オーロラ観測ロケット「LAMP」が高速に明滅する「脈動オーロラ」に突入、電子・光・磁場の詳細な観測に成功

2022年3月4日(現地時間)、打ち上げ場所のアラスカ州・ポーカーフラットで観測された脈動オーロラ

2022年3月4日(現地時間)、打ち上げ場所のアラスカ州・ポーカーフラットで観測された脈動オーロラ

名古屋大学は3月29日、名古屋大学宇宙地球環境研究所をはじめとする研究グループが、アメリカのアラスカ州よりNASAのオーロラ観測ロケット「LAMP」を明滅するオーロラに向けて打ち上げ、オーロラの中の電子、光、磁場の詳細な観測に3月5日(現地時間)に成功したと発表した。

これは、名古屋大学(三好由純教授、能勢正仁准教授)、宇宙航空研究開発機構(JAXA。浅村和史准教授)、東北大学(坂野井健准教授)、東京大学電気通信大学(細川敬祐教授)、九州大学からなる共同研究によるもの。ロケット実験にはこの他に、NASA、ニューハンプシャー大学、ドートマス大学、アイオワ大学の研究者も参加している。

オーロラは、宇宙から降り込んだ電子が地球の超高層大気と衝突して発光する現象だが、その中に、高速に明滅する「脈動オーロラ」というものがある。近年では日本の人工衛星「れいめい」「あらせ」による観測などで脈動オーロラの研究が進んでいるが、その発光層の広がりや、明滅と電子との関係、脈動オーロラにともなって降ってくる電子の上限エネルギーについては解明されていない。

脈動オーロラといっしょに降り込むキラー電子の想像図

脈動オーロラといっしょに降り込むキラー電子の想像図

研究グループは2020年、脈動オーロラが起きているときは「キラー電子」と呼ばれる数百キロ電子ボルトの超高エネルギー電子が降り注ぐ現象(マイクロバースト)も同時に起きているという仮説を示したが、脈動オーロラとキラー電子を同時に観測した例はなかった。そこで研究グループは、アメリカの研究者とともに「LAMP」(Loss through Aurora Microburst Pulsation)計画をNASAに提案。採択されると、日米の研究機関でロケットに搭載する観測装置の開発を行った。日本側は、名古屋大学が磁力計、東北大学が光学観測系、JAXAが電子観測系を担当した。

ロケットに搭載されたオーロラカメラ

ロケットに搭載されたオーロラカメラ

2022年2月24日、アラスカ州ポーカーフラットリサーチレンジの射場にロケットをセットし、同時に、アラスカ北方のベネタイとフォートユーコンにもオーロラ高速撮像用のカメラ群を展開すると、脈動オーロラの出現を待った。そして待機すること10日目の3月5日、大きなオーロラ爆発が起こり、それに続いて脈動オーロラが発生すると、ロケットが打ち上げられた。LAMPロケットは脈動オーロラに突入。すべての機器が順調に作動し、「理想的な状態」で観測が行われ、観測データの取得が確認された。今後の詳細な解析により、脈動オーロラの変調機構、キラー電子との関係が明らかになることが期待されている。

現在研究グループは、スウェーデンの次世代型三次元大型大気レーダー「EISCAT-3D」が2023年に稼働を開始するのに合わせて、その視野内に観測ロケットを打ち上げる「LAMP-2」の検討を進めている。


画像クレジット:©脈動オーロラプロジェクト

電気通信大学とフランス国立科学研究センター、6本目の人工指sixth fingerが体の一部になる身体拡張の可能性を実証

電気通信大学とフランス国立科学研究センター、6本目の人工指sixth fingerで体の一部になる身体拡張の可能性を実証

開発した「第6の指」(sixth finger)。腕の筋肉の電気活動の計測結果に応じて制御されるモーターを内蔵している。このモーターの動きに連動し、指が動く。また同時に、手のひら装着部位に皮膚を刺激できる刺激ピンがついており、指の曲げ伸ばしと同期して、皮膚感覚がフィードバックされる。この刺激ピンは着脱式で、皮膚感覚をフィードバックしない条件にもできる。右図はsixth fingerを装着した状態ではめることができる手袋をはめた様子

