オーダースーツをオンラインで作れる「FABRIC TOKYO」が丸井グループから資金調達

採寸データを一度保存すれば、オーダースーツやシャツをオンラインで簡単につくることができる、D2Cブランド「FABRIC TOKYO」。サービスを運営するFABRIC TOKYO(旧社名ライフスタイルデザイン)は5月23日、丸井グループから資金調達を実施したことを明らかにした。調達金額は非公開だが、10億円規模と見られる。今回の資金調達により、FABRIC TOKYOの設立以来の累計資金調達金額は20億円超となる。

FABRIC TOKYOでは、2014年に現在のサービスの前身となる「LaFabric」をローンチした。当初はオンライン上でいくつかの質問に答えると、適切なサイズが提案され、そのまま購入できるサービスとしてスタート。その後、首都圏と大阪に展開する全10店舗でいったん採寸してデータを登録し、必要になったときにマイページから欲しいスーツやシャツを注文するスタイルに変わっている。ユーザーが改めてサイズに迷うことなく、オンラインでも簡単に体に合う洋服が手に入るというのが、FABRIC TOKYOのウリだ。

FABRIC TOKYOでは、自社企画商品を自社のみで販売するD2C(Direct to Consumer)モデルを採用。オーダー情報は提携する国内の縫製工場へ即時に送信される。中間流通を通さず、受注生産型で工場と直接取引することで、高品質かつ適正価格を実現しているという。

5月21日には新機能「自動サイズマッチングテクノロジー」をリリースした。この機能を使った商品の第1弾として、採寸データをもとに自動的に“いい感じ”のサイズのポロシャツが提案される「POLO SHIRT 2019」を販売開始している。

製品は、クールビズの浸透によりポロシャツ着用ができるオフィスが増えていることから、「ビジネスシーンでもきちんと感があること」「洗濯に強くタフに着回せること」を条件にポロシャツを選びたいというユーザーの声に応えてできたものだ。

XS〜3XLと全7種類のサイズの中から、ユーザーのデータにぴったり合うサイズが自動で提案され、2種類の着丈、2種類のフィット感が選択可能。合計28のサイズラインアップ、4色から自分に合ったポロシャツをオンラインで買うことができる。

今回株主となった丸井グループは「デジタル・ネイティブ・ストア」戦略を掲げており、FABRIC TOKYOが運営するD2Cブランドの成長戦略の方向性が一致したことで出資につながった、とFABRIC TOKYO代表取締役の森雄一郎氏は述べている。

これまでにもFABRIC TOKYOの全10店舗のうち3店舗(新宿、渋谷、池袋)が、丸井グループが運営するビルに出店しており、「いずれも業績は好調で全店舗黒字化し、初期出店コストも回収済みとなっている」(森氏)とのこと。「業績は成長基調にあり、昨期(2018年12月期)の売上は前年対比約300%で着地し、今期の目標も同等としている」(森氏)

森氏は「デジタル前提社会において小売を再定義する必要があるとの思いで活動している中で、先進的な取り組みを多数行ってきた丸井グループとは相性の良さを感じている。今後はリアル店舗の出店を強化していくとともに、マーケティングや生産面・組織面での連携を行いながらD2Cブランドの運営ノウハウを双方で蓄積し、FABRIC TOKYOを国内でも有数のアパレルブランドへと成長させていく」と資本業務提携にのぞみ、コメントしている。

FABRIC TOKYOでは、首都圏中心に展開してきた店舗について、2019年4月の大阪進出を皮切りに、今年は全国網羅的に展開していく計画だという。

FABRIC TOKYOは2012年4月の設立。2018年3月に社名をライフスタイルデザインからFABRIC TOKYOへ変更している。同社はこれまでに、2015年5月にニッセイ・キャピタルから1億円を調達、2017年1月にニッセイ・キャピタルほか複数のVCと個人投資家らから4億円を調達2017年10月にはグロービス・キャピタル・パートナーズ、ニッセイ・キャピタル、Spiral Ventures Japanから7.4億円を資金調達している。

なぜアメリカのラーメンは不味いのか?米国で勝負するRamen Heroに聞く

Ramen Heroのミールキット

アメリカではラーメンブームが来ており、ここサンフランシスコでも多くの店がラーメンを提供している。だが、実際に美味しいお店は多いのだろうか?

