モバイル投票は新型コロナに苦悩する投票所を救う

2020年大統領選挙を目前にして、不正投票への不安を巡って激しく対立しする米国では、今なお脅威が衰えない新型コロナウイルスへの対応として、州や地方の選挙管理人たちが投票の延期と投票妨害の告発を求めている。

選挙管理人の課題は、投票所の安全と効率性を保ち、市民により効果的で信頼性の高い選択肢を提供することだ。

新型コロナウイルス対策として全国に広がった郵便投票という選択肢は、選挙事務員への過度な負担増加(AJC記事)と、有権者の選挙権が剥奪されかねないという点で非難されている。予備選挙では、郵便投票の投票用紙が失われたり、票数に入れられないことがあった。

最近になって、従来の不在者投票よりも多くの郵便投票を許可することに政府の批判(Washington Times記事)やメディアの批判(CBS News記事)が集まっているが、そこではシステムの欠陥に鋭い光が当てられている。

私は、投票者の身元を保証しつつ、その匿名性を保ち、新型コロナウイルスから守ることができる、より優れたテクノロジーの導入という道があると信じている。人が投票所に赴く直接投票を補完するモバイル投票は、今の政治的に緊迫した空気の中では、最も合理的な選択肢だ。

今の投票システムは時代遅れ

投票所で直接行う以外の投票方法の選択肢を提供する取り組みは、いまだ底知れず低迷を続ける投票率の向上を目指して年々増加している。郵便投票、投票時間の延長、週末投票、その他のアイデアは、ある程度は成功しているものの、旧来の時代遅れな手段への依存は変わらない。地域ごとに投票方法を決められるアメリカの分散型投票制度は、紙による投票から、メカニカルな投票装置、タブレットのタッチスクリーンを使う電子投票に至るまで、さまざまな投票デバイスを生み出した。

古風な投票方式について語ろうとするなら、「Hanging Chad」という言葉が選挙用語に加わった2000年大統領選挙の再集計問題を見れば事足りる。Hanging Chadとは、パンチ式投票用紙の穴がきれいに開かずに、穿孔くずがくっついている状態のこと。それを有効票とするか否かで過去に問題になった。この2000年大統領選挙の教訓から数々の投票方式の改善が試みられてきたが、20年が経過した現在でも、多くの地域で同じ方式が使われており、同じ失敗が繰り返されている。

今年前半の予備選挙では、郵便投票を広めようとする努力が難航(Newsweek記事)した。ペンシルベニア郡では6000人の投票者が、投票日の前日までに票を発送せず、締め切り前日の消印がもらえなかった。

投票用紙の請求を行ったにも関わらず、投票期限までに用紙を受け取れない投票者が全国にいた。期限までに投票用紙が郵送された場合でも、一度に大量の投票を受け取った選挙事務員は、すべてを集計しきれなかった(New York Times記事)。

投票所での投票は長い行列やマスクなど危険な密集状態

新型コロナウイルスが大部分の地域に居座っている状況で、選挙事務員は、投票所で行われる直接投票での住民のための安全対策を考える必要があるが、それでも惨事となる危険性は残る。大統領選挙では、投票所に長い行列ができて長時間待たされる地域が少なくない。投票者の登録を確認する受け付けテーブルで、選挙管理人やボランティアの数が不足していることもしばしばだ。

ボランティアは高齢者が多く、ウイルスに感染した場合に重篤化するリスクが高い。選挙管理人は、投票者の安全を守るだけではく、職員やボランティアの安全も同様に守る必要がある。そのためには、より多くの手順、検査方法、必要に応じて消毒の方法を設定しなければならず、それが投票者の待ち時間をさらに延長しかねない。

何百もの人たちが列に並び、待ち時間が数時間にもおよぶとなれば、投票を諦める市民が増えてしまう恐れがある。これは米国の民主主義にとって大変な災難だ。

モバイル投票なら安全

モバイル投票システムでは、登録投票者は自分のスマートフォンと認証されたアプリで投票を記録できる。ブロックチェーン技術を使ってアプリはオーディット・トレール(監査記録)を提供し、投票者の身元を確認する。モバイル投票は、紙の記録も残せるので、さらに安全度が高まる。

初期のモバイル投票プログラムは、米国の住民と海外に赴任している軍関係者が簡単に投票できる手段を提供した。新型コロナウイルスの耐性が低い身体障害者にも有効だ。

2018年、ウェストバージニアで市民と海外の軍関係者に対して実施されたモバイル投票の試験運用では、高い投票率が示された(New York Times記事)。

モバイル投票はまた、ウェブによる投票システムを含む(Voatzブログ記事)その他の電子投票方式よりも安全であることが証明されている。電子投票に批判的な人たちはハッキングの危険性を指摘するが、事実はそれを否定している。

2020年5月、慈善団体のTusk Philanthropies(タスク・フィランソロピーズ)は、5つの州で、複数のモバイル投票技術のプラットフォームを用いて、海外の投票者と障害者を対象にモバイル投票の実験を行った。選挙の安全性を心配するのはいいことだが、モバイル投票は、投票用紙の期限切れや紛失、書き損じ、機械の故障などさまざまな欠陥の可能性を含む既存のどの選挙制度よりも安全性は高い。

全員が参加してこそ民主主義は強くなる

この困難で不安な時期、私たちの政府のリーダーには、信頼と誠実さが何よりも求められる。安全で確実で信頼できる環境で投票する米国人の権利は、実に多くの祖先たちが命を賭して守ってきた理想を堅持するための礎となる。

参加する市民の数が増えれば、民主主義は強くなる。新型コロナウイルスのパンデミックが世界的で続く中、この秋の大統領選挙で「投票災害」を防ぐ新たな選択肢の探求を怠れば、米国の未来に深刻な影響を及ぼしかねない。

【編集部注】著者のJonathan Johnson(ジョナサン・ジョンソン)は、Medici Venturesの社長でOverstock.comのCEOを務める人物だ。

画像クレジットerhui1979 / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

Facebookの従業員グループが政治広告の嘘を規制するようザッカーバーグ氏に要求

大統領選挙の政治広告をファクトチェックに送ること、マイクロターゲティングを制限すること、出費できる広告費に上限を設けること、選挙活動禁止期間を監視すること、または少なくともユーザーに警告すること。これらは、Facebook(フェイスブック)の従業員が、政治広告の偽情報に対処するようCEOマーク・ザッカーバーグ氏と会社幹部に宛てた公開嘆願書の中の対処案だ。

この書簡はニューヨーク・タイムズのMike Isaac(マイク・アイザック)氏が入手したもの。それは、「自由な言論と有料の言論は別物だ。政治家や選挙候補者のファクトチェックに関する私たちの現在のポリシーは、Facebookの根幹である精神を危険に晒している」と主張している。数週間前、Facebookの内部協力フォーラムに投稿された。

関連記事:Facebookは選挙キャンペーン広告を禁止し、嘘を止めよ(未訳)

この考え方は、私が10月13日にTechCrunchで公開した、Facebookは政治広告を禁止すべきと訴えたコラムの内容と重なっている。Facebookの政治広告で流される歯止めのない虚報は、政治家とその支持者によって、その主張やライバル候補に関する感情的で不正確な情報が拡散され、さらにそうした広告のための資金集めを助長している。

Facebookは、金持ちの不誠実な人間ほど大金を投じて大声で嘘を拡散できる現状を制限しつつも、各自のFacebook・ページでの自由な発言を許すことは可能だ。私たちは、Facebookがもし政治広告を禁止しなければファクトチェックを行うか、攻撃される恐れのない投票や寄付といった一般的な広告ユニットを使うこと、またはその両方を行うことを提案した。さらに、コミュニティーへのマイクロターゲティングが虚報に対して脆弱であり、簡単に寄付できるリンクはFacebookの広告を、同等のテレビやラジオのスポット広告よりも危険なものにすると批判した。

10月23日水曜日、ワシントンD.C.にて下院金融サービス委員会で証言するFacebookのCEOマーク・ザッカーバーグ氏(写真:Aurora Samperio/NurPhoto via Getty Images)

