ラズベリーパイより簡単にIoT電子工作ができる「obniz」が1億円を調達、コンセプトは“ハードウェアのAPI化”

数年前、3Dプリンターやレーザーカッターなどが普及することで“製造業の民主化”が実現するという「メイカーズムーブメント」が大きな話題を呼んだ。

技術革新によって製造コストが大幅に削減されただけでなく、クラウドファンディングのように資金と顧客を募れる仕組みが登場したことで“おもしろいアイデアと熱量”を持った個人が、思いのままにものづくりにチャレンジできる環境が整い始めている。

今回紹介する「obniz(オブナイズ)」が目指している世界観もメイカーズの文化に近いかもしれない。このプロダクトが叶えてくれるのは「電子工作をやってみたい、IoTプロダクトを作ってみたい」というロマンだ。

詳しくは後述するけれど、クラウドサービスと専用の組み込みデバイスによってさまざまな電子部品をインターネット経由で、あらゆるプログラム言語で操作できるのが特徴。電子工作やIoT機器の開発ハードルを下げ、高度な専門知識のない人でもその魅力を体験できる仕組みを提供する。

そんなobnizを開発するのはCambrianRobotics(カンブリアンロボティクス)という日本のスタートアップ。小学生の頃からマイコンやパソコンのプログラムをやっていたという2人のエンジニアが立ち上げたチームだ。

同社は11月22日、UTECを引受先とする第三者割当増資により約1億円を調達したことを明らかにした。

JavaScriptで電子工作が可能に、面倒な初期設定は不要

上述した通り、obnizは“インターネットと連携して動くもの”を簡単に作れるサービスだ。

写真にあるブルーの組み込みデバイスをWifiに接続した状態でセンサーやモーターといった部品に繋げば、それらの部品をインターネット(API)経由であらゆるプログラム言語から操作できるようになる。

実際に使い始めるまでの工程はわずか3ステップ。まずはobnizをWifiにつなぎ、使いたいモーターなどを接続する。あとはスマホからobnizに表示されるQRコードを読み込み、表示されたプログラムを実行するだけ。IoT機器を作ってスマートホーム化に挑戦したり、ラジコンやロボットを作ったりいろいろと応用の幅も広い。

最大の特徴はそのハードルの低さだ。

obnizの場合、組み込みデバイスに接続されたモーターやセンサーを操作するのに必要なのは、ブラウザでプログラムを書いて実行するだけ。従来IoTプロダクトを開発する際に高い壁となっていた「組み込みデバイスにおけるファームウェアの作成(ハードウェアを制御するソフトウェア)」を必要としない。

SDKを使えばJavaScriptから利用が可能。obnizにつないだリアルな部品をHTMLの中で“プログラム上のオブジェクト”として扱えるようになる。

全くの初心者であってもブロックプログラムを通じて簡単な操作を実行することができる上に、専用のアプリも不要で複雑な環境構築で行き詰まる心配もない。

kickstarterのプロジェクトを経て(160万円以上を集めることに成功)2018年5月より開発ボードの販売をスタート。1台の価格は5980円で、すでに2000台以上の販売実績があるという。

エンジニアが趣味でIoT機器の電子工作をする際や教育用のコンテンツとして活用されるケースが多いそう。obnizが電子工作デビューというユーザーも一定数いて、中にはプログラミング未経験ながら挑戦する人もいるようだ。

何か動くものを自作したいとなった場合、今であればArduino(アルディーノ)やRaspberry Pi(ラズベリーパイ)が代表的な選択肢にあがるだろう。obnizは両者では少しハードルが高いと感じる層のユーザーにもリーチしていきたい考え。使いやすさと作れるものの幅が広い点をウリに「グローバルにおいて、動くものを作る際の選択肢として1番最初に想起されるような存在を目指したい」という。

また個人だけでなく企業におけるPoC(概念実証)などプロトタイプ作成や、IoTへの導入目的でも使われ始めている。具体的には遠隔地のデータ収集や装置の監視などでの利用が考えられ、とある装置の故障予知を目的とした実証実験も企業と計画しているとのことだ。

コンセプトは「ハードウェアのAPI化」

そもそもobnizはどのような背景で生まれたのか。CambrianRobotics創業者でCEOの佐藤雄紀氏によると、IoT開発の壁をなくし「すべてのエンジニア、個人が自由にIoTを作れるようにする」という思いが根本にあるようだ。

IoTプロダクトの開発にはその性質上、ハードウェアとソフトウェア、そしてネットワークなど複数の領域に関する知見と開発スキルが必要とされ、それが大きな障壁となってきた。特に難点となっていたのがファームウェアの開発だ。

