Praava Healthはバングラデッシュの医療の質の向上に11.5億円を調達

遠隔医療と物理的な診療所とを組み合わせたPraava Health(プラーバ・ヘルス)を立ち上げる前、Sylvana Sinha(シルバーナ・シンハ)氏は、2008年の米国大統領選挙でバラク・オバマ氏の海外政策顧問として貢献したり、アフガニスタンの世界銀行に務めるなど、国際法の世界で成功を収めていた。しかし2011年、家族の結婚式に出席するためにバングラデッシュを訪れた際、最上級の私立病院で手術を受けた母が危篤状態に陥ったことで、シンハ氏は「ひらめきの瞬間」を迎えた。

「母の一件から、バングラデッシュではどんなにお金を積んでも質の高い医療が受けられないことを知りました」と彼女はTechCrunchに話した。

「バングラデッシュは高度に発展し、今や中流人口が4000万人にものぼるという現実があるにも関わらず、優れた医療を受けられる選択の幅が非常に狭いことに衝撃を受けました」と彼女は語る。「毎日、何千もの人たちが国外に出かけ、年間何百万ドルもの費用をかけて海外の優れた病院にかかっているいるのです」

アメリカで生まれ育ったシンハ氏は、Praava創設のため、2015年にバングラデッシュに移り住んだ。本日(米国時間3月8日)、同社はシリーズAプライム・ラウンドの調達を発表し、調達総額は1060万ドル(約11億5000万円)となった。Praavaでは、2018年にサービスを開始して以来、毎年3倍の成長を遂げ、現在は15万人の患者を診ているという。2020年には、7万5000件の新型コロナの検査を自社で行っている。

Praava Healthの患者向けポータルアプリ

Praavaの支援者には、シードラウンドにも参加した退役アメリカ陸軍大将、KKR Global Institute(DKRグローバル・インスティテュート)会長、米国中央情報局(CIA)の元局長のDavid H. Petraeus(デイビッド・H・ペトレイアス)氏、Wellville(ウェルビル)の幹部創設者Esther Dyson(エスタ−・ダイソン)氏、SBK Tech Ventures(SBKテック・ベンチャーズ)、シンガポール科学技術研究庁デジタル医療顧問のJeremy Lim(ジェレミー・リム)博士、Iora Health(アイオラ・ヘルス)の共同創設者でありCEOのRushika Fernandopoulle(ラシカ・ファーナンドプリ)博士、Oak Street Health(オーク・ストリート・ヘルス)の共同創設者であり最高執行責任者のGeoff Price(ジェフ・プライス)氏と、高名なエンジェル投資家が名を連ねている。

同社は、バングラデッシュの首都ダッカの主要医療センターであり、街中に点在する40の小さな診療所をネットワークしている。Praavaでは、さらに多くの診療所をダッカに開設し、後にバングラデッシュ第2の都市チッタゴンにも進出したいと考えている。

これは、オンライン診療を加えた「ブリック・アンド・クリック」モデルだ。国中の患者に対応できる。バーチャル医療は、遠隔医療とオンライン薬局を含むPraavaのサービスの40パーセントを占めている。

バングラデッシュは、世界でももっとも急速に経済成長している国だが、人口1億7000万人に対する医療従事者の数は危機的なまでに少ない。世界保健機関(WHO)の概算では、人口1万人に対して医師が3人、看護師が1人となっている。さらにそのほとんどが都市部で勤務している。ちなみにバングラデッシュの人口の70パーセントは農村部で暮らしているため、人々は1分間にも満たない診療のために長距離移動を強いられることがしばしばだ。

「遠隔医療の最大の利点と私たちが考えるのは、ダッカの外に住む人たちに、その長旅が本当に必要か否かを教えられることです」とシンハ氏は話す。

同社では、とくに初期診療の場合、患者の80パーセント以上がオンラインでの医療サービスで対処できることを突き止めた。残りの20パーセントの患者にのみ、幅広い外来診療、画像診断、検査、薬の処方が行えるPraavaの診療所に来るように伝えている。

新型コロナウイルスのパンデミックが始まると、Praavaの診察のおよそ9割がバーチャルになったが、診療所での診察はまた増え出した。Praavaの医師のほとんどは、フルタイムの従業員として給与が支払われている。目標は、予約診療時間を少なくとも15分以上持たせ、医療提供者と患者との深い人間関係を築くことにある。

「テクノロジーは医療の未来だと思っています。そこに疑いの余地はありません」とシンハ氏。「しかし、私たちが生きている間に必要となる医師との対面診察や直接的な医療全般を、テクノロジーで完全に置き換えることはできません」

現在、Praavaの患者は、そのほとんどが診察ごとに料金を支払っている。価格は、バングラデッシュの公共医療システムと、高価な私立病院の相場の中間だ。定額で無制限に医療サービスが受けられる会員プランもある。

シンハ氏によれば、主に入院費をカバーする医療保険に加入している人が1パーセントに過ぎないバングラデッシュでは、それは大変に新しいモデルだという。

「これは私たちにとって、この地域に価値に基づく医療の導入実験であり、この提案に大変に胸躍らせていますが、新商品なので、今後数年間かけて伸びて行くものと考えています」と彼女は話す。「昨年は大変な伸びを見せました。おそらく人々の健康意識の高まりと、企業が従業員の健康への投資を増やそうと考えるようになったためでしょう」

今回調達した資金で、Praavaは患者用の「スーパーアプリ」の開発に注力する。すべてのデジタルサービスを、ひとつのアプリに集約することが目的だ。また、ダッカでのさらに10軒の医療施設の開設と、チッタゴンへの進出も計画している。Praavaの「ブリック・アンド・クリック」モデルは、その他の新興市場にも応用が利くが、今後数年間はバングラデッシュに集中する予定だ。

「まず対処しなければならない人たちが1億7000万人います」とシンハ氏。「なので当面私たちは、この市場に全集中します」

関連記事:出産やメンタルヘルスなどデリケートな問題のケアを女性が受けやすくするバングラディシュのMayaが約2.3億円調達

トップの写真:Praava Healthの創設者にして最高責任者のシルバーナ・シハ氏(左から3番目)。同社医療センターのひとつにて。

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(文:Catherine Shu、翻訳:金井哲夫)

遠隔医療従事者にオンデマンド在宅検査を提供するAxle Health

新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミック期間中に遠隔医療サービスの利用が急増しているが、診断検査のために医療従事者が近くにいなくてはならない場面もある。現在Y Combinatorに在籍しているAxle Healthは、遠隔医療会社と協力してバーチャルと対面のギャップを埋めようとしている。

「自宅に派遣する医療従事者は瀉血専門医、メディカルアシスタント(MA)、准看護師、および看護師です」とAxleの共同創業者であるConnor Hailey(コナー・ヘイリー)氏は語った。

悲しい現状を反映して、会社が受ける電話のほとんどが新型コロナ関連だとヘイリー氏はいう。

また、現在同社は健康保険を受けつけていないが、ヘイリー氏によると、同プラットフォーム上の多くの会社が、患者には自己負担分を請求し、その後保険会社から払い戻しを受けている。

「現金で支払っている患者はほとんどいません。私たちの在宅向けサービスは自己負担なのです」とヘイリー氏はいう。料金は訪問する医療従事者の免許資格によって変わる。

同社の最大のパートナーであるSameday Healthは、在宅PCR検査の料金は250ドル(約2万6300円)で、保険適用はなく自己負担だとヘイリー氏は言った。ヘイリー氏とSamedayは、近々保険適用の在宅PCR検査を100ドル(約1万500円)の往診料金でできるよう計画している。

Axle Healthは2021年1月末にこのサービスを開始し、治療の範囲を新型コロナウイルス感染症検査以外にも広げる考えだが、現在は市場の要求に答えているだけだという。

ヘイリー氏は、ZocDocで数年働き、Uberにしばらく在籍した後この会社を立ち上げた。ヘイリー氏と共同ファウンダーのAdam Stansell(アダム・スタンセル)氏を突き動かしたのは、同じようなコンセルジュサービスを幅広い患者に低価格で提供したいという思いだった。

「裕福な人々は在宅医療を利用できます。私たちはこれを低価格にして誰でも使えるようにします」

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タグ:Axle Health遠隔医療新型コロナウイルスY Combinator

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nob Takahashi / facebook

環境アレルギーを滴剤で治療するWyndlyは2022年までに全米50州でのサービス提供を目指す

慢性のアレルギー患者は、説明されなくても季節性アレルギーや環境アレルギーの不快感をよく知っている。アレルギー注射についても、知っているかもしれない。それは、毎週または毎月診療所へ行って注射をしてもらう治療法だ。しかし、まだ知られていない治療法もある。あまり手間がかからないアレルギー滴剤だ。Y Combinatorの現在のコースを受講しているWyndlyは、アレルギー滴剤の普及を目指している。

耳鼻咽喉科の医師であるManan Shah(マナン・シャー)博士はパンデミック以前に、患者に診察を受けてもらい、アレルギーの誘因と戦う免疫システムを訓練するために、パーソナライズされたアレルギー滴剤を処方ししていた。新型コロナウイルス(COVID-19)が大流行して以降、シャー博士はアレルギーで悩む患者を遠隔医療で診療するようになった。それがうまくいったため、シャー博士と彼のいとこであるAakash Shah(アーカシュ・シャー)氏は、アイデアをY Combinatorに持ち込んだ。彼らのやり方がコロラド州デンバーで成功したことを話し、全国に広めたいと希望を述べた。

Wyndlyでは、シャー博士がアレルギーの検査と治療の両方を遠隔医療で行う。アレルギー滴剤は、アレルギー注射と違い自宅で施薬できる。Wyndlyが現在、猫や犬、チリダニ、花粉、木、芝生、雑草などが原因となる環境アレルギーの治療を対象としている。

「他の方法があることを知らない人がとても多い。ほとんどの人が、アレルギーの治療法として注射と、毎日、抗ヒスタミン剤を服用することしか知りません。うちではみんなにこんなにすばらしい、そして簡単便利な治療法があることを伝えています」とシャー博士はいう。

Wyndlyはまず、患者のアレルギーを評価する。患者は最近のアレルギー検査の結果をWyndlyに提出してもいいし、Wyndlyの患者が自宅でやる指さし検査を利用してもよい。その後、Wyndlyは患者のためそれぞれに合わせてアレルギー滴剤を作って患者の自宅に送る。滴剤は1日に1回、舌の下に5滴垂らす。シャー博士によると、滴剤を毎日6カ月間、滴下するとほとんどの患者の症状が軽くなるという。

Wyndlyの滴剤治療は1カ月99ドル(約1万400円)で、6カ月では合計594ドル(約6万2300円)になる。治療を受ければアレルギー検査は無料だが、Wyndlyの患者にならず、検査だけだと200ドル(約2万1000円)となる。

アレルギー滴剤治療は簡単だが、アレルギー注射と違い保険の対象にならない場合が多い。Wyndlyは、保険でカバーされた場合のアレルギー注射と関連治療での費用と同額程度にしたいという。

なお、このアレルギー滴剤はFDA(米食品医薬品局)の承認まだ下りていない。使っている薬剤はFDAがアレルギー注射で承認しているものと同様だが、それらの複合剤としての薬剤は未承認だという。

Wyndlyは将来的に、食べ物アレルギーも治療したいが、シャー博士によると、まだその安全性に関する十分なデータがないそうとのことだ。

「研究を進めて、食べ物アレルギーの分野でも安全性のコンセンサスに到達したいと考えています」とシャー博士はいう。

WyndlyはY Combinatorに在籍してから1カ月ほどで、現在、サービスを徐々に拡大している。医師とのパートナーシップを通じてWyndlyは全米38州でサービスを提供しているが、2022年末までに同社は50州すべてに進出したいと考えている。

カテゴリー:ヘルステック
タグ:Wyndly遠隔医療アレルギー

画像クレジット:Wyndly

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(文:Megan Rose Dickey、翻訳:Hiroshi Iwatani)

自社開発のウェアラブルセンサーによる体温の研究・解析を目指すHERBIOが1.2億円を調達

自社開発のウェアラブルセンサーによる体温の研究・解析を目指すHERBIOが1.2億円を調達

HERBIO(ハービオ)は1月20日、第三者割当増資による総額1.2億円の資金調達を発表した。引受先は、Beyond Next Ventures、Velocity LLP。また、あわせて2020年12月24日に第二種医療機器製造販売業許可を取得したことを明らかにした。研究支援アプリケーション「Carekara」(ケアカラ)もサービスを開始する。

HERBIOは直腸温(深部体温)と臍部周辺温度の相関性を確認し、開発中のウェアラブルセンサーで取得したデータを元に研究・解析を実施する研究開発型スタートアップ。

今回調達した資金を活用し、下記の領域にて積極的に投資を実施します。あわせて第二種医療機器製造販売業許可を取得したことにより、現在開発中のウェアラブルセンサーの量産化に向け、さらに顧客ニーズに応える機能改善などを進め、事業展開をより加速する。

  • 開発中のウェアラブルセンサーの量産化
  • 研究により注力するため研究者採用をはじめとした人員強化
  • 医療機関や企業と連携した共同研究の実施
  • 独自技術を活用した医療機器プログラムに対するサービス開発

また同医療機器製造販売業許可は、管理医療機器(クラスII)の日本国内での元売り業者として、薬機法の規制の下、医療機器の海外からの輸入、および日本国内での製造販売が可能となり、医療機器の適正な開発・設計・製造・販売といった機能を保有している。

  • 発効日: 令和2年12月24日
  • 製造販売業品目: 自社開発の医療機器
  • 許可番号: 13B2X10454

研究支援アプリケーション「Carekara」(ケアカラ)

製薬会社からのバーチャル治験や、アカデミックの研究現場での利用ニーズの急速な高まりの中、すでに両現場でスタートしていた研究目的でのHERBIO製ウェアラブルセンサーの活用と併せて使用する、研究支援アプリケーション「Carekara」(ケアカラ)のサービスを開始する。

HERBIO独自技術により、被験者や患者から取得が難しいとされていた体調データを、低侵襲かつ自宅で安全に記録できるようになっているという。

自社開発のウェアラブルセンサーによる体温の研究・解析を目指すHERBIOが1.2億円を調達

Carekaraは、現在開発中のウェアラブルセンサーにより取得されたデータや、日々の体調記録を入力し記録できるPHR(PersonalHealthRecord:個人健康記録)アプリ。

Carekaraは、ユーザーがより簡単に個人の健康情報を入力・記録できるシンプルな操作性とUIを実現し、どの世代の方でも導入しやすい仕様を採用。当初のサービス提供先は製薬会社や研究機関、企業など、BtoBでの取引からスタートし、将来的には一般ユーザーが日常生活の中で利用できるサービスを目指している(当初iOSアプリのみ対応予定)。

今後、コロナ禍で注目される遠隔診療の広がりのサポート、バーチャル治験の促進、体内時計の研究の発展、疾患の早期発見の研究など、同社の研究成果を社会課題と結びつけ、今までにない発見と課題の解決手法を確立し、世界中の誰もが安心して医療を受けることができ、医療と健康に隔たりのない状態の実現を目指す。

HERBIOは、2017年の創立以来「体温」を軸にした独自の技術開発と研究・解析に取り組む。「生きるに寄り添うテクノロジー」というミッションを掲げ、研究成果による社会課題の解決を目指し、世界中の子供からシニアまで健やかに生きることができる世界を実現するとしている。

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タグ:医療(用語)ウェアラブル(用語)遠隔医療(用語)資金調達(用語)HERBIO日本(国・地域)

遠隔医療のK Healthが約137億円調達、バーチャル保育サービスに進出

膨大な健康アセスメントを利用し、機械学習で医療コストを低減するバーチャル医療企業K Health(ケイ・ヘルス)は、15億ドル(約1560億円)という評価額で行った資金調達を元手に育児のための新しいツールをローンチした。

2020年12月に1億3200万ドル(約137億円)を調達した同社は、規模の拡大と、第2四半期までの導入を予定していた高度な電子カルテへのアップグレードのための資金を手に入れている。

2020年、K Healthは、機械学習と一般医療との橋渡し役としての立場を活用し、たった1年で2億2200万ドル(約230億円)を調達した。

今回の積極的な投資からわかるのは、テクノロジーでより安価な医療を提供しようと各社が目指す一般医療を、投資家たちがいかに大きな機会と見ているかだ。

K Healthが提供するのは、月9ドル(約940円)で同プラットフォームでのサービスと医師の診察が無制限で利用できるサブスクリプションだ。さらに月19ドル(約2000円)の精神疾患バーチャル治療や、1回19ドルで受けられる緊急医療相談サービスもある。

患者と投資家が魅力に感じるのは、K Healthがイスラエルの健康維持期間Maccabi Healthcare Services(マッカビ医療サービス)との提携で入手できたデータだ。これは数十年分の患者と健康アウトカムに関する匿名データで、K Health独自の予測アルゴリズムのトレーニングに用いられている。それが、患者の状態の評価や同社所属医師の診断に役立てられる。

理論的に、そのデータによって同社のサービスはバーチャルかかりつけ医師として機能できるようになる。つまり、患者の豊富な医療情報を保有することで、根底にある病状の早期発見や、総合的な視点での治療が可能になるということだ。

製薬会社には、そのデータは収益性の高い創薬の方向性を示す公衆衛生の深い見識をもたらしてくれる。

実際、患者は金を支払っただけのものが得られる。

また同社の精神疾患ケアは、評価や判断を行う資格を持たない医師によって行われるという、同プラットフォームでサービスを提供する人物もいる。つまり、意見不足の医師に当たる可能性があるわけで、病状が改善するどころか悪くなる心配がある。

同社の最高責任者Allon Bloch(アーロン・ブロック)氏の、ほとんどのサービスはリモートで可能だとする評価はおおむね正しい(ブロック氏は90%と見積もっている)が、それは必要な訓練を受けたプロによるリモートサービスであるべきだ。

アルゴリズムにできること、またジェネラリストが医療でやれることには限界がある。K Healthは、その限界を押し上げたいと考えているようだ。

「薬の照会、急性期対応、予防のほとんどがリモートで行えます」とブロック氏。「もっとうまく、もっと安くできる可能性があります」。

K Healthではすでに、緊急治療とサブスクリプションサービスの両方で数万人の患者に対応し、2020年には数千万ドル(数十億円)の利益を上げているとブロック氏は話す。サブスクリプションの利用者と比べて緊急治療サービスを受けた患者がどれだけいたかについては、ブロック氏は公表を控えた。

リモートでサービスを提供する他の業種と同じく、テレメディシン企業もこのパンデミックの間に繁盛している。バーチャル医療の先駆者であるTeladoc(テラドク)とAmwell(アムウェル)の株価も高騰した。

K Healthの支援者は、GGV CapitalとValor Equity Partnersが率いる投資家グループだ。Kaiser Permanenteの年金基金、Burger King(バーガーキング)とKraft Heinz(クラフト・ハインツ)を所有するブラジルの投資会社3G Capital、14W、Max Ventures、Pico Partners、Marcy Venture Partners、Primary Venture Partners、BoxGroupも今回のラウンドに参加した。

同社に協力している団体には、Maccabi Healthcare(マッカビ医療サービス)の他に、同社とバーチャル医療モデルの研究を行っている総合病院Mayo Clinic(メイヨー・クリニック)、K Healthのサービスをホワイトラベルで多くの保険加入者に提供している健康保険大手Anthem(アンセム)がある。

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タグ:K Health遠隔医療資金調達

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(翻訳:金井哲夫)

2021年に最優先すべきはパンデミックから精神的に立ち直るための技術

2020年、米国人は感染の恐怖、耐え難い愛する人たちの喪失、経済的ストレス、孤独、絶え間ない不安による疲労など、さまざまな問題と格闘してきた。ワクチンの接種が始まり、日常に戻れる時が近づいているとしても、新型コロナウイルス(COVID-19)を終わったものとするのはまだ早い。パンデミックの長期的な悪影響は、今ようやく現れ始めたところだ。具体的には、米国における精神的健康(メンタルヘルス)危機への衝撃は大きい。しかし残念ながら、精神疾患に効くワクチンはない。

米国の成人のうちほぼ45%が精神疾患を抱えて生活しているが、2020年の出来事で状況はさらに悪化し、米国に住む人の5人に2人以上(CDC報告)が新型コロナウイルスの影響による精神疾患に苦しんでいると伝えられている。

さらに深刻なことに、世界保健機構によれば新型コロナ前の段階で、世界の国々では国民の求めに応じようと奮闘しているにも関わらず、国の医療予算のうちメンタルヘルスに支出されたのは、わずか2%だったという。つまりこれは、メンタルヘルスが重視されていないことに加え、治療機会が欠如していることを意味している。

最近になって、遠隔医療サービスが導入されるようになった。根拠に基づく治療で有効性がある場合は、それが膨大な支援要請に幅広く対処できる唯一の方法となる。要するに、各地で医療スタッフが不足しているということだ。

私が英国の国民医療サービス(NHS)の精神科医として勤務していたとき、即座に学んだのは、患者が来るのが遅すぎるということだった。時には数年も遅くなる。もっと早い時期に質の高い治療を提供できていれば、事態はそこまで深刻化していなかったはずだ。当時私は、ここまで需要と供給の差が開いてしまった以上、大規模にテクノロジーを展開するしか解決の道はないと悟った。そして2020年の出来事で、その確信がさらに強まった。

投資家もそこを重視している。その証拠に数多くのメンタルヘルス関連のスタートアップが資金調達に成功している。ビジネスリーダーたちは、変貌した世界に適合する製品に改めて注目している。私たちを危機から救い上げる方法としてイノベーションを優先させ始めているのは明らかだ。デジタルメンタルヘルスソリューションはすでに大幅な上昇を見せている。遠隔治療だけで患者を診ている臨床医は、76%(米国精神医学会報告)にも上っている。大規模に精神疾患に対処できるもっとも明白な方法は、根拠に基づく倫理的でパーソナライズされたデジタルソリューションだ。

遠隔医療を導入すれば、柔軟な治療の選択肢を望む人たちの助けになるだけでなく、地元地域では選択肢が限定されてしまう人々に豊富な治療機会を与えることにもなる。

人気は高まっているものの、デジタルメンタルヘルスソリューションには、克服すべき重大な課題がいくつか残されている。ひとつは消費者の信頼を得て、個人情報を倫理的に責任を持って扱えることを証明しなければならないという問題だ。米国人の81%(ピュー研究所報告)が、その恩恵よりも、個人情報を提供するリスクを重視している。遠隔医療を提供する側は、重大な機密情報であるユーザーの個人的な医療データを、責任を持って扱えることを示す必要があり、そうして初めて信頼が得られる。

これは、米国のHIPPA(医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律)、ヨーロッパのGDPR(一般データ保護規則)よりも厳格なものでなければならず、提供者側のデジタルメンタルヘルスソリューションを支える倫理的枠組みの構築と実施を必要とする。だが、この取り組みは本物でなければならない。上面だけで倫理をうたう「倫理ウォッシング」の罠に落ちないようにしなければならない。そこで私は遠隔治療提供者に、外部の専門家の監修の元に倫理的枠組みを作り上げ、その結果の公開を約束するよう奨励したい。

さらにデジタルソリューションは、ユーザーのニーズに個人ベースで、パーソナライズしたかたちで応じる必要がある。精神的健康を管理できるとうたっているアプリは多くあるが、「1つのサイズで万人にフィット」させるアプローチであるため、患者固有の症状や個人の好みに適用できるこのテクノロジー本来の利点を活かしていない。ただ治療介入の種類を増やせば済むという問題ではない。たしかにそれも大切だが、要はテクノロジーとの関わり合い方は人それぞれだと知ることだ。

たとえばKoa Halth(コア・ヘルス)では、1つずつ手順を踏んで治療プログラムを進めたい患者もいるれば、必要なときにアクティビティに参加したい患者もいて、そのどちらの要望にも同等に対処することが重要だと認識している。1つの汎用手段ですべての人に対処するのは、単純に不可能だ。

デジタルソリューションは、単にデータに責任を持ち、ユーザーごとにあつらえればよいというものでもない。治療の有効性の証明により多くの力を入れるべきだ。最近の調査(HIMSS報告)では、メンタルヘルスアプリの64%が有効性をうたっているが、根拠を示しているものは14%しかないという。遠隔医療の導入が増えていることは頼もしいかぎりだが、プラスの影響は治療有効性を重視してデザインされ、質の高い臨床試験で効果が実証できる製品からのみもたらされる。根拠に基づく治療有効性と費用対効果が高ければ、それだけ医療提供者や保健会社はそのソリューションを広めてくれるようになる。

ワクチンが間もなくやって来る。しかし、パンデミックがメンタルヘルスに与えた影響は、すぐにでもその直接的な影響を覆い隠すほどの被害になるだろう。ヘルステックは将来有望な発展を遂げたが、精神疾患のデジタル治療ではとくに、これからのさらに大きなメンタルヘルス危機に対処すべく、有効で、倫理的で、パーソナライズされた治療に力を入れることが必要不可欠となる。

【Japan編集部】著者のOliver Harrison(オリバー・ハリソン)博士は、科学に裏付けされユーザーの幸福感を高めるようデザインされパーソナライズされた精神的健康のための広範なソリューションを提供し、治療を再構築するデジタル・メンタルヘルス・プロバイダーKoa Health(コア・ヘルス)のCEO。

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タグ:新型コロナウイルスメンタルヘルス遠隔医療

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(翻訳:金井哲夫)

専門医による遠隔集中治療サポートのT-ICUが1.53億円調達、新型コロナ対策支援事業を全国展開

専門医による遠隔集中治療サポートのT-ICUが1.53億円調達、新型コロナ対策支援事業を全国展開

専門医による遠隔集中治療ソリューションを提供するT-ICUは1月5日、第三者割当増資による総額1.53億円の資金調達を発表した。引受先は、Beyond Next Ventures、UFJキャピタル、東海東京インベストメント、クオンタムリープ・キャピタル・パートナズなどが運用するファンドおよび個人。

調達した資金により、T-ICUが現在神戸市とともに取り組んでいるCOVID-19対策支援事業の全国各自治体への展開、同社取得済みの遠隔集中治療における基本特許の実装のためのシステム開発、国内外への展開を本格化させるための普及実証を推進していく。

同社の遠隔相談システム「リリーヴ」は、「全ての病院に集中治療医を」を形にする重症患者診療の支援システム。全国的に専門家が不足する重症患者診療の現場を集中治療医・集中ケア認定看護師で構成されたメディカルチームが24時間365日サポートする。

システム面では、高度通信機器が様々な生体情報や検査結果の共有を可能にし、従来の電話相談の域を超えた、より実用性の高い診療支援を行うという。集中治療室に留まらず、救急や看護の現場でも利用可能としている。

また遠隔モニタリングシステム「クロスバイ」では、離れた場所から患者と医療者に寄り添うことをコンセプトに、高性能カメラによる細やかな病状観察と高度通信機器によるベッドサイドとの明瞭なコミュニケーションを実現。複数の患者を一画面で同時にモニタリングし、医療機器との接続でそのグラフィックモニターを表示することも可能。独立したネットワークに基づくシステムにより、あらゆる既存システムに干渉せず、完璧な機密保持を約束するとしている。感染隔離中のCOVID-19診療において非常に有効な手段という。

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カテゴリー:ヘルステック
タグ:遠隔医療(用語)資金調達(用語)T-ICU日本(国・地域)

遠隔メンタルヘルスケアのLyra Healthが約180億円調達、新型コロナを背景に急成長

新型コロナウイルスの大流行は、世界中で精神衛生上の危機を強め、しばしば悪化させている。リモートワークの普及もその問題の一端を担っている。誰もが自宅に籠もり、人との交流がなく、オフィスでウォータークーラーの周りに集まっておしゃべりすることもできなくなった。

この問題の解決策が求められていることから、需要が高まったテック系メンタルヘルス・ソリューションは多くの資金を集めている。最近の例では、企業の従業員に遠隔メンタルヘルス・ケアを提供するLyra Healthが、22億5000万ドル(約23.2億円)の評価額で1億7500万ドル(約180億円)のシリーズEを調達するための書類を提出したことがわかった。

この書類の内容はPrime Unicorn Indexによって明らかになった。同社がラウンドを終えたかどうかは不明だが、デラウェア州での書類提出は通常、資金調達の一部または全部が確保された後に行われる。Prime Unicorn Indexは、このシリーズEラウンドを取り巻く条件には、「他のすべての優先株式とのパリパス残余財産優先分配権が含まれ、剰余金がある場合は普通株式に参加しない非参加型優先株式」であることに注目。また、Lyra Healthの直近の1株当たりの価格は27.47ドル(約2838円)であり、14.21ドル(1468円)で取引されたシリーズDからのアップラウンドであることにも言及している。

TechCrunchはLyra Healthと投資家に、この書類に対する回答を求めて連絡を取っている。ある投資家は、ラウンドはまだ終了していないと指摘している。

同社の過去の出資者には、Adams Street Partners、Tenaya Capital、Meritech Capital Partners、IVP、Greylockなどが含まれる。

我々は今、最も有望なスタートアップ企業のために、急速に成長するラウンドが連続して調達されている時期にいるようだ。1億ドル(約103.3億円)の資金調達からわずか6ヶ月後に1億ドルのラウンドを確認した(未訳記事)Discordと同様に、Lyra Healthも最近、シリーズDで1億1000万ドル(約113.7億円)の資金調達(Crunchbase News記事)を行い、評価額が10億ドル(約1033億円)を超えた。

これは事実上、このスタートアップがわずか数カ月で評価額を倍増させたことを意味し、急速な成長または重要な検証を示唆している。Forbes(フォーブス)が報じているように(Forbs記事)、Lyra Healthはその前の資金調達の時点で、今年中に約1億ドルの収益をもたらすことが予期されていた。

新型コロナウイルスが大流行している間に、多くのテクノロジーのカテゴリがその使用法で関心を集めた。そして悲しいことに、あるいは見方によってはありがたいことに、この試練の時に我々のウェルビーイング(良好な状態)を支援することを目的とした、メンタルヘルスとウェルネスのスタートアップも、それらの1つだ。瞑想アプリの「Calm(カーム)」が20億ドル(約2066億円)の評価で7500万ドル(約77.5億円)を調達したのは、ちょうど先週のことだ。

カリフォルニア州バーリンガムに拠点を置くLyra Healthは、どこのオフィスでも役に立ちたいと思っている。この会社は、企業が従業員のメンタルヘルスに必要な安全で信頼のおける高い一連のツールを、従業員に提供することを支援する。メンタルヘルスが職場でタブー視され、従業員が雇用主にサポートを求めるのは気が引けるかもしれないことを考えれば、これは難しい分野だ。それでも、オフィス内で人と触れあうことがもはやできなくなっている現在の世界においては、メンタルヘルスはスタートアップの成長を助ける重要な投資となり得るだろう。

契約企業のメンタルに悩みを抱えた従業員に対し、Lyraはまず調査に基づいて一連の推奨事項を作成する。その後、同社は患者を何千人ものセラピストのネットワークにつなぎ、患者は遠隔で予約、相談、および診察を受けることができる。

パンデミックの間、Lyra Healthは8万人の新規ユーザーを獲得し、直近の発表ではユーザー数が合計で150万人に達したという。

新型コロナウイルスの感染拡大が遠隔医療の急増(米国疾病予防管理センターの発表)につながったように、テクノロジーを使ったメンタルヘルスケアは需要が増えている。対面診察は患者にとって感染リスクを招くからだ。実際に、Lyra Healthでは「Lyra Blended Care」を開始した。これは、ビデオ療法とオンラインレッスンや認知行動療法に根ざしたエクササイズを組み合わせたものだ。

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タグ:遠隔医療、資金調達、メンタルヘルス

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(翻訳:TechCrunch Japan)

オンライン診療など健康支援プログラム提供のリンケージが加賀電子から資金調達

オンライン診療など健康支援プログラム提供のリンケージが加賀電子から資金調達

オンライン診療など健康支援プログラムを提供するリンケージは12月1日、第三者割当増資による資金調達を発表した。引受先は加賀電子。調達した資金は、主にプロダクトの機能拡充、および質の高いサービス提供に向けた人材採用にあてる予定。

また今回の資金調達に伴い、今後はリンケージと加賀電子両社の強みを活かした連携を進めていく予定。連携では主に、加賀電子は新たな流通チャネルの開発、および同社プログラムとマッチした機器の製造などを行い事業機会の拡大を、リンケージは加賀電子の持つ国内外のネットワークや電子機器の製造ノウハウなどを活かし、サービスの拡充を図る。

経済産業省が推し進める「健康経営」は、企業が従業員の健康に配慮し健康増進に投資することで、採用時の応募数増加や離職率の低下、組織の活性化を実現し、競争力強化や持続的成長をもたらすというもの。取り組む企業が年々増加しており、2018年11月までに約3万社が健康宣言を行ったという(経済産業省「健康経営の推進について」)。

リンケージは、データやITを駆使し、健康経営を後押しするオンライン診療などの法人向け健康支援プログラムを提供。「オンライン禁煙プログラム」や産婦人科専門医とともに実施する女性の健康支援プログラム「FEMCLE」(フェムクル)をはじめ、同社サービスはすべて医療機関および医師・薬剤師・保健師・看護師・管理栄養士などのネットワークを活用している。リンケージはこれらの専門家とともに、eラーニングやウェブ上の問診などにより企業の健康課題を見える化し改善を促すことで、従業員の健康を促進し、より働きやすい環境づくりを支援している。

すでに単月黒字化を実現し、ビジネスモデルが成立していることから、サービスのさらなる拡充を企図して今回の資金調達に至ったとしている。

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テレヘルス企業が医療をギグエコノミーのように扱う理由

著者紹介:Oliver Kharraz(オリバー・カラズ)博士は、対面またはバーチャルケアのためのデジタルヘルスケアマーケットプレイス、Zocdoc(ゾックドック)のCEO兼創設者である。

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テレヘルス(遠隔医療)が本格的に始動した。

パンデミックによって拍車がかかり、アメリカの多くの医師がオンラインによる診察を行うようになり、患者もまたインターネット上で医療に関するアドバイスを受けることに慣れ親しむようになった。テレヘルスのメリットがあまりにも明らかなため、専門家らはテレヘルスの定着化を確信している。Center for Medicare and Medicaid Servicesの管理者であるSeema Verma(シーマ・ベルマ)氏は、「コロナによる危機が我々を新たな領域に踏み込ませたのは確かですが、もうここから後戻りすることはないでしょう」と言う。

それではこれから、テレヘルスはどこへ向かうのか?パンデミックの中、非常に重要な役割を果たしてきたテレヘルスには今後も十分な伸び代があるが、まだ発展途中の初期段階にあるにすぎない。テレヘルスが持つ可能性を実際に実現するためには、まずテレヘルスの今日の提供方法に深刻な欠陥があるという事実を直視しなければならない。患者自身を危険にさらす可能性のある欠陥だ。

Teladoc(テラドック)のような従来の遠隔医療サービスは、遠隔医療がまだ珍しいものだった時代に構築されたもので、主にひどい風邪や厄介な発疹のような急性のニーズをサポートするために使用されていた。彼らが主に提供するのはランダムなトリアージケアのようなものだ。患者はオンラインにアクセスして順番を待ち、たまたま手のあいた最初の医師に診てもらう仕組みである。こういったサービスを提供する企業はバーチャル往診と称して売り出しているが、患者にとってはベルトコンベアの上で立ち往生しているように感じるかもしれない。患者はただシステムに身を任せる以外に選択肢がないということがあまりにも多い。

保険会社にとっては運営コストが安く済むため非常に好都合なビジネスモデルであるが、患者はコストを負担することになる。医師にとっては流れ作業のようなシステムだ。患者の生活環境を訊いたり関係を築いたりする貴重な時間に支払いが生じるわけではなく、次の患者に移らない限りより多くの報酬は得ることができず、医師は質の良いケアの提供によってではなく、患者の数をこなすことによって対価を得る仕組みである。

これは医療システムの理想的なあり方と相反するものであり、このモデルを強化していくというのは、遠隔医療の未来を築く上で大きな間違いと言えるだろう。医療は長い間、地域の医療提供者との継続的な関係を大切にすべきという考えを前提としてきた。個人の健康を全体的かつ長期的に見ることができ、時に困難でデリケートな医療問題を解決に導いてくれる信頼できる医療提供者が必要という考えである。

ランダムなトリアージモデルはこういった尊い絆を断ち切り、まるでUberの運転手とのような、礼儀正しくはあるものの、手短で取引的かつ非人間的な関係性に置き換えてしまう。しかし医療は決して、ギグエコノミーのようにして扱われるべきでない。

医師である私は、このモデルが拡大され続けるとどうなってしまうのかという懸念に悩まされている。1人の患者が医師から医師へと引き渡されるたびに、重要な情報が失われる可能性がある。このモデルでは、患者の基本的な体調、家庭状況、生活環境など、情報に基づいた治療を行うために重要な「無形のもの」を把握することができない。長期的データの欠如により、誤った診断につながってしまうこともある。これが、医療システムが長い間、患者の引き渡しを最小限に抑えるようにデザインされてきた理由であり、この誤りを増加させるような遠隔医療インフラを選択することが間違いである理由である。

それではどんなアプローチが正解なのか。

私たちは今、この国の医療システムと遠隔医療の統合時代の幕開けを迎えようとしているところであり、私は完全な答えを知っていると主張するつもりはない。しかし患者はランダムな医師たちよりも、自分自身の健康に関してはるかに優れた管理者であることは確かである。効果的な遠隔医療は、患者は決定権を与えてくれる。私たちが患者に選択肢を与えそれに耳を傾けるとき、患者は何を好むかを私たちに教えてくれるからである。

私の会社が収集したデータによると、かなりの割合の人々が自身で決定権を持ちたいと考えていることが明らかになっている。遠隔医療患者の10人中9人が、インターネット上で待機させられた後にランダムに指定された医師に会うのではなく、自分が選んだ医師と予約を取れるようにしたいと考えている。

こういった選択が患者に与えられた場合、ほとんどの患者(10人中7人)はバーチャル診察を予約する際に最寄りの医師に予約を入れている。患者は本能的に、いずれは医師と物理的に同じ部屋にいる必要があることを知っているからだ。そのため地元の医師を選ぶことで、前回のオンライン診断での会話を、次回の対面診断で引き続き継続することが可能になると患者自身分かっている。遠隔医療か、信頼できる医師との継続的な関係かの選択を迫られたくないと患者は感じている。もっともである。そんな選択は迫られるべきではない。

従来型の遠隔医療企業で、この必要性に焦点をあて取り組んでいる企業はいない。むしろこのパンデミック禍の中、トリアージモデルがまだ実行可能なうちに規模拡大を急いでいるのが現状だ。短期的に見れば、適切な時期に適切なサービスを提供してくれているという理由から、このモデルが市場から評価されるかもしれない。ただし長期的な価値は、患者の要望に耳を傾け、対応し、それを繰り返していくことからのみ得られるのである。

患者は、医療に関する選択肢を最も多く自分に持たせてくれるサービスを高く評価すると言われている。私もそこに賭けている。

関連記事:米食品医薬品局承認の減量製品Plenityを誰もが利用できるように市販するオンライン薬局Roの挑戦

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タグ:遠隔医療 コラム

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(翻訳:Dragonfly)

家族と最適な介護者とを引き合わせるHomageのジリアン・ティーが「世界の高齢化にテクノロジーをどう生かすか」を語る

Homage(ホメッジ)の共同創業者であり最高責任者のGillian Tee(ジリアン・ティー)氏の話が聞けるのは、いつだってうれしい。なぜなら、高齢者や弱い立場の人たちをテクノロジーで支援する方法に関する彼女の見解には含蓄があるからだ。国連によれば、世界で最も急速に増加している年齢層は65歳以降の高齢者だという(国連レポート)。同時に、多くの国々で介護者不足が深刻化しいて、介護者の燃え尽き症候群による高い離職率が問題をさらに複雑にしている。

「これはまさに、最も重要な社会的テーマであり、全世界的な問題です」とティー氏はDisruptのセッションで語った。

4年前にシンガポールで創設されたHomageのプラットフォームは、マッチング・エンジンを使って家族と最適な介護者とを引き合わせる。同時に遠隔医療プラットフォームでは、オンライン診療やスクリーニング検査などのサービスを提供している。その後にマレーシアにも立ち上げられ、米国時間9月14日には日本の医療技術大手であるインフォコムによる新たな戦略的投資を発表した。この提携により、Homageのアジア太平洋地域での拡大が加速することになる。

Homageを創業する前、ティー氏はニューヨークでRocketrip(ロケットリップ)を共同創業している。Rocketripは、出張関連費用の削減を目的とした企業向けのチケット予約プラットフォームで、Google Ventures、Y Combinator、Bessemer Venturesといった投資会社を引きつけ、3000万ドル(約31億4000万円)以上を調達した。しかし2016年、およそ15年間の外国暮らしに終止符を打ち、ティー氏は故郷シンガポールに帰ることに決めた。「帰郷は母の近くにいるためであり、また、自身のスタートアップの経験を東南アジアでも生かせると考えたからだ」と彼女はDisruptセッションで話していた。

ティー氏は新しい会社を興したいと考えていたが、すぐに介護の世界に飛び込むことはしなかった。そのアイデアが実体化したのは、彼女に近い親類の何人かが慢性疾患の診断を受け、介護の必要性が生じてからのことだった。

「私たちは何をすればいいのかわからず、何が必要なのかを考える方法すら知りませんでした。そのとき私は『大変だ、たくさん勉強しなければ』と悟ったのです」。

高齢化の進行と社会動学の変化に伴い、世界中の多くの家族が同じ問題で奮闘している。伝統的に親類の面倒を見ることになっていた家族も、遠くに離れて暮らすようになったり、仕事で時間が取れなくなるなどの理由で世話が難しくなっている。

家族は、介護者の紹介を口コミや代行業者に頼ることが多いのだが、その手続きは複雑で、長い時間を要し、ときに感情に左右される難しさがある。Homageは、マッチング・アルゴリズムでそこを楽にする。このプラットフォームでもっともユニークな点はきめ細かな対応だ。画面で紹介されるのは、介護事業者の資格や提供できる介護の種類(たとえば長期ケア、ショートステイ、理学療法、リハビリなど)だけでなく、特別な技能も含まれる。たとえば、移動の支援を必要とする利用者も多いので、Homageでは安全に移動できる手段を評価してくれる。

そして同社のマッチング技術が利用者にとって最適な介護業者を見つけ出し、Homageのスタッフが契約手続きを最後まで代行する。このプロセスを合理化することにより、Homageはコストを削減し、より多くの人がサービスを利用できるようにする一方で、サービス提供者の報酬の比率の引き上げが可能になった。

賃金の引き上げは、Homageのもうひとつの目標への助力にもなる。それは、介護人員の拡大と、人材の維持だ。他にも、Homageのプラットフォームから介護人材を最適な働き口に送り出すという取り組みで、同社は介護者不足問題に対処しようとしている。継続的な教育プログラムを提供し、スケジュールが過密にならないよう調整もする。このプラットフォームには長期契約で登録している介護サービス提供者もいれば、週に数日だけHomageの利用者にサービスを提供する人もいる。

「エイジテック」への総合的なアプローチ

6月にHomageは遠隔医療サービスを開始(未訳記事)した。Homage Health(ホメッジ・ヘルス)というこのプラットフォームは、しばらく開発段階にあったのだが、新型コロナウイルスの大流行に開始を後押しされた。「ハイタッチ」つまり人間的な触れ合いを重視した対面の遠隔診療は、同社の介護事業の側面にも即している。なぜなら、多くの患者は定期的なスクリーニング検査や、医師や専門医による診察を必要としているからだ。移動が困難であったり免疫力が低下している患者も、これによって楽に定期的な診察を受けられるようになる。

「ウェアラブル・センサーなどのハードウェアは、救急治療が必要になる前に心臓病などの潜在的健康問題を特定するという点で有望だが、患者の日常生活に簡単にそれらを組み込ませる、あるいは装着を忘れさせない方法が課題だ」とティー氏は説明する。

全体としてHomageの使命は、介護を必要とする多くの人たちに対応する総合的プラットフォームの構築だ。戦略的投資を行ったインフォコムとの新しい提携関係により、それは前進することになるだろう。なぜなら、Homageが数年かけて協議してきたとティー氏が話すその企業は、高齢者住宅や病院を含むおよそ1万3000の日本の施設と協力関係にあるからだ。

インフォコムにも独自の介護サービス・プラットフォームがある。Homageとの提携で、双方の企業は手を結び、より多くの患者に対応できるようになる。「日本は、世界で有数の高齢者人口を抱える国だ。その需要に応えるために、日本では今後5年から10年以内に、少なくとも50万人の介護サービス提供者を動員しなければならなくなる」とティー氏は言う。

「私たちは、求められる種類の介護サービスを利用しやすくするインフラを作り始める必要があります。そうした使命においては、私たちはインフォコムとぴったり一致しています」とティー氏。「彼らにも、日本の介護サービス提供者に仕事を紹介するプラットフォームがありますが、Homageのモデルは審査も行うため、とくに適用性が高いと見てもらっています」。

画像クレジット:Homage

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(翻訳:金井哲夫)

神戸市が新型コロナ対策として遠隔ICUシステムを導入、スタートアップのT-ICUと連携

神戸市は8月12日、新型コロナウイルス感染症患者の入院を受け入れている市内の医療機関に「遠隔ICUシステム」を導入することを発表した。遠隔地からネットワークを通じて集中治療専門医による診療支援が可能にすることで、重症化の早期発見など感染症患者への適切な医療の提供と市内の医療提供体制の充実を図るのが狙いだ。

現在、神戸市内の医療機関のすべてで新型コロナウイルスに感染した患者を受け入れられる態勢が整っているわけではない。一部の医療機関が、軽症・中等症患者向け病床と、重症者向け病床を確保して懸命に治療に当たっているという状態だ。しかし現状では、中等症患者が重症化するリスクを考慮して、各医療機関が重症者病床を設けている中央市民病院に患者を早期に転送することが多くなっている。これにより最後の砦である中央市民病院の業務が逼迫するという悪循環が起きる恐れがある。

一方で市内すべての医療機関が感染症の専門ではないため、新型コロナウイルス感染症患者を受け入れる医療機関であっても、重症化しつつある患者の見極めが難しいケースもあり、結果的に治療が遅れてしまうリスクもある。

神戸市はこういった問題を解決するために、遠隔ICUシステムを導入。専門医によるリモート診断によって、軽症、中等症、重症を見極め、適切な処置が受けられる医療機関に患者を振り分けることで、重症者向け病床を持つ中央市民病院はもちろん、軽症・中等症患者向け病床を持つ市中の医療機関が逼迫しないように調整するのが狙いだ。

遠隔医療には、神戸市拠点のスタートアップであるT-ICUが開発したシステムを利用。市内の医療機関に導入するこで、T-ICUに登録している集中治療専門医が待機するサポートセンターとネットワークでつなぎ、生体情報モニター、電子カルテなどの情報を共有してテレビ会議にてコンサルテーションを行うという。もちろん、感染症指定医療機関である神戸市立医療センター中央市民病院が、T-ICUに知見を共有し、治療方針などの助言も行う。

導入スケジュールは以下のとおり。

  • 2020年4月〜:中央市民病院と西市民病院、および西神戸医療センターの間で試験導入し、有用性を検証
  • 0220年8月:市内医療機関での導入先調整
  • 2020年9月:システム設置、運用開始
  • 2021年3月末:事業終了予定(新型コロナウイルス感染症の状況により延長の必要性を検討)

在宅のホルモンテストで女性の閉経時期を予測する遠隔医療スタートアップThe Cusp

The Cusp(ザ・カスプ)は閉経前後の女性に遠隔診療を提供する新たなスタートアップだ。同社はクリニックに足を運んでテストを受ける費用をなくす在宅ホルモンテストを展開する。

カリフォルニアの女性は遠隔コンサルテーションとテストを159ドル(約1万7000円)でオーダーできる。クリニックで同様のテストを受けて分析してもらうとおおよそ500ドル(約5万4000円)かかる。

一般に使用されているホルモンテストと異なり、The Cuspは、鍵を握るホルモンの測定が閉経時期を予測するのに役立つという新たな研究に基づくテストをベースにしている。同社は現在、医療業界がこうした発見を確認するのをサポートするために研究者らと協業している。そしてコンサルテーションと診断へのアクセス改善の組み合わせが、より正確に閉経を予測する能力をかなり高めることになると確信している。

「閉経はかなり軽視されていて、中年期ケアは十分にサービスが提供されていないマーケットだ。我々は、女性が自分の健康を最善なものにできるよう中年期ケアの新たなモデルを提供しようとThe Cuspを立ち上げた」と同社CEOのTaylor Sittler(テイラー・シットラー)氏は述べた。「早期のケアがより健康的な結果につながるため、まずは閉経周辺期ケアにフォーカスする」。

同社によると、テストは閉経の初期サインを経験しているおおむね42〜50歳の女性向けだ。「キャリアを通して、私は女性の健康、閉経、乳がんが交差する分野を専門としてきた。女性のための情報があまりにも少ないことがショッキングで、私はがん経験者向けの閉経症状管理や生殖機能に関するガイドライン策定で国の委員会と作業した」とMindy Goldman(ミンディー・ゴールドマン)博士は述べた

Gynecology Center for Cancer Survivors(がん経験者専門婦人科センター)と、カリフォルニア大学サンフランシスコ校のAt-Risk Women Programでディレクターを務めるゴールドマン博士はThe Cuspで医師として働いている。「The Cuspに参加できることをうれしく思う。総合的な診断ツールと、閉経に正面から立ち向かい、複数のアプローチで管理できるようになるパーソナライズされたケアを女性に提供すべく取り組んでいる。そうした複数のアプローチには医療介入、自然療法ソリューション、ホルモン代替セラピーが含まれる」

The Cuspは患者約200人にケアを提供していて、会員は急増している。最近立ち上がったばかりの同社は、CurieMD、Elektra Health、Geneveのようなスタートアップの仲間入りを果たした。これらスタートアップはすべて閉経前後の女性への医療サービス提供を専門としている。

これまでにThe CuspはmHomeBrew、Village Global、そしてKatie Stanton(ケイティ・スタントン)氏やMegan Pai(ミーガン・パイ)氏のような個人投資家から400万ドル(約4億3000万円)を調達している。

Color Genomicsの共同創業者であるシットラー氏は、新しい診断テストとテクノロジーを閉経期にさしかかっている女性に適用することにチャンスを見出している。

The Cuspの専門ケアパッケージは210ドル(約2万3000円)だ。ここには、テストと医師のオンライン診察、無制限のチャット、パーソナライズされた治療計画、サプリメントの割引が含まれる。サービス利用を継続したい場合、月72ドル(約7700円)かかる。

画像クレジット: John Lamb / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

1訪問30ドルのペット向け遠隔医療プラットフォーム開発のAirvetが15億円調達

このところ、遠隔医療が広く受け入れられるようになってきた。人間だけの話ではない。米国のおよそ65%の世帯がペットを飼っているが、獣医がそのむくむくの患者を遠隔診療できる手段を提供している企業は、いまでは目がくらむほど多く存在する。Petriage(ペティグリー)、Anipanion(アニパニオン)、TeleVet(テレベット)、Linkyvet(リンクベット)、TeleTails(テレテールズ)、VetNOW(ベットナウ)、PawSquad(ポウスクアッド)、Vetoclock(ベトクロック)、Petpro Connect(ペットプロ・コネクト)などなどだ。

その中に、創設2年目で従業員数13人というロサンゼルスのスタートアップであるAirvet(エアーベット)がある。同社が最高とされ、その評判により投資家の期待も同等に得ているのには、相応の理由がある。米国時間6月26日、同社は1400万ドル(約15億円)のシリーズA投資を獲得したと発表した。主導したのはCanvas Venturesで、e.ventures、Burst Capital、Starting Line、TrueSight Ventures、Hawke Ventures、Bracket Capital、および個人投資家たちが参加している。

そのスマートなモデルもさることながら、新型コロナウイルスのパンデミックがCanvas Venturesの決断を後押ししたと、ジェネラル・パートナーのRebecca Lynn(レベッカ・リン)氏は指摘する。彼女は11年間、数多くの遠隔医療スタートアップを見てきたが、自身が所有する小さな農園で暮らす動物たちのためにAirvetのサービスを利用したところ、同社に惚れ込んでしまった。しかも、「新型コロナウイルスが選択の大きな決め手となりました」と彼女は言い足している。

我々はAirvetの創設者でCEOのBrandon Werber(ブランドン・ワーバー)氏に連絡をとり、独自に詳細を聞いた。

TechCrunch:この企業を創設した動機は?

ブランドン・ワーバー氏:私の父は、米国で最もよく知られた獣医の一人、テレビでおなじみのDr. Jeff Werber(ドクター・ジェフ・ワーバー)です。人間の世界で遠隔治療が果たす役割の大きさを目の当たりにして、私たちも、自分で自分のペットの世話をするときのように簡単に、しかも同等レベルのケアを提供したいと考えました。ペットの世界で育った私は、医療の提供がどれほど非効率であるか、そして変化する飼い主の期待に獣医が応えられない状況を、身をもって感じ、認識していました。

TechCrunch:獣医と患者であるペットとを、どのように結び付けるのですか?

ワーバー氏:Airvetには2つのアプリがあります。ひとつはペットの飼い主がダウンロードして獣医と話ができるようにするもの。もうひとつは、獣医がダウンロードして、ワークフローの管理とクライアントとの対話を可能にするためのものです。私たちは、今ある獣医との関係を奪おうとするものではありません。むしろ、私たちは動物病院と契約し、遠隔医療を可能にして、週7日、24時間、動物病院から遠く離れた飼い主でも、必要なとき即座に獣医に相談できる環境を提供します。

米国でペットを飼っている人の大多数は、かかりつけの獣医を決めていません。手術を要するような深刻な健康問題が生じたときは、どうしても直接獣医に診てもらわなければなりませんが、そのときも私たちの獣医のネットワークから病院を紹介します。カーブサイド・チェックイン(ドライブスルー)のような使い方をする事例も見られます。病院の駐車場からビデオチャットで獣医と話し、その場で直接診療の予約を取るといった形です。

TechCrunch:1回の訪問が30ドルと聞いています。このモデルで、どのようにして獣医に経済的な利益が出せるのでしょうか?

ワーバー氏:獣医は、基本収入の上に載っかった付加的な収入源として私たちを見ています。私たちが獣医を雇うのではありません。2600件を越す私たちの獣医ネットワークでは、大半の獣医が自身の動物病院でAirvetを利用しています。彼らは、Uber(ウーバー)のドライバーと同じように、自分の意志でオンデマンド・ネットワークに接続して全国の飼い主からの相談を受けるかどうかを判断し、副収入を得ることができます。

TechCrunch:以前にこのモデルを試したスタートアップから、学ぶことはありましたか?

ワーバー氏:私たち以前のスタートアップは、すべてが消費者第一ではなく、獣医のためのツールの構築に重点を置いていました。そのため彼らのプラットフォームは、あらゆる飼い主が利用できるというものではありませんでした。かかりつけ医がその特定のプラットフォームに対応している場合にのみ、飼い主が使えるというものです。そうした獣医は非常に少なく、利用できる飼い主もごく限られます。

TechCrunch:別の事業は行っていますか?獣医の遠隔診療以外に、何かを販売するとか。

ワーバー氏:今は遠隔診療だけです。獣医とその専門性に応じて、最低料金30ドルから利用できます。ゆくゆくは、ペットの健康に関連するバーティカルな事業へと拡大し、それに見合った提携なども進めてゆく計画です。2020年は、米国だけで990億ドル(約10兆6000万円)がペットに消費されると予測されています。私たちにとって、遠隔医療は始まりに過ぎません。

TechCrunch:Airvetは特定の実務管理ソフトウェアを使っていますか?

ワーバー氏:いいえ。私たちは、獣医にバーチャル予約のスケジュールが行えるワークフロー・レイヤーを提供していますが、間もなく、各獣医が使っている既存システムやワークフローに完全に統合できるようになる予定です。

TechCrunch:30ドルのプランで獣医に相談する場合、時間制限はありますか?

ワーバー氏:時間制限はありません。通常、相談枠の期間は丸々3日間とられているため、飼い主はその後もチャットで追加質問をしたり不安なことを相談したりできます。

TechCrunch:価格で競争するのですか?

ワーバー氏:私たちの目標は、病院とともに事業を進めることであって、病院と張り合ったり、仕事を奪ったりすることではありません。バーチャルでは採血も、腫瘍の触診も、歯の検診もできません。どうしても、動物病院に行く必要性は消えないのです。

私たちは、(飼い主がいつ病院に行くかの)判断を助けたいと考えています。平均的な飼い主は、1年に1.5回しか獣医にかかっていません。Airvet利用者のセグメントの大部分は、その6倍、獣医と関わっていますが、それが時間の削減とストレスの低減に役立っています。

これは競争ではありません。私たちは、次に動物病院に行くまでの間のケアを提供する企業です。また、私たちのサービスを利用することで、結果的に、不必要な救急外来受診をなくすことができればとも考えています。

画像クレジット:Michael Seeley Flickr under a CC BY 2.0 license.

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(翻訳:金井哲夫)