NYのトップホテルMint House、新型コロナの影響でそのおもてなしビジネスに変化

ニューヨーク市内の一流ホテルはどこであろう?TripAdvisor(トリップアドバイザー)ユーザーによると、それは Mint House at 70 Pine(ミントハウスアット70パイン)だ。写真を見てみるとその理由は明らかだ。ニューヨーク市内のホテルの部屋は基本的には、必要なすべてのものがコンパクトに収まったお弁当箱のようなものだが、Mint Houseの客室は違う。Mint Houseの客室はまるでマンションの部屋のようであり、旅行者はそれに注目している。

新型コロナのパンデミックにより、Mint Houseの業務形態が変わったが、各国で経済再開が始まる中、同社は出張者と観光客を迎え入れる状態にある。

Mint Houseは2017年に創業し、サービスを拡大しながら2019年には1500万ドル(約16憶円)の資金を得た。当時、Revolution Venture(レボリューションベンチャー)の管理パートナーでMint Houseの投資家であるTige Savage(タイグ・サベージ)氏は同社について「Mint Houseはホテルの良いところとAirbnb(エアビーアンドビー)の良いところだけを併せ持つ最高のホテルだ」と説明した。

同社は従来のホテルとは異なり、Airbnbで借りられる部屋のような客室を提供しているが、ホテルのようなサービスも提供しているのだ。Lyric(リリック)と呼ばれる別の企業も同様のサービスを提供しようとし、最終的に廃業する前に 1億5000万ドル(約164億円)調達していた

Mint Houseはそもそもセカンダリーマーケット(訳者注:ニューヨーク市以外)の出張者をターゲットにしていた。新型コロナが流行する前は主にインディアナポリス、デンバー、ナッシュビル、マイアミ、デトロイトで部屋を提供していた。Mint HouseのCEO Will Lucas(ウィル・ルーカス)氏は当時、こうした市場は、主な市場よりも宿泊状況が悪い場合が多いため、機会があったと説明した。

コロナ禍により、Mint Houseの軌道に変化があった、とルーカス氏はTechCrunchのインタビューで語った。パンデミックになったばかりのころ、サービス業は落ち込んだ。Mint Houseでも利用率が60%から一桁台に落ち込み、顧客への返金に応じて、従業員を一時解雇する必要があった。だが新しい営業チームメンバーを通じて徐々にMint Houseの提供するサービスがパンデミックに適していることがわかった。職場に行けなくなった人々は住む場所と仕事をする場所が必要だったのだ。出張する医療専門家には、第2の我が家が必要になった。一部の大学生は学生寮から追い出されても、授業には出席しなければならなかった。Mint Houseのマンションの一室のような客室は、キッチンといえばコーヒーメーカーと小さな冷蔵庫だけといった従来のホテルの客室と比べて、魅力的なものであった。Mint Houseの客室には、キッチンとリビング、そして最近需要が高まっている仕事スペースが付いているのだ。

パンデミックの状況に慣れてくると、Mint Houseでは宿泊数に大きな変化が見られた。コロナ禍になる前の平均宿泊数は4泊だったが、コロナ禍における平均宿泊数は21泊であった。これは宿泊者のニーズが変わったためだ。会議のために飛ぶ代わりに、長期的にリモートで働く場所が必要とされていた。パンデミックの真っただ中では、宿泊客の81%がリモートワーカーであった。

Mint Houseの主な特徴は、ソーシャルディスタンスを実践するためのようにも見えるが、これはパンデミックの前から採用されていたものだ。宿泊客はフロントデスクでチェックインをする必要がなく、カードキーもない。また食品等を注文して、到着前に部屋に運んでもらうようにできる。このサービスはビジネス旅行者用のホテル以外ではほとんど見かけることはないが、今や観光旅行者にも需要がある。またすべてのロケーションでカスタマーサービスが一元化されている。

2020年はサービス業のほとんどが弱っていたが、Mint Houseはすばらしい成長を遂げていた。パンデミックが始まってから数カ月後、Mint Houseの利用率は新記録を達成した。6月までには、客室の84%が予約で埋まり、2020年はその後も平均して80%以上の利用率を保った。また2020年後半にはポートフォリオを50%以上倍増し、成長した。

パンデミックのどん底からおよそ1年経った現在、Mint Houseは13の市場で24棟のホテルを展開している。

同社はニューヨーク市内では大手と競合しているとCEOのルーカス氏は言及した。

「ニューヨーク市内では2021年、平均して2.2倍のRevPAR(販売可能客室売り上げ)を上げている」と同氏。「当社のCompSet(競合社、この場合は競合ホテル)は、2つのThompson(トンプソン)ホテル、3つのMarriott(マリオット)ホテルとHilton(ヒルトン)ホテルなど、非常に手ごわい大手ホテルだ。当社は利用率ナンバーワン、ADR(平均販売価格)ナンバーワンで、総合してもCompSetを上回っている」。

ルーカス氏は、これらのランキングはMint Houseの強みと従来のホテルブランドからの差別化を示していると確信しているが、さらなる成長のために老舗ホテルブランドからエグゼクティブを迎え入れた。

Mint Houseは最近、新しく数名のエグゼクティブが加わったことを発表した。Domio(ドミノ)、Hilton(ヒルトン)、MGM Hospitality(MGMホスピタリティー)、Marriott(マリオット)で働いていたJim Mrha(ジム・マルハ)氏をMint HouseのCFOとして迎え入れ、TPG Hotels & Resorts(TPGホテルズ&リゾーツ)とStarwood(スターウッド)の元投資担当者兼エグゼクティブのPaul Sacco(ポール・サッコ)氏は最高開発責任者(CDO)として加わった。また、トラベルeコマーススタートアップPorter & Sail(ポーター&セイル)のエグゼクティブであったJess Berkin(ジェス・バーキン)氏は新しくマーケティングおよび通信のエグゼクティブに就任した。

「当社はこれから本当に猛進すると思う」とルーカス氏は自慢げに語った。

世界が再開へと進む中、Mint Houseはアグレッシブな成長戦略に取り組もうとしている。同社は販売可能客室数を倍増し、1カ月以内のロンドンへの進出から初め、最終的には南米まで、全国に進出することを考えている。

2021年も半分を過ぎ、パンデミックも落ち着く中で旅行が再び変化し始めている。Mint Houseの平均宿泊数は2020年の21泊から6泊程度に下がっている。ルーカス氏によると、これは観光旅行者が増加しており、短期出張も戻っている。そしてホームオフィスから離れて、マイアミなどの新しい場所でリモートワークをする新しいタイプのビジネス旅行者もいる。

Mint Houseはホテルと、Airbnbが提供するような短期レンタルの中間に位置付けられる。ホテルが提供する利便性と信頼を提供しながら、短期レンタルのスタイルと心地よさも提供するのだ。同社がその計画を遂行できるのであれば. 最近行ったエグゼクティブの雇用が役に立つはずで、ニューヨーク市内、そして全米ならびに世界でHiltonやMarriottと十分に渡り合っていける。

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カテゴリー:その他
タグ:ニューヨークホテル新型コロナウイルス

画像クレジット:Mint House

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(文:Matt Burns、翻訳:Dragonfly)

スマホ利用の非接触チェックインが可能な宿泊施設向けaiPassでオンライン決済可能に、VeriTrans 4Gとの連携で実現

スマホ利用の非接触チェックインが可能な宿泊施設向けシステム「aiPass」がオンライン決済可能に、「VeriTrans 4G」との連携で実現

スマートチェックインなどで宿泊施設のDX化を支援するスマートオペレーションサービス「aiPass」(アイパス)を提供するCUICIN(クイッキン)は5月25日、デジタルガレージ・ファイナンシャルテクノロジー(DGFT)の総合決済サービス「VeriTrans 4G」と連携し、aiPassでのオンライン決済を可能にするサービスの提供開始を発表した。

DGFTは、インターネット関連の決済・マーケティング・投資などを行うデジタルガレージの子会社。CUICINは2020年、デジタルガレージが主催するインキュベータープログラム「Open Network Lab」の第20期」に参加したことから、同社より様々なサポートを受けており、VeriTrans 4Gを導入すればaiPassでのスムーズな支払いに加え、非対面・非接触の対応を可能にする宿泊施設のDX化を促進できるとの期待から、今回の提携に至った。

aiPassでは、顧客分析・混雑予測・スマートキーなど、宿泊業の「マーケティング」「ホスピタリティー」「業務効率化」に関する作業のデジタル化をプラグインの形で提供し、導入業者が自由に組み合わせて使えるようにしている。新たな決済機能は、業務効率化プラグインのひとつとして追加された。

宿泊施設は、システムの改修や新たな設備の導入などを行うことなく、この決済システムを利用できるようになる。一方、宿泊客は、aiPassのユーザーアカウントにクレジット番号を登録するだけで、予約から決済までをフロントを介することなく行えるようになる。

ここで使われているVeriTrans4Gの「PayNowID」機能では、ひとつのユーザーIDを、複数のサービスに共通して使える共有IDとして設定されるため、ユーザーはひとたびクレジット番号を登録すれば、他のサービスでも簡単に決済できるようになる。

例えばホテル周辺の提携店舗を利用した際には、ホテルのチェックアウト時に宿泊代とまとめて支払いを行える。また、複数の宿泊施設を運営する業者や、オンラインと実店舗でのオムニチャンネルを展開する小売業者なども、ひとつのユーザーIDで決済が可能になるため、オンライン決済やキャッシュレス決済の導入と運用の負荷が大幅に軽減される。

現在CUICINでは、自治体などと連携し、地域の宿泊施設、飲食店、店舗で横断的に利用できるキャッシュレスサービスの展開を進めている。地域活性化を支援し、宿泊観光業のDXを加速して「価値ある旅行体験を提供」すると同社は話している。

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DGFTは、インターネット関連の決済・マーケティング・投資などを行うデジタルガレージの子会社。CUICINは2020年、デジタルガレージが主催するインキュベータープログラム「Open Network Lab」の第20期」に参加したことから、同社より様々なサポートを受けており、VeriTrans 4Gを導入すればaiPassでのスムーズな支払いに加え、非対面・非接触の対応を可能にする宿泊施設のDX化を促進できるとの期待から、今回の提携に至った。

aiPassでは、顧客分析・混雑予測・スマートキーなど、宿泊業の「マーケティング」「ホスピタリティー」「業務効率化」に関する作業のデジタル化をプラグインの形で提供し、導入業者が自由に組み合わせて使えるようにしている。新たな決済機能は、業務効率化プラグインのひとつとして追加された。

宿泊施設は、システムの改修や新たな設備の導入などを行うことなく、この決済システムを利用できるようになる。一方、宿泊客は、aiPassのユーザーアカウントにクレジット番号を登録するだけで、予約から決済までをフロントを介することなく行えるようになる。

ここで使われているVeriTrans4Gの「PayNowID」機能では、ひとつのユーザーIDを、複数のサービスに共通して使える共有IDとして設定されるため、ユーザーはひとたびクレジット番号を登録すれば、他のサービスでも簡単に決済できるようになる。

例えばホテル周辺の提携店舗を利用した際には、ホテルのチェックアウト時に宿泊代とまとめて支払いを行える。また、複数の宿泊施設を運営する業者や、オンラインと実店舗でのオムニチャンネルを展開する小売業者なども、ひとつのユーザーIDで決済が可能になるため、オンライン決済やキャッシュレス決済の導入と運用の負荷が大幅に軽減される。

現在CUICINでは、自治体などと連携し、地域の宿泊施設、飲食店、店舗で横断的に利用できるキャッシュレスサービスの展開を進めている。地域活性化を支援し、宿泊観光業のDXを加速して「価値ある旅行体験を提供」すると同社は話している。

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自然の中にあるセカンドホームに好きな時に定額で泊まれる「SANU 2nd Home」、SANUが先行申込みの受付開始

環境配慮型の宿泊施設「SANU CABIN」、人と自然の共生を

セカンドホーム・サブスクリプションサービス「SANU 2nd Home(サヌ セカンドホーム)」を運営するSANUは4月15日、初期会員の先行申込みの受け付けを始めた。会員になれば、環境配慮型の宿泊施設「SANU CABIN」に定額で好きな時に宿泊できるようになる。宿泊予約は2021年夏頃を予定し、宿泊開始は2021年秋からとなる。

自然の中で生活を営むもう1つの家「SANU 2nd Home」

候補地の1つ、白樺湖(長野)の雄大な自然

SANUは「人と自然が共生する社会の実現に寄与する」をミッションに掲げるライフスタイルブランド。自然の中に繰り返し通うことができるライフスタイルを提案していく。SANUのFounder / Brand Directorの本間貴裕氏は「SANU 2nd Homeは都市で溜まったストレスを発散して帰るといった自然を消費するスタイルではありません。海、山、川など好きな自然の中に、無理をせず定期的に足を運べるサービスです」と語る。

SANU 2nd Homeは、都市に生活拠点を持ちながらも「自然の中で生活を営むためのもう1つの家」を提供する。会員登録制で月額税込5万5000円となり、初期費用は0円とした。会員が1カ月に数泊、定期的にサービスを使う想定で、生活の大部分を過ごすサブスク型の生活拠点サービスとは異なるという。

SANUは2021年内に、5拠点でSANUキャビン計40棟を同時オープンする予定だ。2022年夏頃までには、さらに5拠点を追加して計10拠点で90棟を建てる計画で進めている。土地取得などを含めた総開発費用は約20億円に上るという。すでに着工している拠点もあるというが、その地域は公表していない。

SANU CABINを拠点に何棟か建てていく

拠点候補地は東京都心からクルマで片道約1時間半~3時間の距離で、自然が豊かな場所を選んだ。具体的には白樺湖(長野)、みなかみ(群馬)、北軽井沢(群馬)、山中湖(山梨)、河口湖(山梨)、八ヶ岳南麓(山梨)、白馬(長野)、熱海(静岡)、那須(栃木)、館山(千葉)、いすみ(千葉)、一宮(千葉)、鴨川(千葉)などとなる。1拠点に少なくて2、3棟、多ければ15棟ほどのSANU CAVINを建てていく。

また、SANUは会員専用のウェブアプリも開発した。事前に発行されたパスワードをSANU CABINのドアキーに入力するだけで、スマートチェックインができる。チェックアウトもアプリ上で完結する。この他、拠点にいくつかあるSANU CABINを、海側や山側といったように立地を選んで予約することも可能だ。自然を中心に据えたサービスだが、テクノロジーも駆使してシームレスな滞在体験を提供していく。

サステナブルな「SANU CABIN」

3.5メートルの高窓から借景を楽しむ

「SANU CABINにはこだわりました」と本間氏は自信を見せる。SANU CABINはサステナブルな建築に強みを持つ建築設計・施工のパートナー企業のADXとともに、一から独自開発した。

SANU CABINは天井高が4メートルで、室内は60平方メートルある。さらに3.5メートルの高窓から大自然の借景を楽しめるようにした。1人の会員がいれば最大4人まで、友人や家族と一緒に泊まることができる。生活に必要な冷蔵庫やキッチン、調理器具、洗濯機なども用意している。

SANU CABINの平面図

SANU CABINは国産木材やリサイクルコンクリートを使用するなど、サステナブルな建築だ。本間氏は「僕らは自然の中にお邪魔する身です。候補地ではどんな木々が植生しているのかなど、一帯をドローンで調べています。そしてどこに建物を配置したら最小限の伐採で済むのかなどを考え、自然へのダメージを最小化するように取り組んでいます」と説明する。

SANU CABINは基礎杭工法により高床式の構造になっている。地中に打ち込んだ柱6本で、地面から建物を浮かせている。これにより、直接地面にコンクリートを流すベタ基礎と比べ、コンクリート使用量を80%近く削減している。

さらに、SANU CABINの建築パーツは、プラモデルのように1つ1つ外れるようになっている。パーツをデータ化して管理することで、SANU CABINは解体して組み直すことができる。

土地の使用期限による移動や稼働率の低下などさまざまな理由で、その場所で使わなくなったとしても、SANU CABINを取り壊して廃材にはしない。新たな場所で再利用を可能にするなど、環境への配慮は特に力を入れている。

SANUのさらなる展開

SANUのメンバー、左から6番目がFounder / Brand Directorの本間貴裕氏

SANUは2019年11月に設立した。本間氏は立ち上げ当初、ホテル事業を進める考えだったが、新型コロナの影響などからホテル投資は難しいと考え、サブスク型のセカンドホームという事業にピボットした。

本間氏は「コロナ禍で人が『自然に触れたい』と考える傾向が顕著になったかもしれません。しかし、コロナ禍をきっかけにSANU 2nd Homeを作ったわけではありません。SANUが元々構想していた『Live with nature』という考えが後押しされたかたちです」と語った。

SANUがセカンドホーム事業を発表したのは2020年7月、翌月の8月には累計1億円の資金調達を実施している。そして2021年4月までに約20億円を不動産投資用に調達し、サービスの骨子を固めて初期会員の募集を始めるなど、スピード感と規模感をもって事業を展開している。

本間氏は今後について「将来的にはホテルや住居に関するサービス展開も含めて、人と自然が共生する社会の実現を目指します。その上で、環境問題を声高に叫ぶのではなく、むしろ『自然とともに生きることは豊かで楽しくていいよね』と、前向きな姿勢で事業を拡大していきたいと考えています」と語った。

カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:Sanuサブスクリプション日本ホテルセカンドハウス

画像クレジット:Sanu

コロナ禍でも成長中の短期レンタルアパートCosiが約26億円を調達

ベルリンを拠点とし、ブティックホテルや短期滞在型管理アパートに代わる選択肢を提供するスタートアップのCosi Group(コシグループ)が、2000万ユーロ(約26億円)の新規調達を明らかにした。

ラウンドを支えたのはウィーンを拠点とするSoravia(ソラビア)。同社はドイツ語圏の国々の大手不動産グループだ。既存の投資家からCherry Ventures、e.ventures、Kreos Capital、Bremkeが参加し、また多くの個人投資家もそれに続いた。個人投資家にはFlixbus、Travelperk、ComtravoおよびCosi自身の創業者が含まれるとのことだ。

Cosiは新しい資本により欧州での国際的な拡大を加速し、新しいブランドを築き、まもなく「新しい戦略的ビジネスユニット」を立ち上げると述べている。

もともとは、上手く運営されているブティックホテルや伝統的な地元の管理アパートメントと競合する、テクノロジーを装備した、または「フルスタック」のホスピタリティサービスだと説明されていた。同社は不動産所有者と長期リース契約を締結し、アパートメントに家具を備えつけインテリアデザインエクスペリエンスをコントロールする。同社はプロセスをデジタル化し、可能な場合は自動化したと主張している。最初のコンタクトから顧客ロイヤリティまで、ゲストの旅を通してサービスの品質を拡大し維持するためだ。

CosiのCEOであるChristian Gaiser(クリスチャン・ゲイザー)氏は筆者に、このスタートアップはパンデミックの影響を緩和できただけでなく、実際に成長したと語っている。パンデミックの間に複数の国でフルロックダウンが実施されるなどして、旅行が大きく制限されたが、同社が成長できたのは、休暇の旅行や短期出張に依存しない「新しい需要チャネル」を切り開いたためだ。

「ミッドステイ」(1カ月以上滞在するゲスト)と呼ばれる例としては、ある都市に到着し、長期のアパートが見つかるまで1〜2カ月家が必要な人や、シェアアパートメントから離れる必要がある人(おそらくリスクがより少ないため、または自宅で仕事をするため)、もしくは家を建てたり改築したりしているがパンデミックのために建設の遅れに直面している家族などがある。

「このようにして90%以上の稼働率に達し、キャッシュフローがプラスのまま事業を運営することができました」とCosiのCEOは付け加えた。「私が学んだ教訓はこういうことです。ほとんどすべての需要チャネルが枯渇したとしても、コントロールできることに集中すれば多くのことができます。私たちは新しい需要チャネルを活性化しただけです」。

さらに、パンデミックは需要の好みの変化を加速させた。巨大なホテルは個人用のアパートメントスタイルの宿泊施設に比べて人気が低くなっているとゲイザー氏はいう。

一方、Cosiは「供給の大幅な増加」も目にしてきた。ホテル業界では、業績の悪いホテル物件について特に多くの買収の機会がある。また、オフィススペースの需要が大幅に縮小していることから、ミッドステイの宿泊施設として使用するためにオフィススペースから転換する提案も受けている。

「新型コロナ下における強力な業績のおかげで、私たちは不動産コミュニティの間で多くの信頼を築き、ますます多くのオファーを受け取っています」とガイザー氏はいう。「こうした要因により、都市によっては供給価格が大幅に下がることもあります」。

そのために、Cosiは現在750ユニットの契約を有しており、さらに1500ユニットについて交渉中だ。

「長期的な観点から、Cosiの成長を加速する最適なタイミングです。みんなが怖がっていたりショックを受けたりしているときに明確な計画があれば、大きな勝利を収めることができます。私たちのビジネスモデルは回復力があり、凪いだ海でも荒れた海でも船を航行させる能力があることを示したために、投資家はこの計画に賛成したのです」とCosiのCEOは語る。

カテゴリー:その他
タグ:Cosi Group資金調達ホテル

画像クレジット:COSI Group

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(文:Steve O’Hear、 翻訳:Nariko Mizoguchi

スマホ見せればチェックイン、宿泊業界のDXに新たな風をもたらすクイッキン

スマホ画面をフロントに見せるだけでチェックインが済む――。宿泊業界初の特許を取得し、非接触型のチェックインなどを可能にしたCUICIN(クイッキン)。正式なローンチから3カ月経たずに、国内大手のホテル運営会社との業務提携累計で1億円を調達するなど、事業拡大に着実に歩を進めている。辻慎太郎代表と山田真由美COOにビジネスモデルや起業までの経緯、今後の展開などについて話を聞いた。

宿泊施設には「かゆい所に手が届く」仕組み

クイッキンは宿泊施設に、非接触型のスマートチェックイン機能を提供している。宿泊施設は無償で使え、旅行者のスマホに直接、館内案内やWi-Fi情報、周辺の観光情報などを伝えることができる。

また、チェックインをベースにしたプラグイン機能(有償)を追加できるようにしている。プラグインは客室管理や予約連携など、「マーケティング・ホスピタリティ・業務効率化」の3つのカテゴリーに分かれる。人気のひとつはLINE連携だ。メールアドレスはいらず、電話番号だけで事前チェックインの案内を送ることができる。LINEと手を組み、独自開発した。

辻代表は「施設側からすれば導入ハードルが非常に低い。チェックイン機能には、宿泊施設の基幹システム(PMS)の入れ替えなどが必要ない。チェックイン機能の導入後、PMSとして使うのであれば、こちらからも施設に合ったプラグインをさらに提案できる」と説明する。

既存システムからリプレイスを段階的に促し、チェックインベースのオペレーションシステムに変革を遂げることで、宿泊施設が抱える課題の解決を図っていく。これが同社のHotelStyle OSaiPass(アイパス)」だ。さらに、エンタープライズ向けにDXコンサルやプラグインの個別開発を行うプランもある。

予約からチェックイン、情報提供、チェックアウト、運営までの多岐にわたるソリューションを一挙に提供可能。高い「応用力」が魅力の1つとなる。宿泊施設は自館に必要だと感じたプラグインだけを選び、組み合わせられる。かゆい所に手が届く仕組みだ。

現場にいたからこそ見えた課題

クイッキンは辻代表、山田COO、デザイナーの櫻井あずみ氏の共同創業。そもそも3人は前職で、ホテル運営を行うスタートアップ企業のチームメンバーだった。実際に京都や大阪などで7施設ほど宿泊施設を運営していた。

ただ、会社側からの判断でプロジェクトの中止を言い渡されてしまう。すでにアイパスの原型となるチェックインシステムができ上がっていたため、当時の経営者に相談し、スピンアウトすることを決めた。ここが転換期。クイッキンは新たに3人でスタートラインに立つことになる。

一方、山田COOは前職より以前にも宿泊施設の運営に携わっていた。接客に追われる日々のなか、チェックイン時に記入してもらった情報をシステムに1つずつ打ち込むなど、アナログな現場に疑問を抱いていた。

「旅行者はスマホで予約する。情報もスマホから得ている。それでも宿に着いてみれば、宿泊者名簿への記入や紙ベースでの案内を渡される。紙ベースである必要はあるのか」と山田COOは当時の考えを振り返った。

辻代表も実際に宿泊施設の運営をするなかで、同様の疑問を持ち、チェックインプラットフォーム開発の重要性に気がづいていた。アイパスの着想が生まれる背景には、違和感を覚えた現場での経験があった。

宿泊業界の課題「DXとデータの民主化」

さまざまな業界でDXが叫ばれるなか、宿泊業界は遅れ気味だ。宿泊施設の業務効率化を第一に考えられた運営システムは、旅行者側の「使いやすさの追求」という視点が欠けていた。特許取得のポイントとなった旅行者のスマホを活用するというクイッキンのサービスの前提が、宿泊業界では画期的なものだった。

「私たちが『DXで宿泊業を強くする』といっても、業界内では、デジタライゼーションで止まっていた。宿泊業界のDXとは、もちろんデジタル化する部分もあるが、顧客体験自体を変え、向上させていかなければならない。ここがともなわないかぎり、宿泊業界のDXは遅々としたものになってしまう」(山田COO)

辻代表は「将来を見すえて、いち早くアクションを起こしている企業はいる。成功事例が生まれれば、周囲も本当の意味でのDXの必要性に気がづくはず。我々としても成功事例を増やし、DXの機運を盛り上げていくことが重要だ」と強調する。

一方で、アナログなチェックイン方法が化石のように残っている状況には理由がある。宿泊者の情報に対し、国が定める旅館業法上の取得項目や各自治体の要件を満たさなければならないという点が1つ。加えて、OTA(オンライントラベルエージェント)らが宿泊施設側に提供する顧客情報にばらつきがあるためだ。

チェックイン時に、OTAが持つ顧客情報だけでは、各自治体の要件も異なるため、必要な部分が不足していることがある。対して宿泊施設側は、顧客から再度、必要な情報をすべて取得するというかたちを取るしかない。

辻代表は「データの民主化は重要だ。プラットフォーマーである各OTAらが持つデータをしっかりと宿泊施設側に民主化し、宿泊施設は旅行者とダイレクトにつながっていくべき」と警鐘を鳴らす。

コロナ禍におけるターニングポイント

コロナ禍で宿泊業界も大きくダメージを受けている。訪日外国人旅行者らの受け入れに力を注いでいたが、状況は一変した。国は「GoToトラベルキャンペーン」などでテコ入れをはかった。それでもコロナ禍以前に戻るまでは時間がかかる見通しだ。

他方で、宿泊業界ではある動きが生まれている。コロナ禍で客足が遠のいているタイミングで、PMSのリプレイスを考えている企業が増えているという。

山田COOは改めてPMSなどの見直しを行うなか、スマホを使った事前チェックインの認知が進んでいるとみる。現状、人が足りないほど案件の相談があるという。クイッキンにとって、コロナ禍はピンチではなくチャンスだった。

ただ、課題もある。実績の部分だ。機能に対しては一定の評価を得ているが、正式リリースから3カ月も経っておらず、導入数がまだ少ない。

「『本当に大丈夫なのか』との声に対し、いかに納得してもらうかが腕の見せどころ」と辻代表は話す。追い風はある。国内大手のホテル運営会社ソラーレ ホテルズ アンド リゾーツでは年内中に、国内50カ所すべてのホテルで、アイパスの導入予定がある。「引き続き、より多くの実績を作っていく」(辻代表)考えだ。

地域観光のハブは宿泊施設に、海外展開も視野

「宿泊施設が地域観光のハブとなり、最終的には旅行インフラそのものになるようにしたい」(辻代表)。クイッキンが目指すものは、宿泊施設の業務効率化だけではない。

決済のプラグインを2021年3月ごろに出す予定だ。クレジットカード情報をアイパスのアカウントに登録すれば、チェックアウト時、予約した飲食店、アクティビティなどの一括清算ができるようになるという。旅行者の利便性は高まるだけでなく、地域全体のさまざまな事業者を巻き込むことができれば、スマートトラベルの実現も夢ではない。

初めは宿泊施設のDX。そしてアイパスを通し、地域の宿泊施設からアクティビティやカフェ、レストラン、土産施設など数多い観光資源を有機的に組み合わせた、特色あるオリジナルプランも打ち出せるようにしていく狙いだ。

「我々の強みは宿泊者に直接リーチできる点だ。宿泊者に対して、当日券やクーポンを発行したりすれば、それぞれに誘導できる可能性がある。いわゆるジオターゲティングといったことが、宿泊施設を通して容易に行える」(辻代表)。

また、事業展開の射程は海外にまでおよぶ。アイパスは訪日外国人旅行者の利用も考慮していたため、4カ国語に対応している。海外の宿泊施設で、使い慣れた日本産のサービスを利用して宿泊できれば、旅行者にとっては大きなアドバンテージとなる。

「Making trip better for everyone.」(すべての人たちにより良い旅を提供する)をミッションに掲げるクイッキン。海外展開にも目を向ける辻代表、山田COOの表情は明るい。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:ホテルクイッキン