「スマホアプリで言えばiOSとAndroidがあって、iOSアプリはAndroidの機種では動かない。それと同じようなことがいろいろな世界で起きていて、組み込みの世界における小さなコンピューターにおいても同様だ。メーカーが違えばiOSとAndroidぐらいの違いがあるため、同じ電子部品を使う際にもソフトを書き換える必要がある」(佐藤氏)

佐藤氏によると、一般的には使うセンサーや装置が変わるごとにファームウェアを書き直す必要があるそう。しかも「(そこで動くようなソフトは)LinuxやMacやiOSのように洗練されたシステムと違って、機械言語に近いレベルで書かないといけない」ため、できる人が限られているのだという。

「IoTを進めたい場合には必ずそういったエンジニアの力が必要になるが、そもそも人材が足りない。また回路やその上で動くファームウェアには詳しくても、クラウドに繋ぐためのネットワークの知識は別の領域になるので、余計に難易度があがる」(佐藤氏)

そんな状況を打破するために開発したobnizのコンセプトは“ハードウェア(電子部品)のAPI化”だ。

それこそ今ではさまざまなWebサービスがAPIを公開している。たとえば天気の情報を取得したいような場合、該当するAPIの使い方さえわかれば、詳しい知識がなくとも欲しい情報を取ることができる。ハードウェアにおいても同じような仕組みがあるべきだというのがobnizの考え方だ。

「たとえ温度に関するデータの取り方を知らなかったとしても、APIがわかっていることで、どんなエンジニアでもその情報を使える。そのような環境を整えていければ、電子工作やIoTが初めてのエンジニアもチャレンジしやすくなるし、企業でのIoT活用も進められると考えている」(佐藤氏)

電子工作にチャレンジしたいユーザーを後押しできるプロダクトへ

写真左からCambrianRobotics共同創業者でCEOの佐藤雄紀氏、同じく共同創業者の木戸康平氏

CambrianRoboticsの創業は2014年。佐藤氏と共同創業者の木戸康平氏は早稲田大学総合機械工学科の同級生。学生時代には他の友人も含めて起業し「papelook」という1000万DL超えの画像加工アプリの開発に携わった。

その後佐藤氏はスポットライト(連続起業家の柴田陽氏が創業、2013年に楽天により買収)にジョインし、ポイントサービス「スマポ」のiOSアプリや超音波ビーコン、超音波プロトコルの設計や開発を担当。高校時代からロボコンなどに関わっていたという木戸氏はpapelookで一緒に活動した後、大学院を経てKDDIで働いた。

そんな2人が再び合流して立ち上げたのがCambrianRoboticsというわけだ。

同社では今回調達した資金を活用して、開発やテクニカルセールスを中心とした人材採用を進めるほか、国内外でのマーケティングにも力を入れる方針。現在はプログラミング教育などコンシューマー向けのプロダクトを強化していて、ロボットやセンサーなどをセットにしたAIロボットキット、IoTホームキットの準備も進めている(クラウドファンディングのMakuakeで先行販売中)。

「もちろん今まで回路に携わっていたような人が便利に使えるツールでもあるが、回路などの知識がないWebエンジニアの人が『ハードにも挑戦してみたい』と思った時に、それを後押しできるようなプロダクトにしていきたい」(木戸氏)

「(個人法人問わず)obnizがあったからIoTを始められたという声がいろんな所から出てくるような、そんなプロダクトを目指したい」(佐藤氏)

Pi-Topがハードウェアとソフトウェア学習用の新しいラップトップを発表

英国のエデュテックスタートアップpi-topが、プログラムと電子工作学習のための新しいマシンを発表した。これはモジュラータイプのRaspberry Pi組み込み型ラップトップだが、今回は組立に必要な手順を大幅に削減しただけでなく、スライド式キーボードデザインを採用した。このことでQwertyパネルを引き出して、内部の電子工作用スペースにアクセスできる。

これはオリジナルのpi-topラップトップコンセプトと、より安価なpi-topCeedデスクトップとの賢い組み合わせだ。ディスプレイの下にレールがあって、アドオンの電子機器を取り付けることもできる (スタートアップによれば、150ドルのpi-topCeedは、STEM教育用のキットを望む学校やコードクラブで、人気のあるオプションとなっているそうだ)。

新しいpi-topラップトップは、pi-topの最も高価なエデュテックデバイスだ。Raspberry Pi 3付きで319ドル(またはなしで284.99ドル)である。

しかし今回の製品は、スタートアップが「発明家キット」と呼んでいるものとバンドルされている。これは実質的には、様々なハードウェアDIYプロジェクトを可能にするために選ばれた電子部品群だ。このキットを使って作ることのできるプロジェクトには、音楽シンセやロボット(トップの写真)などが含まれているということだ。

また、発明家キットに含まれる部品を使って、ティンカリング(試行錯誤を繰り返すこと)と工作を行なうための「沢山の道筋」をガイドする、ソフトウェアが含まれているということだ。

ラップトップ自体は、14インチの1080p LCDカラーディスプレイを持っていて、ストレージ用には8GB SDカードが提供されてる(さらに追加のストレージとデータへのリモートアクセス用に組み込みのクラウド管理が用意されている)。そしてバッテリは8時間以上の利用が可能になる予定だ。

工作に使える電子部品だけでなく、チームは独自のOS(Pi-TopOS Polarisという名称)も提供する。ハードウェアを駆動するPaspberry Piの上で動作し、コード学習のソフトウェアや、STEMに焦点を当てたゲーム(CivilizationスタイルのMMORPGゲームであるCEEDUniverse)も搭載されている。

似た分野で活動している、もう1つの英国のスタートアップ、Kanoも、新しいコード学習「ラップトップ」を発表したばかりだ。しかし、pi-topのデバイスの方が、試行錯誤向けの可能性とソフトウェア機能の両面で、かなり洗練されているように思える(Kanoのキットは250ドルで少し安くはあるのだが)。

pi-topラップトップにバンドルされたソフトウェアスイートは、Webブラウジングをサポートするだけでなく、Microsoft Officeと完全に互換性のある機能も含むという話だ。また、これらはオックスフォードケンブリッジRSA審査委員会が認定する唯一の学習ソフトウェアスイートであり、また別のSTEM資格認定証も取得済であるとのことだ。

ロンドンに拠点を置くこのスタートアップが、そのSTEMプラットフォームを世界的に展開することを狙って430万ドルのシリーズAラウンドを行ったのは、1年足らず前のことだった。

現在彼らのハードウェアプラットフォームは、世界中の1500以上の学校で利用されているということだ。これは1年前の500を上回る数字である。現在チームは、80カ国以上にデバイスを出荷している。

「pi-topの使命は科学、技術、工学、芸術、そして数学を活用させる、強力で触発的な製品を提供することです」と、CEOのJesse Lozanoは声明で述べている。「今回のモジュラーラップトップが、その目標を達成するお手伝いをします。若手ミュージシャンたちから科学者、ソフトウェア開発者、そして発明家まで、誰もがpi-topを使ってすばらしい新プロジェクトを探求し、創作することが可能になりました」。

「私たちは、スクリーンとキーボードだけではない学習方法を提供し、コンピュータサイエンスや基本的なエレクトロニクスの幅広い探究を可能にし、若い学習者たちがSTEAMベースの学習の世界に触発される機会を得られるようにしたいと考えています」。

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(翻訳:Sako)

モジュール構造の本格的な電子工作を容易にできる補助ボードAtomoがクラウドファンディング中

Raspberry PiやArduinoでいちばん難しいのは、いろんな部位の具体的な配置だ。どちらも、ボード本体とインターネットがあれば、たくさんの楽しいことができるすぐれものだが、でもプリンターとか画面など、ほかの部位を加えたらさらに楽しい。問題は、それらの部位の置き方まとめ方だ。そこで、Atomoが助けてくれる

このモジュールキットは香港のメイカーJonathan Bufordの作で、製造大手のArrow Electronicsが採用した。

“AtomoはArduinoに代わるもの、あるいはRaspberry Piのアクセサリだ”、とBufordは語る。彼は、エレクトロニクスの広範なノウハウのない者でもRaspberry Piの複雑なプロジェクトを作れることを、期待している。

モジュールはいろいろあって、I/Oボード、ネットワーク拡張ボード、大きなプロジェクト用の電源ボードもある。たとえば下図のプロジェクトは、I/Oアダプターを4つと電源をPiに接続している。このやり方なら、本格的なロボットや水耕栽培装置などの、本当におもしろいプロジェクトの回路を、チーズの塊ぐらいのサイズで作れる。

このキットは初期支援者には39ドルで、発売予定は6月だ。パッケージを複数買って、大きな構成を作ってもよい。

“コントローラーはすべてRaspberry PiのHATの規格だから、Piのプログラムを書いてコントローラーをアップデートできる。あるいはAtomoそのものをHATにしてもよい。そうすればROSのロボットを作るなど、本格的な電源とI/Oとリアルタイムのコントロールを必要とするプロジェクトを、Piが処理またはインタフェイスできる”、とBufordは書いている。

これなら、Raspberry PiやArduinoのロボットが人類を支配することも可能だね。

 
 

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

子ども向けのプログラマブルなロボット工作キットを多種類提供しているMakeblockがシリーズBで$30Mを調達

子どもたちが単純なおもちゃで単純に遊んでいた時代があったよね。もちろん今でもそれはできるけど、親たちはますます、テクノロジーをぎっしり詰め込んだ玩具を買い与え、将来はソフトウェアのデベロッパーやロボットのエンジニアとして楽な生活ができることを願う。先月ニューヨークでInternational Toy Fairを開催したToy Industry Association(玩具産業協会)にいたっては、ロボット教育が2017年の玩具市場の主要なトレンドだ、とまで言い出す始末だ。

そして、深圳のMakeblockはこのほど、シリーズBで3000万ドルを獲得して、そんな親たちにプログラマブルなロボットと、子どもたちやティーンのためのロボット工作キットを提供しようとしている。2011年創業のMakeblockは、今や140か国に顧客がいて、製品は世界中のさまざまな学校2万校の教育者たちが利用している、という。

同社のいちばんよく知られている製品は、mBotシリーズの各種走行車両類と、簡単なモジュール構造の玩具ドローンAirblockだ。後者は初心者でも組み立てられる。しかし同社のテクノロジー玩具製品の種類はとても多くて、中には奇抜なものもある。たとえばMusic Robot Kitには、シロホンと電動の打棒(ばち)がある。組み立てとプログラミングがうまくいけば、楽譜を演奏できたり、ユーザーがリモートのPCのキーボードから弾けたりする。

ドローンキットAirblockは初心者でも航空機ロボットを作れるように設計されている。

Makeblockの製品はグラフィカルな環境でプログラムを作るので、プログラミングがまるでゲーム感覚だ。初心者はプログラミング言語でコードを書いたり、コマンドでロボットを動かしたりしない。画面上で、ゲームのピースを一定の順序で並べるだけだ。

今回のMakeblockへの投資は、Evolution Media ChinaShenzhen Capital Group(深圳資本グループ)がリードした。子どもたちにテクノロジー玩具を与えてプログラミングへ入門させようとする企業は、玩具企業にかぎらず今ではたくさんあるから、今度得た資金はその競争に勝つために投じられる。主な競合他社は、LittleBits, SparkFun, ArcBotics, Flybrixなど、しかもWonder WorkshopOzobotなどは、子どもたちが組み立てるキットではなく、完成品のロボットでプログラミングを学ばせようとしている。

MakeblockのCEO Jasen Wangによると、彼は、農村の貧しい、テクノロジーとは無縁な家に生まれ育った。コンピューターに初めて触ったのは、大学に入ってからだ。だからプログラミングの勉強を始めたのも、遅かった。でもテクノロジー大好き人間になった彼は、より多くの若い学生たちをメイカームーブメントに誘い込むことを仕事にしたい、と考えるようになった。そして、2011年にMakeblockを創業した。

新たな資金の用途は、人員増、製品開発、生産能力の拡大、国際展開と多様だ。中でも重要なのが、アメリカにオフィスを開くこと。投資家たちが期待しているのは、Makeblockが“次世代のLego”になることだ、とCEOは語る。

しかし最近の“子ども製品業界”は合併や買収が盛んだから、今後のMakeblockにも、何らかの(IPO以外の)有利なイグジット(exit, 出口)による市場拡大の機会が、ありうると思うね。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Pixel 2.0 Arduinoボードには1.5インチのOLEDスクリーンが載ってるからウェアラブルのゲーム機なども作れる

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この小さなPixel 2.0は要するにArduinoボードに1.5インチという小さな128×128のカラーOLEDスクリーンをくっつけたものだ。このままでウェアラブルに応用できるし、このArduinoボードから直接スクリーンにアクセスできる。これまでのような、後からスクリーンを半田づけして、うまくいくよう神様にお祈りする電子工作からの卒業だ。

このちっちゃいかわいいボードはKickstarterで75ドル、発売は6月だ。完全にオープンソースだから配線図を詳しく見られるので、いろんな応用製品を作れる。SDカードのスロットがあるからゲームやビデオなどのデータを保存できるし、Arduino SDKを使えばスクリーンのグラフィクスをプログラミングできる。

すでに目標額の5000ドルは突破しているから、製品化はほぼ確実だ。

これは、ボストンのRabid Prototypesが作ったPixelボードのバージョン2だ。同社のNeutrinoと呼ばれるハイスピードなArduinoボードには、ライトやモーターなど、もっといろんなDIY要素が載っている。昔のアーケードゲームがこのPixelで動けばめっちゃ楽しいだろう。画素密度も、そんなにちゃちくはない。今すでに、不安な要素はない、と思うね。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))