【コラム】WeWorkはサービスをバラ売りすることで立て直しを図っているがその戦略はうまくいくのか

長年にわたり、WeWork(ウィーワーク)はテック企業と不動産企業のどちらに分類されるかという議論があった。WeWorkについて大部分の人々は当初、テック系スタートアップを装った不動産系スタートアップだと考えていた。

WeWorkが多くの不動産を手に入れることで、その分類は曖昧になっていった。そしてご存じのとおり会社の評価額が急落したため、IPO計画が白紙となった。現在、SPAC株式を公開することがうわさされているWeWorkの評価額は100億ドル(約1兆894億円)だが、2019年1月にSoftBank(ソフトバンク)によるシリーズHラウンドで10億ドル(約1089億円)を調達後の470億ドル(約5兆1204億円)という評価額と比べると、評価が大幅に下がっている。

Adam Neumann(アダム・ニューマン)氏は、傲慢でお粗末な経営について批判を受けた共同創業者で当時のCEOだったが、その年の後半に辞任したことで有名だ。それ以来、WeWorkは名誉を挽回し、投資家や一般の人々の印象を良くしようと努力してきたことはよく知られている。

Marcelo Claure(マルセロ・クラウレ)会長は、5年にわたる戦略的再建計画を2020年2月に作成した。窮地に立つ同社は同じ月に、新しいCEOにテック系ではなく不動産を担当する幹部を指名したことで話題になっている。

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WeWorkはその後、評価額の引き上げと投資家の信頼回復を目指した計画の一環として、2022年までにフリーキャッシュフローの黒字化という目標を再設定した。

ライバルのKnotel(ノテル)が経営が悪化したため破産申請し、投資家に資産を売却するのを目の当たりにし、ノテルの失敗から教訓を得るべきだとWeWorkは気づいたようだ。

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ここでふと、WeWorkは本当に危機を脱したのかという疑問がよぎる。

オープンしていないロケーションや採算がとれないロケーションからWeWorkが撤退した件数は、再建計画の策定以降で100件を超えるという(同社のウェブサイトによると、世界中に800件以上のロケーションが残っている)。さらに、WeWorkの純損失は、2019年第3四半期の12億ドル(約1308億円)から2020年第3四半期には5億1700万ドル(約563億円)に減少した。

一方で収益が悪化した原因は、新型コロナウイルス感染症の影響と思われる。2019年第3四半期に9億3400万ドル(約1018億円)だった収益が、2020年第3四半期には8億1100万ドル(約884億円)に減少した。

WeWorkはパンデミックで苦戦を強いられているが、これはチャンスであるという意見もある。

テレワークでの業務により、人との距離を保たなければならないため、ほとんどのオフィススペースは苦戦している。WeWorkもこの状況を乗り切らなければ、評価額や収益に大きな打撃を受ける可能性が高い。

世界中の不動産会社と同じように、WeWorkも頭を抱えている。テレワークが一時的なものではなく、多くの企業が今後も継続していく方向性を検討している状況であるため、物件の所有者も対応しなければならない。

たとえばMcKinsey(マッキンゼー)が最近指摘したように、物件の所有者には柔軟性がさらに求められ、テナントのリース契約を考え直すことを余儀なくされている。つまり、商業不動産スペースの経営者には、WeWorkのような柔軟性が必要であるということだ。

状況に適応しようとすでに動き出しているWeWorkは、同社の会員専用プランがうまくいっていなかったことに気づいた。会員数が減少していることからそれは明らかだ。そのため同社は、On Demand(オンデマンド)オプションとAll Access(オールアクセス)オプションを新設することで、多くのユーザーに建物を開放することにした。例えばテレワークにうんざりしている人に対して週に1回、仕事をする場所を提供することが目的だ。さらにWeWorkは企業や大学と協力し、オールアクセスの特典としてオフィススペースを提供するチャンスや、学生に学習場所を提供するチャンスを見いだした。

