サンフランシスコで高校生にコンピューターサイエンスを教えるMission Bitに市が$1Mを補助

高校生にコンピューターサイエンスを教えるNPO Mission Bitが、サンフランシスコ市のDepartment of Children, Youth and Their Families(DCYF)〔仮訳: 児童青少年家族局〕から5年間で100万ドルの補助金を交付された。

Mission Bitは学校の各学期の放課後に、高校生向けのコンピューターサイエンス教室を提供している。秋と春のコースはそれぞれ13週で、1週間に4時間の授業だ。その内容は主に、HTMLとCSSとJavaScriptである。

夏休みには6週間のコースがある。この秋にMission Bitは、今やっている学習や成長をさらに延伸する2年計画の事業を立ち上げる、とCEOのStevon Cookは言っている。

その2年のコースは、DCYFがMission Bitに求める目標でもある。補助金は主に、里子として育った子や、公営住宅に住む子、移民の子など、社会から疎外されているような若者をより多くピックアップすることに使われる。そのためにMission Bitは、そういう恵まれない子どもたちのために尽力している既存の団体ともパートナーしていく。

コンサルタント企業のInspireがMission Bitのために行った調査によると、サンフランシスコのベイエリアだけでも、学校でコンピューターサイエンスのクラスにアクセスしていない高校生が10万名いる。2020年までにMission Bitは、その地区の1万名の、とくに黒人とヒスパニックの生徒たちに教えたい、としている。また、食事福祉を受けている生徒も、対象とする。

これまでMission Bitのプログラムに参加したのは1600名の生徒たちだ。現在のグループは150名の生徒だ。

画像クレジット: Mission Bit

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トランプ大統領、コンピューター科学への年間2億ドルの助成を教育省に要請

近々ドナルド・トランプ大統領は、K-12(幼稚園から高3まで)のコンピューター教育に毎年2億円を投入するよう教育省に要請した。Code.orgは、これを同非営利団体の活動の勝利であると宣言した。Recodeが今日報じたところによると、トランプ大統領は覚書で、STEM教育への助成金を最低2億ドル支出するよう教育省に指示している。

「今日のコンピューター科学教育への年間2億ドルの投資宣言は、Code.orgの勝利を示すものだ。われわれは4年前から、コンピューター科学の普及拡大と、女性や少数民族の機会拡大を求めて活動してきた」とCode.orgのファウンダー・CEO Hadi PartoviがTechCrunch宛ての声明で言った。

昨年懐かしきバラク・オバマ大統領の日々に、前大統領は40億ドルを超える助成金を要請し、誰もがコンピューター科学教育を受けられることを望んだ。しかし残念ながら、議会はこの取り組みを承認しなかった。トランプ氏に対してあなたがどんなスタンスを取るにせよ、これはアメリカの若者たちにとって朗報だ。

「国によるこの公約と、継続する民間、州、地方自治体による惜しみない支援を得て、コンピューター科学が米国K-12教育の主要科目になる動きは加速されるだろう」とPatoviは言った。「これまで以上に多くの教師が訓練を受け、より多くの学生がコンピューター科学を学び成功を収めるだろう。現在米国でコンピューター科学を教えている学校は、Code.orgの人気カリキュラムを使う場合、ほかの方法を用いる場合をあわせて40%しかない。2022年までにその数字が100%になることを願っている。」

覚書によると、トランプ氏は教育省に対して、K-12教育におけるコンピューター科学を拡大あるいは強化する方法を検討するとともに、性別や人種の多様性を勘案し、こうした取り組みに教育省が与える効果を詳しく記載した年次報告書を提出するよう指示した。

Featured Image: Victor J. Blue/Getty Images

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アメリカのスキル危機を解決する鍵は必修一般教育へのコンピュータサイエンスの導入だ

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[筆者: Linda Moore](政策および政治に関する超党派ネットワークTechNetの議長でCEO。)

合衆国はグローバルな競争力において危機に直面しており、対策が講じられなければその危機が、私たちの国を今後数十年間にわたり、戦略的に不利な立場に置くだろう。わずか数年後には、国民のスキル不足により、180万の求人が満たされないまま放置されることになる。それは十分な数の個人が、必要とされる技術的技能に関して、訓練されていないからだ。

40億ドルをコンピュータサイエンスの教育に投ずるというオバマ大統領の予算案は歓迎すべき一歩だが、しかし率直に言えば、この根本的な問題を解決するためには、国をあげての戦略を必要とする。今日では、10の学校のうちわずか1つにプログラミングのクラスがあるが、これを変えなければならない。

本誌主催の表彰制度Crunchie Awardでもっとも社会的影響力が大きかった賞を取ったCode.orgのような団体が、この問題に真剣に取り組み、児童生徒たちにプログラミングを教えているが、私がここで指摘している国家レベルの問題は、政府と非営利組織と民間(私企業等)三者の、公私両方から成るパートナーシップを必要とする。

では、私たちは、国としてあるいは国民として、この問題にどのように対処していくべきか?

第一に、アメリカのすべての中等学校が、コンピュータサイエンスを必須学科とすべきである。そしてそれらのクラスは、今の高卒資格に必要とされている中核的な科学と数学を学科の一部として含むべきである。また、充実した持続的事業により高能力なコンピュータサイエンス教師を訓練し確保しなければならない。生徒たちはテクノロジーを利用するだけでなく、それを実際に自分で作って動かす技術も習得する必要がある。

コンピュータサイエンスは子どもたちを問題解決者とイノベーターに育てる。

第二に、コンピュータサイエンスの教育は、若い女性たちや、社会的不利益を被りがちなマイノリティも含め、すべての児童生徒に等しく提供されなければならない。メンタリング(mentoring)とプロジェクトの実体験を含む教育課程が、生徒たちの生き生きとした関心をかきたて、彼らをコンピュータサイエンスとSTEMのキャリアに自然に進ませるだろう。

US2020Million Women Mentorsのような事業が、児童生徒たちをエンジニアやテクノロジー業界のそのほかのリーダーたちに結びつけようとしている。私たちはテクノロジーへの関心の火花を点火し、生徒たちに、STEMのキャリアがさまざまな機会に満ちた世界への扉を開くことを、理解させなければならない。

第三に、私たちはデジタルのコンテンツやツールを活用して教室にイノベーションを持ち込み、個人化された、データ指向の学習を提供し、教育の結果を改良していかなければならない。今日では、教師たちはタブレットなどのデジタルツールやリッチメディアの、その上っ面(つら)だけを使っている。これからは、教室の中にデジタル学習のリソースおよび、学習とテクノロジーとの統合を、確実に持ち込む必要がある。

そしてさらに、5年以内に全米の教室に高速ワイヤレスブロードバンドを導入し、児童生徒たちがインターネットに高速に、容易に、そして安定的にアクセスできるようにしなければならない。高速のインターネット接続がなければ、デジタル教育は画餅に終わる。児童生徒たちがインターネット上の情報のライブラリの全体に、自分の指一本でアクセスしたり貢献できる状態を、維持する必要がある。また、豊富なリッチメディアを通じて、高度な実験などにもアクセスできなければならない。

私たちは、コンピュータサイエンスが万人必修の基礎学科である、と認める必要がある。合衆国のすべての児童生徒が、アルゴリズムや、インターネットの原理、アプリケーションの作り方などを学習すべきである。しかしさらに重要なのは、コンピュータサイエンスが子どもたちを問題解決者とイノベーターに育てることだ。児童生徒たちにそんなスキルが身につけば、ほかのあらゆる学科においても有利であり、教室ばかりでなく、それを超えた広い世界においても、万事に有益である。

これは、一朝一夕には実現しない。それは、一つの世代全体に課せられているチャレンジだ。しかし私たちは今から始める必要があり、コンピュータサイエンスとその他のSTEM学科を十分に学んだ生徒たちのプールを、大きくしていく必要がある。それは、次世代の優れたイノベーターがアメリカに存在し、何百万もの児童生徒たちがこれらの革新的な分野でキャリアを追求していけるためだ。

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プログラマの人的イメージ(白人、男)を変えるために女子プログラミング教育のNPO Girls Who Codeがモバイルゲームを利用

