暗号資産・ブロックチェーン業界の最新1週間(2020.9.27~10.3)

暗号資産・ブロックチェーン業界の最新1週間(2020.9.27~10.3)

暗号資産(仮想通貨)・ブロックチェーン技術に関連する国内外のニュースから、重要かつこれはという話題をピックアップし、最新情報としてまとめて1週間分を共有していく。今回は2020年9月27日~10月3日の情報をまとめた。

Atariの独自トークン「Atari Tokens」が暗号資産取引所Bitcoin.comを介し11月にIEO、販売終了後に上場決定

ビデオゲーム界の老舗メーカーAtari(アタリ)は10月1日、暗号資産取引所Bitcoin.comとの間でAtariの独自トークン「Atari Tokens」(ATRI。EthereumのERC-20準拠)の公開販売(IEO。Initial Exchange Offering)および販売完了後の上場に向けた契約の合意を発表した

Atariの独自トークン「Atari Tokens」が暗号資産取引所Bitcoin.comを介し11月にIEO、販売終了後に上場決定

IEOの開始は、2020年11月上旬を予定。暗号資産取引所Bitcoin.comを介して、ジブラルタル拠点のAtariグループ子会社Atari Chainが実施する。Atari Tokenは販売期間中、ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、ライトコイン(LTC)、ビットコインキャッシュ(BCH)の主要暗号資産でのみ購入可能となる。

今回のIEOとその後の上場は、Atariのブロックチェーンプロジェクトにとって重要なマイルストーンという。Atari Token保有者に流動性を提供し、同プロジェクトが計画をするAtariブロックチェーンエコシステムの発展への道を切り開く第1歩としている。

Atari Tokenのユースケース

またAtari Tokenのユースケースは、現在、Atariグループが活動をしている分野を予定。それぞれ関係各所とパートナーシップ契約を締結しており、平行していくつかのプロジェクトが進んでいる。最初は、暗号資産を使用したAtari CASINO、PCゲーム配信プラットフォームUltraでのAtariゲームの配信、今秋発売予定の新型家庭用ゲーム機「Atari VCS」などで利用される予定になっている。パートナーシップに関しては、順次atarichain.comで発表されるという。

最終目的は、決済手段はじめ、スマートコントラクトの促進、ゲーム内の収益化、アセットの拡張から保護まで

Atari Tokenは、イーサリアムのERC-20準拠のトークンとして発行された暗号資産。主たる目的は、ビデオゲームなどインタラクティブエンターテインメント業界内での決済手段として利用するものの、トークンはさまざまな業界にも有益であるとAtariグループは考えているという。

最終的な目標は、Atari Tokenが世界中で利用可能になること。決済手段のみならず、スマートコントラクトの促進から、ゲーム内の収益化、アセットの拡張から保護まで、多くの用途を想定しているそうだ。また、安全かつ信頼性が高く、普遍的で、流動性のある使いやすいトークンの作成を目指している。

Atari TokenはIEOおよび上場を機に、Atariのパートナーを含むさまざまなAtari商品やサービスとの交換手段として、まもなくAtariのネットワーク内で利用できるようになる。

Atari Token誕生までの経緯

Atari Tokenを開発するチームは、現在、Atariグループとドイツを拠点とするインターネット銀行ICICBによるメンバーで構成されている。

Atari Tokenは2018年の発表当初、AtariグループがInfinity Networks Limited(INL)とパートナーシップを結び独占契約を締結、INLにAtariブランドを付与し、ブロックチェーンプロジェクトとして立ち上がった経緯がある。プロジェクトでは、暗号資産の作成やAtariブランドを使ったブロックチェーンゲームや映画、音楽などあらゆるデジタルエンターテインメントにアクセスできるプラットフォームの構築を目指していた。

しかし、INLによるブロックチェーンプロジェクトは、Atariが期待する速度で開発は進まなかったようだ。AtariとINLは、どちらの側にもペナルティを発生させることなく、円満かつ即時にこのライセンスを終了させ、すべての権利をAtariグループ側に回復させることで合意し、INLとのパートナーシップを解消した。

その後、Atariグループはブロックチェーンプロジェクトをふたつに分離し、Atari Tokenについては、2020年3月にICICBグループと提携した。

グループは、Atari Tokenのユースケースの最大化を考慮し、開発の速度を上げるために、現時点において最も実現性の高いプロジェクトを優先しパートナーシップを締結している。それらが、Pariplayと契約をしたAtari CASINOであり、Ultraを始めとするその他のパートナーシップでということになる。Atari CASINOはまもなく開始を予定しており、IEOの前にAtari Tokenのプレセールを実施している。

ウォレットなどの開発も進行

Atari Tokenは、IEOおよび上場の計画の他にも、現在、ウォレットなどの開発が進んでいることも明らかにしている。ウォレットはすでにAndroid版のテストが最終段階であり、監査が完了し、安全性が確認でき次第発表するとした。

テックビューロHDの「mijin Catapult(2.0)がアマゾンAWS Marketplaceにて世界190ヵ国に提供開始

NEMブロックチェーンのプライベートチェーン版「mijin Catapult(2.0)」を提供するテックビューロホールディングス(テックビューロHD)は9月30日、アマゾン ウェブ サービス(AWS)が世界190ヵ国で提供する「AWS Marketplace」において、初の日本法人パートナー企業のうちの1社として登録されたと発表した。同日より、mijin Catapult(2.0)の提供を開始した。

テックビューロHDの「mijin Catapult(2.0)がアマゾンAWS Marketplaceにて世界190ヵ国に提供開始
AWS Marketplaceは、同社クラウドサービス向けのオンラインソフトウェアストアである。ITビジネスを構築・運営するために必要なサードパーティーのソフトウェア・データ・サービスを検索・購入・デプロイ・管理するために使用できるデジタルカタログとなる。

今回のAWS Marketplace登録により、販路として世界190ヵ国のAWSの顧客に対しグローバルなサービス提供をできるようになったほか、月間29万人を超えるアクティブな顧客に対して同社サービスをアピール可能となった。

NEMブロックチェーンのプライベートチェーン「mijin」

テックビューロHDが提供するプライベートチェーン「mijin」は、NEM(ネム)コアの開発者が同社に合流し開発したNEMブロックチェーンのプライベートチェーン版。「mijin Catapult (2.0)は、エンタープライズで利用可能なプライベートブロックチェーン環境を構築する「mijin v.1」をバージョンアップした製品。

またmijin Catapult (2.0)は、NEMの次期バージョン「Symbol」にあたる存在でもある。mijin Catapult (2.0)は2018年6月にオープンソース化され、Symbol公開に先行し2019年6月より製品版として公開されている。

mijin Catapult (2.0)は、300社以上への提供実績を持つmijin v.1の性能を向上させるために仕様全体を一新し、機能・性能・仕様のすべての面においてバージョンアップを実施。異なるブロックチェーン間でのトークン交換や複数トランザクションの一括処理を可能にするなど、前バージョンの課題であった処理速度、スケーラビリティの両面で大幅なグレードアップを実現している。

具体的には、mijin v.1と同様、ひとつのブロックチェーン上に複数のアセット(トークン)を同時に発行し流通・管理を行える機能「マルチアセット」、複数人の合意によって取引・コントラクトを実行する「マルチシグネチャー」機能が最大3階層まで設定が可能になった。

追加の機能として、第3者を介さず異なるブロックチェーン間でのトークン交換(クロスチェーン・トランザクション)や、複数トランザクションの一括処理(アグリゲート・トランザクション)が可能となっている。前バージョンの課題であった処理速度、スケーラビリティの両面での大幅なグレードアップも実現した。

今回のAWS Marketplaceにおける提供では、ブロックチェーンの導入促進を目的に設計・開発イメージをより多くのAWSユーザーに体験してもらえるよう、機能を制限した無料トライアル版が提供されている。

無料トライアル版の概要は、以下の通り。

  • ノード: 1台のみ(DUALモード/APIノードにHarvestを有効)
  • デプロイ: およそ15分程度で下記構成が完成
  • ライセンス費: 無料
  • インフラ費: AWS使用料として、Amazon EC2、Amazon EBS、Amazon Route53、パラメータストアの費用は発生
  • リージョン: 世界16リージョンに提供

制限事項として、公開ネットワークのみ(IPアドレス制限は可能)の配置、基軸通貨発行数は2000cat.curency限定、手数料が必要、提供されるバージョンは、「mijin Catapult (2.0)(0.9.6.4)」に固定としている。

テックビューロHDの「mijin Catapult(2.0)がアマゾンAWS Marketplaceにて世界190ヵ国に提供開始

テックビューロHDでは、2020年12月に予定されているSymbol正式版のリリースに合わせて、有料エンタープライズ版の追加公開を予定。またmijin Catapult (v.2) Free Trial版については、2021年1月末日をもってAWS Marketplaceから削除する予定で、2021年4月1日以降は問い合わせも受付終了予定としている。

パブリックチェーンのSymbolとプライベートチェーンのmijin Catapult(2.0)のクロスチェーン・トランザクション

パブリックチェーンのSymbolとプライベートチェーンのmijin Catapult(2.0)のクロスチェーン・トランザクションでは、「Atomic Swap」という方法でプライベートチェーンとパブリックチェーン両者のメリットを使い分けて利用できるようになる。それにより、Symbolとmijin Catapult(2.0)や、管理者の違うmijin Catapult(2.0)間でお互いのモザイク(トークン)の交換が可能になる。パブリックチェーンを使いつつ、大事なものはプライベートで取引をするといったサービスが提供可能になる。

LINE、独自ブロックチェーン「LINE Blockchain」基盤を導入した外部企業サービスを発表

LINEの暗号資産事業・ブロックチェーン関連事業を展開するLVCとLINE TECH PLUS PTE. LTD.(LTP)は9月30日、LINEの独自ブロックチェーン「LINE Blockchain」(LINE Blockchain White paper v2.1)基盤を導入した外部企業のサービスを発表した

LINE、独自ブロックチェーン「LINE Blockchain」基盤を導入した外部企業サービスを発表LINEは、LINE Blockchainを基盤としたブロックチェーンサービス(DApps)を簡単かつ効率的に構築できる開発プラットフォーム「LINE Blockchain Developers」を展開している。企業は、LINE Blockchain Developersを導入することにより、既存サービスにブロックチェーン技術を組み込むことができ、独自のトークンエコノミーの構築も可能になる。

また、LINE Blockchain Developersで構築した各サービス内で発行されるトークンを、LINE IDと紐づくデジタルアセット管理ウォレット「BITMAX Wallet」にて管理・連携させることもできる。企業は、それによりLINEのユーザー基盤を活かしたサービスの構築が可能になる。

2020年8月26日にLINE Blockchain Developersの提供開始を発表後、6日目にして申込数が100件を突破したという。

今回の発表では8社が紹介され、そのうちの2社はすでにサービスを開始している。導入企業の詳細は、以下の通り。

モバイルRPGゲーム「ナイトストーリー」

ブロックチェーンゲームを開発するBiscuitlabsは、9月30日よりモバイルRPGゲーム「Knight Story」の日本版を提供開始した。プレイヤーはナイトとなり、ペットとともにバトルをしながら素材を収集し、素材を組み合わせて装備アイテムを作成し強化していく。ゲーム内アイテムはNFT(Non Fungible Token。ノン ファンジブル トークン)のため、プレイヤーはアイテムの保有権を持ち、交換・売買ができる。

電子契約サービス「リンクサイン」(linksign)

リーガルテック企業のComakeは、AI・ブロックチェーンベースの電子契約サービス「リンクサイン」(linksign)の提供を9月30日より開始。契約書の作成、内容の検討、署名、締結などと契約行為を始まりから終わりまで完結できるオールインワンプラットフォームとなっており、顧客は様々な契約書テンプレートから契約書を作成できる。また、すべての契約プロセスをリアルタイムで確認可能。ブロックチェーンにより、契約文書の偽造・変造を防止する。

LINE、独自ブロックチェーン「LINE Blockchain」基盤を導入した外部企業サービスを発表

ソーシャルメディア「aFan」

Common Computerの「aFan」は、クリエイターとファンをつなぐブロックチェーンベースのソーシャルメディア。ファンは、写真家、イラストレーターなどのクリエイターに直接寄付・応援することで、クリエイターのコンテンツ制作や活動をサポートできる。ファンとクリエイターは、トークン「ファンコ」を通じて、従来の「いいね」やコメント以上の相互交流が可能となる。サービス開始は、10月上旬予定。

LINE、独自ブロックチェーン「LINE Blockchain」基盤を導入した外部企業サービスを発表

MMO戦略ゲーム「リーグオブキングダム for LINE Blockchain」

ブロックチェーンゲーム開発会社NOD Gamesは、MMO戦略ゲーム「リーグオブキングダム」の日本版「リーグオブキングダム for LINE Blockchain」を10月末より提供開始予定。王国同士、連盟や戦争を通じで領土を広げていく、大陸の覇権を争うゲーム。プレイヤーは、ゲーム内で保有する資産をブロックチェーンアイテムトークンに転換することで完全に保有し、取引できる。ブロックチェーン技術をさらに活用し、プレイヤーがゲームの方向性決定に参加できる仕組みも将来計画している。

LINE、独自ブロックチェーン「LINE Blockchain」基盤を導入した外部企業サービスを発表

コインプッシュゲーム「CryptoDozer」

ブロックチェーンゲーム開発会社のPlayDappは、コインプッシュゲームをモチーフにした「CryptoDozer」を2020年内に日本向けに提供開始予定。30種類以上のDozerドールを入手できるコインゲーム。ファンシードールを獲得するためにDozerドールを調合することもできる。ドール強化でゲームプレイをさらに活性化することが可能。

LINE、独自ブロックチェーン「LINE Blockchain」基盤を導入した外部企業サービスを発表

ソーシャルカラオケアプリ「SOMESING」

Emel Venturesは、ソーシャルカラオケアプリ「SOMESING」を2020年内に日本向けに提供開始予定。いつでもどこでも高音質のカラオケを楽しむことができる。全世界の友達とデュエットすることも可能。ブロックチェーン技術を応用した世界初のカラオケアプリであり、独自のリワードシステムによりユーザーは自分が歌った歌に対して公正な報酬を受け取ることがきる。

LINE、独自ブロックチェーン「LINE Blockchain」基盤を導入した外部企業サービスを発表

ビデオ・ストリーミング・プラットフォーム「Theta.tv」

ビデオ配信サービスを提供するTheta Labs(Theta Network)は、eスポーツ専門のビデオストリーミングプラットフォーム「Theta.tv」を2020年内に日本向けに提供開始予定。ユーザーは、コンテンツを視聴し、帯域幅を別の視聴者たちに共有することでリワードを受け取れる。ユーザーは特定のクリエイターを購読し寄付することも可能。

LINE、独自ブロックチェーン「LINE Blockchain」基盤を導入した外部企業サービスを発表

スポーツゲーム「Crypto Sports」(仮称)

アクセルマークオルトプラスの100%子会社OneSportsは共同で、プロスポーツライセンスを使用したゲームの開発を進めている。2021年以降にローンチ予定。ユーザーは試合に参加して選手を育成し、その選手達を取引できる。

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カテゴリー: ブロックチェーン
タグ: Atari TokensAWSEthereumLINELINE BlockchainLINE Blockchain Developersmijin CatapultNEMSymbolUltraテックビューロ

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テックビューロ、「Zaif」ハッキング被害による仮想通貨流出額は約70億円と判明

9月14日に発生した不正アクセスにより、顧客の預かり仮想通貨を含む仮想通貨が流出したと発表していたテックビューロ。同社は9月21日、前回の発表で「調査中」としていたMONA、BCHの流出額が判明したと発表した。

今回発表された流出数量、損失総額は以下のとおりだ。(レートは、2018年9月18日の終値で計算。BTC:712565円 、MONA:107.7円 、BCH:49795円)。

  • BTC 5,966.1 (円換算で約42億円)
  • MONA 6,236,810.1(円換算で約6億7000万円)
  • BCH 42,327.1 (円換算で約21億円)

以上を合計すると、損失総額は約70億円となる(前回の発表では約67億円と発表されていた)。なお、今回の発表における流出数量は、盗難による送金先のアドレスに入金のあった仮想通貨の数量から推計したものであり、実際の損失総額はこれよりも多くなる可能性がある。テックビューロは「弊社サーバの復旧により正確な数量が判明し次第、場合により訂正のご報告をさせていただきます」とコメントしている。

仮想通貨取引所「Zaif」から仮想通貨約67億円流出、フィスコGが50億円支援で株式過半数取得

テックビューロは9月20日、同社が運営する仮想通貨取引所「Zaif」においてハッキング被害により総額67億円相当の仮想通貨が流出したと発表した。ハッキング被害にあった仮想通貨は、BTC、MONA、BCHの3通貨。流出した67億円相当の仮想通貨のうち、45億円が顧客からの預かり資産であり、残りの22億円は同社が保有する資産という。

この流出事件をうけ、テックビューロはフィスコのグループ企業であるフィスコデジタルアセットグループの子会社に支援を要請。これにより、フィスコデジタルアセットグループはテックビューロの株式の過半数を取得し、50億円の資本提供を行うこととなった。

2018年1月に発生したコインチェックのNEM流出事件と同じく、今回のハッキングのターゲットとなったのもホットウォレット(ネットワークに接続されたウォレット。手軽に仮想通貨を取り出しやすい一方で、セキュリティに懸念がある)だった。テックビューロは顧客からの入出金に対応するために、顧客からの預かり仮想通貨の一部をホットウォレットに保管している。その入出金用のホットウォレットを管理するサーバーに対し、2018年9月14日17時頃から19時頃までのあいだ、外部からの不正アクセスが行われたという。具体的なアクセスの手法については、公表されていない。

現在、テックビューロは入出金を停止している。再開のめどは立っておらず、「システムの安全性が確認われることが前提」と同社はコメントしている。流出した預かり資産について、同社はフィスコデジタルアセットグループから調達した50億円によって流出した分の仮想通貨を調達し、「お客さまの資産に被害が及ばないように準備を行う」(テックビューロ)としている。フィスコから調達した資金は今月下旬には提供されることを前提として、準備・交渉をしているという。

なお、ロイターが報じたところによれば、金融庁は20日にもテックビューロへの立ち入り検査を実施する予定だという。

テックビューロは今回の流出事件をうけ、「(テックビューロ経営陣は)過半数の支配権を取得するフィスコグループの経営陣に引き継ぎなどをする責務をまっとうした場合、経営責任として弊社の役員を退任する方針だ」と発表している。

Zaifが「0円売買」不具合について謝罪と報告

仮想通貨取引所「Zaif」を運営するテックビューロは2月16日に発生していた同取引所の不具合について20日、経緯の説明と謝罪を行った。

問題が発生したのは、2月16日17時40分ごろから58分ごろの間。Zaifが提供する「簡単売買」サービス上で、ビットコインおよびモナーコインを0円で売買できる状態になっていた。また、この時間帯にあるユーザーが21億BTC(約2200兆円相当)を0円で購入、そのうちの20億BTCを売り注文に出したことで、板情報にビットコインの発行上限枚数の2100万BTCを超える、異常な数値が表示されることとなった。

このユーザー“麺屋銀次”氏は「0円の表示を見つけ、決済できないだろうと思って試したところ、購入できてしまった。また購入したBTCを買えないように指値で販売してみたところ、こちらも注文できてしまった。Zaifにはすぐメールで報告した」とYouTubeで述べている。

テックビューロでは、問題の原因について「簡単売買の価格計算システムに異常が生じ、ウェブシステム側で0円でも売買できてしまうという不具合が重なり、7名のお客様が0円で仮想通貨を購入してしまった。一部のお客様が0円で購入した仮想通貨を取引所で売り注文に出されたため、取引板に異常な数値が表示された」と説明している。

不具合に対しては、問題の発生時点から対応を開始し、修正を実施。現在は正常に稼働しているという。0円で購入された売買については、システムの異常によるものとして、訂正扱いとし、対象ユーザーの残高データについても修正を実施した。

テックビューロによれば、不具合の対象となった顧客は7名で、そのうち6名との対応を完了、1名と継続対応中、他の顧客には影響はない、という。

仮想通貨取引所にまつわるトラブルでは、1月26日にコインチェックで580億円分のNEM不正流出が起き、大きな話題となっている。

フィスコが10億円、ほかVC2社が仮想通貨とCOMSAのICOトークンへ直接投資を開始

テックビューロがICOソリューション「COMSA」(コムサ)を発表したことはTechCrunch Japanで8月3日にお伝えしたとおりだが、このCOMSAが作り出そうとしている「ネットワーク」にリアルマネー(法定通貨)を投資する事業会社とVCがでてきた。

COMSA発表から1週間が経過した今日8月10日、金融情報提供サービスを運営するフィスコのほか、テックビューロの既存投資家であるVCの日本テクノロジーベンチャーパートナーズ、IoT関連スタートアップに投資しているアクセラレーターのABBALabの3社が、COMSA上で流通するICOトークン(CMS:単位はCOMSA)をはじめ、ビットコイン(BTC)やNEMプロジェクトの通貨である「XEM」への直接投資を開始したことを発表した

ビットコイン、NEM、COMSA、ICOトークンへ投資

「直接投資」を噛み砕いていえば、ビットコインやNEMの仮想通貨を日本円で買っていくということだ。買うのは既存の仮想通貨だけでない。10月2日に予定されているCOMSAのトークンセールで出てくる「COMSA」という新しいトークンについても投資予定だし、COMSAというICOプラットフォームで今後でてくるICO案件で発行されるトークンについても投資を予定している。ただ、ICOによるトークンは有価証券ではないので、投資家ではなくトークン購入者というほうが現実に近いのかもしれない。

既存仮想通貨やCOMSA、COMSAを使って今後でてくるICO案件それぞれの投資金額や比率は明らかにされていない。ただ、フィスコは全体で10億円規模となる仮想通貨専門の投資ファンド「FISCO Crypto Currency Fund(仮称)」を組成するとしている。

フィスコは株式、為替、金利などの金融情報を投資家向けに提供していて、すでに仮想通貨に関する情報提供も開始しているが、仮想通貨やICO市場を既存金融市場と比べたとき「合理的な市場は形成されていない」(フィスコ代表取締役狩野仁志氏、発表文からの引用)という。

確かに現在、仮想通貨に関する情報といえば、単に誤った情報というだけでなく、根拠のない断言やあからさまな嘘、煽りも横行している状況だ。世界のICOについて言えば、トークンセールの実施主体が発行するホワイトペーパーと、そのICOによって利益を得る関係者たちの証言だけが頼りということもある。今後、もしICOが資金調達手段として既存の資本市場を補完する存在になっていくのだとしたら、信頼できる情報に対するニーズが高まることは十分に予想されるところだ。

しかし、フィスコのような情報提供者が直接投資をするプレイヤーとなることに矛盾はないのだろうか? この点について前出のフィスコ狩野氏は、情報の透明性を高めることで「合理的な金融市場形成に寄与する」という同社の使命に言及しつつ、次のようにコメントしている。

「私たちがXEMをはじめとする将来有望な仮想通貨やICOトークンへ積極的に投資することで、他の投資家に対する超過利潤を得ることに何のためらいもありません。自らがプレイヤーとなり、そのパフォーマンスを実現し、市場に示していくことは、私たちがその使命を遂行する上でもっとも効率的かつ効果的な方法論であろうと考えています。今後の私たちの投資パフォーマンスに是非ご期待頂ければと思っています」

音楽にたとえると、IPOはクラシック、ICOはロック

ICOという新しい仕組みについて日本テクノロジーベンチャーパートナーズの村口和孝氏のコメントが興味深い。かなり長いコメントだが、あまりに面白いので以下に全文を引用しよう(改段落はTechCrunch Japan編集部による)。村口氏は日本の独立系VCの草分け的存在として、日本のVCの間では最も尊敬されている人物の1人だ。

「NTVPではこれまでDeNAなど日本のスタートアップ企業に対して株式を使って、投資を長期で実現して、発展を支援してきました。音楽でいえばクラシック音楽です。20世紀の株式による資本を増加する方法であるVC投資とIPOに対し、ICOは、ロックの登場です」

「ICOは21世紀のフィンテック時代における、事業実現に向けての新しい実に有効な資本調達手段だと考えています。NTVPはこれまでの株式のガバナンスを有効な支援方法とする方法に対し、ICOではトークン市場での会社発展エコシステムにトークンホルダーとしてVCとして事業発展に関与します。そこでは、NTVPは、トークンをいかに保有し、いかにトークン発行会社のICOで実現しようとしている事業ビジョンの実現を支援するかが、ICOに関与するVCとしての役割になるでしょう。もちろん、NTVPでは、従来のIPOを狙うスタートアップ企業に対するクラシック株式投資も継続しますし、それがすべてICOのエレキギターによるロックに置き換わる訳ではありません」

「21世紀はIPOクラシックとICOロックと2つのエコシステムが互いに協調しながら経済社会のフロンティア領域において、新しい経済のスターを生み出す2つのエンジンになる日が近いと考えています。ロックが最初不良の音楽とみなされたように、社会が受け入れるには十年くらいかかるかもしれませんが、ICOからエルビスプレスリーやビートルズ、さらにはマイケルジャクソンが誕生する日も近いとNTVPでは考えています」

ICOとは何なのかということについては、『FinTechの法律』(日経BP、2016)などの共著書がある増島雅和弁護士(森・濱田松本法律事務所)が7月に発表したスライドが現状のサマリーとして参考になるので、以下、一読をオススメしたい。増島氏はテックビューロのリーガルアドバイザーも務めている。

テックビューロが開発を進めるCOMSAは、複数のブロックチェーン間のゲートウェイとなるプラットフォームだ。テックビューロ創業者で代表取締役の朝山貴生氏はTechCrunch Japanの取材のなかで、その狙いを「プライベートチェーンとパブリックチェーンの境目をなくすのが目標」と語る。

ここでパブリックチェーンと言っているのは、NEM、Ethereum、Bitcoinのブロックチェーンのこと。プライベートチェーンといってるのは個々の企業が使用するmijinのブロックチェーンのことだ。境目をなくすと言うときカギとなるのは異なるチェーン上の価値を交換可能とする「ペッグ」という手法だ。

「COMSA CORE」と呼ぶクラウド上の9台のサーバーで稼働するmijinノードで稼働するブロックチェーンがパブリックブロックチェーン同士をペッグし、「COMSA HUB」というmijinのプラグインがそれらパブリックブロックチェーンと内部勘定のプライベートなブロックチェーンをペッグする。

COMSAでペッグさせるのは、既存仮想通貨や、新規発行するICOトークンと仮想通貨などの組み合わせがある。さらに法定通貨(円や米ドル)とペッグさせることも視野に入っている、という。法定通貨とのペッグは、直接的なやり方ではなく、法定通貨とペッグした仮想通貨(TetherやZEN)を使うことで行う。法定通貨の裏付けを持ったサービス提供主体がプライベートチェーンを運用し、これをパブリックチェーンにペッグすることで、円やドルと等価のトークンを仮想的にパブリックなNEMやEthereumのブロックチェーンで扱えるようになる。このことは、パブリックチェーン上で商取引が可能になることを意味している。テックビューロの朝山氏は「実経済の資金がさらにブロックチェーン上に乗って、潤滑油になってエコシステムが回りだす」と話している。

COMSAで扱うICO案件については、COMSA自体のICOのほか、2号案件として11月中旬に東証二部上場企業のプレミアムウォーターホールディングス、3号案件として11月下旬にCAMPFIREを予定している。取り扱うICO案件について朝山氏は「10社に9社はお断りしている状況」と話していて、引き合いが多いものの採用基準自体は厳し目にしているそうだ。

CAMPFIREが仮想通貨取引所「FIREX」を開設、ビットコインでプロジェクトを支援

1月にソーシャルレンディング事業への参入を明らかにしていたクラウドファンディングサービス「CAMPFIRE」運営のCAMPFIREが3月27日、仮想通貨取引所「FIREX(ファイヤーエックス)」を開設した。

CAMPFIREはFIREXの開設について、個人がより気軽に少額からクラウドファンディングに参加できる環境を整備することが目的、としている。FIREXは、ブロックチェーン技術「mijin」と仮想通貨取引所「Zaif」を提供するテックビューロの仮想通貨システムのOEM版としてスタート。現時点では、ビットコインと日本円の取引が可能で、今後、CAMPFIRE独自のトークン「CAMPFIRE COIN(仮称)」などの取引も計画されている。クラウドファンディングサービスの決済手段として仮想通貨を利用できるようにするほか、プロジェクト支援時の送金手数料の負担削減やプロジェクト実行者への送金スピードの改善など、クラウドファンディングと仮想通貨をつなぐことでメリットを出す機能追加を検討している。

また、レンディング事業を行うことを前提に第二種金融商品取引業登録及び貸金業登録を進め、2017年夏にはソーシャルレンディングサービスの開始を予定。仮想通貨のトークン発行・流通などの技術面、法律面を網羅した活用や、仮想通貨を使ったファンディングやトークンの発行支援なども行っていくという。

1月のTechCrunch Japanの取材に対し、レンディング事業への参入について「お金をよりなめらかに流通させることが目的」と話していたCAMPFIRE代表取締役の家入一真氏は、今回のFIREX開設に寄せて、こうリリースでコメントしている。

“FinTechの本質とは何か。あらゆる金融サービスの体験、貨幣や流通のトランザクションを身近にするものかもしれません。
(中略)
従来のクラウドファンディングでの支援体験や、2017年夏のリリースを予定している動画ストリーミングサービスでの仮想通貨を使った支援体験など、今後、様々なサービスを予定しています。道なき未知を体験すること、それこそがFinTechなのかもしれません。”

ブロックチェーン技術の研究開発や導入検討は広がっているが、技術的検証には企業間の提携が前提となることが多く、実用に向けた開発例はまだ多くないとされる。CAMPFIREでは「既存事業との相乗効果を目的としクラウドファンディング業界の仮想通貨取引所の開設を行うことで、ユースケースの開発・実現による“資金調達の民主化”を目指す」としている。

CAMPFIREによれば「将来的にはFIREX運営により蓄積したノウハウを元に、今回OEM提供を受けたものとは異なる独自のサービスも展開していきたい」ということだが、その提供時期などについては未定、とのことだった。