Facebookがステーブルコインを始める? その前に知っておくべきこと

Bloombergが伝えるところによると、Facebookは、独自のステーブルコインの投入計画をひっさげて、ブロックチェーンの波に飛び乗ろうとしているようだ。

次から次へとプライバシー流出問題で騒がれ足元に火が点いた状態のソーシャルネットワークの大手Facebookは、5月にブロックチェーン部門を内部に設立したが、さまざまな憶測を呼びながらも、その本当の狙いは不明のままだ。

Bloomebergの記事は、その新部門から何が現れるのかを明確に示した最初のものとなった。さらに、それは「メッセージングアプリWhatsAppを使ってユーザー同士で金銭の移動ができ、最初はインドの送金市場にフォーカスをあてた」ステーブルコインであるという。

Facebookは、これに対して曖昧なコメントを返した。

「他の多くの企業と同様に、Facebookもブロックチェーン技術の力を役立てる方法を模索しています。この新しい小さなチームでは、さまざまな応用方法を探っています。私たちからは、これ以上は申し上げられません」と、FacebookはBloombergに対する声明の中で答えている。

もしこのアメリカの巨大企業が、Bloombergが報じたとおりの計画を実行した場合、それは時価総額3760億ドル(約41兆7600億円)、年間収入は400億ドル(約44億4000万円)にのぼり、事業規模においてもユーザー基盤においても、(たちまち)一般消費者向けブロックチェーン・サービスの最大手となる。Facebookには、その中核的ソーシャルネットワークに22億人以上、WhatsAppに15億人、Messengerに13億人、さらにInstagramに10億人のユーザーを擁している。

これは、しっかり知っておくべき話だ。

Facebookのブロックチェーン部門を率いるPayPalの元CEO、David Marcus。彼は、暗号通貨交換所Coinbaseの役員でもあった。

またひとつ新しいステーブルコイン

ステーブルコインは、今年の後半にブロックチェーンの世界で大流行した。数多くのプロジェクトが飛び出して、いろいろなソリューションを提示したのだが、まずその理由を考えてみよう。

ステーブルコインの考え方は簡単だ。法定通貨と連動する暗号通貨なので、価格の乱高下の影響を受けないというものだ。

プログラム可能で国境のない通貨としてのブロックチェーンには可能性があるが、安定性が大きな問題になっている。たとえばBitcoinは、1年前には2万ドル(約222万円)という高値をつけたが、現在は4000ドル(約44万4000円)をわずかに上回る程度だ。ただ注意すべきは、この数カ月間にそれよりも価格が下がっていたことだ。「アルトコイン」の場合は、さらに変動が激しい。

ステーブルコインは、Bitcoin、Ethereumなどのトークンを、銀行口座よりも早く買い入れることができる預け入れ方法を提供している。また、不安定なトークンからの利益の移動も可能になり、とくに、暗号通貨を他者(他の企業)に経費をかけずに送ることができることが大きい。

しかし、大変にシンプルな前提で、しかも多くの人たちが参入しているにも関わらず、実際に成功し、その価値を証明できたステーブルコインはいまだに存在しない。

もっとも注目を集めているTetherですら、経済的支援にまつわる心配に追い回されている。その背後にある組織は、そのトークンの価格が1ドルを下回っても、市場でその裏付けとするのに十分な法定通貨を用意しているか否かを明らかにしていない。

Tetherが苦戦する中、仮想通貨取引所がライバルのステーブルコインをローンチ


TechCrunchが11月に報告したとおり、いくつもの「Tetherキラー」が登場したが、王座を奪ったものはない。USD Coinは、CounbaseやBinanceなどの大手取引所で取引されるEthereumをベースとする暗号通貨で、時価総額2億3000万ドル(約255億5000万円)と二番目に広く利用されている。驚くべき規模だが、それでもTetherの180億ドル(約2兆円)の15パーセントにも満たない。そのギャップの大きさは明らかだ。

そして、規制の問題がある。

Andreessen HorowitzやBain Capitalといった大物投資家から1億3000万ドル(約144億4000万円)以上を調達したBasisは、設立から18カ月後の今月、廃業した。「ボンドトークンもシェアトークンも、有価証券ではないと認めざるを得ない」と判断したのが理由だ。

フィンテックのサービス

詳細はまだはっきりしないが、Facebookが推進するステーブルコインは、安定を強く望む暗号通貨の所有者に、技術を使ってそれ以上のものを提案することになりそうだ。

Facebookは、もしかしたら、膨大なユーザー数を誇るメッセージングサービスに、金融サービスや製品を追加する可能性がある。フィンテックは、信用力の調査方法が限られ、為替市場の価格が低いといった問題の改善にデジタル・プラットフォームやデータが有効な新興市場で急速に発達している。しかし、Facebookはそこに本格的に足を踏み入れたことがない。唯一あるのは、WhatsAppだ。インドではピア・トゥー・ピアの取り引きができるようになっているが、それを世界的に広げ、新しい金融機能を追加すると考えれば筋が通る。

安くて速い海外送金は、FacebookのCEO、Mark Zuckerbergがブロックチェーンの可能性に注目していると書いた1年前の記事で私が提唱したことだ。2017年の新年の抱負を聞いたとき、彼は暗号通貨とブロックチェーンを勉強して「我々のサービスにどう使うのがベストかを見たい」と話していた。

WhatsAppは、月間のアクティブユーザーが15億人を超える。そのうち約2億人を占めるインドでは、それは巨大な単一市場だ。インドはまた、世界銀行のデータによると、2017年には690億ドル(約7兆6660億円)を受け取った世界最大の送金先にもなっている。

送金以外にも、ステーブルコインはもっと多くの利点がある。デジタル製品やサービスの購入から、ピア・トゥー・ピアの支払い、もっと本格的な暗号通貨による取り引きや融資などだ。

明らかなのは、Facebookのブロックチェーン部門の仕事はまだ初期段階にあるということだ。現時点では、30名ほどの社員が配属されている。

チャットアプリが暗号通貨とブロックチェーンに参入

Bloombergが推測するようにプロジェクトが継続された場合でも、WhatsAppがブロックチェーン機能を持つ最初のメッセージングアプリとなるまでには時間がかかるだろう。しかし皮肉なことに、WhatsAppやFacebookのMessengerといった独占的地位にあるサービスに対抗するための手段として、他社が暗号通貨の機能を採り入れている。

カナダのチャットアプリKikは、2017年のICOを通じて1億ドル(約111億円)を調達して、独自のトークン「Kin」と、開発者用アプリをサポートするブロックチェーンを開発した。昨年、KikのCEO、Ted LivingstonがTechCrunchに話したところによれば、基本計画は、Facebookのような広告モデルではなく、ユーザーの注意や関わりを通して「ボジティブ」に利益をもたらすアプリを開発できるようにすることだという。収益は、さまざまなユーザー本位の基準で、Kinで支払われる。

Livingstonは、暗号通貨の弁明をするどころか、ブロックチェーン技術を「役立たず」だとする意見を批判した。Kikのアプリはまだブロックチェーン化されていないが、昨年の夏からベータ版のリリースを開始した。

KikのCEO、Ted Livingstonは、ブロックチェーンと暗号通貨が広告ベースのモデルに置き換わると信じている。つまり、より多くのアプリや製品が、金儲けのためではなく、消費者のために作られるようになるということだ。

日本のLINEアプリは、アジアの一部で人気が高いが、ブロックチェーンを導入し、独自の取引所暗号通貨投資ファンドを設け、「Link」というアプリ内トークンを使えるようにしている。ICOは行わず、Linkトークンをユーザーの間で流通させてさまざなに利用してもらい、売買も可能にしてゆく計画がある。Linkは、事実上LINEのサービスや製品の購入の手段となり、サードパーティーのサービスでも使えるようにしたいと同社は話している。

ロシアのFacebook的存在であるVKontakteの創設者Durov兄弟が開発したメッセージングアプリTelegramもそうだ。Telegramは暗号通貨業界で人気を高めており、ICOを通じて17億ドル(約1888億円)を調達した。大変に期待された公開だったが、結局のところ、対象は認定投資家に限られることになった。

しかし、非常に野心的な「非中央集権的」プラットフォームの目標について長々と書かれた白書に批判が集まっている。プロジェクトは目立たない形で進められ、一部には製品がリリースされる前に投資金を現金化した投資家もいると見られる混乱した現状は、ほとんど明かされていない。

もうひとつ、暗号通貨を採り入れたチャットアプリで注目すべきものが、Statusだ。非中央集権的チャットアプリとエコシステムを開発し、2017年にEthereumで1億ドル(約111億円)以上を調達した。Statusは現在使用可能だが、Coindeskによると、資金繰りがうまくいかず、100名いた写真のうち25パーセントを、今月、一時解雇したとのことだ。

その一方で、韓国最大のメッセージングアプリKakaoは、ブロックチェーン企業を所有している。将来の計画の詳細は不明だが、Kakaoはブロックチェーン企業に投資を行っている。

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(訳者:金井哲夫)

Facebook Messenger上で友だちとSpotifyのプレイリストが作れるように

今年に入ってから、Spotifyは友だちと楽曲がシェアできるFacebook Messenger用のボットを発表した。そして本日、同ボットに新たな機能が追加され、ユーザーはMessenger上で友だちと一緒にプレイリストを作れるようになった。しかも、グループ内の全員がSpotifyのアカウントを持っていなくてもこの機能は利用可能だ。

Group Playlists for Messengerというそのままの名前がついたこの機能には、既存のMessenger用のSpotifyアプリからアクセスできる。実際のFacebook Messengerのインターフェース上では、まずチャット画面を表示し、入力欄の左側にある青いプラスサインが書かれたボタンをタップする。するとMessengerアプリのリストが表示されるので、その中からSpotifyを選ぶ。

そこから、プレイリストの作成者(この人はSpotifyのアカウントを持っていないといけない)は、スクリーン下部にある”Create”ボタンを押して名前を付ければ、すぐにグループチャット内でプレイリストを共有できる。プレイストを共有すると表れるサムネイルには、プレイリストの名前と曲を追加するためのボタンが表示されるようになっている。

そして、この段階でグループチャットに参加している人であれば、誰でも好きな曲をプレイリストに追加することができるのだ。しかも、Spotifyによれば、プレイリストの作成者以外はSpotifyのアカウントを持っていなくてもこの機能を利用できるということだ。

しかし、非SpotifyユーザーはMessenger上でプレイリストの中身を見ることしかできず、実際に曲を聞くためにはSpotifyにサインアップして、アプリをダウンロードしなければならない。既にSpotifyのアカウントを持っているがFacebookとは接続していないという人は、MessengerのSpotifyアプリから両アカウントを紐付けられるようだ。

これまでにもSpotifyはデスクトップ版、iPhone版、iPad版、Android版の全てでコラボプレイリストをサポートしており、Spotifyからソーシャルサイトやさまざまなメッセージングアプリにプレイリストを直接共有できるようにもなっていた。

しかし、今回の機能追加により、ユーザーはMessenger上で直接プレイリストを作れるようになったのだ。

SpotifyはどのくらいのユーザーがMessengerアプリを使っているかについてはコメントを避けたが、同アプリを通じて「何百万曲」もの楽曲がこれまでに共有されていると語った。

なお、同様の機能が他のチャットプラットフォームでも公開されるのかについては、今のところわかっていない。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

“仕事用のWhatsApp”を目指すVentureAppが400万ドルを調達

ボストンに拠点を置くVentureAppは、オンライン・モバイルチャットのハブとして、ユーザーの仕事関連の連絡先やビジネスニーズをまとめ上げることで、仕事上のメッセージのやりとりをより簡単にしようとしている。この度同社は、Accompliceがリードインベスターを務め、Fullstack VenturesやBoston Seed Capital、さらに多数のエンジェル投資家が参加したラウンドで400万ドルを調達した。

実は私は1年以上前に、VentureAppが小規模企業(特にスタートアップ)に向けてサービスを提供している企業のマーケットプレイスを運営していた頃に彼らの名前を聞き、知人の紹介を通じて、共同ファウンダーのChase Garbarinoと知り合っていた。

当時のVentureAppのプラットフォームは、弁護士などの専門家を探している企業に利用されていた一方で、最も人気のあったサービスはプラットフォームに埋め込まれたメッセージ機能だった。そこから彼らのビジネスは大きく変化することになる。

仕事関係の人とのチャットに使える良いアプリが現在ないことから、彼らはVentureAppのメッセージ機能を、プラットフォームのいち機能として留めておくのではなく、単独のプロダクトとして開発することに決めたのだ。

今まで私たちは、人と連絡を取るときに利用するサービスを大きくプライベート用(Facebook)と仕事用(LinkedIn)に分けてきた。しかし、FacebookのMessengerやWhatsAppといったソーシャルメッセージングアプリが急速に成長している一方、LinkedInのメッセージ機能は以前からほとんど変わっていない。さらに、LinkedIn上のやりとりの大半が、勝手に送られてくるリクルーターからのメッセージやスパムであるため、ユーザーはほとんどのメッセージを読まずに無視してしまっている。

そこでVentureAppは、仕事関連のやりとりをまとめられるような、新しいメッセージプラットフォームを提供しようとしているのだ。VentureAppにログインすると、ユーザーはGmailやGoogle Apps、Outlookの連絡先とVentureAppを接続でき、LinkedInのコンタクト情報もアップロードできるようになっている。連絡先のインポートが完了すれば、ユーザーはどのサービス上にいる人に対しても、メッセージを送れるようになる。

企業が日常的にスパムメッセージを送ってくるLinkedInとは違い、VentureAppはユーザーに対して勝手にメッセージが送られないような対策を講じている。ユーザーは自分の連絡先に含まれている個人や企業に対してメッセージを送れるが、企業から個人のユーザーへはメッセージを送れないようになっているのだ。さらに全てのチャットにオプトイン方式を採用しているため、ユーザーはやりとりを始める前に、他のユーザーから送られてきたメッセージを受け取るかどうかを選択できる。

またLinkedInは、ユーザーが直接知らない人と繋がったり、知らない人にInMailを送れるようにしたりすることで収益をあげているが、VentureAppは全く逆のアプローチをとっている。彼らはプラットフォームに登録したい企業から利用料を徴収し、企業からではなく、必要に応じてユーザーが企業にコンタクトできるような仕組みをとっているのだ。

CEOのGarbarinoは、Streetwise Mediaを一緒に立ち上げたKevin McCarthyとGreg Gomer、さらにはDailybreakの共同ファウンダーであるBoris RevsinやJared Stenquistと共にVentureAppを設立した。同社はひそかに30人規模の企業へと成長し、現在では200社もの企業を顧客に抱え、VentureAppのプラットフォーム上に顧客企業のプロフィールを掲載している。なお今回の調達資金は、モバイルアプリ(現在ベータ版)を含めた、プラットフォームの機能拡充に充てられる予定だ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

WhatsAppが脆弱性を”バックドア”だとする報道内容を否定

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世界中で人気のモバイルメッセージアプリWhatsAppにセキュリティ上の問題が浮上した。暗号化されたメッセージが第三者に傍受され、内容が漏えいしてしまう可能性があると噂されているのだ。

The Guardianは報道の中でこの脆弱性を”バックドア”と表現し、セキュリティ研究家のTobias Boelterが昨年4月にこの問題に気づいたと伝えている。彼はFacebookに問題を報告したが、これは「予想される挙動」で同社は積極的に修正を加えるつもりはないと言われてしまったとのこと。さらにThe Guardianは、この脆弱性が未だに修正されずそのままになっていることを確認している。

WhatsAppは消費者に人気のメッセージアプリだが、プラットフォーム全体にSignal Protocolという名高いエンドツーエンドの暗号化技術を採用しており、セキュリティの専門家の評判も良い(エンドツーエンド暗号化の実装は昨年4月に完了した)。しかしアプリのソースコードは公開されていないため、外部機関のコードに関する検査も無しに、ユーザーは常に同社を信用しなければならない。一方でWhatsAppのプラットフォームの暗号化にあたっては、Signal Protocolを開発したOpen Whisper Systems(OWS)が協力していた。

先月末のタレコミを受けてThe Guardianが報道した、Boelterの言うセキュリティ問題とは、オフラインユーザーのために新しい暗号鍵が強制的に発行されるSignal Protocolの実装方法のことを指している。Boelterが”再送の脆弱性”と呼ぶこの仕組みのせいで、メッセージが傍受されてしまう可能性がある(つまりWhatsAppのエンドツーエンド暗号化のバックドアになりえる)と彼は主張しているのだ。

しかしWhatsAppはバックドアという見方を否定し、この仕組みはオフラインユーザー宛のメッセージが送信中に紛失してしまわないよう、新たな暗号鍵を発行するために設計されたものだと主張する。

「The Guardianは今朝の報道で、本来何百万というメッセージの紛失を防ぐためにWhatsAppが意識的に導入した仕組みを”バックドア”だと表現し、この仕組みはWhatsAppが政府の要請に応じてメッセージの内容を解読するためのものだと伝えていますが、これは誤報です」とWhatsAppの広報担当者はTechCrunch宛の声明の中で語った。

「WhatsAppは政府がシステムに入り込むための”バックドア”など用意していませんし、万が一そのような要請が政府からあっても立ち向かうつもりです。私たちはこの仕組みを利用して、何百万というメッセージの紛失を防ぐと共に、ユーザーに対してもセキュリティ上のリスクがあると気づいてもらうために通知を送っています。さらに暗号化の仕組みついても技術白書の中に記載していますし、Facebook Government Reuqests Reportの中では政府からの情報開示要請に関するデータを公開し、私たちがどのような要請を受けているかということをきちんと伝えています」と担当者は付け加える。

政府からのユーザーデータ開示要請に対するWhatsApp・Facebookの回答の詳細はこちら

セキュリティ評論家の中には、この脆弱性は何ら新しいものではなく、むしろ暗号化されたシステムにおける鍵認証の実装方法に関して昔からある問題だと主張する人もいる。

以前WhatsAppは声明の中で、同社が実装したSignal Protocolには”セキュリティ通知を表示する”というオプションが用意されており、このオプションを選べば、もしメッセージを送る相手のセキュリティコードが変わっていた場合、ユーザーに通知が送られるようになっていると述べていた。つまり希望するユーザーは、送信先の暗号鍵が変更された(第三者にメッセージを傍受されている可能性がある)際に通知を受け取ることができるのだ。

WhatsAppがSignal Protocolの実装を完了したときに、OWSのMoxie Marlinspikeもユーザーは「連絡先の暗号鍵が変わるたびに通知を受け取るよう設定できます」と説明していた。

さらに彼は、WhatsAppのSignal Protocol実装に関する白書に以下のような詳細が記載されていると指摘する。「WhatsAppのサーバーはユーザーの秘密鍵にアクセスできません。また、ユーザーには自分のやりとりを保護するために、自分で暗号鍵を認証するためのオプションも準備されています」

同じプログポストのなかでMarlinspikeは、WhatsAppユーザーが「エンドツーエンド暗号化メッセージを可能な限りシームレスにするために設計された非対称メッセージシステムの、最新かつオープンソースでセキュアで強力な暗号化プロトコル」の「全ての恩恵」にあずかることができると主張している。なおFacebookの傘下にあるWhatsAppの月間アクティブユーザー数は現時点で10億を超えている

The Guardianの記事に関してMarlinspikeにコンタクトしたところ、WhatsAppの鍵認証システムがセキュリティ上の問題だと評されていることに彼は明らかに納得しておらず、報道内容が「極めて不正確」だと語っていた。

その後のブログポストの中で彼は、WhatsAppアプリは「入念に設計されている」と述べ、送り先の暗号鍵が変わった後にメッセージをブロックせず通知のみ行うという仕組みを「適切だ」と評したほか、「WhatsAppはシンプルなユーザーエクスペリエンスを確保しながら、暗号化によってやり取りが保護されているという安心感を分かりやすい形でユーザーに与えている」と主張した。

一方でSignal Protocolの検査を行った国際的なセキュリティ研究者のグループの一員であるKatriel Cohn-Gordonは、この問題を重く見ており、Boelterが注意を促している”バグ”は”重大な”問題だと表現している。ただ同時に彼は、この脆弱性をバックドアとまでは表現しておらず、The Guardianの記事の「言い回しは問題の実態と比べると厳しめ」だとしている。

(彼が所属するグループは、Signal Protocolを分析した結果、根底にあるプロトコル自体に論理エラーはなかったとしているが、彼らは同プロトコルの実装方法に関する調査は行っていない。そして今回問題となっているのは、プロトコル自体ではなくWhatsAppの実装方法だ)

WhatsAppの鍵認証プロセス(または”重大な””バグ”)が、意図的につくられたバックドアなのか、ユーザーがオプトアウトできる設計上の仕組みなのかはそれぞれの考え方による。しかし外部の目が行き届かないクローズドなソースコードこそ、間違いなくWhatsAppのプラットフォームに関する最大の問題点である。親会社であるFacebookが、広告のためのプロファイリング・ターゲティングを通じて、ユーザーの個人情報をマネタイズするというビジネスモデルの上に成り立っていることを考えるとなおさらだ。

他の暗号化メッセージアプリの例としては、Proteusが実装されたWireが挙げられる。ProteusはSignal Protocolの前身となるAxolotlをベースに開発された、オープンソースのエンドツーエンド暗号化プロトコルだ。Wireの共同ファウンダー兼CTOであるAlan Duricによれば、WhatsAppのユーザーは盲目的にプライバシーが守られていると信じなければいけないが、Wireは外部機関がセキュリティテストを行えるようにつくられている。実際に同社の広報担当者は、現在Wireがセキュリティ関連の第三者機関による、Proteusプロトコルの監査を受けている最中だと話す。

「Wireは暗号鍵の再発行をしていません。一旦両エンドのユーザーがフィンガープリントを認証すれば、暗号鍵に変更が発生した際に両方のユーザーに通知がいくようになっています。Wireの仕組みは公開されていますし、全てのコードはオープンソースなので、セキュリティ上の問題が発生しても、発見・情報開示・修正に8ヶ月もかかることはありません」とDuricは話す。

「オープンソースという選択をしたことで、GitHub上には私たちのコードを見たことがあるディベロッパーが何千人もいますし、さらに深くコードを分析したことのある人たちもたくさんいます。そのため何か問題が起きても私たちは素早く問題解決に取りかかることができます」と彼は付け加える。

Boelterの言う再送の虚弱性はWhatsAppが意図的につくったものなのか、つまり(Facebookや政府機関の要請に応じて)WhatsAppがユーザーデータにアクセスするためのバックドアとしてつくられたものなのか、それともメッセージを確実に送付するための設計上の判断から生まれた副産物なのかに関して、Boelter自身の意見を尋ねたところ、彼は両方の考え方を支持しながら以下のように語った。

「もしも誰かがWhatsAppにバックドアを準備するよう要請したとすれば、例えばある秘密のメッセージがトリガーとなってメッセージの履歴が全て返ってくるような、もっと分かりやすい仕組みが導入されたとしてもおかしくありません。さらにこの問題は、コーナーケースのひとつにifステートメントを忘れてしまったというような、プログラミング上のバグだと説明することもできます。つまり悪意を持って導入された仕組みだとは必ずしも言えません」と彼は話す。

「しかし私が問題を2016年の4月に指摘した後も、Facebookはこの問題を修正する意向を全く見せていません。そのため、もともとはバグだったのに発見後はバックドアとして利用されはじめた可能性もあります」

「しかし最近WhatsAppは、この問題はバグではないと言っていました。つまりあるユーザーがメッセージを送ったときにオフラインだった受信者が、その後新しい携帯電話を使って再度WhatsAppにアクセスするという珍しい状況下で、送信者が”OK”ボタンを押さなくていいというある種の機能だと彼らは言っているんです。これは説得力に欠ける主張ですよね!もしも『プライバシーとセキュリティが(WhatsAppの)DNAに埋め込まれている』ならば、私が昨年の4月にコンタクトした後で、すぐにこの問題を解決するべきだったと思います」と彼は付け加える。

さらにWhatsAppのサーバーが「受信者のもともと利用していた正しい秘密鍵を送信者に対して」再度アナウンスできる、つまり送信者が「セキュリティーコードが変更されました」という通知を受け取るように設定していたとしても、メッセージは「ブロックされることなく」送信されてしまう。ゆえに、暗号鍵が変更された後もWhatsApp自体はやりとりをブロックせず(Signalではこの時点でやりとりがブロックされる)、送信者と受信者が自分たちで通知内容からリスクを判断しなければならないとBoelterは強調している。

「WhatsAppは、送信者にメッセージが送信済みだと知らせることなく、もともとの送付先にメッセージを送り続け、しばらくたってから暗号鍵を変更するという選択もできるはずです」と彼は付け加える。

ではBeolterはどのメッセージアプリを推奨しているのか?「私はSignalを使っています」と彼は話す。「Signalはオープンソースですし、ビルドの再現性を高める努力を重ねています。またサーバーに保管されるメタデータの量も、WhatsAppのプライバシーポリシーに規定されている量より少ないと言われていますし、WhatsAppと同じくらい簡単に使えます」

さらに前述のブログポストの中でBoelterは、WhatsAppによるSignalの実装方法と関連づけて「クローズドソースで自社開発された暗号化ソフトはおすすめできません。結局のところ、この有害な可能性のあるコードによって、私たちが送受信する全てのメッセージが処理されているんです。今後FBIは標的をAppleからWhatsAppに移し、解読されたメッセージ全てがFBIに届く設定がされたバージョンをリリースするよう要請するかもしれません」と記している。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

ゲーマー向けチャットアプリのDiscordのユーザー数が2500万人に到達:同時に無料のSDKを発表

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モバイル・ソーシャル・ゲーミングのOpenFeintを創業し、買収によるエグジットも果たしたJason Citronは、2015年5月にDiscordをローンチしてゲーミング・スタートアップ業界に復帰した。Discordはゲーマー向けの音声通話/メッセージングアプリで、SkypeやTeamspeakの対抗馬となる存在だ。同アプリはこれまでに2500万人のユーザーを獲得し、プラットフォーム上でやり取りされるメッセージは1日あたり1億件だという。そして本日、Discordは新しいプロダクトをリリースした。ゲーム内での音声やテキストのやり取りを可能にするGameBridgeだ。

無料のSDKとして提供されるGameBridgeは、ゲーム内で音声通話とテキストのやり取りを可能にする、新しくてシンプルな方法であり、コミュニティ内でのユーザー同士の交流を可能にする。

ユーザーはGameBridgeを利用して、ゲーム内に設けられたテキスト・チャンネルでゲームのリプレイやアチーブメントを投稿することで他のプレイヤーと交流を図ることができる。ゲームの開発者は用意されたディベロッパー・ツールを使うことでゲーミング・チャンネルを管理することが可能だ。例えば、GameBridgeではプレイヤーをチャンネルに加入させたり、脱退させたりすることが可能で、GameBridgeはボイスチャンネル内にどのユーザーがいるのかを判断し、そのユーザーが何か話した時にはそれに反応するようになっている。ミュートやボリュームの変更など、同プロダクトを通してローカル環境の音声設定を変更することも可能だ。

ギルドチャット用に構築されたGameBridgeのチャットボットを利用することで、ゲーム外のコミュニティを拡大することもできる。ゲームの開発会社が発売前のゲーム向けにコミュニティを構築して、そのコミュニティ内でテスターたちがゲームの感想やフィードバックを話合うような場を提供することができるのだ。

もちろん、ゲームのディベロッパーは数あるGameBridgeの機能の中から好きなものを選んで、その機能をゲームに統合することができるようになっている。

「従来では、ディベロッパーがゲームに音声チャットとテキストチャット機能を持たせようとした場合、3つの選択肢がありました。そのどれもが、多大な時間とリソースを費やさなければならないものでした。一つのオプションは、自分たちでゼロからツールを構築すること。2つ目は、他社のテクノロジーを使用するライセンスを取得することですが、この方法では利用できる機能の範囲や、カスタマイズできる範囲が限られています。そして3つ目は、何もしないという選択肢です」とDiscord CMOのEros Resminiは説明する。「GameBridgeは、とても強力な4つ目の選択肢なのです」。

Discordのチャットアプリと同様、GameBridgeのSDKは無料で提供されている。同社はこれまでに調達した資金で運営費用をまかなっているからだ。将来的には、同社はコスメティック・アイテム(ステッカーやサウンド・パックなど)の販売から収益を獲得していく予定ではあるが、まだその段階には至っていない。

プロダクトの無料提供が功を奏し、Discordはここ数カ月間で力強い成長率を叩き出している。

過去5ヶ月間で登録ユーザー数は2倍になり、現在のユーザ数は2500万人だ。週のピーク時における同時利用者は230万にものぼる。また、Discordには2万人以上のアクティブユーザーを抱えるコミュニティー・サーバーがいくつかあり、その中には4万人以上のメンバーが利用するサーバーもある。

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ローンチと同時に、すでに10社のゲーム開発会社がGameBridgeのユーザーとなり、彼らのゲームに同プロダクトが統合され始めている。Nexon/Boss Key Productionsが開発するFPS(一人称シューティングゲーム)のLawBreakersや、TrionのAtlas Reactorなどがその例だ。

現在、GameBridgeのプライベートβ版が公開されている。興味のあるディベロッパーはDiscordのWebサイトから利用登録できる。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter