11月11日、12日に開催されたスタートアップに関する日本最大規模のイベント「TechCrunch Tokyo 2013」。イベントの目玉の一つは海外の注目スタートアップの創業者が語る「ファウンダーストーリー」だ。そのうちの1社はWebサイト構築サービス「Weebly」。CEOのDavid Rusenko氏がサービスのローンチからこれまでの歩みを語った。
WeeblyはWebブラウザから誰でも簡単に高品質なサイトを作れるサービス。英語圏で特に人気を集めており、Weeblyで構築されたサイトの数は1500万に上るという。
最近、日本でもWeeblyで自分のサイトを作っている人を見かけるようになり、一気に盛り上がったサービスと思われがちだが、その歴史は意外と長い。ローンチは2006年2月のことだった。
当時、創業者の2人はペンシルバニアにある大学に通っていた。1日あたりの新規ユーザーは最も多くて12人。8カ月後、ネット掲示板にポストしたり、友人に声をかけたりしたが、それでも月間の新規登録ユーザーは最大30人程度だったという。
ベンチャーキャピタル「Y Combinator」のプログラムに応募したのは、なんと締め切り1時間前だったという。「2時間前に気づいて、ギリギリのタイミングだった」とDavid氏は明かす。
その1カ月後、米TechCrunchにWeeblyの記事が掲載され、アクセスが跳ね上がった。1000人ほどが新規に登録してくれた。同時期にY Combinatorから合格を告げる電話があった。David氏は共同創業者と一緒にサンフランシスコに行こうと思い立った。「でもパートナーの回答は『お母さんに相談しなきゃ』だったんだ(笑)」。だが結局、揃って大学を中退し、サンフランシスコに移り住むことにした。
メディアに掲載されるとアクセス数のグラフは上がる。しかし時間がたてば落ち込んでいった。1日に50〜60ユーザーの時期がまた続いた。2007年1月、サンフランシスコで2部屋のアパートを事務所代わりに借りた。まさに1日中、24時間プログラムをしていたが、David氏は「デスクからサンフランシスコベイが見られて、悪くない環境だった」と淡々と話す。
この頃、Weeblyの同時ログイン数はほとんど3人しかいなかったそうだ。「しかもそれは自分たちのことだったんだ(笑)。その数字が『4』になった時は興奮した」と楽しそうに振り返る。そして再びTechCrunchに取り上げられた。一時的にアクセスが上がったが、やはり再びまた下がっていった。
2007年4月、サービス開始から14カ月後、銀行に100ドルしかないという状況に陥った。「どうすればいいかわからなくなった」とDavid氏は打ち明ける。しかし、まもなく資金調達に成功。65万ドルの資金を得た。
5月にはNewsweek誌に取り上げられた。「非常に大きな瞬間だった。紙媒体とオンラインの2回大きな波が来た。でもやっぱりまた落ちていった。15カ月たっても、結局うまくいっていなかった」。
8月、TIME誌で2007年のベストウェブサイトに選ばれた。多くのユーザーが訪れたが、また去っていった。「ほとんど人を引きつけられていない18カ月間だった」とDavid氏は振り返った。
「たぶん多くの人は2〜3カ月で諦めるだろう。でも私達は1年半が過ぎても諦めなかった。そうしたら20カ月目に突然、数値が上昇し始めた。マーケットにフィットする製品になったんだ」
2008年7月、初めてちゃんとしたオフィスに引っ越した。しかし12月にはまた問題が起きた。「銀行の残高のグラフは下がる一方だった。経済的に悪い状態に近づきつつあり、かなり厳しい状況だった。膝を突き合わせて、来月の給料をどうしようかと話した」。
幸運にもこの危機を切り抜け、1月は黒字に転換した。それ以来、良い方向に進んでいるという。2010年2月、数字は激しく伸びていた。2006〜2007年にTechCrunchなどのメディアに取り上げられたのは「ちょっとしたことだった」(David氏)と思えるようになった。当時のアクセスの急増はいまやただの誤差のように見える。
2011年3月、サービス開始から約5年後にベンチャーキャピタル「Sequoia Capital」と契約。そして2013年11月現在、毎月1億4000万人がWeeblyで構築されたサイトを訪問している。これは米国のインターネット人口の25%が使っている計算だ。
Weebly創業を通して学んだ3つのこと
2006年2月から7年半余りが過ぎた。David氏がWeeblyの創業を通して学んだことは大きく3つあるという。
「まず一番重要なことは、やめてしまったら成功にはつながらない。ローンチ後2カ月ほど経ってうまくいかないと、「やめてしまおう」となることが多い。私たちの場合もそうだが、やはり一気に成功することはない。多くの企業がそういう道のりを辿っていると思う。Pinterestの創業者がよく言っていたが、彼も創業前に何年何年もアイデアを出し続けてきた。最終的には成功したが、苦しい時期もあったそうだ。でも、やめてしまっては成功しない。もちろん悪いアイデアをずっと煮詰めても仕方ないが、やはり悪い時期があってもやめてはいけないということだ」
「起業するときはマーケットにフィットしているかどうか、自分たちが作ろうとしている製品を本当に一般の人々が使いたいと思うかが重要だ。これができないと最大のリスクになる。法人化するとか、特許を申請するとかよりも、まず最初に重要なのは、ユーザーに出してみて、ユーザーの受けはどうかということ。私たちの場合も、調子のいい時もあれば悪いときもあったが、ユーザーからいろいろなフィードバックが出てくるので、それを改善していった。その作業を続けることで、ある時点で本当に気に入られて、一気に成功に向かっていくはずだ」
「Gmailの開発者が、常々こう言っていた。『アドバイスというのは、一般論を大袈裟に言っているだけであって、ある意味、非常に限定的なものだ』と。私は常にこれを念頭に置いている」