「ディスラプト」の時代に最も大事なのはカスタマーから愛されること

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ケーブルテレビの職員が現れるのをずっと待っている時の苛立ちや、タクシーに乗車してからクレジットカードでの支払いができないと言われた時の失望感を考えてみて欲しい。国外でスマートフォンからテキストメッセージを送ったり通信したりするのに高額な料金を請求された時はどうだろうか?

あなたにとってもこの状況は身近なことだろう。

コンシューマーにとっての良いニュースは、ここ数年で、このようなストレスを感じる場面に多数のスタートアップが着目したことだ。既存ビジネスでも良いアイディアを思いついた企業もあるだろう。これらの企業は、既存業界がカスタマーのニーズに基いてではなく、自社の運営のための条件を満たすためにビジネスを行っていることに気が付いている。新しく登場したビジネスは、カスタマーが既存ビジネスを嫌悪していることを上手く利用し、マーケットシェアを一気に勝ち取ることができた。そして、他の競合他社の基盤を揺さぶっている。

イノベーターが主導権を握る

イノベーションは、市場に興味深い変革をもたらす。それまで業界を占有していた企業を突然、競合他社とビジネスを巡って戦わなくてはならなくなる状況に追い込むのだ。

多くの場合これらの企業は、カスタマーを獲得して市場を長いこと支配してきた。市場を刷新するような企業が登場するとカスタマーは喜んでそちらに移って行く。従来の企業は、様々な面において新興企業に追いつくことに苦戦する。

どのセクターも、インターネット、モバイル、安価なクラウドのリソースによってもたらされるテクノロジーの大波による影響を受ける運命だ。これはどの業界も大きく変えるような波だ。

カスタマーを意識したビジネスでないのなら、この変化に対応することはできない。ユーザーにそのビジネスに忠誠を尽くすモチベーションが無いということなのだから。

正しい競争

ケーブルテレビ業界は、最も代表的な自治体の関連する独占市場の例だ。この業界にとってこれまで、カスタマーは何ら問題ではなかった。80年代や90年代、ケーブルテレビ市場が創設された時、企業は個別のカスタマーではなく、自治体を獲得するために競い合った。企業が街や地域を獲得することができたのなら、永久にその場所は彼らの物となり、確実な領地を手に入れることができた。

カスタマーを意識したビジネスでないのなら、この変化に対応することはできない。ユーザーにそのビジネスに忠誠を尽くすモチベーションが無いということなのだから。

ほんの少しの競合しかない、あるいは全く競合の恐れがない場合、カスタマーの獲得はいとも簡単なことだった。一度獲得したら、ユーザーの課題に対応したり、価格を下げたりするメリットはわずかだ。ユーザーが何をすると言うのだろうか?他の選択肢がないのに乗り換えることはできない。

企業が大きくなるにつれ、コンシューマーのストレスを高まった。企業は、カスタマーを満足させることより、領地を守ることだけに執着したからだ。

クラウドのインフラのプロバイダーを見てみると、開かれた市場の健やかな競争がある場合とではどう違うかが分かる。そこには、大小様々なベンダーがせめぎ合っている。Amazon、Microsoft、Google、IBMや他にも多くある。つい最近も Alibabaが10億ドルを投資し、この市場でのプレイヤーとして名乗りを挙げた。これは様々な企業が価格、幅広いサービス、カスタマー対応で競っていることを示す。

競争は価格を引き下げ、これまでにないほどイノベーションを加速させた。勝利を収め、継続的にビジネスを運営するための絶え間ない努力が行われている。更に、サブスクリプションモデルが浸透し、カスタマーが比較的簡単にプロバイダーを変えることができるようになれば、ビジネスはよりクライアントに意識を向ける必要が出てくる。

ケーブルテレビ業界のような競合が少ない業界では、このようなモチベーションが欠如するため、カスタマーサービスは悪化しやすい。

助けを求める

市場を崩壊させてしまうような企業が現れると、既存企業の最初の反応は、市場の占有を保つために政府に泣きつくことだ。タクシー業界も、自治体の庇護を受けて独占状態を楽しんだが、Uber(他の乗車共有サービスのLyftなどを含め)といった人気の競合他社が市場に参戦した時、彼らは身を守る道を選んだ。それに各地の政府は様々な反応を示している。

例えば、7月にパリではタクシー運転手がストライキを行った。政府は、Uberの役員が違法なタクシー運営を行ったとして逮捕状を請求した

マサチューセッツ州、ケンブリッジでもタクシードライバーが同様のストライキを今月の始めに1日かけて行った。しかし、ここの政府は彼らに同情的な反応を示すことはなかった。Boston Globeの記事によるとケンブリッジの市議会議員であるNadeem Mazenはタクシードライバーに対し、「Uberを支持する有権者が大多数で、あなたたちは少数派であることには気が付いているのですよね?」と苛立ちを見せながら言ったそうだ。

タクシードライバーは独占を失ったことに抗議する中、タクシー業界は国会議員などに対してロビー活動を通して救いを求めている。このアプローチはカスタマーを更に苛立たせるだろう。彼らはビジネスを保つのにクリエイティブな方法を探そうとはせず、法の助けを求めているのだから。カスタマーはそれを見抜いている。

市場を支配している業界が法に訴えるルートで勝つ場合もある。テレビ放映の方法を変更しようとしたAeroのように最高裁判所の規制を受ける場合もある

痛みを伴う市場の「ディスラプト」

しかし、他の競合から逃れることはできないかもしれない。最近、ケーブルテレビ会社は、Netflixのようなストリーミングサービスの競合他社と対峙しなければならなくなった。このようなサービスでは、コンピューター、タブレット、そしてChromecast、Apple TV、Amazon Fire TVやRokuといった端末を介してテレビでもコンテンツを視聴することができる。ストリーミングサービスの賢いオリジナルのコンテンツと安価な月額価格の組み合わせで、ユーザーはケーブルテレビに支払う価格より安価にエンターテイメントを得ることができることを知った。そして ケーブルテレビを解約し始めた。

そして今週上がった複数の報告から、一般的な有料テレビ会社に解約の影響が出始めていることが分かる。第二四半期だけで56万6000人のカスタマーがケーブルテレビを解約した。

現在の主要な通信事業者、特にVerizon(TechCrunchの親会社)とAT&Tは、複数の方面から競合の圧力を受けている。T-Mobileは、カスタマーに優しいプランを多数提供していて、正しいモチベーションがあれば、クリエイティブなビジネスアイディアは頑固な競合他社を追い込むことができることを証明した。(Verizonの解答は、契約期間があり、端末料金に割引が適用されるプランをなくすと先週発表した。)

他の方面では、自治体は無料Wifiとブロードバンドの提供を開始し、Googleのような企業も、既存の携帯電話プロバイダーのプランの代わりとなる手段を提供している。GoogleのProject Fiは特に、大手携帯通信プロバイダーへの警告だ。

月々たった20ドルで、通話とテキストメッセージが無制限に利用でき、国際間のテキストメッセージも無料で、120カ国で利用できる。データ1GB分をたった10ドルで購入できる。海外でも利用できるプランは、私が現在利用しているプロバイダーAT&Tと大きく差別化できている点だ。私の今のプランでは、海外での無制限のテキスト送信とたった120MBのデータ分を利用するのに30ドルもかかる。そのような少額を徐々に請求されることにカスタマーは苛立ちを覚えるだろう。

あなたのカスタマーも重要だ

これを特定の業界だけで起きていて、自分たちには関係のない現象だと見過ごすこともできるが、実際にはどのビジネスセクターにも影響を与えている。

何度も何度も、企業のビジネス判断の時には、カスタマーを中核に置かなくてはならないと聞いているだろう。企業や産業が市場を占有している時、その事を忘れがちだ。そして市場の変革をもたらす企業が現れた時、この言葉の重要性を再認識するだろう。

残念ながら、一度失ったカスタマーのロイヤリティーを再度獲得することは難しい。ずっとそうしてこなければならなかったのだから。どの業界も、カスタマーのニーズを軽視したり、無視したりすれば、市場が刷新する時が訪れて痛みを知る。より良く、早いクリエイティブな代替手段を提供する企業が市場に登場した時、既存企業に不快な目覚めの時が訪れるだろう。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

「サービスとしての自動車」の進化に影響を与える5つの要素

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編集部記Karen Roter Davisは、Crunch Networkのコントリビューターである。Karen Roter Davisは、Urban Enginesのジェネラル・マネージャーである。

50年後に自動車業界の収益モデルは、自動車の販売ではなく、サブスクリプションモデルに大きく転換すると言ったら、あなたはどう思うだろうか?特に鋭い指摘ではないと思うだろう。しかし、1900年頃に同じことを言っていたら違うかもしれない。1900年代半ば、自動車レンタルとリースが急増するのを目撃できただろう。

その当時でもこれに気を留めなかったかもしれないが、設備のリースやレンタルモデルは古代バビロニアの時代からあり、産業革命時にはミシンがレンタルされていた。18世紀後半には、馬車のレンタル市場が急拡大したのも知っているかもしれない。

私が「5つの要素」と呼ぶものは、これからの自動車業界の消費モデルに影響を与えるだろう。そして、他に関連する業界にも波及することが考えられる。

利用の自由度

資産を所有することは、借りたり、サブスクライブしたりする以上にそれを活用できる場合がある。もし音楽を購入してダウンロードしたのなら、他の音楽とミックスしたり、マッシュアップを作ったり、更には他の端末でも聞けるようコピーしたり、形式を変換したりすることができる。車を所有していれば、サブウーファーをつけたり、Megadethのシールをバンパーに貼ったり、スマホの充電器を車に付けたままでも構わず、フロント座席の下に翌日までお菓子をこぼしたままにしていても、私の主人が嫌な顔をするだけだ。(あなた、ごめんなさい。)

しかし、車を所有する場合と「サービスとしての自動車(CaaS)」を利用する場合の「利用の自由度」の境が狭まるほど、価値の方程式に変化が起こり、CaaSの方が魅力的に映る。音響システムが向上したり、車からスマホを充電できたりするだろう。バンパーにシールを貼ることが制限されたり、もっと綺麗に食事したりことは強要されるだろうが、その方が私にとっては良い影響がありそうだ。音楽ストリーミングでも同様にサービスが成熟するほど、サービスに登録するだけで、オリジナルのミックスやマッシュアップ曲を製作することができるようになる。所有する必要性はますます低くなるだろう。

アップグレードの頻度

自動車リースの割合は、ここ数年で上昇 した。最新の乗車体験とインターネットに接続した自動車を利用したいと思うコンシューマー層が増えているのが一つの要因だ。

SaaSの進化も関係している。企業は、柔軟なサブスクリプションモデルでカスタマーに最新テクノロジーと進化した機能を提供するために、オンプレミス型の導入や低価格にするための投資を進めている。

保証とメンテナンス

所有からサブスクリプションへのバランスの変更におけるもう一つの重要な分野は、保証とメンテナンスだ。これはコンシューマーが面倒に思っていることなのだ。

現在、自動車のリースではCaaSの「走行距離」で料金が決まる。しかし私たちは、全ての道が同じように作られていないことを知っている。地形、気温、天気、移動距離、環境、運転習慣、荷物の量といった要素は自動車のパフォーマンスに徐々に影響を与える。詳細なデータや測定技術で、自動車製造業は「サービス期間」を保証するモデルへと進化している。SaaSのように、必要な時に利用可能であること、そして耐用期間を保証し、ユーザーが車をメンテナンスのために整備工場に持っていかなければならなくなる前に交換を事前に行うことが可能となる。

必要な時に複数の車種から必要な物を選べるようCaaSをカスタマイズすることができるようになれば、それは更なるブレークスルーをもたらすだろう。夏に24日間、山にキャンプに行くのと冬に10日ほど使うために毎回、値段の高く付くSUVにメンテナンス費、ガソリン代や他のコストをかけるのはもったいない。特定の日を事前に予約することで、割引価格で利用することが可能になってもおかしくないだろう。予約することは、CaaSのプロバイダーが需要を予測するのに役立つのだから。

初期費用の比率

「あの、それは今でもできます。『レンタカー』と呼ばれています」とあなたは言うかもしれない。

もちろんだ。そうすることはできるが、経済的な事情は必ずしも想像通りだとは限らない。例えば、CaaSは自動車メーカーの収益を圧迫すると懸念されている。いつでも利用可能なサービスを好み、自動車の所有に対する需要が減ることになると予測されているからだ。しかし、アクセサリーや洋服のレンタル業界を見てみると(例えば、RocksboxやRent the Runway)、収益の面でサブスクリプションの方がレンタルや販売より注目が集まっているのが分かる。何故か。

自動車リースの割合は、ここ数年で上昇 した。最新の乗車体験とインターネットに接続した自動車を利用したいと思うコンシューマー層が増えているのが一つの要因だ。

まず、ビュッフェに行った時と同じように、ほとんどの人は限度まで食べられるわけではない。サブスクリプションで3着の洋服を好きなだけ交換できたとしても、多くの人は1着か2着を数ヶ月交換しない場合が多いが、それでも料金は変わらない。これは駐車場にしばらく動かさずに鎮座している自動車と同じような状況だ。海辺に行く計画を立ててはいるが、未だに実現していない場合だ。その内行く予定だ。そう、近いうちに。でも、それまでは、思い立ったら行けるように、月額料金を支払っておこうと思うのと似ている。

いつでもどこでも利用可能なサービス

そのようなシナリオを鑑みて、私が最も望むのは、かかる利用コスト分を十分に活用でき、初期費用が比較的安価なサービスだ。つまり、定額の月額料金で必要な時に車を利用でき、走行距離に応じた料金を加算し、運転したい種類の車が多数揃っていて、利用期間を調整できるようなサービスだ。

「でも、それは既に『Zipcar』メンバーならできますよ?」とあなたは言うかもしれない。

確かに、Zipcarや他のカーシェアリングのサービスは、短距離や短期間、都市部で利用するには最適なサービスだ。しかし、例えば片道だけの利用や7日間以上車を利用したい場合、「走行に対する不安(range anxiety)」が生じる。これは電気自動車のバッテリーが持つかどうか危惧するという意味でもあるが、ここでは、必要な車を必要な期間に利用できないかもしれないと危惧することを意味する。

SaaS企業は、ユーザーが抱えるこの不安にサービス品質保証(SLA)で対応する。つまり、サービスを一定の水準で常に利用可能であること、待ち時間の短縮、問題の把握と対応、サービスが利用できない場合の補償を準備することだ。これを実現するためには車ごとの売上ではなく、車を利用する「体験」を提供することに考え方をシフトする必要性がある。CaaSの利用率を高めるには、自動車サービスのコンセプトを壊れた部品を修復することから、いつでもどこからでも利用できるサービスに変えなければならない。

SaaS企業は自社のサポートチームを保有するだけでなく、自社のチャネルパートナー、コンサルタント、システムインテグレーターのエコシステムを保有し、プロダクトがユーザーに最大限リーチできること、そしてサービスの品質が一定水準に保たれることを保証する。ここが面白い部分だ。Zipcar、Uber、Lyftや公共の交通機関をこれまでの意味での「プロのサービス」や「サポート企業」であるとは言わないが、サービスレベルを一定に保つことが、CaaSを加速させるのに最も重要な推進力を生むことにつながる。

次に起きること

次の数年で、自動車製造業はコンシュマーのニーズに対応し、高い価値を提供するために、自動車のセンサー、データ、分析結果、彼らの周りに構築された交通エコシステム、そして上記の5要素を取り入れたクリエイティブな施策を行い、利益を生むことが求められている。(データがどの程度利用できるか、そして規制上も制限は多いが、乗り越えられない課題ではないだろう。)

次のアクションが取れるようなデータは自動車から生成される。例えば、車内の利用状況、車の相互通信、エコシステム、更には車を利用する個人の毎日の生活の文脈からデータが得られるだろう。これらのデータは5要素を突き動かし、勝者と敗者の未来、そして私たちが移動手段の利用方法を含め、業界の運命を握るだろう。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

ハードウェア向けインキュベーターは、未来の物づくりに欠かせない存在だ

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編集部記Mike Geyerは、Crunch Networkのコントリビューターだ。Mike Geyerは、Autodeskのエバンジェリストと新興テクノロジーのディレクターを務めている。

ハードウェアはアツイ分野だ。これから更に注目を浴びるだろう。インターネットとつながるハードウェア端末を開発するスタートアップへのベンチャーキャピタルの投資額は、2014年におよそ14億8000万ドルに達し、2年前の3倍以上に膨らんだ。

また、「お伽話」のような買収劇を演じたDropcam、Nest、Beats、Oculus、更にFitbitやGoProのIPOは、ハードウェアスタートアップの盛り上がりを加速し、多くの人の注目を集めた。

ハードウェアは次のソフトウェアだ。

過去10年間で、誰でも賢いアイディアをアプリとしてローンチすることが劇的に容易になった。クラウドファンディング、クラウドのインフラ、そしてGithubのようなオープンソースのコミュニティといった多様なサポートを受けられるようになったからだ。

現在の起業家は、同じように実用的なハードウェア製品を容易に市場に届けることができる。これも似た要因のおかげだ。今度は更に、新たな種類の支援機関の登場で、人々の持つ賢いアイディアを素早く物理的な製品に変えることが可能となった。

The Keyboardio ergonomic keyboard, which was incubated at Highway1 and is currently running a Kickstarter campaign.

人間工学に基づいたキーボードKeyboardioは、Highway1を卒業し、現在Kickstarterでキャンペーンを行っている

例えば、ユーザーが試行錯誤しながらプロトタイプを製作できるハッカースペースやメーカースペース、更には各人が製作したプロトタイプを実用的で、量産が可能なプロダクトに磨く作業をたった数ヶ月で行うことができる洗練されたハードウェア・インキュベーターといった多様な支援先が揃っている。

これらの施設がどのように運営されているかはそれぞれ異なるが、与えている影響は似ている。既存の製造工程を破壊し、次世代のイノベーティブなハードウェア・スタートアップを芽吹かせているのだ。

チャンスの波

Pebble のスマートウォッチやNestのサーモスタットといった製品、ハードウェアのインベーションを起こしているSmartThingslittleBitsは、次の素晴らしいハードウェア製品が伝統的な巨大組織の中からではなく、自宅ガレージやメーカースペース、ハードウェア・インキュベーターの中から誕生することを明示している。更に重要なのは、ハードウェアとソフトウェアが密接に連携していることだ。それに偉大な起業家の多くが気が付いている。

エコシステムの成功は、テクノロジーと人間の両方の要素にかかっている。

インキュベーターとアクセラレーターの数は急速に増えている。アーリーステージのソフトウェア企業向けのインキュベーターの数は100社以上ある一方、ハードウェア向けは大幅に遅れを取っている。しかし昨年、一桁だったその数は、アメリカだけでも20数社までに急伸した。ヨーロッパやアジアでもその流れが見て取れる。ドイツのUnternemertumやHardware.co、日本のDMMなどが目立った存在だ。

Jaguar、Land RoverやIntelといった有名企業もこの発展分野に着目し、機敏な競合の成功を真似て、自社のインキュベーターを立ち上げるなどの前進を見せた。これらの企業はクリエイティブな起業家を支援し、アイディアを素早く現実のものへと推し進めることを目指している。

Los Angeles Cleantech Incubator(LACI)も同様の考えを持ち、イノベーションを加速させること、そして製造業を復活させることをミッションの中核に掲げている。

私は、LACIの企業ポートフォリオプログラム部門のVPを務めるErik Steebと話す機会があった。彼は、「LACIはロサンゼルスの中心地で製造関係の仕事を創造するために四年ほど前に始まりました。ロサンゼルスはかつて、活気あふれる製造の拠点でした」と話した。「スタートアップの持続的な製造を維持するためは、早い段階から適切なデザインを検討し、効果的なプロトタイプを製作する設備、必要な支援とベンチャー投資のインフラを整え、彼らの成功を支えることが必要です」と説明した。

動きを支援する

全ての物の製造に関連する大きな変革の中で、ハードウェア・インキュベーターは大幅に発展している。多くの人がプロトタイプやファブリケーションのための新たなツールを利用できるようなった。同時に製品が様々なことを理解し、相互に接続できるようになった。コンシューマーが自分にぴったりの体験を期待しているのも流れを加速させている。

ハードウェアは次のソフトウェアだ。

このようなトレンドが合わさって、新しい起業家の波が到来した。彼らは真新しいデザイン思考を理念に持っている。大企業は、早い段階から新興するイノベーションを認識することが重要だ。ハードウェアの分野で広く関係性を構築することで、成功を得ることができるだろう。特にインキュベーターやアクセラレーターとしての活動に注力することは、この動きを促進する最大のチャンスである。

北アメリカには模範となるイノベーションのハブがある。例えば、サンフランシスコのHighway1、ボストンのBolt、ビッツバーグのAlphaLabだ。下記の図を参照してほしい。ヨーロッパ、アジアにもイノベーションの波が世界に広まると共に浸透している。

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企業は、この活気あふれるエコシステムにいくつかの方法で貢献することができるだろう。下記はその一例だ。

  • ハードウェアのインキュベーターと協力し、ソフトウェアの課題を解決する手助けをすること。例えばデザイン、エンジニアリングと製造における強力なツールをインキュベートの対象企業に無料で提供する。
  • ソフトウェアを活用するためのトレーニングとアシスタントを無料で提供すること。それによりユーザーは利用できるツールを最大限に活かすことができる。
  • デザイン支援とコンサルティングをスタートアップに提供すること。例えばAutodeskは、PCH のHighway1インキュベータープログラムを卒業したkeyboard.ioのカスタマイズ可能な人間工学に基づいたキーボードのデザインにおける課題を解決するために一役買った。
  • 「人間的な要素」に着目し、定期的な運営、イベントの開催、コネクションや紹介を活かす方法を共に探すこと。エコシステムの成功は、テクノロジーと人間の両方の要素にかかっている。

「起業家は私たちにハードウェア開発は困難であることを思い出させてくれますが、Autodeskのような企業がパートナーとして協力し、彼らのデザインとシミュレーションツールを活用することで、プロトタイプのスムーズな製作、そして持続的な改善を行うことが可能になりました」とニューヨークのNew Labの共同ファウンダーでパートナーのScott Cohenは話す。「私たちのポートフォリオの企業、例えば FX IndustriesやHoneybee Roboticsは、Autodeskの様々なソフトウェアを駆使して、コンセプト段階から実際の製造段階まで辿り着いています。この屈強なソフトウェアツールと私たちのプロトタイプの製作場所が組み合わさることで、デザイナーにとって初期のプロトタイプを製作することが身近になり、実用的で影響のあるプロダクトの製作工程を本格的に加速させることができます」と話した。

明るい未来

ハードウエアプロダクトの製造がiPhoneアプリを製作するのと同じくらい簡単になれば、私たちは本当のイノベーションの黄金期に到達したと言えるだろう。私たちの創造を軽々超えるような価値をもたらすプロダクトが、現在の頭の悪い、活力のないプロダクトに取って変わるだろう。

ハードウェア・インキュベーターは、この業界の革命を現実のものとするのに重要な役割を担っている。そして、この業界の中の全ての人が意味のある関係性を構築し、必要な支援を協力して提供することが重要だ。

これがどのような未来をもたらすか、とても楽しみだ。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

プラットフォームとしての都市の改革

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編集部記Gerard Grechは、Crunch Networkのコントリビューターだ。Gerard Grechはイギリスのデジタルビジネスを加速することを目標とする非営利団体Tech City UKのCEOである。

過去10年間で最も急速に成長した企業を考えてみてほしい。彼らの共通点に気が付くことだろう。彼らは全てプラットフォームだ。

YouTubeは動画を掲載した初のサイトではなく、停滞していたオンライン動画配信モデルを初めてディスラプトした企業だ。デジタルでの関わりを中核として、プラットフォームを構築した。Googleの急成長をもたらしたのは、ユーザーに中核事業の検索機能を開放し、キーワードに入札できるようにしたからだ。

Facebookは最初のソーシャル・ネットワークではなかった。しかし、彼らは自社サービスをデジタルなプラットフォームを基盤とした最初のソーシャル・ネットワークと捉えた。APIをアプリや新たな創造のために提供した。

効果的であると証明できれば、イノベーションは火が付いたように瞬く間に広がる。データサイエンティストの台頭を考えてみてほしい。シリコンバレーの一握りの企業が彼らに価値があると認めた瞬間から、チーフ・データ・オフィサーは役員クラスの重要な位置づけとなった。今では、ホワイトハウスからバーバーリーといった企業にまで浸透している。

公共部門が民間企業にインスピレーションを求めるのは珍しいことではないが、このトレンドは政府に何を伝えているのだろうか?都市はプラットフォームとして機能することができるのだろうか?都市もデジタルの力でディスラプトすることは可能なのだろうか?

テクノロジーの進化は、都市とそれを統括する政府組織へのアクセスを可能としたことを意味している。都市と政府は、市民と直接的に遅滞なくつながるべきなのだ。

都市は、関わることができない資産、鉄とガラスでできた建物の集合体ではない。

もちろん、ロンドンやニューヨークといった都市には、バッキンガム宮殿やエンパイア・ステート・ビル、ロンドンタクシー、地下鉄といった物理的な資産がある。しかし最も重要なのは、デジタルの存在と言えるだろう。都市は私たちのスマートフォン、パソコン、そしてデジタルネットワーク上に共有される知識として存在している。そして都市環境は前代未聞の課題に次々と直面している。

これまで以上に多くの人が都市に住む時代となり、交通機関、住宅、公共の場所に対する市民の要求は絶えることがない。魅力的なチャンス、文化的な探求のみならず、私たちが住む都市は人間の活動が引き起こす影響を最大限詰め込んだ小宇宙になりつつある。

デジタルイノベーションが世界中で創造のパンデミックを起こす時、私たちは劇的な再発明のチャンスを逃さないようにしなければならない。

進化するためには、都市をプラットフォームとして捉えなければならない。そしてそこに住む私たちは、テクノロジーを駆使し、都市の中核的な機能を創造的にディスラプトして再定義しなければならない。デジタルを活用する全ての市民は、リアルタイムのデータのハブになる。それぞれ個別に分析しただけでは、次の行動計画のための叡智は得られない。しかし、生成されたデータをマクロ的に把握することで、劇的な発明の可能性は尽きることがなくなる。

先進的なソフトウェア企業が導入している継続的な改善のためのアプローチのように、市民と都市の職員は「再発明を継続的に行う」という直にデフォルトとなる考え方にシフトしなければならない。

どのように実践するか?

優秀なデジタル企業が集まるサンフランシスコや、ユニコーン企業が急速に増えているロンドンのように、独自の複雑な要素を持つ都市を様々なAPIを提供するプラットフォームであると考えよう。

物理的な構造と同様、都市のデジタルな基盤は拡張できることを認識しなければならない。生成したデータを集合的に利用することで持続可能なソリューションを導きだすことができる。

都市をディスラプトするという概念を捉えやすくする喩え話をしよう。複数の辞書を持って「これをどうやったらデジタルにできるだろうか?」と問うのなら、その答えはMicrosoft Encartaだろう。CDに収録した辞書だ。覚えているだろうか?

だが、もし「デジタルで、辞書との関わり方を変えるとしたら何ができるだろうか?」と問うなら、Wikipediaが答えとなる。Wikipediaは、公的にアクセスできる世界中で最も多くの知識を集めたもので、誰でも関わることができる。

同様に、都市を変えるのに「デジタルに対応するならどうするか?」と問うなら、最終的に本質とはかけ離れて、不必要な「スマート都市」のソリューションのリストを得ることになるだろう。例えば、スマートトイレ、ゴミ箱、エレベーターなどで、そこで話しは終わりだ。

しかし、もし「デジタルで都市との関わり方を変えるとしたら何ができるだろうか?」と問うのなら、潜在的な可能性を最大限探求することができ、ダイナミックで市民の目線に立ったソリューションに近づくだろう。

デジタル分野に機敏な都市はこの動きを先導している。例えば、シンガポール、パナマ、ソウル、タリンなどだ。どの都市もデジタルが都市をディスラプトする余地を与えている。都市のデータセットを開放し、市民に対して都市のデジタル設計を見直し、議員と直接的で民主的な会話に加わるように促している。都市はプラットフォームであるという考え方に近づくほど、市民と都市の間に「デジタルにおける利用規約」を制定することが容易になる。

都市システムに実装するにはどうすべきだろうか?

都市と市民との間に私が「デジタルにおける社会契約」と呼ぶ規約を制定することが可能だろう。これは、権利、責任、提供するサービスといった双方が認める共通理解を基軸に構成される。

「デジタルにおける社会契約」は、市民の能動的、受動的な貢献と引き換えに、都市は市民のためにより良い環境を作ることに注力するという同意の上に成り立つモデルだ。市民は都市に自分のデータを提供する代わりに、市民は透明な都市運営と更なる都市効率の向上が期待できる。

都市に関わっていると感じるほど、私たち自身も都市に対して責任があると感じるだろう。これは良い循環であり、テクノロジーはそれを加速させるための燃料となる。

価値のあることにデータを提供することは生活の向上につながると私たち全員が知る必要がある。そして、都市の代表者にも役割がある。都市が責任を持つ空間とシステムを適切に構築し、効果が計測可能で効率的にデータを利用することを保証しなければならない。

Facebookを個人の考え、位置情報、画像や気持ちを共有する場としていかに信頼しているかを考えてみて欲しい。それにも関わらず、公的機関に私たちの個人に関わることとさほど関係のない情報でも預けることを躊躇ってしまう。その情報は、見方によっては重要な情報に成りうるのだ。

進化するためには、都市をプラットフォームとして捉えなければならない。そしてそこに住む私たちは、テクノロジーを駆使し、都市の中核的な機能を創造的にディスラプトして再定義しなければならない。

都市を自分の力が及ばないものから、作り直して形を整え、クリエイティブに再創造できるものに変えたいと思うなら、その考え方を変えなければならない。実用的な叡智はクラウド上から公共の場に、そして議会に引き渡さなければならない。

これは、曖昧で複雑に入れ組んだ相互関係であるように思うかもしれない。これを説明するのに、一つ良い例を取り上げたい。

私の出身地であるロンドンでは、都市の交通網がスマートデータを活用することで改善できることを知った。バス停に印字された時刻表は、テキストメッセージと最新の取り組みの産物、CityMapperアプリに進化した。

CityMapperでは、ユーザーはプロバイダーにデジタル情報の社会契約に基いて託している。私たちのいる場所を教える代わりに、目的地までの最短、最安の実行可能な道順の情報が提供される。

GPSを利用するこのアプリは、グレーター・ロンドン・オーソリティー とロンドン交通局が公開したデータセットと、交通APIを運営するPlacrの協力で実現した。

Nestaの最近のCITIEの取り組みでは、レイキャビクやテルアビブといった都市もプラットフォームアプローチを取っていると示した。アイスランドの首都はデータセットを公開し、社会活動家と協力して、市民が都市に関する新しいアイディアを提案したり、優先順位を付けたりできるプラットフォームを構築した。これまでに人口の60%以上がこの取り組みに参加していて、257のアイディアが公式に検討された。ローンチ後、165のアイディアが認められ、実施に至った。

一つ例を上げると、町内会は公的な資金を利用することが認められ、割り充てられた予算を使用できるようになった。全員参加型の民主主義が動き出している。

魅力的なチャンス、文化的な探求のみならず、私たちが住む都市は人間の活動が引き起こす影響を最大限詰め込んだ小宇宙になりつつある。

同様に2013年、テルアビブでは市民と自治体の双方向の関係性を構築するため、デジタルな住民カードをローンチした。都市がそこに住む市民の創造的なヴィジョンを実現できるようにする。カードはテルアビブに住む市民が都市機能を利用する時のハブとなる。料金を支払ったり、議員と接点を持ったり、更には週末に公開される最新の人気映画のチケットが売り切れていない映画館を探すこともできる。

小さな規模では、イギリスが2014年に歴史上最大規模の被害をもたらした洪水に見舞われた後、Tech City UKは、著名なUK Government Digital Services(GDS)のチーム、政府の環境団体、プライベートセクターの開発者を集め、東ロンドンのGoogle Campusでハッカソンを行った。

環境団体はコミュニティーが新しいソリューションやアプリを製作できるよう、最新のデータセットを公開した。それはインスピレーションを引き出しただけではなく、洪水被害者を助ける新たなソリューションを複数ローンチする助けとなった。Flood Beaconはその内の一つだ。

ロンドンは、国際的にも称賛を得ているオープンデータ機関の拠点となっている。彼らは、London Data Storeの開設と共に勇気ある一歩を踏み出した。London Data Storeは、多様なデータが利用できる世界でも有数のデータバンクだ。しかし、人口の増加に伴い都市のインフラに負荷がかかっている。この取り組みは更に推し進める必要がある。

この施策は、政府の意志と市民の力を借りる文化がなければ機能しない。ディスラプトを促す強力な民主的アプローチが必要条件だ。また、都市をプラットフォームとして捉えるのに加え、変化の余地を与えるデータの生成と共有も必要だ。そしてこのデジタル社会契約を現実のものとするためには、都市の職員には多様なテクノロジー分野からの強い支持が必要だ。

それには、多様な人を含める必要がある。戦略の責任を持つチーフ・デジタル・オフィサー(CDO)、実行計画を立てるための洞察やトレンドを見極めるデータの責任者、そして開発者との関係を構築する必要もある。これにはエバンジェリストのチームを集め、プログラマー、デザイナー、法人、そして他にも都市の不足を補うアプリケーションやサービスを構築することに興味がある人たちにデータの活用を促さなければならない。

デジタルイノベーションが世界中で創造のパンデミックを起こす時、私たちは劇的な再発明のチャンスを逃さないようにしなければならない。これはタイムリーで、必要不可欠なものだ。私たちの都市を取り戻そう。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

フィンテックの次のフロンティアは保険業界だ

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編集部記:Brendan Dickinsonは、Crunch Networkのコントリビューターである。彼は、Canaan Partnersのプリンシパルを務めている。

フィンテック(金融テクノロジー)の黄金時代に突入した。 LendingClubOnDeckは、最近、巨額のIPOを達成し、昨年の全世界のフィンテック分野への投資額は30億ドルに達した。溢れんばかりの資金とイノベーションは、モバイルバンキング、小規模ビジネスへの融資、資産アドバイス、信用度の評価、貯金といった金融の各分野に広まった。

フィンテックに流入した資金の額を鑑みると、既に顕著で大きな問題の大部分は解決されたように思うかもしれない。しかし、信じられないほど金融分野のイノベーションが進み、技術的な進歩が他のセクターを変容したにも関わらず、金融業界の一部分はほぼ手付かずのままになっている。そこには、摘み取られるのを待っているチャンスがある。

保険分野は、本格的なイノベーションが起きる余地のあるチャンスの大きい分野だ。アメリカの保険業界は、収益の面から見れば世界最大の市場で、純保険料は驚きの1兆2000億ドルだ。しかし同時に、この分野の主要なプレイヤーのネットプロモータースコア(NPS)の評価は、他のどの業界よりも低く、カスタマーの満足もロイヤリティーも得られていないことを示唆している。

人々は保険会社が好きではないし、信頼していない。「9・11の緊急対応要員、稀なガンを発症も保険が下りず」や「ハリケーン・サンディの被災者、保険の申請が組織的に却下される」の記事の見出しだけで、その理由が分かるだろう。この業界のモラルの崩壊と詐欺行為は知れ渡っている。

それに加え、コンシューマーに保険商品を届ける手法も古びたものだ。世界は既にスマートフォンの画面を数回タップするだけで何でも手に入るようになっている。多くのアメリカ人が保険に加入していないのも頷ける。25歳から64歳までの 「ミッドマーケットのコンシューマー」の半分以下しか生命保険に加入していない。また加入しているアメリカ人の40%は、それが十分ではないと感じている。そして、64%のアメリカの住宅に保険はかけられていない

保険業界は「ディスラプト」されるのを待ち望んでいる。

課題とチャンス

Affordable Care Act(医療保険制度改革)の外では、何年もの間、なんら変化が見られなかった。なぜこんなにも変化するのが遅いのだろうか?まず高い参入障壁が存在する。保険業界は規制の面で、とても複雑でお金がかかる業界だ。

新しい保険会社は、債務のない潤沢な資金を保有して監督機関を納得させることになるが、保険を引き受けたリスクに応じてその資金を増やし続けなければならず、リスクの量も次第に大きくなる。

Affordable Care Act(医療保険制度改革)の外では、何年もの間、なんら変化が見られなかった。

融資より保険においてこれは大きな問題だ。また、保険の中には州ごとの価格の規制があり、保険監督機関が、特定のプロダクトに対して企業が利益を得るのに上乗せする価格に制限を設けている場合もある。このような理由から新しい保険商品をアメリカ市場に持ち込むのは困難であり、変化のスピードも遅い。

次に、加入者に関連する不都合な問題もある。新しいプロダクトを必要とし、最初に加入するのは最もリスクの高い人である場合が多い。それによりローンチした後、業界平均より多く申請がなされるリスクを負うことになる。スタートアップが最も若く、影響を受けやすい時期と重なるのだ。

数人の勇気のある者がこの市場に挑戦し、成功を収めてきた。最も注目を浴びているのは、OscarMetromileだ。Oscarは「より良い健康保険企業」を目指し、テクノロジーとデザインを活用してユーザーの体験を改善しようとしている。この企業は、ローンチしてわずか一年半で、現在15億ドルの評価額となった。Metromileは、走行マイルに応じた自動車保険を販売し、年間1万マイル以下しか運転せず、自動車保険に必要以上に支払っているドライバーの70%に訴求している。

両社は、直感的でアクセスしやすいモバイルのユーザーインターフェイス、コンシューマーにとって親しみやすいビジネスモデルと事業の高い透明性を提供している。これらの企業は氷山の一角に過ぎない。どの保険商品も「ミレニアル世代への対応」をしなければならず、今後、住宅保険、生命保険、損害保険といった保険商品が刷新されるだろう。

スタートアップにとって最も大きなチャンスがあるのは次の4つの領域だ。新しいエコノミーのための新商品、豊富なデータから得た知見を活かしたサービス、リスクと自己資本比率を新しい方法で管理するサービス、そしてカスタマーを獲得する新しい構造のサービスだ。

保険業界は「ディスラプト」されるのを待ち望んでいる。

Uber、Airbnbの台頭で私たちのエコノミーは、資産の保有から資産の貸し借りに移行している。既存の大手保険会社が提供する施策のもとでは、このようなユースケースに対応することができないため、新しい商品が取って代わる必要がある。この世界の更に大きな移行は、長期に渡って資産に保険をかけるというコンセプトが古くなっていることだ。代わりに、その時々で消費するモデルに移行するだろう。必要な時にモバイルで保険商品を見て、保険契約が数秒で完了する世界だ。

現在、10年前とは比較にならないほど多くのデータが手に入る。それは、リスクを評価する新たな方法があることを意味する。例えば、Apple WatchやFitbitは、人々の毎日の運動量の情報を得ている。これは、健康状態の評価を行うのに有効に活用することができるだろう。

また、自動車業界では、個人が毎日通勤するために運転する距離とどのような地形の道を通るかがリスクと直結する。加速度計は何年も前から存在し、現在ではどの携帯電話にもGPSが備わっているため、より正確で詳細なデータが得られるのだ。

新しい保険会社は、必要となる自己資本に関連する課題をいくつか興味深い方法で解決しようとしている。Oscarは、最初の資金調達ラウンドで巨額の資金を調達し、続くラウンドでも大きなラウンドを達成した。これは法定自己資本比率を満たすためでもある。

他の企業は、オンライン融資で用いられるユーザー間での融資モデルをからヒントを得て、監督機関が求める自己資本比率を達成しようとしている。このアプローチを取る海外企業を多く見てきた(例えばドイツのFriendsuranceなどだ)。アメリカにも同様のアプローチを取る企業があり、アメリカの監督機関がどのような反応を示すかに注目したい。

最後に、保険業界はカスタマーを獲得するための新しい方法を欲している。ミレニアル世代は愕然とするほど保険に加入していない。それは、彼らの多くは電話で誰かと話すことを望んでいないからという要因もある。彼らが安心して利用しようと思うチャネルは、保険会社が彼らにリーチしようとしているチャネルとは異なるのだ。結果的にターゲットとなるデモグラフィックの大部分にサービスを提供できないでいる。

PolicyGeniusは、今までコンバージョンを起こすことができなかった世代に対し、オンラインでより良い情報と教育を施すことでコンバージョンできることを既に示している。

私は保険スタートアップの将来を楽観的に捉えている。もちろん課題はあるが、どんな問題を解決しようとする場合にも課題はつきものだ。保険業界は変化を求めている。人々は最初、金融サービスへのニーズがあったとしても銀行よりスタートアップを信じるとは思えなかったし、スタートアップが保守的で確立している強力な業界を変えることができるのかと懐疑的であった。しかし、その見解は間違っていた。既存の銀行は生き延びるためにイノベーションを起こさねばならず、右に左に買収やパートナーシップの締結に奔走している。

同様に保険業界も、私はイノベーションが既存の業界内から起きると思わない。スタートアップは自らチャンスを作り、保険会社が進みの悪い車輪を動かすことを強要するだろう。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

Homejoyが失敗した理由とオンデマンドエコノミーの未来

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編集部記Sam Maddenは、Crunch Networkのコントリビューターである。彼は、PocketSuiteの共同ファウンダーである。

Homejoyの失敗を見て「オンデマンドマーケットプレイス」の根本的なモデルを投資家、メディア、更にはコンシューマーが疑問視するようになった。この疑問は、VCの資金がオンデマンドサービスプラットフォームにここ数年で大量に投入されているのも関係しているのだろう。(2014年には40億ドル超だった。

投資家の視点では、このモデルは理にかなうものだ。プロダクトはスケールすることができ、ローンチ初日から利益を生み出し、強力なバイラル効果が得られる。Homejoyもこれに当てはまっていた。

Homejoyのミッションは明確で好ましいものだった。家の持ち主が、品質の高いホームクリーニング(後に他のホームサービスにも拡張した)を便利に利用できるのと同時に、プロのサービス提供者が起業家となる助けを提供する。

素晴らしいビジネスモデルに素晴らしいミッションを掲げていた。Homejoyは4000万ドルを調達するのに値する企業だった。

しかしHomejoyは失敗した。最も注目される失敗理由は、ワーカーとの雇用関係の区分における訴訟だ。Homejoyはプロを「契約者」として扱ったが、多くのプロは彼らは「従業員」であると訴え、従業員の規定に則った同水準の給与、福利厚生などを受ける権利を求めた。

彼らの主張通りに労働関係を変更した場合、Homejoyの経費は大幅に圧迫され、利益を得る手段を完全に変えることになっただろう。

「オンデマンドマーケットプレイス」の根本的なモデルを投資家、メディア、更にはコンシューマーが疑問視するようになった。

他の失敗理由として、企業の成長スピードが速すぎたことが挙げられている。カナダやヨーロッパへの進出が早過ぎた。どこの地域に進出するにも、マーケティングへの先行コストが膨大にかかる。急速な事業拡大は資金を急激に溶かす。しかし、最終的に投資対効果が見合う明確な筋道を示せるのなら、投資家は事業拡大計画に納得するだろう。結果的にキャッシュフローが上向くことが期待できれば良いのだ。

だが現実には、Homejoyの掲げた利益を得る方法は実現可能なものではなかった。プロとの雇用関係が契約だったとしても、中核市場の都市でさえ利益を得ることは可能ではなかった。その理由は突き詰めると、この企業が対象とした市場の性質によるものだと言える。

ユニークな巨大マーケット

ホームサービス市場は巨大だ。4000億ドルから8000億ドル市場だと予測され、多くの起業家や投資家が注目している広大な市場だ。しかし、この市場の性質は他のサービス市場とは異なり、特殊な力学が働いている。(他のサービス市場とは、交通、配送、フリーランスによる執筆などだ。)

自宅は自分が占有しているものだ。安全を確保できる場所だ。就寝したり、食事をしたりする場所で、愛する人が住んでいる。自宅の中、あるいは周辺でさえ、誰かを招くには相当な信頼関係が必要だ。

ホームサービスを誰かに依頼するには、保証と品質を重点的に精査する必要がある。無骨な配管工を家に入れるのにも、安心感がなければできない。毎月同じクリーナーに掃除を依頼するにも、一定の品質が保証されている必要がある。自宅を鍵を預けることになるペットシッターを信頼する必要があるのだ。

そして、信頼できて品質の高い仕事をするプロと巡り合ったのなら、彼らを手離したくなくなる。このクライアントとプロの関係は何十年に渡って続くこともある。このようなサービスは何回も利用されるものであるため、クライアントとプロの双方は透明性を求める。クライアントは「このプロは思っていた通りの仕事をし、毎回同じように家を整えることができるか?」を見定めたいと思い、プロは「今月いくら売上が見込めるだろうか?」という予測を立てたいと考えている。

Homejoyの根本的な問題

Homejoyは、家の持ち主が家に招くプロを探して依頼することを驚くほど簡単にした。また、未経験者でも働く意欲があり、時間の空いたプロがすぐに仕事に取り掛かれるようにした。Homejoyを利用することで、双方の抱える問題が解決したのだ。

しかし品質とコストの釣り合いが破綻していた。オンデマンドマーケットプレイスがホームサービスの分野で成功するには、プラットフォームは運営費を賄うために、最高品質のサービスを提供するか、あるいは素早く簡単なサービスを低価格で提供するかのいずれかに専念しなければならない。

Homejoyは、ユーザーが契約者を見つけて依頼するビジネスモデルを構築したため、プロへの研修の提供や仕事の品質保証には限度があった。このモデルは、クライアントに競争的な価格を提示することができ、家の持ち主にとってそれは一見魅力的なものだった。

しかしHomejoyのプラットフォームは「仲介者」の位置にあるため、取引決済の25%を得ていた。よってプロの報酬としては破綻した価格となる。そのため、彼らのプラットフォームには若く、未経験で品質の低い仕事をするプロの労働者(時にホームレスの人も含まれていた)を引きつけることになり、結果的に一定水準に満たない低品質の仕事が多くなった。これは、自宅に一点の曇りも残さないような品質の仕事を望む一般的なユーザーの意向と合致するものではなく、プラットフォームからの離脱を招いた。

Homejoyの別の選択肢は、従業員モデルに近い形にシフトすることだった。一定の品質レベルを担保するためにプロに研修を行い、彼らに市場価格の報酬と福利厚生を保証してカスタマーにつなげる形だ。しかし、もしHomejoyが取引毎の利益を得ようと考えるなら、家の持ち主は市場価格より高い料金を支払わなければならなくなる。市場で平均的な品質のクリーニングに対し、市場の平均価格以上を料金を支払うということだ。

この構造は、私たちが「プラットフォーム漏洩」と呼ぶ確率を高める。これは、クライアントが信頼できるプロを見つけた場合、オフラインで連絡を取り、彼らの提供する品質の高いサービスをより安価な値段で、いつでも素早く簡単に依頼できるようにすることだ。ホームサービス市場は、クライアントとサービス提供者との関係性が近く、信頼に重きをおいたモデルであり、その関係性は長く続く傾向にあるため、漏洩が起こりやすい。

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漏洩と離脱の問題

家の持ち主にとってHomejoyの全てが悪かったのではない。Homejoyはスキルのあるプロと家の持ち主を上手くマッチングしていたし、実際にクライアントとプロはビジネスの関係性を構築することができた。問題は、このような関係が「オフライン」へと向かったことだ。(つまり、プラットフォーム漏洩)

家の持ち主が一度信頼できる良きホームサービスのプロを見つけることができたのなら、プラットフォームに戻って新しい人を探すことにメリットはない。既に見つけた人より良い人を見つけられる保証はないのだから!良い仕事をするクリーナーに出会った家の持ち主が率先して、サービスを同価格(それ以上、時にはそれ以下にもせず)でプロにオフラインで仕事を依頼し、漏洩が起きていた。間違いなくHomejoyは便利なプラットフォームだったが、多くのクライアントにとってテクノロジーの便利さより信頼と品質が重要だったのだ。

プロにとって、オフラインで依頼を受けることは、仲介者がいなくなるために給料が即座に上がることを意味した。そして、定期的なキャッシュフローの源泉を得ること、そしてサードパーティが重要な顧客情報を保持するのではなく、自身で保有できることが確実なものとなる。

Homejoyから追放されるリスクもプロにはある。だが、プラットフォームで得ていた収入では生計を立てることは難しいため、そのリスクを取ることが正当化された。また、オフラインでの取引を望んだのはほとんどがクライアント側であったため、尻尾を掴まれるリスクは小さかった。誰が文句を言えるだろうか。

代替となるマーケットプレイスが豊富

Homejoyで嫌な体験をした家の持ち主には、他の代替手段が多く用意されている。最近、信じれないほど多くのローカルマーケットプレイスが登場している。自分にぴったりのホームサービスのプロを検索して、依頼できる様々なビジネスモデルのサービスが多く存在するのだ。例えば、 YelpThumbtackAngie’s Listはその一部だ。それぞれは独自の方向性、デモグラフィック、ユーザーエクスペリエンスを提供している。

家の持ち主が新しいクリーナーを探すのに便利で簡単な方法を求める場合、それを満たす多くの魅力的な手段がある。Homejoyとは異なり、これらのビジネスモデルの多くはプロを直接クライアントに供給し、協力して仕事ができたりするようにすることで、市場に流動性を与えているためにスケールも可能だ。この分野で重要となる直接的な関係性を妨げていないのが、Thumbtackが特に大きな成功を収めている理由の一つだ。

サービスに特化したオンデマンドプラットフォームでは、コモディティに近いサービスが成功を収めている。

特にホームサービスの市場のマーケットプレイスモデルは漏洩の問題に直面しやすい。ユーザーはぴったりのクリーナー、犬の散歩代行者、庭師を見つけた途端、再度プラットフォーム内を検索するプロセスを辿らなくても、彼らといつでも連絡が取れて依頼ができるようにしたいと思うのだ。プロにとって、継続的に依頼をするクライアントがどれだけ重要な存在であるかは分かりきっている。

他のオンデマンドの方向性

サービスに特化したオンデマンドプラットフォームでは、コモディティに近いサービスが成功を収めている。業界としては、交通(Uber)、食品配達(Instacart)、配送(Shyp)などだ。これらのオンデマンドプラットフォームが成功しているのは、クライアントがプロに対して深い信頼を寄せなくても良いものであるからであり、サービスの品質に大きな差が発生するものではないからだ。

もちろん、従業員対契約ワーカーとの区分についての同様の法的な争いはあるが、このような企業の多くは、この問題に対してコストとの折り合いが付く施策を実施することができ、運営を全て停止しなければならないほど追い詰められていない。彼らの根底にあるビジネスモデルは機能していて、今後どれだけの利益をあげられるかが焦点となっている。

プロとクライアントの関係性とテクノロジー

Homejoyが何故、どのように失敗したかは明白だ。企業は、 ホームサービス分野のクライアントとプロの関係に強力なテクノロジーを大胆な方法で適応しようとした。企業の持つテクノロジーがもたらした手法と便利さは、スタート時には彼らの追い風となったが、同じテクノロジーが最終的に彼らの終焉を呼び寄せた。長期の関係性が構築される独特な市場では、オンデマンドモデルは機能しなかったのだ。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

「デザイン」がモバイルアプリの「開発」を脅かしている

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編集部記:Anders Lassenは、Crunch Networkのコントリビューターである。彼は、デザイナーと開発者の両方に向けた一連のネイティブアプリのツールを提供するFuseのCEOである。

モバイルアプリが浸透すぎた余り、テクノロジー関連の人の多くがモバイルアプリの製作は簡単で作業工程もシンプルだと思うようになった。しかし、アプリ製作の舞台裏を覗いて見ると、予算超過、増加する不要なコードと遺産、開発期日の遅延を頻繁に起こしている。そしてその悲惨な歴史は度々繰り返されるのだ。

この問題はモバイルアプリ開発において特に顕著だ。現在モバイルアプリは、カスタマーと全ての企業が接する最も利用頻度の高い主要なインターフェイスとなった。同時にそれは、モバイルアプリのステークホルダーが増大していることを意味している。つまり、デザイナー、製作チーム、マーケッター、それぞれの上司、そして最終的に彼らに出資しているカスタマー(あるいはVC)だ。しかし彼らの中で、アプリがコード上でどのように動くかを全般的に理解しているのは、ほんの数人だ。

エンジニアだけがアプリ製作の作業工程を理解しているという意味ではない。アプリの計画段階(コンセプトやデザイン)と実際にコードに落とし込んでアプリを製作すること(開発)とに大きな隔たりがあるということだ。

文化的そして技術的な隔たりは、最終的なコードを実装する開発者とその他のアプリ制作の工程で関わる人全員との間に存在し、見逃せない摩擦を起こしている。言い換えれば、テクノロジーに関連するほとんどの人が問題の一部であるということだ。説明しよう。

コードでは実現できない世界を思い描いている

モバイルアプリのデザインについて話すとき、私たちは大抵、Photoshopや、InVisionやPixateといった強力なビジュアルの製作ツールを用いて描いたアプリの最終形態を思い描く。

しかし、それらのプラットフォーム上のアプリは、それを実現するコードと直接的に結びついているのではなく、理想の高い最終プロダクトを表現しているに過ぎない。アプリが、全て実用的な製品に仕上がるとは限らないのだ。(例えば、アニメーションが重い、ダイナミック過ぎるUIがある場合、見た目は魅力的だが、開発に更に数ヶ月要することになりかねない。)

だが、企業は視覚的に訴求するデザインをアプリ製作のための中核に据えることが頻繁にある。(ウェブベースのデザインを考えてみると、最終的なHTML/CSSコードのプロトタイプをリアルタイムで製作することができる。)

私はこれが起きるのを何回も見てきた。クライアントにデザインを提出すると、彼らはそのビジョンしか見えなくなってしまい、数週間、数ヶ月経って、承認したアプリと実際に製作されたアプリの差を見て愕然とするのだ。

そして、次の議題が持ち上がる。

デザインリソースの配分パラドックス

プロトタイプのデザインはアプリの見た目と機能を規定するもので、カスタマーや開発チームとの重要なコミュニケーションツールである。しかし、それはプロダクト自体ではなく、作業工程(それも高額)の一部に過ぎないのだ。

アプリがコードで実装された時、プロトタイプは価値を失い、そのための開発時間と予算の大部分が最終的には放棄されるものにかかっていたことが分かる。アプリの最終版に組み込まれなかったデザインと機能にかけられたリソースもあるだろう。

プロトタイプと開発の隔たりがあるほど、デザイナーにとってコード上で実装不可能なアニメーション、UIのコンセプト、豊富なメディアコンテンツをアプリに盛り込むのが容易になる。

この場合、デザイナーの時間と労力も全て無駄になり、問題が発覚した場合は、新たなデザインを考え直すことが求められる。それは大抵「最終」のプロトタイプが承認され、開発に手渡した後に発覚するのだ。

実際のデータ抜きで行われるデザインの危険性

プロトタイプを製作中のデザイナーは、最終版のアプリにおけるユーザーのインプットへの理想的な反応を反映する最も近い数値、名称、画像を選ぶ。しかしデザイナーはしばし、ユーザーインプットがいかに幅広いか、率直に言えば混沌としているかを忘れがちだ。そこを見落とすと、アプリの見た目を崩し、全く使えないものにしてしまうだろう。(DropboxのJosh PuckettがMediumにこの問題を明示した記事を投稿している。)

残念ながら、特定データ対デザインの問題は、アプリがベータテストを実施してからしか発覚しない場合が多い。ラッキーな開発者はそこで分かるが、アンラッキー(こちらの場合が多い)な場合、App Storeで開放し、実際のコンシューマーが利用してからしか分からない。いずれにしろ、コストと時間がかかるアップデートが要求され、デザイナーと開発者の両方が作業をやり直す必要が出てくるだろう。

プロトタイプではなく、アプリを作ろう

このような問題を克服するのに、デザイナーがコードを覚えるべきという意見を聞くことがある。Jesse Weaverの意見と同様、私もこれは実用的でも望まれる解決方法でもないと考えている。最も重要なのは、アプリを全体として深く理解することだ。プログラミングの基本から、UIやアート的な要素といった表面の部分、そしてそのアプリが動くことになるそれぞれのプラットフォームの文脈を理解することだ。

これは、アプリ開発が一方通行の作業工程ではないことを理解することでもある。アプリ開発において、アプリをデザインしたら開発者に手渡すというあまりに普及しすぎたアプローチを止めなければならない。必要なのはデザイナーと開発者が協力して、魅力的で胸が高鳴るようなアプリのビジョンを構築するために、アプリ専用の作業工程を確立することが必要だ。そして、描いたビジョンが現実に構築できるものかどうかを一歩計画を進めるごとに確認すべきだろう。

モバイルアプリが企業の重要なプロダクトになるほど、アプローチ自体を成長させることがこれまで以上に重要になってくる。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

ユニコーンクラブへようこそ!2015年版:10億ドル企業から学ぶ

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paper-unicorns編集部記Aileen Leeは、Crunch Networkのコントリビューターである。Aileen Leeは、シードステージのファンドであるCowboy Venturesのファウンダーで、ソフトウェアを通して、起業家の革新的な仕事と生活を支援している。

前回、過去10年で最も成功したベンチャー投資を受けたアメリカのテクノロジー企業の分析記事を投稿してから一年以上が経過した。

前回の記事で記載した通り、多くの起業家、そして彼らを支援するベンチャー投資家は、立ち上げた企業を強い影響力を持つことを表す評価額10億ドル以上に成長させることが目標だ。このような企業を「ユニコーン」と呼ぶのは、評価額10億ドルを達成するのは難しく、達成した企業は非常に稀な存在で、研究もさほど進んでいないからだ。

10億ドルの線引が重要なのは、大抵のベンチャーファンドは、そのように大成功する一握りの企業への投資からリターンを得ているからだ。そして、ファンド規模が大きくなるのに従い、更に大きな「エグジット」を達成しなければ満足できるリターンを得ることはできない。(Cowboy Venturesは性質が少し異なる。基本的には小さいファンドだが、ユニコーン企業にも投資したいと考えている。)

例えば、投資資本が4億ドルのベンチャーファンドがその分のリターンを得る場合、エグジット時に10億ドルとなる企業の20%を2社分保有している必要がある。あるいは、買収か株式公開の時に評価額が20億ドルとなる企業の20%でも良い。

前回の記事とユニコーン企業という呼称は、嬉しいことに思っていたより多くの人の目に留まった。特別な事を表す特別な言葉で、つまらないビジネス用語にならないように期待している。

何人かからは「ユニコーン」の追求は煩わしく、テクノロジー企業の評価のあり方を変えてしまうのではないかという懸念の声もあった。それに対しては、2つの点を強調したい。

一つは、現時点で最も早くスケールしているテクノロジー企業から学ぶために、それらの企業を特定する指標(完璧な指標でないことは認める)として使用していることだ。私たちの目標はユニコーン企業のリストを作成することではなく、彼らから学ぶことである。また、一時的に紙面上の評価額を高めることを促すものではない。持続可能でなければそのような企業は問題が多い。

二つ目は、前述したように、今のベンチャー投資企業の規模を見ると、十分なリターンを得るためにはユニコーン企業のエグジットが必要不可欠であるということだ。投資家の中には、起業家が「ユニコーン評価額」を追求する姿勢に良い顔をしない者もいる。しかし正直な所、多くの投資家もその評価額を求めている。そして、スタートアップの巨額の資本金の形成を支えている。(これについては後述する)

私たちのデータは、公開されている情報源と最新の集約した情報(限定的な情報である)を元にしていることに注意してほしい。更新した企業のリストから、新しい学びと前回の発見を強調する情報もあった。それを以下のようにまとめた。

新データの分析の概要

1)「ユニコーンクラブ」に該当すると私たちが認めたアメリカ企業は84社あった。前回から驚きの115%増だ。主な要因は「ペーパーユニコーン」の増加だ。つまり、プライベート企業で資本の流動化イベントを行っていない企業だ。しかし、このような企業の希少価値も依然高い。リストに入った企業数は、ベンチャー支援を受けるコンシューマー対象スタートアップ、法人対象テクノロジースタートアップ全体の0.14%に過ぎない。

2) 過去10年間、毎年平均8社のユニコーン企業が誕生している。(2003年から2013年の10年間は4社だった。)2005年から2015年で、スーパーユニコーン(1000億ドル以上の評価)は生まれなかったが、一角獣ならぬ二角獣(100億ドル以上の評価)は9社生まれた。これは、前回より3倍多い。

3) コンシューマー対象企業が全体の評価額の大半を占めている。企業の数は増え、平均評価額も高くなった。また、プライベートに調達した資金も多くなっている。

4) 法人対象企業数はコンシューマー対象企業より少なく、プライベート資本の調達額も少ない。法人対象企の資金調達の増額は、プライベートに調達した資金に対してのリターンの割合を低減させている。

5) ビジネスモデルでは、Eコマース企業が評価額の大部分を占めているが、このカテゴリーの「資本効率」が最も低い。法人対象企業とオーディエンス企業の評価額のマーケットシェアは下降し、SaaS企業のマーケットシェアが躍進した。さらに今回、コンシューマー向け電子製品/物のインターネットのカテゴリーを追加した。

6) 対象勤務期間を超えてスタートアップの旅は続く。エグジットしたリストの39%の企業が「資本の流動化イベント」の実施まで平均で7年かかった。残り61%のプライベート企業を含んでいない。「プライベートユニコーン」の資本効率は驚くほど低く、将来ファウンダー、投資家、そして従業員へのリターンに良い影響を与える可能性は低くなるだろう。

7) シリコンバレーの「年上世代」に朗報だ。教養があり、テクノロジーに精通していて経験豊富な30代、そして過去に仕事を共にしたことのある共同ファウンダーとのチームが最も成功を収めている。20代のファウンダーの企業やピボットが大成功した企業は少数派だ。専任のCEOが長い期間、企業を率いてスケールし続けている企業が成功している。

8) サンフランシスコがベイエリアを最も価値の高いテクノロジー企業の中心地としての存在感を維持した。ニューヨークやロサンゼルスの重要性も増してきている。

9) 現在のテクノロジー企業の創業と価値の創造において移民が大きな役割を果たしている。ワーキングビザが簡単に取得できるようになるなら、今後どれだけ多くの価値が創出できるのか考えてしまう。

10) 企業の上層部には、未だにダイバーシティーはあまり見られない。前回は全くなかった性別のダイバシティーに関してはポジティブな動きが見られるが、他の人種や少数派グループに関するデータは十分に得られなかった。

詳しい説明と他の発見

1) トップ0.14%の選ばれし84社のユニコーンクラブへようこそ。


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  • 私たちのリストに入ったのは84社だった。(選定基準は、アメリカに拠点を置き、ベンチャーキャピタルから資金調達を受けた、ソフトウェアとインターネット主軸の企業であること。そして2005年以降に創業し、株式公開会社、あるいはプライベートでも投資家から1億ドル以上の評価額を得た企業だ。)これは、1年半前に行った前回の分析時の企業数から115%増の驚くべき躍進だ。
  • 85社の評価額の合計は3270億ドルであり、これは前回の分析時の2.4倍である。(ただし、前回の分析からFacebookを除く。Facebookは、前回のリストの評価額の半分を占めていた。)
  • 各社の評価額の増加が要因ではなく、企業数の増加が累計価値の劇的な増加に貢献した。企業の平均価値は39億ドルであり、前回の8%増に留まる。
  • 「ペーパーユニコーン」の増加が評価額の合計を後押しした。プライベート企業は全体の61%(前回36%)であり、累計評価額は1880億ドルで、企業の平均価値は37億ドルだ。

何故2013年と比較して「ユニコーン企業」は増加したのか?いくつか考えられる理由を挙げる。
a) 魅力的なプロダクトを利用するのがこれまで以上に簡単になった。グローバル市場の急成長、モバイルとソーシャル・ネットワークで情報が広まるスピードが加速した。これは急速な成長、利用率、エンゲージメント率をこれまで以上に向上させた。(A16Zのプレゼン内容が基本的なポイントを抑えている。)

b) ブランディング、スケール(ネットワーク効果を含め)、更に劇的な軍資金の増加(こちらを参照)に伴い、投資家の機会損失への不安、そして「勝者」にはいくら高額でも投資するニーズ(Bill Gurleyがこれに関する素晴らしい考察記事を書いている)で市場は勝者総取りの様相を呈していること。

c) 後期ステージに十分な資金が多様な方面から得られるようになった。後期ステージファンド、早い段階から投資する大衆投資家、グローバルな戦略投資家が増えたのだ。これらの投資家は、一般的なベンチャー投資家より、投資するコストが低く、リターンを得るハードルも低い。多くの場合、評価額に関わらず下値保護を受けることができる。(Fenwickの素晴らしいトレンド分析はこちらから見ることができる)

d) 公開株式市場が活発になったことで、楽観的な見方が広がった。NASDAQ市場は前回の分析時より32%上がっている。

e) 楽観的なプライベート市場が「ペーパーユニコーン」の集まるシェルターを形成。企業が非公開の場合、ファウンダーは投資家と野望を語ることができ、報告も少なくて済む。株価も流動的ではないため、評価額の短期的な変動を抑えられる。これらの要素と上記の理由と相まって、プライベート企業が株式公開企業より高い評価額の数値となることを促している。(エンゲージユーザー数、収益、EBIT、成長率を偏って見ることで、プライベート企業が公開企業より高い評価額が算出されている場合もあるだろう。 WSJThe VergeJosh KopelmanThomas TunguzCB InsightsDeepak Ravchanranの内容を参照。)

  • 数は倍増しているが、それでもこのような企業を構築するのは難しく、稀な存在であることに変わりはない。過去10年間に6万のソフトウェアとインターネット企業が投資を受けたのならその内のたった0.14%しかユニコーン企業に成長しない。つまり、714社に1社の割合だ。このような企業を創業したり、あるいは働いたり、投資したりしてリターンを得られる確率は、メジャーリーグの試合でボールを取る確率より低いが、サメに攻撃されて死亡する確率よりは高い。そのような確率で物事が回り続けている。

2) 過去10年間、毎年平均8社のユニコーン企業が誕生している(2003年から2013年は4社だった)。2005年から2015年の間にスーパーユニコーン企業(1000億ドル以上の評価額)は誕生しなかったが、二角獣(100億ドル以上の評価額)は9社誕生した。これは、前回より3倍多い。

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  • ユニコーン企業が誕生するのに最適だったのは2007年(リストの27%が該当)と2009年(18%)だった。この二年間にリスト内の45%の企業が創業している。
  • 2007年と2009年に何が起きたのか?2007年: iPhoneがローンチした。その年の終わり頃、世界恐慌以来最悪の経済危機がアメリカで始まった。2009年:ちょうど1ヶ月前、Androidがローンチした。そして、景気後退の底辺に到達した。ここ十年でNASDAQ、S&P500、DJIAが最も低い数字を示した。
  • ユニコーン企業の最適な創業時期は、a)大転換をもたらす新しいテクノロジープラットフォームがローンチされた後の、b)公開市場の冷え込みが長引いている時だ。
    良い仕事の空きがなく、機会コストが低減し、市場の苦しい時期に素晴らしいイノベーションと成功への執念が芽吹くのかもしれない。
  • 注目すべきなのは、リストの中にはとても若い企業もあることだ。Illumio、Oscar Health、Zenefitsは全て創業してから3年未満の企業だ。素晴らしいプロダクトと成長するグルーバル市場とモバイル市場が相まって「脱出速度」に到達する時間を短縮し、いくつかの企業にとってはユニコーン企業へと成長する後押しとなった。急激な加速をもたらした変化は、他の企業、特にカスタマーが企業と長期に渡るエンゲージが出来ておらず、カスタマーが満足していない場合は急激な減速を見たかもしれない。
  • 前述した通り、どの主要なテクノロジーの波も1社以上、1000億ドル以上の「スーパーユニコーン」を育んできた。
  • 2000年代のスーパーユニコーンであるFacebookの評価額は増加している。現在2470億ドルの評価額で、前回から102%増だ。これは、前回のリストの企業の全てを足しあわせた額より大きい。今年のリストのコンシューマー対象企業の累計よりも大きい。(Facebookは11歳になったので、私たちのリストから卒業した。)
  • 現在二角獣(100億ドル以上の評価額)は9社あり、前回から3倍の数となった。9社の内5社は大きくモバイル関連と括れる。(Uber、Twitter、WhatsApp、SnapChat、 Pinterestだ。)
  • これまでの経験からすると、2010年以降の企業からもこの時代のテクノロジーの波であるモバイルウェブを代表するスーパーユニコーンが1社か2社誕生することが予想される。どの企業がこの主要なインベーションを代表することになったとしても(Uberが有力か?)、その企業はFacebook、Google、Amazonの評価額と同じように右肩上がりを続けるだろう。

3) コンシューマー対象のユニコーン企業が、総評価額の大半を担っている。企業数も増えたが、平均評価額も高くなった。これらの企業は多くのプライベート資金を調達している。

  • コンシューマー対象企業(主要なカスタマーがコンシューマーの企業)は累計評価額の72%を占めた(前回は60%)。企業数は全体の55%で、平均評価額は51億ドルだ。
  • 最も評価額の高い10社の内8社がコンシューマー対象企業だった。コンシューマー対象企業は法人対象企業より高い評価が得られやすいようだ。
  • これらの企業の評価額は、プライベートに調達した資金の11倍である。(100倍超のWhatsApp、FitBit、YouTubeは除外。前回の平均も11倍だった。今回の中央値は9倍。)
  • ファウンダーが大成功を目指して会社を創業した時、その後何回株式を希薄化するラウンドを行うかや、優先権の付与にいくらの資金が追加されるかは分からない。(Heidi Roizenはこれについて良い記事を書いている。)
  • ポイント – リスト内のコンシューマー対象企業は平均5億3500万ドルを6回のプライベートラウンド(シリーズE以降)で調達した。前回は3億4800万ドルであり、54%の急伸だ。コンシューマー対象企業の7社は10億ドル以上のプライベートの資金調達を行っていた。
  • いくつかのコンシューマー対象企業はプライベートに調達した資金に対して目覚ましいエグジットを達成している。エグジットの半数以上は買収によるものだ。WhatsApp(325倍!)、 YouTube(144倍)、Fitbit (132倍)、Zillow (48倍)、 そしてNest(40倍)だ。
  • 一方、コンシューマー対象企業の20%の評価額は、プライベートに調達した資金の4倍以下だった。それらは、Evernote、FanDuel、Gilt Groupe、Groupon、JustFab、Lyft、SoFi、Tango、Zyngaだ。

4) 法人対象企業のプライベートに調達した資金は少なかった。資金調達が多いほど、深刻なほど資金効率が低下している。

  • 法人対象企業(法人が主要なカスタマーの企業)の平均評価額は25億ドルで、これはコンシューマー対象企業の平均評価額の半分以下だ。
  • 注目すべきなのは、プライベートに調達した資金は平均2億4700万ドルで、前回より79%増加したことだ。しかしこの増加は、前回26倍だった資金効率を著しく低下させ、今回の法人対象企業の資金効率の中央値は7.6倍に留まった。
  • プラベートの資金調達額に対し突出したエグジットを達成した法人対象企業はVeeva(926倍!)Workday(87倍)とSoftlayer(67倍)だった。
  • 法人対象企業の18%の直近の評価額は、プライベート資金調達額の4倍未満に留まった。AppNexus、Automattic、Box、Cloudera、Lookout、MagicLeapと Simplivityだ。

5) Eコマースが5つの主要なビジネスモデルの中で最も多くの価値を占めている。前回の分析時よりSaaS企業の評価額のマーケットシェアが飛躍的に増加した。また、今回5つ目のビジネスモデルのカテゴリーに、コンシューマー向け電子製品/物のインターネットを追加した。


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  • Eコマース企業(コンシューマーがインターネットやモバイルを介して商品やサービスを購入するサービスを提供している企業。UberやAirbnbも含まれる。)は、前回に引き続き最も大きな価値(36%)を占めた。また、最も多くのプライベート資金を調達(平均6億8300万ドル)し、資金調達額に対して評価額の割合(平均8倍)が最も低かった。これは、人件費、マーケティングコストがほかのカテゴリーよりかかることが要因だ。また収益も比較的低く、比較できる公開企業の指標が低いことが、プライベート評価額を低くしている。
  • オーディエンス企業(コンシューマーはプロダクトを無料で利用することができ、導線や広告の提供で収益を上げている企業)がリストの中で二番目に多くの価値を占めていた(27%)。企業数は、前回28%だったものが17%に減少した。3億5200万ドルを調達し、評価額は調達したプライベート資金の平均16倍だった。
  • 法人向けソフトウェア企業(法人のカスタマーに、より広範な規模のソフトウェアを販売する企業。クラウドよりオンプレイスの場合が多く、あるいはソフトウェアとハードウェアが付随している企業)は、平均2億6800万ドルを調達し、私たちのリストの「マーケットシェア」の数字は26%から17%が低下した。これらの企業はリストの評価総額の12%を占め、プライベート資金の17倍の評価額だ。
  • SaaS企業(クラウドベースのソフトウェアを「フリーミアム」か月額制で提供する企業)は企業数の31%を占めるまでに成長した(前回18%)。評価額は全体の20%を占める。資金効率が最も高いグループである。平均2億6700万ドルを調達し、評価額はプラベートで調達した資金の平均18倍を獲得した(Veevaを除外)。
  • 今回新しいカテゴリーを追加した。コンシューマー電子製品/物のインターネットで、コンシューマーが物理的な製品に対価を支払う。5つの企業がリストの6%を占め、平均2億6600万ドルを調達し、評価額はプライベートに調達した資金の18倍だ。
  • 重要なメモ:リスト内の32%の企業は、広い、あるいは地域的なネットワーク効果の特徴を持ち、人が集まるほどプロダクトやサービスの価値が高まるシステムだった。

6) 全体の39%のエグジットを達成した企業は、「資産の流動化イベント」を行うまで平均7年間かかった。まだプラベート企業である残りの61%の企業は含まれていない。「プライベートユニコーン企業」の資本効率は著しく低く、ファウンダー、投資家、従業員への将来へのリターンに影響を与えるだろう。

  • 会社を始める際、多くのファウンダーはこの旅路が普通のレースではなく、ウルトラマラソンであることに気がついていない。リストの33の企業が株式公開あるいは買収するまで平均で6.7年かかった。(創業から二年以内に買収された企業は除外。おめでとう!Instagram、OculusVR、YouTubeは例外中の例外だ!)法人対象企業が「資産の流動化イベント」を行うまでコンシューマー対象企業より約1年ほど長くかかっていた。対象勤務期間を超えて、長く続く旅路だ。
  • たった19社(23%)が株式公開した。株式公開時の平均評価額は89億ドルだ。これらの企業は、6回のラウンドで3億2900万ドルを調達した後に株式公開していた。現在の評価額は(VeevaとFitbitを除外)はプラベートに調達した資金の20倍だ。
  • 14社(17%)は買収された。「低め」の評価額での買収がトレンドのようだ。平均買収額は15億ドルで、プライベートに調達した資金の1億200万ドルの平均16倍の評価額で買収されている(WhatsAppとYouTubeを除外)。
  • 現在のプライベート企業の評価額が高くなっていること、そして公開企業になることで増加するオーバーヘッドと四半期ごとのプレッシャーがプライベート企業でいることを好む理由になっている。リストの51社はプライベート企業である。それらは、平均で5億1600万ドルを6回以上のラウンドで調達している。前回(2億5400万ドル)より驚きの103%増額している。(「古き良き時代」と比較すると、Amazonは株式公開する前に800万ドルを調達していて、Googleは2600万ドルだった)。
  • 重要なことは、プライベート企業の評価額は調達した資金の平均8倍だったことだ。これらの企業が現在の評価額よりエグジット時に「更に成長」しなければ、資本の流動化の際にファウンダー、従業員、投資家が得られる利益はこれまでの企業より低くなる。
  • これはいつ起きるのだろうか?過去数年でプライベート企業が調達した資金を鑑みると、2年から4年間分の運営資金は持っているようだ。もしプライベート資本が将来的に得られなくなるのなら、これらの企業は株式公開か買収を目指すことになる。幾つかの企業は、戦略的に正当化される方法で素晴らしく増額したエグジットを達成することだろう。他の企業は優先権が効果を発揮し、ファウンダーや従業員にマイナスな影響を与えることがあるだろう。「IPOは実質的にダウンラウンド(前回の資金調達時より評価額が低くなる)」という謂れの通りになる企業もあることだろう。これはリスト内の株式公開した企業の半分が該当する。最悪の場合は、「ユニコーンの亡骸」となるものもあるだろう。
  • プライベートの評価額と資本金の割合の縮小は、ベンチャーキャピタルの意識の変化を反映している。10年前、最高峰の投資家は、1500万ドルの投資に対し20倍のリターンを達成していた。つまり、3億ドルのリターンだ。多くのベンチャー投資家と彼らのLPが投資する時期を遅らせているのは、その方がリスクは低いと考えているからだ。そして、5000万ドルで後期ステージに投資し、6倍の3億ドルのリターンを得ようと考えている。

7) シリコンバレーの「年上世代」に朗報だ。企業に明確なプロダクトのヴィジョン、そして教養があり、テクノロジーに精通していて経験豊富な30代、そして過去に仕事を共にしたことのある共同ファウンダーとのチームが最も成功を収めている。20代のファウンダーの企業やピボットが大成功した企業は少数派だ。

  • リスト内の企業で、未経験で大学をドロップアウトした人が創業した企業は少ない。ファウンダーの創業時の平均年齢は34歳である(前回と同様)。オーディエンス企業のファウンダーは30歳、Eコマース企業は32歳、SaaS企業は35歳、コンシューマー製品/IoT企業は36歳、法人向けソフトウェア企業は39歳だった。
  • メモ:最も価値の高い10社のコンシューマー対象企業のファウンダーが会社を創業した時の平均年齢は29歳であり、中には若いファウンダー(創業した時に25歳未満)もいた。Airbnb、Automattic、Box、DropBox、Lyft、Snapchat、Tumblrだ。一方で、最も価値の高い法人対象企業の2社のファウンダーの平均年齢は45歳だった。
  • チームでの勝利:多くの企業(86%)には共同ファウンダーがいる。平均2.6人だ。85%の共同ファウンダーは、昔からの付き合いがある人だ。学校、仕事、ルームメイト等で、その多くは一緒に働いた経験がある。
  • 初めての企業は成功しなくても、、:企業の76%のファウンダーには起業家としての経歴があり、以前にも何か立ち上げた記録があった。
  • ファウンダーが一人だけの企業は12社だけだった。リストの上位15社には入っていなかった。前回の分析結果では、ファウンダーが一人の企業の4社全てが資本の流動化イベントを行っていたが、今回は、2社(New RelicとTumblr)だけがエグジットを達成している。
  • ほぼ全ての企業(92%)は、技術系の共同ファウンダーと共に会社を立ち上げている。90%は、テクノロジー企業で働いた経験を持つファウンダーだ。テクノロジー関係で働いたことがない人がこのような企業を立ち上げるのは稀だ。テクノロジー企業での働いた経験の無いファウンダーが立ち上げた数少ない企業は、コンシューマー対象企業であるBeats Electronics、Warby Parkerなどだ。
  • 教育は割りと重要なようだ。リストのおよそ半数のファウンダーはとても高い教育を受けている。「アメリカの大学トップ10」を卒業している。しかし、19%の共同ファウンダーは大学を中退している。
  • 多くのファウンダーCEOがスタートアップの旅を通して成長している。74%の企業は今でもファウンダーCEOが率いている。あるいは、ファウンダーCEOが流動化イベントを率いた。これは、ファウンダーCEOの才能について多くを語っていると言える。彼らは、シードステージから複数の資金調達を行い、リーダーチームの変更と数百から数千のチームメンバーを率いるリーダーシップを持ち、また多くの場合は海外展開に取り組み、過去10年間で最も成功した企業を作り上げた。
  • 企業の26%で、CEOの交代があった(前回は31%)。法人対象企業の方がCEOの交代率が高い。法人対象企業は32%で、コンシューマー対象企業は22%だ。
  • 企業の83%は、最初のプロダクトのヴィジョンを追求している。大きなピボットを選択し、プロダクトを変更したのはたった17%だった。
  • 法人対象企業よりコンシューマー対象企業の方がピボットが多い。前回の分析では、たった4社(10%)の企業が、最初のプロダクトから「ピボット」していた。全てがコンシューマー対象企業だった。この「ピボットクラブ」に今回、法人対象企業のSlack、MongoDBのような企業が加わり、コンシューマー対象企業では、 FanDuel、Lyft、Nextdoor、Wish、Twitchなどが加わった。

8) サンフランシスコがテクノロジー企業の中心地としての存在感を維持していた。ニューヨークやロサンゼルスの重要性は増してきている。

  • 企業の40%はサンフランシスコに拠点を置いている(前回38%)。内訳は、サンフランシスコペニンスラに23%、イーストベイに4%、ベイエリアには67%が集中している(前回69%)。
  • 「ザ・ビッグ・アップル」の愛称のニューヨーク市は二番目に重要な場所で、12社(14%)が拠点を置いている。前回の8%から増加。
  • ロサンゼルスが参戦。ロサンゼルスからは今回6社がリストに入った。Snapchat、Beats Electronics、OculusVR、TrueCar、JustFabとHonest Companyだ。
  • 他にはボストン3社、オースティン2社、シアトル2社だった。

9) 現在のテクノロジー企業において創業と価値の創造において移民が大きな役割を果たしている。

  • 私たちが調べられた範囲では、リスト内の50%の企業の共同ファウンダーの1人は海外の出身である。このような素晴らしい人材は、多くの場合異なる言語を話し、何年も違う場所で学校に通い、アメリカで何億ドルもの価値創出に貢献した。このようなファウンダーと彼らの家族が、私たちの国に来て働く方法を探し出したことはとても喜ばしいことだ。そして、彼らのような卓説した技術やスタートアップ向きのスキルを持った人がこの国で働くために簡単にビザを取得できるようにしたのなら、創出される仕事や価値がどのくらい増えるのかと考えてしまう。
  • (気になっている人のために記しておくと、海外出身のファウンダーの出身国は「I」で始まる国が多かった。インド、イラン、アイルランド、イスラエルだ。また、良き隣人であるカナダの出身者も多い。)

10) 2015年でも企業の上層部にはダイバーシティーが少ない。しかし、性別においてはポジティブな動きが見られる。

  • 前回のリストには女性のCEOの企業は一社もなかった。今回2社の女性CEOがリストに含まれたことは喜ばしい。HouzzとGilt Groupeだ。そして、女性の共同ファウンダーがいる企業は10%(前回5%)に増えた。CloudFlare、EventBrite、FanDuel、Gilt Groupe、Houzz、NextDoor、Kabam、The Honest Companyだ。CEO全体の2.4%は、まだ祝福するほどの数字ではないが、前回のゼロに比べれば改善しつつある。
  • 公開情報からだけでは詳細には分からないが、リストの30%の企業のリーダーチームに女性がいないと予測している。私たちが特定できた女性シニアリーダー職の多くは、CFO、VP、HR、GC、セールスとCMOの役職だった。プロダクトや開発の役職で女性のリーダーがいた企業は少なく、ここにダイバーシティーを進める機会があると私たちは考えている。リストの中で最もダイバーシティーが進んでいるGilt Groupe、Lending Club、New RelicとZenDeskを褒め称えたい。
  • 私たちが知るかぎり、最大70%の企業が役員レベルで性別のダイバーシティーがないと言える。これも成果を改善するのに大きな機会であるように思い、トップから重要なメッセージを社内に浸透させることができると思う。リーダーチームや役員にダイバーシティーがない企業は発表しないが、存在している。それらの企業がそこから抜け出し、成果と組織文化を形成するのに重要な要素を見落とさないことを期待したい。Sukhinder Singh CassidyのBoardList のような取り組みが、このような企業の役員構成に適した人材を探す手立てになるだろう。
  • メモ:人種や民族のダイバーシティーの情報をトラックすることはできなかったが、今後の分析ではこの重要な要素もトラックできるようにしたい。

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これらのデータが意味するところ

この分析結果から私たちが学んだ最も重要なことは、「ペーパーユニコーン」の台頭と、彼らの資本効率性の低さだ。これを引き起こしたのは、素晴らしい市場環境も影響しているが、多くは株式公開で取引するインセンティブが少ないこと、激しい企業間の競争、グロースのためにプライベート資金が集まることで企業が「早く大きくなる」ことに集中しすぎていること、更に株式公開時の評価額が順当ではないことが挙げられる。

多くの投資家には優先株による下値保護が適応され、多くの起業家も後期ステージラウンドで「分前を頂戴」しているので、ペーパーユニコーンが株式公開や買収された時、エグジットの評価額が現在のプライベートでのマーケットシェア価格より低いのなら、ファウンダーではない従業員が最も痛みを感じ、しわ寄せを受けることになる。

(考えさせられること:ユニコーンは素晴らしいことだが、ファウンダー、従業員、投資家にとって最も嬉しい状況は、プライベートで調達した資金の20倍以上で自慢の会社をエグジットに持っていくことだ。)

前回の分析結果と同様の学びもあった。ユニコーン企業には、共同ファウンダーのチームが明確なプロダクトのヴィジョンを持って創業した企業が多い。また、共に働いた経験のある共同ファウンダー、テクノロジー企業で働いたことがある人、起業した経験のある人、そして技術系のファウンダーのいるチームが多い。これらの企業は、成果と組織文化をチームと役員の中にダイバーシティーを加えることで更に成長することができるだろう。

そして、10年以上継続してビジネスを育てることができるコミットしたリーダーにより創業された企業が成功している。ファウンダーの滑稽にも思える夢から事業を始め、スキルを身につけ、何百回ものプロダクトの出荷、良い時も悪い時も生き延び、何回もの資金調達の中で何千もの従業員をひっぱり、チーム、投資家、役員の信頼を失わないようにするのは相当難しい。

これは本当に驚くべきことで、この分析結果自体もこのような不可能に思われることを、長い旅路の果てに達成した特別なファウンダーとチームを賛美するものであると言って良い。

何百万人のカスタマーを卓越したプロダクトで満足させ、飛び抜けた資金調達を達成し、今までない最悪の採用環境でチームメンバーを採用して確保し続けた、この輝かしい84社に最大の敬意を表す。

ユニコーンクラブの企業は、強運で粘り強く、天才的な企業の中の一部だろう。彼ら、そして将来彼らの仲間入りを果たす企業を通して更に考察を深めていきたい。

この記事を執筆を手伝って頂いたCowboyのメンバーに感謝:Joanne YuanNoah LichtensteinMichelle McHargueAthena Chavarria。そして、データ集めに協力してくれたSilicon Valley Insightsに感謝。


1. 私たちのデータは、ニュース記事、企業ウェブサイト、CrunchBase、LinkedIn、Wikipediaの市場に公開された情報に基づいている。また、現時点(2015年7月16日)で得られた情報と現在の市場状況に基づいている。カテゴリーは現時点では影が薄れたが、2013年時点では「注目」分野だったものだ。このデータは、アメリカに拠点を置き、VCに支援を受けたソフトェアとインターネットが主軸の企業を取り上げている。評価額の高い素晴らしい企業だが、SolarCity、Tesla、Theranos、SpaceX、FlipKart、XiaoMi、SuperCell、Arista Networks、Shutterstockなどはリストに含まれていない。
2. ユニコーン企業の発生率を特定することは難しい。NVCAは、2005年以降投資を受けたインターネット関連企業は2万1000社であるとし、Mattermarkは2万4000社であると伝えている。CVRは、毎年2万社がエンジェル投資を受けていると言う。なので、私たちは6万社のソフトウェアのインターネット企業が過去10年間で出資を受けたと想定した。
3. 「アメリカの大学トップ10」と定義したものは、US News & World Reportを参照している。
私たちのデータから卒業した素晴らしい企業もここに記す。
  • 前述の分析データから「卒業」した企業にはFacebook、LinkedIn、ServiceNow、Splunk、Palantir、Fireeye、Yelp、Tableau Software、Hulu、Kayakがある。
  • 2012年11月に記事を投稿した後、今までも1年半の間にユニコーンクラブに該当したが卒業した素晴らしい企業もいくつかあった。これには、Demandware、GrubHub、Indeed、MandiantとTruliaなどが含まれる。
  • リスト内のいくつかの企業は、この記事を発行する前に評価額が1億ドルを下回った。Castlight Health、Fab.com、OnDeck、RocketFuel、Whaleshark Mediaなどの企業だ。

[原文へ]

(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

コピペのアクセラレータモデルが次世代型に進化する時

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編集部記Vitaly M. GolombはCrunch Networkのコントリビューターである。彼は、CCC Startupsのファウンダーでパートナーであり、 Accelerated Startupの著者である。

ほとんどのスタートアップが失敗するというのは周知の事実だ。だが、ほとんどのスタートアップのアクセラレータも失敗するというのは、あまり知られていない事実だ。上位の数プログラムはこれからユニコーン企業となるスタートアップから利益を得ることができる。アクセラレータはスタートアップに大きく依存するビジネスモデルであるが、上位ではないアクセラレータは、投資適格となる企業を立ち上げることのできる優秀なチームを惹きつけることに苦戦している。

将来アクセラレータはビジネススクールの主流となり、これから価値の高い企業を立ち上げるであろう若い起業家に多大な教育的な価値を提供することになるだろう。ただ、アクセラレータが資金と時間を投資するそれらの起業家の最初のプロジェクトが、その起業家の究極的な成功となり、その一部を見返りとして手に入れられる可能性は限りなく小さい。アクセラレータが長期に渡って生き延びるためには、ビジネスモデルを変更する必要がある。

これまでの歴史を簡単に振り返る

1990年代の半ば、Idealabがビジネスインキューベーターモデルをテクノロジー業界に持ち込んだ。社内、あるいは公開されない状況でコンセプトが開発され、経験豊富な経営チームが迅速且つ制約が少ない中で意思決定ができる独立したビジネスへと成長させる。Rocket Internetはこのモデルを加速させ、世界の各注目地域でeコマースでの鞘取りビジネスや成功したモデルを真似したビジネスを数年の内に多数展開した。

2000年代半ば、Y CombinatorとTechStarsがアクセラレータモデルを牽引した。才能ある起業家や技術を持つ人に初めて光が当たるようになった。彼らは、メンターやモチベーションにつながる同じ立場の仲間、そして生活と実用最小限のプロダクトを市場に出すのを賄う程度の資金が用意された環境に身を置くことになった。Dropbox、Airbnb、SendGridのような最初の成功事例が出てくるようになり、このような成功を真似しようと世界中に数えきれないほどのアクセラレータが立ち上がるようになった。

コピペのビジネスは失敗する

量と質が比例するのは稀だ。バイラルで広がったアクセラレータモデルについても同じことが言える。プログラムの目標は良くても、それらのプログラムを運営しているのは、起業、テック企業の経営、投資家としての最良の企業を探して投資した経験のいずれかが不足しているチームであることが多い。

このようなアクセラレータは運営コストを賄える十分な資金を確保することはできたのだろう。地域の仕事を増やすことを目論む政府が開発したファンドのチェックを通過することができ、巷での信用を高めたい企業、あるいは自分のポートフォリオに多様性を持たせ、価値を高めることができると安直に考えた個人投資家から資金を得ることができた。

ただ上位プログラムは各募集につき何千枚の応募を受け、ハーバードやスタンフォードのMBAプログラムより候補者を厳選することができるが、その他のプログラムはそこからこぼれ落ちたものの受け皿であるということは最初から決まっている。どのプログラムも次の何十億ドル企業になるスタートアップを求めているが、最良のチームとその他とでは、チームとプロダクトのポテンシャルの質の違いは何百倍も違うのだ。

地域別の生活費の違いもこの方程式において重要な要素だ。サンフランシスコでの5万ドルの小切手は、3人のチームを貧困レベルにならない程度の生活を数ヶ月間やっと賄う程度だ。一方、他の場所、例えば東ヨーロッパの場合、普通の生活を一年以上も賄える場合がある。

これは、更に経験の少ない「夢見る起業家」のライフスタイルを味わいたいと考えるファウンダーを惹き付けることになりかねない。彼らが思い描くのは、スタートアップの生死が決まるRed Bullに支えられたプロダクト開発とマーケティング戦略を24時間詰め込んだ常にギリギリの生活ではなく、ピッチコンテストで予定を埋め、ハッピーアワーを楽しむ生活だ。いつか彼らもスキルを身につけ、とんでもなく価値の高いものを作り出すかもしれないが、それは同時に上位のアクセラレータ・プログラムに進む準備が整っていることを意味する。

次世代のアクセラレータ

Adeo Ressiの素晴らしさは説明し尽くすことはできないが、彼がFounder Instituteをローンチした時、多くの人はその授業料とシェアを分けるモデルを冷やかした。その後年月が経ち、Founder Instituteは世界中の何十もの都市に渡る何千もの起業家に多大な影響を与えることとなった。彼らは、実を結んだ企業のいくつから利益を出すことにも成功している。

General Assembly、TechHub、Galvanizeといった複数の企業も、起業家への教育とコラボレーションを促す仕事場を合わせて提供することで、価値が高く、利益を生み出すモデルを作り出すことができた。企業側も国の補助金やアクセラレータのスキームのシェアを用いて、彼らの興味のある市場の最も賢くて優秀な人たちと早くから関係性を構築しようと、この分野に参入している。

賢い大学も、彼らが急速に変容する教育業界で不利な状況になりつつあることに気がついている。例えば、スタンフォード大学は、これまでの理論を学ぶアプローチに加え、実践から学ぶ機会を提供するためのStartXをローンチした。

選択と決断

アクセラレータへの応募を考えているなら、プログラムが提供する援助や最終的な目標が自身のニーズや要望に応えるものであるかを自分自身で確認すべきだろう。アクセラレータ・プログラムで得られる最大の価値と呼べるものは、計り知れない経験値とメンターからのフィードバックだ。プログラムのメンターやそのプログラムに参加した経験のある企業のファウンダーと連絡を取って、自分でデューデリジェンスを行うべきだろう。

アクセラレータが提案する契約の内容も良く理解し、他の選択肢や機会損失についても比較検討しよう。

統合は必然的なことであり、現在私たちはアクセラレータ世界の新たなスタート地点にいるようだ。ドットコムシステムの崩壊は、インターネットスタートアップ時代という第二波を可能とするインフラを残した。アクセラレータのバブルは、次世代の起業家を全く新しい方法で育てるための実験室の役割を果たしたと言える。これは、注視しつつも期待が持てる状況であるだろう。

[原文へ]

(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

Snapchatのような最新テクノロジーを理解できない大人がすべきこと

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編集部記Greg GalantはCrunch Networkのコントリビューターであり、Muck RackやThe Shorty Awardsを運営するSawhorse Mediaの共同ファウンダーでCEOだ。

Snapchatは、私が年を取り過ぎたせいか理解することができなかった最初のソーシャルネットワークだ。

Facebookに加入したのは私が大学3年生の時で、Facebookが各大学のキャンパスで広がり始めたばかりだった。TwitterにもInstagramにも初期の段階で参加し、どちらでも@gregoryのユーザーネームを取得することができた。当時、こういったサービスの良さが「分からない」人をあざ笑っていた。

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そしてSnapchatが登場した。アプリをダウンロードしたものの、私の友人は誰も利用していなかったため、その魅力を理解することができなかった。

多くの人は年を重ねるにつれ、新しいソーシャル・ネットワークを取り入れるのに時間がかかったとしても問題は起きないだろうが、私が共同ファウンダーを務める Sawhorse Mediaは、最高のソーシャルメディアを称えるThe Shorty Awardsを開催しているし、事業もソーシャルメディアを活用したPRとジャーナリズムのSaaSソリューションのMuck Rackを提供している。最新のトレンドとなっているソーシャルメディアを理解する ことが私たちの仕事にも関わらず、Snapchatを分かっているメンバーは多くなかった。

Twitterが取り入れられた過程を思い返してみれば、人はTwitterで行われているやりとりに加わるまでその良さが分からないというのは明らかだろう。そこに到達するまで、多く人は「たった140文字で価値のあることを伝えられるのか?」とか「ブログではだめなの?」と言うものだ。Twitterに深く入り込むことが、Twitterを理解する唯一の方法だ。チームがSnapchatを完全に理解することができるようになる方法について私は考えた。

そして思いついたのが、会社で「Snapchatデー」を開催することだった。1営業日のメール、IM、チャット、テキストメッセージ、Trelloでのコメント、Githubのバグ対応、更には電話も含め、全ての社内コミュニケーションを禁止した。代わりに、全ての社内コミュニケーションをSnapchatで行うのだ。

「Snapchatデー」の出だしは困難なものだった。Snapchatは、効率的な社内コミュニケーションツールとして設計されていないことは明らかだし、それを実感した。ただ、一日の半分が過ぎたころには、チームの全員、このプラットフォームでのメッセージの送受信が上手くなり、操作方法をある程度学ぶ必要のあるインターフェースの基本的な使い方を覚えていた。Snapchatでどのようにバグ対応を連絡するかって?コミット画面の写真を撮って送っていた。

Seamlessでメンバー分の食事の意向を聞いて注文するのも一苦労だった。

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チームの最年少メンバーらが他のメンバーのメンターになった。他のメンバーというのは、25歳以上のメンバーほぼ全員だ。若いメンバーは、フォントサイズや色を変える方法、フィルターを付けてSnapchatのStoryを作る方法を教えた。一日の終わりには、全員がSnapchatでプロ並になり、それ以来、Snapchatを使い続けるメンバーもいて、会社のためになっている。

「Snapchatデー」は、私がこのプラットフォームに持っていた先入観を覆すこととなった。Snapchatは、物議を醸すような写真を送るためのネットワークだと思われている場合が多く、そのユーザーは共有されるコンテンツが保存されて残ると問題になる可能性についての配慮が無く、無責任だと思われている。だが実際には、Snapchatで投稿されるほとんどのものはカジュアルなコンテンツだ。(食べ物の写真や適当なセルフィーなど)で、Facebook、InstagramやTwitterに投稿するほどではない写真だ。

コンテンツに永久に誰もがアクセスできるのが基本のソーシャルネットワークと比較するとSnapchatへの投稿の方が責任が持てる。

最近追加されたSnapchat Storiesでは、24時間だけユーザーの友人に公開される、一連の写真や動画を投稿することができる。そこで、他のユーザーが動画でストーリーを伝えるのが上手くなる過程を見ることができた。将来、子供の頃Snapchatで動画を撮影したことが映像に興味を持ったきっかけだと話す映画監督が現れても私は驚かない。昨今の映画監督が、子供の時にビデオカメラを与えられた事が彼らのキャリア選択に影響を与えたと話すのとあまり変わらないだろう。

チームの新しいソーシャルネットワークやテクノロジーに対する理解が欠けているのなら、どのように使うかという説明を読むだけでなく、完全に没入して使ってみるべきだ。

Twitterを理解していないメディア企業は「Twitterデー」を導入し、公開しても良い情報を@replyで全員とメッセージをやりとりしたり、DMで直接メッセージを送ってみるということを試すことができる。

アメリカの企業で日本やインドネシア市場をターゲットとしているのなら、「Lineデー(これらの国で大変人気なメッセージアプリ)」を設けるのは良い考えかもしれない。

Apple Watchアプリの製作を検討しているチームは、Apple Watchと連動するiPhoneアプリで一日しっかりと、それでコミュニケーションを取ってみると良いだろう。

テクノロジーを理解するベストな方法は、実際に使ってみることだ。一日で学べることの多さにきっと驚くことだろう。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

デジタル時代に最適なヘルスケア

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編集部記Brian TilzerはCrunch Networkのコントリビューターである。彼は、CVS Healthのchief digital officerを務めている。

私たちはデジタルの時代に生きている。それはもう誰もが知っていることだろう。アメリカ人の3人に2人はスマートフォンを所有し、人口の86%以上はインターネットにつながっている。デジタルは私たちの人との付き合い方、働き方や買い物の方法にまで浸透したにも関わらず、健康管理についてはまだ始まったばかりだ。

70%のインターネットのユーザーは、健康に関連する情報をオンラインで検索したことがある。(自己診断で慌ててWebMD.comのサイトを見たことがあるだろう?)しかし、健康管理のためのアプリをスマートフォンにダウンロードしたことがある人は5人に1人だ。数ヶ月前の統計では、健康関連のアプリのダウンロード数はAppleのApp Storeの累計アプリダウンロード数のたった2.8%だった。

パーソナルなテクノロジーとパーソナルな健康管理が統合されることは、この上なく重要なことのはずだが、未だにこの2つはバラバラなことが分かる。パーソナルなテクノロジーは急激に普及したが、ヘルスケアはまだ追いついていない。デジタル時代は、パーソナルな健康管理をどのように促進することができるのだろうか?

スマートフォンを遠隔での診断ツールとして使用する未来を想像してみてほしい。

パーソナルな健康管理にテクノロジーを埋め込むべきだろう。デジタルテクノロジーはどこにでもあり、柔軟に構築することができるため、ヘルスケア企業にとってカスタマーのいる場所が彼らとの接点になる。コンシューマーは自分や愛する人の健康情報を個人専用のダッシュボードで管理し、ウェブやモバイル経由で簡単にアクセスできるようになる。スマートフォンのビーコン技術で、例えば薬局を訪れた際に、利用できるクーポンやリマインダを通知することもできるだろう。薬局や医療の専門家にテキストメッセージで質問し、タイムリーに1対1対のコミュニケーションを取って、必要な回答が得られる未来も想像できる。

処方を守ることで3000億ドルの節約に

最も明らかで深刻な問題を解決するのにテクノロジーは手を貸すことができる。処方された医薬品をその通りに患者が摂ることをサポートするテクノロジーだ。パーソナルなテクノロジーや法人向けテクノロジーは急速に進化を遂げたが、医者が患者に医薬品を処方し、薬局から患者に医薬品を届け、医療の専門家が患者の治療を処方通りに進める方法は、数十年間ほとんど変わっていない。医療業界が行動を起こし、古い運営手順をデジタル時代に合ったものに変えるべきだろう。

より多くのカスタマーがモバイル経由でオンラインのヘルスケア企業とつながってきている。それらのカスタマーは他と比べ、全体的に治療が処方通りに進んでいる。テクノロジーの力でトラック技術やコミュニケーション方法が改善すれば、治療が処方通りに行われないことで毎年医療システムにかかる3000億ドルの負担を削減することができる。そして結果的に何千、何万の命を救うことにもつながる。

この問題を解決するためのツールやインフラは既に私たちの指先に整っている。Apple Watchといったウェアラブルが更に普及することで、患者にとって有益で、邪魔にならない方法で処方薬の摂取を促し、処方薬がなくなれば補充する簡単な方法が整うだろう。生体情報を計測する技術が内蔵されているということは、ゆくゆくは心拍数の変化といった情報で、医療従事者が患者の処方薬の摂り忘れを探知できるようになるかもしれない。

FoursquareやNikePlusをとてつもなく有名にしたゲーミフィケーションのアプローチをヘルスケアの分野に活かす方法も検討されている。例えばMango Healthのアプリは、患者が処方薬を正しく摂るごとにポイントを付与し、溜まったポイントはギフトカードに交換したり、寄付として贈ることができる。

デジタルヘルスの未来像

これは始まりに過ぎない。スマートフォンを遠隔での診断ツールとして使用する未来を想像してみてほしい。例えば、端末にプラスチックの部品を付けて耳鏡にする。子供の耳の発症部位を自宅で撮影し、データベースの何千もの情報と照らし合わせたり、治療のためにすぐに病院の予約を取ったりすることもできるだろう。

デジタルツールをこれまでにない新しい方法で活用しようとしているプレイヤーが多く現れている。デジタルの未来の一部をここで紹介したい。

インターネットとつながるデバイスとコミュニティー
物のインターネットの分野は、デジタルでの健康管理を促進するだろう。iHealthは血圧計から簡単に使える体重計まで、インターネットにつながる多様なデバイスを製作している。健康に関する情報の計測や集積が簡単になり、情報へのアクセスも容易になる。

別の企業では1つの課題に特化している。例えば、Care TRXは吸入器をインターネットにつなげることに注力している。重要なのは、それらのデバイスと生成されるデータの周りに十分なエコシステムが構築されることだ。

歩数や心拍数を計測できることはとても頼もしいことだ。健康に関連したデータが患者自身だけでなく、医者、看護士、薬剤師やその他の同じ課題に直面する人と共有でき、より深い分析や比較検討が行われるようになることで、患者の健康状態をより素早く改善に導き、多くの人の助けとなるだろう。

革新的なビジネスモデルを構築する
糖尿病患者のための血糖値の計測器を製作するLivongoのような企業は、コンシューマーに直接提供するのではなく保険会社と協力することで患者が治療に沿う手助けをしている。

一般的な自動車保険のモデルと同様、患者は治療に沿う程度で変動する補助金に賄われたデバイスが提供される。デジタルな健康管理ツールをコンシューマーに直接提供して利用料を得るのではなく、今までにない方法を検討することで、本当に必要とする人が確実にソリューションを得られるようになるだろう。

デジタル健康管理への投資
スタートアップだけが変化を起こそうとしているのではない。大企業も彼らのリソースと専門性を活かす方法を模索している。Appleは新しいヘルスケアのアプリケーションの可能性を探しているデジタルテクノロジー企業の代表格だ。前述のApple Watchは、市場にもたらした革新的なヘルスケアデバイスの内の1つだ。

Phillipsもまた素晴らしい企業だ。Phillipsは10年以上に渡り、インターネットとつながるデバイスの分野を牽引してきた。そして彼らは、健康管理テクノロジー分野への造詣も深い。同社は、健康状態の診断と画像の研究においてMITと5年に渡る2500万ドル規模の提携を発表したばかりだ。

もちろん、ヘルスケアの分野で活躍することになるのはスタートアップやデジタル企業だけではないだろう。健康管理の分野にはまだ多くの可能性が眠っていて、人々の健康的な生活を促進する新しいデジタルサービスやツールを提供することで利益を得ることができるだろう。それは、最新で最良のモバイル端末と健康管理を統合したサービス、あるいはリモート診断技術、生体情報の計測のようなものかもしれない。今まで以上に、医療分野のプレイヤー、小売、テクノロジー企業、コンシューマーが互いに協力し、デジタル時代のテクノロジーとヘルスケアの連携について考えるべきだろう。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

テクノロジによる失業増大は労働と経済の(人類史上初めての)新しい行き先を示しているのだ

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[筆者: David Nordfors](Vint Cerfと共に仕事のイノベーションのためのサミットi4j(innovation for jobs)を主催。彼の前の記事。)

機械がチューリングテストに合格すると人間がロボットにリプレースされてしまう、と心配する人たちがいる。すでにそのリプレースは始まっているから、激しく心配する人がいても不思議ではない。

チューリングテストでは、二つの部屋にひとつは人間、もうひとつには機械…コンピュータ…を入れておく。どちらに機械が(人間が)いるかを知らない質問者が両者にさまざまな質問をして、その答を聞いた質問者が、どちらが機械か正しく判定できなかったら、その機械はテストに合格となる。そして、ロボットが人間の仕事を奪う

質問者がレストランのボスだったら、どうだろう。二つの部屋では、それぞれ人間と皿洗い機が皿を洗っている。ボスは汚れた皿を渡す。どちらの部屋からも、きれいな皿が返ってくる。皿洗い機は、チューリングテストに合格した!