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女子をコンピュータサイエンスから遠ざけている大きな要因は、プログラマがもっぱら白人の男性である、という偏見的イメージだ。GoogleがGallupに依頼して行った調査の結果はそう言っている。そこで非営利団体Girls Who CodeはモバイルゲームのメーカーPixelberry Studiosとパートナーして、後者の売れ線ゲーム”High School Story”に、若い女子のプログラマに関するお話を入れてもらうことにした。

そのGabrielaという名前のプログラマは、”High School Story”では初めてのテク関連のキャラクターだ。Pixelberryによると、このゲームを合衆国の女子高生の30%以上がこれまでプレイしたそうだ。ストーリーは、Girls Who Codeを巣立った女の子たちがモデルになっている。そのストーリーではGabrielaが主役で、最後の決戦がハッカソンだ。そこでの目的は、モバイルアプリを作ること。これまでもHigh School Storyには、ネット上のいじめや、ボディーイメージ(body image, 身体像)*に関するストーリーがあった。〔*: body image, 自分の性的魅力の観点から自分の体やその部品を気にすること。〕

Girls Who CodeのCEO Reshma Saujaniのねらいは、プログラマに関するイメージを、狭いもの(白人男性)から広いもの(誰でも)に変えることだ。“女子たちに、プログラミングが自分のやりたいことを達成する手段であることを、理解させたい。コンピュータの伝統的文化像を変えて、それは女子にも作れる文化であり、むしろ女子に向いている創造的文化であることを伝えたい”、と彼女は語る。

“High School Story”はiOSとAndroidで遊べる無料のゲームだが、その中にアプリ内購入があって、自分を表すキャラクターのシャツを買ったりできる。今回のストーリーでは、それがGirls Who Codeの収益源になる。Girls Who Codeは合衆国の41の州で活動を展開しており、2012年の立ち上げ以来今日まで、1万名あまりの女子にプログラミングを教えた。

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コンピュータ科学は今や万人の学、普及にはイメージの改革が必要

[筆者: Alison Derbenwick Miller]

編集者注記: Alison Derbenwick MillerはOracle AcademyのVPで、彼女のチームは生徒の興味とスキルを高めることによる高度なコンピュータ科学教育を推進している。それにより同校は、生徒の性別や社会経済的な背景(人種など)を問わず、次世代のイノベータとビジネスリーダーを育てようとしている。


コンピュータ科学教育の拡大と普及を阻む頑迷固陋なイメージの問題が存在することが、このところますます明らかになってきた。しかし、この問題をこれ以上放置することは許されない。

個人のモバイルデバイスから、会社の自動化人事管理システム、電力会社のスマートグリッドなどなどに至るまで、情報技術は今日の世界のあらゆる部分に浸透し、それと共にコンピュータ科学の必要性も増している。しかし多くの指標は、その需要と供給のあいだに大きなギャップがあることを示している。たとえば合衆国労働統計局のデータでは、2020年にコンピュータ科学関連の新たな求人は140万件ある。これに対し現在の教育者の数と大学の容量から推計すると、2020年に新たに社会に供給できるコンピュータ科学履修者はわずかに40万人である。

コンピュータ科学者のニーズが増え続けているだけでなく、社会のあらゆる分野で今では、コンピュータ科学の基礎的なリテラシーがますます必要とされている。企業のマーケティングも、地方の行政も、それに保健医療の分野も、意思決定がデータに依存しつつある今日では、コンピュータと情報処理の基礎知識や、コンピュータプログラミングとデータ分析の初歩的知識や技能が、どの職場でも必要とされる。今日そうでないところでも、明日はそうなる。

しかし今の中学校のカリキュラムには、コンピュータ科学のコースやそれに相当する学科がほとんどない。高校ではわずか10%の高校にコンピュータ科学のコースがあるだけで、高校全体としては、初等コンピュータ科学のコースは2005年に比べて17%減少している(College Board*のデータによる)。〔*: College Board, 日本の大学入試センターにやや似ているが、民間機関。〕

このような需給ギャップの拡大傾向がこのまま続けば、深刻な経済不安と社会的な不正義(貧富の格差など)を招きかねない。したがって、どんなに困難な問題であっても、コンピュータの知識と技能に関する持てる者と持たざる者とのギャップを縮小する現実性のある努力を、われわれは今日にでも開始しなければならない。学校と教師と親と行政と産業界の全員が、その努力の担い手でなければならない。

コンピュータ科学は、本質的に難しい学科だ。そのためそれは、多くの生徒をびびらせてしまい、コードを書くという機械的な作業の向こう側に、モバイルのゲームから医療の個人化に至るまで、コンピュータ科学の実際的ですばらしい応用〜アプリケーションが、生活とコミュニティのあらゆる部分に浸透していることを、なかなか理解しないし、実感できない。生徒たちは、試験でAを取ることが勉強の目標だ、と教えられる。しかしコンピュータ科学は、試行錯誤を繰り返しながら成功を実現する過程だ。

生徒たちは、試験でAを取ることが勉強の目的だ、と教えられる。しかしコンピュータ科学は、試行錯誤を繰り返しながら成功を実現する過程だ。

しかも生徒たちの多くは、コンピュータ科学の知識と技能が開く多様な進路や職業を、実際に見たり触れたり理解したりする機会に恵まれていない。コンピュータ科学とは、単純にコマンドラインを操作することではなく、よりエネルギー効率の良いビルを建てたり、ホームレスのペットに新しい家族を見つけてあげたり、顕微鏡手術を行うロボットを開発することなのだ。

教師の絶対的な不足も、大きな問題だ。College Boardによると、合衆国の約42000の高校のうち、コンピュータ科学の初等APコースがあるのは9%にすぎない(2013年)。

このような趨勢を変えるためには、何をすべきか?

コンピュータ科学をK-12カリキュラムの必須科目にする コンピュータ科学者を作るためには、25年以上かかる。問題を分析できて、その解を設計でき、それを流暢なプログラミング言語で実装できるようになるまでには、それぐらいの年月を要する。したがってコンピュータ科学の基礎教育はK-12から始める必要がある。

低学年には、コンピュータそのものだけでなく、コラボレーションによる問題解決や、批判的な思考力、数学において現実的な問題を創造的に解く能力、科学と言葉によるアート、などの能力を涵養する必要がある。高学年ではAlliceGreenfootビデオ)などを使って実際のプログラミングに挑戦する…絵本の一シーンをアニメにしたり、習ったばかりの数学の知識を応用したゲームを作るなど…。これらはすべて、コンピュータ科学の基礎を子どもたちの脳内に形作る過程であり、高校で本格的なプログラミングのコースを、びびらずに自然に取れるようにする。

気軽でとっつきやすいコンピュータ科学 教師や親や学校管理者などは、多くの生徒がコンピュータ科学はおもしろい、と思えるような方法で、この学科への関心を喚起できる。日常の思わぬところにコンピュータ科学がある、ということに生徒たちが気づくようにしよう。クラス分けをするとき、コンピュータがどんな役に立っているのか。携帯電話の重要な機能を、コンピュータがどうやって支えているのか。Webの広告はあなたに見せる広告をどうやって選んでいるのか、などなど、現実の中から話題を拾うとよい。

現状では、コンピュータ科学を選んだ生徒学生たちに多様性が少なくて、そのことも、企業等が求める才能と技能の需給ギャップの拡大に貢献している。2013年ではコンピュータ科学のAPを取った高校生のうち、女性は20%弱、アフリカ系アメリカ人はわずか3%、ヒスパニックは約8%だった(College Boardによる)。

成功が学校/教室の外にあることを理解する コンピュータ科学を勉強したらコンピュータの専門家になる、という通念はもはや昔の話だ。今はまったく逆で、どんな仕事をするにもコンピュータ科学の知識技能がある程度は必要だ。だからコンピュータ科学を、進路の多様性と結びつけながら教えていこう。それによって、女性やマイノリティの人たちが、より多くコンピュータに関心を持つだろう。産業界と高等教育の分野がどちらも既存の役割モデルに光をあて、コミュニティのレベルでのメンターシップ(いわゆる“実践的社会教育”)に力を入れるべきだ。学校は、実際にコンピュータを仕事に役立たせている父兄を招待して、コンピュータ科学と職業的現実との結びつきを生徒に理解させるとよい。

企業と協力する 学校と産業界が常時オープンな連携関係を維持して、生徒たちが、今勉強していることが現実世界で何の役に立つのか、将来的にどのような技能が求められているのかを、つねに理解していることが必要だ。学校は、ちょっと高度な実験や、モデルづくりや、コラボレーション事業になると、資金や時間や知識がなくてなかなか取り組めないことが多い。それらに関しては、地元の企業にぜひスポンサーになってもらおう。もちろんこれは、企業の社会貢献の一環になる。企業はこれまでにも、さまざまな分野で、教師や生徒の教育に協力し貢献してきた。〔余計な訳注: 単純な工場見学などは、事前に学産共同でプログラムを練らないと、おもしろいもの、教育効果の高いものにはなりにくい。〕

コンピュータ科学を全国の教室に実装することは、一朝一夕でできることではない。しかし、上記の深刻な需給ギャップをなるべく早期に填めるためには、教師、学校管理者、国、地方行政、そして産業界が協力して長期的な実践プランを作り、明日必要な人材が明日になったら確実にいる、という状態をなんとしてでも作り出さなければならない。

コンピュータがもはやコンピュータの専門家のものではない今日および未来は、生徒たちに確実に正しい知識とスキルを身につけてもらうために、コンピュータ科学がもたらす多様な可能性に生徒たちを今から触れさせることが重要であり、そしてそのためには、企業が必要とするスキルに関して、教育者と雇用者がオープンな対話を定常的に継続することが重要だ。これによって公的教育に投じられる資金も増え、人種や性別を問わずすべての生徒に、コンピュータ科学を学んだことにより、より良い就業機会を与える。それは、コンピュータ科学者になることだけでなく、公務員、保健医療プロバイダ、ミュージシャン、などなど、何であっても、コンピュータの知識と技能がその職業に力を与える。

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コンピュータ科学(CS)の教育にも現代化が必要だ

[筆者: Jay Borenstein]

編集者注記: Jay Borensteinスタンフォード大学のコンピュータ科学の講師で、FacebookのOpen Academyのファウンダ。

このところ、大学で十分な数の技術者が生産されない、と嘆く声が多い。シリコンバレーではとくにそうだ。合衆国労働省の予想では、2020年にはコンピュータ科学(computer science, CS)を専攻した学卒者への新規求人が140万口あり、しかし実際の卒業者はその30%しかいない、という。しかし実は、それよりももっと問題なのは、CSを専攻して卒業した者の多くに、企業ですぐに役に立つ実践的なスキルがないことだ。つまり、CSの学士や修士と、実際のソフトウェアエンジニアは、まったく違う物、なのだ。

大学のCSの課程には、ソフトウェア開発の実習もある。しかしそれはあくまでも教材の一環だから、職業としてのソフトウェア開発のいろんな側面は学生たちに伝わらない。まず、実際のソフトウェア開発のプロジェクトは、クラスの実習よりも大規模で時間も長い。現実のソフトウェア開発では、相当量の既存のコードも理解して使いこなせなければならない。さらに現実の世界では、プロジェクト管理や人間関係の要素がソフトウェア開発にも影響を及ぼす。そしてシステムは、技術を評価する先生ではなく、ユーザの満足度で評価が決まる。

この問題に対するベストソリューションは、学生をオープンソースのコミュニティに触れさせることによって、重要な基礎を与える大学のCS教育と、本物の仕事や作品が備える実践性とを結びつけることだ。

CSの学生たちをオープンソースに触れさせることは、彼らをソフトウェア産業の、どくどくと脈打つ心臓の部分に放り込むことになる。オープンソースの世界では誰もが開発に参加して新しいインフラや設計を一から作っていく。しかも、誰からも強制されずに自発的に。また大学での実習と違ってオープンソースの世界では、自分が行う寄与貢献(コントリビューション)が各エコシステムに直接の影響を与える。

学生たちをオープンソースの世界に慣れさせて、活発にコントリビューションをやらせることによって、CSの課程が実践的な職業教育にもなり、自分が勉強していることや書いているコードなどに、学生自身が現実感を持てるようになる。

学生たちをオープンソースの世界に触れさせるとは、単にそういう話をして、リンクを紹介して、「やってみたら」と言うことではない。ちゃんと、正規のカリキュラムを確立して、教師の役割、学生のやるべきこと、そしてアシスタントのベテランオープンソーサーにやってほしいことを、シナリオとして具体化しなければならない。アシスタントは、人気の高いオープンソースプロジェクト、MongoDBMozilla、Open Badge、Ruby on Rails、SocketIOなどのメンテナを実際にやっている人がよい。このやり方は、今ぼくがここで思いつきを書いているのではなくて、いくつかの大学がすでに実践しており、以下のような成果を上げている:

  • 教育現場にエキスパートがいる: 大学のCSの先生が(ぼくもそうだが)同時にオープンソースプロジェクトのエキスパートであることは稀だ。だからアシスタントの形でプロジェクトのエキスパートを教育現場に連れてくれば、学生たちが得るものも大きく、しかも勉強に対して現実味のあるフィードバックが得られる。たとえばほとんどのオープンソースプロジェクトでは、残っているバグは難しいのばかりだ。そんな難関のバグを学生とエキスパートが一緒になって解決努力に取り組めば、ものすごく貴重でしかも現実性の高い学習経験になる。
  • チームワークを体験: 学生たちを、個人ではなく数名ずつのチームに編成してオープンソースプロジェクトへのコントリビューションにあたらせる。その過程をエキスパートがガイドする。ふつうの大学のふつうのカリキュラムには、(成績評価が難しいので)チームワークが完全に抜け落ちていることが多い。だからこそ、この新しいオープンソース体験は重要な…現実世界への応用性も高い…学習体験となる。
  • 達成感が得られる: オープンソースをカリキュラムに含めると、学生たちにソフトウェア開発の現実を体験させ、また自分たちのコントリビューションでそのプロジェクトのステートが実際に変わった(前進した)ことを体感できる。
  • 集中力が育つ: たぶんいちばん重要なのは、学生たちが具体的なプロジェクトに集中して自己のスキルを構築し、しかもそれが、卒業後にはすぐに会社などで役に立つことだ。医学部の学生にはインターンのあとに臨床実習が義務付けられているが、それとほぼ同じ現実的な過程をCSの学生たちが体得できる。その現実体験の記憶は、会社の業務の理解も早める。

大学のカリキュラムにオープンソースを導入することには、教育以外のメリットもある。それは、オープンソースの精神に中毒性(やみつきになること)があることだ。人間は集団的な生物なので、オープンソースにおける国境なき大規模なコラボレーションと、何かを変えようとする集団的意思力は、学生たちを明るく元気にする。未来のCS教育は壁のない教室で行われるようになり、卒業したその日から仕事ができる人材を数多く育てる、とぼくは信じてやまない。

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Code.orgの提唱した「Hour of Code」、2週間で2000万人が学び、生まれたコードは6億行

一年ほど前、Hadi PartoviとAli Partoviの兄弟がCode.orgを立ち上げた。目的はアメリカにおけるコンピュータサイエンスやSTEM教育の普及を支援するためだ。合衆国中でSTEMに力を入れる学校やコースを増やすことを目指している。どうやら、このCode.orgの動きは大きな流れとなり始めているようだ。

12月9日、Code.orgはHour of Codeという全国キャンペーンをスタートさせた。Code.orgにあるコーディングコースやチュートリアルを使って、アメリカ中の先生に初歩のコンピューターサイエンスの授業を1時間行ってもらおうとするものだ。Computer Science Education Weekと時を同じくして開催された。キャンペーンの具体的な目的は、現在までのところ10校中9校ではコンピューターサイエンスに関わる講座が設けられていないというアメリカ教育会の現状に変革を迫ろうとするものだ。

こうした全国を巻き込んだキャンペーンやロビー活動が、どうやら実を結びそうな展開となっている様子だ。政策面でもコンピューターサイエンスの重要性が各地で認められつつあるようであるし、またHour of Codeのキャンペーンも大きな注目を集めた。たとえばアラバマ州、メリーランド州、そしてウィスコンシン州は、州内の教育ポリシーの変更をアピールした(ないしアナウンスする予定となっている)。またChicago Public SchoolsおよびNew York City Department of Educationもコンピューターサイエンス授業の採用を予定していることが発表された。

さらに、Partovi達によれば、Computer Science Education Weekの期間に1500万以上の学生がHour of Codeに参加して、トータルで5億行ものプログラムを書いたのだとのこと。Computer Science Education Weekは12月16日に閉幕したわけだが、Hour of Codeの方は続いていて、参加者数は2000万を超え、書かれたコード行数も6億7500万行となっているのだそうだ。

ちなみに、このHour of Code参加者には海外からの参加者も含まれている。参加者の国数を数えると170ヵ国にのぼるそうだ。それでも海外からの参加者と、大人の数を覗いてカウントすると、アメリカ国内のK-12段階の生徒の4人に1人がHour of Codeに参加したのだとのこと。また学校単位でHour of Codeに参加しているところから、この2週間のうちに参加した女子の数が、公立学校生徒に通う女子でコンピューターサイエンス授業を受けた女子の総数(全歴史)を上回ることにもなったのだそうだ。

Hour of Code参加者の数値をもう少し詳細に見ておこう。Code.orgの発表によれば、参加者総数は2000万以上で、83%がアメリカからの参加だった。74%がK-12レベルの生徒たちで、51%が女子だったようだ。アフリカンアメリカンの率は8%で、ヒスパニック率は14%だった。この数字がこれをきっかけに伸びていくのか、また1時間のプログラミング教育の効果のほどがどの程度のものであるのかといったことは、今後検証していくことになる。しかしHour of Codeはかなりの成果をあげたということができるのではなかろうか。

これだけ大きなムーブメントとなるために、キャンペーンで行ったことはなんだっただろうか。

まず、Hour of Codeは数々のビッグネームによる支援されていた。TechCrunchでも記事にしたようにMicrosoftやAppleも、自らの小売店舗にてHour of Codeのクラスを開催した。また、Appleはこの催しについてホームページを通じて広く告知してもいた。さらにGoogleはアメリカのコンピューターサイエンティストでCOBOL言語の開発者であるGrace Hopperを偲ぶGoogle DoogdleにてComputer Science Education Weekの幕を開けた。また、このGoogle Doodleの下にはHour of Codeキャンペーンへのリンクも掲載していた。

さらに、YouTube、MSN、Bing、Yahoo、Disney(などなど)で広くフィーチャーされ、有名な政治家、ミュージシャン、スポーツ選手なども支援を表明していた。たとえば芸能人でいえばシャキーラ、アシュトン・カッチャー、アンジェラ・バセット、またアスリートで言えばクリス・ボッシュ、Warren Sapp、あるいはドワイト・ハワードなどだ。テック界からもスティーブ・ジョブズ、ビル・ゲイツ、マーク・ザッカーバーグ、およびSusan Wojcickiなどが支援者に名前を連ねている。

政治家も党派を問わず賛意を示していた。名前をあげればオバマ大統領や多数党院内総務を務めるEric Cantor、Cory Booker上院議員、ニュート・ギングリッチ、合衆国教育省の長を務めるArnie Duncanなどだ。

生徒たちにプログラミングを指導するのを支援するためにCode.orgは、企業、非営利組織、ないし大学などの協力を仰いでオンラインチュートリアルを用意した。こうしたチュートリアルを求める動きも活発で、たとえばAll Things Dの記事によれば、Khan Academyで用意したビデオを見るトラフィックが増大し、サイトが一時的にダウンしてしまうほどだったとのこと。

キャンペーン自体は大いに注目を集め成功であると評価して良いものと思う。しかし今回の2000万人はあくまでもスタート地点だ。興味をもった人は、自身でもHour of Codeのサイトから面白そうなコースを見つけて参加してみては如何だろうか。また先に示した記事の中にも、オバマ大統領などからのメッセージビデオも掲載している。またComputer Science Education Week期間中の動きについてのインフォグラフィックを下に掲載しておこう。

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(翻訳:Maeda, H