科学者のTuhin Sinha(トゥヒン・シンハ)氏とSiriの共同創設者であるDag Kittlaus(ダグ・キトラウス)氏が設立したRiva Healthは、臨床的に認められた方法で人々が血圧を測定できるようにしたいと考えている。血圧を測定し、心臓疾患の初期徴候を確認することで、リスクのある患者が実際のリスクが発生する前に問題に対応することができるからだ。市場に出回っている他のハードウェアソリューションも同じ目的を掲げているが、Rivaはエンドユーザーが持っていると同社が考えるハードウェア、つまりスマートフォンと統合する純粋なソフトウェアソリューションを目指している。
突然姿を現し、米国時間3月17日にローンチした同社は、Menlo Venturesが主導し、True Venturesが参加したラウンドで1550万ドル(約17億円)のシード資金を調達した。そのうちUC HealthとUniversity of Colorado Innovation Fundが500万ドル(約5億5500万円)を出資した他、GoHealthのBrandon Cruz(ブランドン・クルーズ)氏やMadison IndustriesのLarry Gies(ラリー・ギース)氏などのエンジェル投資家が参加している。投資前に3年間シンハ氏と交渉を行っていたMenloのGreg Yap(グレッグ・ヤップ)氏が取締役に就任する。
AIアシスタント「Viv」の創設者でもあるキトラウス氏は、自身が深刻な健康問題を経験した後、デジタルヘルスに変化をもたらす方法について考え始めたと述べている。キトラウス氏は2016年に膵臓の神経内分泌癌と診断されたが、これはAppleの最高経営責任者だった故Steve Jobs(スティーブ・ジョブズ)氏が患っていた癌と同じ種類のものだった。
「私は血液測定に関するアイデアを検討することに多くの時間を費やしていたのですが、そこには以前自分がいた両方の会社にあったものが欠けていました。世界を動かす力を持ったすばらしい技術的イノベーションが欠けていたのです」と彼はいう。
キトラウス氏は、友人のShawn Carolan(ショーン・カロラン)氏とこの夏に交わした内輪の会話について触れた。Siriに最初に投資したこの友人は、Rivaに使われている技術を長年開発してきた科学者トゥヒン・シンハ氏を紹介してくれた。
Rivaは、スマートフォンでアプリを開いて「Go」をタップするだけで利用できる。スマートフォンの背面カメラのフラッシュが起動し、ユーザーはその上に指をかざすように誘導され、適切な位置にロックされるまでアプリが調整してくれる。その後、Rivaはこのライトを使って血圧の変化を追跡し、画面上にそのレンダリングを生成する。
Riva Healthが計画しているデザイン。変更される可能性がある(画像クレジット:Riva Health)
「この技術でよく知られているのは、血管に光を当て、そこから波を取り出すことです」とシンハ氏は説明する。「当社の技術の新規性は波の形で、それが血圧とどのように関係しているかという点にあります。そして当社の企業秘密は、波の形の変化を厳密かつ包括的な方法で検証していることです」。シンハ氏はその検証方法については明らかにしなかったが、さまざまなシナリオ(立っている、座っているなど)で血圧を測定し、効果があるかどうかを確認することが鍵だと語った。
Rivaが心拍数5〜7回分のデータを追跡すると、測定対象者のその時点での血圧を包括的に把握できる。
データはHIPAAに準拠しており、高血圧をはじめとするリスクがあるかどうかを分析するためにかかりつけの医師または診療所に送ることができる。
「スマートフォンのようなプラットフォームへの移行は(健康と疾病管理の)測定と管理をモバイル型にするものです」 とシンハ氏はいう。Riva Healthは純粋なソフトウェアソリューションだ。
同社は現在Android携帯でそのソフトウェアを検証している最中だが、キトラウス氏は「今日あるどの携帯でも必要な信号を取得できるはずです」という。
ヘルステック企業、特にRivaにとっての大きなハードルは、臨床使用に関してFDAの認可を得ることができるかどうかである。同社は現在、FDAの承認手続きに取り組んでおり、2021年夏にリリース予定の無料アプリを試験利用するユーザーに対し、承認手続きを促進するための試験とデータ収集への参加を求める予定だ。
現在、Rivaはその技術を使って、臨床現場での血圧の変化を追跡しており、後半には自宅での使用データも集める。実世界でのシステムの使用状況を追跡することで、同社の病気管理技術が研究室や自宅の環境で動作し、有効であることを証明しようとしているのだ。
「血圧測定ができると主張する機械やガジェットはたくさんあります。それらはそれなりの血圧測定を行うことはできますが臨床基準は満たしてはいません」。とキトラウス氏は続ける。血圧カフや、iPhoneのようなスマートデバイスに接続するカフレスウェアラブルのようなその他のソリューションは、非臨床使用で血圧を測定するもので、精密なものではなく、血圧に関する明らかな問題を知らせるだけだ。
Rivaの目標は、医師も頼りにできるような正確さを日常にもたらすことであり、それは収益を上げる手段でもある。UC HealthのチーフイノベーションオフィサーであるRichard Zane(リチャード・ゼイン)博士はこの技術は「万全」であると述べている。過去3年間に700社以上の企業がゼイン氏のチームと協力しようとしてきたが、Rivaはその目標を達成した数少ない企業の1つだ。
「私たちのチームがテストしてみたところ、最初から問題なく機能していました。これは稀なことです」。とゼイン氏は述べている。同氏はさらに、参入への最大の障壁の1つはデバイスを必要としていたことであったことに言及し、Rivaは「患者がすでに持ち歩いているものに組み込まれ、心臓病や高血圧を管理できるようになる、実用的な新しい技術」をもたらすものだと付け加えた。
「Rivaのコアプロダクトは医療成果です」とシンハ氏は語る。同社は、成果に基づく医療が今後重要になってくると信じているスタートアップの1つであり、医師が1日に完了する診察回数ではなく、結果に対して報酬が支払われるようなモデルを念頭に置いている。このビジョンの下、Rivaは結果を病院のシステムやプロバイダーに販売することで収益化を図ろうと計画している。医師が患者を手術から遠ざけ、以前よりも早く問題を指摘できるツールを提供できれば、病院側がなぜそれを採用すべきかについて確固とした議論をすることができる。
価値ベースのモデルを採用しているのは医療機関のわずか20%であるため、同社の考え方が適切であったとしてもこれはビジネスの障害になるだろう。サービスを軌道にのせるために、当面は保険会社と協力していくとキトラウス氏は話している。Rivaは、高血圧の治療と管理に対して払い戻しを受ける。
「保険が適用され、消費者にも医師にも無料で利用できるようにしたいと思っています」と同氏は語った。
FDAがこの技術を承認しても、医師や医療従事者は「依然として懐疑的な姿勢を取る」と思われるが、最終的にはカフよりも正確で継続的な結果が得られることを納得するだろうとキトラウス氏は述べている。
「薬の代わりに、アプリを処方しているのです」と同氏はいう。
FDAの承認を待っているこのアプリは、2021年の終わりか2022年の初めに一般提供される予定だ。Rivaの今後数カ月が、その成功と有効性を決定する鍵となるだろう。チーフサイエンティストのシンハ氏は、厳格かつ迅速に作業を進めていると語る。同氏は、会社の成功と個人的なつながりを持っている。
シンハ氏は、59歳になる前に心臓病で5人の叔父と1人の叔母、そして父親を亡くしている。そしてこのアプリには、家族を失った状況を追跡する機能が搭載されている。
「胸に時限爆弾を抱えているような気がします」と同氏は吐露した。「どちらかといえば、私は自分のためにアプリの開発をしています」。
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画像クレジット:Riva Health
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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Dragonfly)