電気通信大学は2月14日、他の身体の部分から独立して制御できる人工の指を装着した人が、それを自分の体の一部として取り込むことができるかという実験に成功したことを発表した。これは、もともと体に備わっていない6本目の指を、人は自分の体として感じ、動かせるのかを検証するもの。それを世界で初めて、実験的に立証したという。

人間の脳は身体の変化に柔軟に対応できるというが、まったく新しい身体部位を人工的に与えられた場合に、それを自分の身体として自由に動かせるようになるのか。本来備わっている部位とは独立して動く人工の部位を、人は新たな身体として獲得、つまり「身体化」できるのか。そうした疑問に答えるべく、電気通信大学大学院情報理工学研究科(梅沢昂平氏、鈴木悠汰氏、宮脇陽一教授)とフランス国立科学研究センター(CNRS。Gowrishankar Ganesh氏)は、共同で人工の指「sixth finger」を開発し、実験を行った。

研究グループが開発したのは、手の小指の脇に第6の指となる、腕の筋肉の電気活動によって制御できる人工指システム。腕の筋肉の電気活動をセンサーで計測し、それが、普通に指を曲げ伸ばしするときに生じる腕の筋肉の電気活動とは異なる特定の信号パターンになったときにのみsixth fingerが動くようにした。こうすることで、本来の指や他の身体部位とは関係なく、sixth fingerを動かすことができる。

電気通信大学とフランス国立科学研究センター、6本目の人工指sixth fingerで体の一部になる身体拡張の可能性を実証被験者は18名の成人。各自がsixth fingerを装着し、自身の指とsixth fingerを使った指の曲げ伸ばし、キータッピングといった習熟タスクを平均1時間程度行った。その結果、全員がsixth fingerを直感的に動かせるようになったという。

習熟タスクの後、sixth fingerの使用に慣れた後の感覚や行動の変化を確かめた。たとえば、特定の位置に手を伸ばすとき、途中に置かれた障害物を回避する軌道から、手の幅に関する感覚の変化が読み取れた。また、手の幅や小指の位置の感覚が曖昧になっていた。それらのことから、「身体化に対する主観的な感覚が、行動変容によっても客観的に」裏付けられたという。

今回の実験により、「既存の身体部位と独立して動かすことができる人工身体部位が工学的に実現可能」であることがわかった。もっと力の出る駆動系を使い、実際に「使える」指を作れば、6本指による高速タイピングや、ギターやピアノの演奏も可能になり、「豊かで便利な生活の実現」に貢献できると研究グループは話す。さらに、3本目の腕や4本の足、尻尾や羽などの人工器官を身体化に挑戦できる可能性も秘めているとのことだ。

電気通信大学、「つるつる」「さらさら」などオノマトペ・擬態語で画像内のモノの質感を表現するAIを開発

電気通信大学は11月17日、「つるつる」や「さらさら」といったオノマトペ(擬態語)で画像に写っているモノの質感を表現できるAIの開発を発表した。オノマトペという人によって感覚の異なるあいまいさを機械学習させることに成功したということだ。

電気通信大学大学院情報理工学研究科および人工知能先端研究センターの坂本真樹教授らによる研究グループは、1946枚の画像に写っているものの質感を、100人の被験者にオノマトペで表現してもらい、そのデータから深層学習モデルを作り出した。

ここで使われたのが、人の神経細胞をモデルにしたニューラルネットワークだが、特に物体認識の分野で注目されている畳み込みニューラルネットワークの中でも、さらに多層の構造を持つ深層畳み込みニューラルネットワーク(DCNN)を採用した。DCNNには、画像の特徴量を学習の過程で自動で検出できる利点があるからだ。そのため、ものの質感のように「着眼点が人によって異なる」ものにも適用できる。しかし、そもそもAIは曖昧な学習が苦手なので、学習手法になんらかの工夫が必要だった。

そこで研究グループは、音韻が触覚や視覚などの感覚的印象と結びつく現象である「音韻徴性」が強く表れるオノマトペに着目した。これを使えば人の印象を定量化しやすい。研究では、繊維、ガラス、金属、プラスチック、水、葉、革、紙、石、木の10のカテゴリーに分類される1946枚の画像と、これらに対応する3万138語のオノマトペを用意し、100人の被験者に画像を見て表現してもらった。そして、1枚の画像に複数のオノマトペを正解として学習させることで、曖昧さを考慮したDCNNモデルを作ることができた。画像を入力するとオノマトペが出力されるこのモデルでは、約80%の正解率を達成できたという。

「人間のように質感を表現できるコンピューターが実現すれば、人とロボットが共存するといわれる将来、たとえば、ロボットが目の不自由な人に質感を教えるといったことが可能になると期待されます」と研究グループは話している。

電気通信大学が自己センシングが可能なマッキベン型人工筋肉を開発

電気通信大学が自己センシングが可能なマッキベン型人工筋肉を開発

電気通信大学は10月5日、自己センシングが可能なマッキベン型人工筋肉の開発を発表した。マッキベン型人工筋肉とは、空気の出し入れによって長さ方向に収縮するアクチュエーターのこと。その変化量の測定は、これまで外部のセンサーに頼っていたが、柔軟なセンサーを埋め込むことで、人工筋肉自身が変化量を検知できる自己センシングの可能性が開けた。

マッキベン型人工筋肉は、ゴムチューブを空気で膨らませる(入力する)と長さ方向が縮むことを利用した人工筋肉。柔らかく軽量で安全性が高く、ロボット用のアクチュエーターや人工装具などにも使われている。しかし、その構造上の理由から、同じ入力でも、過去の入力の影響を受けて変化量が不安定になる「ヒステリシス」という現象が発生する。そのため、正確に変化量を把握するには、レーザー変位計などの外部のセンサーを備える必要があり、装置が複雑化する難点があった。

そこで、電気通信大学機械知能システム学専攻の新竹純助教を中心とする研究チームは、柔らかい膜を柔軟な電極で挟んだ構造のエラストマーセンサーをマッキベン型人工筋肉に統合することを考えた。人工筋肉のチューブにエラストマーセンサーを貼り付けると、人工筋肉の収縮に伴い静電容量が変化する。それを測定することで、長さ方向の変形を検出できるというものだ。

実験では、コンプレッサーから空気が送り込まれ、人工筋肉のチューブが膨らんで長さ方向に収縮すると、その変化がセンサーの応答に表れることがわかった。さらに、各センサーとの計測値の誤差は小さく、解析モデルとセンサーの出力は一致するなど、精度に問題はなかった。1000回以上の繰り返し動作での安定性も確認でき、この方式の有効性が示された。電気通信大学が自己センシングが可能なマッキベン型人工筋肉を開発

この方式を使えば、マッキベン型人工筋肉の導入がより容易になり、「さまざまな機械システムの実用化を促進する」ことが期待されるという。今後は、ロボットデバイスの研究開発を行う予定だと研究チームは話している。

論文「Self-Sensing McKibben Artificial Muscles Embedded With Dielectric Elastomer Sensor」はIEEE Xploreに掲載されている。

ソニーのボードコンピューターSpresense向けにIoT/エッジAI開発用「ELTRESアドオンIoT開発キット」が提供開始

ソニーのボードコンピューター「Spresense」向けに税別9980円のIoT/エッジAI開発用「ELTRESアドオンIoT開発キット」が提供開始

IoT・クラウドなどのITソリューションを提供するクリエイティブジャパンは9月24日、「ELTRESアドオンIoT開発キット」を研究機関、大学・高専などの研究開発用に提供すると発表した。このキットは、ソニーセミコンダクタソリューションズが開発したIoT用ボードコンピューター「Spresense」(スプレッセンス)に追加して使用する「Spresense向けELTRESアドオン・ボード」と、アプリケーションとのAPI連携が可能なクラウドデータ解析ツール、最大4カ月間利用可能なELTRES IoTネットワークサービスがセットになっている。価格は9980円(税別)。

Spresense向けELTRESアドオン・ボードは、Spresenseに通信機能を与える拡張ボード。さらに、オプションのカメラモジュールなどの拡張基板類を追加することで、大容量のデータ分析をローカルで処理するエッジAI機能を持つIoTデバイスが構築できる。

現在、IoTでバイスを独自開発しようと思えば、設計製造だけでも数百万円はかかるとクリエイティブジャパンは話す。このキットを使うためにはSpresense(6000円程度)が別途必要になるが、それでもキットと合わせて2万円以内で済んでしまう。通信には、ソニーネットワークコミュニケーションズが提供するLPWA無線通信規格ELTRES(エルトレス)IoTネットワークサービスが使用でき、アプリケーションとAPI連携が可能なデータ解析クラウドサービス「CLIP Viewer Lite」が最大4カ月間利用できる。まずは電気通信大学で、10月からの演習で試験的に導入される。

またクリエイティブジャパンでは、このキットの提供にともない、大学と高専生を対象とした「IoT/エッジAIアイデアコンテスト」を開催するという。参加者には「ELTRESアドオンIoT開発キット」と「Spresense」がセットで提供されるとのことで、詳細は10月中旬に発表予定となっている。

N予備校が量子計算入門を9月15日19時開講、高校生以上からすべての者が量子コンピューターのアルゴリズムを無料で学べる

N予備校が「量子計算入門」を9月15日19時開講、高校生以上からすべての者が量子コンピューターのアルゴリズムを無料で学べる

ドワンゴは9月8日、教材・生授業・Q&Aをスマートフォンに最適化したオールインワン学習アプリ「N予備校」(Android版iOS版)において、「量子計算入門」を2021年9月15日に開講すると発表した。料金は無料。講師は、社会人のための数学教室「すうがくぶんか」の内場崇之氏。また監修を電気通信大学教授の西野哲朗氏が行っている。

受講の際は、N予備校にログイン後、ホームのサイドメニューの課外授業欄から
「数理科学」→「量子計算入門」→「量子計算入門」の順に選択する。

「量子計算入門」の特徴

  • 数学的側面を重視:量子コンピューターに関心があるものの、数学的な部分にハードルを感じて取り組めなかった人のために、生放送での授業や補講を通じ、数学的側面について、必要な部分を基礎的なところから丁寧に解説する。難しいものは具体的な例を挙げることで親しみを持てるようにするなど、数学に苦手意識がある人にも取り組めるような構成を採用
  • トピックを基本的な部分に限定:量子コンピューターについては多くの話題がある中で、代表的な話題に絞って基本的なトピックを解説
  • 電気通信大学の西野哲朗先生が監修:日本における量子コンピューター研究の先駆者の1人である西野哲朗教授が監修。また、生放送授業の初回と最終回には、特別ゲストとして登壇する

「量子計算入門」の授業スケジュール(授業は各回とも19時開始)

  • 初回特別講義(9月15日)
  • :「量子計算入門」ガイダンス(特別ゲスト:西野哲朗先生)
  • 第1講(9月22日): 量子ビットとは?
  • 第2講(9月29日):量子ゲートとは?その1
  • 第3講(10月6日):量子ゲートとは?その2
  • 第4講(10月13日):量子回路で足し算しよう
  • 第5講(10月20日):量子計算のテクニック(量子フーリエ変換)
  • 第6講(10月27日):15を素因数分解してみよう!その1
  • 第7講(11月10日):15を素因数分解してみよう!その2
  • 第8講(11月17日):量子機械学習に親しみを持とう
  • 第9講(11月24日):量子アニーリングとは?
  • 第10講(12月1日):量子アニーリングを使って最適化をしてみよう!
  • 最終回特別講義(12月8日):今後の展開について(特別ゲスト:西野哲朗先生)

従来のコンピューターでは計算量が多く解くことが難しかった問題を、短時間で解けるようになる可能性を秘めた次世代コンピュータとして、量子コンピュータの開発が世界各国で進んでいる。

量子コンピューターは、その計算原理に「量子力学」で扱われる微小な領域での物理現象を利用しており、現在のコンピューターの情報の最小単位である「ビット」とは異なる「量子ビット」と呼ばれる新しい情報単位を使って計算している。

2019年のGoogleの研究チームによる実証実験では、53量子ビットの量子コンピューターが用いられ、現在も実用化に向けたさまざまな取り組みが多くの企業や研究機関によって進行している。今回の「量子計算入門」では、このような量子コンピューターが実行するアルゴリズムの入門的な部分を、高校生でも取り組めるような形で提供する。

N予備校は、ドワンゴが独自開発した、授業、教材(問題集・参考書)、Q&Aシステムが1つになった学習アプリ。学費(料金)は、クレジットカード・キャリア決済の場合月額1100円(税込)。

インターネットを活用することで、いつでもどこでも学習を進めることが可能。ライブ配信の生授業では、コメント機能を使って挙手や質問が行えるなど双方向の参加型授業を受けることができる。またアーカイブされた映像授業では、ノートを取る時に一時停止したり、わからなかった所は何度も見返すことができたりと、自分のペースで学べるとしている。また大学受験の授業では、実力派予備校講師陣、プログラミングでは、現役エンジニアが講師を務めるという。

電気通信大が粗悪なCO2センサーの見分け方を公開、5000円以下の12製品中8製品はCO2ではなく消毒用アルコールに反応

電気通信大が粗悪なCO2センサーの見分け方を公開、5000円以下の12製品中8製品はCO2ではなく消毒用アルコールに反応

電気通信大学

電気通信大学の研究グループが8月10日、ECサイトで販売されている5000円以下の安価な二酸化炭素濃度測定器(CO2センサ)の多くが、CO2濃度を測定しておらず、消毒用アルコールに反応する疑似センサを使用しているとする調査結果を発表しました。

コロナ禍にあって自宅で作業を行う人が増えていますが、3密を防ぐ感染対策のため、換気の目安として二酸化炭素濃度を測る機器が市場に多く出回っています。しかしながら、二酸化炭素濃度を人が直接体感するのは難しく、センサが正しく動作しているのかは普通の人には確認が困難です。このため、研究チームがECサイトで感染対策用として販売されている2900円~4999円のCO2センサ、計12機種を購入し、実際に精度検証を行いました。

その結果、12機種のうち、1機種は異常値を示したことから故障と考えられ、8機種はCO2には反応しなかったとのこと。残りの3機種は精度は低いながらCO2に反応しており、校正(調整)すれば感染対策目的で使用可能と判断されています。また、CO2に反応しなかった8機種は、いずれも消毒用アルコールに強い反応を示しており、CO2センサをうたいながら、アルコールや総揮発性化合物などの雑ガスに反応する疑似センサを使用している可能性が高いとしています。

なお、コロナ対策関連では、UV除菌・殺菌グッズも数多く出回っていますが、こちらについても、エンガジェットライターの宮里氏により、安物はほぼ効果が期待できないとの調査結果が出ています。

UV除菌・殺菌をうたう激安機器は本当にUV-Cが出ているのか?:ウェブ情報実験室

こうした結果を見ると、自宅で使っているCO2センサが正しいかどうかが心配になるところですが、それを手軽に確認する方法も公開されています。

まず、1つ目として、屋外の新鮮な空気の中にセンサを置き、CO2濃度が400ppm前後(目安としては340~460ppm)を表示するか確認します。数値が大きくずれている場合には、換気モニタにはふさわしくないとのこと。ただし、機種によっては測定値を校正できるものがあるとのことで、取扱説明書を確認するのが良さそうです。

2つ目として、センサに息を吹きかけ、CO2濃度が測定限界値まで上昇することを確認します。呼気には二酸化炭素が含まれているので、これを直接吹きかければ反応するはずということです。このとき、センサがすぐに反応しない場合には、ビニール袋などにセンサを入れ、その袋を息で膨らませて様子を見ます。それでもセンサが反応しない場合には、換気モニタとして使わないことを推奨しています。

3つ目は、消毒用アルコールを吹きかけた手をセンサに近づけ、CO2濃度が上昇しないことを確認します。もし大幅に上昇する場合には、CO2ではなく、他のガスに反応する疑似センサが使われている可能性が高いということになります。

中には、安価でもきちんとした製品はあると考えられますが、残念ながら購入前の見極めは困難です。もし購入する際には、安さだけで選ばず、信用できるメーカーのものを選んだり、レビューを精査するなどの努力が必要になってきそうです。

電気通信大が粗悪なCO2センサーの見分け方を公開、5000円以下の12製品中8製品はCO2ではなく消毒用アルコールに反応

電気通信大学「Accuracy verification of low-cost CO2 concentration measuring devices for general use as a countermeasure against COVID-19」より。参照用として、T&D社製の研究用センサ(センサA)とCHCシステム社製の産業用センサ(センサB)も同時に測定に利用している

(Source:電気通信大学Engadget日本版より転載)

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:新型コロナウイルス(用語)センサー(用語)炭素 / 二酸化炭素(用語)電気通信大学(組織)日本(国・地域)