たとえばジョージタウン大学は、WeWorkとかなりユニークなパートナーシップを結んだ。WeWorkのロケーションの1つを「ジョージタウン大学の代替図書館および共用スペース」として提供している。Brandwatch(ブランドウォッチ)などの企業も最近、これまで使用してきたWeWorkのスペースの代わりにオールアクセスのパスを従業員に渡して、世界中にあるWeWorkのロケーションを利用するようにしている。

WeWorkは2021年初めに、週末と営業時間外にスペースを使用する予約サービスも新たに始めた。

スペースのバラ売り

筆者はWeWorkの新戦略について、Prabhdeep Singh(プラッブディープ・シン)氏から話を聞いた。同氏はWeWorkのマーケットプレイスグローバル責任者で、新しいサービスを統括し、WeWorkのオンライン化に向けて指揮をとっている。

「私たちが取り組んでいるのは、スペースをバラ売りにすることです。これまで当社のスペースを利用するには、サービスがまとめられたサブスクリプションと、月額制の会員サービスしかありませんでした。新型コロナウイルス感染症によって世界が変わりつつあるため、当社のプラットフォームをより多くの人々に開放し、できる限り柔軟に利用できるようにしました。例えば、部屋を30分だけ予約したり、1日利用券を購入したりできます。いろんなユースケースが可能です」と彼は述べた。

シン氏によると、2020年8月にニューヨーク市でオンデマンドサービスが試験的に開始されて以来、サービスの需要が着実に伸びており、2020年第4四半期と比べて予約数は65%、売上は70%増加している。ただし、これはまだ初期段階で、サービスは小規模に開始されたにすぎない。オンデマンドサービスの予約のほぼ3分の2はリピーターによるものだと、シン氏は付け加えた。

「私たちは1年半をかけて、注力するべきものとそうでないものを真剣に考えてきました。スペースを柔軟に提供する企業として、今後の状況を注視しています。商業オフィススペース業界で当社は小さな存在にすぎませんが、テクノロジーを駆使しつつアプリを改善しながらスペースのデジタル化を進め、柔軟にワークスペースを提供できるように取り組んでいます」とシン氏はいう。

今のところ、わずかながら状況はよくなっているようだ。WeWorkによると、2月のアクティブユーザー数は1月の約2倍になった。勤務時間外に利用することを希望するユーザーが多いようで、週末の予約数が予約全体のおよそ14.5%を占める。

WeWorkによると、既存メンバーがパンデミック期間中に、すでに利用しているプライベートオフィススペースに加えて、2020年2月にオールアクセスパスを購入した件数は1月の2倍になった。

新型コロナウイルス感染症の流行が始まった頃、WeWorkの利用を中止する数が多かったのは大企業の会員よりも、中小企業(SMB)会員だった。SMBはその事業の性質上、キャッシュフローを迅速に管理することが必要であるというのが一因だが、2020年第3四半期には、SMB向けの売上高が第2四半期に比べ50%増加した。

WeWorkを使用する大企業の割合は、パンデミックの期間中にSMBの2倍近くになり、現在ではWeWorkの会員数の半分以上を大企業の会員が占めているのは興味深い。

WeWorkは特定の市場で不動産に新たに投資する速度を緩めるのと同時に、物件を売却することで規模の「適正化」に取り組んでいる。

WeWorkの財務状況に関して言えば、3月2日時点で、同社の債権は株式公開に失敗した2019年夏以来の高値で取引されているという。これは、下落率が約28%の52週安値から大幅に上昇している。

「利回り約10%に対して約92%となっており、債権者は明らかに肯定的に反応しています。ワークスペースを提供するWeWorkの柔軟なサービスが、不動産の将来において有望な役割を果たすという市場全体の信念を、債権者の反応が証明しています」とスポークスマンはTechCrunchに語った。

2020年の3月、WeWorkの債権1ドル(約110円)に対して43セント(約50円)で取引されており、S&P Global(S&Pグローバル)はWeWorkの信用格付けを「投資不適格」に引き下げ、さらなる格下げを警戒して同社に目を光らせている、とForbes(フォーブス)誌は報じた。

この状況にWeWorkは適応しきれていない。シン氏がTechCrunchに語ったところによると、WeWorkの価値提案をさらに拡充するために「Business in a Box(ビジネス・イン・ア・ボックス)」の提供に取り組んでいるという。2020年末、WeWorkは複数の企業と提携し、SMBやスタートアップに給与計算、ヘルスケア、ビジネス保険などのサービス提供を開始した。

「WeWorkを利用するユーザーの多くがビジネスを拡大させています。当社はビジネス面での主要サービスを提供し続けています。その一方で、中小企業で管理が煩雑になりやすく、コストがかかる人事などの重要な分野でも、サービスをさらに提供できるように取り組んでいます」とシン氏はいう。

さらにWeWorkは、オンデマンドのサービスをグローバルに提供することで、世界中のWeWorkのスペースでユーザーが仕事を進められるように尽力している。

「現在、テレワークの実験が最大規模で進められています。今後、職場に復帰する実験が最大規模で始まるでしょう。当社は非常に有利な位置にいると言えます」とシン氏は述べた。

WeWorkは、一歩先を行く不動産会社になろうとしているようだ。アダム・ニューマン氏が同社を率いていた頃ほどの派手さはないかもしれないが、需要がある安定した会社になりつつある。ただ、多くのことをあまりにも短い期間で進めようとしているのではないか?

今後の展開が楽しみだ。

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タグ:WeWork不動産コワーキングスペースコラム

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Dragonfly)

ソフトバンクの好調な決算報告から同社が語らないWeWork回復の内情を探る

日本のテレコムコングロマリットであるSoftbank(ソフトバンク)のジェットコースター的な決算はいつもビジネスニュースの目玉になってきた。過去数年間同社が絶好調だと説明してきたストーリーの柱の1つはWeWorkだった。しかし問題のオフィスシェアリング企業の大失敗で好調さは一瞬で吹き飛んでしまった 。

数年前にWeWorkを包んでいたホットな炎は薄れ、「Billion Dollar Loser(10億ドルの敗者)」といった本にも取り上げられたWeWorkだが、最近のソフトバンクの財務プレゼンでは、WeWorkは滅多にスポットライトを浴びなくなっている。986億ドル(約10兆3800億円)であるVision Fund最大の投資先の1つであるにもかかわらず、2020年12月の同ファンドの四半期報告でも触れられていない。投資家向けプレゼンでも同社についての言及はない(ポートフォリオ一覧のページにはWeWorkのロゴが掲載されているが他社のロゴの中に埋もれている)。

財務から会社運営まで、ありとあらゆる悪いニュースを発してきたWeWorkだが、新型コロナウイルス流行後の世界における位置は予想よりもずっと良いようだ。

米国時間2月8日のソフトバンクが出した決算報告書の脚注を注意して読めば、WeWorkに関連したいくつかの良いニュースが埋もれているのに気づくだろう。WeWork向けの各種財務数字は2020年の最初の四半期と比較して13億6000万ドル(約1430億円)も改善している。

WeWorkが陥った不安定な状況を考慮して、ソフトバンクはその財務状況健全化のために家賃やローン支払いなど義務的経費をまかなうために多額の資金を確保していた。しかしソフトバンクによれば「主にWeWorkの信用状況が改善された」ため、2021年はWeWorkへの与信リスクが大きく改善されたという。WeWorkには、9カ月前のような財務的補助輪の必要性が薄れているという。

もちろんこうした数字は新手の会計操作かもしれないが、WeWorkのパフォーマンスが改善されしつつあることは、同社が再び上場を目指すことが期待されているというこの数週間の噂を裏づけている。

先週、Wall Street Journalは「ソフトバンクがSPAC(特別買収目的会社)を介して100億ドル(1兆500億円)でWeWorkの上場を図っている」という噂を報じた。この目論見はまだ正式に発表されておらず、SottBankはさらに2社、合計3社のSPACを設立しようとしている。つまりWeWorkを自社に統合する可能性は低いだろう。

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100億ドルという時価総額は2019年9月のロードショーでWeWorkが投資家を煽っていた強気な価格をはるかに下回っているが、それでも同社が2年前の首に重しのついた失敗企業ではなくなった可能性があることを示している。

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カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:SoftBank GroupWeWork決算発表

画像:KAZUHIRO NOGI/ Getty Images

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(文:Danny Crichton、翻訳:滑川海彦@Facebook

WeWorkがSPACとの合併を通じて上場を検討中、WSJが報道

WSJ(ウォールストリート・ジャーナル)の新しい報道によると、2019年秋に株式公開の目論見が華々しく吹き飛んだ巨大コワーキング企業のWeWork(ウィーワーク)は、あるブランクチェックカンパニー(SPAC)と合併して株式公開企業になる可能性があるという。

WSJによると、具体的にはニューヨークに拠点を置くWeWorkは「Bow Capital Management LLC(ボウ・キャピタル・マネジメント)と関連があるSPAC(特別買収目的会社)と、少なくとも1つの正体不明のがわからない他の買収団体からのオファーを数週間前から検討している」ところだという。この取引では、WeWorkの評価額は約100億ドル(約1兆420億円)になる可能性があると、WSJの情報提供者は語っている。

同社の広報担当者に尋ねたところ、WSJに送ったものと同じ声明が送られてきた。「過去1年間、WeWorkは、収益性を達成するための計画を実行することに力を注ぎ続けてきました。私たちの著しい進歩は、柔軟に使えるスペースの需要増と相まって、私たちのビジネスに肯定的な兆候を示しています。私たちは目標に向かって近づくための補助となる機会を探求し続けます」。

WeWorkに近い関係者によると、同社はより多くの民間資金のインバウンド関心も検討しているという。

WeWorkの広報担当者によると、同社は8億7500万ドル(約912億円)以上の利用可能な現金を含む、36億ドル(約3750億円)以上の現金と未払いの現金支払債務を持っており、これは「長期化する新型コロナウイルス禍を乗り切るのに十分以上の流動性」であると考えているという。

WeWorkのSandeep Mathrani(サンディープ・マスラニ)CEOは2020年秋、WeWorkは同年のある時期に黒字化する軌道に乗っていると述べ、その後は「最初の利益成長」となり、「新規公開株の計画を再検討することになるだろう」と語っていた。また、同氏はニューヨークからZoomコールを介してインドの記者団に対して、WeWorkは2020年10月、Bloomberg(ブルームバーグ)が報じたように、従業員の約3分の1にあたる8000人を解雇した後、100%適正規模化を完了したと付け加えた。

マスラニ氏は2020年2月、WeWorkの共同創業者であるAdam Neumann(アダム・ニューマン)氏が退任した後を受けてCEOに就任した。同社が上場を取り止める数カ月前のことだ。

それ以前、マスラニ氏は1年半の間、Brookfield Properties(ブルックフィールド・プロパティーズ)の小売グループのCEOと、Brookfield Propertiesの副会長を務めていた。シカゴを拠点とする同社に入社する前は、General Growth Properties(ジェネラル・グロース・プロパティーズ)のCEOを8年間務めた。同社は2018年にBrookfieldが92億5000万ドル(約9640億円)の現金で買収するまで、全米最大級のモール運営会社だった。また、マスラニ氏は上場不動産会社であるVornado Realty Trust(ボルナド・リアルティ・トラスト)で8年間、取締役副社長を務めていたこともある。

Bow Capital ManagementはTibco Software(ティブコソフトウェア)の創設者であるVivek Ranadive(ヴィヴェク・ラナディブ)氏によって運営されている。同社は2020年7月、テクノロジー、メディア、通信業界における事業買収に焦点を当てた3億5000万ドル(約365億円)のブランクチェックカンパニーの計画を登録した。

WeWorkがテック企業なのか、それとも純粋な不動産業の範疇かについては、何年も前から多くの議論が交わされてきたが、同社はずっと前者であると主張している。

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タグ:WeWorkSPAC合併

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(文:Connie Loizos、翻訳:TechCrunch Japan)

ソフトバンク孫正義氏「手元キャッシュ8.3兆円、楽観的だが短期的には突発事態も予測」

日本のテクノロジーコングロマリット、SoftBank(ソフトバンク)の創業者で会長、CEO(最高経営責任者)の孫正義氏は、この1、2年大波乱を経験した。しかし今回のDealBookでのインタビュー(The New York Times記事)で孫氏は「自分が復帰してからグループは黒字になった」という点を強く主張した。

米国時間11月17日、バーチャル開催されたDealBookカンファレンスが配信され、孫正義氏は東京から参加してTikTokの今後を含め、幅広い話題について語った。ソフトバンクはTikTokの親会社、ByteDanceの大口投資家であるため当然見通しは楽観的だ。一方、ソフトバンクが投資失敗で数十億ドル(数千億円)を失ったWeWorkの追放された共同ファウンダーであるAdam Newman(アダム・ニューマン)氏については「いつか彼は大成功するだろうと強く信じています」と述べている。一方、孫氏が大規模な資産売却を実行したことにより、ソフトバンクには「手持ちキャッシュが800億ドル(約8兆3200億円)ある」として臨機に大型投資する能力に不安がないことを強調している。

孫氏の発言をリアルタイムで見なかった読者も多いと思うので、ハイライトを紹介したい。孫氏は「楽観的だが短期的には悲観的事態も予測」しているらしい。

新型コロナウイルスパンデミックの影響

孫氏は去る2020年3月、新型コロナウイルス(COVID-19)に対する見解をツイートした後、日本の医療専門家からパニックを引き起こそうとしたと強く批判されたと語った。

その後ソフトバンクは、日本最大級の民間検査施設の運営をスタートした。日本は人口1億2650万人で、現在1日あたり約1300件の新規感染が確認されている(米国は人口3億2800万人に対して、1日あたり16万6000以上の新規感染)。

パンデミックとの戦いで日本がこれまで成功を収めている点について孫氏は「人々は自発的にマスクを着用しています。みんなマスクの重要性を強く意識している」と述べ市民を称賛した。しかしワクチンの大量生産と接種が実現には、時間がかかる。孫氏は「この2、3カ月であらゆる災害」が発生し得ると警告した。「大手企業が突然破綻してドミノ現象を引き起こす」可能性があるという。つまり2008年にリーマン・ブラザーズが突如倒産し、金融業界全体に激震が走ったのと似たような事態だ。

孫氏は「現在のような状況ではどんなことが起きるかわからない。ワクチン開発が進んでいるというのは良いニュースですが、まだ最悪のシナリオに備える必要があると考えています。いま私たちの手元には800億ドルのキャッシュがあります。この種の危機では万一の場合に備えたキャッシュの用意が非常に重要になると思います」と述べた。

巨額キャッシュの使いみち

インタビューを行ったAndrew Ross Sorkin(アンドルー・ロス・ソーキン)氏は、孫氏はElliott Managementについては特に言及しなかったと述べた。このヘッジファンドはソフトバンクグループの第2の大株主であり、同ファンドが孫氏に大規模な資産売却と株価テコ入れのための自社株買いを行うよう圧力をかけたと報道されている

孫氏は、低迷したソフトバンク株を買い戻したのは自分で決めたことだと述べた。3月に株価が暴落したとき同氏は「時価総額が70%、いや75%も下がった。あ、これは最高のタイミングだと思って買い戻しを決断した」という。つまり以前の4分の1の価格で自社株を購入できたわけだ。「これは絶対に買いだ」と思ったという。

資産売却で得たキャッシュの使いみちについて、孫氏は「パンデミックのために業績が悪化している既存のポートフォリオ企業に資金を供給するためなのか、それとも株価が暴落した他の企業の株を割安に買えると期待したのか」という質問にも答えた。

当然のことながら孫氏は資金の使いみちとしてポートフォリ企業を挙げ、「こうしたトップ企業にすかさず投資することにはとても積極的です」と述べた。こうした追加資金によってユニコーンの株価は大きく改善したという。

WeWorkへの投資失敗の教訓

ソーキン氏はユニコーンでは、WeWorkの件について触れた。WeWorkは、ソフトバンクが少なくとも185億ドル(約1兆9240億円円)を投資したことで有名だが、孫氏は同社の事業不振で数十億ドルの損失を被った(The Japan Times記事)ことを認めた。

ソーキン氏は、WeWork事件からソフトバンクはどういう教訓を得たのかと尋ねた。孫氏はインタビューの後半で「間違った決定をしたと認めることが、失敗から教訓を得る方法です」と述べたものの、WeWorkに関しては必ずしもソフトバンク側の失敗だとは考えていないらしく、共同ファウンダーで1年前に会社を追われた元CEO、アダム・ニューマン氏に問題があったことを示唆した。

「これは、アダム・ニューマン氏が自分の間違いから教訓を汲み取っているところだと思います。ニューマン氏は非常に優秀な人間なので、いくつかの判断ミスをしたことを認めていると思います。彼は頭が良くアグレッシブで、多くの才能を持ち、自分のビジョンを売り込む高い能力がある。リーダーとして素晴らしいタイプだと思います。しかしニューマン氏がいくつかの間違いを犯したことも確かです。間違いを犯さない人間はいません」と孫氏は述べた。

「私(孫)にも間違った意思決定の責任の一部があります。いまでもニューマン氏が好きですし、尊敬しています。ニューマン氏はやがて復活して、素晴らしいことをしれくれるはずだと確信しています。いつか大成功を収めるでしょう。WeWork時代のあれこれから多くの教訓を学んだと思います」と孫氏は付け加えた。

米国政府とTikTokの米国事業

TikTok事業の成否にも孫氏は重大な関係がある。TikTokの親会社であるBytedanceの30億ドル(約3120億円)の資金調達ラウンドをリードしたのは約2年前だった。当時780億ドル(約8兆1100億円)の価値があったが、最近の報道によれば、未公開企業でありながら1800億ドルと(約18兆7200億円)いう途方もない会社評価額で新ラウンド(Reuters記事)を実施中だという(このアグレッシブさは極めてソフトバンク的スタイルの投資だ。ソフトバンクが次のラウンドを以前の評価額の2倍以上でリードできるかどうかは興味あるところ)。

この秋、TikTokの米国事業を売却するようBytedanceに強い圧力がかかりOracle、Walmartが共同で値付けした点についても触れ、「大勢が楽しんでいるサービスが、ありもしないことに対する懸念から政治的に中断されるなら残念なこと」と述べた。

実際、孫氏は親会社Bytedanceのトップと話し合った結果として、「TikTokは米国であれインド、日本、ヨーロッパであれ事業を展開している国々の国家安全保障やユーザーのプライバシーを損なう意図はまったくありません」と保証した。またTikTokに対する疑念が続く地域には、「国内にサーバーを設置するなど国家安全保障の保護について安心できるような解決策はあります。技術的な解決策は常にあるのです」と述べた。

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:孫正義ソフトバンクWeWorkTikTokByteDanceCOVID-19新型コロナウイルス

画像クレジット:Alessandro Di Ciommo/NurPhoto / Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

WeWorkの社員が驚くほど単純なプリンター用パスワードを使っていた

WeWork社員がプリンター設定と印刷ジョブをアクセスするために使用している共有ユーザーアカウントに、驚くほど単純なパスワードが使われていた。あまりに単純だったので顧客のひとりが推測できた。

ロンドンのWeWorkシェアオフィスで仕事をしていたJake Elsley氏は、あるWeWork社員が誤ってアカウントにログインしたまま立ち去ったのを発見した。

Elsley氏を含め、WeWorkの利用者には通常、WeWorkのシェアオフィスで文書を印刷するために7桁のユーザー名と4桁のパスコードが割り当てられている。しかしWeWork社員が使っていたアカウントのユーザー名はわずか4桁の “9999”だった。Elsley氏はTechCrunchに、パスワードを推測できたと話した、なぜならユーザー名と同じだったから(”9999″は最もよく使われているパスワードの一つであり、極めて安全度が低い)。

“9999” アカウントは、WeWorkのオフィスで日々の業務を監督するコミュニティー・マネジャーの間で共有され、自分のプリント用アカウントを持たないビジター利用者の文書を印刷するために使われている。このアカウントから他の顧客アカウントの印刷ジョブにアクセスすることはできない。

Elsley氏は、その”9999″アカウントからはファイル名以上の文書内容を見ることはできなかったが、WeWorkの印刷ウェブポータルにログインすることで、”9999″ アカウントに送られた他のユーザーの印刷待ちジョブを、ネットワーク内のどのWeWorkプリンターにでも送ることができた、と語った。

その印刷ウェブポータルはWeWorkのWi-Fiネットワークからしかアクセスできないが、そこにはパスワードのない無料ゲストWi-Fiネットワークも含まれており、WeWorkのメインWi-Fiネットワークにはパスワードが設定されているものの、インターネットに広く出回っている、とElsely氏は言った。

Elsley氏はTechCrunchに連絡をとり、安全でないパスワードについて会社に警告するよう依頼した。

「WeWorkはメンバーと社員のプライバシーとセキュリティーの保護に全力を尽くしています」とWeWorkの広報担当者、Colin Hart氏は言った。「この潜在的問題について直ちに調査を行い、あらゆる懸念に対応するよう措置を講じました。また当社は、われわれの印刷能力をクラス最高水準のセキュリティーと体験のソリューションへと向上する複数月にわたるアップグレード作業をまもなく終えるところです。この作業は数週間以内に完了する見込みです」

WeWorkは、その後”9999″ ユーザーアカウントのパスワード変更したことを確認した。

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画像クレジット:Timothy A. Clary / Getty Images

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

WeWorkが中国事業の過半数株を中国企業に売却、大規模なローカリゼーション改革に着手か

中国市場への進出から4年後、急速な現金流出の多い拡大を続けてきたWeWorkは、中国への関与を清算することを決定した。WeWorkの中国部門は、2018年のシリーズBラウンドで最初にWeWork Chinaを支援した、上海に拠点を置くTrustbridge Partners(トラストブリッジ・パートナーズ)が主導する2億ドル(約210億円)の投資を確保したことを、WeWork米本社が発表した。リリースでは強調されていなかったのは、最新の資金調達が事実上、Trustbridge Partnersを支配株主にし、WeWorkを中国事業体の少数株主に残すということだ。

この投資は、多国籍企業の子会社から中国企業へ、世界的に認知されたブランドを持つWeWorkの中国事業の移行を実現する、いわばフランチャイズのようなものだ。

TechCrunchの声明で広報担当者は「WeWork Chinaは、WeWorkのグローバル本社との緊密な協力関係を継続し、「WeWorkブランドの一貫性とグローバルメンバーと従業員の満足度を確保する」と述べている。しかし、ほかの変化は進行中だ。売却の一環としてレイオフが実施されており、「多くのことが不確実なままだ」とこの件に詳しい人物は語る。WeWork Chinaはこの件についてコメントを辞退した。

WeWorkは、コワーキングブームの高さに乗って中国に到着した。そのブランド、サービス、シックなデザインは、長い間、資金力のあるスタートアップや開放的な大企業を魅了してきた。2016年以降、中国の12都市に100カ所以上のWeWorkスペースが誕生し、その中には地元のライバルであるNaked Hubから買収した数十のスペースも含まれている。現在、中国国内には6万5000人のメンバーがいるという。また、中国では長期リースにコミットしたくない顧客のためのオンデマンドサービスなど、さまざまな取り組みを開始しており、これはより多くの収益を生むに貢献する可能性がある。

グローバルではWeWorkは38カ国、843カ所オフィスで61万2000人のメンバーにサービスを提供している。中国はその拠点の約8分の1を占めているが、2018年の6分の1のシェアからは減少している。WeWork Chinaは、民間および政府補助の両方の安価な自家製の代替品と競合しているだけでなく、新型コロナウイルス時代の経済の弱体化と、不確実な米中関係にも対処している。現金を消費する市場で経営権を手放すことは、国内ですでに直面している問題を考えれば理にかなっていると思われる。

計画された新規株式公開の前にWeWorkは「貿易政策の不確実性が事業に悪影響を及ぼす可能性がある」と述べた。また「低価格市場である中国が利益率の足かせになっている」と強調した。

今回の投資を受けてTrustbridge Partnersは「WeWork Chinaの意思決定と管理、製品とビジネス、オペレーションと生産性に至るまで」の大規模なローカリゼーション改革に着手する」とWeWork Chinaの担当者は語った。新オーナーはその過程で、地域社会、不動産会社、中国企業とのパートナーシップを模索していくという。

WeWork Chinaは売却の結果、新たな上司を得る。Trustbridge Partnersのオペレーティング・パートナーであるMichael Jiang(マイケル・ジャン)氏が、最高経営責任者代理を務めることになる。同氏は以前、中国のフードデリバリーとオンデマンドサービスの大手である美団点評(Meituan)で上級副社長を務めていた人物だ。

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(翻訳:TechCrunch Japan)

楽天がWeWorkとの契約を更新しないことが明らかに

The Japan Timesの報道によると、日本の大手Eコマース企業である楽天は、来月の契約満了時にWeWorkとの契約を更新しないことを決定したという。楽天は東京都内で約700のデスクをリースしていたが、現在はフィンテック部門の従業員を自社の新しいオフィスに移す計画を立てている。

WeWorkと楽天はこの件に関するコメントを拒否している。

東京にはWeWorkの最大の出資者であるソフトバンクの本社がある。同社は昨年10月、WeWorkの財務上の安定性と共同創業者で前CEOのAdam Neumann(アダム・ニューマン)氏の行動への懸念がIPOの延期につながった後、救済措置の一環としてWeWorkの所有権を取得した。

ソフトバンクとの密接な関係もあって、WeWorkは日本での顧客数が多いが、Japan Timesの報道によると新型コロナウイルスのパンデミックにより、稼働率が約60%減少したという。

こうした問題にもかかわらず、ニューマン氏の辞任後にWeWorkの会長に就任したソフトバンクグループの最高執行責任者(COO)であるMarcelo Claure(マルセロ・クローレ)氏は今月にFinancial Timesに対し、積極的なコスト削減策により同社は来年末までに営業黒字化を達成する目標に向かっていると述べた。

多くのテナントがリースを解約したり、家賃の支払いを止めたりしたため、WeWorkの第2四半期の収益は横ばいだった。しかし、従業員が自宅で仕事を続けているために、その居住地に近いサテライトオフィスとしてWeWorkのスペースをリースし始めた企業もあるという。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter