印刷書籍、2017年の売上は1.9%増(米国市場)

物理的書籍の強みをささやかに称賛するかのように、NPDは2017年に印刷書籍の売上が1.9%増加したことを報告した。これは2013~2016年の3%増を下回っている。NPDは米国内の書籍売上を追跡している。

報告書にはこう書かれている。

「2016年の『ハリー・ポッターと呪いの子』の大ヒットと、大人向けぬり絵本の人気上昇の後、2017年の書籍売上の成長は近年では比較的控えめだった」とNPD Groupの書籍業界アナリスト、Kristen McLeanは語る。「巨大なヒット作は出版業界にとって恩恵であると同時に恐怖でもある。ヒットの出た年は出版社に膨大な成功をもたらす。しかしその後の必然的な通常状態への落ち込みは喪失感を与える。翌年、取って代わる大ヒットが生まれなければ天国から地獄だ」

これは読者にとって何を意味するのか? まず、物理的書籍の売上は市場を支えるような大ヒット作 —— たいていは子ども向け —— がなければ停滞することを知らしめた。児童書籍は印刷業界にとって最後の望みだ。

「児童書は2017年も3%の成長を達成した。引っ張ったのはR.J.パラシオ『ワンダー』とジェフ・キニーの『グレッグのダメ日記:にげだしたいよ!』だった」とNPDは書いている。「幼児向け書籍が好調だった。ボードブック(厚紙でできた絵本)が前年比11%増、漫画が20%増で、デイブ・ピルキーの”Dog Man”シリーズの成功が後押しした」。

NPDは具体的数字は提供しておらず、印刷とデジタルの比較もしていないが、こうした横ばいからわずかな成長という知らせは、印刷活字ファンにとってよい兆候ではない。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

米最高裁、Googleブックスの書籍スキャンを公正使用と認定

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本日(米国時間4/19)発行された最高裁判所命令によって、Googleと米国著作家団体Authors Guildの間で10年以上にわたって争われてきた、著作権付き書籍を無断でスキャンすることの合法性に関する法廷闘争が終了した。最終決定は「公正使用」。

この命令は今日発行された 他の命令の長いリストの一項目にすぎず、第2巡回控訴裁判所の2015年判決を黙示的に承認したこと以外に新たな議論はない ― 同判決は〈さらに古い〉2013年のニューヨーク南地区連邦地方裁判所の決定を承認したもの。つまり、ある意味でこれは古いニュースである。

2013年判決は、(図書館からその目的で提供された)書籍のスキャンは著作権違反ではなく、それは技術的な意味で「変革的」であるためだとした。書籍は転売等されるのではなく、新たに創造的な目的に使用される ― 絶版あるいは著作権切れになることの多い書籍のための検索エンジン。これは、原作品の「代替品」を提供するものではなく、実際には公共サービスであると共に、著者に新たな読者を提供するというGoogleの主張を裁判所が認めた。

控訴裁判所はその決定を適切であると判断し、今回最高裁判所は、少なくとも、審議を拒んだ。これは問題がないと言うのと同等である。

当然ながらAuthors Guildは激怒している。エグゼクティブ・ディレクターのMary Rasenbergerがプレスリリースで厳しく非難している:

公共の利益の議論に目がくらんだ第2巡回裁判所の裁定は、著作者ではなくGoogleが、書籍のデジタル化による収益を得る権利をもつとしている ― この短期的な公共利益は、アメリカ文化の将来の活力を犠牲にするものだ。

その罵りの論調は、公正使用の判断を当然と捉える人々にとっては驚きだろうが、Rasanbergerは、さらに広く哲学的観察を思考材料として提供した。

著作家は今でも米国で最も低報酬の労働者である。もし将来の著作家が自分の仕事で生計を維持できないなら、著述業に就けるのは、個人的に裕福であるか、資金援助を受けた者だけになる。

最高裁による審査の拒否は、クリエイティブ分野からIT分野への、膨大な富の再分配が行われていることを改めて証明するものであり、それは書籍だけでなく、芸術のあらゆる分野にわたる。

この件は、文学、音楽、ビジュアル等の芸術の創造と配布に対して、テクノロジーが与える効果と損害についての、現在進行中の議論をさらに熱くするだろう。私が思うに、この裁定は正しいがそこでは答えられていない難題がある。今日の著作権法はひどく欠陥のあるシステムであると言わざるを得ないが、創造活動を法的に保護することに反対する人はいない。

しかし、現在とわずか数年前とでも、全く状況が異なることを認識していない著作権法(あるいは訴訟)は、崩壊の運命にある。その意味で、著しく進歩的な概念を伴う取り組みは、法的監視と妨害を受けることが多い。残念ながら、どの取り組みも10年にわたる法廷闘争に耐えられるわけではなく、無数のプロジェクトがこく初期段階で漬されてきた。

Authors Guildは、Googleの見張り番として「戦い続ける」ことを約束する(ただしGoogle Booksプロジェクトは一時ほど活発ではない)一方、大規模オンライン配信とインデクシングの独自のソリューションを追求する。

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英国の印刷書籍は売上ダウン、電子書籍はアップ

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米国の印刷書籍売上は安定しているが、英国出版協会が非常に興味深い傾向を報告している。印刷本の売上は5%減の27億ポンドだったのに対して、電子書籍の売上は11%増の5.63億ポンドだった。未だにEブックが書籍売上全体に占める割合はわずかだが、印刷書籍にじわじわと迫っていることが確実に見てとれる。

しかし、何よりも重要なのは子供向けEブックの急増だ。これまで出版社は、親は自分の子供にタブレットより絵本やペーパーバックを与えたがっていると想定してきたが、それも急速に変化している。事実、デジタル児童書は36%増えている ― 印刷屋が気に留めるべき変化だ。

「デジタル出版が成長を続け、多くの分野で発展していることは大変喜ばしい。子供向けデジタル書籍の伸びは、70%の世帯がタブレットを所有している今、驚きではなく、子供向け出版で革新が起き、魅力的なコンテンツが作られていることの証だ」と、英国出版協会のRichard Mollet会長がリリースで語った。

教科書分野でも成長が見られ、学校が購入したデジタル書籍は20%増えた。しかし、「総学校図書購入費」のうちデジタル書籍に使われた費用はわずか4%にすぎないことは注目すべきだ。これは「つながった教室」時代に向けてさらに重要になってくる事実と言える。それでも、電子書籍が地盤を固めつつあることは間違いない。

via TheDigitalReader

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書評:ベン・ホロウィッツの『HARD THINGS 』―「戦時の組織のリーダー」の必読書

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TechCrunchの読者にはベン・ホロウィッツはシリコンバレー最強のベンチャーキャピタルリストの一人としてよく知られているだろう。ホロウィッツは起業家向けコラムのライターとしても人気があり、ブログの延べ読者は1000万人近い。TechCrunchにもたびたびコラムを寄稿している。例えば、翻訳したものだと「銀の弾よりも鉛の弾–戦わずにすむ奇手妙手を探すなかれ」とか「リーダーシップに関する覚書:お手本は、スティーブ・ジョブズ、、、、ウィリアム・キャンベル、そしてアンディー・グローヴ」、「アンドリーセン・ホロウィツのベン・ホロウィッツ、「投資すべきは大学中退の若者のビジネスモデルがゼロのとっぴょうしもないアイディア」」などがある。未翻訳ながらも、公開時に話題になったコラムだと「The Struggle」がある。

投資関連だと、「Ben Horowitz、「Andreessen Horowitzはたった3週間で15億ドルの資金を調達した」」、「Andreessen Horowitz、Instagramへの投資25万ドルが7800万ドルになった」や、最近の事例だと「評価額25億ドルのLyftは、楽天を筆頭に5億3000万ドルをシリーズEで調達」がある。

そのホロウィッツが昨年出版したThe Hard Thingsの日本版が明日(5月18日)、日経BP社から発売となるのでご紹介したい。

邦題は『 HARD THINGS 答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか 』。翻訳はTechCrunch翻訳チームの同僚、高橋信夫氏と私が担当した。企画・編集は『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン』、『フェイスブック 若き天才の野望』、『沈みゆく帝国 スティーブ・ジョブズ亡きあと、アップルは偉大な企業でいられるのか』などシリコンバレーのホットなノンフィクションをたてつづけにベストセラー化している日経BP出版局の中川ヒロミ部長。YJキャピタル取締役COOでエンジェル投資家でもある小澤隆生氏には日本版序文をいただいた(Amazonの紙版はこちらKindle版Kobo版も発売中。
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ベン・ホロウィッツといえば、共同ファウンダー、ゼネラル・パートナーを務めるアンドリーセン・ホロウィッツがベンチャーキャピタルとして驚異的な成績を挙げていることがまず頭に浮かぶ。2009年の創立直後のSkypeへの大胆な投資によってわずか1年半で1億ドル以上のリターンを得てシリコンバレーを驚かせたのを皮切りに、ポートフォリオからはFacebook(上場)、Twitter(上場)、Groupon(上場)、Zynga(上場)、Instagram〔買収)、と大型エグジットが続いた。現在のポートフォリオにはLyftやLytroのような有望スタートアップが並び、さらにAirbnb(評価額200億ドルで新ラウンド準備中)のような超大型スタートアップも含まれる。

これだけ見ればベン・ホロウィッツもマーク・アンドリーセンも順風満帆のシリコンバレーの成功者に思えるが、実はここまでの道のりは平坦ではなかった。というより阿鼻叫喚、修羅場の連続だったことが詳しく本書で語られている。実はホロウィッツが本書を書こうとした動機がそこにあった。冒頭でホロウィッツはこう書いている。

本書は分類すれば起業家向けの経営書ということになるのだろうが、内容は大いに異色だ。そもそもこの本を書こうとした理由をホロウィッツが冒頭で述べている。

マネジメントについての自己啓発書を読むたびに、私は「なるほど。しかし、本当に難しいのはそこじゃないんだ」と感じ続けてきた。本当に難しいのは、大きく夢見ることではない。その夢が悪夢に変わり、冷や汗を流しながら深夜に目覚めるときが本当につらいのだ。…会社が失敗のどん底に落ち込んだときに、社員の士気を取り戻すためのマニュアルはない。〔会社経営という〕困難なことの中でももっとも困難なことには、一般に適用できるマニュアルなんてないのだ。

これは誇張ではない。本書の前半ではホロウィッツがくぐり抜けてきた修羅場が詳しく語られる。

大学院を出た若きホロウィッツは5歳も年下の天才マーク・アンドリーセンに心酔し、当時日の出の勢いだったネットスケープに参加するが、そのとたんにマイクロソフトがIEをバンドルして叩き潰され、AOLに買収される。アンドリーセンと共にAOLを離れて世界最初のクラウドコンピューティングサービスのLoudCloudを起業して勢いが出たとたん、今度はドットコムバブルが破裂する。ベンチャー資金が枯渇して倒産が目前に迫る。そこで乾坤一擲、上場による資金調達を図る。2週間に2時間しか眠らないロードショーのおかげで上場に成功するが、またまた大口顧客が倒産して巨額の貸し倒れ。ドットコムバブルも長引き、倒産の危機が再燃する。そこでクラウド事業をEDSに売却してOpsWareというクラウドソフトのプロバイダーに転身するというピボットを図る。これで一息ついたとたん、最大顧客のEDSが契約破棄を要求。60日の猶予を取り付けて突貫作業でソフトを書き直し…最後にHPに16億ドルで売却の運びになる。ところが調印寸前に会計監査を担当していたプライスウォーターハウスにとんでもない言いがかりをつけられ、一転して交渉は破談寸前に…。

ホロウィッツのCEOとしての8年は、「このままでいけば私は470人の社員を路頭に迷わせることになる。投資家の金を失い、顧客を大混乱に落とし入れる。冷や汗をかいた。泣いた。気分が悪くなって吐いた」の繰り返しだった。恐怖のジェットコースター生活だ。このあたりは読んでいるだけで手に汗を握る。

ホロウィッツは「会社が本当の危機に直面したときにはレモネードのスタンドも経営したことがないような評論家の経営書など何の役にも立たない」と言う。本書で論じられるのは組織のリーダーの多くが直面するきわめて具体的な「困難な問題」であり、ホロウィッツが自らの体験から割り出した対応のヒントだ。

本書で取り上げられているテーマはたとえば次のようなものだ。

人を正しく解雇する方法
幹部を解雇する準備
親友を降格させるとき
なぜ部下を教育すべきなのか
友達の会社から採用してもよいか
大企業の幹部が小さな会社で活躍できない理由
社員が幹部を誤解するとき
経営的負債とは何か
経営の品質管理が必要だ
社内政治を最小限にする方法
正しい野心と間違った野心
肩書と昇進―2つの考え方
優秀な人材が最悪の社員になる場合
個人面談は人事管理の最重要ツール
企業文化を構築する
会社を急速に拡大(スケーリング)させる秘訣
成長を予測して人材を評価する誤り
「ワン」型CEOと「ツー」型CEO
平時のCEOと戦時のCEO
CEOを評価する基準

社員のレイオフや幹部の解雇にページが割かれているのはアメリカ企業らしいが、日本でも終身雇用制は急速にくずれつつある。特にIT企業、スタートアップ企業ではいずれ避けられない事態になりそうだ。備えあれば憂いなしで、そうした事態になったときリーダーは何をしなければならないのか、心構えを学んでおくのは必要だろう。

個人的には「戦時のCEO」というテーマが興味深く感じた。ホロウィッツは会社が存立そのものを脅かされるような危機に直面していることを「戦時」と表現する。

ビジネスにおける「平時」とは、会社がコア事業でライバルに対して十分な優位を確保しており、かつその市場が拡大しているような状況を指す。平時の企業は市場のサイズと自社の優位性の拡大にもっぱら注力していればよい。これに対して「戦時」は、会社の存立に関わる危機が差し迫っている状態だ。そうした脅威にはライバルの出現、マクロの経済環境の激変、市場の変質、サプライチェーンの変化などさまざまな原因が考えられる。

戦時のCEOはたったひとつの誤った判断、あるいは判断の遅れだけで会社を潰すことになる。ホロウィッツは半導体メモリー市場で敗北し倒産の危機にあったIntelをCPUメーカーとして再生したアンディー・グローブを戦時のCEOの理想としている。グローブは部下を気絶するほど容赦なく叱責した。ホロウィッツによれば、戦時のCEOは罵り言葉を使い大声で怒鳴るのも止むを得ないという。

会社にすでに弾丸が一発しか残っていない状況では、その一発に必中を期するしかない。戦時には社員が任務を死守し、厳格に遂行できるかどうかに会社の生き残りがかかることになる。戦時のCEOは偏執的だ。平時のCEOは野卑な罵ののしり言葉を使わずに済む。戦時のCEOは意識して罵り言葉を使う場合がある。

部外者はとかく独裁的CEOを「ブラック企業のボス」よばわりするが、本書は容赦ない独裁だけが会社を救える場合があることを具体例で示している。ただし、こうした「戦時」の独裁はあくまで会社を救うことが目的であって、自分のエゴのためであってはならない。この点については「正しい野心と間違った野心」というテーマで詳しく論じられている。

本書ではベン・ホロウィッツのバークレーでの生い立ちや美しい妻、フェリシアとの出会いが詳しく語られて興味深い。父のデビッド・ホロウィッツも重要な脇役として登場する。若いベンが妻子をかかえて先行きの見込みのない会社で安い給料で苦闘しているところに父デビッドがやってきて「安いものはなんだか知っているか?」と尋ねる。ベンが知らないと答えると「花さ」という。デビッドは「それじゃ高いものはなんだか知っているか? 高いものは離婚さ」と続ける。ホロウィッツははっとして家庭を優先させなければならないことを悟り、まともな給料を払う会社に転職する。デビッドは元リベラル派で現在は保守派の有力評論家だが、ベンの生き生きとした文章は父親譲りかもしれない。またマーク・アンドリーセンも全面的に編集、推敲を手伝ったという。

『フェイスブック 若き天才の野望』が夢のようなシンデラレ・ストーリーなら、『HARD THINGS』は魔女、悪竜、邪悪な小人の群れなどにくりかえし絶対絶命の瀬戸際に追いやられながらついにグループを率いて無事に目的地に達するリーダーの冒険物語かもしれない。経営書ということを抜きにしても十分に楽しめる本だと思う。こういう優れた著作の翻訳が翻訳できたことはうれしい。TechCrunch読者の皆さんに自信をもってお勧めできる一冊だ。

滑川海彦@Facebook Google+

電子書籍は2018年に紙を越えられるか


PricewaterhouseCoopers(PwC)のアナリストたちは、近々電子書籍が出版社の稼ぎ頭の座を印刷書籍から奪い取るだろうと(またも)予測している。これは何を意味しているのか? 要するに、電子本が普及し価格が安定すれば、ユーザーはパルプよりもビットに多くの金を費やすだろうということだ。その結果起こる変化は、印刷本にとどめをさすことになる。

NYT か作ったこのグラフは、米国における電子本のシェアが、2018年にわずかに半数を越えることを示している。

本当にそうなるのか?私は2018年という数字は買っていない。第一に、
The Digital Readerも指摘しているように、PwCは毎年毎年何度も何度も同じ予測を出している。なぜか? いつかは正しくなるからだ。

正直なところ、私は米国で電子本が印刷本を越えるのはもっとずっと早いと思っていた。 数字は依然として印刷本が電子本を上回り、ヨーロッパではまだまだ印刷が主流だ。しかし、安い電書リーダーが普及すればそれも変わるだろうし、世代の問題もある。子供や高年齢層 ー 書籍市場を支える読者たち ー がまだ印刷書籍を読んでいることは、 『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』、『トワイライト』、『ハリーポッター』の古書が大量に流通していることが証明している。しかし、親たちが子供を寝かしつけるのにタブレットを使うようになるにつれ、固執層の前半は近く崩壊すると私は感じている。高年齢層についても、祖父母や親たちが子供のKindleに馴染むにつれ、数字は減少していくだろう。

紙の本はいまもありふれている。電子本が「勝つ」ためには、印刷本が崇拝の対象になる必要がある。私は電子出版が驚くべきツールの数々を著者に提供したことを理解している書籍愛好家の一人として、最近Cory Doctorowの新刊『Information Doesn’t Want To Be Free』をハードカバーで買った。なぜ紙版を買ったのか理由を思い出せないが ー たぶん私がAmazonを注意して見ていなかったからだろう ー 美しい装丁の本を手にして、カバーが表紙から少しずれるのを見ながら、きっちりとしたページをめくるたびに時が刻まれていくことには、きっと何かがあるのだろう。しかし、インディー作家のひとりとして、遠からず私は電子本の体験をもっとロマンチックなものに変えることかできるだろう。われわれは今2つの世界に捕らえられている。新しい方はまだ準備が整っていない。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook


本を3Dプリントで作ることに十分な意味がある, という作例

デザイナーのTom Burtonwoodがデザインした本は、その中に、彼が住むシカゴの博物館/美術館や建築物から採取したテクスチャ(立体組織)がある。その本はアコーディオンのような形をしていて、orihon(折り本)と呼ばれ、だいたいどんな3Dプリンタでも作れる。

彼はこう書いている:

このプロジェクトのきっかけは、シカゴのColumbia CollegeのCenter for Book and Paperから作品を依頼されたことだった。その展覧会のテーマは、“オンデマンド印刷”と“写真集”だったが、それへのぼくの答えがこの“本”だ。

この本は、紙の代わりに3Dプリントされたプラスチックの板を折りたたんだもので、使われているプラスチックの量も多く、相当複雑だ。でもBurtonwoodは、お遊びと実用性をうまく両立させている。多くのアーチストたちにとって、3Dプリントを作品に利用するときの参考になりそうだ。

その本はここでダウンロードできるが、もちろんあなた自身が、彼のテンプレートを利用して怪獣図鑑や市内各地のトイレットの座面集などを3Dプリントで作ってもよい。あるいは、彼がデザインしたペッツ・ディスペンサRMuttを3Dプリントでコピーしてみるのはどうだろう。いずれにしても、クールな作品だね。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


Amazon、ユーザー1600万人のソーシャル読書サービスのGoodreadsを買収―Kindleとの統合で圧倒的優位を狙う

今日(米国時間3/28)、Amazonは有力なソーシャル読書サービス、Goodreadsを買収したと発表した。金額などの詳細は不明。買収手続きは第2四半期に完了する。

Goodreadsは2007年1月のスタート以来、True Ventures他から275万ドルの資金を調達している。 去年8月にわれわれが取材した際には、ユーザーは1000万人以上、 投稿された本は3億6000万冊以上で、毎月2200万冊が新たに投稿されているということだった。現在GoodReadsではユーザーは1600万人だと発表している。

この種のソーシャル・サービスを傘下に持つことは、Amazonにきわめて大きな比較優位性を与えることになる。たとえばオンライン電子書籍販売でのライバル、Appleはソーシャルな要素をまったくといってよいほど持っていない。もっぱら本についての情報を共有し、活発に議論をするソーシャル・サービスがAmazonの一部となるというのはまったく理にかなったことだ。

Amazonは当面Goodreadsのユーザーに対して特別割引などの優待キャンペーンができる。しかしそれ以上に、Amazon自身のソーシャル読書ネットワークとして本体への緊密な統合を図ることができるだろう。

下は昨年8月時点での毎月の登録書籍刷数の推移を表すグラフだ。Kindleと連携することでこの数はさらに飛躍しそうだ。

AmazonのKindleコンテンツ担当副社長Russ GrandinettiはAmazonのeブック事業にとってこの買収がきわめて重要であるとして次のように述べている。

AmazonとGoodreadsは読書体験の再構築に向けて情熱を共有している。Goodreadsは読者が新しい本を発見し、それについての意見を交換する新しい枠組みを作った。一方、AmazonはKindleで世界中、いついかなる場所でも本が読めるように読書体験を拡張した。さらにAmazonとGoodreadsは何千人も著者に新たな読者を紹介し、著作によって生活ができる道を開いてきた。われわれ両社が力を合わせることにより、読者と著者の双方に新たな喜びを与える方法がいろいろ発見できるものと期待している。

一方、Goodread’sの共同ファウンダー、CEOのOtis ChandlerはAmazonの買収によって開かられた新たな展望について次のように述べた。

本とその中に表現された物語や思想は、われわれの社会を織りなす重要な糸のひとつだ。人々は読んだ本について語り、その体験を共有するのが好きだ。私はAmazonとKindleと提携する機会を与えられたことにこの上なく興奮している。われわれは今やGoodreadsのソーシャル読書体験を今までにないスピードで世界中の何百万という読者に広めていくことができるようになった。

Goodreadsは公式ブログの記事でもう少し詳しくAmazonへの参加の意義や、Kindleとの統合が最優先課題であることなどを説明している。Chandlerによれば、

Amazonへの参加には以下の3つのメリットがある。

1. Amazonのユーザーと資源をもってすればGoodreadsの活発な読書家のコミュニティーをさらに多くの新たなユーザーに対して紹介し、また既存のユーザーの体験を改善することができる。

2. Goodreadsのユーザーは以前からeリーダー上でGoodreadsを作動させるよう要望してきた。今やGoodreadsは世界最大のeリーダー・プラットフォーム、Kindle上での展開を視野に入れることができるようになった。

3. AmazonはGoodreadsの独立性を尊重し、われわれがこのブランドと独特の文化を維持したまま活動を続けてよいと約束してくれた。

ソーシャル機能に加えてGoodreadsは長年の間に高度な本の推薦テクノロジーを確立している。これもAmazonにとっては喉から手が出るほど欲しかった資産だろう。

一方で、ライバルのAppleが手がけたデジタル・コンテンツ販売に関連するソーシャル機能といえば音楽ソーシャルネットワークを目指したPingくらいのものだ。しかしPingは人気を得ることができず、昨年10月に閉鎖された。Amazonがデジタル・コンテンツの各分野でGoodreadsに相当するような有力ソーシャル・サービスの買収に成功するならその分野での優位性は動かぬものとなり、当然売上にも反映されるだろう。とにかくGoodreadsが保有している膨大なユーザー・データの価値を考えただけでもこの買収は見事なスラムダンクだ。

また最近Amazonは著者自身による出版ビジネスにも参入して予想以上に売上を伸ばしているが、これもGoodreadsとの相乗効果が期待できる分野だ。

Goodreadsは興味ある数字を発表している。

過去90日間にGoodreadsのメンバーは毎秒4冊以上を『読みたい本』として登録している。

こうした数字がAmazonによる買収の決め手となかったのかもしれない。

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+