バングラデシュの小規模店舗のデジタル化を進めているスタートアップのShopUp(ショップアップ)は、南アジア市場でも最大規模となる新たな資金調達ラウンドで7500万ドル(約82億5200万円)を調達した。
Peter Thiel(ピーター・ティール)氏のValar Ventures(バラール・ベンチャーズ)がShopUpの7500万ドル(約82億5200万円)のシリーズBラウンドを主導した。このラウンドには、Prosus Ventures(プロサス・ベンチャーズ)の他、既存の投資家であるFlourish Ventures(フローリッシュ・ベンチャーズ)、Sequoia Capital India(セコイヤ・キャピタル・インディア)、VEON Ventures(VEON ベンチャーズ)も出資している。今回の新たな投資により、同社の累計調達額は1億ドル(約110億円)を超え、ValarとProsusにとっては、1億人以上のインターネットユーザーがいるバングラデシュでの初めての取引となる。
バングラデシュでは、隣国のインドと同様、小売全体の95%以上が近隣の店舗で行われている。バングラデシュには約450万店の小売店があるが、そのほとんどがデジタル化されていない。
インド、パキスタン、その他のアジア諸国と同様に、バングラデシュでもこれらの小規模店舗は多くの課題に直面している。在庫選択のための大規模な目録を持たず、良質な価格設定や迅速な配送のための交渉をすることもできない。また、これらの小規模小売店では、売上全体の3分の2以上が、現金やデジタル決済ではなく、クレジットで処理されているため、大規模な流動性リスクに陥っている。
ShopUpはこれらの課題を解決しようとしている。同社は、フルスタックの企業間商取引プラットフォームを構築し、在庫を確保するための卸売市場、物流(顧客へのラストマイル配送を含む)、運営資金など、多くの核となるサービスをこれらの店舗に提供している(インドの多くのスタートアップ企業と同様に、ShopUpは銀行やその他のパートナーと協力して運営資金を提供している)。
ShopUpの共同創業者兼CEOのAfeef Zaman(アフィエフ・ザマン)氏は、同社はこの1年間で、提供するサービスを拡大し、バングラデシュ国内での普及を進めてきたとTechCrunchのインタビューで述べている。例えば、バングラデシュ最大のメーカー、生産者、流通業者と提携し、小規模店舗へ在庫の確保と供給をしているという。また、その物流サービスは、すでにバングラデシュで最大のものとなっている。
ShopUpは、他の企業と同様にパンデミックの影響を受けたが、国が開かれ始めたことで、回復の兆しが見えてきたという。全体として、この1年間で事業は13倍以上に成長したとのことだ。
「ShopUpのリーダーシップチームは、過去12カ月間、強力な実行力を発揮してきました。バングラデシュの十分なサービスを受けていない小規模事業者向けに作られた3つの製品で2桁の成長を遂げ、明らかに市場のリーダーとなりました。バングラデシュのような急成長を遂げているフロンティア経済圏では、小規模事業者が経済の主な原動力となっています。オンライン経済への移行を迅速に進めるために、製品の連携したエコシステムを構築するというアフィエフ氏のビジョンに協力できることをうれしく思います」とValar Venturesの創業パートナーであるJames Fitzgerald(ジェームズ・フィッツジェラルド)氏は声明の中で述べている。
ザマン氏によると、この1年間で、バングラデシュのこうした小規模店舗の間でテクノロジーの導入が加速しているという。「彼らは今、複数のネットサービスを利用しています。ShopUpだけでなく、メッセージや暗号資産なども利用しています。今後もこの傾向は続くでしょう」。
ダッカに本社を置くこのスタートアップは、技術者やエンジニアの大部分が暮らしているベンガルールにオフィスを構えており、今回の新たな資金は、チームの拡大のために投入される予定だ。ザーマン氏は、今回の資金調達の一環として、従業員のストックオプションの数を3倍に増やしたことを明らかにした。
「今回の投資は、過去10年間で最も急速に成長している経済圏の1つであるバングラデシュへの参入を意味しています。ShopUpは、細分化された市場の中で、小規事業者のさまざまなニーズを解決するために、強い実行力を発揮してきました。何百万もの小売業者に力を与え、彼らが国の経済成長に参加できるようにするというShopUp の取り組みを支援できることをうれしく思います」。とProsus Venturesのインド投資部門責任者Ashutosh Sharma(アシュトシュ・シャルマ)氏は語っている。
画像クレジット:ShopUp
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(文:Manish Singh、翻訳:Akihito Mizukoshi)