3万5000名のFacebook従業員のうち、250名以上が書簡に署名をした。そこではこう明言されている。「私たちは現状のポリシーに強く抗議します。それは人々の声を擁護しておらず、反対に、政治家の投稿は信頼できると信じる人々へのターゲティングにより、政治家が私たちのプラットフォームを兵器化することを許すものです」と。現在のポリシーは、選挙の品位を保つためのFacebookの努力をないがしろにし、虚報を容認し、嘘で利益を得ることを良しとしているというシグナルを発してユーザーを混乱させていると訴えている。

提案された対処策は次のとおり。

  1. 第三者によるファクトチェックを受けない限り政治広告は受け付けない。
  2. 政治広告と政治的でないオーガニック投稿との区別がつくよう視覚デザインを変える。
  3. カスタムオーディエンスの使用を含む政治広告のマイクロターゲティングを制限する。なぜならマイクロターゲティングは、政治家の誠実性を保つとFacebookが主張している世間の厳しい目から、それを隠してしまうため。
  4. 選挙活動禁止期間中の政治広告を監視し、虚報による影響と拡散を制限する。
  5. 政治家または候補者による広告への出費を、彼ら自身とその政治活動委員会を含めた合算で制限する。
  6. ファクトチェックを受けていない政治広告がひと目でわかるようにする。

これらのアプローチを組み合わせることで、Facebookは虚報が拡散される前に、または個々の主張の監視を行う必要性が生じる前に、政治広告を止めるか禁止することができる。

この書簡に対するFacebookの反応は「私たちは今後も政治的言論への検閲を行わない立場を維持し、政治広告にさらに踏み込んだ透明性を持たせるよう検討を進める」というものだった。だが、これは書簡の論点をすり替えている。従業員たちは、Facebookから政治家を追放せよとは言っていないし、彼らの投稿や広告を削除せよとも言っていない。警告の印を付けて、金によるリーチの拡大を制限しようと言っているだけだ。それは検閲には当たらない。

報道機関や、民主党ニューヨーク州選出のアレクサンドリア・オカシオ・コルテス下院議員をはじめとする政治家たちからの反発にも関わらず、ザッカーバーグ氏は現在のポリシーを堅持している。議会証言の際にコルテス議員から、具体的にどんな虚報が広告では許されるのかと質問されたザッカーバーグ氏は言葉を詰まらせていた

しかしその後の金曜日、共和党のリンゼー・グラム議員がオカシオ・コルテス議員のグリーン・ニュー・ディール法案に賛成したとする、ファクトチェックの能力を試す目的で出された広告の掲載を取り止めた。グラム議員は実際には反対している。Facebookは、今後は政治活動委員会の広告をファクトチェックにかけるとロイターに話した。

Facebookにできる、政治家の広告のためのひとつの賢明なアプローチとして、ファクトチェックを重ねることがある。大統領選の候補者を手始めとして、より正しく精査できるようにデータを増やすのだ。嘘と判定されたものは、単に嘘を示すラベルを添付するのではなく、コンテンツをブロックする形でインタースティシャル警告を表示する。これは、一般向けにあまり目立ちすぎない、州ごとのターゲティングのみを許可する、政治広告の大きな断り書きと組み合わせて使うことができる。

広告料金の出費制限と選挙活動禁止期間の決定は、少し複雑だ。低く制限すれば、選挙活動の公平さを保つことができ、活動禁止期間を広げれば、とくに投票期間中は、有権者の投票を妨害するボーター・サプレッションを防止できる。おそらくこれらの制限は、Facebookが開設を予定し、モデレーションとポリシーの最高裁判所となる監督委員会に委ねられることになるだろう。

ザッカーバーグ氏の主張の核心には、時が経てば歴史は検閲ではなく言論に傾く、という考えがある。しかしそれは、テクノロジーは正直者にも不正直者にも平等に恩恵を与えるという前提に基づく理想郷的な詭弁に屈している。現実には、分別のある真実よりも煽動的な虚報のほうが、ずっと遠くまで、ずっと早く到達する。無数のバラエティーに富むマイクロターゲティング広告は、嘘つきを罰するように作られた民主的な仕掛けを無力化し威圧する。その一方で、盲信的な支持者の報道機関が正直者を非難し続ける。

ザッカーバーグ氏は、Facebookが真実の警察になることを避けたがっている。だが、もし彼が、その正しいと信じる思想信条から一歩退いてくれたなら、私たちやFacebookの従業員たちが提案するように、虚報を制限するための進歩的なアプローチの可能性が開かれる。

Facebook従業員が会社幹部に宛てた、政治広告に関する書簡の全文をここに掲載する。ニューヨーク・タイムズより転載。

私たちは、ここで働くことに誇りを持っています。

Facebookは、思いを発言する人々の味方です。討論し、異なる意見を交換し、考えを表現する場所を作ることにより、私たちのアプリやテクノロジーは世界中の人々にとって有意義なものとなります。

このような表現を可能にする場所で働けることを私たちは誇りに思うと同時に、社会の変化に伴い進化することが必然であると信じています。クリス・コックスもこう言っています。「ソーシャルメディアの効果は中立ではなく、その歴史はまだ刻まれていないことを、私たちは自覚している」

ここは私たちの会社です。

私たちは、この会社のリーダーであるあなたたちに訴えます。なぜなら今の路線が、我らがプロダクトチームが、この2年間、品位の保全のために達成した大いなる前進を無に帰するものであることを憂慮しているからです。私たちがここで働く理由は、それを重視しているからであり、ほんの些細な選択も、恐ろしいほどのスケールで社会に影響を及ぼすからです。手遅れになる前に、私たちはこの懸念を表明したいと思います。

自由な言論と、有料の言論とは別物です。

虚報は、すべての人たちに影響を与えます。政治家や政界を目指す人たちを対象にした私たちのファクトチェックのポリシーは、Facebookの根幹を脅かします。私たちは、現状のポリシーに強く抗議します。それは人々の声を擁護しておらず、反対に、政治家の投稿は信頼できると信じる人々へのターゲティングにより、政治家が私たちのプラットフォームを兵器化することを許すものです。

現在の状態で、広告料を受け取り市民向けの虚報をプラットフォームで公開すれば、以下の事態が予想されます。

広告料を支払ったコンテンツと類似のオーガニックコンテンツを、または第三者のファクトチェックを受けたものと受けていないものを、同列に表示することを許せば、プラットフォームへの不信感が増加します。さらにそれは、権力の座にある人、または権力の座に着こうとしている人による故意の虚偽報道キャンペーンから利益を得ることを私たちが是認しているとのメッセージを発することになります。

品位ある製品開発が無駄になります。現在、品位の保全を担当する数々のチームは、より文脈に即した形でのコンテンツの提示、違反コンテンツの降格といったさまざまな課題に懸命に対処しています。Election 2020 Lockdown(2020年大統領選挙ロックダウン)に関して、品位保全担当チームは、支持と不支持の難しい選択を行ったところです。ところが今のポリシーは、プラットフォームの信頼性を低下させ、彼らの努力を無に帰するものです。2020ロックダウンの後も、このポリシーには、今後世界で実施される選挙に危害を与え続けることになります。

改善案

私たちの目標は、従業員の多くが今のポリシーに納得していないことをリーダーたちに知ってもらうことにあります。
私たちは、私たちのビジネスと、私たちの製品を利用される人々の両方を守るための、よりよい解決策をリーダーのみなさんと共に作り上げることを望んでいます。この作業には、微妙な見解の違いがあることは承知していますが、政治広告を完全に排除しない方向で私たちにできることは数多くあります。

以下に示す提案は、すべて広告関連のコンテンツに関するものであり、オーガニックコンテンツは対象としません。

1. 政治広告に、他の広告と同じ基準を適用する。

a. 政治広告でシェアされる虚報には、私たちの社会に並外れた不利益をもたらす衝撃力があります。他の広告に義務付けられている基準に準拠しない政治広告からは、料金を受け取るべきではありません。

2. 政治広告には明確な視覚デザインを施す。

a. 政治広告とオーガニックな投稿との見分けに人々は苦労しています。政治広告には、はっきりそれとわかるデザインを施し、人々が簡単に話の流れを把握できるようにすべきです。

3. 政治広告のターゲティングを制限する。

a. 現在、政治家や政治キャンペーンは、カスタムオーディエンスなど、私たちの高度な広告ターゲティングツールが利用できます。政治広告の広告主の間では、有権者名簿(有権者に接触できるよう公開されています)をアップロードし、行動トラッキングツール(Facebook・ピクセルなど)や広告エンゲージメントを使って宣伝効果を高めるのが一般的です。これを許可することで生じるリスクは、有権者が、私たちが称するところの政治的発言に伴う“世間の監視”に参加しにくくなることです。こうした広告は、マイクロターゲティングされていることが多いため、私たちのプラットフォームでの会話は、他のプラットフォームでのものに比べて、ずっと閉鎖的なものになります。現在、私たちは、住宅、教育、クレジットのバーティカルマーケティングでは、差別問題の過去があるためにターゲティングを制限しています。同様の制限を政治広告にも広げるべきです。

4. 政治活動禁止期間中の監視を広げる。

a. 各地方の法令や規制に従い、選挙活動禁止期間中の監視を行います。世界中のあらゆる選挙における自主的な活動禁止期間を調査し、誠実な良き市民として行動します。

5. 個々の政治家ごとに、資金源に関係なく、出費制限を設ける。

a. 政治広告を掲載する利点として、発言を広く伝えられることがあると、Facebookは主張してきました。しかし、高明な政治家は大金を注ぎ込み大きな声で主張を行い、ライバル候補の声をかき消してしまいます。この問題を解決するには、選挙活動委員会と政治家の両方が広告を出す際には、個々の広告主ではなく、両者の広告費を合算して上限を設けます。

6. 政治広告のポリシーを明確にする。

a. もしFacebookが政治広告のポリシーを変更しないならば、政治広告の表示方法を更新する必要があります。消費者と広告主にとって、政治広告が、他の広告に適用されるファクトチェックを免除されていることは、すぐにはわかりません。私たちの虚報に関する広告ポリシーでは、元の政治コンテンツや広告には適用されないことは、誰にでも簡単に理解できるようにしなければなりません。とくに、政治的な虚報は、他のタイプの虚報に比べて破壊力が大きいためです。

そのため、政治セクションは“禁止コンテンツ”(絶対に掲載不可)から外し、“制限コンテンツ”(制限下で掲載可能)に移すべきです。

私たちは、実際の変化を確かめられるよう、オープンなダイアログでこれを議論したいと思っています。

私たちは、品位保全の担当チームの仕事に誇りを持っています。今後数カ月間、私たちはこの議論を続け、共に解決策に向けて協力できることを願っています。

今でもここは私たちの会社です。

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(翻訳:金井哲夫)

これがトランプ政権が掲げるテクノロジー政策だ

NEW YORK, NY - NOVEMBER 09:  Republican president-elect Donald Trump acknowledges the crowd during his election night event at the New York Hilton Midtown in the early morning hours of November 9, 2016 in New York City. Donald Trump defeated Democratic presidential nominee Hillary Clinton to become the 45th president of the United States.  (Photo by Joe Raedle/Getty Images)

ドナルド・トランプはテクノロジーに詳しくない。私たちが彼について知っているのはそれくらいだ。彼は携帯電話やEメールをあまり利用しないことで知られている。Anderson Cooperがモデレーターを務めたCNN主催のタウンホール・ミーティングでは、トランプ流のツイートの仕方が説明されている。「そばにいる若くて素晴らしい女性たちの1人に、ツイートしてほしい内容を叫ぶだけだ。私がやることは叫ぶことだけで、あとは彼女らがやってくれる」。

しかし、たとえ彼がアーリーアダプターではないにしろ(そして、コンピューターを生涯使わないかもしれないにしろ)、大統領選挙に当選した彼の政策はテクノロジー業界に大きな影響を与えることになる。そして、最終的には私たちの生活にも大きく関わってくる。

テクノロジーが彼の政策の中心的な要素となっているわけではないが、インタビューやスピーチ、ディベートの中には彼がテクノロジーについて語っている部分がある。そこから、トランプ大統領のテクノロジーに関する政策を予測してみよう。

Apple製品はアメリカ国内で製造させる:トランプはこれまでもAppleに対して強い態度を取ってきた。サンバーナーディーノで起きた銃乱射事件の犯人から押収したiPhoneのロック解除をAppleが拒絶した問題に対してトランプは、バレンタイデーの5日後にApple製品のボイコットを訴える発言をしている。

その1ヶ月前には、彼は中国に対する不信感を利用するように、Apple製品はアメリカ国内で製造させると発言している。バージニア大学に集まった聴衆に対してトランプは、「Apple製のコンピューターは他のどこでもなく、アメリカ国内で製造させる」と話した。彼はまた、Ford製のクルマやOreoのクッキーについても同様の発言をしている。

温暖化対策の予算を削減する:彼はインタビューの中で地球温暖化問題について大いに語っている。そのほとんどは、地球温暖化という問題が存在している事すら信じていないという主張だ。または、それを引き起こしたのは人間ではないという主張である。地球温暖化は中国のでっちあげだと主張する時もあった。9月のCNNとの対談で彼は、「きれいな空気や、清潔さというものは信じているが、地球温暖化は信じていない」と話している

2012年のツイートを見てみると、「地球温暖化のコンセプトは、アメリカの製造業の競争力を落とすことを狙う中国によって作り上げられたものだ」と彼は述べている。彼は「ジョーク」だと言うかもしれないが、その数年後にはもう一度、地球温暖化はでまかせであり、アメリカはその対策にお金を費やすべきではないと述べている。

2015年12月に開かれた集会では以下のように述べる場面もあった。「オバマはこのことを地球温暖化と関連付けて話しているが、(中略)その多くはでまかせだ。でまかせなんだ。つまり、地球温暖化は金になるんだ。いいかい?それはでまかせなんだ、そのほとんどはね」。彼の主張は明らかだろう。また、寒い日が来ると彼は、これこそが自身の「でまかせだ」という主張を裏付けていると述べることもあった。

Jeff Bezosには悪い知らせ:「もし私が大統領になったとしたら、彼らに何か問題があるだろうか」。これは、今年2月にトランプがJeff BezosとAmazonを指して言った言葉だ。「大いに問題だろう」。その時トランプは、Jeff BezosによるThe Washington Postの買収について話していたところだった。Jeff Bezosが「クリントンびいき」のThe Washington Postを、税金逃れの手段、そしてAmazonに有利となるような政治的な影響力を振りかざすための手段として利用しているという主張だ。

それに対する返答としてBesozがトランプに用意したのは、彼が開発するBlue Originロケットの乗車券だった(これは片道チケットだと推測する人もいる)。

NASAは低軌道を離脱して、地球の調査をやめるべきだ:トランプはアメリカの宇宙開発プロジェクトを大きくしたいと考えている。NASAの本拠地があるフロリダに集まった聴衆に彼は、「地球低軌道の物流業者という役割からNASAを開放する。その代わりに、私たちは宇宙のさらなる探検に注力する。トランプ政権になったあと、宇宙開発の主導権を握るのはアメリカとフロリダなのだ」と述べた

だが、トランプが無限の彼方に興味があることを示す一方で、彼のNASA計画には内省の意味が込められているとは言いがたい。つまり、彼の政権は地球上の生命には興味がないということだ。

先月公開されたSpace Newsの論説では、2人の専門家が「NASAは地球中心の活動よりも、深宇宙での活動に専念すべきだ」と述べている。おそらくこの見解は、トランプが人間が引き起こしたものではないと主張する、地球上の気候変動のことを考慮したものではないだろう。
まあ、居住可能な新しい惑星を地球が完全に破壊される前に見つけることができれば、万事うまく収まるというわけか。

ネットワーク中立性は支持しない:トランプがネットワーク中立性について不平を言う理由は、彼がこのコンセプトを検閲とイコールで考えているのが理由のようだ。彼はネットワーク中立性のことを「トップダウン型の権力掌握術」だと呼び、それはFCC(連邦通信委員会)の公平原則と同じようなものだと加えた。公平原則とは、ある問題のすべての側面に対して均等な時間を割いて取材をし、その問題を公平に伝えることをニュースの報道者に求めたものだ。今後予定されている、反規制を掲げる運動家のJeffrey Eisenachとトランプとの会見は、ネットワーク中立性の支持者にとって悪いニュースだと考えられている。

サイバー攻撃には厳罰を:ヒラリー・クリントンとの最初のディベートで明らかとなった、トランプのサイバーセキュリティに関する政策は、、、とても分かりづらかった。モデレーターのLester Holtにサイバー攻撃について聞かれると、彼はこう語った。

私たちはサイバー攻撃やサイバー戦争に対して厳しい態度で望む必要があります。これは大きな問題なのです。私には10歳になる息子がいて、彼はコンピューターを持っています。それを彼は非常にうまく扱うので驚きです。インターネットのセキュリティというものは、とても、とても難しい。もしかすると、それは達成不可能なものなのかもしれません。しかし私が言いたいのは、私たちはやるべき事をやっていないということです。

トランプのWebサイトでは、彼がこのコメントで言いたかったことをもう少し明確に伝えている(このコメントよりも何かを明確に伝えることは、そう難しいことではないことは明らかだが)。そこではヒラリー・クリントンのEメール問題が何度も言及されているのに加えて、ハッキング被害を伝える過去数年分の記事の引用、そして、アメリカのインターネットがもつ脆弱性に対して彼がどのように行動していくかということが列記されている。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

Google、最速で選挙結果発表へ―アメリカ大統領選、いよいよ本日投票

FILE - This Oct. 20, 2015, file photo, shows a sign outside Google headquarters in Mountain View, Calif. Google unveils its vision for phones, cars, virtual reality and more during its annual conference for software developers, beginning Wednesday, May 18, 2016. (AP Photo/Marcio Jose Sanchez, File)

今回のアメリカの大統領選〔日本時間11/8夜から投票開始、11/9朝に締切り〕に関して、Googleはオンラインでできるだけ速く正しい情報を伝えるためためにあらゆる努力を払っている。これには有権者登録を助けることから検索で簡単に投票場所の案内が表示されるようにすることまでさまざまな情報の提供が含まれる。

今日(米国時間11/7)Googleは、投票締め切り後直後に30言語で大統領選の結果を検索ページに表示する計画だと発表した。ウェブ検索で“election results”と入力すれば、詳しい情報が表示される 大統領選、上院選、下院選、知事選および州レベルの住民投票の結果が表示されるという。

表示内容は連続的にアップデートされ、常に最新の情報が得られる。Googleの公式ブログ記事に掲載されたスクリーンショットによれば30秒サイクルで情報のアップデートが行われるようだ。 トップに表示されるタブの切り替えで大統領選、上院選などさまざまな選挙戦の結果が表示される。結果表示には、たとえば、大統領選で勝利が決まるまでにあとどれほどの票数が必要か、上院、下院で選挙対象になっているのはどの議席か、州知事が改選されるのはどの州かなどが含まれる。

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データは民主党は青、共和党は赤という伝統色を用いており、主要な結果が見やすいフォーマットで表示される。

Googleはこれまでも有権者の投票を助けるためのさまざまなツールを提供してきたが、今回の選挙戦ではその努力をもう一段階アップさせた。たとえば、モバイル版、ウェブ版ともに、有権者は投票の登録投票方法(事前投票を含む)、 候補者リストを簡単に検索で知ることができる。またこうした投票ガイドラインはスペイン語でも提供される

Googleは有権者に投票を呼びかけるため、普段は真っ白な検索ホームページを大胆に使っている。加えてアメリカ国内ではGmailのトップにも投票できる場所も表示される。これは今回が初めての試みだ。有権者に投票を呼びかけるためにGoogle Doodleも活用される

Googleが努力をステップアップさせたのは、選挙に関してオンライン情報に頼る人々がますます増えているからだ。同社によれば、 “how to vote”(投票の方法)というフレーズで行われるGoogle検索のトラフィックは2012年の選挙に比べて233%もアップしているという。

選挙結果は投票締め切り後できるかぎり迅速に表示されるという。Googleによれば、YouTubで選挙結果を伝えるライブ・ストリーミングが行われる。これはNBC,、PBSMTVBloombergTelemundoThe Young Turksその他のメディアが参加している。視聴者は候補者討論会のストリーミング中継(および再生)をすでに2000万時間分も視聴しているということだ。

画像: Marcio Jose Sanchez/AP

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Facebookが「選挙ガイド」とも呼べる新しい機能をリリース 

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本日、Facebookは大統領選挙から上下院議員や州知事の選挙まで、あらゆるタイプの選挙をカバーした選挙ガイドとも言える新機能をリリースした。「投票への参加を促す」ことが目的だ。この機能では、ユーザーは候補者や法案を「お気に入り」に登録することができ、実際の投票のときに後から自分のお気に入りを確認することが可能だ。

Facebookが注意喚起するように、この機能はインターネット投票ツールではない。そのため、Facebook上の投票結果が実際の選挙での投票数にカウントされるわけではない。しかし、大統領選挙の候補者や法案などのことをよく知るきっかけにはなるだろう。

この新機能はFacebookがこれまで導入してきた選挙関連機能のなかでも最新のものとなる。今年初めに同社がリリースした「投票に登録」機能は200万ものユーザーに利用されただけでなく、最近では政治家がFacebookページに自身の政治スタンスを表示したり、ユーザーがFacebookページを通じてその政治家を支持できる機能などを導入している。しかし、Facebookが本格的な政治関連の機能をリリースしたのはこれが初めてだ。今日からこの機能を利用することができるが、それがニュースフィードにも表示されるのは来週以降になる。

ユーザーはこの機能を利用して候補者の政治スタンスを確認したり、彼らを支持するコメントを確認したり、お気に入りの政治家を選んだり、投票した結果を自分自身にメールすることで後から確認したりすることが可能だ。Facebookが先週リリースした機能によって集められた候補者を支持するコメントや政治スタンスは、この新機能でも確認することができる。

大統領選挙は連日新聞の一面を飾っており、多くのユーザーはすでに自分が支持する候補者を心に決めているとは思うが、地方の議員選挙や法案のことまで良く知るユーザーは少ないだろう。また、誰を支持するか決めかねているとすれば、友達が支持する候補者を確認して参考にすることもできる。

現在のところ、この機能で確認できるのは大統領選や州議員選挙に関する情報だけだ。ローカルの選挙に関する情報も確認したい場合には住所を入力する必要がある。Facebookによれば、投票に関する情報は60日間保存された後に破棄され、このツールによって集められたデータを公表することはないという。

自分の投票内容の公開範囲をそれぞれの項目ごとに選択することも可能だ。つまり、ある法案を支持するコメントを公開する一方で、大統領選でどの候補者に投票するのかは秘密にしておくこともできる。

新機能を発表したブログのポストのなかで、Facebookのスポークスパーソンは「投票に参加したいと思っている人々がより簡単に参加できるような仕組みをつくり、政治について発言する場を提供したいと思っています」と話している。

Trending Topicsのリリース後、それがもつ保守的なニュースに対するバイアスを指摘されたFacebookにとって、この新機能に対する異議申し立てや、それが不公正ではないかという批判は避けたいところだろう。そのため、候補者や彼らの政治スタンスに関する情報はFacebook自身が集めたものではない。より公平な機関であるCenter for Technology & Civic LifeがFacebookの代わりに全米の選挙情報を集め、そのデータを提供しているのだ。そのデータの中に誤りを見つけた場合、Facebookにレポートすることが可能だ。

この新機能について動画にまとめたので見てほしい:

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter