」と資金調達の意図について説明する。

具体的には大きく3つの分野に投資する、と大坂氏は話している。1つめはバーチャルタレント支援のための人材確保だ。「トップVTuberのキズナアイの支援を通して、バーチャルタレントの価値の最大化を図りたい。リアルイベント開催やテレビ出演などに加えて、海外でもボーダーレスにチャレンジを応援することで、バーチャルタレントが活躍する場を広げる」という大坂氏。「バーチャルタレントもリアルのタレントと同様、タレントを中心とした360度ビジネス。そのためには、さまざまな場面に対応する人材が必要だ」と話す。

2つめは、upd8を通して、既存のバーチャルタレントとは違ったセグメントからタレントを発掘し、支援すること。大坂氏は「キズナアイ以外でも、バーチャルタレントが必要とされるセグメントはいろいろある」という。「男性タレントや教育コンテンツ向けのキャラクター、音楽などの芸能に特化したタレントなどは、まだ着手されていない領域。こうした分野のタレントも自社でプロデュースしていこうと考えている」(大坂氏)

3つめは、VRシステム自体の拡張だ。「“生きる世界の選択肢を増やす”という目標を掲げているので、VR世界で活動できることを増やしたい。VR内で撮影が完結するような仕組み、システムの開発も進めていく」と大坂氏。「バーチャルタレント支援の範囲の拡大とシステムの深掘りの両方向に投資していくつもりだ」と話していた。

グリーがVTuber専用ライブ配信サービス「REALITY」公開、ファン獲得と収益化サポートへ

昨日「バーチャルYoutuber(VTuber)が直近半年間で4000人以上増えた」ことを示す調査結果がユーザーローカルとCyberVより発表されたように、VTuber界隈が急激に盛り上がってきている。そんな背景もあって、TechCrunchでもVTuberを含めたバーチャルタレント関連の新サービスや新たな取り組みを紹介する機会が増えてきた。

これまでも大手IT系企業からスタートアップまで、さまざまな企業が各々のアプローチでこの市場に参入。中でもこの領域に特化した子会社を設立したり、「VTuberファンド」を立ち上げたりしているグリーはかなりアグレッシブだ。

そのグリーは8月7日、子会社のWright Flyer Live Entertainment(WFLE)を通じてVTuber専用のライブ配信プラットフォーム「REALITY」をリリースした。2018年秋にはスマホからオリジナルアバターを作成し、VTuberとしてライブ配信ができるアバタープラットフォームのα版「REALITY Avatar(仮称)」の公開も予定しているという。

本日公開されたREALITYはVTuberに特化したライブ配信サービス。ライブ配信サービス自体は決して真新しいものではないが、VTuberに限定している点が最大の特徴だろう。視聴者はコメントやギフトを通じてVTuberとの交流が可能で、3D着せ替えギフトにも対応する。

配信者は有償ギフトにより売り上げを獲得できる仕組み。REALITYでの配信に関する独占条項はなく、他の配信プラットフォームを利用することも可能だという。

冒頭でも触れた通り今は毎月続々と新たなVTuberがデビューしているものの、全てのVTuberがファンの獲得や収益化に成功しているわけではない。

WFLEによると「2018年7月26日時点で4300人以上のVTuberがデビューしているものの、2200人がチャンネル登録者数100人以下であり、2500人以上が1か月以上動画の更新がない状況」であることがユーザーローカルの調査でわかったようで、VTuberのファンとの交流と収益化を支援するべく、REALITYを提供するに至った。

REALITYではVTuber同士のコラボ配信を積極的に実施するなど、まずは月間で約60時間配信し順次拡大を目指す。また2018年秋にはスマホから誰でも簡単にVTuberになれるアバタープラットフォームのα版をリリースする計画だ。

同サービスではPCや専用機材は一切不要で簡単にカスタマーアバターを作成し、そのままREALITYでライブ配信ができる設計。アバターアイテムは毎月100個以上の新作を追加する予定のほか、すでに自作しているアバターをインポートすることも可能だという。

3Dキャラ作成がタダ、VTuberアプリ「Vカツ」公開 スマホ版も月内

eng-logo-2015IVRは、世界初をうたうVTuber支援アプリ「Vカツ」をSteamで公開しました。Windows 7 / 8.1 / 10に対応。スマホ版も8月中の公開を予定します。