“おい、それはチューリングテストじゃないぜ”、とあなたは言うだろう。“ボスは何も質問してないだろ”。でも、そんな苦情はぼくじゃなく、そのボスに言ってくれ。“皿洗い機は皿を洗うためにある。話をするためじゃない”、と彼は言うだろう。

彼の言うとおりだ。質問は正しく答えられる必要があり、そして皿は、もっとも安くもっともきれいに洗われる必要がある。今の私たちは、そういう、作業中心型(task-centered)の経済を生きている。作業中心型の経済では、皿洗い機がチューリングテストに合格する。機械が人間をリプレースする。物が、より安く作れるようになる。しかしどれだけ安くなっても、人間がそれを買うためには収入が必要だ。でも機械にリプレースされた人間には収入がないから、経済は縮小する。

これに対して、人間中心型(people-centered)の経済は、人間の価値を最大化し、近未来において作業中心型経済を打倒できる。人類史上初めて、一人一人の人間の技能や才能や情熱に合った仕事を、作り出せるようになる。労働経済はいわゆるロングテール型になり、そこでは仕事のためのeBay(job-eBays)や仕事のためのMatch.com(job-Match.coms)が、今日のMonster.comsをリプレースする。

人間中心型経済でも、チューリングテストはチューリングテストでしかない。レストランのボスは、今度は話をし、質問をする。すると彼は、人間と皿洗い機をすぐに区別できる。機械は皿を洗うが、ボスは人間とチャットして、レストランの評価を高めるために一緒に何をすべきかを話し合う。そのためには、人間にしかないクォリティをすべて活用しなければならない…そのために未来のITには新しい巨大な市場が生まれ、Vint Cerfとぼくが前に “How to disrupt unemployment”(失業をディスラプトする方法)でスケッチした“Jobly”のようなツールが次々と生まれる。

人類史上初めて、一人一人の人間の技能や才能や情熱に合った仕事を、作り出せるようになる。労働経済はいわゆるロングテール型になり、そこでは仕事のためのeBay(job-eBays)や仕事のためのMatch.com(job-Match.coms)が、今日のMonster.comsをリプレースする。

人間中心型の経済は、前に書いたように、労働市場に新たに提供される”140兆ドルの巨大なイノベーションの機会”だ。作り出される新たな価値の量とその生産性が、急上昇する。経済成長率は指数関数的に増大する。人びとの新しい消費機会には必ず、労働者の収入を増す新しいイノベーションが伴う。収入が増えれば支出も増え、ミドルクラスの活況が戻ってくる。

テクノロジが失業を増やすという説には、誤解がある。そもそも、失業者が増えれば収入が激減し、作業中心型経済も成り立たなくなるはずだ。ロボットが人間の仕事をすべてリプレースし、次は消費行動もリプレースするのか。そしてわれわれ人間は崖から谷底へ落ちてしまい、作業中心型経済は人間抜きで黙々と動き続けるのか。

チューリングテストの部屋に、皿洗い機でなく究極の人工知能が入るようになれば、人間のやることがすべて機械にできるかもしれない。

そうなるとボスは、どんな質問をしても人間と機械を区別できない。このテストが終わったら一緒に飲みに行こうよ、とボスが言うと、テストに合格したい機械は“いいですね、楽しみです”、と言うだろう。ボスは駆け寄ってドアを開ける。そしてびっくり仰天する。

だからコンピュータは“チューリングテスト”には合格しても、ぼくが“ブーバーテスト”(Buber test)と呼ぶテストには合格できない。ブーバーとは、“I and Thou”(我と汝)を書いた哲学者Martin Buber(マルティン・ブーバー)のことだ。

経済を論ずるときには、ブーバーテストがチューリングテストに劣らず重要である。人間的な経済は人生の意味を定義する。そして意味は、人と人との結びつきを強くし、ほかの生き物のことにも関心を向けさせる。

関係には二つのタイプしかない、とBuberは言う: “I-You”と“I-It”だ。“I-You”は、ほかの生き物と結びつける。その感覚は、物との関係とはまったく違う。ぼくの友だちは“You”だが、ぼくのコンピュータは“It”だ。ブーバーテストは、何を‘するか’ではなくて、何で‘あるか’をテストする。

人間は、一人では生きられない。私たちは、“You”なくして自分であることはできない。孤独感は、“You”によってのみ癒やされる。孤独は、一日にタバコを15箱吸うのと同じぐらい、健康を害する。そしてイギリスでは高齢者の5人に2人が、テレビが唯一の友だちだ、という。これを危険と見なさない経済を、健全な経済と呼べるだろうか?

むしろ、経済を論ずるときには、ブーバーテストがチューリングテストに劣らず重要である。人間的な経済は人生の意味を定義する。そして意味は、人と人との結びつきを強くし、ほかの生き物のことにも関心を向けさせる。一方、何かを‘する’ための方法は、物(アイデア、対象物、活動など)に関心を向けることによって作り出す。

そんな曖昧なものを経済とは呼べない、と思う人もいるだろう。それを、数字で表せるのか? 友情や親密さや親しい人間関係にドル記号($)はつけられない。だから“You”が経済になるためには、それを“It”として扱わなければならない、と彼らは言うだろう。

もっとも有能な人が仕事を取るのは当然だ、という考え方がある。仕事は、友だちと分け合うことができない。仕事が、血縁集団やOB集団に独占されることも、少なくない。

しかしそれでも、仕事は、好きな人や信頼できる人と一緒にした方がよくできる。友情や友好関係を経済価値と見なさないのは、間違っているだろう。われわれが、作業中心型経済という沈みゆく船に乗っているかぎり、そんな価値観は生まれないし普及しない。

OB集団が醜いのは、彼らが仕事を友だちに渡さないからではない。醜いのは、OB集団が新しい友だちを迎え入れないことだ。OB集団は、排他的だ。

でも、インスピレーションの源泉は他者への共感であり、それが何かの選択や企画のベースになり、チームワークと文化を育てる。

私たちには、ドルを目的ではなく手段とみなし、人間間(かん)の結びつきを良くすることを意図とする経済が必要なのだ。

共感。それがあれば、世界を多面的に見ることができ、同僚やクライアントやユーザや(今および将来の)顧客のそれぞれに、その人の世界があることを理解できる。

“まず最初に人間のことを考える‘people first’主義によって、デザイナーは、潜在的なニーズにもマッチした本当に求められているデザインに到達できる”、IDEOのファウンダでCEOのTim Brownは、そう語っている。

だから人間的な経済は、ほかのどんな経済よりもベターな経済だ。ただしその経済を量るための、新しい測度を見つける必要がある。たしかに人との共感は売上を増すためのレシピだが、人と人との結びつきを手段と考えたり、売上を作り出すことを意図とする罠に、陥ってはならない。

私たちには、ドルを目的ではなく手段とみなし、人間間(かん)の結びつきを良くすることを意図とする経済が必要なのだ。

共感のような、“I-You”のクォリティを測度とする経済モデルを考えることは可能だ。そしてそれを、有意な経済的価値に翻訳することもできる。心理学者たちを連れてきて職場やチームを量らせれば、彼らは、最良の経済は最良の方法で人びとを結びつける経済だ、と確言するだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

ソーシャルネットワークからマーケットネットワークへ

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編集部記James Currierは、Crunch Networkのコントリビューターである。James Currierは、アーリーステージのファンドでマーケットプレイスやネットワークビジネスのための3ヶ月プログラムを運営を行うNFX Guildの共同ファウンダーでパートナーである。

先月、HoneyBookという35名のサンフランシスコの会社がシリーズB*で2200万ドルを調達したことに多くの人は気が付いていない。

この投資案件の少し変わった所は、シリコンバレーの著名なベンチャーキャピタルのほとんどが投資を競っていたことだ。何故なら、HoneyBookはFacebookのようなネットワーク要素とAirbnbのようなマーケット要素の良い部分を併せ持ったデジタル企業における重要な新カテゴリーを体現するような企業だからだ。彼らのような企業をマーケットネットワークと呼んでいる。

マーケットネットワークは、これから新しいタイプの ユニコーン企業を輩出し、何千万人のプロの職業人の働き方と生計を立てる方法に多大な影響を与えるだろう。

マーケットネットワークとは?

「マーケットプレイス」は、不特定多数の購入者が不特定多数の販売者と取引する場を提供している。例えば、eBayEtsy、 UberLendingClubのような企業だ。

「ネットワーク」は、プロフィールに個人の情報を掲載し、ネットワーク内の人との360度、全方向のコミュニケーションを可能とする。例えば、FacebookTwitterLinkedInだ。

マーケットネットワークの特徴は以下のようにまとめられる。

  • ネットワークとマーケットプレイスの両方の主要な要素を併せ持っている
  • SaaSのワークフローソフトウェアを活用し、短期の取引だけではなく、長期のプロジェクトでのやりとりに焦点を当てて設計されている
  • それぞれのサービス提供者を差別化して打ち出し、彼らが他のユーザーと長期の関係を作るのを促進する

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例えがあると分かりやすいだろう。HoneyBookを見てみよう。HoneyBookはイベント業界のマーケットネットワークだ。

イベントプランナーは、HoneyBook.comでプロフィールを作成する。プロにとってこのプロフィールは、ウェブ上の窓口となる。HoneyBookのSaaSワークフローから自分のブランド名の元、クライアントに見積もり提案を送付し、契約もデジタルで交わされる。

他に一緒に働く職業人、例えば花屋や写真家といったプロをそのプロジェクトにつなぐことができる。彼らもHoneyBookのプロフィールを持ち、クライアントにサービスを提供するためにチームを組む。互いに見積もり提案を出し、契約書を交わし、支払いを受け取る。

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この多数対多数の取引パターンがポイントだ。HoneyBookは、一方通行でないN数の取引関係のあるマーケットプレイスということだ。取引は、ネットワーク上の360度の全方向で行われる。そのためHoneyBookは、マーケットプレイスとネットワークの両方を併せ持っているのだ。

マーケットネットワークは、通常オフラインのプロのネットワークを活用して始まることが多い。彼らは何年もの間、ファックス、小切手、翌日配達や電話を駆使して互いにやりとりをしていた。

これらのコネクションと取引をソフトウェアに組み込むことで、マーケットネットワークにおけるプロのビジネス運営とクライアントへのサービス提供が格段に簡単になる。

以前にも登場したマーケットネットワーク

AngelListもマーケットネットワークだ*。彼らが最初かどうかは分からないが、Naval RavikantとBabak Niviがこのモデルを2010年に先駆けて行ったことは称賛に値する。

AngleListのパターンも似ている。スタートアップのCEOは、AngelListのSaaSワークフローから資金調達のための書類作成、ネットワーク上の人と株取引、従業員の採用、カスタマーの発掘といったことを360度の全方向で行うことができる。

Joistも良い例だ。トロントに拠点を置く彼らは、住宅の改装や建築業界でマーケットネットワークを展開している。 Houzzもこの分野にいるが、広いリーチがあり、異なるアプローチを採用している*。シンシナティに拠点を置くDotLoopは、住宅の不動産仲介事業で同様のことを行っている。

AngelList、Joist、Houzz、DotLoop、HoneyBookを見ることで、マーケットネットワークのパターンが明確になるだろう。

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成功するマーケットネットワークの6つの要素

マーケットネットワークは、より複雑なサービスを対象とする
テクノロジー業界は過去6年間、サービスの簡単な受発注のための素早い決済が可能なオンデマンド労働マーケットプレイスに執着してきた。Uber、Mechanical Turk、Thumbtack、Luxeやその他多くの企業は、品質が客観的に判断できるようなシンプルなサービスの受発注を効率化することを追求してきた。彼らの成功は、マーケットプレイスの双方のユーザーをコモディティ化することでもたらされた。

しかし、例えばイベント企画や住宅の改装といった最高品質が要求されるサービスは、シンプルでも、品質を客観的に判断できるものでもない。また、長期間に渡ってそのプロジェクトに関わることが要求される。マーケットネットワークはそのようなサービスのために設計された。

人が肝心だ
複雑なサービスでは、クライアントが求めるものはそれぞれ異なり、どのプロに依頼するかも重要な要素だ。自分の結婚式のプランを誰にでも任せることができるだろうか?自宅の改装の場合はどうだろうか?取引におけるどちらの側も、LyftやUberのように代替が効くものではない。どの人も、そのサービスおける意見、専門性と関わり方が異なる。マーケットネットワークは、それを重要な理念として認識した上でソリューションを提供するために設計されている。

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プロジェクトを中心にコラボレーションが起きる
多くの複雑なサービスはある程度の期間をかけて、複数のプロが互いに協力し、またクライアントも関わることで進められる。SaaSがマーケットネットワークの中心となり、完成までに数日、あるいは数年かかるプロジェクトでのやりとりに焦点が当てられている。

マーケットネットワークは長期に渡る関係性を構築するために役立つ
マーケットネットワークによりキャリアを通して、プロが他のプロとのオンラインでのつながりを構築し、活用することができるようになる。これまでもLinkedInやFacebookといったソーシャルネットワークは、長期の関係を作るのに役立ってきた。ただ、マーケットネットワークの登場まで、コマースや決済に利用されることはなかった。

紹介が自由自在にできる
これらの業界では、クライアントとサービス提供を行うプロの両者にとって紹介はビジネスで重要なものだ。マーケットネットワークのソフトウェアは互いへの紹介を簡単に、そして頻繁に行われるようデザインされている。

マーケットネットワークは取引の速さと満足度の向上につながる
クライアントとプロのネットワークをソフトウェアに載せることで、マーケットネットワークは関連するそれぞれの取引を加速する。提案の締結率を向上させ、支払いを早めるのだ。ソフトウェアはカスタマーの満足度を高め、コミュニケーションの行き違いを減らし、仕事がしやすく美しくなる。仕事のしやすさと美しさを過小評価してはならない。

過去10年はソーシャルネットワークの時代だった。次の10年はマーケットネットワークの時代だ。

最初に電話やメールといったコミュニケーションのネットワークが出来た。次にFacebookやLinkedInのようなソーシャルネットワークが現れた。そして今、HoneyBook、AngelList、Houzz、DotLoop、Joistのようなマーケットネットワークが登場している。

マーケットネットワークがそれぞれのプロの代替が効かない業界に適応することが想像できるだろう。例えば、法律関係、旅行、不動産、メディア製作、建築、投資銀行、パーソナルファイナンス、建設、マネジメントコンサルティングなどだ。どのマーケットネットワークも、それぞれの業界で上手く機能するために異なる要素が組み込まれるだろうが、基本的な構造は似てくるだろう。

時間はかかるが、全ての独立したプロは、それぞれの業界のマーケットネットワークを通じてクライアントとビジネスを行うようになる。それが今まさに始まろうとしている。

マーケットネットワークの台頭で何千万人がより良いサービスを購入できるようになり、何千万人の働き方と生き方に広範でポジティブな影響を与えるだろう。

このビジネスに将来性を見出し、マーケットネットワークを構築する起業家が増えることを期待している。このようなプロダクトを正しく作るのは難しいことでもあるが、その潜在的な見返りは計り知れないものだろう。

*開示情報:私は、HoneyBook、Houzz、AngelListにアドバイスや投資、あるいは両方を行っている。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

ミレニアル世代という想像の産物

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「ミレニアル世代」に固執する現象は興味深いものだ。歴史上最も話題に登っている世代にも関わらず、多くの人、それも重要で影響力のある人でさえ、私たちの世代のことを理解できないと言う。ミレニアル世代の行動はつじつまが合わないと考え、私たちの親世代の考え方やキャリアパスが理にかなう完璧なものだと考えているようだ。

ミレニアル世代との関わり方を企業に教える専門のコンサルティング企業さえある。(Googleさえ、一括りにしてしまうのはやめて欲しい。)このようなビジネスを私も立ち上げ、情熱を傾ける仕事として自分自身のことを話せれば楽しいことだと思う。そして、情熱を注ぐことのできる仕事を通して、ミレニアル世代の真髄に近づけるだろう。

メタ・ミレニアルとでも呼べるだろうか。

企業は気まぐれなミレニアル世代について多くのことを書いているが、議論は尽きることがない。

それもそのはずだ。そもそも実質的な議論はなく、「ミレニアル世代」というコンセプトすら本当は存在しないからだ。実のところ、ミレニアル世代の価値観は、アメリカ人の価値観に他ならない。今週の連邦最高裁判所の同性婚を認める判決や、医療保険制度改革住宅差別を巡る判断はそれを明示していると言えるだろう。これらはベビーブーム世代より、ミレニアル世代の価値観にぴったりと合致するものだ。

ミレニアル世代は想像の産物に過ぎない。社会で起きた変化に影響を受けるのは、全人口ではなく、一部の狭いグループだけだと信じている人やマーケターの幻想だ。

それは間違っているのだ。

実際に何が起きているかというと、人々がようやくここ何十年かの技術的な進化を有効活用し始めてきたということだ。それは、これまで世界に欠如していたものを埋めるための力となる。私たちは「情熱を注ぐキャリア」を追求するために自分の道を選ぶことができるようになった。十分なリソースを持つ特権階級のエリートでなくても、テクノロジーを活用して、より良い未来を作ることができるようなったのだ。

そして驚くことでもないが、誰もがそれを行動に移してきている。

テクノロジーが社会に与えている影響をどこにでも見ることができる。ミレニアル世代は他のどの世代より「社会を意識している」と言われるが、それは特にソーシャルネットワークのようなテクノロジーを頻繁に使用することの効用だろう。これまで以上にアメリカ国内、更には世界中のニュースや人々の意見を入手することができるようになり、他の地域の争いや病を知ることがミレニアル世代に感情的な影響をこれまでの世代以上に与えていることは想像に難くない。

例えばNikeやAppleといったブランド企業も、自社工場の厳しい労働環境の問題について取り組まなくてはならなくなった。労働環境の変更や改善を強いられたのは、法律の改訂や政府の意向によるものではなく、カスタマーがそれらの企業の動向を知る方法を手に入れ始めたからだ。

社会の進歩を促すツールとして、スマートフォンに内蔵されたカメラほど影響力のあるものは他に出回ってはいないだろう。PeriscopeやMeerkatのような動画中継のストリーミングアプリにより、時間が経過してからではなく、リアルタイムでのその状況の意味を知ることができる。痛ましいことが起きるのを見て、それを改善したいと思わない方が難しい。これはミレニアル世代に限ったことではないだろう。いわば、人の本来の欲求だ。

テクノロジーは、世界で何が起きているかについて意識することを可能にした。ミレニアル世代の多くが、これまでの労働市場での役割を担うことを拒み、自分の道を切り拓こうとする理由の一つでもある。世界の多くの過ちに晒され、それぞれが少しだけ世界をより良くするために挑戦する時代に到達したと言えるかもしれない。無知でいることが幸福なのなら、テクノロジーは全ての問題を正すまで人々に永遠の不安をもたらした。

そのような思いとアメリカが国を上げて継続的に起業を促すのが相まって、ミレニアル世代が以前の世代より自由な発想で、自立を考えるのは何ら不思議なことではない。企業組織の階段を上るというアイディアをとても異質に感じるのは、これまでの人生の中で名高い企業が幾つも消えていったこと、そして仕事があまりに分担され、実際に誰かのためになっているように感じられないからだろう。

また、テクノロジーが会社の設立やサービス提供のための組織を構築するコストを削減したことも背中を押している。今では、ミレニアル世代に限らず誰もが、他人を気にせず自分の道を歩むという別の選択肢を手に入れた。世界は停滞している状態からクラウドやモバイル端末に支えられたテクノロジーを基軸とする柔軟なものに変わった。

しかし、このような力を活用するには値札が付く。この国で議論が起きる余地があるなら、それは今でも素晴らしいプロジェクトを達成するには、優秀なチームが必要だということだ。全員がファウンダーになることはできない。協調性があり、コミュニティーを尊重する精神があったとしても、それは他の誰かのスタートアップや非営利団体に加入することには直結しない。それならば、自分でビジネスを始めたいと思う人も多いだろう。

それでも、数百の巨大企業が中心となるのではなく、何百万の小さな企業が世界を回すということを受け入れなければならない。「ミレニアル世代」がもたらす最大の難しさは、彼らは世界を分散したものと捉えていることに起因する。多くのビジネスは未だに中央集権化することに焦点を当てている。つまり、何万のブランドがそれぞれのコンシューマーに順応するのではなく、唯一無二のブランドが存在するべきと考えているのだ。

幸い、この10年でマーケティングの潮流は変わり、コンシューマーのブランドに対するエンゲージメントが促進されるようになった。しかし、それは更に商品やサービスレベルまで浸透する必要がある。

中央集権への欲求は、非営利団体や政府部門でより強く感じる。赤十字社の無駄遣いを巡る騒動は、現在の大規模組織の問題を如実に表している。この組織がトップダウンではなく、ボトムアップの考え方をし、何千万ドルにも及ぶ資金を倹約しつつ、集まった寄付金を誰かのためになるよう活用することはできなかったのだろうか?

赤十字社の無駄遣いは、ミレニアル世代にまつわる話の再掲になる。ジャーナリストのチームは、現地での調査とオンラインでの情報収集から、これまで証明することが不可能、あるいはとても難しかったことを立証した。テクノロジーは情報提供者に力を与えるのだ。

テクノロジーは、これまでにない選択肢と世界に意識を向けることを可能にした。豊富な選択肢の中を航海する術は、それを自然と理解するミレニアル世代と紐付けられがちだが、他の世代も順応してきている。新しい世界は今の世界とは違うだろうが、平等と保証を持って良くなるだろう。テクノロジーがそれを達成する助けになるのなら、誰もがミレニアルの考え方を持つべきだろう。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

サービスのパーソナライズを可能にするアルゴリズムの進化に必要なもの

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パーソナライズした体験をもたらすアルゴリズムは、昨日選んだものにも、今日選ぶもの、明日選ぶものの全てに影響を与えるようになる。

しかしパーソナライズ化が上手く行っていない所もある。私たちは興味のない、ユーザーの気を引こうとする広告に継続的に出くわす。デジタルのパーソナルアシスタントはそんなにパーソナライズされていない。ニュースフィードの深いアルゴリズムの溝がユーザーと友人を引き離しているし、オンラインで見るコンテンツは同じものがずっと繰り返し表示されている。

パーソナライズのための私たちの偶像は、遊園地の鏡張りの迷路に映る自分の姿のようだ。パーソナライズ化の過程でユーザーは抽象化され、デジタルという鏡に投影されたユーザーの興味関心は実際のものと乖離してしまっている。

パーソナライズ化のために埋めるべきギャップ

現在のパーソナライズされた体験が未完成なのには、5つの主要な要因がある。

データギャップ:これは、アルゴリズムの環境によりユーザーに関するデータが限定されていることで起きる。システムは、ユーザーに提供する体験とそれに対するフィードバックのループの文脈でしか、ユーザーを理解することができない。システムに外部のデータソースからの情報を入力したとしても、ユーザーの興味や好みの一部しか理解することができない。

計算処理ギャップ:計算処理の能力と機械学習テクノロジーの限界を指す。現在最速のシステムでも、複雑な個人をシステムのルールに従って理解するには遅すぎるのだ。同時に、最も先進的な機械学習のソリューションも、コンピューターがユーザーのことを遅滞なく学び、順応するには、まだ十分ではない。

パーソナライズ化の過程でユーザーは抽象化され、デジタルという鏡に投影されたユーザーの興味関心は実際のものと乖離してしまっている。

興味ギャップ:ユーザー、プラットフォーム、そしてサードパーティーの関係者(例えば、マーケッター)の意図が合致しないことを指す。つまり、ユーザーが見るものやできることは、誰の興味や好みを元に優先順位が決定されているかという問題だ。ユーザーは広告に興味がないかもしれないが、彼らの意思とは関係なく表示される。誰かがユーザーの注意を引くために料金を支払っているのなら、ユーザーが選べる範囲が狭まるのだ。

行動ギャップ:ユーザーの本当の意図と利用できるものの不一致を指す。例えば、ユーザーは存在していない「これは面白くない」ボタンを押したいと思っているかもしれない。あるいは、特定の画像を今後一切見たくないと思うかもしれないが、そのようにできる方法が存在しないといった場合だ。ユーザーの行動はフィードバックループの限定的な環境に収まるように簡略化されているのだ。

コンテンツギャップ:プラットフォームやアプリケーションにユーザーが求めていることやニーズにぴったり合うコンテンツがないことを指す。また、提供しているコンテンツの多様性が限定的な場合もある。例えば、スポーツニュースやレストラン情報のアプリやウェブサイトは関連するコンテンツがなくなる場合がある。トピックがニッチであるほど、ユーザーにとって継続的に有益なコンテンツが提供されるチャンスは少なくなる。

また、パーソナライズ化の根幹には普遍的なパラドックスが存在している。

パーソナライズ化は、デジタルの体験を個人の興味や好みに適応することを約束している。同様にパーソナライズ化はユーザーに影響を与え、毎日の選択や行動を起こす基準となり、ユーザーを形作っている。複雑でアクセスできないアルゴリズムが、ユーザーの代わりに見えない所で選択を行っている。それらは、ユーザーが認識できる選択肢を減らしている。つまり、個人の裁量を制限しているとも言える。

パーソナライズ化におけるギャップと内在するパラドックスにより、パーソナライズ化は不十分で未完成のままだ。ユーザーにとってアルゴリズムが自分の意図ではなく、他の誰かの意図を汲んでいるように感じてしまうのはそのためだ。

アルゴリズムによるパーソナライズ化の中核に人を置く

パーソナライズにより、個別ユーザーに対して更に良いサービスを提供するためには3つのデザインと開発の道が考えられる。

まず、パーソナライズ化には新しいユーザーインターフェイスの枠組みとインタラクションモデルが必要だ。直接的なアクションやそうでないアクションを効率的に学習してパーソナライズするインターフェイスは、データギャップを埋めることができる。同様に、システムがユーザーがしていることとそうでないことを学習することで、計算処理ギャップも埋まっていく。興味ギャップの問題を解くには、ユーザー自身が表示されるものを直接コントロールできるようにすべきだろう。ユーザー主導で異なるコンテンツやサードパーティーからの関連コンテンツを混ぜることのできるインターフェイスが必要だ。これによりユーザーは、自分に対し表示されているものを知ることができる。システムの透明性は、ユーザー自身が自分の好みを調節することを可能にし、プラットフォームやサードパーティーにとっても有益に働くだろう。

行動ギャップを埋めるには、本当の意図や反応を反映したカスタム絵文字やジェスチャーといった文脈も意識したインタラクションを実現する、ユーザー順応のインターフェイスが必要だ。また、システムはユーザーが興味を持ちそうなものが利用可能になった時、あるいは具体的なアクションが取れるようになった時に通知することでコンテンツギャップの減少につながるだろう。それは、腕に着けた端末の振動や、デバイスの画面の賢い通知メッセージといった形かもしれない。新しいインターフェイスは、リアルタイムではなく、パーソナライズ化した「自分時間」を優先するようになる。

次にパーソナライズ化には、関連したもの、意外なもの、タイムリーなもの、成熟したコンテンツを混ぜて提供することだ。データギャップと計算処理ギャップの観点では、より多様な選択肢を提供することで、システムがユーザーの本当に興味のあるものを詳しく理解することができるようになる。ユーザーは、自分の興味関心をより詳細に伝えることができる。そしてシステムは、ユーザーの行動から、これまで知り得なかったあるいは、形式通りではないものの中に関連性を見出すことができるだろう。

興味ギャップに関しては、関連情報と意外な情報を混ぜることで、ユーザー自身がどの情報を優先するかを決定することができる。関連した情報の中でも多様な選択肢を用意することで、システムが限定した情報の箱の中にユーザーを閉じ込めることがなくなる。時に表示される関連のないコンテンツも体験を阻害することはない。関連性があるかどうか、セレンディピティを起こす内容であるかどうかは、どちらも主観的で文脈に依存しているものだ。アルゴリズムはユーザーが新しいことを探索するのに前向きな時と、目標があり、特定の情報を求めている時を判別することができるようになる。

行動ギャップを狭めるためには、多様な賢いレコメンドで、ユーザーが自身のルールで選択することができるだろう。システムはユーザーの短期と長期における関心をそれぞれ理解し、ユーザーの情報ニーズを予測することができるようになる。タイムリーであるかどうかは、関連性と同義ではない。大量のコンテンツは、時間の経過と共に魅力や意味を失うのではない。コンテンツギャップは、幅広く分野の濃い内容の興味深い情報が集まるほど、効果的に埋まっていくことだろう。

そしてパーソナライズ化は、集合的知識と人工知能を取り入れるべきだ。物事の関連がすぐに分かり、コンピューターはより賢くなって、物事は更に効率的になる。計算処理ギャップを減少させるためには、人と機械の情報の流れを加速させることだ。人は(まだ)この世界で最もパターン認識に優れたシステムだ。私たちは協力して、意味のあるサインを見つけだすことができるだろう。人工知能が順応するインターフェイスと予測を立てる学習システムを強化することにより、人による意味付けを活用することができる。

人が主軸となるパーソナライズ化は、人がキュレートしたシグナルと順応する機械学習のソリューションを統合する。この方法で知的なシステムは、個人及び集合的なインタラクションと洞察により進化することができる。そして、人の想像力と非合理性がアルゴリズムの決定による制限を打破するだろう。

パーソナライズ化のパラドックスはどうだろうか?パーソナライズ化の領域の中には、客観性は存在しないし、客観的な視点もあるべきでもない。ユーザーがアルゴリズムを形作り続け、アルゴリズムもユーザーを形作り続ける。それがさらに私たちにとって有益になるよう、人が周りの物事の関連性や意味付けを主観的に行う方法をパーソナライズ化アルゴリズムが理解する必要がある。

結局の所、パーソナライズというコンセプトは、産業的な大量生産とマーケティングの世界から派生したものだ。アルゴリズムの力を借りた意思決定を行う新時代に移行しつつ、個人の能力に重きを置くには、パーソナライズ化アルゴリズムではなく、選択アルゴリズムを作らなければならないということかもしれない。

そのようなアルゴリズムをどこが構築することになるのだろうか?

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

ディープラーニングと検索エンジン最適化の新たな時代

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編集部記:Nathan Sikesは、Crunch Networkのコントリビューターである。
Nathan Sikesは、
FoxtailmarketingのプロダクトのVPを務め、実践的なSEOとデジタルマーケテイング手法の調査と導入に注力している。

ディープラーニング、あるいは深層構造ラーニングのコンセプトは、ここ数ヶ月で頻繁に話題に上るようになった。世界に名だたる複数の大手検索関連企業がこの分野に力を入れ、進歩が見られるからだ。Google、Facebook、MicrosoftにBaidu(中国の検索エンジン)は、このテクノロジーに投資することでアプリケーションの進化を加速し、更には比較的新しい人工知能(AI)技術の活用も進んでいる。

この記事では、ディープラーニング技術とそれが今日のオンライン世界における検索エンジン最適化(SEO)にどのような影響を及ぼすかについて述べたい。ディープラーニングとは何か、そしてその歴史を簡単に振り返り、AI技術で私たちの身の回りのデジタル世界を創造し、より良くしようとしている主要プレイヤーの動きを見ていこうと思う。

本物の人工知能を探し求めて

ディープラーニングの影響を本当に理解するには、それが何であり、どこから来たかを知る必要があるだろう。ディープラーニングの起源を一つの場所や人に特定することはできないが、この分野に詳しい人なら、現代ディープラーニングの父はGeoffrey Hintonであると同意するだろう。現在彼は、Googleとトロント大学で活動している。Hintonは、1980年代にBackpropagation の開発に貢献し、最近ではNeural Computation and Adaptive Perception Program(ニューラルコンピューティングと適応知覚プログラム)で研究し、変化を求めていた分野を点火することとなった。「過去2、30年間Hintonは、ニューラルネットワークとディープラーニングの最前線を牽引してきました」とKai Yuは話す。彼は、Baiduのディープラーニング研究機関でディレクターを務めている。「私たちはこのような早いスピードで市場に影響を与える機械学習や人工知能を経験したことがありません。驚くべきことです」と続けた。

多くの企業はディープラーニングがこれからの時代を形作ると捉えている。また、この新しい商業サイエンスを有効に活用するのに多額の資金やリソースも必要ないことを知っている。

Hintonの功績は、現在人工ニューラルネットワークとディープラーニングの研究に取り組んでいるほとんどの大手企業に見ることができる。現在Facebookで働くYann LeCunは、1980年代にHintonと共にBackpropagationを開発していた。Baiduのチーフサイエンティストを務めるAndrew Ngは、GoogleのDeep Learning Projectを立ち上げ、Hintonとそこで何年も共に働いた。これら数人のエンジニアは、それぞれ競合する企業で働いているが、力を注いで追い求めているものは同じだ。本物の行動学習をする人工知能の開発だ。

10年以上前、ビジネスの世界はディープラーニングの分野に背を向けた。チップの処理能力の限界と人工ニューラルネットワークで用いるデータセットは、Hintonと彼の同士が掲げた仮説を実行不可能なものとし、時代が追い付いていなかった。

2015年に先送りすると、ポテンシャルのあるアプリケーションで溢れる全く新しい環境がある。これに気がついたのは何も大手企業だけではない。Clarifaiのような小さな組織も、拡張された学習能力を広告やコンテンツのキュレーションのための調整やフィルタリングに使用している。他にもMoz(SEO企業)のような企業も、カスタマーにより優れたプロダクトとサービスを提供するこの技術が、これからの時代を形作ると捉えている。「Mozのような企業も機械学習技術を部分的に一定のレベルは使用しています。ディープラーニングは全く活用していませんし、多くのニューラルネットワークの技術も使用していません。しかしその方向に向かうことはあると思います」とMozのブログでRand Fishkinは説明している。

多くの企業はディープラーニングがこれから時代を形作ると捉えている。また、この新しい商業サイエンスを有効に活用するのに多額の資金やリソースも必要ないことを知っている。IBMのWatson Analyticsは、500MBまでアップロードでき、ディープラーニング用のリアルタイムのアプリケーションを無料で試すことができるフリーミアムサービスを提供している。Google Adwordsや他の販売に関連する数値をツールに入力することで、スタートアップ企業でも、データの中に関連性や予測するのに役立つ情報が得られるだろう。Watson Analytics以外にも、他社が開発していて、活用しているテクノロジーを見てみよう。

Google Research:Googleは、Forbesの「2015年、最も価値あるブランド企業」のリストの三位に入った。ただ、誰もが彼らは検索で一位であることに異論はないだろう。Googleは、この10年で機械学習能力で多くの進化を果たした。彼らは、画像、動画、言語の理解を深めるための開発に力を入れている。

Googleは調査、買収(2014年に買収したDeepMindなど)やImagenet Large Scale Visual Recognition Challenge(単語と画像を紐付けるデータベース)とのパートナーシップなどを通して、ディープラーニングの新しい分野での検証と適応に注力してきた。最近Googleは、初めて見る画像を説明するためのキャプションを自動で付ける機能を公表した。Googleの検索アルゴリズムにこのような画像認識と検索機能が実装された場合を想像してみよう。

そんなに遠い未来のことではないだろう。Geoffrey Hintonは、Redditの「Ask Me Anything(何でも聞いて)」のセッションで「次の5年で最も面白い分野は動画とテキストの内容の理解だと思います。次の5年内に、例えばYouTubeの動画から、何が起きている内容かを説明する機能が出来ていなければ、がっかりします」と説明している。

Facebook FAIR:世界で最も人気のSNSは、検索でも強いプレイヤーに成長した。今後もこの分野においてマーケットシェアを拡大していくだろう。Facebook AI Research (FAIR)はFacebookが人工知能とディープラーニングを未来のソーシャル、購買活動とメディアへの応用に注力していることを表すものだ。事実、彼らの顔認識ソフトウェア、Torch(ディープラーニングのための開発環境)のオープンソースモジュールへの貢献、最近ではMike Schroepfer (FacebookのCIO) がFacebook AIが 動画内の登場人物の動きを認識できるようになったことを発表したことを考えると、Facebookは、ディープラーニングによる学習能力を最も活用している企業であると言えるかもしれない。

Microsoft Project Oxford:最近発表したhow-old.netの顔認証プロジェクトで Microsoftの技術を多くの人が知ることとなった。しかしほとんどの人はこのプロジェクトは、Microsoftの機械学習研究チームによって製作されたことを知らない。Microsoftのブログによると「数人の開発者が、ウェブページと機械学習APIを統合し、リアルタイムでアナリティクスをストリームするこのソリューションを全て構築するのに、一日しかからなかった」と伝えた。これは始まりに過ぎない。このようなプロジェクトの他にも、近い内にProject OxfordとCortana(Microsoftの「パーソナルアシスタント」)がWindows 10とInternet Explorerの代替ソフトであるEdgeに実装されるだろう。

WolframAlpha:WolframAlphaは抜群の知名度があるとは(まだ)言えないが、ここ数年の人工知能の分野の有力なプレイヤーである。彼らの究極の目標は、何もかもコンピュターで処理できるようにすることだ。まずは、専門的な知識と能力が要求される分野に注力している。彼らは最近、画像認識、新たな問題の作成、言語認識と更にはFacebookの分析まで開発対象を拡大した。

何故これが重要なのか?

もし人工知能が検索に統合されたらどうなるかと想像する時期を超え、それがいつ行われるかという時期に到達した。上記の企業は、それの実現に向けて業界を引っ張っている。これらの情報を鑑みた上で、ディープラーニングが次の5年間で検索にどのような影響を及ぼすのだろうかという予想をいくつか記載する。

新しいSEOの基準:あなたがオンラインのマーケターでこれらの技術に心躍らないのなら、この分野はあなたに合っていないのかもしれない。このタイプの人工知能を搭載した検索エンジンで、マーケターは画像優位のSNS、動画共有サイト、スライドでのプレゼンテーションプラットフォームといった新しいチャネルを有効に使うことができるようになる。また、検索者に役立つ画像や動画を提供し「信頼」を得ることもできるだろう。

画像でカスタマーのイマジネーションを喚起したり、注意を引くことが今後更に重要になってくると、検索を用いる企業は気が付いている。

スパムサイトの死:Googleは長い間スパムサイトとの戦いを繰り広げてきた。スパム手法を用いるサイトのランキングを下げるための専用アルゴリズム Penguinまで開発した。私の予想では、姑息なリダイレクト、中身が薄く価値の無いスパム手法を用いるウェブサイトは大幅に減少すると考えている。これにより、より安全で整ったウェブが出現するだろう。

デバイスとの連携の改善:Googleのモバイルゲドンのアップデートが、このタイプのアップデートの最後ではないはずだ。Facebook(Oculus)、Microsoft(Hololens)のような企業が仮想現実のヘッドセットを押し出すのなら、どのような端末にどのようなウェブサイトを表示させるべきか学習し優先順位を付けることができる、賢い検索エンジンが必要になる。

隠れ場所がなくなる:検索エンジンの企業の人工知能が賢くなり完璧に近づくほど、ユーザーをトラックする機能も高まるだろう。Verizon、AT&TやFacebookが最近リリースした、次世代の「スーパークッキー」のような技術が誕生し、オンラインでユーザーが隠れることが困難になる。

画像コンテンツの重要性が増す:ミレニアル世代は、彼らより上の世代より遥かに広告を見ない。 Simply Measured(ソーシャルメディアのアナリティクス企業)によると、Facebook上の全てのブランド投稿の62%、エンゲージメントの投稿の77%は写真だった。通常のテキストだけの投稿は少ない。更にHubspotの調査では、魅力的な画像要素とグラフィックスをブログ投稿やソーシャルメディアのコンテンツに加えることで、最大94%の閲覧数の増加と37%のエンゲージメントの増加が得られるそうだ。

画像でカスタマーのイマジネーションを喚起したり、注意を引くことが今後更に重要になってくると、検索を用いる企業は気が付いている。そのようなコンテンツが近い内に優先されるようになるだろう。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

画像:NeydtStock/Shutterstock

SECの新ルールで、先見の明を持つアーリーアダプターが投資家になる

fishmoney


編集部記James Hanは、Crunch Networkのコントリビューターである。また、彼は株式のクラウドファンディングプラットフォームを展開するSeedInvestの共同ファウンダーであり、 Francisco Partnersで投資家を務めていた。

あなたはUberが既存ビジネスのあり方を刷新するといち早く気づいていた、あるいは早い段階からAmazonGoogleを利用していただろうか?

2011年にUber(現在の評価額は400億ドル)に投資していたのなら、現時点で600倍のリターンを得ていたことだろう。しかし残念ながら、当時から既にかなりの富豪でなかったのなら、これらの企業に投資することを証券法が許さなかった。

アーリーアダプターが一般のカスタマーと投資家との間にある一線を超えることはこれまで叶わなかった。しかし、6月19日から施行されるSECの新規則により、コンシューマーと企業との関係性に根本的な転換が起きる。

プライベート企業を支援したいと考える多くのアーリーアダプターが企業を支援する方法は、謝礼が予め設定されているクラウドファンディングという手段に限定されていた。このタイプのクラウドファンディングは、アーリーステージの投資の代替手段としては乏しい手法だ。Kickstarterのように謝礼が設定されたクラウドファインディングのウェブサイトでは、個人がプロダクトを事前予約したり、世界に登場してほしいと願うものに寄付することができる。この「支援者」が会社の株式や優先株を得ることはない。支援者は大きなリスクを取っているにも関わらず、大きな見返りが得られることはないのだ。

Oculus VRの顛末が分かりやすい例だ。謝礼が設定されたクラウドファンディングのキャンペーンが大成功したおよそ2年後、OculusはFacebookに20億ドルで買収された。Kickstarterで早くからOculusを支援していた人は、裏切られたと怒りを感じた。彼らはOculusの一部を保有していた感覚だったが、その買収において何の利益も得ることができなかったからだ。一方、OculusのKickstarterのキャンペーンの後、それもKickstarterのキャンペーンの成功を受けて、投資を決めた機関投資家や投資を許可された人は、短期間の内に大金を得ることができた。Kickstarterのキャンペーン時に、300ドル分のOculusの株式を保有していれば、およそ145倍の4万5000ドルになっていたのだ。

成功するテクノロジー系スタートアップは、企業の資金面でアーリーアダプターの力を借りているので、彼らに借りがあると言えるだろう。アーリーアダプターは大多数の人が気がつく前から、会社のポテンシャルに気づき、目標を達成のためにポテンシャルを引き出す助けを提供しているのだから。

早期のカスタマーにとっての影響は相当なものだ。なぜなら企業は、プライベート企業である期間が長くなっているため、企業が実際にIPOに踏み切る(する場合は)までに、アーリーアダプターとしての知識的な優位性は消え去り、早くからの投資により多額のリターンを得るチャンスに気がつくこともない。

LendingClubGoProのような先進的な会社は、これに気づき、カスタマーが機関投資家と同じ価格でIPOに参加できるようにすることで見返りを提供した。

しかし、このようなことを正式なIPOの前に行うことは非常に難しかった。証券法により、承認されない投資家(例えば、年間20万ドル未満の所得で資産が100万ドル未満の人)に株式を販売することは実質不可能だった。今後これが変わる。

本日付けで施行される、JOBS ActのTitle IVの新Regulation A+により、企業は、5000万ドルを上限とするミニIPOで公開市場から資金を調達することができる。これに早くから注目していたカスタマーも参加できる。企業は、市場の温度感を確かめ、ユーザーが投資に興味を持つかどうかを問うことができる。

十分な関心が集まれば、企業は証券取引委員会(SEC)に申請書類を提出し、認可を得ることで取引を開始することができる。そのプロセスは簡単なものではない(10万ドル以上の費用と3ヶ月から6ヶ月の期間を要す)が、通常のIPO(100万ドルの費用と1年から2年の期間を要す)より相当、容易になる。

早期のカスタマーにとっての影響は相当なものだ。なぜなら企業は、プライベート企業である期間が長くなっているため、企業が実際にIPOに踏み切る(する場合は)までに、アーリーアダプターとしての知識的な優位性は消え去り、早くからの投資により多額のリターンを得るチャンスに気がつくこともない。

Reg A+は、個人が先見の明で利益を得ることを可能にし、ブランドに対するロイヤリティに見返りを得ることができる。アーリーアダプターが企業のカスタマーに留まることはない。心酔した企業のステークホルダーとなり、企業の最大の成功が投資した個人の経済的な成功と連動するようになる。

カスタマーにとっても魅力的な制度だが、同時に企業にとってもアーリーアダプターから資金調達できることは魅力的だ。Reg A+により、企業はビジネスの経済的な成功を得るための道筋でブランドのエバンジェリストに協力を得ることができる。

Regulation A+は、カスタマーと企業の関係を再定義するポテンシャルを持ち、アーリーアダプターと投資家の線引を曖昧にするだろう。

更に、カスタマーがシェアを保有することで、彼らのブランドに対するロイヤリティを高めることができる。カスタマーとシェアホルダーを兼ねる個人は、企業の長期的な成功に興味を持っている。彼らの投資ポートフォリオに有利になるようにお金を使う、つまり投資した会社サービスを利用することが予想される。上場企業の株式の調査からも、株式を所有している企業にカスタマーは54%多く費用をかけ、倍ほど他の人に紹介することが示されている。

Regulation A+は、カスタマーと企業の関係を再定義するポテンシャルを持ち、アーリーアダプターと投資家の線引を曖昧にするだろう。Uber、Airbnb、Instacartといった企業は、シェアリングエコノミーの拡張に伴い得られたネットワーク効果から利益を生み出した。Reg A+を通し、シェアリングエコノミーの理念がプライベート企業の資本市場に持ち込まれたと言える。今後、先見の明を持つコンシューマーは、お気に入りの企業の市場での成功を共有するチャンスが得られるのだ。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

画一的な大量生産モデルの教育をパーソナライズしたものに変える

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「民主主義は政治の最悪の形だ。今までの試みられてきたものを除けば」。ウィンストン・チャーチルの有名な言葉だ。

最近の画一的な大量生産モデルの教育にも同じことが言える。プロイセンから輸入し、教育改革家のホーレス・マンが導入した、教育の大量生産モデルは、子どもを年齢別に教室に押し込み、席に座っていた時間を元に進学の時期を定めた。

このシステムが最悪なのには多くの理由がある。システムは、形式的かつ独断に基づき、個人に最適化されない。しかし現在、私たちが依存しているほぼ全ての現代的なイノベーションをもたらした立役者でもある。大量生産モデルは、教育を受けるために必要な生徒毎のコストを大幅に削減することに成功し、裕福な国では初めて全ての子供にK-12の13年間の義務教育を無料で提供することができるようになったのだ。

このモデルが存在しない地域の市民は切実にこの教育の形を求めている。現代の医療、住宅、エンターテイメント、交通手段、コミュニケーション手段、インターネット、その他の多くの現代社会を支えるものも大量生産モデルのおかげだ。これは素晴らしいことだ。

しかし悪い一面もある。

大量生産モデルは子供たちに対し、世界最大の官僚制度の無言のルールを読み取ることを要求している。明示されないルール、利害関係のあるステークホルダー、つじつまの合わないインセンティブといった複雑なルールの中で、組み立てラインのように一定の成果を求められる。そして、誰もこの巨大なからくりの中をどのように動けば良いかを教わることはない。

このシステムに上手く合う子どもたちもいるだろう。性格、躾、気質やその他の要因で合う子供たちも確かにいる。高度に構造化された環境でも成長することができ、教育のスピードもちょうど良いと感じる子供もいるだろう。しかし、少し違う考え方を持つ生徒の場合はどうだろうか?ルールを学んだり、集中する時間をコントロールするのが苦手だったり、世界の構造を独自の方法や時間をかけて理解するような子どもたちはどうだろうか?彼らは天才かもしれないし、ダイナミックなパーソナリティの持ち主なのかもしれない。しかし、彼らは大量生産モデルには適合しないかもしれないのだ。

このような生徒は、システムとたまたま上手く適応した同等の才能を持つ子どもたちと同じ結果を出すのに、より多くの努力が求められる。努力、知性、才能に関わらず、同じ結果を全く出すことができないこともあるだろう。彼らの脳はそのようには作られていないのだ。

子どもたちに合わせた教育システムが必要だ。今の教育システムは、ガイダンスもなしに子どもたちに強制的にシステムに適応させようとしている。適応しないようなら、リタリンやアデラルといった医薬品を与えている。そして、そのような子どもたちに私たちは、成績を低く付けることや期待をかけないことで、彼らの知性が足りない、あるいは努力が足りないということを、率直な方法でも暗示的な方法でも常に伝えているのだ。

これは少数の子どもたちに限ったことではない。このシステムに適応できないのは、大部分の子どもたちであると私は考えている。そもそも大量生産モデルは、最大数の生徒に最適になるように作られていない。どちらかというと大量生産モデルは、コストを抑えるように最適化されているのだ。

子どもたちにどのようなダメージを与えているのだろうか?システムは自己イメージに対してどのような影響があるのだろうか?例えば、自分には何ができるかについて考えた時だ。また、学習を深めていくことや成長にどのような影響があるだろうか?社会はこのようなコストを見ようとしない。なぜなら、これらのコストは見えずらいものだからだ。人は見えないコストに対して、全うな理由もなく、気づかなかったことにする傾向にある。しかし、このような精神へのダメージ、そして個々の才能が最大限活かされないことの機会損失は計り知れない。

私たちは教育の大量生産モデルで育った。これを全く普通のことのように思っているが、普通ではないのだ。この方法は、13年間の義務教育を無料で広く届けるために編み出された方法に過ぎない。

教師の負担

私たちは教師に対して既存の教育システムの穴埋めを暗黙の内に期待している。生徒にはもっと多くの異なる種類の教育コンテンツが必要だと教師が言っても、教師が作成することを期待している。指導者としてのトレーニングを受けたのであって、コンテンツは製作するのは難しいと訴えれば、「文句を言わないで、どこかから探してきてください」と言う。学習が思うように進まない生徒がいるとの訴えには、「彼らにも内容が伝わる方法を考えてください」と求める。州が義務化したカリキュラムに生徒はつまらなさを感じていると訴えれば、「もっとダイナミックな授業で生徒を楽しませてください」と言う。遅れを取っている生徒を助けたい、あるいは内容が簡単過ぎると感じている生徒を伸ばしたいと訴えれば、「それぞれに合った教育をしてください」と求めているのだ。

教師は、大量生産モデルの分かりやすい代表であるため、私たちはシステムの欠点と教師を不当に合わせて考えてしまいがちだ。教師は「システム」ではない。教師はシステムに毎日、出来る限り抗っている。生徒が授業で感じる温かみやエネルギーは教師が提供しているのだ。補助的な教材を作り、モチベーションやインスピレーションを与え、個別化するといったことは全て教師が行っていることだ。システムの欠点で教師を批判せず、彼らがそれを補うための手助けはできないだろうか。

システムを変える

教師を助ける方法はいくつもあるだろう。彼らの報酬は低い。まず報酬を上げることができる。高額なことは分かるが、GDPの底上げにつながれば、結果的に安いのではないか。研究によると、報酬が高い教師と生徒の成績には相関が見られたそうだ。報酬を高めることで十分な経験を持つ人を教育分野に呼び込み、リテンションを高めることもできるだろう。

生徒のニーズ、傾向や興味関心のある分野はそれぞれ違うのだ。教師が彼らに合った異なる指導ができるツールを提供しよう。

次に、教師により多くのトレーニングと準備期間、メンタリングと職業で昇進する機会を提供することができるだろう。アメリカの教師も日本や韓国の教師と同様の時間数働いている。しかし、日本の教師は勤務時間の26%の時間を教室で過ごしているのに対し、アメリカでは53%を教室で過ごしている。

キャリアを進める機会を優秀な教師に提供することで彼らが教育分野から去ることを防げないだろうか。The New Teacher Projectの2012年の調査によると、「とても優秀で、代替の効かない教師」と評価した教師の20%は、学校に「認められず、怠慢な対応」を理由に去っている。

Metlifeの2012年のアンケート調査 によると、自分の仕事に満足していると回答した教師の割合は、2009年の59%から15%も落ち、44%に留まった。「この割合は直近20年間の中で最も低い数値です。教師の仕事を辞めると思う、あるいは辞めると強く思うと回答した教師は2009年の17%から12%上昇し、29%に登った」としている。全ての教師が理事を目指しているわけではない。しかし多くの教師は、仕事で昇進する機会を求めているのだ。

教師は学期内で何十年も悪化し続ける社会的な不平等を正すことはできないことを認め、彼らに求めることを妥当なものにするべきだろう。テストの成績が全てを決める社会の圧力を削減しよう。学校をテスト対策の塾に変えてしまっている。

生徒のニーズ、傾向や興味関心のある分野はそれぞれ違うのだ。教師が彼らに合った異なる指導ができるツールを提供しよう。既存の教科書をデータ駆動のユーザーに合わせる学習ツールに変えることで、教室に集まる生徒の準備を整え、教師に生徒の学習状況に関する情報が集まるようになる。

本来子どもたちは、彼らを取り囲む世界に興味を持っている。彼らは学習している。毎日の時間の全てを学習に費やしているといると言える。彼らは学習すること自体に抵抗しているのではなく、学習の大量生産モデルに抵抗しているのだ。これは今まで試みられたシステムを除いたら、最悪のシステムだ。しかし、今ならもっと良いものが作ることができるだろう。

画像はDr. Seuss Enterprisesの商標

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

モバイルアプリがプロダクトの成功の鍵を握る

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編集部記Loni StarkはCrunchBaseのコントリビューターだ。また、Loni Starkは作家で、Adobeのdigital experience management businessにおける、ストラテジーとプロダクトマーケティングのシニアディレクターを務めている。

自宅のホームシアターシステムが故障したため、コンシューマー向けのテクノロジーとしては比較的専門的な特定の機材を探していた。ホームシアター用の受信機だ。ホームシアターの受信機は、そんなに安い買い物でもない。しかし、意外にも私の購入の判断を後押ししたのは、価格や技術的なスペックではなかった。最も重要だったのは、直感的に操作できるモバイルアプリがあり、ホームシアターのテクノロジーをより簡単に活用できて、使い勝手が良いかどうかということだった。

この話をしたのは、このようなアプリが実際に多くのビジネスモデルを刷新しているからだ。初めて市場に登場したアプリは注目を集めるのを目的に作られたものだったかもしれない。しかし今のアプリは随分と進化を遂げた。アプリは物のインターネットのリモコンになってきている。そしてアプリはアクセサリーから必需品になった。

Androidだけで130万個のアプリが利用できる。多様なアプリの登場で、市場の競争を激化した。ダウンロードされたアプリの90%は全く使用されないと考えると、その競争の激しさが窺える。

しばらく前からモバイルアプリはプロダクトの体験において重要な役割を果たすようになった。コンシューマーは、これまで以上に複雑な商品や業界もアプリを取り込み、プロダクトと連動する体験が提供されるのを望んでいる。コンシューマーはプロダクトを利用する新しくイノベーティブな方法を求めていて、それを提供できるプロダクトアプリの登場を期待しているのだ。良いモバイルアプリは、込み入ったプロダクトをシンプルに利用できるようにする。企業が自社アプリを開発する際には、このシンプルさを追求すべきだろう。

モバイルアプリはプロダクトを良くも悪くもする

企業はアプリをプロダクトの販売経路として注目してきた。モバイルが利用される時間の82% はアプリに費やされている。また、2014年のオンライン販売の売上が3450億ドルに到達した。企業がモバイルでプロダクトを訴求するのは当然のことだ。

しかし、これらの企業は成長する市場でのチャンスを逃しているとも言える。アプリは販売経路だけでなく、プロダクトの一環として位置づけるべきだ。多くの場合、アプリがそのプロダクトを購入するための重要な判断材料になりうるからだ。

Apple Watchを例に取って考えてみる。ウェアラブルデバイスのスマートウォッチはそれまでさほど普及せず、アメリカのコンシューマーの僅か2%しか保有していない。MarketSightの調査によると、スマートウォッチを購入しない理由について83%の回答者は、必要な機能が備わっていないからだと回答した。スマートウォッチを保有している47%のユーザーは、運動を記録するために使用していると回答した。結果的にスマートウォッチは、健康志向の人達を対象としたニッチな市場に訴求していた。

しかし、これはApple Watchのリリースで変わることになるかもしれない。2018年までにウェアラブルデバイスの73%をApple Watchが占めるという予測も出ている。メールやApple TV用のリモコンアプリなど、最初から利用できるアプリが14個備わっている。このようなアプリがなければ、Apple Watchは高価な時計に過ぎない。アプリがプロダクトの販売を後押ししているのだ。

モバイルアプリから複雑な機能をシンプルに利用できる

私がホームシアター受信機を選ぶのにアプリの存在が重要だった。なぜなら、これまで手間のかかったことがシンプルで簡単に行うことができるようになるからだ。人がアプリに求めているのは次の2つの内どちらかだ。これまで存在したプロダクトを新しいイノベーティブな方法で利用できるようになること。あるいは、これまで絶対に不可能だったことが可能になることだ。良いアプリはそのような体験を提供している。

Uberはアプリ主導の会社だ。彼らはアプリに惜しみない労力をかけ、カスタマーに新しくてイノベーティブなサービスを提供するために、絶えず改良を加えている。

Uberのアプリは、リアルタイムデータの活用で交通機関のビジネスモデルを刷新した。カスタマーがドライバーの進路や到着予定時間を確認することは、モバイル以前の時代には不可能なことだった。またUberは需要と供給のバランスを取ることの重要性を把握し、需要が特に高い場合のサージプライシングの導入や、市場が求めるときに必要な割引価格の提供や協力を行っている。

DriveNowは、BMWとSixtが協力して提供している同様にアプリを活用した車のレンタルサービスだ。DriveNowでカスタマーは車を探して借り、終わったら返却するという一連のサービスをアプリから利用できる。DriveNowがApple Watch用のアプリを作ったことは先進的な取り組みだ。Apple Watchが鍵の役割を果たし、Watchを持ったコンシューマーはそれで車を解錠することもできる。

DriveNowはアプリからこれまで不可能だったことをカスタマーに提供している。列に並んで、予約をし、通常の営業時間内に車を借りなくてもサービスが利用できるようになったことは、車のレンタル市場でのDriveNowの他社との差別化につながっている。

両社ともアプリを活用して、これまで煩雑だったタスクをシンプルにした。新しくプロダクトに加えられたサービスもアプリから利用できる。さらにビジネスモデルまでも刷新し、カスタマー満足と自社の売上促進につながった。

モバイルプロダクトアプリに対するカスタマーの期待を汲み取ってブランド設計を考えることが重要だ。現在のプロダクト、使い勝手、サービスとモバイルアプリのコンテンツや機能をどのように連携させれば高い価値が生まれるだろうか?モバイルでのコンシューマーとの接点をどのように活用すれば、購入経路でのエンゲージメントを高めることができるだろうか?プロダクトの便利さ、価値、そしてユーザーとの関連性を高めるのにアプリをどのように活用できるか?プロダクトと深く連携し、提供するサービスがより楽しく便利になるようなアプリを目指すことが重要だ。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

正規雇用がなくなり、個人ワーカーが台頭する近い将来の働き方

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編集部記Tad MilbournはTechCrunch Networkのコントリビューターである。彼は、Tiempoの共同ファウンダーでCEOを務めている。

契約による仕事の受発注が新しい働き方の基準となってきている。例えばUberだ。車を共有して移動手段を提供するスタートアップは、16万人の契約ドライバーを抱えているが、従業員はたったの2000名程だ。これは80対1という驚くべき割合だ。契約による仕事の受発注は、なにもUberだけが行っているのではない。HandyEazeLuxeといった企業も個人ワーカーが主体となる「1099エコノミー」に最近加入した。

訳注:1099とは、アメリカの国税庁の個人事業主向けの申請書を指している。

彼らが最も注目を集めているが、オンデマンドサービスを提供する企業だけが、多くの個人ワーカーに業務を委託しているのではない。Microsoftもフルタイムの従業員の3分の2近くの人数の個人ワーカーを抱えている。最もシンプルなビジネス形態である個人事業主でさえ、2003年の2倍、個人に業務を委託している。

雇用者と個人の双方が契約での働き方に魅力を感じる4つのトレンドが起きている。それが既存のフルタイムの雇用形態に対するビジネスと働く人の考え方を変えているのだ。

プラットフォームを選ぶだけで、カスタマーが見つかる

これまで仕事を請け負う人は仕事の紹介を受けたり、最初の顧客や継続的な仕事を獲得したりするのが、非常に困難だった。地域密着型のサービスのプラットフォーム、例えばHomejoyやHandyはそれを一変した。これらのプラットフォームでは、小さなビジネスを運営するためのマーケティング、仕事探し、決済、管理コストの大部分を代わりに負担している。

地域でのサービスを提供する個人は、プラットフォームに参加するだけで、十分な数のカスタマーとつながることができる。Homejoyで清掃を行っている人は「これまでこんなに忙しかったことはありません」と話していた。仕事を受けるには、プラットフォームに自分の空いている日を登録し、その時間に現れ、仕事をすれば良いだけなのだ。

Upworkのようなプラットフォームは、知識労働者にとって同様のギャップを埋める。世界中のどこにいようとワーカーはそこにアクセスすれば、潜在的なカスタマーにつながることができる。代金の回収と報告などの作業はプラットフォームが代行する。ワーカーは、自宅の台所からでもタイの浜辺からでも、得意とする仕事だけに集中することができ、あとの地味なビジネスで発生する作業はプラットフォームが行ってくれる。

ビジネス側にとっても十分な数のワーカーに簡単に仕事を依頼できるのは有益だ。人材に柔軟にアクセスできることで、事業に合わせて人数を多くしたり、少なくしたりとスムーズに対応できる。社内の限られた中で調整することから、組織の境界が曖昧になり、相応しい人材を必要な時に集め、プロジェクトを遂行することができるようになってきている。

映画の撮影のようだ。監督は、一本の映画を製作するのに必要な人材を招集する。キャスト、照明、音響、その他のスタッフを集めるのだ。彼らは一つのプロジェクトのために集まり、その仕事に集中し、完了すれば解散する。伝統的な格式張った組織図を持つ企業とは全く異なる手法だが、この方法も高い効果を発揮する。

価値観の変化

現在、労働市場に参入する人の多くは、仕事の柔軟さと自主性に価値を置いている。彼らはキャリアより働く場所を重要視し、昇進よりジョブローテーションを希望する。労働統計局の調査では、平均55歳の人は10年同じ仕事を続けるのに対し、一般的な25歳は3年に留まると示している。若い世代は、昇給より柔軟なスケジュールでの働き方やリモートワークを選択する場合もあるという。企業年金の付いた終身雇用を追い求める考え方は、もうそこにはない。(そして企業年金を提供する企業も今後更に少なくなるだろう。)

このトレンドを認識し、GoogleやFacebookでは、特に若い人材を惹きつけるために、 ジョブローテーションによる個人の成長プラグラム を提供している。LinkedInの共同ファウンダーのReid Hoffmanは、従業員に対して2年間の「任期制度」を取ることを推奨している。期間内に会社にとって価値のあることの達成を促し、次に動きやすくするという内容だ。

ワーカーは自身のスキルと合致して報酬の良い仕事を探すことに集中できる。そして、期間についての考え方も変わってきている。従業員として2年間の任期をほぼ毎日同じような仕事をする代わりに、1ヶ月から半年のプロジェクトを複数の雇用主から請け負うのが標準的な働き方になってきているのだ。

オンデマンド主導のエコノミーでは、これは更に加速する。多くのワーカーは、一週間の内に複数の異なる企業の仕事をするようになっている。多くて10社の仕事を請け負っている例もある。「9時5時」の概念は消えようとしている。

仕事の安定性が損なわれるという欠点もあるが、多くの人は、それと引き換えに得られる柔軟な働き方を望んでいる。

健康保険のセーフティーネット

医療給付を失うことを恐れる人は多い。それには理由がある。健康保険が無い場合のリスクは高いからだ。たった一つの事故が経済的な破滅をもたらすこともある。起業家を志す人が現在の雇用主から離れることを躊躇させる要因になっている。

Affordable Care Act (医療保険制度改革) がそれを変えようとしている。個人で働く人は保険会社を選ぶ国のマーケットプレイスから、保険を申請することができる。健康保険を雇用主に頼らないで済むようになった。「個人で働く人にとってACAはとても良い影響があります。低所得から中所得の人にとっては特にそうです」とEmergent Researchで将来の働き方についての調査を率いているSteve Kingは言う。「多くの人が自立できます。そして健康保険に加入していない個人ワーカーが減ります」と続けた。

個人で働く人を保護する

しかし、全てがバラ色ということでもない。個人ワーカーは、正規雇用者にあるような法的な保護が少ない。彼らは弱く、所得が圧迫されたり、機械の歯車のように扱われたりする危険性もある。

幸い、このような穴を埋めてワーカーを支えようとするサービスがいくつも登場している。 Freelancer’s Unionは、それぞれの個人ワーカーが必要とする保険を提供している。Peers.orgは、ワーカーがどの程度の収入を得られるかをより良く把握するためのコミュニティーだ。 QuickBooks Self-Employedは、経理や税金管理のためのツールを提供している。また世界中に、特定の場所に縛られないデジタルノマドのためのコミュニティーも登場している。それらを簡単に見つけられるTeleportのようなアプリもある。

この急成長するエコシステムは、正規雇用者と個人ワーカーの間にあった「福利厚生のギャップ」を埋めている。既存の雇用形態でなくても必要な保険、コミュニティー、資産管理の助けが得られるなら、当然一つの疑問が浮かぶ。既存の雇用に拘る必要があるのか?

労働市場の将来

テクノロジープラットフォームは、ワーカーが世界中のどこにいようとカスタマーとつながり、仕事を獲得するのを簡単にした。健康保険も購入できるようになった。ワーカーが自分の資産管理を有効的に行うためのコミュニティーやツールもできた。これらの要因により、今から5年後にでも労働市場の40%以上が個人ワーカーで構成されるとの予想が出ている。

多くの個人が選べる仕事を検討した上で、契約で請け負う仕事を選んでいる。それは、もはや自分のビジネスを始めているのとさほど変わらない。彼らにとって、それは「大きなジャンプ」ではなくなった。キャリアの次のステップに過ぎないのだ。

会社組織にとってもこの変化は大きいだろう。究極的に会社は、オーナーと人材を招集する担当者、そしてその他は全て個人の契約ワーカーで構成されるようになるだろう。プラットフォームは、特定のスキルを持ったワーカーの彼らが行ってきたこれまでの仕事と空いている時期などを会社に知らせる。会社組織で人材を探して集める担当者と個人ワーカーがすぐにマッチングされ、必要なチームがボタン一つで採用されるようになるかもしれない。

この影響は計り知れない。この働き方のシフトは、これまで起きたシフトと同じように混乱と痛みを伴うだろう。しかし長期的に考えると、組織と個人ワーカーの双方を支える地盤が整うことで、これまで以上にダイナミックな経済が出現することになるだろう。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter