身元確認、マネーロンダリング、詐欺の検知ツールを開発する英ThirdFortが22.7億円調達

英国では最近、マネーロンダリング(資金洗浄)が話題だ。同国は圧力に直面している。国内の一等地の不動産のような、巨額の資産に費やされた資金の出所を追跡するために規則を厳格にするだけでなく、ここ数週間のロシアへの制裁を受け、そうした規則を実際に適用すべきだという圧力だ。この国の首都は一部で「ロンドンの洗濯屋」と呼ばれている。

ロンドンのスタートアップThirdfort(サードフォート)が現地時間3月7日、1500万ポンド(約22億7000万円)の資金調達を発表した。同社は、プロフェッショナルサービス企業がより徹底したデューデリジェンスを行い、不審な点があれば警告できるようなプラットフォームを開発している。

今回の資金調達はシリーズAでBreegaがリードし、B2Bフィンテックに特化したElement Venturesの他、ComplyAdvantage、Tessian、Fenergo、R3、Funding Circle、Fidelの創業者らも出資した。

社長のOlly Thornton-Berry(オリー・ソーントン・ベリー)氏によると、同氏とJack Bidgood(ジャック・ビッドグッド)氏がThirdfortのアイデアを思いついたのは、友人がロンドンでアパートを購入する際にフィッシング攻撃を受けて2万5000ポンド(約380万円)を失ったことがきっかけだった。詐欺師が取引に関するデータを入手し、友人が購入手続きに使っていた法律事務所と似たようなドメインを作成し、友人の弁護士になりすまし、リンクを介して金額を送金するよう求めるメールを送ってきた。数週間後、その友人は同じ金額を、今度は本物の弁護士から要求されたため、皆は不正を疑い始めた。その友人がお金を取り戻すことはなかった。

ソーントン・ベリー氏は、この事件が、顧客が取引に入る前に専門サービス企業が要求する情報がいかに少なく、より巧妙な詐欺の試みに対して顧客がいかに保護されていないかを浮き彫りにしたと話す。

これがThirdfortという姿で結実した。同社は、LexisNexis、ComplyAdvantage、Companies Houseなど複数のリソースのビッグデータツールキットを提供する。ツールキットによって、複数のリソースを比べ(顧客が選び)、個人とその資金源に関するさまざまなデータポイントを提供できる。同社は、法律と不動産市場の企業のニーズに対応するツールをまず開発した。

現在の製品は2つの部分がある。まず、法人顧客向けに開発された「リスクエンジン」があり、これはKYC(know your customer)チェックだけでなく、企業がマネーロンダリング防止規制に準拠するためにも使用することができる。法律事務所のDAC Beachcroft、Penningtons Manches Cooper、Mishcon de Reya、不動産業のKnight Frank、Strutt & Parker、Winkworthなど、すでに約700社がこのプラットフォームを利用している。

第2に、そうした企業の消費者顧客向けに作られたアプリがある。このアプリは、オープンバンキングのインフラを利用して作られており、銀行自身の銀行アプリを経由して、企業と顧客の銀行を接続し、安全な方法で取引の決済を行うことができる。このアプリは、これまで約50万回ダウンロードされた。

米国のAlloy(この会社とThirdfortのどちらかが、もう片方の市場に参入すると、AlloyはThirdfortの競争相手となる)と同様、Thirdfortの売り文句はこうだ。しっかりやろうとすれば、本人確認や資金源調査にはもっと時間がかかり、多くは手作業になり、金もかかるというものだ。というのも、残念なことに、企業にとっては多くの場合、できるだけ早く取引を成立させることだけが利益となるからだ。そのため、資金が実際に届いたかどうかを確認する以上の徹底したデリジェンスを実行する意欲が失われてしまう。これが、決められたプロセスをきちんと実行させるための規制が重要となる理由の1つだ。

英国では長年にわたり規制強化が検討され、何度も押し戻されてきたが、世界情勢や世間の監視の目が厳しくなり、時代は変化しつつあるようだ。つまり、企業はより多くの業務をこなさなければならなくなり、Thirdfortのような企業にはチャンスとなる。

以前は、身元(ID)チェックは、大規模なIDデータベースのうちの1つを選択し、そのデータと一致することを確認していたが、ごまかすことは可能だった。また、銀行取引明細書が必要な場合、専門サービス会社にはファックスやPDFで送れば済んだが、偽物はオンラインで簡単に入手することができる(ここにサイトのリンクを貼ることはしない)。

「今、求められているのは、もっと多くのことです」とソーントン・ベリー氏は話す。「銀行から入手した明細で入出金の動きを見たり、顧客に具体的な質問をしたり、贈与された金額が明記されている場合には、それを精査をしたりと、徹底したデューデリジェンスを行う必要があるのです。AML(マネーロンダリング対策)の要求水準が高くなり、まったく新しい種類のワークフローが誕生しつつあります」。

Thirdfortは現在、主に詐欺の発見に焦点を当てているが(顧客の関わる約12件の疑わしい取引を止めることができたとソーントン・バリー氏はいう)、それはまた、AMLディリジェンスとコンプライアンス規制のために開発されたものでもある。もっと広く利用されれば、特に国際的な資金が絡む大きな取引で本領発揮する可能性がある。

「消費者とプロフェッショナルサービス双方にとって、詐欺のリスクとコンプライアンスの必要性は大きな負担となっています」とBreegaのプリンシパルであるMaxence Drummond(マクセンス・ドラモンド)氏はいう。「消費者は取引のたびに認証を受ける必要があり、規制を順守するプロフェッショナルらは顧客の確認とコンプライアンスに貴重な時間を費やしすぎているからです」。

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

米司法省がハッキングで盗まれた約4160億円相当のビットコインを押収、ロンダリングの疑いで技術系スタートアップ関係者夫婦を逮捕

米司法省は、2016年に暗号資産取引所のBitfinex(ビットフィネックス)がハッキングされて盗まれたと見られる9万4000以上のBitcoin(ビットコイン)を押収し、その盗み出した資金をロンダリングした疑いのある夫婦を逮捕したと発表した。この夫婦、Ilya Lichtenstein(イリヤ・リヒテンシュタイン、34歳)とHeather Morgan(ヘザー・モーガン、31歳)の両容疑者は、資金洗浄と米国政府への詐欺を共謀した罪に問われており、有罪判決を受けた場合、最高25年の懲役刑が科せられる。2人は米国時間2月8日の午後、マンハッタンの連邦裁判所に出廷を命じられていた。

今回押収された資産は、同日のビットコイン価格で36億ドル(約4160億円)相当となり、暗号資産では米司法省の歴史上で最大の金額にのぼると、同省は述べている。しかし、2016年のハッキングで奪われた資金の全額を回収したわけではない。盗まれたとされる11万9754枚のビットコインは、現在45億ドル(約5200億円)の価値がある。

モーガン容疑者とリヒテンシュタイン容疑者は、ハッキングの実行犯としては正式に起訴されていないが、検察はビットコインがリヒテンシュタイン容疑者の管理するデジタルウォレットに送られていたことから、容疑者を発見したと述べている。司法省は、ハッカーがBitfinexのシステムに侵入し、2000件以上の違法取引に着手した後、夫妻はコインを入手したと述べている。

リヒテンシュタイン容疑者とモーガン容疑者は、LinkedIn(リンクトイン)のプロフィールによると、ともに技術系スタートアップのエコシステムに深く関わっている。米国とロシアの二重国籍で「Dutch(ダッチ)」というニックネームで呼ばれるリヒテンシュタイン容疑者は、Y Combinator(Yコンビネーター)が支援するセールスソフトウェア企業のMixRank(ミックスランク)を設立した。Crunchbase(クランチベース)のデータとLinkedInによると、モーガン容疑者はB2Bセールスのスタートアップ企業であるSalesFolk(セールスフォーク)の創業者兼CEOであり、リヒテンシュタイン容疑者は2014年から同社のアドバイザーを務めている。また、プロフィールによると、リヒテンシュタイン容疑者は、ベンチャーキャピタルである500 Startups(ファイブハンドレッドスタートアップス)のメンターや、Ethereum(イーサリアム)ウォレットを提供するEndpass(エンドパス)のアドバイザーも務めており、モーガン容疑者はForbes(フォーブズ)やInc(インク)にコラムを執筆している。

盗まれたビットコインの3分の1以上は、リヒテンシュタイン容疑者のウォレットから「複雑なマネーロンダリングの過程を経て」送金された。その過程には、偽名のアカウントを作り、ビットコインをMonero(モネロ)などのより匿名性が高いデジタル通貨に変換する「チェーンホッピング」と呼ばれる手法が含まれていた。マネーロンダリングされなかった9万4000のビットコインは、ハッキングで得た収益を保管していたウォレットに残っていたため、捜査官は裁判所の許可を得た令状を使って広範囲なオンライン検索を行った結果、回収することができたという。

Bitfinexは2月8日の声明で、米国当局と協力して盗まれた資金を正当な所有者に返還することを試みると述べている。

司法省刑事局のKenneth A. Polite Jr.(ケネス・A・ポライト・ジュニア)司法次官補は、司法省の声明の中で、次のように述べている。「連邦法執行機関は本日、ブロックチェーンを通じて資金を追跡することが可能であること、そして、暗号資産がマネーロンダリングの安全な隠れ場や、金融システム内の無法地帯となることを決して許さないということを、改めて証明しました」。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Anita Ramaswamy、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

巧妙化する金融犯罪と戦うAIベースのビッグデータ分析ツール開発Quantexaが約168億円を調達

金融犯罪の巧妙化が進むにつれて、それと戦うために使用されるツールも高度化している。Quantexaは、マネーロンダリングや詐欺などの違法行為を検知して阻止するAIベースのソリューションを開発してきた興味深いスタートアップだが、このほど1億5300万ドル(約168億円)の成長ラウンドを獲得した。この資金調達は、金融分野での事業拡大の継続と、同社のツールをより広範なコンテキストに展開すること、つまりすべての顧客データとその他のデータを取り巻く点を結びつけていくことに充てられる。

「当社は金融サービスに止まらない多様化を進めており、政府機関や、ヘルスケア、電気通信、保険業界と協働しています」と創業者兼CEOのVishal Marria(ヴィシャール・マルリア)氏はインタビューで語った。「そのことは非常に大きな意義を醸成しています。より大規模なデジタル変革の一環として、市場がコンテキストに基づく意思決定インテリジェンスに取り組んできたことを考えると、その流れは必然的なものでした」。

このシリーズDでは、ロンドンに拠点を置く同スタートアップの価値は8億〜9億ドル(約880億~990億円)と評価されている。これはQuantexaが2020年、サブスクリプション収入を108%成長させたことに続くものだ。

Warburg Pincusがこのラウンドを主導し、既存の支援者であるDawn Capital、AlbionVC、Evolution Equity Partners(サイバーセキュリティ専門のVC)、HSBC、ABN AMRO Ventures、British Patient Capitalも参加した。2020年7月のシリーズCでのQuantexaの評価額は、2億〜3億ドル(約220億~330億円)の間だった。これまでの調達総額は2億4000万ドル(約264億円)になる。

マルリア氏はErnst & Youngでディレクターを務め、マネーロンダリングなどの不正行為への対策についてクライアントを支援する役割を担っていた。Quantexaは、マルリア氏がそのときに特定した市場のギャップを出発点としている。同氏が認識したのは、潜在的な詐欺、マネーロンダリングなどの違法行為に関する有意義なインサイトを迅速かつ正確に得ることができる、真に有用なシステムが市場に存在しないということだった。企業の内部情報と外部公開データの照合・解析を通じて、利用可能なデータの世界を効率的に活用する、インサイトの導出に必要なツールが整備されていなかった。

Quantexaの機械学習システムは、この課題に対して典型的なビッグデータの問題としてアプローチしている。人間が自分で解析するにはデータが多すぎるが、特定の目的のために大量のデータを処理できるAIアルゴリズムにとっては小さな仕事だ。

Quantexaのいわゆる「Contextual Decision Intelligence(コンテキストに基づく意思決定インテリジェンス)」モデル(Quantexaという名前は「quantum」と「context」を想起することを意図している)は当初、金融サービス向けに特化して開発された。リスクとコンプライアンスの評価と金融犯罪行為の特定を行うAIツールを用いて、Quantexaが有するAccenture、Deloitte、Microsoft、Googleといったパートナーとのリレーションシップを活用し、より多くのデータギャップを埋めていくものだ。

同社のソフトウェア(データではなくこのソフトウェアが企業に販売され、企業独自のデータセットに使用される)は、単一のエンゲージメントで最大600億件のレコードを処理した実績があるという。処理を経た後、ユーザーが異なるエンティティ間の関係などをよりよく理解できるように、わかりやすいグラフやその他の形式でインサイトが提示される。

マルリア氏によると、現在、同社の事業の約60%を金融サービス企業が占めており、顧客には英国とオーストラリアの銀行上位10行のうち7行、北米の金融機関上位14行のうち6行が含まれているという。(このリストには、戦略的な支援を行うHSBCの他、Standard Chartered BankとDanske Bankも名を連ねている)。

しかし同時に、Quantexaの他のセクターへの進出は一層顕著な伸びを見せている。より広範なデータセットに大きく依存するようになった市場の大幅なシフト、近年における各企業のシステム更新、そして過去1年間でオンラインアクティビティが「唯一の」活動になることが多くなったという事実がそれを加速させている。

「(2007年の)金融危機は、金融サービス企業がよりプロアクティブになるための転換点でした。そして、パンデミックは、ヘルスケアなどの他のセクターがよりプロアクティブになる方法を模索する転換点となっています」とマルリア氏はいう。「その実現には、より多くのデータとインサイトが必要です」。

そのため、Quantexaは特にこの1年で、ヘルスケア、保険、政府機関(例えば税務コンプライアンス)、電気通信 / 通信手段など、金融犯罪に直面している他のバーティカルへの拡張を進めてきた。加えて、KYC(顧客確認)コンプライアンスに向けたより完全な顧客プロファイルの構築、カスタマイズされた製品の提供など、さらに多くのユースケースをカバーするための多様化を続けている。政府機関と協働し、人身売買の追跡や特定のような、違法行為の他の分野にも同社のソフトウェアが適用される見通しだ。

Quantexaは、70にわたる市場に「数千」もの顧客を抱えている。金融犯罪とより全般的なKYCの両方を含むこの種のサービスの市場規模は、年間約1140億ドル(約12兆6000億円)に上るとのIDCの予測を、Quantexaは引き合いに出している。

「Quantexaが独自に開発した技術により、クライアントは個人や組織の単一のビューを生成して、グラフネットワーク解析で可視化し、最先端のAI技術でスケールすることができます」とWarburg Pincusのヨーロッパ共同責任者であるAdarsh Sarma(アダーシュ・サルマ)医学博士は声明で述べている。「このケイパビリティはすでに、世界最大の金融機関や政府機関によるKYC、AML(マネーロンダリング対策)、不正行為プロセスの運営方法に革命的な変化をもたらしており、業界における重要性を増しつつある大きなギャップに対処しています。これまでの同社の目覚ましい成長は、利用可能な市場全体における計り知れない価値の提案と、新規セクターや地域への継続的な拡大を反映しています」。

興味深いことに、同社は大手テック企業などから買収のターゲットとしてアプローチを受けていることを、マルリア氏は筆者に認めた。それほど驚くことではない。しかし、長期的には、マルリア氏の視野の先には自立した未来があり、Quantexaが独自の成長を続けることを念頭に置いているという。

「確かに、大手テック企業などに買収されることは十分あり得ますが、私はIPOに向けて準備を進めています」とマルリア氏は語った。

画像クレジット:piranka / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

【コラム】その正当性確保のために暗号資産の規制は不可欠だ

編集部注:本稿の執筆者はHenrik Gebbing(ヘンリック・ゲビング)氏とWilhelm Nöffke(ウィルヘルム・ネフケ)氏。ヘンリック・ゲビング氏は機関投資家や企業向けに欧州のデジタル資産のカストディと金融サービスのプラットフォームを提供するFinoaの共同CEO兼共同設立者。ウィルヘルム・ネフケ氏もFinoaのシニア・コンプライアンス・マネージャー。

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過去10年間、欧州や世界各国で顧客確認(KYC)やマネーロンダリング対策(AML)の規制に関するさまざまな構造的変化が見られてきた。有名企業によるマネーロンダリングに関するニュースや不正資金のグローバル市場への浸透が相次ぎ、当然のことながら規制当局や一般市民の注目を集めてきた。

Wirecard(ワイヤーカード)のスキャンダルは、広範囲にわたる不正行為を調査した結果、麻薬やポルノの違法な流通に関わる一連のシェルカンパニーの存在が明らかになったという特に卑劣な例である。Danske Bank(ダンスケ銀行)では、9年間ほぼ気づかれることなく約2270億ドル(約25兆円)がエストニアの子会社を経由してロンダリングされていた

米国では、証券取引委員会がRipple Labs(リップル・ラボ)とその幹部2名に対し、未登録で進行中のデジタル資産証券の募集を通じて13億ドル以上(約1428億円)を調達したとして提訴。この訴訟は現在も継続中である。

規制当局や金融機関がこういった犯罪行為に対する理解を深めるにつれ、AML要件も改善されてきた。しかし、これらの調整はどれも後手後手の対応であり、試行錯誤的なプロセスとなっている。

急速に進化するブロックチェーンエコシステムの課題に対処するため、欧州連合はライセンスモデルを改善するために規制システムをさらに強化するより厳しい金融規制の導入を開始している。現在多くの加盟国が暗号資産を個別に規制しているが、ドイツが暗号資産を最初に規制した国としてリードしている。

これらの個別規制は、規制当局から金融ライセンスを取得および維持するための要件をまとめ、暗号資産企業の道筋を明確に規定している。コンプライアンスは当然、投資家の信頼と保護を高める役割を果たすわけである。

金融犯罪や暗号自体の進化にともない、規制機関の監視、対応、制限の実施の取り組みも変化を遂げている。国際的には金融活動作業部会(FATF)が最も著名な監視機関であり、マネーロンダリング防止やテロ資金対策に関する一般的なガイダンスやベストプラクティスの決定を行っている。

FATFはソフトローと考えられているが、タスクフォースが暗号資産内での実行可能な規制の基準を設定している。特に注目すべきはFATFの勧告16で「トラベルルール」として知られているものだ。これはブロックチェーン取引の参加者の個人データを収集および保存することを企業に要求するもので、理論的には、このデータにアクセスすることで、当局が暗号市場の規制をより適切に監督・執行できるようになる。言い換えれば、誰が何をしているかを当局が正確に知ることができるようになるわけだ。要は透明性である。

トラベルルールの難題

FATFのトラベルルールは、伝統的金融機関(銀行、クレジット会社など)と、仮想資産サービスプロバイダー(VASP)として知られる暗号資産企業の2種類のビジネスに影響を与える。

当初トラベルルールは銀行にのみ適用されていたが、2019年には暗号資産企業にも拡大され、2021年にはFATF加盟国の多くの国が自国のAML法にトラベルルールを組み込み始めた。この規制のシフトは暗号資産分野に衝撃を与えることになる。拒否することによるリスクは高く、トラベルルールを組み込まなかった場合、サービスプロバイダーはコンプライアンス違反とみなされ、ビジネスを行う上で大きな障害となる。

しかし、トラベルルールは暗号技術の新規性を考慮しておらず、大きな障害にもなっている。受取人のKYCデータを入手して日々のビジネスに統合する際に大きな労力を要するため、暗号資産ビジネスを統合する際のハードルとなるのだ。

暗号資産企業が情報を入手して支払いを行うためには、クライアントからデータを提供してもらう必要があるが、これを検証することは事実上不可能だ。これは暗号資産の象徴でもある効率性を大きく阻害するものである。さらにこの方法では、VASPや銀行が受け取るデータの正確性も問われるだろう。また、世界各地でデータサイロが生まれ、データの脆弱性がさらに高まることになる。

特定のコミュニティ内で孤立したものではなく、国際的な標準化手段となると、オンチェーン・ソリューション(特定のブロックチェーン上で記録・検証される取引)と、異なるブロックチェーン間でのやり取りや、オンチェーン取引とPayPalなどの他の電子システムで行われるオフチェーン取引との組み合わせを可能にするクロスチェーン通信との間には大きなギャップがある。

暗号資産の匿名性に対してもっともな懸念を持つ人々と、規制は暗号資産を禁止するものだと考える人々との間で、いずれは中間点を見つけなければならない。どちらの意見にも一理あるが、巨大な金融市場や業界の中で暗号資産の正当性と実行可能性を維持するというのは、すべての当事者にとってプラスになるため、この交渉は非常に重要である。

規制反対ではなく、実行不可能な規制に反対

そのためにはデジタルアセットに特化した法律が必要であり、AML関連の問題を解決することなく市場に支障だけをきたすなどということのないようにしなければならない。

伝統的金融業界はすでにグローバル化しているため、FATFが暗号資産の規制監督のための国際的なフレームワークを発行することの価値と必要性は明確だ。

マネーロンダリング、違法な武器販売、人身売買など、犯罪的な金融取引は国際的なビジネスでもある。そのためこういった犯罪への取り締まりは、必然的に国際的な取り組みとなる。

ブロックチェーンの分散型の性質は、我々に馴染みのあるほぼすべての場所で使用されている中央サーバーの標準に反しているため、手ごわい課題となっている。伝統的金融機関のルールや規制が暗号資産にも実装されるというのは、この経済エコシステムとその基礎となる技術が持つ革新性や新規性を無視した過失であり誤解である。

法定紙幣の世界における従来型の規制を、暗号資産のあらゆる側面やブロックチェーン技術の基本的な性質に適用することはできない。例え善意から出たものであっても、このような押し付け型の規制は古いシステムの上に構築されているため、適応・修正しなければならないのである。

テクノロジーの使用に公平な制限を設けるには、それらのテクノロジーの限界と特性を根本的に理解し、協力しあう必要がある。従来の金融界においてブロックチェーンの話題は今、本当に理解すべきものというよりも熱狂的なレトリックのように扱われているのが実情である。

この問題の核心は、ブロックチェーン取引が匿名または追跡不可能であるという根本的な誤解にある。ブロックチェーン取引は疑似匿名であり、ほとんどの状況において従来の銀行取引よりも追跡可能性と透明性を提供することが可能だ。ブロックチェーン上で行われる違法行為は、例えば現金取引よりもはるかに追跡可能である。

このように計り知れない可能性を秘めたテクノロジーは、規制された上で誰もがアクセスでき、有益なものとなるべきなのである。ブロックチェーンやデジタルアセットはすでに私たちの活動方法に革命をもたらしており、規制措置もそれに倣う必要がある。昔ながらの指示を出し、それに従わせ、不公平な罰を与えるというのは未来のあるべき姿ではない。新しい方法をきちんと実行すべきなのである。

アウトロー時代の終焉

国際的な基準を遵守していることがわかっているユーザーのデータベースを利用して、活動を監視することはすでに可能だ。承認されたユーザーやベンダーを知ることで、業界はより早く違法行為や不正行為を発見することができ、違法なユーザーを特定して制限することができる。

提示された規制をよく考えて調整することで、信頼を確保し、ブロックチェーンの可能性を適切に活用するための検証済みネットワークをまとめて構築することができ、システムを破損したり操作したりしようとする有害因子を排除することができる。これは国際的な金融犯罪を起訴し、世界中で暗号資産の正当性を確保するための大きな一歩となるだろう。

暗号資産のアウトロー時代は終わったものの、暗号資産は今前例のないレベルの正当性を獲得しており、規制当局の監視を遵守することでのみ維持、強化することができる。

そしてその規制当局の監視は、ブロックチェーン取引に旧来のやり方をそのまま丸写しするだけのものであってはならない。むしろ、犯罪行為に対抗し、投資家の信頼を高め、暗号資産を望ましい金融投資にする仕組みそのものをサポートしていくようなものでなければならないのである。

画像クレジット:cokada / Getty Images

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(文:Henrik Gebbing、Wilhelm Nöffke、翻訳:Dragonfly)

グーグルがpringを買収した理由とは? 「米IT大手が日本の決済市場を席巻」は本当か

グーグルがpringを買収した理由とは? 「米大手ITが日本の決済市場を席巻」は本当か7月13日、Googleはモバイル金融サービスを提供する「pring(プリン)」の全株式を取得するための契約に合意したことを発表した。

同社には親会社のメタップスをはじめ、ミロク情報サービス、日本瓦斯(ニチガス)、伊藤忠商事、ファミマデジタルワン、SBIインベストメント、みずほ銀行、SMBCベンチャーキャピタルなどメガバンクを含む複数の資本が入っており、株式譲渡が完了するとみられる8月中には実質的にGoogle傘下の企業となる。

Googleによる買収が発表された「pring(プリン)」

Googleによる買収が発表された「pring(プリン)」

pringでは買収後も既存のサービスに変更はないと説明しているが、同件の最初に報じた日本経済新聞では「Google、日本で金融本格参入へ 国内スマホ決済買収」のタイトルで、Googleがpringをベースに日本国内における送金・決済サービスの分野に本格参入することを伝えており、いわゆる「GAFA」などの名称で呼ばれる米IT大手の金融分野での日本進出が本格化しつつあることを予感させる流れになっている。

「pring(プリン)」とはどういうサービスか

pringの会社設立は2017年、サービス開始はiOS版アプリの登場した2018年3月と、「○○Pay」などが多数リリースされた時期に登場した金融スタートアップの1社となる。

pringに関してよく誤解されている1点を挙げれば、同社が志向しているのは「○○Pay」が提供しているような「QRコード(バーコード)決済サービス」ではなく、「送金」を中心とした「シンプルなお金の移動サービス」だ。

以前に筆者が同社代表取締役の荻原充彦氏にインタビューしたときに、同氏は「純粋に送金に特化しているサービスは少ない。目指すのは早くて便利でどこでも使えるSuicaのようなサービス」とpringの特徴を説明している。

JCBの提供しているSmartCodeの仕組みなどを通じてQRコード決済が行える機能もあるものの、主眼はあくまで「個人間送金」、あるいは企業が経費精算などで従業員への支払いなどに利用する「業務用プリン」といったサービスとなる。

「なぜGoogleはpringに興味を持ったか」「pringをどのようにGoogleの金融サービスに組み込んでいくのか」という2つの疑問があるかと思うが、後者については比較的簡単に説明できる。

pringをGoogle Payの「ウォレット(Wallet)」とし、ここを基点にして送金や、決済など他の金融サービスと連携していくのが将来的な計画だろう。

送金などで受け取ったお金はいったんウォレットにプールされ、再び他者に送金したり、そのまま買い物や銀行口座などから引き出すことができる。pringの場合は銀行口座と連携せずともセブン銀行ATM経由でウォレットへのチャージや現金の引き出しが可能なため、この仕組みを手軽に利用できる。

セブン銀行との提携で会見したpring代表取締役の荻原充彦氏(右)

セブン銀行との提携で会見したpring代表取締役の荻原充彦氏(右)

セブン銀行ATMでアプリから出金する

セブン銀行ATMでアプリから出金する

ただ興味深いのは、この送金機能が現在提供されているのは米国とインドの2ヶ国のみだ。Google Pay自体は本稿執筆時点で40ヶ国でのサービス提供が行われているにもかかわらず、2015年のサービス開始(当時は「Android Pay」の名称)から6年経過した現在においてなおこの状態となっている。

多くの国ではGoogle Payにカードを登録してオンラインやオフラインの店舗での支払いに利用できるのみだ。またインドで提供されているサービスは(2017年のサービス開始当初は「Tez」のブランド)、登録された銀行口座間の送金が基本となっており、いわゆるウォレット方式とは異なる。モバイル送金それ自体は非常に便利な仕組みだが、Google Payのような決済サービスと組み合わせることで残高の利用機会が増え、互いに相乗効果をもたらす。

日本におけるGoogle Payは登録可能な対応カードや決済手段が限られており、どちらかといえばFeliCaチップを使った「おサイフケータイ」に依存する部分が大きい。個人的意見でいえばGoogle Payを使う場面は自ずと限られているという認識だが、今後「送金」の仕組みが加わることで、より活用場面は増えるだろう。

Google Payの店頭決済において利用可能なカード一覧。選択肢としては決して多いとはいえない(出典:Google)

Google Payの店頭決済において利用可能なカード一覧。選択肢としては決して多いとはいえない(出典:Google)

金融端境期のGoogleによるpring買収

「送金」サービスと一口にいうが、実際に使い勝手のいいサービスを提供するのは難しい。「マネーロンダリング防止の観点から送金の監視が必要」という話に加え、「異なるサービス間でどのように送金を行うのか」という問題がある。

同一サービス間であればアカウント同士の残高を移し替えるだけなので問題ない。ところが送金先が同一サービスにアカウントを持っていない場合、異なるサービスのアカウントを指定して送金を行う必要がある。現状、そのような仕組みが実装されているケースはほとんどなく、例えば「割り勘」のような仕組みを実装する際の障壁となっている。

皆が皆使っているサービスなら問題ないが、そこまでユーザーを獲得しているサービスはそうない。Google Payがもし送金機能を標準で実装し、さらに日本において多数のユーザーが存在する“iOS向け”のGoogle Payアプリをリリースすれば、この問題を解消できるかもしれない。

pringアプリのメイン画面

pringアプリのメイン画面

送金サービス提供にあたってもう1つの問題が振込手数料の存在だ。前述のように同一サービス間であれば残高の付け替えだけで済み、ほとんどコストのかからない作業だが、アカウントへの出入金や他のサービス(あるいは銀行口座)への送金が発生した場合、振込手数料が必要となる。

pringを含む“送金”や“出入金”の機能を提供する「○○Pay」の金融サービス事業者は改正資金決済法における「資金移動業者」と定義される。資本規制を含むさまざまなルールが規定される免許事業者の銀行と比べて参入障壁は低いものの、100万円以上の資金の移動に制限を受けたり、「預金」にまつわるサービスが提供できないなど、決済や送金に特化した認可事業者の扱いだ。

位置付けとしては、資金移動業者は特定の銀行の支店に口座を持ち、そこを通じて他のサービスや銀行と精算業務を行っている。銀行間の資金決済処理は全銀システムを通じて行われているが、その際に必ず手数料が発生する。

一般に、銀行口座振込で1回あたり2百数十円の振込手数料が要求されるが、これは全銀システムを経由していることによる。近年、この全銀システムの手数料の高さや、システムへの接続が銀行以外のサービス事業者(資金移動業者など)に開放されていないことが問題視されており、手数料値下げや緩和の方向に向かいつつある。

また、全銀システムなどの利用料が1回利用あたりの一律料金で設定されていることにより、特に小額送金や決済において「手数料が相対的に非常に高くなる」という点も、キャッシュレス化の進展において小額決済が現金からキャッシュレス決済に移行する際の障害になっていると考えられている。

小額決済や送金を可能にする「ことら」という仕組みがメガバンクらを中心にJ-Debitの仕組みをベースに検討されており、こうしたニーズとのギャップを埋めるべく金融業界の新しい動きとなっている。つまり、オンラインシステムが稼働を開始してから長らく変化の少なかった銀行業界だが、ここ最近になり急速な変化が起きつつある。

これはインターネット事業者など業界外からの参入が増え、競争が激化しつつあることと無縁ではない。Googleのpring買収はこの日本での金融端境期の中で起きた大きなイベントの1つであり、2016年のApple Payの日本でのサービスインと合わせ、少なからぬ影響を業界に与えることになると考える。

米IT大手が日本の金融市場を席巻するという話は本当か

この手のニュースが報じられると、毎回話題になるのが「米国のIT大手が日本の金融市場も席巻し、銀行は過去のものになる」というテーマだ。

実際のところ、金融業界は規制に大きく縛られた業界であり、国ごとにルールや商習慣も大きく違う。仮に先進的で革新的なサービスであっても、そう簡単に複数の地域や国に一度に展開が可能なほど甘い世界でもない。

例えば、Googleがpringを買収したところで銀行の代わりにはなれないし、Google自身が銀行免許を取得して日本で自ら本格的な金融サービスを提供するような面倒な道は選ばないだろう。それよりは、すでに日本ですでに地場を固めている複数の金融機関と手を組み、すばやく必要で手軽なサービスを展開する方が効率がいい。

Appleがあくまで既存金融機関などとの提携で「Apple Pay」を日本に持ち込んだように、方法としてはそちらの方が圧倒的にスマートだ。一方で、今後給与デジタル払いが解禁されたタイミングで、pringのような仕組みを利用するケースはさらに増えるとみられ、“地ならし”という点で今回の買収は大きな意味を持つ。

実際のところ、こうした地域間でのルールや文化の違いが金融サービスの提供にあたっては大きな障壁となる。例えば、先日ゴールドマン・サックスの日本支社が国内で銀行業免許を取得したことが話題になったが、これが必ずしも「日本でのリテールバンク参入」や「Apple Cardの国内発行」に即つながるわけではない。

ゴールドマン・サックスは「Marcus」ブランドで2016年に米国でリテールバンク市場に参入しつつ、2019年にはカード発行の外販事業で初の顧客として「Apple Card」の発行を請け負った。

Apple Cardはスマートフォン(iPhone)利用に特化した分かりやすいUIと、最大3%の“キャッシュ還元”が特徴のクレジットカードだが、日本と米国でカード利用のビジネスモデルが大きく異なっていることから、同じ商品性で日本にサービスを投入するのは難しいと考えられている。将来的には分からないが、この仕組みが日本の消費者に受け入れられるかも含め、参入に時間のかかるビジネスと思われる。

Marcus by Goldman Sachsのページ

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また、Appleについては米国で「Buy Now, Pay Later(BNPL)」への市場参入が米Bloombergによって報じられている。これはApple Payの支払いオプションとしてクレジットカードやデビットカードによる一括決済だけでなく、「4回払い」の指定が可能になるもの。市場背景などの詳細は筆者の別の記事を参照いただきたいが、米国のクレジットカードでは一括決済後に弁済金を自ら少しずつ返済していく仕組みが一般的であり、指定期日を過ぎるとその分が利息として請求される。

「ミニマムペイメント」とは毎月やってくる返済期日に最低限弁済しないといけない金額のことであり、早めに返済すればするほど手数料は低くなる。いわゆる「リボ払い」と呼ばれるものだが、日本では分割払いの回数や手数料は最初の決済時に決定されるものなので、BNPLのような仕組みは馴染みにくいだろう。

近年、米国を含め欧米を中心にBNPLの仕組みがブームになっているが、その理由として「クレジットカードの与信枠が少ないので、それを超える買い物をしたい」「そもそもクレジットカードを使いたくない」といったユーザーのニーズを反映したものとなっている。

小売店側も販売機会の増加や決済単価を増やすため、本来のカード決済手数料よりも高い(米国ではクレジットカードと比較して1.5-2倍程度とされる)BNPLをあえて導入し、売上全体を伸ばすことに利用している。

BNPL市場興隆の例。オーストラリアでの調査報告で、クレジットカード発行枚数の減少とともにBNPLの決済額が増えつつある(出典:ネットプロテクションズ)

BNPL市場興隆の例。オーストラリアでの調査報告で、クレジットカード発行枚数の減少とともにBNPLの決済額が増えつつある(出典:ネットプロテクションズ)

このように、「GAFAが日本金融を席巻する」という話はそう単純なものではなく、これまで変化の少なかった金融業界のビジネスモデルに影響を与えつつも、あくまで相互関係に則って展開されるものだということが分かるだろう。

過度な警戒は必要ないが、これら米IT大手が日本の金融市場にサービスを提供することでどのような影響を与えるのか、自分の生活をどう変化させるのかを考えつつ、今後の思索につなげていきたい。

(鈴木淳也。Engadget日本版より転載)

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カテゴリー:フィンテック
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政府機関など対象に暗号資産犯罪やマネロンの検知・防止ツールを提供するチェイナリシスが約110億円調達

政府機関など対象に暗号資産犯罪やマネロンの検知・防止ツールを提供するチェイナリシスが約110億円調達、評価額約4648億円に

政府機関および民間企業を対象に、暗号資産犯罪やマネーロンダリングの検知・防止のための調査・コンプライアンスソフトウェアを提供するブロックチェーン分析企業Chainalysis(チェイナリシス)は6月28日、シリーズEラウンドにおいて、1億ドル(約110億6800万円)の資金調達を実施したと発表した。

引受先は、リードインベスターのCoatue、既存出資企業のBenchmark、Accel、Addition、Dragoneer、Durable Capital Partners、9Yards Capital、新規出資のAltimeter、Blackstone、GIC、Pictet、Sequoia Heritage、SVB Capital。また同社は、累計調達額が3億6500万ドル(約403億8500万円)、評価額が42億ドル(約4648億6000万円)に到達したと明らかにした。

調達した資金は、以下ビジョンの実現のため使用する。

  • データ:より多くの暗号資産を対象とし、DeFi(分散型金融)のような新たなユースケースに焦点を当てることでデータの優位性を深化させる。また潜在的な脅威の兆候をより迅速に特定し、対応までの時間を短縮するために、グローバル・インテリジェンス機能を立ち上げる
  • ソフトウェア:同社ソフトウェア・ソリューションに向けてコラボレーション・ツールを開発・実装し、公的機関と民間企業のチームが同じデータセットを使って、一貫した共通理解のもとで共同作業ができるようにする
  • アクセス:政府機関、金融機関、暗号資産交換業者(取引所)などが、Chainalysisのデータと企業内の情報を組み合わせ、より良い意思決定ができるように、APIを通じ同社データに直接アクセスできるようにする

Chainalysisは、世界60カ国以上の政府機関、取引所、金融機関、保険会社、サイバーセキュリティ企業にデータ、ソフトウェア、サービス、リサーチを提供。同社データは、調査、コンプライアンス、マーケット・インテリジェンス・ソフトウェアの強化ほか、刑事事件の解決、暗号資産取引における消費者保護に利用されているという。

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オンライン本人確認・eKYCサービスとデジタル身分証アプリを提供するTRUSTDOCKが13億円調達

オンライン本人確認・eKYCサービスとデジタル身分証アプリを提供するTRUSTDOCKが13億円調達

あらゆる業法に対応するKYC(Know Your Customer・本人確認)プラットフォームとデジタル身分証アプリを提供するTRUSTDOCKは6月24日、第三者割当増資による総額13億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、グロービス・キャピタル・パートナーズ、STRIVE、Sony Innovation Fund by IGV、三菱UFJキャピタル、みずほキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル。調達した資金により、eKYC(electronic KYC)の持続的な社会インフラになるべく、コンプライアンス・ガバナンスを含む組織体制の強化と拡大、大量のKYC処理を実現する開発への投資、ゼロトラスト前提のセキュリティ投資など、社会インフラとしての基盤整備に、より一層尽力する。

TRUSTDOCKは、業法を問わず、オンラインで完結するeKYCによる身元確認をはじめ、マイナンバーの取得、AML(マネロン防止・資金洗浄防止)リスク確認、法人eKYCなど、様々なKYC業務を「機械+人」で処理するKYCプラットフォーム。事業者側は、同社提供の業務APIを自社オンラインサービスに組み込むだけで、必要なKYC業務プロセスを構築可能。またユーザー側は、事業者のサービスサイトにおいてガイダンスに従うだけで、その手続に必要な本人確認が完了する。企業規模を問わず、24時間365日稼働するオンラインサービスに、最適化したKYCプロセスを提供可能としている。

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