催眠術で健康に、Mindset Healthの主張に投資家が1.2億円を賭ける

Chris(クリス)とAlex(アレックス)のNaoumidis(ナオウミディス)兄弟は、洋服販売の世界から催眠療法にやってきた。

2019年に、ニューヨーク・タイムズが伝えたところによると、2人はもともと女性向けのP2P(ピアツーピア)方式のドレスシェアリングアプリでスタートアップ起業家の道を歩み始めた。オーストラリア生まれの兄弟は、スタートアップの世界で成功する能力に自信が持てずに気落ちしていたのだが、アプリがうまくいかなくなったとき、父親から催眠療法を試すよう勧められた。

その治療を受けたのをきかっけに、兄弟はMindset Health(マインドセット・ヘルス)を創設し、Fifty Years、YC、Gelt VC、Giant Leap VCさらに米国とオーストラリアのエンジェル投資家たちから110万ドル(約1億1800万円)の資金を調達した。

2019年12月にクローズしたこのラウンドは、小規模ながら数多くの投資家が参加しているわけだが、それは近年の精神的健康への投資家たちの関心の高まりを表している。

現代社会での生活に付きものともいえる精神障害の治療アプリは、この市場に大量に出回っている。セラピストとのマッチングをしてくれる企業もあれば、認知行動療養などの形で心の健康を支えるツールを提供する企業もある。マインドフルネスや瞑想を指導してくれる10億ドル規模の企業もあれば、催眠療法を提供する企業もある。

アレックスたちは、兄弟で受けた催眠療法からヒントを得た。「瞑想のようにできないだろうか。それを人々の役に立つ形で市場に送り込めないだろうか」とアレックス・ナオウミディス氏は私に話してくれた。

瞑想は数百万ドル(数億円)規模のビジネスだ。Calm(カーム)やHeadspace(ヘッドスペース)といったアプリは、何百万ドルものベンチャー投資をかき集め、数十億ドルの評価額を得ている。

アレックス・ナオウミディス氏は、彼らのアプリは治療用ではないと強調する。現在の規制では治療用として宣伝することができないのだ。「むしろ、自己管理ツールのようなものです」と彼はいう。「不安や『過敏性腸症候群』を持つ人たちが、家庭でそれらの症状を管理できるよう手助けして、治療努力を補完するのです」。

目標は、さまざまな症状に対処できる数多くのアプリをMindsetの傘下に揃えることだと、アレックス・ナオウミディス氏はいう。最初は、ごく標準的なメンタルウェルネスアプリとしてスタートしたが、今ではその汎用的なメンタルウェルネスMindsetツールキットに、過敏性腸症候群(IBS)に特化した製品であるNerva(ナーバ)も加わった。

Nervaのサブスクリプションは安くはない。99ドル(約1060円)の前払い金に加えて、3カ月のサブスクリプション料金として88ドル(約9400円)かかる。Mindsetのサブスクリプション料金は、ニューヨーク・タイムズの記者Nellie Bowles(ネリー・ボウルズ)氏が初めてこの製品を試したときは64ドル(約6850円)だったが、新型コロナウイルス(COVID-19)の流行期間中の価格として、今は11ドル(約1180円)に値下げされている。

バウルズ氏は、こう伝えている。

最初のステップとして、アプリは友だちにメールかTwitterで「自分自身に打ち勝った者は最強の戦士である」という格言を伝えるよう私に進言する。次の19分間は、優しい男性の声で、私の心はスローダウンできると聞かされる。それにより不安は決意に変換される。この行程は日常の習慣にもなる。そうなれば、私は行動的な人間になれる。行動的な人間だ。

私は他にも生産性の向上のモジュールも試した。こちらは、はつらつとした若者の声だ。イケイケな感じで私の耳の中で、「私は自分に、自分が何になりたいか、何をしたいかを知ることと、そしてそれを効率的にやることの許可を与えた」という彼の言葉を繰り返すよう言ってくる。

こうした精神的健康のためのアプリは(どんなアプリもサプリも事業も同じだが)、その健康上の効能を裏付けるためには臨床研究が必要になる。Mindsetの製品開発にも医師が参加している。最初のMindsetアプリは、Michael Japko(マイケル・ジャプコ)博士との共同開発であり、IBSアプリはSimone Peters(シモーヌ・ピータース)博士とともに制作された。

どちらの博士も、治療コース開発の代償として同社から分配収益を受け取ることになっている。

共同創設者の1人は、彼らはこのサービスが成功をもたらすと非科学的に信じているのだと話す。プログラムの始めと終わりに、利用者は自分の症状を自己申告するのだが、プログラム修了者のうち90パーセントの人の症状が軽減されたという(登録者の中のどれだけの人が修了したかは不明)。

「私たちの考えは、このようなすばらしいプログラムを開発した研究者を助けて、デジタルで提供するということです」とアレックス・ナオウミディス氏はいう。「より使いやすくするために、私たちは世界でも有数の研究者たちと協力してきました」。

画像クレジット:Scar1984 / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

子供向け睡眠・マインドフルネスアプリのMoshiが約13億円を調達

「子供が起きていたら、あなたも起きていることになる」。Moshiの創業者でCEOのIan Chambers(イアン・チェインバーズ)氏はそう語る。

大人の間ではマインドフルアプリの人気が高まっているが、Moshiはマインドフルネスと瞑想のテクニックを子供に利用してもらうためのアプリだ。米国時間4月21日、MoshiはAccelが主導したシリーズBで1200万ドル(約13億円)を調達したと発表した。このラウンドには、LocalGlobeの姉妹ファンドでシリーズB以降を支援するLatitude VenturesTriplepoint Capital、MTVのCEOだったBill Roedy(ビル・ローディ)氏も参加した。

今回の資金調達に伴い、Latitude VentureのJulia Hawkins(ジュリア・ホーキンス)氏がMoshiの取締役になった。

Moshiはもともと、Calmの創業者でCEOのMichael Acton Smith(マイケル・アクトン・スミス)氏が創業したMind Candyから生まれた。同氏はMoshi Monstersという子供向けオンラインエンターテインメントプラットフォームを作った人物だ。2015年に同氏はCalmを創業するためにMind CandyのCEOを辞め、チェインバーズ氏が後任となった。その後、2017年にMoshiを開発、公開し、Mind CandyはMoshiとリブランドした。

Moshiは子供が眠れるようにするアプリだ。このアプリでは150種類近くのオリジナルコンテンツを提供している。このうち80種類は、同社がオリジナルで制作した30分間の寝かしつけ用物語だ。オリジナルコンテンツ制作を指揮しているのは最高制作責任者のSteve Cleverley(スティーブ・クレバリー)氏だ。同氏はMoshi Monstersが英国アカデミー賞を受賞したときの作家で、アプリ内コンテンツの著作、作曲、制作を担当している。

Moshiの寝かしつけ用物語は、すべて同じような構成になっている。ナレーション、歌、そしてBGMだ。物語は細部にまで配慮して丁寧に作られている。例えばこのアプリで最も人気のある物語のひとつ「Mr. Snoodle’s Twilight Train」では、物語全体にわたってバックグラウンドに「シュッシュッポッポ」と汽車の音が流れている。子供を安らかな眠りに導くために、この効果音は子供の安静時の平均心拍数と同じテンポになっている。

またMoshiは、このプロジェクトに有名人の協力を得ている。女優のGoldie Hawn(ゴールディ・ホーン)や俳優のSir Patrick Stewart(パトリック・スチュワート)がナレーションを担当しているほか、声優も参加している。

このアプリでは、保護者がオリジナルのプレイリストを作ったり、「慌ただしい心に」などテーマごとのプレイリストを選んだりすることができる。

Moshiには睡眠だけでなく、休憩のときや不安を感じたときなど、1日中使えるマインドフルネスのコンテンツもある。

Moshiは最初の1週間は無料で試用でき、その後は年額40ドル(アップルの日本のApp Storeでは3700円)のサブスクリプションがある。6種類のコンテンツは誰でも無料で利用できる。

サブスクリプション利用者は10万人を超え、物語は8500万回再生された。チェインバーズ氏はTechCrunchに対し、全ストーリーの70%が完成していると述べた。

Moshiは今回調達した資金で、睡眠関連の専門家や科学者と協力して新しい機能やコンテンツを開発する計画だ。また、マーケティングや広告、提携により、さらなるユーザー獲得も目指す。

「朝、私が目覚める理由は、決まり文句のように聞こえるかもしれないが、フィードバックだ。フィードバックは、家族の生活を向上させ健康と幸福に良い影響を与えるために我々がどのように役立っているかを語るヒューマンストーリーだ。それが我々の心をかきたてる」と同氏。

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(翻訳:Kaori Koyama)

不安緩和のためマインドフルネスを無償で提供する瞑想アプリ

いったいこの先、どれくらいこの「15 days」が続くのかはわからない。率直に言えば、今日が何曜日なのかも曖昧な感じだ。現実と社会を把握する力を皆が失い、それに対処するためのテクノロジーに徐々に向かって行く中でたくさんの瞑想アプリケーションが、屋内避難を続ける人びとの心を落ち着かせるために、無料のコンテンツ提供を始めている。

Headspace(ヘッドスペース)はそのようなプランを提供した最初の企業の1つだ。この人気アプリは、そのプレミアムプランを、パンデミックの中最前線で活動し、最も苦しい仕事で気持ちが疲れ果てている「公共の場で働く全米の医療従事者たち」に感謝の証として無料で開放することを発表した。

要件を満たす関係者は、サービスサイト上で自身のNational Provider Identifier(NPI、米国の医療機関識別子)と電子メールアドレスを入力することによって、2020年の終わりまでのHeadspace Plusへの無料アクセス権を得ることができる。

米国時間3月18日午前にはSimple Habitが、「パンデミックの影響を受け、支払いが不可能になってしまったメンバー全て」に対して無料プレミアムメンバーシップを発表した。該当するひとは、help [at] simplehabit.comに電子メールを送り、パンデミックによって財政状態が不安定になっていることを申し出るだけで良い。このアクセスには、4月末までの無料の瞑想コレクションも含まれている。

CalmのCEOであるMichael Acton Smith(マイケル・アクトン・スミス)氏は、TechCrunchに対して、同社は現在緊張したコミュニティを助けられる方法を模索していると語った。その一方で、同社は多くの瞑想サービスを現在ユーザーに無償で開放している。

多くのヨガスタジオとエクササイズアプリケーションが、自宅にいる人のために類似のサービスを提供している。

画像クレジット:Sensor Tower

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(翻訳:sako)

瞑想アプリでは不十分だった不安症に苦しむ人のためのCalmer You

瞑想とマインドフルネスのアプリがブームを呼んでいる。2019年にはトップ10までの瞑想アプリが1億9500万ドル(約204億円)を稼ぎ出した。これは前年比52パーセントの増加だ。そして今、売り上げトップの瞑想アプリHeadspaceの元研究主任Nick Begley(ニック・ベグリー)氏が、マインドフルネスを超えて、不安症で苦しむ人たちに焦点を当てた新しいアプリを立ち上げた。Calmer You(カーマー・ユー)という名のアプリは、瞑想の指導だけでなく、日記、認知行動療法のコースワーク、その他の身体と心の健康のためのコンテンツを組み合わせたアクティビティを提供する。

身体と心の健康のためのコンテンツには、フィットネス動画、眠れる話、有名人や心を揺さぶる人たちへの不安体験に関するインタビューなど、いろいろなものがある。

ベグリー氏はHeadspaceに2年間在籍していたが、そこで瞑想アプリが自己啓発を導きだす力の大きさを学んだと話している。

「それをマインドフルネスだけに限定する手はないと気づきました」とベグリー氏は、Calmer Youを始めた経緯に関連して語った。「世の中には優れた助言がたくさんありますが、自分を改革したいと望む人のほとんどが、動画を見たり本を読んだりと、単に受け身で消化しているだけです。それでは、そこで謳われている変化は起きません」とベグリー氏。

問題は、助言が悪いのではない。大抵の助言は優れている。そうではなく、その助言を行動に移すのが難しいのだとベグリー氏は言う。そこを手助けしてくれるのがCalmer Youだ。

アプリは、いくつかのパートで構成されており、段階的なガイドによって不安に対する理解を深め、不安の対処法を学べる28のセッションからなるコースもある。それには認知行動療法、マインドフルネス、自己への思いやりを強める療法(CFT)、分析手法など数多くのコンテンツが含まれている。また、今の気分や、自分が置かれるであろう状況をもとに推奨されるすぐに実践できる対処法を50種類以上収めたツールキットもある。さらに、日々の気分を記録するための日記もある。

1カ月の利用料は7.99ドル(約840円)、年間利用料は47.99ドル(約5020円)。

「Headspaceの穴を埋めるというのは、私たちが特別に意図していたことではありません。ユーザーがそう言い出したのです」とベグリー氏。「定期的に瞑想を行うのが難しいと感じている人が大勢いるため、私たちは不安を抱える人たちのためのツールと実践的対処法を、マインドフルネスに加えて提供したいと考えました。不安と不安から現れるさまざまな問題への対処を専門に助ける総合的なアプローチを提供する、最高品質のアプリ使用体験を届けたいのです」と彼は話した。

Calmer Youは、不安症の専門家であり作家のChloe Brotheridge(クロエ・ブラザリッジ)氏との協力で開発された。アプリの名前は、ブラザリッジ氏の著書「The Anxiety Solution: A Quieter Mind, a Calmer You(不安解消:より静かな心、より穏やかなあなた)」に由来する。開発チームはブラザリッジ氏の本をよく読んでいて、その実用的なアドバイスをもとにアプリを共同開発する気はないかと彼女に持ちかけた。

Calmer Youの親会社PSYTが掲げる目標には、こんなものがある。「自己啓発本をアプリにする

PSYT傘下のCalmer Youチームには、心理学者も加わっている。だが、アプリ自体はまだ、例えば無作為対照下試験などによる有効性の検証がされていない。ゆくゆくは行いたいという考えを彼らは示している。

Calmer Youは、ブラザリッジ氏の著書が特に若い女性を対象にしていることもあり、女性利用者にシフトしている。

「振り返ればずっと、私は不安に苦しみ、自分に最も効果のある運動を続けていました」とブラザリッジ氏。「そのためセラピストである私は、マインドフルネスだけでなく、その人にいちばん合った方法を自分で探せるように、いろいろな技術を教えています。アプリにいくつものアプローチを組み込むのは大変な作業でしたが、これがその人とその状況に最も有効な対策を見つけられるよう人々を後押しする上で、大変に重要なのだと私は考えています」と彼女は言う。

このアプリは2019年11月にベータテストを開始したが、それ以来、利用者の要望に応じてツールを追加してきた。「リバランス」ツールが2つ(1つは社会的不安を和らげるもの、もう1つは自信を持ってコミュニケーションできるようにするもの)と、夜に使用する不安日記を新しく加わえ、瞑想の指導コースと眠れる話の数も増やした。

重い不安症を抱える人の場合、このアプリは医師の治療代わりにはならないが、すでにHeadspaceなどの瞑想アプリを使っていて、常に不安を感じている人なら、普段から使うツールに加えておいてもいいだろう。

Calmer YouはiOS版が無料でダウンロードできるが、有料コースもある。

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(翻訳:金井哲夫)