Vカツは、3Dキャラクターの作成からアニメーション、さらには表情付けを無料で行えるツールです。顔・髪・体・衣装・アクセサリーなど、300を超える設定項目から自分だけのキャラクターを生成することが可能。人ではないアバター、例えばロボットなども生み出せます。

作成したキャラクターは、モーショントラッキングを備えるVRデバイス(HTC Vive / Oculus Rift / Win MR)で意のままに動かすことが可能。VRM規格に対応し、バーチャルキャスト経由でニコニコ動画やYouTubeでもライブ配信できます。商用利用も可能です。

「現在は300万円~400万円ほどが必要になるVチューバーアバター作成費用がなんと無料!Vカツは、コストを理由に作成を断念していたユーザーを後押しして、爆発的にVチューバーを生み出し 『Vチューバーの民主化』『1億総Vチューバー』を目指しています!」(公式ホームページより)

なお、Android / iOS版も2018年8月の配信開始を予定しているとのこと。

今回の配信開始を記念して、総数200点以上のアバターをカスタムできる追加パーツを「アバター強化パック」として無料配布。また、VTuberデビューに必要なVR機器をプレゼントするキャンペーンも実施するとしています。

Engadget 日本版からの転載。

スマホ1台でVTuberのように生配信、ライブ配信アプリ「Mirrativ」にアバター機能「エモモ」登場

今年に入ってバーチャルYouTuber(VTuber)の盛り上がりがすごい。

つい先日には大手芸能事務所のワタナベエンターテインメントにVTuberが所属するというニュースが話題になっていたけど、ユーザーローカルが公開しているランキングを見ていても、次々と新しいタレントが生まれ多くのファンを獲得していることがわかる。

IT業界界隈でもグリーがVTuber特化型のライブエンターテインメント事業を手がける新会社を、サイバーエージェントがVTuberに特化したプロダクションを設立するなど関連する動きが加速。以前紹介した「ホロライブ」を提供するカバーを始め、この領域で事業の拡大を目指すスタートアップも増えてきている。

VTuberが活気付いた背景には、テクノロジーの進化によって誰でもキャラクターになりきって動画やライブ配信ができるような環境が整ってきたこともあるだろう。自分の分身とも言えるアバターを使うことができれば、顔出しに抵抗がある人でも参加できるようになるし、普段の自分とは違ったキャラクターを演じやすくなる。

かなり前置きが長くなってしまったけれど、8月1日よりライブ配信プラットフォーム「Mirrativ」に追加された新機能「エモモ」はまさにそのような世界観のサービスだ。

スマホ1台でVTuberのように独自のアバターを作成し、生配信やゲーム実況ができることが特徴。まずはβ版として一部のユーザーから限定的に公開する。

アバターの作成からライブ配信やゲーム実況まで完結

Mirrativについてはこれまでも何度か紹介している通り、自分のスマホ画面を共有しながらライブ配信ができるプラットフォームだ。特にゲーム実況で使われているケースが多く、スマホゲームの配信者数では日本一の規模(2018年7月時点、ミラティブ調べ)になるという。

今回リリースしたエモモ(現時点ではiOS版のみ)はこのMirrativ上で使えるアバター機能という位置付け。Mirrativで配信できるスマホ端末が1台あれば、作成したキャラクターを声に合わせて動かしながら生配信することが可能。アバターの目や口、輪郭、髪型、髪や肌の色、洋服は自由に着せ替えられ、設定した喜怒哀楽の感情に応じて表情や動きも変化する。

iPhoneXや外部ツール等の特殊機材は不要。カメラ機能も使用しないため、自分の姿を配信に映すことなくキャラクターになりきれる。

すでにインカメラ等を使ってVTuber風に自分をキャラクターとして表示するサービスは存在するが、カスタマイズの自由度があり生配信まで完結する点、そしてゲーム実況と融合する点がユニークなポイントだ。

現段階でエモモを通じてできるのは、上述したことに加えてゲーム実況時に視聴者の画面上で配信者のキャラクターを表示すること。ミラティブ代表取締役社長の赤川隼一氏の話では、今後ユーザーの反応を見ながら「ボイスチェンジャー機能や、運営側で用意したモデルだけでなく自分で作ったものなどを持ち込めるような仕組みも検討していく」という。

同機能はまずMirrativのまいにち配信者(7日以上連続で15分以上配信している配信者)に向けて提供し、徐々に他のユーザーにも開放する予定だ。

独自の身体やアイデンティティを持つことで会話が豊かに

今回Mirrativにアバター機能を取り入れた背景には、多数の配信者が顔出しをせずゲーム実況をしていること、そして共通の好きなゲームを通じて繋がったユーザーの間で多くの雑談配信が生まれていることがある。

「海外のゲーム実況や韓国のMirrativユーザーの配信を見ていると顔出しをするのが多い一方、日本のユーザーは真逆で顔出しを好まない。エモモのイメージとしてはそこにTwitterのアイコンのようなサムネイルを提供するような感覚。ユーザーが独自の身体やアイデンティティを持つことで双方のことをもっと身近に感じ、コミュニケーションが豊かになるのではないかと考えた」(赤川氏)

赤川氏によると数ヶ月前からMirrativを使ってファンとコミュニケーションをとるVTuberが自然発生に出始めていたそう。実際にVTuberのゲーム実況を見てみると、実況中はキャラクターの顔が画面に写っていないにも関わらず配信が盛り上がっている様子を目の当たりにした。

「見ている人が配信者の声から顔や身体まで想像できるのであれば、仮に配信者が写っていなくてもその人のコンテンツとして消費される。これはバーチャルYouTuberに限った話ではなく、もっと普遍的なもの。Mirrativユーザーの体験をもっと良くできると腹落ちしたのでエモモの開発を決めた」(赤川氏)

ゲーム視聴時の様子。画面下にキャラクター(エモモ )が表示される

自分独自のキャラクターを作成できれば、顔出しをしないゲーム実況文化を豊かにするだけではなく、“なりたい自分”を表現しやすくもなる。赤川氏自身もディー・エヌ・エー(DeNA)で執行役員を務めていた際に「執行役員ぽく振る舞わないといけない、(SNSなどでも)うかつな発言ができない」といった考えが頭にあったそうだ。

もちろんそれも必要なことではあるけれど、現実のしがらみから解放されて好きなものを好きと言える空間もまた、個々人の人生を良くしていくためには必要だというのが赤川氏の考えであり、Mirrativを作っている理由でもある。エモモはこの空間をアップデートする上で重要な機能になるという。

ちなみにエモモという名前について見覚えがある人もいるだろう。もともとDeNA内で運営していたMirrativの事業を承継するため、赤川氏が設立していた会社の社名がエモモだった(現在はミラティブに変更)。

「Mirrativ自体がリアルタイムで人と人が話すことで熱量が伝わりどんどん仲良くなるサービスで、ユーザーの感情みたいなものを増幅させる装置として機能している。それを踏まえるとアバター機能によって身体を持つことはこの感情をさらに加速する行為であり、よくよく考えるとエモモという言葉にもハマるかもしれないと思った」(赤川氏)

社名を決めた当時からこのアバター機能を見据えていたわけではなく、メンバーからの提案で決まったそう。最初はないだろうと思っていたが、次第に「意外とエモモかもしれない」という思いが強くなっていったようだ(なおエモモはEmotional Modelingを略したものでもあるとのこと)。

スマホゲーム実況とアバターで世界へ

このエモモをひとつのフックとして、ミラティブではさらなるグローバル展開も見据えている。

「ちょうど先日韓国で初めて韓国語のバーチャルYouTuberが出てきたが、本質的に自分以外の何かに変身したいという欲求は人類の根元の欲求であり、グローバルでもポテンシャルはあると考えている。正しいサービスを作って正しく展開すれば、日本人が大勝ちできるチャンスのある領域だ」(赤川氏)

赤川氏の話ではライブストリーミングに関して先進国と言える中国ではゲーム実況だけがぐんぐん伸び続けているそう。5月にはライブ配信サービス「YY」の子会社でテンセントも出資していた「Huya(虎牙)」がニューヨーク証券取引所に上場するなど、ゲーム実況はグローバルにおいてホットな市場になっている。

スマホにフォーカスしたゲーム実況に取り組むスタートアップは海外で出てきているものの、大きく成功するには至らずまだ空いている分野だというのが赤川氏の見解。日本で活発な「バーチャルキャラクター」という概念を組み合わせることで、ユニークな存在にもなりうるという。

「自分としてはDeNA時代にソーシャルゲームのグローバル展開を本気でやって惨敗した経験がある。Mirrativはもう1回グローバルで挑戦する価値とその可能性がある事業。世界で受け入れられるようなプロダクト、機能を作り込んでいきたい」(赤川氏)

「cluster.」にVR上で有料イベントができるチケット機能、第1弾はVTuber輝夜月の音楽ライブ

2017年末あたりから、バーチャルタレント業界が急速に盛り上がってきている。

YouTube上で活動しているバーチャルYouTuber(VTuber)が一気に増え、多くのファンを獲得。ユーザーローカルが公開するVTuberのランキングを見ても、1位のキズナアイを筆頭にそのファン数や動画の総再生回数の多さに驚かされる。

今後バーチャル上で活動するタレントが増えれば、例えば握手会やライブといったイベント活動やグッズの販売など「リアルなタレントが行っているような商業活動」も本格化していくだろう。

VRイベントプラットフォーム「cluster.」が目指しているのも、まさに「バーチャル上の商業スペース」を作ること。その一歩として運営元のクラスターは7月12日より、cluster.上で有料イベントを開催できるチケット機能のβ版を公開した。

有料イベントの第1弾は、8月31日に開催が予定されている人気VTuber輝夜月(かぐや るな)の音楽ライブだ。

VR上で音楽ライブやコミケを

cluster.については過去に何度か紹介しているけれど、ユーザーがバーチャル空間上にルームを作り、イベントやライブを楽しむことができるプラットフォームだ。バーチャルなので広さや距離といった物理的な制約を受けないのが大きな特徴。数千名規模のイベントやカンファレンスにも対応する。

運営元のクラスターは2017年5月にエイベックス・ベンチャーズ、ユナイテッド、DeNA、Skyland Venturesおよび個人投資家らから2億円を調達。6月にcluster.の正式版をリリースした。

同社の創業者でCEOを務める加藤直人氏の話では、リリース以降ゲームやコミュニティのユーザー同士の会合、会社の会議など、幅広い用途で利用が進むも「どういうところでしっかりとビジネスを回していくのか」で悩んでいたという。

もともとcluster.を立ち上げた背景のひとつとして「VRヘッドセットを着けた時に、ここで音楽ライブができたらいいなと考えていた」こともあり、イグニスの子会社でVR領域の事業を手掛けるパルスと業務提携を締結。2017年の夏頃からバーチャルアイドルの活動サポートも始めていたそうだ。

「当初はバーチャルタレントがブームになるのは2〜3年後を想定していたので、長いスパンでの事業になると考えていた」(加藤氏)というが、冒頭でも触れたように一気にブームが到来した。

バーチャルタレントの場合、リアルなタレントとは違い握手会やオフ会などファンとの接点が少ないことが一つの課題。それを解決するために3Dアバターのアップロード機能などを拡充したところ、VTuberを中心とした利用が増えてきたという。

「VR上で音楽ライブやコミケができるようになる、そしてそれに自宅から参加できるようになるというのがひとつの目標だった。バーチャル上に商業スペースを作りたかったので、有料チケットやグッズの販売機能などは以前から準備に取り掛かっていた」(加藤氏)

輝夜月が「Zepp VR」でライブ開催へ

今回チケット機能のβ版がリリースされることによって、今後企業はcluster.を使ってバーチャル上で有料のイベントを開催できるようになる(現在は社数を限定し、問い合わせベースで提供)。

冒頭で触れた通り第1弾のイベントは、ソニー・ミュージックエンタテインメントが主催する「輝夜 月 LIVE@Zepp VR」。チケット価格は5400円となっていて、「高い」と思う人もいるかもしれない。

ただこの点について加藤氏は「そこでしか味わえない希少な体験を提供できれば成立しうると考えているし、むしろ安いとすら思われる文化になっていく可能性もある」という。

「(ネット上に)情報が増え、情報の価値自体は下がってきている。でもVRデバイスが届けるのは情報ではなく、体験。ユーザーが求めているのも体験であり、(デジタルコンテンツに対しても)希少な価値を感じることができればお金を払うと考えている」(加藤氏)

VR上でビジネスが成り立つ主要ジャンルは「ゲーム」「イベント」「成人向けコンテンツ」の3つというのが加藤氏の見解。クラスターが狙っていくのはこのイベントのニーズだ。

あくまでチケットはそのためのひとつの機能にすぎず、今後はバーチャルアイテムの購入機能を始め商業活動に必要な要素をアップデートしていく。

「バーチャル上の商業スペースのニーズは今後10年、20年のスパンで高まっていくはず。そこで必要となるインフラを作っていく。直近はバーチャルタレントがアーティスト活動をしやすい場所として機能を強化し、バーチャルイベントの箱となるサービスにしていきたい」(加藤氏)

VTuberになれるアプリ「ホロライブ」提供元が2億円を調達、今後はVTuber版「SHOWROOM」の開発も

バーチャルYouTuber(VTuber)向け配信サービス「ホロライブ」を提供するカバーは6月8日、グリーベンチャーズ、オー・エル・エム・ベンチャーズ、みずほキャピタル、個人投資家の千葉功太郎氏を引受先とした第三者割当増資により総額約2億円を調達したことを明らかにした。

同社では調達した資金をもとに専属VTuberのマネージメント体制の強化、ホロライブの開発強化を進める方針。なお今回のリード投資家であるグリーベンチャーズの堤達生氏がカバーの社外取締役に就任する。

もともとホロライブはVRデバイスを用いて3Dキャラクターを自由に操作し、インタラクティブな番組を配信できるライブ配信サービスとして2017年12月にリリースされたサービス。当時TechCrunchでも紹介している。

カバー代表取締役の谷郷元昭氏も「(サービスローンチ前は)VTuberの流れがまだできていなかったので、サービスの説明をしてもIT業界の人はポカーンとしていた」と話すように、2017年末から2018年にかけて日本国内でVTuberがトレンドに。

カバーでは当初LINE LIVEや17 Liveでのライブ配信をメインにしていたが、徐々に録画したコンテンツをYouTubeに配信するなどしながら事業を拡大してきた。

ホロライブのアプリ自体もスマホやPC、HTC Viveを使ってキャラクター(Live2Dと3Dに対応)になりきり、動画やライブを配信できるVTuber向け配信サービスとしてアップデートしている。

「ブログが普及して『出版革命』が起き、一般の人でも自分の文章やコンテンツを発信できるようになった。同じようにこれまで3DCGのアニメーションを作るのは難しかったが、それが簡単になり誰でもキャラクターになりきって動画やライブ配信ができるようになってきている」(谷郷氏)

またカバーではホロライブの開発に加えて、専属のVTuberをマネージメントする「VTuber事務所」のような機能も持つ。現在は約15万人のチャンネル登録者をかかえる「ときのそら」や「ロボ子さん」を展開するほか、6月1日には6人の専属バーチャルYouTuber「ホロライブ一期生」がデビューしている。

引き続き配信プラットフォームであるホロライブと専属VTuberのマネージメントがカバーの軸となるが、VTuberとして活動したい個人を支援するプラットフォームとして、今後は自社でコンテンツの視聴までできる仕組みも作っていきたいという。

「それこそVTuber版の『SHOWROOM』のようなプラットフォームを作れないかなと考えている。(カバーでは)今まで配信する仕組みだけを作っていたので、視聴まで完結できるような環境を整えたい」(谷郷氏)

カバーは2016年6月の設立。これまでも2017年8月にみずほキャピタル、TLMおよび個人投資家数人を引き受け先とした総額約3000万円の資金調達を実施している。

3Dアバター向け汎用規格「VRM」発表。「人格の許諾情報」や一人称視点に対応

eng-logo-2015ドワンゴが3Dアバター向けの汎用ファイルフォーマットVRMをオープンソースで公開しました。

VRMはいわゆる「VTuber」の配信やVRゲーム、チャットなどで使うアバターに特化した、プラットフォーム非依存のファイル形式。

3Dモデルとしてのテクスチャやボーンといった情報に加えて、視線設定など一人称で操作するアバターに必要な情報を扱えるようにし、環境により異なるスケールや座標系などを統一することで、アバターを作りやすく使いやすく、お気に入りのアバターを配信でもゲームでもプラットフォームを跨いで使えるようにすることを目指します。

人が操作して人格をまとわせるアバターの特性を考慮して、このアバターを演じて良いか(人格を与えることの許諾)、このアバターで暴力表現をしても良いか、性的表現は良いか、などの「人格に関する使用許諾」までをファイルに埋め込むことができるのも大きな特徴です。

VRChat や VTuber (バーチャルユーチューバー転じてVR配信者総称)界隈が恐ろしい勢いで進化し続け、「自分用のVRアバターを持つ」ことがSNSアカウントのアイコンを設定する程度のことに近づく気配すらある昨今ですが、アバター用のデータ形式はこれといった統一規格がなく、各アプリやサービスごとに汎用の3Dモデル形式を読み込んだのち、環境によって異なる機能や作法に応じて調整する必要があります。

ドワンゴが提案するVRMはこうした状況に対して、アバター特化の簡便なファイル形式をオープンソースで公開することで、プラットフォームを跨いだアバター利用や作成、配布を助けることを目指した規格です。

具体的には、OpenGL規格を策定するKhronosグループによる汎用3DフォーマットglTF2.0に、アバター用途に特化した独自拡張と、扱いやすくするための制約を加えたフォーマットになります。

主な特徴は視線や表情など、人が一人称操作するアバターに特化した情報に対応すること。また1ファイルにアバターのサムネイル画像、「アバターの人格に関する許諾」メタデータまでを含み扱いが容易なこと。

視線情報は、VRヘッドセットなどを使ってアバターをまとう際、どこが目なのか(どこから見えるのか)、一人称視点で視界を妨げないようどの部分を消すのか、また外から見た際の目線の動かし方など。

「アバターの人格に関する許諾」は、表示だけでなくそのアバターを演じることを許すのか拒否するのか、許す範囲を記述できるユニークなメタデータ。被って演じても良いけれど暴力表現はダメ、あるいは性的表現はダメ、というフラグもあります。

再配布や改変などについては、著者名表記や改変時の同一条件配布などを定めたCreative Commonsや、そのほかのライセンス形式を設定できます。

ドワンゴではVRMのドキュメンテーションと、Unity標準実装をMITライセンスで配付中。

先日開始したVRライブコミュニケーションサービス「バーチャルキャスト」のアバターでVRM形式を採用するほか、立体投稿共有サービス「ニコニ立体」でVRM形式の投稿を受け付けています。

「フォーマットが乱立してるから扱いやすいプラットフォーム非依存の新形式を考えました!」と宣言してマイナー方言を一つ増やしたあげく真っ先に消える例もままありますが、VRアバターに特化してオープン採用を目指すのは非常にユニークな動き。VRアバターによる表現やコミュニケーションの分野が猛烈な勢いで独自の進化を遂げつつある日本から、今そこにある不便を解消しつつ、将来と世界に向けたオープンフォーマットとして提案されるのは実に興味深いところです。

髪型を変えたり服を選ぶ感覚でアバターを持ち、コミュニケーションでもゲームでも同じ「自分」を維持できる将来像は確かに魅力ですが、成否は今後この動きに追従してVRMに対応するサービスやアプリケーションが増えるかどうかにかかってきます。多種多様な商用VRサービスが普及する将来に向けて、現在の閉じたゲーム世界ですら巨大市場になっている「アバターアイテム」の扱いがどうなってゆくかも注目です。

Engadget 日本版からの転載。

グリーが総額40億円の「VTuberファンド」開始、1号案件は米国の3Dアバターライブ配信サービス

つい先日バーチャルYouTuber(VTuber)市場への参入を発表し、今後1〜2年で100億円規模の投資をしていくと発表していたグリー。具体的な取り組みの第1弾はバーチャルYouTuberを育成し、動画番組を制作するプロダクション事業だったが、第2弾として投資プロジェクトを始めるようだ。

グリーは4月17日、国内を中心にバーチャルYouTuberに関連するクリエイターやスタートアップ企業へ投資する「VTuberファンド」を開始することを明らかにした。規模は総額40億円の予定。なおVTuberファンドはあくまでプロジェクト名であり、投資組合の組成や子会社設立を伴うものではない。

VTuberファンドでは、市場拡大に向けてイラストレーター、声優を中心とするクリエイターの支援に力を入れていく方針。直接的な支援だけでなく、収録・配信スタジオの提供やバーチャルYouTuberプロダクションなどへの出資、協業先企業などとのジョイントベンチャー設立にも取り組む。

また1号案件として米国に拠点を置くOmnipresenceへ出資することを発表。同社はスマホのカメラから3Dアバターを使ったライブ配信ができる「Facemoji」を開発するスタートアップだ。Yahoo!出身の元プロゲーマーとAdobe出身のメンバーが2017年3月に共同で創業した。

海外では拡大するゲーム実況市場において3Dアバター実況への期待もあり、Facemojiはその領域でサービスを展開。今後はAR/VRなど多方面にも広げていく予定で、グリーでは日本国内におけるサービス開発での提携も検討していくとしている。

グリーはバーチャルYouTuber特化型のライブエンターテインメント事業を担う新会社「Wright Flyer Live Entertainment」を4月13日に設立。冒頭でも触れたとおり、今後バーチャルYouTuberの発掘・育成や関連事業へ100億円規模を投資するとしていた。そのうちの40億円を今回のVTuberファンドへ投じ、市場拡大を目指す。