コネクテッドカーからデータ収集、匿名化するサービスのOtonomoがSPAC経由で上場へ

インターネットに緊密に統合されたいわゆるコネクテッドカーのデータを取得して収益化するビジネスを支援するOtonomoは株式上場を準備中だ。 同社はイスラエルを拠点とするクラウド・サービスのスタートアップで、評価額は14億ドルで上場のための特別目的会社(SPAC)Software Acquisition Group Inc.IIとの合併に合意したことを発表した。

自動車関連でも従来の上場方法の煩雑さを嫌ってSPACないしブランク・チェック・カンパニーとの合併による上場を狙うスタートアップが増加中だ。OtonomoもSPACによる上場のブームに加わった。過去数か月間でSPACとの合併を発表または完了した自動車関連スタートアップには、Arrival、Canoo、Lordstown Motors、Luminar、ChargePoint、Lion Electric、Proterraなどがある。

株式市場からの資本調達は、自動車メーカーになろうとするなど資本集約的な目標を抱えている企業にも成長を加速させたい企業には非常に魅力的だ。Otonomonoは後者のグループに属する。

OtonomoはPIPE(限定的私募)により1億7250万ドルを調達したと発表した。投資家にはFidelity Management&Research Company LLC、BNP Paribas Asset Management Energy Transition Fund、Senvest Management LLCなどが含まれ、また戦略的投資企業のDell Technologies Capital、Hearstの支援を受けた。現在のOtonoo株主は合併完了時に所有権の過半数を所有する。この際Otonomoの保有キャッシュは3億700万ドル以上となる。

Otonomoは調達した資金は企業規模拡大と新しいマーケット、ユースケースへの参入のために利用する計画だと語った。

Otonomoは2015年に車両からのデータを取得して匿名化するクラウドベースのソフトウェアプラットフォームとして創立された。このプラットフォームは、電気自動車の管理、位置把握、各種有料サービスの提供、駐車場、利用距離従量型保険、 トラフィック管理、メディア、緊急サービスなどを提供するアプリに利用できる。 Otonomoによれば同社のプラットフォームは自動車メーカーや大量の自動車運用社16社、サービスプロバイダー100社以上に利用されている。

同社はコネクテッドカーを介して実行されているあらゆるオペレーションを企業が収益化するのを支援できるとするプロモーションで数十社のユーザーの獲得に成功している。Otonomoはデータを安全に収集しデータを匿名化して企業が運用車フリート、スマートシティ、個人向けアプリやサービスの開発に利用できるようにする。GDPR、CCPA、その他のプライバシー規制をクリアできる個人別データ、集計データを総合したソリューションも提供される。

Otonomoの企業規模は、少なくとも1つの方法として、同社のサービスを利用して収集されるデータポイントの数で推定することができる。1年前同社は、自動車メーカー、フリート、農業・建設メーカーとの提携により、1日あたり2000万台以上の車両から26億種類のデータを収集していると発表した。現在、同社のプラットフォームは世界の4000万台以上のコネクテッドカーから1日あたり40億以上のデータを取得しているという。

上場に向けたSPACとの合併は2021年の第2四半期に完了する予定だ。上場先はNASDAQでCEOは引き続き Ben Volkow(ベン・ヴォルコウ)氏が務める。

画像:Yuichiro Chino / Getty Images

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(文:Kirsten Korosec 翻訳:滑川海彦@Facebook

デバイスひとつで法人車両をコネクテッドカーに、車両管理サービス提供のフレクトが5億円調達

リアルタイム車両管理サービス「Cariot(キャリオット)」を提供するフレクトは5月7日、Draper NexusSalesforce Venturesを引受先とする第三者割当増資により5億円を調達したことを明らかにした。

Cariotは営業車など法人が所有する車両をコネクテッドカーに変えるサービスだ。車両にデバイスを差し込むことで、速度や走行距離、GPSセンサーを用いて取得する位置情報など車両に関する多様なデータをインターネット経由で取得。それらの情報を活用することで、コンプライアンス強化や安全性向上、コスト削減・業務効率化をサポートする。

たとえば車両やドライバーの情報を一元管理することで車検や免許の期限切れを把握したり、長時間労働や車両の不正利用を発見する。急加速や速度超過など危険運転を察知し事故削減につなげる。車両の稼働率から不要な車両を把握、運転日報の自動化などにより車両を保有することによるコストや業務負担を減らす、といったような使い方ができる。Cariotに近しいサービスとしては、以前TechCrunchでも紹介したスマートドライブの「DriveOps」などが挙げられるだろう。

Cariotのユーザーは車両数や管理者数に応じた月額の利用料と、車載デバイスの料金(デバイスは複数のタイプから選択可能)を支払う仕組み。月額利用料は車両1台ごとに2980円、管理者1名ごとに2000円だ。同サービスは2016年4月の提供開始から利用社数を増やし、現時点では国内外含め約60社以上に導入されているという。

2005年設立のフレクトはSalesforceを中心としたソフトウェア開発、コンサルティング事業、IoTサービスの導入支援など複数の事業を展開しているが、今回調達した資金はCariotの事業成長に投じる方針。分析レポートサービスの開発のほか、各種機能強化やサポート体制の強化を通じてプロダクトを改良し、次世代テレマティクス、フリートマネジメント分野におけるB2B車両管理ソフトウェアとしてNo.1の地位確立を目指す。

月定額のカーレンタルサービス「SmartDrive CARS」発表、安全運転で料金割引も

自動車のビッグデータ解析ビジネスを展開するSmartDriveは2月5日、毎月定額制のコネクテッドカー・レンタルサービス「SmartDrive CARS」を開始すると発表した。

SmartDriveは、自動車に取り付ける専用デバイスから50〜60項目にわたるデータを取得・解析し、それをもとに自動車保険の開発や走行データ可視化サービスなどを展開するスタートアップだ。そのようなデータを利用して、安全運転の度合いによって掛け金が変動するテレマティクス保険をアクサ損害保険と共同で開発するなどの実績がある。

SmartDriveが今回発表したSmartDrive CARS(以下、CARS)では、同社が開発したデータ取得用デバイスを新車に標準搭載し、それを月々定額でユーザーに貸し出す。毎月の利用料には税金、自賠責保険料、メンテナンス費などがパックとして含まれているため、ユーザーは余計な心配をせずに“移動”というサービスだけを享受することができる。

利用料金は車種にもよるが、安いもので月額2万円程度。具体例としては、600万円ほどのランドクルーザーを1年間借りる場合には月額約7万円の料金で利用可能だという。

所有する“モノ”ではなく“移動サービス”としてクルマを捉える動きは加速している。トヨタ自動車代表取締役の豊田章男氏はCES 2018の壇上で、トヨタが今後「モビリティサービス・カンパニー」へ生まれ変わることを明言した。2017年12月にはトヨタモビリティーサービスという名の新会社が設立されていることからも、トヨタがこの変革に本気で取り組んでいることが伺える。

また、2018年1月には定額制のマイカー賃貸サービス「カルモ」がリリースするなど、すでにこの分野には新しいプレイヤーが続々と誕生しつつある。そんなモビリティーサービス市場へ新たに参入するSmartDrive。彼らの攻めの一手は、データだ。

SmartDrive CARSのサービスイメージ図

SmartDriveは既存サービスの「DriveOps」などを通じて、自動車データの収集と解析に関する知見を貯めてきた。同社がこれまでに解析したクルマは2万台を超える。

その強みを生かし、CARSにはデータを貯めれば貯めるほどサービスがより便利に、よりお得になる仕組みが盛り込まれている。

同サービスでは、自動で診断される安全運転スコアに応じてポイントが付与され、溜まったポイントは他のショッピングポイントなどに交換することができる。また、安全運転を続けることで月々の利用料金が安くなるなどの仕組みも検討中だという。

将来的には、クルマの位置情報を利用することで、ガソリンスタンドに入ると自動的にクーポンが届くなど、データとリアル店舗を組み合わせた取り組みなどにも期待できそうだ。

「あるショッピングセンターで買い物をしなくなったユーザーが、その代わりにいったいどこで買い物をしているのかなど、クルマから取得できるデータには大きな価値がある。そのようなデータを販売し、ユーザーに還元することで月額利用料がどんどん安くなるモデルを作る。最終的には、クルマを完全無料で手に入れる時代が来るかもしれない。クルマを入手することの対価として、お金ではなくデータを払うという時代です」(北川氏)

SmartDriveはCARSを2018年春にリリース予定で、選べる車種やそれに応じた利用料金などの詳細は順次公開していくとしている。

同社は2013年10月の創業で、2017年4月にはシリーズBラウンドで10億円の資金調達を実施している。なお、当時同社はシリーズBにおける出資企業を非公開としていたが、同ラウンドにはSMBCベンチャーキャピタル産業革新機構住友商事Sony Innovation Fund、FoxconnグループのCVCである2020、みずほキャピタルが参加していたことをTechCrunch Japanに明かした。

CES2018:FordとQualcommが車の広範な接続性実現のために提携

FordとチップメーカーQualcommは、火曜日のCES 2018で、車から全てのものへのセルラー接続技術(C2VX)技術に関しての協力を行うパートナーシップを発表した。これは自動車をスマート信号機や、路上標識、二輪車、道路、その他のものと接続する接続通信技術の円滑な展開を、検証し確実にするためのものだ。

携帯電話の接続性は、自動運転車ならびにモビリティサービスなどに向けて、フォードが展開しようとしている、充電ステーションネットワークやパートナープラットフォームなどの重要な要素となっている。Fordはまた本日(1月9日)、クラウドベースのコネクテッドスマートシティプラットフォームも発表した。この上に、都市や、運送業者、他の自動車メーカーなどが、共同で開発できるオープンスタンダードとなることを期待している。

Qualcommとの提携は、このようなことを世界規模で起こすことを狙ってのことだ。Qualcommは広範な5G展開のような先行をいくつも成し遂げており、そのモバイルとIoT接続性のおける経験からも、Fordにとっては技術開発が進むにつれて、登場するスマートシティの全てのコンポーネントと通信できることを確実にするための、自然なパートナーなのだ。

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(翻訳:sako)

LINEとトヨタがコネクテッドカーでタッグを組んだ——クラウドAI基盤「Clova」を採用へ

6月15日に開催された「LINE CONFERENCE 2017」。LINE取締役CSMOの舛田淳氏が最後に発表したのが、トヨタ自動車、そしてファミリーマート・伊藤忠商事との協業だった。ここではその内容を紹介する。

コネクテッドカーにClovaを活用

LINEは今回のイベントで一貫して、「ポストスマートフォンの時代がAIの時代である」という説き、そのAI時代の基盤になるものが、同社が韓国NAVERと組んで開発するクラウドAIプラットフォームの「Clova」だと主張してきた。実際Clovaを導入した第1弾プロダクトとなるスマートスピーカーの「WAVE」のデモを披露。今夏にも先行版をリリースすることも明らかにしている。

そしてそのClovaの今後の展開として語られたのがこの発表だ。両社はClovaと、トヨタをはじめとした自動車メーカー、カーナビメーカーなどが推進するコネクテッドカー向け規格Smart Device Link(SDL)を活用した協業に向けて、協業基本合意書を締結したという。

SDLとは、スマートフォンと車載情報機器を接続し、自動車内の入力デバイス(や音声入力)を通じてアプリを操作するための規格だ。トヨタはフォードとともに、2017年1月にSDLのコンソーシアムを設立。同コンソーシアムにはスバルやマツダ、スズキといった自動車メーカーのほか、パナソニックやパイオニアといった車載器メーカーらが参画している。

カンファレンスにはトヨタ 専務役員の友山茂樹氏が登壇。トヨタはスマホと車を繋げて安全便利で快適なモビリティライフを目指している。日本発アジアでトップクラスのメッセージングサービスを提供するLINEと新しいサービスを実現するために協業に合意した。LINEの有する世界最先端のコミュニケーション技術とトヨタが普及を目指すSDLを連携したモビリティメッセンジャーサービスに期待頂きたい」と語った。

SDLについて語るトヨタ 専務役員の友山茂樹氏

ファミリーマートとは次世代店舗の構築へ

またカンファレンスでは、伊藤忠商事およびファミリーマートとの連携も発表している。今後、AIやIoTを活用した次世代店舗を構築していくという。

会場では、WAVEやLINE PAYなどを取り入れたファミリーマートの次世代店舗のイメージ動画が流れた後にファミリーマート代表取締役社長の澤田貴司氏が登壇。「なんとかゴーの動画があったが(Amazonが昨年末に動画を公開したレジ不要の食料品店「Amazon Go」のことだと思われる)、その違い、一番重要なのはあそこ(コンビニ)で働いている人達が喜んで笑顔で仕事する。これが我々がLINEと一緒になって作る、理想のコンビニエンスストア。是非出澤社長と作りたい」と語った。

初期費用約1万円のデバイスで自動車のビックデータ解析 ― スマートドライブが10億円調達

自動車のビックデータ解析を手かげる日本のスマートドライブは4月5日、複数の事業会社および既存株主の産業革新機構、その他銀行系VCを引受先とした第三者割当増資を実施し、約10億円を調達したと発表した。これが同社のシリーズBラウンドとなる。今回の調達ラウンドは将来的な事業提携を視野に入れた戦略的投資だと見られるが(すでに数社とは業務提携を締結済み)、代表取締役の北川烈氏は「まだ発表していない大きな業務提携に関わるため、現段階では会社名を明かすことはできない」としている。

スマートドライブは自動車に取り付ける専用デバイスから50〜60項目にわたるデータを取得・解析し、それをもとに自動車保険の開発や走行データ可視化サービスなどを展開している。現在、同デバイスは大手コンビニの配送車両をはじめとする1万台以上のクルマに装着されているという。

この専用デバイスを取り付けるのは「OBD-Ⅱ」と呼ばれるコネクターだ。これは車両の自己診断用に搭載されたコネクターで、ここから車速やエンジン回転数など様々なデータを取得することができる。日本では2010年9月以降に販売されたすべての自動車(輸入車含む)への搭載が義務化されている。

スマートドライブは2015年10月よりクラウドファンディング・プラットフォームのMakuakeでデバイスの先行販売を開始。現在はOBD-Ⅱコネクタに装着する2つのタイプ(3G接続、Bluetooth経由でスマホと接続)と、シガーソケットに装着するタイプの計3種類のデバイスを用意している。デバイス本体は約1万円で購入することができ、月額でかかる費用も1500円〜と比較的リーズナブルだ。

価格を低く抑えることができた理由として北川氏は、「デバイスの販売で利益を得るのではなく、そこから得たデータを解析して付加価値を提供するビジネスモデル」だからだと語る。

その例として、同社は2015年に業務提携したアクサ損害保険と共同で「テレマティクス保険」を開発している。これは、スマートドライブが取得したデータによって運転の安全性を判断し、それをもとに掛け金が変動する仕組みの保険商品だ。

その他にも、走行データの可視化サービスを法人向け「DriveOps」と個人向け「DriveOn」のそれぞれに提供している。

つい先日もYahoo! Japanが自動運転車のSBドライブに出資するなど、日本でも「クルマを賢くしよう」とする動きが盛り上がりを見せている。そんな中、約10億円という大規模な資金調達を完了したスマートドライブ。今後の展望を北川氏に聞いた。

それによれば、まず同社は2017年度中に交通渋滞の予測など公共性の高いデータを地方自治体などに販売開始するという。

また、2017年夏ごろにはドライブレコーダーの動画データを解析するサービスを公開する予定だ。GfKジャパンの調査によれば、2015年度におけるドライブレコーダー保有率は16%とまだ低いものの、販売台数は前年比42%増の61万台と上昇傾向にある。需要は少しずつ増えているようだ。しかし、企業の営業車にドライブレコーダーが導入された場合、取得した動画データをすべて目視で確認するのは難しい。そこで、スマートドライブはデバイスから得たデータ(急なハンドル操作など)を組み合わせて解析することで、危険な運転があった箇所だけをサマライズできるクラウド解析サービスを提供していく。

スマートドライブは2013年10月の設立。同社はベンチャーキャピタルのANRIからシードマネーを調達後、2015年8月には産業革新機構から最大で6.6億円を調達すると発表した。北川氏によれば、助成金や借入金も含めた累計調達金額は約20億円だという。

Fordの新しいカーアクセサリーSmartLinkは、古い車両をコネクテッドカーにする

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新しい車種にコネクティビティ機能が搭載されるのは、ますます普通のことになって来ている。特にセルラーモデムの搭載は、基本仕様の車種であっても当然のことになりつつある。今やコネクティビティはFordにとってとても大切なものになったため、同社は、2010年から2016年にかけて販売されたFordとLincolnの車両向けに、簡単にコネクティビティ機能を追加できる改造オプションの提供を始める。これはSmatLinkと呼ばれるハードウェアで、運転手がそれを車のOBD2(On Board Diagnosis second generation:自己診断機能)のポートに差し込むだけで利用できるようになる。

SmartLinkは4G LTEモデムを搭載し、車内で8台までのWi-Fi接続を許すホットスポットとして利用できる。また、リモートスタート、ドアの遠隔施錠と解錠を可能にし、ウェブとモバイルアプリを使って車の健康状態をチェックし、セキュリティーや整備の必要性に関連するアラートを受け取ることができる。

「私たちがSYNCで提供してきたものへ、多大な関心が寄せられていることは知っています。そして今度は私たちが車両に搭載するモデムに対しても関心が集まっています。多くの顧客と対話を重ねる中で、現在所有している車にはとても満足しているものの、最新のコネクティビティ機能も欲しいと感じる人が明らかに多かったのです」このように語るのはFordのカスタマーサービス部門のエグゼクティブディレクターであるBrett Wheatleyだ。「私たちは何年も、そうした機能に対して研究を続けてきました、私たちは私達自身のセキュリティ要求を満たす正しい製品を確実に手に入れたかったのです」。

Wheatleyは、顧客からフィードバックを得ながらSmartLinkを開発する過程で、ユーザーたちが、普通のコネクテッドカーに求められるものとは異なるものにも関心があることに気が付いた。盗難警報を通したセキュリティを求める人もいれば、保守整備のためにより詳細な情報を欲する人もいる。そして単に移動中に家族の携行するデバイスのための接続が欲しい人もいた。SmartLinkは、しばしば要求されるコネクティビティユースケースを、Ford車のオーナーのために提供する手段なのだ。

SmartLinkは、(より多くのサードパーティアプリやサービスと連携できる)SYNC 3車内インフォテイメントシステムとは異なるものだ、しかし純正のアプリを用いることで、例えば特定エリアへの出入りの検出や速度制限などの様々な便利機能を使うことができる。これは家の車を10代の子供が借りていく際には、両親にとって便利な機能だ。SmartLinkを搭載した車が設定した境界の外に出たり、特定のスピードを上回ったときにアプリで通知を受け取ることができるからだ。また時間をかけて運転習慣を追跡し、より良いドライバーになるための助言を提供することもできる。

この2014年のリンカーンMKXなどの古い車はすぐにスマートリンクで4Gアプリベースの機能を追加できるようになります。

この2014年型Lincoln MKXも、SmartLinkによって簡単に4Gを搭載し、アプリの提供する機能を使えるようになる。

SmartLinkは現在、米国内のいくつかのディーラーで試験運用中である。この夏にはディーラーを通して全米で利用できるようになる予定だ。最終的な価格もその際に発表される。SmartLinkはディーラーにとっては良い商材だ。これによってより利益を生み出す購入後の関係を、顧客と結べる可能性が高まるからだ。

「購入後も顧客と定期的にコンタクトして、その車を良い状態に保ち、顧客と関係を保ち続けるための良い機会を、ディーラーに与えることができると思っています」とWheatleyは私に語った。

実際、KPMGによって行われた自動車産業幹部への調査によれば、コネクテッドカーには非コネクテッドカーに比べて、大きな収益の可能性がある。前者は後者に比べて最大10倍もの収益の違いが生まれる可能性があるのだ。これが古い車両でさえもコネクテッドカーの仲間に取り込もうとする大きな動機なのだ。私はWheatleyに、新しいモデルに搭載されているSYNC 3で行ったような、サードパーティアプリとサービスのサポートを、この先SmartLinkでも考えているのかと尋ねた。

「新しい車でそうしたサービスを提供しているのですから、最新の素晴らしい技術や、コネクティビティ機能とその利便性を、古い車種の顧客にどのように提供できるかを検討できる機会はあると思います」と彼は言った。

SmartLinkはDelphi AutomotiveとVerizon Telematicsとの協業で開発されたが(情報開示:Verizonは、TechCrunchの親会社であるAOLの親会社である)、現在の段階に達するまでに、2年に及ぶセキュリティならびにユーザーエクスペリエンステストが行われて来た。これはFordにとっては、顧客のニーズに迫り、収益の可能性も拓く、賢明な動きであるが、現在の自動車産業に於いてコネクティビティが主役であることを示す別の証拠でもある。

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(翻訳:Sako)

Fordは今年の後半から、車にAlexaの搭載を計画

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多くの自動車メーカーが自社の車用にAlexaのスキルを搭載しているが、傾向としては車のオーナーがEchoデバイスを介して家の中から車を始動できるといったものである。FordとAmazonは、これとは逆方向にAlexaを統合しようとしている。FordのSYNC 3インフォテイメントシステムに組み込まれたAlexaを使い、車から家の制御を音声で行うのだ。

フォードのプレスリリースによると、Alexaの統合は「これまでの車両の中で最も包括的なもの」ということだ。 Alexa経由で利用できるスキルは、ドライバーにオーディオブックや音楽を再生させたり、家ではできないようなこと、例えば特定の目的地を指定してその経由地を車載のナビゲーションシステムに転送したりすることなどだ。

FordとAmazonは、消費者のためのインターフェースモードとしての声に高い価値を置いている。何より車内では音声ベースのインタラクションの方が、気晴らしにもなり運転に集中しやすくなる可能性が高いのだ。

Fordによれば、この車載のAlexaはこの夏頃からユーザーの手元に届くようになる。簡単に買い物リストにアイテムを追加したり、天気を調べたりするといった、ユーザーが慣れ親しんだAlexaの便利な機能を提供する。Amazonは、Alexa側の経験をコントロールし、車載用途としてさらに最適なサービスバージョンを構築するための注意を払いながら、統合に向けてのプログラミングを行っている。

Fordは、昨年のCESでプルーフオブコンセプトとして、Alexaの統合を実際にデモしていたが、今年後半に予定されている実展開に先立ち、現在Fordの従業員たちによるベータテストを進めている。私はAlexaの大ファンだ。そして私はずっと車の中で使えれば完璧なのにと思って来た。私が直接見たところでは、Fordの技術デモはうまく働き、通常の車載音声ナビシステムよりも、遥かに容易に利用可能な経路を尋ねて得ることができるようだ。

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Alexaが、家庭でのパフォーマンスを発揮することができるのか、それ以上に改善できるのかは、Echoベースのバージョンと比べて、ローンチに際しどのような種類の機能セットが用意されるのかによって大きく異なる。もしその機能のほとんどがそのまま使えるのなら、とても素晴らしいことだ – 車を車庫に入れながら、これから始まる楽しいNetflix(ストリーミングビデオ)のどんちゃんさわぎのためのホームシアターの準備を、Harmony(Alexaと一緒に動作する家電ハブ)を通して行うことができるようになりたいものだ。

またAlexaは家庭のEchoデバイスを通してFordの車両を制御するようにもなる。最初はFord Focus Electric、Fusion Energy、C-MAX Energiからだが、こちらの方はもっと早く提供される予定だ、今月の後半には、車のエンジンの起動と停止、ドアの施錠などを声を使って家の中から快適に行うことができるようになる。

Fordは私に、両社のパートナーシップ並びに、音声ベースのインタラクションの拡張と車内の仮想アシスタントの観点から見て、これは「ほんの入口に過ぎません」と語ってくれた。

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(翻訳:sako)

Samsungが自動車部品大手のHarmanを80億ドルで買収:コネクテッドカー分野の強化を狙う

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Samsungが自動車部品、オーディオ機器のHarmanを80億ドルで買収すると発表した。Samsungが今後コネクテッドカー(IT化されたクルマ)に注力していくという意志の表れだろう。

Harmanという名前を聞くと、オーディオ機器を浮かべるという読者も多いとは思うが、同社は自動車部品の大手でもある。今回買収は、Samsungの買収案件としては過去最大級のものであり、同社がもつ自動車分野への野望がうかがえる。Harmanの昨年の売上高は70億ドルで、その65%は自動車関連部品からの売上だ。今回の買収により、コネクテッドカー向けのデバイスやオーディオ・システムといったHarmanの製品が、世界中で3000万台とも言われるサムスン製のクルマに搭載されることになる。

Samsungはクルマ向けのエンターテイメントやソフトウェア・システム分野でGoogleやAppleに遅れをとってきた(GoogleにはAndroid Autoが、AppleにはApple CarPlayがある)。そのため、今回の買収はSamsungがライバル企業に追いつくための手段だと言えるだろう。

Samsung Electronicsの副会長兼CEOであるOh-Hyun Kwonは、「テクノロジー、プロダクト、ソリューションという点において、Harmanは当社を完全に補完する存在です。私たちがこれまで注力してきた自動運転車という分野を拡大するためには、今回の買収は自然の流れだったと言えるでしょう」と買収を伝えるプレスリリースの中で話している。

買収金額は1株につき112ドルで、総額は80億ドルとなる。記事執筆時点でのHarmanの株価が87.65ドルだということを考えれば、健全なプレミアムが付与された買収価格だと言える。買収が完了するのは2017年中旬を予定しており、それ以降HarmanはSamsungの子会社となる。しかし、Harmanの運営はこれまで通り現経営陣が行う。HarmanとSamsungの両社によれば、Harmanの会長、プレジデント、CEOを務めるDinesh Paliwalは今後も続投する予定だ。

今回の買収についてPaliwalは、「SamsungはHarmanにとって理想的なパートナーであり、私たちの顧客である自動車メーカーや消費者は、今回の買収によって大きな恩恵を受けることになるでしょう」とコメントしている。

Googleが自動車関連のテクノロジー開発を急速に進め、Appleも電気自動車を開発しているのではないかと報じられるなか(そうではないとも報じられているが)、Samsungが今年2016年に自動車向け事業の基盤構築に動いたことは当然の流れだと言えるかもしれない。

今年の夏、SamsungはWarren BuffettのBerkshire Hathaway Inc.も投資する中国の電気自動車企業、BYDに4億5000万ドルを出資している。また、同社がFiat Chryslerの製造子会社であるMagneti Marelliにも目をつけていると報じられたこともあった。

しかし、今回の買収から受ける恩恵は自動車分野だけに限られたものではないとSamsungは話している。同社はSamsungの電子機器事業とHarmanがもつオーディオ分野の専門知識を組み合わせようとしているのだ。両社ともに消費者向け、ビジネス向けのオーディオ事業を抱えているだけでなく、HarmanはIoTデバイスに関する知識も持ち合わせているからだ。

IoTという言葉は今でもバズワードとなっているが、SamsungはHarmanが抱える8000人のディベロッパーを活用して「消費者、そして企業に次世代のクラウドベースの顧客体験を提供し、デザイン、データ、デバイスを組み合わせたエンドツーエンドの自動車向けサービスを提供する」と話している。

他のSamsungによる買収の中で特出すべきものとしては、AppleのSiriを生み出したメンバーが経営するバーチャル・アシスタントのViv、そしてクラウド・コンピューティングのJoyentなどが挙げられる。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter