ゲームコーチングの需要拡大を見込み同プラットフォームMetafyが事業拡張に向け約28億円調達

ビデオゲームコーチングのマーケットプレイスを運営するスタートアップMetafy(メタフィ)は2月1日、2500万ドル(約28億円)のシリーズAを完了したと発表した。Tiger GlobalとSeven Seven Sixが同ラウンドをリードした。

TechCrunchが前回Metafyを取り上げたのは2021年5月で、その際、同社は315万ドル(約3億6000万円)のシードラウンドに追加して550万ドル(約6億3000万円)を調達した。

その資金調達以降、MetafyはライバルのゲームコーチングプラットフォームGamersRdyを買収し、Metafyによると、同社のサービスを利用するコーチは2021年に100万ドル(約1億1000万円)超を売り上げた。Metafyが同社のプラットフォームを利用したコーチからその収入の一部を徴収することはなく、5%の手数料を生徒に課している。

Metafyプラットフォームでコーチが行うアクティビティには、有名なビデオゲーム作品や、ポーカーやスポーツくじといったStarcraftとはかけ離れたものも含まれる。

Metafyは、ゲーム市場が今後も成長し、文化的な価値が維持され、ニッチな分野で人気のあるタイトルが高いスキルを要求すると見込んでおり、コーチング需要対応に賭けている。ビデオゲームは時代とともに複雑化し、またプラットフォーム技術企業によるゲームスタジオの巨額買収がこのほど発表され、この賭けには裏づけがあるようだ。

ラウンド

TechCrunchは、Metafyの共同創業者でCEOのJosh Fabian(ジョシュ・ファビアン)氏が、自社にとって早い段階での出来事と表現したこのラウンドについてインタビューした。

ファビアン氏によると、MetafyはシリーズAをまとめたとき、以前調達した資金の約半分を銀行に預けていた。なぜ、現金が必要となる前に調達したのか? 同氏は、市場環境の変化により、投資の「冬」になるかもしれない時期に先駆けて資本を確保することになった、と述べた。

TechCrunchでは、上場しているテック企業の価値が急速に減少していることを指摘し、そうした価値低下がスタートアップの投資や評価額にどのような影響を与えるかを調査した

今回のラウンドがどのようにまとまったかは、2021年のハイテンポな資金調達環境を物語っている。ファビアン氏は、最初の2回の資金調達は「ストレスと時間のかかるものだった」と述べている。しかしシリーズAは違っていたという。同氏がベンチャーコミュニティで「有名人」と表現した人たちと話した後、Forerunner VenturesはTiger Globalにファビアン氏を紹介し、Tiger Globalは迅速かつ詳細にMetafyを調査した。その際、ファビアン氏の過去の経歴や、Metafyのプラットフォームで活躍する7人のコーチなど、さまざまな人物の調査も行った。そのプロセスはあっという間だった。

スタートアップのCEOの中では珍しく素直な性格のファビアン氏によると、Tigerからのすばやい契約要項によって、同氏が話した他の投資家にMetafyが実施する取引を知らせることになった。その後、他の契約要項も続々と送られてきたという。このように、Tigerの迅速な取引決定は、従来のベンチャープレイヤーを急ぎ足モードにしているようだ。

Metafyは、今回用達した資金をもちろん雇用やさらなる買収に使うつもりだ。また、今後18〜24カ月の間に、対戦型トーナメントやその他のゲームコミュニティイベントに投資するための資金として100万ドルを拠出することも決めた。

TechCrunchがMetafyの第2次シードラウンドを取り上げたとき、月間プラットフォーム支出額は2021年4月の7万6000ドル(約870万円)から、同9月には前月比52%増の19万ドル(約2180万円)にまで拡大していた。同社が2022年どれだけ早くプラットフォームGMV(流通取引総額)を拡大させることができるか、また、これまで獲得してきた2桁の前月比成長率を維持することができるか、興味深いところだ。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Nariko Mizoguchi

Sounding Boardが管理職向けコーチングをサービスからSaaSへ移行

組織のリーダーと彼らに指導を行うコーチを結びつけるマーケットプレイスとしてスタートしたSounding Board(サウンディング・ボード)は、新型コロナウイルス流行初期の頃に、メンターシップの刷新が必要であることに気づいた。

「私たちはこれまで、伝統的なサービス形式でコーチングを提供してきました」と、Sounding BoardのCEOで共同設立者のChristine Tao(クリスティン・タオ)氏は語る。「そう、私たちはもうオフィスにはいません。だから人材やリーダーをどのように育てていくかについて、これまでとは違った話をする必要があるのです」。この洞察は、ユーザーをコーチと結びつけるだけではなく、ユーザーが継続的に目標を追うことができるソフトウェアプラットフォームの起ち上げにつながった。

画像クレジット:Sounding Board

このビジョンに基づき、シリーズA資金調達を成功させてから1年近く経った今、Sounding BoardはシリーズBを3000万ドル(約34億円)でクローズした。Jazz Venture Partners(ジャズ・ベンチャー・パートナーズ)が主導したこのラウンドは、Gaingels(ゲインジェルズ)の他、theBoardlist(ザ・ボードリスト)のSukhinder Singh Cassidy(スキンダー・シン・カシディ)氏、Ancestry.com(アンセストリー・ドットコム)のDeb Liu(デブ・リュー)氏、Udemy(ユーデミー)のYvonne Chen(イヴォンヌ・チェン)氏、DocuSign(ドキュサイン)のTammy Aguillon(タミー・アギロン)氏などのエンジェル投資家も参加した。これまでの投資家の中には、Canaan Partner(カナーン・パートナー)、Precursor Ventures(プレカーサー・ベンチャーズ)などが含まれている。

また、今回のラウンドでは、JAZZ Venture PartnersのJohn Spinale(ジョン・スピナーレ)氏が取締役に就任し、Sounding Boardの女性ばかりのチーム(および女性ばかりの取締役会)に加わることになった。「これは冗談ですが、私たちは実際に取締役会に多様性を加えなければなりませんでした……男性です」といってタオは笑った。

この資金調達は、Sounding Boardが過去7四半期にわたって、連続した成長を着実に遂げてきた結果によるものだ。タオ氏は収益の詳細については明らかにしようとしなかったものの、同社によると、過去の収益は「数百万ドル(数億円)」で、年間の予約件数は前年同期比で350%以上増加しているという。スティッキネス(粘着性)に関しては、Sounding Boardは同社の純収益維持率が200%を超えると主張。これはつまり、既存の顧客が時間が経ってもプラットフォームへの支払いを継続していることを意味する。

Sounding Boardの最大の競合企業であるBetterUp(ベターアップ)は最近、コーチングの背後にあるソフトウェアに、同じように焦点を移していることを示すような買収を繰り返している。Motive(モーティブ)を買収したのは、BetterUpのクライアントが、エンゲージメント調査や世論調査などですでに収集しているデータの背後にある感情的な背景を理解するために役立つからだ。このユニコーン企業はImpraise(インプライズ)も買収した。Impraiseは、リアルタイムのパフォーマンスレビューや、よりシームレスなフィードバックチャネルを通じて、管理職が直属の部下をよりよくサポートできるようにするためのテクノロジーを提供している。

BetterUpの成長は、投資家の間で、エグゼクティブトレーニングの重要性を高めることに貢献しているとタオ氏は考えているが、広範なコーチングツールよりも、よりリーダーシップに特化したサービスを提供できる余地がまだあると、同氏は見ている。Sounding Boardの共同設立者であるタオ氏は、2020年の間、精神的・感情的な状態をサポートすることで個人の能力を管理することに焦点を当てた多くのソリューションを目にしてきたという。例えばBetterUpの「care(ケア)」などだ。

「しかし、それと並行して、管理や効果的なコミュニケーションができる本物のスキルと能力も実際には必要です」と、タオ氏はいう。Sounding Boardでは、エグゼクティブトレーニングの能力面を解決することにより関心を向けており、現在のところはメンタルヘルス面に注力する計画はない。もちろんこれでは、競合他社が両方面に充実したソリューションを提供すれば、Sounding Boardからシェアを奪う可能性がある。今のところ、Sounding Boardの顧客はそちらの方面を意識してはいないようだ。

「(メンタルヘルスに関する)企業の福利厚生を考えると、それはもう少し無干渉なものではないでしょうか。用意されていれば、参加するかどうかを自分で選ぶという種類のものですが、それは従業員のためのものであるはずです」と、タオ氏はいう。「一方、能力開発に関しては、企業にとっての必要性があり、自ら投資したいと思うものであり、それを行う責任があるのではないかと私は考えます」。

Sounding Boardは現在、Plaid(プレイド)、Chime(チャイム)、Bill.com(ビル・ドットコム)など約100社ほどの顧客を持っている。

画像クレジット:Francesco Carta fotografo / Getty Images

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

個人のキャリア形成を支援する計68の有料サービスをまとめた「有料キャリア支援サービス カオスマップ 2021年版」が公開

  1. 個人のキャリア形成を支援する計68の有料サービスをまとめた「有料キャリア支援サービス カオスマップ 2021年版」が公開

様々な職種・企業のキャリア経験談を直接聞ける「社会人同士のOB訪問」を実現する「キャリーナ」(旧CREEDO)を運営するブルーブレイズは8月4日、「有料キャリア支援サービス カオスマップ 2021年版」を公開した。個人のキャリア形成を支援する計68の有料サービスについて、9つのカテゴリーに分類している。なお、有料キャリア支援サービスとは、個人のキャリア形成にとって有益なサービスで、かつ受益者本人が一部またはすべての対価を負担するものを指す。

同社は、2021年版のハイライトとして以下3点を挙げている。

まず「有識者・経験者相談」カテゴリーに複数の新サービスが登場した点を挙げている。特に、サービスの受益者と提供者である個人間を直接マッチングするC2Cプラットフォーム型のサービス増加が顕著という。受益者側のニーズ拡大に加えて、副業解禁トレンドが提供者側の増加を後押ししたことも背景にあると考えられ、個人のキャリア経験・知見を販売する動きは引き続き活発化する可能性があるとしている。

また2020年より「短期集中型転職支援」「コーチング」「キャリアカウンセリング・コンサルティング」が注目されており、これらカテゴリーへの参入が散見されるという。有料職業紹介事業者(転職エージェント)・人材業界出身者の新規事業として始めやすく、今後もサービス増加が予想されるそうだ。

「キャリア支援付きスクール」カテゴリーにおいて、受講料の支払い手段にISA(Income Share Agreement:所得分配契約)と称される出世払い制を採用するスクールが複数登場している。欧米では、学生ローンの代替として注目を集めており、日本の教育機関においてもISAの採用例が増える可能性があるという。

各カテゴリーの概要

  • 有識者・経験者相談:人事経験者などの有識者や転職経験者から、キャリア選択や職探しに関する助言・情報を得られるサービス群
  • 就活塾:就職活動に挑む学生を対象に、エントリーシートの添削、面接・グループディスカッション練習などを通じて内定獲得を支援
  • スカウト媒体:企業や転職エージェントから転職・副業のオファーを受け取ることができるサービス群
  • 短期集中型転職支援:専任のトレーナーから、2〜3カ月程度の期間で自己分析や企業研究、選考対策などのサポートを受けられる。有料職業紹介事業者(いわゆる「転職エージェント」)とは異なり、企業からではなく求職者から報酬を受け取るビジネスモデルを採用
  • 会社口コミ:従業員・元従業員による企業の口コミ情報を提供するサービス群。同マップでは、求職者課金の仕組みを有している会社口コミサービスをリストアップ
  • メンタリング:プログラミングやウェブデザインといった特定の職業スキルの習得を目的に、スキル習得者から学習方法の助言・疑問解消など実践的な指南を受けられるサービス群
  • コーチング、キャリアカウンセリング・コンサルティング:コーチ、カウンセラーまたはコンサルタントが、キャリアに関する問題解決や目標達成を目的とした援助を行うサービス群。コーチングとカウンセリング、コンサルティングの違いについては様々な解釈がありえるため、原則各サービスの表現に従い分類
  • キャリア支援付きスクール:転職や独立を主な目的としてプログラミングやウェブデザイン、資格といった職業スキルを学べるサービス群。転職斡旋などのキャリア支援が付帯する代表的なスクールをピックアップしている。受講料は月額制または単位制で支払うことがほとんどだったが、ISA(出世払い制)を採用するスクールが登場しており、支払い手段の多様化が認められる

2019年8月設立のブルーブレイズは、様々な職種・企業の社員からキャリアナレッジを直接聞けるオンライン社員訪問サービスとして、キャリーナを展開。2020年3月のサービス開始以来、2021年8月時点で約4500名のユーザーが登録しており、聞けるキャリアナレッジは約2000件になるという。

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カウンセリングなど対人援助のオンライン相談室を開設できる「ソラハル Client First」のソラハルが1500万円調達

カウンセリングなど対人援助のオンライン相談室を開設できる「ソラハル Client First」のソラハルが1500万円調達

コーチング、カウンセリング、対人援助のオンライン相談室を開設できる「ソラハル Client First」(クライアントファースト)を開発するソラハルは7月21日、エンジェルラウンドにおいて、第三者割当増資による1500万円の資金調達を実施したと発表した。引受先はSK Impact Fund Japan、SEVEN、エンジェル投資家。調達した資金を活用し、ソラハルClient Firstの開発体制強化を図る共に、事業拡大を見据えた組織基盤を構築する。

創設者で代表の北村健氏は、大学や専門学校で学生支援に従事していたときに、紙ベース、口頭報告、関係部署との調整など、非効率で属人的なやり方に限界を感じていた。その経験が、カウンセリングなど人を支援する事業を改善したいという思いにつながり、ソラハルを起業した。その主要サービスとなるソラハル Client Firstは、小規模企業や個人向けのSaaS型オンラインコーチング、カウンセリングプラットフォームという位置づけで、小規模事業者のカウンセラーなどが相談室を開設でき、同時に業務の「ムリ・ムダ・ムラ」を省けるというもの。

現在、日本のカウンセラーは「非常勤や有期雇用が半数以上」であり、「一人職場」も多く、燃え尽きや過労が問題視されているという。ソラハルは、カウンセラーの負担を軽減することで、カウンセラーがクライアントに寄り添う時間を増やし、カウンセリングのスキルアップに取り組む時間的余裕が取れるようになり、ひいては「社会全体のウェルビーイングを高める」と考えている。

現在はまだ開発中だが、ソラハル Client Firstでは先行登録を受け付けている(対象は、心理支援に関わる資格・身分を有する者)。「世界中の相談と援助の窓口が、すべてソラハルに代わる日を目指して、開発の加速とマーケットローンチにむけて走り続けます」と北村氏は話している。

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カウンセリングやコーチングなど相談援助業務の支援アプリ「ソラハルClientFirst」がトライアルユーザー募集

対人援助・心理支援に従事する専門職が資格や職域を越えて交流できるオンラインコミュニティ「ソラハルBridge」を運営するソラハルは5月31日、業務支援アプリケーション「ソラハルClientFirst」の一般向けランディングページをオープンし、希望者からのトライアル申し込みを開始したと発表した。

ソラハルClientFirstは、カウンセリングやコーチング、キャリアコンサルティングといったコミュニケーションを通じた対人援助(遠隔心理支援)に特化した業務支援ツールだ。想定ユーザーは、開業・医療・福祉・司法・教育・産業などの領域において心理支援をはじめとする相談援助業務に関わる仕事をしている方、またその資格・免許を有する方。

コロナ禍において心の健康やウェルビーイングに注目が集まるなか、臨床心理士・公認心理師をはじめとするカウンセラー、国家資格キャリアコンサルタント、産業カウンセラーなど、相談と援助を仕事とする職種が自ら相談室をオープンし、広く社会に価値提供できる社会基盤となることを目指している。

今回は、2021年夏に予定しているソラハルClientFirstのα版・β版リリースに先駆けて、一般向けにプロダクトを紹介するランディングページをオープンした。また対人援助・心理支援職の従事者らのトライアル申し込みも受付を開始している。トライアル期間中のアプリケーション利用料や登録は無料だ。

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【コラム】投資家とビジネスリーダーが今こそ導入すべきもの、それはコーチング

本稿の著者Ariane de Bonvoisin(アリアンヌ・ドゥ・ボンヴォワザン)氏は、最高経営責任者やスタートアップの創業者でVCのエグゼクティブコーチを務めている。彼女はOprahカンファレンスで基調講演を行い、TEDで講演した後、Google、Amazon、世界銀行、Union Square Ventures、Red Bullに招かれ、変化と創業者、スタートアップのウェルネスについて教えている。

ーーー

ビジネスの世界は、コーチングとは愛憎相半ばする関係のようだ。創業者たちはビジョナリーだ。彼らはアイデアと才能と夢は最初から持っているが、ビジネスのノウハウは必ずしも備えていない。起業家になるのにライセンスやトレーニングは必要ないからだ。Jeff Bezos(ジェフ・ベゾフ)氏はエンジニアでコンピューター科学者、Elon Musk(イーロン・マスク)氏は経済学者で物理学者という具合に、特定の資格が必要なわけではない。

他の業界では、すばらしい才能を持つ人物(アスリート、歌手、俳優など)がキャリアアップするために最初にやるのは、コーチを雇うことだ。そういう人物は、オリンピックで金メダルを獲っても、グラミー賞を獲っても、コーチングを受け続ける。

コーチのほうも、コーチングを受ける人のキャリアの最後までコーチングを提供する。タイガー・ウッズは、戦術を変え、パフォーマンスで他者に抜きん出るために多くのコーチを雇ったことで有名だ。

この国の文化は、自分の会社を築く創業者たちを、精神的にも肉体的にも個人的にも限界まで追い込む。創業者は単独でビジネスを行うものだという考えも根強くある。創業者たちは、助けを求めるのは弱さの象徴であると信じるようになっている。

この不名誉な社会的烙印を押されることに問題の多くの部分がある。我々がビジネス界の大物を尊敬しているのは、大学を卒業してから経営幹部レベルにまで難なく登りつめた人だと信じているからだ。しかし、水面下での苦労や努力は我々には見えない。私のクライアントが以前、こんなことを言っていた。最高と言われるリーダーたちでも、少なくとも生涯の3割の時間は自己破壊的な行いをしているという。シリコンバレーのトップクラスの億万長者たちは、栄養、子育て、瞑想、生活習慣などのコーチングを受けているが、私のクライアントの半分がそうであるように、彼らはその事実を表に出すのを嫌がる。

VCは、ビジネスに投資するのではなく、人に投資するのだということを分かっている。今、大量の資金がメンタルウェルネス関連スタートアップに流れているが、投資家たちは創業者自身のメンタルにも意識を向ける必要がある。投資先企業のすべての創業者たちがコーチングを利用できるようにすることで、ビジネスにエネルギーを注ぎ込むのを妨げている本当の問題に取り組むことになり、間違いなくVCとしての利益も向上するだろう。

1. 創業者が抱えているのはビジネスの問題だけではない

私はスタートアップの創業者やCEOをコーチングしているが、彼らの人生の難題の半分以上は仕事以外のことだ。彼らは実にさまざまな問題を抱えている。癌を患っている者もいれば、浮気をしている者もいる。IVF(特発性心室細動)に苦しんでいる者もいれば、過去の苦悩やトラウマに悩んでいる者もいる。

仕事関連では、コミュニケーションや心理的な問題を抱えていることが多い。「失敗の恐怖にどう立ち向かえばよいか?」「50人のチームを率いることになったが、これまでそうした経験もないのにどうすればよいのか?」「自分の直感を信じるべきかどうか?」といった問題だ。

こうした問題は、シリーズAの資金調達の最中に起こる。従業員の雇用と解雇、買収、ブリッジ資金を調達するか廃業にするかの決断といったことを行う必要があるからだ。こうした本質的な問題に1つ1つ対応しながら投資家の前や取締役会では平気を装うのに、創業者たちが(いや、誰でもそうだと思うが)どれほどの精神的エネルギーと時間を費やすのかを想像してみて欲しい。

創業者が私に話してくれる心配事の中で最も多いのは、彼らは孤独を感じているというものだ。

VCが誰かに資金を調達するということは、その人の過去、家族、個人的問題をすべて受け入れるということでもある。すべて込みである。次のように自問してみて欲しい。「現在、投資先企業の創業者たちすべての人生においてビジネスの妨げになっている主要な懸念事項を把握しているだろうか」と。もし把握していない場合は、彼らの人生に何か仕事以外の問題が起こっていると仮定してみることから始めてみよう。そして彼らがいつでもコーチングを利用できるようにしてみよう。

創業者たちに対して、自身の恐怖、自信の減退、盲点に対処するためのサポートを提供することは、会社または業界のリーダーとしての彼らの潜在能力を引き出すことにつながる。健全な企業は健全なリーダーシップがあってこそ成立するのだから。

2. コーチングの効果(ROC)

一流サッカー選手のコーチと同様、ビジネスコーチングの利点は明白である。しかも億単位の経費がかかることもない。創業者はコーチングを受けると、最初から意思決定の質が向上し始める。従業員を採用して研修したものの1カ月以内に解雇してしまうようなことがなくなり、適切な人材を雇用するようになる。

利害関係者とも誠実に会話するようになり、争い事を避け、多くの人たちがビジネスの成長に有意義に貢献できる環境を築けるようになる。資金調達についても正しい考え方をするようになり、そうした姿勢によって目標調達金額を達成できる。

さらには身体面でも改善が見られるようになる。私のコーチングを受けた創業者たちは、減量に成功し、飲酒喫煙もやめ、ビジネスの構築により多くのエネルギーを注ぐようになった。多くの創業者たちがそうだが、慢性疲労状態で働き続けると、すぐに体が悲鳴をあげる。私のところにも、大きな会議の前にパニック発作を起こしてしまい、ピリピリしている神経を何とか落ち着かせようとしているクライアントから電話がかかってくることがある。

創業者の健康に資金を出す方法はいろいろだ。投資先企業にマーケティングやPRサービスを提供するのと同様に、コーチングもサービスの一部として提供すべきだ。従業員のために管理職向けコーチを設置することもできる。必要なときにいつでも利用できるフルタイムの常駐コーチを選択するのもよいだろう。

VCは、少なくとも、推奨するコーチの一覧を用意する必要がある。リーダーシップのコーチング専任のコーチもいれば、女性創業者や健康面専門のコーチもいる。さまざまな個人スキルや職業スキルに対応しているコーチもいる。

中には、創業者にいくつかの無料セッションを提供し、創業者が継続を希望すれば、創業者個人の健康とビジネスの健全性のどちらについてコーチングを受けるか選択してもらう投資家もいる。そのビジネスには、他の投資家たち(読者のみなさんのVCも含め)も億単位の資金を投資しているだろう。しかしこれは、創業者個人の健康かビジネスの健全性か、どちらか一方だけサポートすればよいという話では決してない。

私の望みは、将来、VCが資金の一部を創業者と経営幹部のメンタルヘルス用に確保するようになることだ。

そうした目的に1%を確保することを誓約しているVCも数社存在するが、この領域で先頭に立っているのは欧州だ。エストニアやアイルランドのファンドは、すべての創業者のコーチング料とその他のサポートプログラム費用を出すという太っ腹ぶりだ。私の知っているプログラムでは、資金を枯渇させることなく10倍の成長を達成する方法について教えている。

3. 社会的汚点を打ち砕き創業者がコーチングを最大限に活用できるようにする

創業者たちは、投資家や取締役たちにどう思われるかを気にして自分でコーチを雇いたがらない。「自分が正常で優秀なら、コーチなどいらない」と自らに言い聞かせているのだ。

そう思っているのは何も彼らの内なる声だけではない。私のクライアントの1人は、シリコンバレーのスタートアップに入社したとき、コーチングを彼の報酬パッケージに含められるかどうか上司に聞いたところ、なぜコーチなど必要なのか不思議に思われたという。

他の業界では、誰かにコーチを付けることはその従業員の価値を認めていることの証である。投資家も次のような会話を持つべきだ。「君にはお金を出す価値があると思う。だから、今後の君のキャリアを支援するコーチを付けることにする。自分はできるなどと無理をしないでいつでも相談して欲しい」。

「メンタルヘルス」という言葉には否定的なニュアンスもあるため、この用語も考え直す必要がある。メンタルとヘルスという2つの単語は、うつ病、自殺思考、中毒といったことを連想させる傾向がある。つまり、精神的に不健康な状態だ。メンタル面の健康と創業者の健康についてもっと話そう。そうすれば、我々が掲げる目標の達成により注力できるようになる。

不名誉な社会的烙印を排除するには、まず、投資家と経営幹部の間で健康についてオープンに話し合うことから始めるとよい。そこにコーチも招き、こうした話し合いの意味について、また関係者全員の利益になる理由についても創業者に話してもらうようにする。タブーを打ち砕くことで、創業者は、その経験を最大限に活かすことができ、体裁を取り繕う状態に戻ることはなくなる。

今後コーチングを導入する企業が増えていけば、最終的には、すべての創業者がコーチングを必須と考えるようになるだろう。

4. 模範を示す

最後に、ビジネスリーダーと投資家はスタートアップコミュニティ、とりわけ起業したばかりのスタートアップに向けて、自身を高めるためにコーチのサポートを求めることは何も恥ずかしいことではないという先例を作る必要がある。

多くのVCは、トップクラスのCEOと同様、コーチを雇っている。VCがもっと手軽にコーチを雇うようになれば、コーチングの導入が当たり前となり、#IHaveACoachなどというハッシュタグがおしゃれにさえなるだろう。結局、我々は、瞑想ルームを流行させたり、kombuchaをオフィスに用意したりするメンタルヘルス系スタートアップたちと同じ業界の話をしているのだから。

今後の投資家会議でコーチングを主題にしたり、VC企業として、コーチングプログラムを受けた投資先創業者たちがビジネスで大きな成功を収めたケースについて調査を公開したりするのもよいだろう。

例えばUnion Square Ventures(ユニオン・スクウェア・ベンチャーズ)は創業者に価値を提供することに投資し、リーダーシップのトレーニング開発、メンターシップサークルの育成、創業者へのコーチの紹介といった業務を担当するチームを構築してきた。創業者にVC自体が人の心のケアに投資していることを示せば、創業者たちも人間的であることが弱いことだとは思わなくなるだろう。

こうしたアプローチは、VCが自身を次世代のエシカル投資家として位置づけるためにも重要だ。さまざまな資金調達方法が利用できる今、創業者は、単に資金を提供してくれるだけでなく、健康、ダイバーシティ、インクルージョンを成功に欠かせないものと見なすVCを探している。

創業者の健康とスタートアップの健全性は切り離すことができない。すべての投資家たちはこの点についてある程度気づいている。未来を形成する人たちの身になって考えてコーチングを導入することにより、創業者たちにストレスなく働き、すばらしい結果と信じられないリターンを達成するチームを率いる優れた技量を身につけてもらうようにしよう。

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画像クレジット:Klaus Vedfelt / Getty Images

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(文:Ariane de Bonvoisin、翻訳:Dragonfly)

ミレニアル女性向けキャリアスクールのSHEが4.4億円調達、美容・金融領域の新規事業拡大

ミレニアル女性向けキャリアスクールのSHEが4.4億円調達、美容・金融領域の新規事業拡大

ミレニアル世代女性向けキャリア&ライフコーチングスクール「SHElikes」(シーライクス)を運営するSHEは2月24日、総額4億円の第三者割当増資および金融機関からのデットファイナンスを合わせ、総額4億4000万円の資金調達を実施した。

引受先は、ANRI 4号投資事業有限責任組合(ANRI)をリードインベスターとする、HAKUHODO DY FUTURE DESIGN FUND(博報堂DYベンチャーズ)、KDDI Open Innovation Fund 3号(グローバル・ブレイン、KOIF3号)。

調達した資金は、受講者と講師のマッチング自動化や商材のパーソナライズ化をはじめ、あらゆるコミュニティ体験の最適化など、「コンテンツ×コーチング×コミュニティ」という、熱狂体験の創出に欠かせない「3C」を科学し再現性高く展開するためのテクノロジーへの投資にあてる予定。

ミレニアル女性向けキャリアスクールのSHEが4.4億円調達、美容・金融領域の新規事業拡大

ミレニアル女性向けキャリアスクールのSHEが4.4億円調達、美容・金融領域の新規事業拡大

またコミュニティテックへの投資を通じて、2021年は以下を特に進めていく。

  • 新規事業:日本初・フルオンラインでトータル美容プロデュースするコミュニティサービス「SHEbeauty」(美容領域)、理想のキャリアや人生の実現のために不可欠なお金の知識の獲得を目指すサービス「SHEmoney」(金融領域)の展開
  • 既存事業:キャリア領域「SHElikes」(シーライクス)のコンテンツ拡充

2017年の創業以来、SHEはミレニアル女性向けのキャリア支援スタートアップとして累計2万人以上の女性のキャリアに伴走し、多くの女性が夢を叶える姿を見てきたという。創業から5年の節目を迎える2021年、キャリア領域だけではなく女性のライフイベント全般の課題に寄り添う「ライフコーチングカンパニー」としてコミュニティ体験を強化すべく、資金調達を実施したとしている。

ミレニアル女性向けキャリアスクールのSHEが4.4億円調達、美容・金融領域の新規事業拡大

SHEは、「ひとりひとりが自分にしかない価値を発揮し、熱狂して生きる世の中を作る」をビジョンに据え、2017年に創業。主要事業SHElikesでは、21世紀を生きる女性たちが自分らしい働き方をかなえられるよう、ウェブデザインやウェブマーケティングなどのクリエイティブスキルレッスンやコーチングプログラム、仕事機会を提供。これまでに2万名以上が受講しているそうだ。

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コーチング習得プログラム「CoachEd」が1億円超を調達、システム開発・マーケティング体制強化

コーチング習得プログラム「CoachEd」が1億円超を調達、システム開発・マーケティング体制強化

コーチング習得プログラム「CoachEd」(コーチェット)を手がけるコーチェットは1月29日、既存株主を中心とした第三者割当増資および借り入れによる、総額1億円超の資金調達を発表した。また、新経営体制として、COO兼プロダクト責任者として吉田健吾氏、CCO兼マーケティング・社内コミュニケーション設計責任者に立山早氏が就任したと明らかにした。

今後は、システム開発体制およびマーケティング体制を強化し、より多くのリーダーが「人を生かし育てる」リーダーになるためにコーチェットのサービスを届けるべく、積極的な投資を行っていく。

CoachEdは、人を生かし育てるリーダーになるための、コーチング習得プログラム。プロのコーチからコーチングを受けて自己認識を深めながら、同時に人を生かし育てるコーチングスキルを身に付けられる、3カ月間のマンツーマンプログラムという。

集合研修型ではなく、マンツーマンで専属トレーナーが寄り添いながら、一人ひとりの目標や成長課題に合わせてカリキュラムをパーソナライズするため、確実な変化を期待できるとしている。

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カテゴリー:EdTech
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