WELQ騒動後のウェブメディア、重要視するのは「質の高さ」——女性ネットユーザーへのアンケートで

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「WELQ」にまつわるキュレーションメディア騒動を受け、Googleが品質の低いウェブサイトを対象としたアルゴリズム変更を実施した。騒動はプラットフォームに影響を与えるまでに至ったが、一方で読み手となる世間のユーザーにはどのような変化があったのだろうか?

リビング新聞グループのリビングくらしHOW研究所は「WEBからの情報収集」と題して「リビングWeb」「シティリビングWeb」のユーザーを対象にアンケートを実施。その結果を2月10日に発表している

今回のアンケートは「健康・医療に関する情報収集」をはじめ、「まとめサイトの利用動向」「DeNAにはじまるキュレーションメディア騒動の印象」などの項目で構成されている。調査期間は2016年12月14日〜12月18日。調査似回答したのはサイトを利用する全国の女性ユーザー1131人(平均年齢42.42歳)となっている。同社サイトの女性ユーザーに限定されているということ、またあくまで全ての項目がWELQ騒動前後での態度の変化を比較できるものではないことから、やや偏りはあるかもしれないが、いわゆるネットのヘビーユーザーとはまた違う属性の意見を知るにはいい材料だろう。

調査によると、キュレーションメディア騒動を知っていたのは1131人のうち35.1%。そのうち「WEB記事への信頼度や情報検索の仕方に変化があった」と答えるのは44.1%だった。ウェブの記事への信頼度や、情報検索の仕方などに変化があったかという設問(複数回答)に対しては、「検索で上位に上がっていてもむやみに信用しないようにしようと思った」という回答が77.7%と最も多く、その次に「医療情報などの重い情報は、専門サイトから得るようにしたい」という回答が50.3%で続いた。

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リビングくらしHOW研究所 女性(2016年/全国)「WEBからの情報収集についてのアンケート」より

また、ウェブの情報をどの程度参考にするか、記事のジャンルごとに5段階評価をつけるという設問で「十分参考にする」および「まあ参考にする」と回答した割合が過半数を超えたのは「食品情報」「旅行情報」「化粧品・美容情報」「子育て情報 ※子供がいる方のみ」の4ジャンル。一方過半数に満たなかったジャンルは「マネー・投資情報」「受験・塾情報」「住宅情報」「求人情報」の4ジャンルで、ライフスタイルに関する情報は参考にする一方で、ライフイベントなど、重要な選択に関わる情報では参考にする割合が低いようだ。

参考にする基準は全ての記事のジャンルで「記事の質の高さ」が1位で、「その道の専門家が書いている」が2位。一方、ジャンルごとの指標を見ると、受験・塾情報は「書いている人の名前やプロフィールがわかる」、旅行情報は「引用でないオリジナルの写真や文章を使っている」、求人情報では「WEBサイト自体の知名度」「WEBサイトの運営元の知名度」がそれぞれ重要視されていることがわかる。

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騒動後、世間のユーザーは「品質の高い記事」への意識が高まっていることがわかる。実際に筆者の周りでも、その気配を察知して専門家集めや、取材記事、企画記事の制作体制作りに奔走している新興ネットメディアをいくつか見かけている。しかし、この調査を見ればわかるように、ユーザーが支持する記事には、専門家であるかどうかや一次情報であるかどうか以外の基準も含まれる。メディア企業の関係者はこの調査を参考に、さらなる品質の向上のヒントを見つけてはいかがだろうか。

DeNAがキュレーション事業で38億円の減損処理、事業再開について「決まっていることはない」

DeNA代表取締役社長兼CEOの守安功氏

DeNA代表取締役社長兼CEOの守安功氏

2016年末に医療系キュレーションメディア「WELQ」を契機にした騒動を巻き起こしたディー・エヌ・エー(DeNA)。2月8日に開かれた2017年度第3四半期(3Q:4〜12月)の決算説明会の冒頭で、DeNA代表取締役社長兼CEOの守安功氏はあらためてこの騒動に対して謝罪。サイト再開の可能性があるかどうかについて、「検討しているが決まっていることはない」とした。今後は3月を予定する第三者委員会の報告も踏まえて、アナウンスできることがあれば速やかに行うとしている。

DeNAの3Q累計決算(IFRS)は、売上収益が1087億2000万円(前年同期比0.0%増)、営業利益が186億6300万円(同27.1%増)、四半期最終利益が288億300万円(同244.5%増)となった。キュレーション事業については、現状で事業再開のめどが見えないとして、のれん代38億5900万円の減損損失を計上。同事業は2016度第1四半期〜第3四半期(4〜12月)で約17億円の営業赤字を計上しており、第4四半期については13億円弱の赤字になる見込みだという。また一方で欧米の海外子会社の清算に伴う諸経費22億円を計上。利益を押し上げた。

キュレーション事業の業績

キュレーション事業の業績

説明会の後半の質疑応答でも会場のアナリスト、メディアからキュレーション事業に関する質問があったため、その内容を中心にまとておこう。冒頭にもあったとおり、守安氏はキュレーション事業に関する第三者委員会の調査結果が出る3月、事業を再開するかどうか、その可否も含めて協議をしているという。

「再開するのであれば具体的にはどういうバリューがあればユーザーに受け入れられるか、運営として適切で、アウトプットで責任が持てるのか、世間的にも受け入れられるのか、事業としてみた場合に魅力的になるのかと総合的に判断していく」(守安氏)

またキュレーション事業の成長性自体が当初とズレてしまっているかという質問に対しては、「判断はまだ早い」(守安氏)として、再開の可否を話すタイミングで改めて説明するとした。

DeNAではWELQ騒動を受け、専用の相談窓口を立ち上げている。この窓口への相談件数は具体的に開示されなかったが、「総数では結構な数を頂いている」「実際の健康被害で言えば数件単位」「主張されたことが当社起因か分からないことがあるので個別で相談させて頂いている」(いずれもDeNA執行役員 経営企画本部長の小林賢治氏)という状況だという。

では、DeNAはWELQ騒動以後に変化があったのか? これについて守安氏は、「変わっている最中。変わっていこうとしている最中」と答えた。

「議論してるところ。(DeNAは)色んな事業を展開しているが、管理体制、コンプライアンスのあり方について十分かどうかや、やり方を考えている。また行動規範のあり方を見直す必要はあるのではないかと考えている。その中で経営体制なども、中長期で考えていこうとしている最中だ」(守安氏)

Google、低品質サイトの評価を下げるアップデートーーキュレーションメディアなどが対象に

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Google日本法人は2月3日、自社のウェブマスター向け公式ブログにて、日本語検索のアルゴリズムをアップデートしたと発表した。

ブログによると、情報の質が低く、過度な検索エンジン対策を行うサイトの評価が下がるという。その結果「その結果、オリジナルで有用なコンテンツを持つ高品質なサイトが、より上位に表示されるようになります」(Google)とのことだ。

TechCrunchの読者であれば、DeNAが自社で展開するキュレーションプラットフォームを全て非表示にし、代表取締役の守安功氏が謝罪するに至った「WELQ」にまつわる騒動をご存知だろう。ブログでは具体的なサイト名こそ上げられていないが、このWELQの騒動を発端とした一連のキュレーションメディア問題に、Googleが動いたと言っても過言ではない。同社が日本語検索エンジンのアルゴリズム変更を発表するのは珍しいことだ。

WELQ騒動で問題になった品質の低いキュレーションメディアはメディアビジネスというより、労働集約ビジネスだ。クラウドソーシングや在宅バイトを使い、一次取材を行わず、ウェブ上のコンテンツをつぎはぎして記事を制作する。制作する記事は検索対策として「キーワード」や「文字数」を綿密に管理されているというものだ。記事の剽窃やリライト、つまり情報の書き換えを行うメディアも増加していた。

SEO専門家の辻正浩氏はITmedia NEWSの記事にて、今回のアップデートの対象になったサイト名について「RETRIP」や「KAUMO」と具体的に言及。さらにTwitter上で、キュレーションメディアにとどまらず、情報が薄い新興メディアが対象になっていると指摘している。

 

「お前が言うな」の声も想定していた——キュレーション騒動を受けてNAVERまとめが新方針を打ち出した理由

LINE上級執行役員 メディア担当の島村武志氏

2016年末ネット業界を揺るがした話題と言えば、ディー・エヌ・エー(DeNA)が手がける「WELQ」をはじめとした、キュレーションプラットフォームの騒動だろう。

医療情報に特化したWELQ。このサイトに掲載されていたコンテンツには医学的に誤った情報や不正確な内容が多く、問題視されていた。また、「誰もが投稿できるキュレーションプラットフォーム」とうたうものの、その実態はDeNAがクラウドソーシングを使ってコンテンツを作成する、というものだった。またコンテンツ作成においては、他サイトのコンテンツの盗用を指示すると言っても過言ではないマニュアルの存在があったことも明らかになった。結果、DeNAは自社で展開していた全てのキュレーションプラットフォームの記事を非公開化するに至った(詳細はこちら)が、この問題を契機として、各社のキュレーションメディアやキュレーションプラットフォームはコンテンツの見直しや非公開化が相次いだ。

そんな騒動の中、元祖とも言えるキュレーションプラットフォーム「NAVERまとめ」を運営するLINEが動いた。同社は2016年12月5日、LINE NEWSに関する発表会において、まとめの作成者にオーサーランクを適用するほか、一次コンテンツ作成者へのインセンティブや権利保護を行うといった新方針を発表した。NAVERまとめのサービス開始は2009年。サービスから6年以上経過したこのタイミングでなぜ新方針を打ち出したのか。LINE上級執行役員 メディア担当の島村武志氏に話を聞いた(編集注:取材は2016年12月8日に実施した)。

今のままでいい、と思っていたわけではない

——改めて、このタイミングで新方針を発表した意図について教えて下さい。

もともと(一連の騒動を受けてNAVERまとめの対応について)黙っているつもりはありませんでした。本当は発表会でLINE NEWSの取り組みについて発表する予定だったのですが(編集注:新方針の発表はもともと予定されていたLINE NEWSの発表会の中で行われた)、今回の騒動を受けてインターネットの信憑性や著作権まわりの問題、記事の制作プロセス、また“キュレーション”という言葉の定義も曖昧なものになっていました。

「これは先にNAVERまとめの話をしなければ、質疑応答が成り立たなくなるな……」という思いもあり、このタイミングで社内で相談して新方針について発表することを決めました。

振り返ってみると、NAVERまとめの理念についてしばらく話していなかったので、良い機会だなと思いましたし、もちろん今のままでいいと思っていたわけでもないのです。

——具体的にどこに課題を感じていたのでしょうか。

昔から議論していることなのですけど、そもそもNAVERまとめは検索エンジンの問題から始まったサービスです。Googleには「美味しいラーメン屋さん」が分からないと思っています。なので、美味しいラーメン屋さんを知っている人こそが「美味しいラーメン屋さん」をおすすめすることが、検索エンジンの「次」につながるのではないかと思っていました。

ただ、専門家ではない人がネットに落ちている情報をもとに「美味しいみたいですよ」と記事をまとめるケースが増えてきました。「よく分からないけどそういうモノが載っている」では検索エンジンと変わりがありません。やはり、「ラーメンを食べ続けて30年の私がオススメする」といった身元が保証されている人がまとめた記事の方が読みたくなるし、価値があります。

引用される、されないの定義に関しても、どこの誰かは分からない人に引用されているから権利者は怒るのであって、ネット界隈で有名な人に引用されたら「ありがとうございます」となるのではないでしょうか。だからこそ、誰がどう評価しているのかを明確にすべきだと前から思っていました。

また、まとめサービスをやっていく中で、一次コンテンツ作成者のおかげで成り立っているのに、コンテンツを二次的に利用して流通させている人にインセンティブを与えているだけなのはどうなのかと。立ち上げの頃からずっと議論してきました。

——NAVERまとめの立ち上げは2009年。今まで一次コンテンツ作成者への施策は着手できていませんでした。

言い訳がましく聞こえてしまうかもしれませんが、サービス立ち上げ期の2009年と今では状況が全く異なっています。

当時はブログ全盛の時代であり、ネットコンテンツが元気な時代でした。サービスを立ち上げるにあたっては、スタンダードなユーザー投稿型のサービスを考えていました。

ただ、すでに他のサービスがあり、たくさんコンテンツが発信されているという事実がありました。後発で参入しても成功しない、その次に何をするかを考えなければいけない、という議論をさんざんしました。それでリンク記事とTwitterの声を見せるようなただリスト記事ではないもの、DJで言えばサンプリングして新しいクリエイティブが作れるようなものがないか、といったところからセカンドメディア的な構想が始まりました。

「ユーザーは簡単には書いてくれないんじゃないか……」という思いは抱えたまま、NAVERまとめを開始してみたのですが、結果は想像通り。実際に誰も書いてくれなくて、1年くらい何の成果も出せませんでした。「NAVERまとめは最初から上手くいっている」という文脈で語られがちですけど、全然そんなことはありません。

それで最初に、(まとめ作成者への)インセンティブをやろうとなりました。最初は広告収益を全額分配するというところからです。そのあとに東日本大震災が起こって、情報が錯綜する中で輪番停電のまとめなどもできたりして、そういったところから知られるようになっていきました。2011年に(コミュニケーションサービスの)LINEができて、会社が大きくなっている中で、NAVERまとめの存在意義が求めらるようになったのが2012年頃です。つまりそれまでは全てを作成者に返してしまっているので赤字の運営です。その頃からまとめのページビューも増え始めたのですが、一方では検索サービスのNAVERも閉じてしまったので、独立して事業を回さないといけないという状況になりました。

——NAVERまとめは広告商品(スポンサードまとめ)でビジネスをしています。

PV至上主義から脱却したかったのです。自分たちの作っているものに誇りがあるのですが、ネット広告は結局アドネットワークになっていきます。でもそれだけで終わりたくなかったのです。単価を上げ、より多くインセンティブを返す方法を考えたのです。

当時はライブドアと会社も1つになり、一緒になって商品を作ろうとなっていました。ちょうどNAVERまとめは人が来てみて頂けるようになってきたので、アドネットワークだけでできない、うちでないとできない商品を…というので野心的に作りました。

NAVERまとめは自分たちの実力とは別に、評価が一人歩きしているところもあったのですが、決して順風満帆ではありませんでした。ですが、今回の一連の騒動を受けて、「今ここで対応すべきだ」と強く思えたので新方針を発表しました。

さまざまな“まとめ”が掲載される「NAVERまとめ」のトップページ

さまざまな“まとめ”が掲載される「NAVERまとめ」のトップページ

「お前が言うな」の声、言われると思っていた

——今回の発表について、ネット上では評価する声があると同時に「お前が言うな」という批判の声も大きいです。

それは言われると思っていました。ただ絵に描いた餅、ポジショントークで言うのではありません。新方針にチャレンジすると言い切ることが、自分たちの進むべき道を明確にしてくれるのではないかとも思いました。どういうことをやってきたかまず知って欲しいし、これからをどう考えているかを知って欲しい、と。

——ホワイトリストを作るのでプラットフォームに乗って欲しいという新方針は、NAVERまとめが「Googleになりたい」と言っているような印象を受けます。

Googleというと語弊があるのですが、「検索」になりたいんです。コンテンツを必要としている人とコンテンツを持っている人をいかにつなげるか、ということなのです。

一連の騒動で少しだけ違和感があるのは、検索エンジンについてどう考えるかということです。

権利侵害という意味でいうと、法律的には検索エンジンだけが免責されていて(編集注:検索サービスにおける「複製」は、著作権法上は適法となっている)、自社のサーバー内に保持しています。また中身が分かるレベルでの引用、画像もサムネイルの使用は認められています。

それを踏まえて、ロボットは良くて、ロボット以外がはダメな理由(まとめが検索サービスと認められない理由)はそもそも何だったのかと。例えばロボットが信頼性を評価できないことが今回の騒動につながりました。彼らは2014年頃にドメインを判定する、オーサーランクを導入する、と言っていましたが、それがきちんと適用されていれば問題は起きなかったかもしれません。一番人の目に触れている検索エンジンがどんなルールを設けているか、それがその先のコンテンツのあり方を大きく定義していることには違いありません。

「ウェブの記事はタイトルが9割」という話を耳にすることがあると思いますが、これは中身の信憑性は置いておいていい、人はタイトルしか見ないという今までの仕組みがそうさせているところがあります。

——「検索」において実質的にロボット検索のGoogleしか選択肢がないことが問題だということですか。

1つの選択肢しかなければ、すべてのコンテンツはその評価軸に沿って作られるようになってしまいます。だから、今回のような問題が起きてしまったと思いますし、記事の内容よりタイトルにこだわる傾向にになったのではないでしょうか。

ただ、大学教授であろうとその分野で優れた知識を持っている人でもタイトルのつけ方がうまいかどうかというと、決してそんなことはありません。タイトルをつけるのが上手な人と協業するかたちはないのか……と模索したのがNAVERまとめです。検索エンジンという概念はありつつも、それだけではない接点を上手く作っていくことを考えました。

みんなが検索しようと思ったときに最初に開くページではないので、プラットフォームとして拡大しようとしても難しい部分はあるけれども、LINEのスマートポータル事業と繋がる部分はあります。LINEは“あらゆることはLINEにつながる”と考えているので、将来的にはLINE上で医療のことを知りたいと思ったとき、その医療情報を誰がどのように作ったのか、そこまでつなげる必要が出てくるでしょう。

やり方に関しては見切り発車な部分もありますが、根拠なく新方針を発表したわけではありません。LINEのスマートポータル戦略が進んでいることを踏まえて、私たちはロボット検索とは違ったルールで権利をきちんと守ってコンテンツを届けることができると思っています。NAVERまとめで閉じる話でもないと思っているので、LINE IDでの認証を設けることにしました。LINE IDは(変更できないので)ウソを言ってあとから直す、ということはできません。

そもそも何も担保しない状態だったので、まずは少しでもフィルターがかかる状態にすれば、身元が保証されるようになっていき、検索する意味も変わっていくと思います。

——ロボット検索より以前にあったディレクトリ検索(編集注:「サーファー」と呼ばれる担当者がウェブサイト1つずつにカテゴリを付けて登録するタイプの検索エンジン。かつてはYahoo!検索でもこちらが主流だった)に近い印象も受けます。

私はディレクトリ検索全盛の時代から、ロボット検索が席巻するところまでを、身をもって体験しているので、あのとき多くのモノが失われたのを知っています。

当時はサイトが「その人自身」を表すものでした。今よりもサイトを作るのにハードルは高かったのですが、「好きな情報を発信したい」という情熱がフィルタにかけられて検索エンジンに登録されていました。そこには、ファンの人同士が作っている「リンク集」なんかもあって。そうすると自分の好きなことから新しい興味へ、「横に横に広がっていくインターネット」になっていました。ですがロボット型の検索は「ドリルダウン」しかありません。

例えばフェラーリが好きで調べたい人は、実はスポーツカー全体が好きなことがあります。そうすると他のメーカーのスポーツカーについても派生して調べたいし、興味がある。ディレクトリ検索はそういったものをカテゴリで辿っていけました。そのルールが正しかったかというと異論もありますし、これまで何度もレギュレーションはアップデートされてきました。ですが、(登録される情報は)機械をだませても人の目はだませません。例えば「肩こり 幽霊」なんていうキーワードは(人の目であれば問題があると)分かります。

例を挙げると——最近は事情が違ってきましたが——一般的にはコンピューターが写真を見て、その写真に写っている人物を男性か女性か判断するということは難しかったのです。処理の効率化にコンピューターを使うことはできますが、人間の経験をもとにしないと判断できないこともあります。そんな判断があるので安心できる、信頼できる場所を作る、それを広げる、という手法として「NAVERまとめ」があるのじゃないかとも思っています。

——プロバイダ責任制限法について言及されることが多いですが、NAVERまとめはプラットフォームなのでしょうか。自らコンテンツを発信するメディアになるのでしょうか。

NAVERまとめはプレーヤーになるつもりはありません。LINE社としてはLINE NEWSのチームでやりますが、NAVERまとめではやりません。エクスキューズしておくと広告商品のまとめだけは違いますが、いわゆる情報を発信する立場になることはありません。

—— WELQの騒動ではSEOの手法にも話題が及びました。NAVERまとめもSEOが強いサービスです。

実はNAVERまとめはSEOが本当に弱かったんですよ。初期の段階では韓国のNAVERから開発の支援を受けていたのですが、韓国にはSEOの概念がありません。それは韓国ではNAVER検索が最強の検索サービスで、ウェブ検索ではなくコンテンツ検索が主流だからです。

NAVER検索は知恵袋のようなQ&Aサービスを作って、ハンゲームのコイン配布キャンペーンを実施し、ユーザーにたくさんコンテンツを作ってもらった。できあがったコンテンツはGoogleから遮断し、NAVER内でしか読めないようにすることで、ユーザーを囲い込んでいきました。そういった経験もあり、人とテクノロジーが調和した「探しあう検索」(NAVER検索のテーマ)という根底の考え方を持っています。

しかしSEOを意識しないわけにもいかないので、「最低限インデックスしてもらえるように記述してください」ということは言っていました。もちろん最優先事項は作成者の数を増やすことなので、SEOの対応はすごく遅れていて、今の状態は本当に棚から牡丹餅みたいなものです。

——2015年5月のGoogleのアップデート以降、NAVERまとめは検索順位を落としたと聞きます。Googleに目をつけられるほどSEOが強かったとも言えるのではないでしょうか。

検索順位を落とされたと言われるのですが、私はそれが適切だったと思っています。そもそも検索上位にあることが本意ではありません。コンテンツがオリジナルじゃないし、ある種のリンクの集合体。コンテンツファームに見えるかも知れません。もちろんまとめによっては価値があるのですが、それが検索の1位、2位になることが適切かという悩みはありました。

あくまで私の推論ですが、最近のアルゴリズム変更でページランクと被リンクランクをドメインに返す割合が変わってきているので、その結果、まとめも良いものが残り、そうでないものの順位が下がってきてるだけではないかと思います。

残る著作権問題、どう取り組むか

——著作権に関する問題、情報の信頼性に関する問題は残っています。現在どんな取り組みをしていますか。

著作権侵害に関して残っている課題は事後対応のことだと思っています。結局、掲載後に権利者から連絡をいただかなければ分からない種類の権利侵害がある。我々が見て分かる権利侵害の記事や間違った情報が載っている記事はすぐに落とします。

——ライセンスの必要そうな画像を排除しているのですか。

画像の著作権って一番分からないのです。権利元が分からないですし、媒体がどこまで許諾をとっているのかも分かりません。

以前、宇多田ヒカルさんの楽曲がYouTubeから削除された問題があって、一時期大騒ぎになったんです。権利者から申告があったから消したと思いきや、実が権利者から「なんで消したんだ?」と言われたみたいで、本当に権利者が誰かが分かりづらい。

著作権に関しては申告制になっていることがそもそも問題だと思っているのですが、それを解決するためにあらかじめ「一次コンテンツ作成者が誰なのか」が分かる仕組みが入らないと確認のしようがありません。とにかく、そこがすべてだと思います。

なのでまず「これが私の著作です」と教えてもらう、本当にその人のものであるかを確認する、その人がどういう経験をしてきた人であるかを承認することが1つのステップだと思います。そうすることで私たちがコンテンツを紹介するときは、(一次コンテンツの作成者から)「使っていいですよ」と言われているので使うということができます。

それがNAVERまとめの中で、こういう範囲であれば使って大丈夫という形でどんどん共有していければと思っています。以前から「Getty Images」などとホワイトリスト的な取り組みをしており、権利の所在が明確なものをユーザーは自由にまとめに使えるようにしています。それを一般に広く解放していくイメージですね。

こういう仕組みを構築することで、ユーザーも使っていいものが増えればまとめの量が増えるし、権利の所在も明確になるのでインセンティブの還元もしやすくなる。これは一つの形として考え始めています。

権利者が誰で、どんなことを望んでいるのか。一次コンテンツ作成者に向き合って、彼らが情報を発信していくことに対して助けとなる形で入っていきたいのです。「具体的にいつやるんですか?」といった声もあると思うのですが、まずは始めなければ意味がない。どれくらいの人に賛同していただけるか分からないですが、少なくとも賛同していただいたときに、やってよかったと思っていただけるようにすることが、私たちができることだと思います。

そして、それをやり続けていけば、少しずつ価値が分かってもらえて、「今まではSEOを意識してタイトル付けをしていたけど、これからは中身にこだわればいいんじゃないか」という風に思ってもらえるかもしれません。

——とはいえ、すでに著作権が侵害されているコンテンツも見受けられます。それは権利者に対して「申請して下さい」と言うことになるのでしょうか。

そこはオプションをいくつか考えています。権利の範囲を一緒に設定していければと考えています。まとめられたくない権利も保証するし、まとめられたい権利も保証する。理想的には、その中間も保証したい。権利のコントロールができることが大事だと思っていますが、コンテンツをいただかないことには分からない部分もある。

——著作権を違反しているものがあれば、権利者から申請して欲しいと。

そうですね。申請していただくこともそうですし、明らかに著作権を違反しているものがあれば、こちらから「御社のものですよね? もし宜しければホワイトリストとして取り込ませていただければと思うのですが……」とお声がけする形もあると思います。もちろんNGな場合は断っていただければいいですし、そういったコミュニケーションを取っていけるようにしたいですね。

可能性としてはあらゆる方法が考えられるのですが、まずは追跡可能なデータベースを作ることが最初の一歩になり、後手ではなく能動的に対応できるようになるんじゃないかと思います。「お前が言うな」という声は受け止めるしかない。NAVERまとめには価値のあるものもあるが、もちろん課題があることも事実。きちんと現状を認識しているからこそ、発信するときに身元が分かるようにする方法しか解決の手立てがないと思っています。

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島村氏へのインタビューはここまで。冒頭にあるとおりこのインタビューは12月8日に実施したものだが、それ以降もNAVERまとめに関してネット上ではさまざまな議論が起こっている。TechCrunchでは(1)著作権上の引用について、引用物が主従関係の従になるべきという文化庁見解がある。その観点でNAVERまとめは正しい引用と言えないケースが見られるがどう考えるか、(2)著作権者からの発信者開示請求を拒否したことを契機に、広告配信の停止を要望する動きがあるがどう考えるか——という2点の追加質問を行ったところ、「コーポレートサイトに掲出した当社見解を回答とさせて頂く」(同社広報)とのコメントを得た。

LINEの見解は多くの項目にわたるため、質問に関わる点だけを抜粋すると(1)については、権利者より著作権侵害の申告があった時点で当該「まとめ」の非表示処理を行ったのちに作成者に正当性の証明・掲載再開を行う「みなし非表示対応」を開始したほか、発信者の情報開示体制の運用改善を実施するなどして権利者保護に努めているとしている。また(2)については、個別の事案についてのコメントは差し控えるとした上で、あらためて今回の新方針によって権利者保護、権利者へのメリット提供を行うとしている。ただし、(1)の引用の主従関係に関する具体的な回答はない。

「心より深くおわび」WELQを契機にした“キュレーション問題”でDeNAが謝罪

左からDeNA執行役員経営企画本部長の小林賢治氏、代表取締役CEOの守安功氏、創業者で取締役会長の南場智子氏
左からDeNA執行役員経営企画本部長の小林賢治氏、代表取締役CEOの守安功氏、創業者で取締役会長の南場智子氏

左からDeNA執行役員経営企画本部長の小林賢治氏、代表取締役CEOの守安功氏、創業者で取締役会長の南場智子氏

ディー・エヌ・エー(DeNA)が手がけるキュレーションプラットフォーム「DeNA Palette」。中でも医療・ヘルスケア領域を対象にした「WELQ」の記事の信頼性に端を発した大騒動についてはTechCrunch Japanでもこれまで複数の記事でお伝えしてきた。

これを受けるかたちでDeNAは12月7日、東京・渋谷にてDeNA Paletteの全記事非公開化および第三者調査委員会の設置に関する記者会見を開催した。会見にはDeNA代表取締役CEOの守安功氏のほかDeNAの創業者であり取締役会長の南場智子氏、DeNA執行役員経営企画本部長の小林賢治氏の3人が出席(南場氏については、本日になって追加で出席する旨の案内があった)。これまでの経緯を説明したのち、来場したメディアとの質疑応答を行った。

会見の冒頭、守安氏は改めて一連の問題に対して、自社サービスのユーザー、インターネットユーザー、取引先や株主、投資家などの関係者にして、「多大なるご心配とご迷惑をおかけしたことを、心より深くおわび申し上げます。また、直接私からご説明する機会が遅くなってしまったことを、重ねてお詫び申し上げます」として謝罪した。

これまで本件について伝えてきた記事は以下の通り。

信頼性なき医療メディア「WELQ」に揺れるDeNA、MERYを除く全キュレーションメディアを非公開に

DeNA守安氏「認識が甘かった」——WELQに端を発したキュレーションメディアの大騒動

DeNA、ファッション系キュレーションメディアの「MERY」も12月7日より全記事非公開に

改めて今回の経緯を説明すると、DeNAは2014年9月にiemoおよびペロリを買収。加えて2015年4月にはFind Travelを買収。DeNA Paletteとして合計10のキュレーションメディアを立ち上げた(WELQに関しては2015年10月のローンチ)。

だがその後はリンクした記事にあるとおりで、WELQを中心にして医学の知識に乏しい・誤った内容や薬機法に抵触する、もしくはその可能性が高い内容の記事が掲載されているにも関わらず、専門家の監修がなかったことが発覚した。

さらにはDeNA側が既存コンテンツのリライトを指示するようなマニュアルを用意し、クラウドソーシングなどを用いて記事を発注しているといったことなどが報じられた。会見で小林氏は記事作成のプロセス(記事作成は社内のプロデューサーが指示し、実際は社外のディレクターが外部パートナーやライターには中していた)を説明した上で、その品質等について最終的な責任を負う機能が明確に存在してなかったと説明。さらに前述のマニュアルの存在についても明らかにした。

「DeNA Palette」の記事作成プロセス

「DeNA Palette」の記事作成プロセス

そこで11月29日にWELQの全記事を非公開化。12月1日にはそれに加えてMERYを除く8媒体の全記事を非公開化。MERYに関しても、12月7日をもって全記事を非公開化している。

今回の騒動を受けてDeNAでは、WELQを読んだ結果の健康被害や記事の出展などの相談を受け付ける窓口を開設。コーポレートサイトのトップページに掲載するとした。また既報の通り第三者調査委員会を設置。これと並行して社内でプロジェクトチームを発足し体制の健全化に努めるとした。

続いて南場氏が「批判が組織や企業風土のあり方にまで及んだ。取締役会長そして創業者として、責任のある立場にあり、直接おわびを申し上げたく参りました」と謝罪した。これに続き守安氏が冒頭と同じくユーザーや取引先、株主などに対する謝罪の言葉を述べた。このあと2時間以上の質疑応答が続いたが、その様子はのちほど紹介する。

DeNA、ファッション系キュレーションメディアの「MERY」も12月7日より全記事非公開に

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先日のインタビューの内容とはどうも状況が異なるようだ。キュレーションメディア「WELQ」の記事公開停止に端を発したディー・エヌ・エー(DeNA)のキュレーションプラットフォーム「DeNA Palette」の公開停止騒動。DeNA代表取締役社長兼CEOの守安功氏は残る8つのキュレーションメディアの記事公開停止と自身の役員報酬の減額などを発表していた。

経緯をまとめた記事はこちら

信頼性なき医療メディア「WELQ」に揺れるDeNA、MERYを除く全キュレーションメディアを非公開に

本件に関する守安氏のインタビューはこちら

DeNA守安氏「認識が甘かった」——WELQに端を発したキュレーションメディアの大騒動

当初は子会社であるペロリが運営するファッション系キュレーションメディア「MERY」に関しては、運営体制も異なるため記事の非公開は行わないとしていたが、現時点ではかなりの割合の記事が非公開化されている状況だ。そして本日12月5日、DeNAはMERYに関しても12月7日に全記事非公開とすることを発表した。加えて取締役会の委嘱を受けた社外取締役を含む外部専門家による第三者調査委員会を設置し、事実関係の調査を行なうとしている。

TechCrunch Japanでは現在改めてDeNAへの取材を打診している。状況が確認でき次第、記事をアップデートする予定だ。

信頼性なき医療メディア「WELQ」に揺れるDeNA、MERYを除く全キュレーションメディアを非公開に

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ここ最近、その情報の不正確さや制作体制について各所で問題視されていたディー・エヌ・エー(DeNA)のヘルスケア情報キュレーションメディア「WELQ(ウェルク)」。DeNAは11月29日夜に発表したプレスリリースで、同日午後9時をもってすべての記事を非公開とした。同時に、現在WELQで取り扱いのある全ての広告商品の販売を停止したと発表。ユーザーや広告主への謝罪を行っている。加えて、DeNA代表取締役社長兼CEOの守安功氏を長とした管理委員会を設置。チェック体制の強化や信頼性の担保できる仕組みを整備していくとした。

さらに12月1日、今度は「DeNA Palette(ディー・エヌ・エー パレット)」の名称で展開するキュレーションメディアプラットフォームで運営する特化型のキュレーションメディアのうち、「MERY」(女性ファッション)を除く「CAFY」(飲食)「iemo」(インテリア)「Find Travel」(旅行)「JOOY」(男性向け情報)「cuta」(妊娠、育児)「PUUL」(アニメ、漫画)「UpIn」(お金)「GOIN」(自動車)の8つについて(WELQもこのDeNA Palette内のメディアの1つだ)、記事をいったん非公開にすると発表。また同時に、守安氏の役員報酬の減額(月額報酬の30%を6ヶ月間減額)を発表した。先行するWELQ同様に、広告販売も終了し、チェック体制などを強化して再掲載の体制を作るという。

「WELQ」のトップページ

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TechCrunch Japanでは11月30日夜の時点でDeNA広報部からWELQについて「(薬機法上の問題だけでなく、他媒体の記事のリライトではないかとう)指摘も含めて、社内のチェック足りなかった。そこは変えなければいけない。そういった点も合わせて、どうやったらこのようなことが起きないか、指摘を受けないコンテンツ作りのためのフローの見直しをやる。そのためにリリースの最後にあるように管理委員会を立ち上げている」という回答を得ていたが、結果的にDeNA Paletteの中でも比較的独立性高く運営していたMERYを除き、全てのコンテンツを見直すことになった。

WELQの何が問題だったのか

DeNAがDeNA Paletteを発表したのは2015年4月のこと。WELQは一歩遅れて同年10月にスタートした。ニールセンの発表によると、2016年7月の利用者数は631万人。直近3カ月で2倍のユーザーを集めるまでに成長した。そんなWELQについて、この数カ月(特にここ数日)に渡ってオンラインメディアやブログが問題提起をしていた。その概要と当該の記事は次の通りだ。

DeNA代表取締役社長兼CEOの守安功氏

DeNA代表取締役社長兼CEOの守安功氏

(1)医学の知識に乏しい、もしくは誤った内容の記事が掲載されている。また薬機法に抵触する、もしくはその可能性が高い内容が含まれていること。

(2)DeNA Paletteはユーザーが自由に記事を投稿できるキュレーションプラットフォームであり、DeNAは記事の責任を負わないとしながら、実際にはDeNAがクラウドソーシングなどを用いて記事を発注していること。またその発注に際して、「コピペ(コピー&ペースト)」で他サイトのコンテンツをそのまま無断転載するのではなく、他サイトのコンテンツの語句を一部変えるような「リライト」や、責任追及回避のために「○○と言われています」といった伝聞形式の文章にするなど、ライターにマニュアルを用意して指示をしていたこと

(3)毎日大量の記事を投稿し(1日100本程度)、SEOの知識を駆使することで、(2)のような問題のあるコンテンツでGoogleの検索結果上位を取り、集客を行っていること(またはこういったコンテンツに対してGoogleが正しい評価をできていないこと)

医療情報に関わるメディアは「覚悟」を – 問われる検索結果の信頼性(医学部出身のライター、朽木誠一郎氏のYahoo! ニュース 個人)

DeNAの「WELQ」はどうやって問題記事を大量生産したか 現役社員、ライターが組織的関与を証言(BuzzFeed Japan)

DeNAがやってるウェルク(Welq)っていうのが企業としてやってはいけない一線を完全に越えてる件(第1回)(永江一石氏のブログ「More Access! More Fun!」)※第4回まで続く

決算が読めるようになるノート:Welq問題は(DeNAだけじゃなくて)Googleも批判されるべきだと思う(Searchman Co-Founder柴田尚樹氏のnote)

また、WELQの執筆や運営に関わったと見られる人物のブログや、SEO手法について解説するブログなどもいくつか確認できた。信ぴょう性の高い内容に見えるのだが、実際に当事者だったのかは確認できていないことは注意して欲しい。

元welqライターからの告発

WELQの面接で落とされ、その後WELQが炎上して、思うところ

命に関わるヘルスケア、医療の情報である以上、その信頼性が担保できていないだけでなく、媒体側が「コンテンツの内容に責任を負わない」と明示しているのは大問題だ。現役の医師からも、ライターの知識不足により、リライトによって本来とはまったく異なる意味になってしまっているコンテンツもあるという話も聞いた。そんな問題のあるコンテンツが検索結果としては上位に来るものだから、患者が自身の治療法を勘違いしてしまって認識しているといった、医療の現場でのトラブルも現実に起きたという。

コンテンツ制作の実態についてはリンクしたBuzzFeed Japanの記事が詳しいが、キュレーションプラットフォームとうたいながらも、その実態は信頼性の担保できないコンテンツによる、SEO超重視のメディア運営であったことが露呈したと言っていい。「SEO=悪」ではないが、Googleの裏をかくことで検索結果の上位を目指したのは事実。それこそ以前にGENKINGが「Googleで検索しない」と言っていた言葉を思い出してしまう。確かにキュレーションメディアの登場以降、商品名やブランド名でググると、キュレーションメディアが上位に来ることが多い。

TechCrunchでは、DeNAが住まい領域の「iemo」とファッション領域の「MERY」を買収した際や、旅行領域の「Find Travel」の買収、DeNA Paletteを立ち上げた際にニュースとして紹介してきた。スタートアップの動向を伝える僕たちとして言えば、いわゆるイグジット事例としては喜ぶべき話だと思っている。

ただし買収後の各キュレーションメディアも、初期のYouTubeのように…と言えばきれいごとかも知れないが、記事や写真の転載にまつわるトラブルなどを聞かないわけではない状況だった。しかし——YouTubeがGoogleに買収され、著作権管理の仕組みが整い始めたように——DeNAという上場企業の傘下に加わることで健全な運営がなされていくと思っていた。例えば2014年11月にハフィントンポスト・ジャパンがDeNA創業者で取締役会長の南場智子氏へのインタビューをしているのだが、その最後にも、キュレーションメディアのライツ健全化に向けての取り組みに言及している。だが実態として、そういった状況にはなっていなかったというわけだ。

薬機法無視、低品質コンテンツ大量生産は誰が指示したのか

WELQの騒動を受けて、MERYを除くDeNA Paletteのキュレーションメディアがいったんクローズすることになった。ここで関係者から聞いたMERYの状況をお伝えすると、自社内に出版社出身を含めたライター・編集者を採用し、写真も自社スタジオで撮影するなどして、オリジナルコンテンツに注力し始めているのだそうだ。もちろんいまだ品質に疑問を持つような内容もあるようだが、カスタマーサポートも独自で持っていると聞いた。少なくともDeNA Paletteの全てのメディアの運用がまったく同じ状況という訳ではないようだ。

ではこのWELQが薬機法を無視し、盗用と言っても過言ではないコンテンツをクラウドソーシングで大量に生産するように指示した人物は誰なのだろうか? WELQは「編集部」を名乗っているが、実態として編集長を置いていない。DeNA社員を含む関係者からは、事業を手がけるのはパレットの事業を統括するDeNA執行役員、キュレーション企画統括部長でiemo代表取締役CEOである村田マリ氏に加えて、同氏が管掌するキュレーション企画統括部のグロースハック部の部長であるY氏、メディア部部長であるH氏が実質的に指示を出していたという声が上がった。特にY氏は前職でのSEOの知識を買われてDeNAに入社しており、DeNA内製のキュレーションメディアのグロースハックを担当していたという。だが結果として薬機法への抵触などをいとわない手法を取っていたため、DeNA Palette関係者内では違和感を持つ声もあったという。

炎上バイラルメディアの元社員らも関与

関係者から話を聞いてさらに驚いたのが、このDeNA内製キュレーションメディアの立ち上げに関わっていた「ある会社」の元社員たちの存在だ。

読者の皆さんは「BUZZNEWS」という名前を覚えているだろうか。2014年にライターのヨッピー氏がコンテンツの盗用問題を指摘。謝罪と和解金の支払いを行ったのちに閉鎖したバイラルメディアだ(経緯はTHE PAGEのこの記事に詳しい)。

このBUZZNEWSの運営元であったシンガポール・WebTechAsia社の複数人の元社員がDeNAに入社し、DeNA Paletteのキュレーションメディア群の立ち上げに従事していたのだ。元社員らは2016年に入ってDeNAを退社しているということだが、公器であるべき東証1部上場企業・DeNAのメディア立ち上げは、盗用問題でサイト閉鎖に追い込まれた人物らに教えを受けた、「クラウドソーシングでの終わりなきコピペとSEOノウハウの融合」(関係者)からスタートするという残念なものだったのだ。

ただ一方で、これはDeNAに限定した問題でもないと僕は思っている。前述のヨッピー氏は「ウェブメディアの信頼に対する瀬戸際ではないか」と語っていたのだけれどもまさにそのとおりで、気軽にメディアを作れるようになった今だからこそ、その情報の正確さやモラルなどを考えていかないといけない段階に来ているのではないだろうか。

DeNAでは今後、守安氏直轄の管理委員会を通じてコンテンツの健全化を図った上でDeNA Paletteを再開する見込みだ。

“正しい”医療情報はまだまだネット上に少ない。だからこそそういった情報を発信してもらえるのであればそれは本当に価値のあるメディアになるだろう。だが、信頼性の低いコンテンツを安価かつ大量に生産してきた体制を変えるのは決して簡単な話ではない。11月4日に開催された2016年度 第2四半期決算説明会では、キュレーションプラットフォーム事業が9月時点で事業の単月黒字化、第3四半期の黒字化予定を発表していたが、今回の動きは業績への影響も小さくない話だ。今後は健全化に向けた同社の動向が問われることになる。

なおTechCrunchでは今回の発表に関して、DeNA代表取締役の守安功氏に独占個別取材を実施している。その内容は以下のリンクから確認して欲しい。

DeNA守安氏「認識が甘かった」——WELQに端を発したキュレーションメディアの大騒動

キュレーションプラットフォーム事業の業績について

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