ロシア、脅迫どおりInstagramのアクセスをブロック

ロシアは現地時間3月14日、Meta(メタ)傘下のInstagram(インスタグラム)をブロックするという脅迫を実行し、同国のユーザー数千万人へのアクセスを遮断した。

ロシアではInstagramは人気だ。Sensor Towerのデータによると、Metaのアプリの中で、ユビキタスなメッセージングサービスWhatsApp(ワッツアップ)に次いで2番目に人気がある。2014年以降、ロシアのApp StoreとGoogle Playで合わせて1億6600万回インストールされていて、Facebook(フェイスブック)の3倍人気がある。

ロシア政府は48時間の「移行期間」を経てInstagramへのアクセスを制限すると同国の検閲機関Roskomnadzorが発表した後、InstagramのトップAdam Mosseri(アダム・モセリ)氏は同国の8000万人に影響を与えるロシアの行動を非難した。

「ご存知のように、Meta Platforms Inc.は3月11日、同社のソーシャルネットワークFacebookとInstagramにロシア市民に対する暴力の呼びかけを含む情報の投稿を許可するという、前例のない決定を下しました」とRoskomnadzorは3月11日のブログ記事で、Metaがロシア人に対する暴力を助長したと非難している。

ロイターは先週、ロシアのウクライナ侵攻を踏まえてMetaがコンテンツポリシーを密かに調整し、ウクライナ国内でのロシア兵に対する暴力の呼びかけを認めていると報じた

同社のグローバル問題担当のNick Clegg(ニック・クレッグ)社長は、このポリシーの変更を「自衛の表現としての言論に対する人々の権利を守る」ための一時的な変更と位置づけ、これを擁護した

「事実、もし私たちが何の調整もなしに標準的なコンテンツポリシーを適用した場合、私たちは今、侵攻する軍に対する抵抗と怒りを表現する普通のウクライナ人のコンテンツを削除することになり、それは当然受け入れ難いとみなされるでしょう」とクレッグ氏は書いている。

ロシア政府によるInstagramの制限は厳しいように聞こえるが、経験豊富なユーザーはブロックされた同アプリにアクセスするためにVPNとTorを使って自分の位置情報を隠す方法を見つけることができる。Twitter(ツイッター)は先週、ロシアの規制を考慮して独自の検閲回避策を開始し、ユーザーを専用Torバージョンに誘導している。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Nariko Mizoguchi

ロシア、アップルとグーグルに対し「野党支援アプリの削除か刑務所送り」と脅迫との報道―2021年秋から抑圧の下地作り

ロシア、アップルとグーグルに対し「野党支援アプリの削除か刑務所送り」と脅迫との報道―2021年秋から抑圧への下地作り進行

Mikhail Klimentyev/TASS via Getty Images

ウクライナ侵攻が続くなか、ロシア当局のハイテク大手に対する規制も強まり、プロパガンダを抑制しようとしたFacebookやTwitterも国内でブロックされました。そうした圧力は侵攻以前からあり、アップルやGoogleにプーチン政権にとって不都合なアプリを消すよう脅迫していたことが報じられています。

これはロシアの野党指導者で投獄されているアレクセイ・ナワリヌイ氏が構想したアプリ「Smart Voting」をめぐってのことです。本アプリはロシア政府や与党「統一ロシア」に選挙で対抗するために、最も有利な候補者を支援するものでしたが、ロシア当局はアップルとGoogleにアプリストアから削除するよう要請。はじめ両社とも従いませんでしたが、結局は圧力に屈してどちらも削除しています

米The Washington Postによると、アップルとGoogleのモスクワにいる幹部らは、このプーチン大統領が嫌っているアプリに関して、9月に直接脅迫されたとのこと。それぞれの幹部の自宅に捜査官が現れ「24時間以内にアプリを削除しないと刑務所に入れるぞ」と脅したと伝えられています。

そのうちGoogleは宿泊客と警備員が近くにいればある程度は守られると考え、速やかに幹部を偽名でホテルに移したそうです。が、捜査官は部屋に現われて「まだ時間は残っている」と告げたとのこと。この人物は、秘密警察KGBの流れを汲む治安機関FSB(ロシア連邦保安庁)の職員だと見られています。

この脅迫戦術は功を奏し、アプリは数時間のうちにGoogle PlayとApp Storeから削除されたと報じられています。その後にアップルを初めとしたハイテク大手に現地オフィスを開設を命じた(各企業や従業員らがロシアの法制度や政府の要求に対してより脆弱になる)ことも合わせて、The Washington Postは「現在ロシアで進行中の、ソ連式に表現の自由を抑圧する下地となった」と分析しています。

アップルはロシア政府の要求通りに現地オフィスを開設したとの報道もありましたが、他にも様々な圧力がかけられていたとすれば、やむを得なかったのかもしれません。

(Source:The Washington Post。Via AppleInsiderEngadget日本版より転載)

Bilibiliコンテンツモデレーター過労死疑惑で中国テック業界の長時間労働文化の議論が再燃

中国で先週、オンラインコンテンツのモデレーターが急死したことで、インターネット時代に生まれた職業の労苦に焦点が当たっている。

中国の動画配信サイト「Bilibili(ビリビリ、哔哩哔哩)」でコンテンツを監視していた25歳の男性が、春節(旧正月)中の2月5日に突然亡くなった。この件に詳しい人物から情報を得たというWeibo(ウェイボー、微博)ユーザーの投稿によると、春節の連休中、午前9時から午後9時までの12時間シフトで働いた後のことだったとされている。

この投稿は数時間のうちに何万回も閲覧され、中国のテック業界に蔓延する長時間労働文化に対して、ネット上で新たな抗議の波を引き起こした。

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2009年のサービス開始以来、Bilibiliはサブカルチャーのためのニッチな安息地から、2021年9月時点で月間アクティブユーザー数(MAU)2億7千万人を誇る人気動画共有サイトへと変貌を遂げた。

コミュニティが拡大しているということは、それだけ審査すべき動画が増えているということでもある。中国の広大なネット検閲体制の背後には、WeChat(ウィーチャット、微信)、TikTok(ティックトック)、Weiboなどのコンテンツプラットフォームに雇用されている大勢のモデレーターが存在する。これらのモデレーターは、しばしばコンピュータの前で長時間作業し「違法・有害な」ユーザーの投稿にフラグを立てて削除する。その過酷な労働条件から、インターネット時代の「生産ライン」とも呼ばれている。また、工場での仕事と同様に、一日中コンテンツをパージする作業は、労働者の健康を損なうことにつながる。

過労死疑惑に対してBilibiliは、従業員が亡くなる前の1週間、彼は1日8時間、週5日という標準的な労働時間で働いており、同社は法律に基づいて休日出勤した彼の給与を3倍にしていたと主張している。

「彼が担当していたコンテンツセキュリティモデレーションの仕事は、24時間体制の特別な業務です。他の公共サービスと同様に、コンテンツセキュリティは旧正月であっても止めることはできません」と同社は声明で述べた。

もちろん、このような説明では激昂した世論を鎮めることはできない。「悲劇を繰り返さない」ために、Bilibiliは、コンテンツ監査チームの健康状態を「積極的に改善する」と述べている。そのために、2022年中に1000人のモデレーターを追加して「平均的な仕事量を減らす」とともに、同部門のスタッフに「強化された健康チェック」を導入する予定だという。

Bilibili従業員の死について最初に投稿したWeiboユーザーは、動画配信大手である同社の弁護士から手紙を受け取ったと投稿している。スクリーンネームを「Wang Luobei」とするこのユーザーは、Weiboで500万人近いフォロワーを抱えている。Bilibiliは、この弁護士の手紙についてのTechCrunchの問い合わせには応じていない。

画像クレジット:Gao Yuwen / VCG / Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

アップルとグーグルがロシアでの圧力に屈しクレムリン批判者の戦術的投票アプリを削除

Apple(アップル)とGoogle(グーグル)は、それぞれのロシアのアプリストアから、現在収監されているクレムリン批判者の団体が作った戦術的な投票アプリを削除した。

先にロイターは、ロシアの州が連邦選挙に先駆けて外国のテクノロジー大手への圧力を強めていると報じた。それらは「選挙妨害」という言葉を使って、米国企業がプーチン大統領の高名な政敵を検閲するよう主張していた。

米国時間9月16日のTwitterでは、Navalny(ナワリヌイ)氏の中心的な側近であるIvan Zhdanov(イヴァン・ジダーノフ)氏が、彼の団体はアプリを削除したことでAppleとGoogleを訴訟することを検討している、とツイートした。その検閲行為を「重大な間違い」という。

ジダーノフ氏はまた、チーム・ナワリヌイへのAppleの返答だという文書を公開した。その中ではテクノロジー大手(Apple)がクレムリンによる分類を引用して、ナワリヌイ派の団体を「過激派」グループと呼び、ソフトウェアの削除を正当化している。

Appleの開発者への通知の詳細のスクリーンショット。ジダーノフ氏のツイートより

AppleやGoogleは、事業を展開する国の「すべての現地法」を遵守すると日常的に述べている。

しかしロシアにおいて、その姿勢は、政治的な検閲行為に加担していることを意味する。

Appleは、戦術的投票アプリの開発者に送った取り下げに関する通知の中で、「ロシア連邦検察庁およびモスクワ市検察庁も、このアプリが選挙への干渉を可能にすることでロシア連邦の法律に違反していると判断したことに留意します」と述べている。

「アプリはロシアのApp Storeから削除されましたが、あなたがApp Store Connectで選択した他の地域のApp Storeではまだ利用可能です」とAppleは付け加えている。

TechCrunchは、ナワリヌイ氏のアプリの削除について、AppleとGoogleにコメントを求めている。

アプリ削除の公式の理由はFBKが過激派組織と認められたこと。FBKが過激派組織と認められたやり方は裁判に依らず常識に対する虐待に依っている。@googleと@Appleは大きな間違いを犯している。 下図下部はAppleからの通知本文。

またジダーノフ氏はTwitterで支持者たちに、戦術的投票のミッションにフォーカスするよう促している。Googleが保有するYouTube上でホストされている動画のリンクをツイートして、本日から日曜日まで行われる議会選挙で反プーチンの投票を行なう方法を、ロシア人たちに勧めることがミッションだ。

ナワリヌイ氏の支持者たちはロシア中の有権者を動員して戦術的投票をしてもらい、与党の統一ロシア党に勝つ可能性のある候補者への投票によってプーチンを失脚させることを望んでいる。

その戦術的投票という戦略に対して批判もある。挙げられている対抗候補者の多くが、反プーチン勢力としては弱すぎる、というのだ。

しかしそれでもナワリヌイ氏の支持者たちは、システムそのものに欠陥があることは受け入れざるをえない、と言っている。

AppleとGoogleは当初、ナワリヌイ氏の「Smart Voting」アプリの削除を拒否したが、その後、2021年8月になってロシアの州は、彼の組織によるウェブサイトへのアクセスをブロックしようとしていた。

また、Googleドキュメントも狙われたという説もある。それは、ナワリヌイ氏の支持者たちが戦術的投票の取り組みを組織化するために使っていたツールだ。

英国のiOSアプリストアでのSmart Votingアプリ(画像クレジット:Natasha Lomas/TechCrunch)

2021年9月初めのロイターの報道によると、ロシアの通信規制当局Roskomnadzorは、Smart Votingアプリを削除しないと罰金を科すとAppleとGoogleを脅迫した。それは、従わなければ選挙妨害と見なす、という警告だ。

またロシアのニュース報道によると、選挙の前夜にAppleとGoogleは連邦議会の会議に召喚された。プーチン政権はそうやって、彼の反民主的な命令を強制しようとした。

Kommersantの報道によると、テクノロジー大手2社は、ロシア連邦が彼らの事業に対する規制強化を準備している、と警告された。そして、彼らが「レッドライン」上にいるという警告がまたしても為され「正気に戻れ」と言われた。

それにより、ナワリヌイ氏のアプリの削除をプラットフォームに対して強制する彼らの土壇場の努力が、成功した。

最近ではRoskomnadzorは、この国のVPNアプリも削除しようとしていた。それにより、ロシア人が外国のストアからソフトウェアにアクセスしてナワリヌイ氏のアプリの禁制をかいくぐることを、困難にしたいのだ。

ロシアの検索大手Yandexも、検索結果にSmart Votingアプリが出ないよう強制された、といわれている。

2021年初めには、プーチン政権はTwitterも狙った。禁止したいコンテンツの削除に失敗して、サーバーの能力を落とそうとした。ただしRoskomnadzorの主張では、それは政治的コンテンツとは無関係で、青少年の自殺や児童の性的虐待、ドラッグの使用などが対象だった。

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画像クレジット:TechCrunch

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Hiroshi Iwatani)

アップルが台湾・香港・中国向け刻印サービスで「ダライ・ラマ」「雨傘革命」など法的義務以上に検閲していると明らかに

アップルが台湾・香港・中国向け刻印サービスで「ダライ・ラマ」「雨傘革命」など法的義務以上に検閲していると明らかに

Citizen Lab

アップルはAirPodsやiPadなどを公式ストアで注文したユーザーに対して、無料で刻印サービスを提供しています。このサービスに付き、中国や香港、台湾で政治的検閲を行っていると指摘するレポートが発表されています

この報告書は、カナダにあるトロント大学のインターネット監視団体Citizen Labが調査に基づき公表したものです。Citizen Labは中国生まれのTikTokが悪質な行為を行っている証拠はないと述べるなど、特に反中国というわけではありません。

アップルの無料刻印サービスはどの地域でも攻撃的な言葉やフレーズを禁止しており、米国でも170の単語を入力することができません。しかし中国では、禁止されている単語やフレーズの数は1000以上にのぼり、その中には政治的な言及も多く含まれているとのことです。

アップルが台湾・香港・中国向け刻印サービスで「ダライ・ラマ」「雨傘革命」など法的義務以上に検閲していると明らかに

Citizen Lab

アップルが台湾・香港・中国向け刻印サービスで「ダライ・ラマ」「雨傘革命」など法的義務以上に検閲していると明らかに

Citizen Lab

Citizen Labが行ったのも、どの単語が拒否されるかを調べるテストでした。これができたのは、アップルの刻印サイトが入力されたテキストを一文字ずつ分析し、受付できない内容に即座にフラグを立てるためです。

このテストは6つの地域で実施され、その結果アップルが国ごとに異なるAPIを使ってテキストを検証していると明らかになったそうです。さらに中国では政治的な検閲が行われていると分かり、その一部は香港や台湾にも及んでいました。

まず中国本土では、中国の指導者や政治システムに関する広範な言及、反体制派や独立系報道機関の名前、宗教や民主主義、人権に関する一般的な用語などが検閲されていると分かったとのことです。たとえば政治関係としては「政治、抵制、民主潮、人权(人権)」など、チベットやチベット宗教に関しては「正法、達賴(ダライ・ラマ)、达兰萨拉」といったところです。

かたや香港では、市民の集団行動に関するキーワードが広範囲に検閲されています。たとえば「雨伞革命」や「香港民运」「雙普選」、「新聞自由」など。はてはノーベル平和賞受賞者の劉暁波氏の妻で詩人の劉霞氏や、アーティストの艾未未氏の名前までも禁止されていることは「香港の国家安全法に基づくアップルの検閲義務をはるかに超えている」と評されています。

さらに台湾に対しても、中国に配慮したかのような政治的検閲が行われている模様です。こちらでは中国共産党の最高幹部らや歴史上の人物(毛主席など)、「外交部」などの国家機関、およびFALUNDAFAやFalun Gongなども禁止されているとのこと。台湾にはそうした言葉を取り締まる法律もなく、アップルが検閲を行う法的義務もありません。

それに加えてCitizen Labは、「8964」という数字まで検閲されていると突き止めています。この数字は中国では天安門事件の「1989年6月4日」という日付にちなんだものとして認識されているため、と推測されています。

アップルもいち民間企業に過ぎず、現地の法律には従う義務があり、Citizen Labも法律で禁止されている言葉の検閲を批判しているわけではありません。特に問題視されているのは、アップルが法的に要求されている以上を行っており、現地企業が自粛しているキーワードを検討せずに流用しているように見えることです。

今回の一件と関係あるかどうかは不明ですが、かつてiOS 11.4.1では“Taiwan”とタイプしたときに特定の言語や地域設定のiPhoneがクラッシュする問題や、日本語のiPhoneでも“たいわん”と入力して台湾の旗に変換できなかったことがあります(記事執筆時点では、どちらも修正済み)。

ちょうどアップルは、児童虐待対策として「iCloud上に保存された写真が自動スキャンされ、当局に通報されることもある」しくみの導入に対して、政府の検閲に利用されるのではないかとの懸念が寄せられているところです。アップルは「政府の要求を拒み続ける」と回答していますが、その言葉に信ぴょう性を与える行動が望まれそうです。

(Source:Citizen Lab。Via 9to5MacEngadget日本版より転載)