アメリカでラーメンのミールキットを提供するスタートアップ、Ramen Heroの創業者でCEOの長谷川浩之氏は、「美味しい店を探すのは苦労する」と話す。

同氏の実感だと、「美味しいラーメンは5パーセント、美味しくないラーメンは95パーセント」。

TechCrunch Japanでは長谷川氏に、サンフランシスコにあるRamen Heroのオフィスで、アメリカのラーメン事情や、アメリカで多種多様な人々にミールキットを提供する同社のラーメンに対する「こだわり」について話を伺った。

ラーメンと言えば、麺とスープ。アメリカでラーメンを提供する店はどこで麺を仕入れているのだろうか?そして、その麺は美味しいのだろうか?

アメリカには2つの大きな製麺所がある。Sun NoodleYamachan Ramenだ。長谷川氏によるとアメリカのラーメン店の多くのはどちらかの麺を利用する。ちなみにRamen HeroはYamachan Ramenに麺を発注している。

Sun Noodleは1981年、ハワイ州ホノルルで設立された。山ちゃんラーメンは1989年、代表の山下英幸氏がサンノゼで創立し、以来、「真の日本の麺」を生産してきた。

長谷川氏は上記の2社の麺のクオリティーは高いと評する。

「アメリカの小麦は、正直、美味しい。日本国内では『日本の国産小麦』と謳っているところもあり、それももちろん美味しいのだが、外国産だから不味いのか、というと、そうではない。逆のパターンもある。国土が広いから大量に作っているし、ノウハウもあるし、香りが良いものもあるし、価格もリーズナブル。良いものを作りやすい環境が揃っている」(長谷川氏)

問題はスープや具材。「お湯に醤油をいれただけなんじゃないか」と感じるようなラーメンや、「創作系ラーメンは存在するが、これはちょっとヒドい」と思うようなものが多く存在するそうだ。

その原因は、アメリカではまだまだ専門店が少なく、日本食レストランやアジア系レストランが1メニューとしてラーメンを提供しているというケースが多いから。そして、アメリカで本格的なラーメンが展開され始めたのは、「ここ10〜20年ほど」。舌の肥えた職人やラーメン通がまだ十分に育っておらず、「作り手が増え、コンペティティブになることでの相乗効果」がまだ十分に伸びていないと長谷川氏は言う。

だが、状況も少しづつ変わってきている。「日本から本格的なラーメン屋が進出した」などのニュースにより、行列のできるラーメン屋は少しずつ増えてきた。

長谷川氏が2016年に算出した数字だと、市場規模は5000億ドルほど。当時、同氏いわくアメリカでは2万6000店ほどの飲食店がラーメンを提供していた。ラーメン店の数の伸び率も、2016までの10年間、「毎年10〜20パーセントくらい」(長谷川氏)で伸びていた。

もともとアメリカでは昔から、大学生などが節約のためにカップラーメンや乾麺を食べている。僕が通っていたサンディエゴにある中学校でも、カフェテリアのメニューにはマルちゃんのカップラーメンがあった。なので、「ラーメン」という言葉自体はアメリカではかなりメインストリームだ。

そのような学生が30から40代になり、お金にも時間にも余裕ができ、ラーメン店の開店に関するニュースを見たり、近所にラーメン店が開いたことをきっかけに、再びラーメンに興味を持つというケースもあると長谷川氏は言う。だが、多くの場合は行列に並ぶ必要があったり、不味かったり、と、気軽にラーメンを楽しめる状況ではない。加えて、地方では都心部と比較して美味しいラーメン店を見つけるのが困難だ。

だからこそ、Ramen Heroは現在、D2Cのミールキットという形でラーメンを提供している。好みが千差万別なアメリカ向けに、Ramen Heroは若干、甘めの味に設定。アメリカではラーメンは「スープヌードル」として食されるため、麺は日本と比較すると少なめだという。

そんなRamen Heroの次の展開はB2B。アメリカでラーメンを提供している店舗に対し、Ramen Heroのラーメンを販売する予定だ。これにより、「ECに抵抗のある高齢者」などもRamen Heroのラーメンをトライすることができる。

「B2Bは面白い」と話す長谷川氏。全米でラーメンを提供する店は2万6000店もあるものの、その95パーセントは不味い。長谷川氏はこの状況を大きなチャンスと捉えている。

Ramen Heroはアメリカのラーメン好きの「救世主」になれるのか?同社の今後の展開に期待したい。

国産の生地と縫製技術を繋ぎ世界で戦える製品を、D2Cブランド「Foo Tokyo」が5000万円を調達

パジャマやナイトウェアなどリラックスタイムに使用する商品を扱うD2C(Direct to Consumer)ブランド「Foo Tokyo(フー トウキョウ)」。同ブランドを展開するNext Brandersは7月17日、5月からスタートしたECサイトをリニューアルオープンしたこと、および複数の投資家を引受先とした第三者割当増資と融資により総額5000万円を調達したことを明らかにした。

今回Next Brandersに出資したのは独立系VCのANRI、個人投資家の有安伸宏氏、ヘイ株式会社代表取締役社長の佐藤裕介氏。調達した資金は組織体制の強化、スキンケアやバスグッズなど商品の拡充、会員限定イベントなど各種マーケティング活動に用いるという。

熟練の技術を生かした心地いい製品をD2Cモデルで

Foo Tokyoは冒頭でも紹介した通り、「リラックスタイム」という時間帯にフォーカスしてオリジナルの製品を企画・制作し、自社のチャネルで販売しているD2Cブランドだ。

タオルの名産地として知られる愛媛県今治市発の「渡辺パイル」や、オリジルナルのストールが有名な静岡県掛川市発の「福田織物」を始め、世界的ブランドも愛用する国内の織物工場や熟練の技術を持つ縫製工場などと連携。

厳選した生地と高い技術を用いて作った「肌へのストレスを徹底的に排除した最高峰の心地良い製品」がウリだ。

Next Branders代表取締役社長の桑原真明氏によると、Foo Tokyoの特徴は「世界的ブランドと同クラスの製品を作れる」こと。確かにFoo Tokyoの製品を見ていると数千円台後半〜数万円台が多く、ガウンについては高いものだと15万円近くになる。

製造時には工場の空き時間を活用。自社で店舗を持たず、余分な在庫や広告費、人件費を抑えることなどによって「(世界的ブランドでは)約100万円などで売られてるいるような高品質なものを、十数万円で提供できる」環境を構築している。

5月のスタートから日が浅いため売上規模はまだ小さいというが、ミシュラン5つ星を獲得している京都の高級旅館にオリジナル商品の導入が決まっているほか、地上波CM撮影への衣装提供や大手百貨店での出店問い合わせもきているそう。7月20日からは表参道で3日間ショールームを開催する予定だ。

また本日リニューアルしたECサイトでは、自分の体のサイズと好みの生地(4種類)に合わせたガウンのカスタムオーダーも開始。これによってより個々に合った商品の提供を目指すという。

日本の生地と技術を用いて、世界で戦えるブランドを

「日本の生地や縫製技術を集結した製品で、世界で戦えるブランドを作りたい」——桑原氏が起業して自身でブランドを立ち上げた背景には、そのような思いがあるようだ。

もともと学生時代からアートやクリエイティブに関心があり、アパレル企業でのアルバイトやファッションショーに携わったこともあったという桑原氏。大学院卒業後に入社したメリルリンチ日本証券を経て、2017年12月にNext Brandersを設立した。

ファッション領域の中でリラックスタイムに軸を決めたのは「自分自身が仕事中心の日々を過ごしていた前職時代に、リラックスを渇望していた」(桑原氏)から。当時の自分と同じように疲れを癒したい人たちに対して、安らげる時間を提供することがFoo Tokyoの目標。ブランド名のFoo(ふぅ)も安らぎの一息の象徴からきているのだという。

「(寝るときなど)リラックスタイムこそ良いものを使いたいというニーズは一定数ある。またパジャマやナイトウェアのブランド自体はたくさんあるが、素材や技術など日本のものづくりの良さを発揮できているブランドとなれば、そこまで多くはない。日本発で本当に質の高いものを提供していきたい」(桑原氏)

写真左からNext Branders代表取締役社長の桑原真明氏、同社CISO 社外取締役の松宮大輝氏

Foo Tokyoではリラックスタイムに使用する商品という軸で、今後はコスメやシーツなどアパレル製品以外の開発にも取り組む計画。

また同ブランドでは会員登録をすると生地サンプルのついたパンフレットを郵送してもらえるのだけど、中長期的な構想としてはECサイトに蓄積されたデータなども活用しながら、各ユーザーに合った生地を用いた商品の企画やレコメンドの仕組みなども検討しているようだ。

「ECサイトのネックの一つが生地。実際に触ってみないと細かな肌触りの違いはわからない。人それぞれ気持ちいいと感じる生地は異なるので、Foo Tokyoにくれば常に自分にとって気持ちいいと思える商品が揃っている、見つかるという世界観を実現したい」(桑原氏)

CPGこそベンチャー投資の未来だ――消費者向けパッケージ商品スタートアップへの投資のポイント

この記事の執筆者はRyan Caldbeck(消費者向けパッケージ商品のスタートアップへの投資マーケットプレイス、CircleUpのCEO) 。TechCrunch投稿記事:消費財業界で起きようとしているM&Aの雪崩Unileverが10億ドルでDollar Shave Clubを買収した理由

6年前、われわれが創立したCircleUpのための資金集めをしていたとき、大勢の投資家が「消費者」という言葉を聞くと目をそらした。

われわれのプラットフォームは小規模なCPG(消費者向けパッケージ商品)の会社にのみ投資すると説明すると、投資家たちは居心地悪そうに身じろぎし、視線をあちこちにさまよわせたものだ。「エナジーバーなんか作っている会社はスケールするわけがない」、「ベビーフードではタカがしれている」といった懐疑的なコメントを何度も聞いた。傑作だったのは、「消費者向け商品を作っている会社の名前なんか一個も思い出せない」だった(あるベンチャーキャピタリストが本当にそう言った)。

今ではさすがに空気が変わっている。テクノロジー関連のニュースをブラウズすればGreylock PartnersがCPGスタートアップを賞賛している。Sequoiaのマイケル・モリッツは化粧品のCharlotte Tilburyの取締役に就任しているし、Lightspeed VenturesはVMG Paratnersと共同で中規模の消費者向け企業に投資している。

シリコンバレーのベンチャーキャピタリスト間では、AI、ブロックチェーンと並んでテクノロジーを活用するCPGへの投資が確固としたトレンドになってきた。 CPG市場に流れ込むテクノロジー VCの投資額が急増している理由の一つは、VC間の競争が猛烈に激しいせいでもある。投資先が飽和ぎみのところにCPGには長年高い配当実績があり、中でも中小のメーカーが市場で好調なことに気づき、VCが殺到し始めたのだろう。

消費者向けプロダクトは市場が巨大だ。下のグラフを見てもわかるとおり、テクノロジー市場の3倍の規模がある。

市場の規模が大きいにもかかわらず、従来この分野へのアーリーステージの投資は低調だった。その原因はいくつもあるが、投資市場が非効率だったせいが大きい。 消費者向けブランドには地理的な偏りがあり、ブランドに関する組織的な情報提供システムの欠如している。消費者向け製品のシリコンバレーはないし、Crunchbaseのようなデータベースも今のところ整備されていない。

理論的には最近のVC投資はCPGにもVCにもwin-winの関係をもたらすはずだが、実際のVC投資は方向を間違えており、それどころか悪影響をもたらしている場合もある。投資家は金をを失うだけですむが、起業家は生涯をかけて築いてきた会社を失うことになる。

CPGスタートアップに投資する場合、投資家も起業家も共に益するような結果を求めるなら、留意すべき点がいくつかある。

この市場は「一人勝ち」にはならない

ベンチャーキャピタリストのCPG企業への投資における根本的な誤りは ある分野を1社が独占できると思いこんでいるところにある。これはテクノロジー市場の場合から類推しているわけだ。たしかにテクノロジーの場合、UberやAirbnbのように「一人勝ち」になることが多い。1社か2社がその市場のシェアの70%を占めることはよくある。しかしこれがCPG市場にもそのまま当てはまると思うなら、その推論には根本的な欠陥がある。

この5年から10年、ユニークで明確なターゲットを持ったプロダクトに消費者の好みは着実にシフトしてきた。現在はビールであれハンドローションであれ、消費者は嗜好を明確化するようになった。そのためブランドは特定のニッチ向けに細分化される傾向にある。したがってプロダクトの規模は以前より小さくなる。一方、巨大上場企業はニッチで成功を収めたスタートアップを急いで買収しようとする。PWCのレポートによれば、2017年におけるテクノロジー市場におけるM&Aは1700億ドルだったのに対し、消費者向けプロダクト市場とリテール市場におけるM&Aは$3000億ドルに上った。

マーケットのセグメント化が進み、小規模ないし中規模のブランドが多数生まれている中で、あるブランドのエナジーバーやベビーフードが市場の70%を獲得できるなどという幻想は捨てる必要がある。

企業価値の評価が高すぎたり、投資金額が大きすぎるのは有害

繰り返すが、CPGスタートアップに投資する際、「将来この市場を独占できる」と前提するのは非現実的なだけでなく、非生産的でもある。起業家はこの高すぎる評価額に追いつこうとして不自然かつ有害な行動に走りがちだ。おそらく次回の資金調達では評価額の引き下げを余儀なくされるだろうし、もっと悪いことに、素性怪しげな投資家でも構わず投資を募ろうとするかもしれない。起業家は会社の売却に必死になるが、はかばかしい結果は得られない…。現実のプロダクトが用意できていないスタートアップがインフレ評価額に押されて非現実的な成長を求めると、さらに苦境に陥るという悪循環に陥る。

UnileverがトレンディーなHonest Companyではなく、似たようなプロダクトを提供するSeventh Generationを買収した理由は関係者なら誰でも知っている。Honest Companyの会社評価額が高すぎたのが主な理由だ。ハリウッド・スターのジェシカ・アルバが創立したHonest Companyに投資したVCは会社の基本的な実績を無視して評価額をつけた。消費者向けパッケージ・プロダクトの会社はたとえ3000万ドルでも調達すべきではない。3億ドルなどもってのほかだ。その結果、Honest Companyは大企業による買収のチャンスを逃し、コスト削減を始めとするリストラを迫られるこになった。同社の将来に関して社員の間で不安が高まっているという。

一言でいって、CPG企業は成長のために巨額の資金を必要としない。そもそも、小資本で運営できるという点がCPGの美点だった。 消費者向けグッズのスタートアップが年間売上1000万ドルを目指すには400万ドルから800万ドル程度の資金で十分だ。これで十分利益を上げて会社を維持できる。テクノロジー企業が年間売上1000万ドルを達成するためには通常4000万ドルから5000万ドルの資金を必要とする。しかもそれだけの売上があっても利益を出せないことが始終だ。SkinnyPopRXBarSir Kensington’sNative Deodorantなどは着実に利益を出しているCGP企業の例だ。

優れたブランドを築くのは容易でない――しゃれたサイトを作ってD2Cを始めるよりはるかに複雑

昨年20人くらいののベンチャーキャピタリストが連絡してきて、「コンシューマー市場に投資したい。しかしテクノロジーを利用している企業でないとまずい。出資者にこのファンドはテクノロジー企業に投資する言ってあるのでね」という意味のことを言った。その結果が、VCはD2C〔Direct to Consumer = インターネット経由で消費者に直接販売する〕企業ばかりに高すぎる評価額で多すぎる金額を投資するようになった。

D2Cというのは一つの販売チャンネルではある。これはコンビニ( セブン・イレブンなどだ)や会員制販売(Costco)、スーパーマーケット((Walmart)、生鮮食品(Safeway)などがそれぞれ販売チャンネルであるのと同じことだ。当然D2Cにもメリット、デメリットがある。万能薬ではない。この分野に経験の浅いVCはよく「D2Cは流通コストが低い」というようなことを言う。しかし現実にはD2Cスタートアップは法外な会社評価額をベースにオフラインで同規模の営業をする会社と比較して10倍から30倍もの資金を集めている。D2C起業家にこのチャンネルはオフラインと比べて安上がりかどうか尋ねてみるとよい。この3年から5年、CAC(顧客獲得コスト)が急速に値上がりしたため、もはや安上がりではないという答えが返ってくるだろう。D2Cがそれほど安上がりなチャンネルなら、Bonobosが1.27億ドルDollar Shave Clubが1.64億ドルCaspeが2.4億ドルもの資金を集めねばならなかったのはなぜだろうか?

D2Cは一つのチャンネルだ。しかし消費者向けパッケージ製品(CPG)の販売で成功するために必要な基本が変わるわけではない。そのジャンルの利益率、チームの優秀さといった問題を別にすれば、ブランド価値、流通組織、プロダクトの差別化といった基本に戻ることになる。この中で差別化というのは必要な要素ではあるが、成功を保証するものではない。プロダクトはユニークであるだけでなく、それが消費者に利益をもたらすものでなければいけない。健康食品でいえば、Kind BarはClif Barより食べ物らしく見える。 エナジードリンクで長時間効果があるのは5 Hour Energy だ。低カロリー・アイスクリームなら「1箱食べても太らない」と主張するHalo Topがある。おかしなキャッチフレーズだと思うかもしれないが、どれも10億ドル企業であり、どれも同規模のテクノロジー・スタートアップにくらべて調達した資金額は非常に少ない。つまりシード投資家はその後のラウンドでの株式持ち分の希釈化を受けにくい。

これが将来の進路だと期待

消費者向けパッケージ製品は非常に大きな可能性を持った市場だ。巨大であり、無数のジャンルがある。投資家にとって有望なスタートアップを発見し、助ける可能性の宝庫だ。ベンチャー投資家がこの市場で成功したいなら、まず時間をかけて消費者市場の基本を理解しようと努める必要がある。そうした投資家が増えれば、優秀な起業家が適切な額とタイミングで資金を得ることができるようになるだろう。私は消費者市場でスタートアップの成功が相次ぐことを強く期待している。

画像:RAL Development Services/Davis Brody Bond

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

ライブコマース×D2Cで新たな商品展開へ、「Live Shop!」運営のCandeeがブライベートブランド立ち上げ

ライブコマースアプリ「Live Shop!」を提供するCandeeは11月16日、ライブコマースとD2C(Direct to Consumer)を掛け合わせた新たな商品展開として、同社初のプライベートブランド「TRUNK 88(トランクエイティーエイト)」を立ち上げることを明らかにした。

同ブランドでは約23万人のフォロワーを抱える、インスタグラマーの佐野真依子氏をクリエイティブディレクターに起用。アクセサリーやバッグ、シューズ、ライフスタイル雑貨などのアイテムを中心に扱う予定だ。

Candeeは2015年の設立以降、これまでにライブ配信9800本以上、モバイル動画1300本以上の企画から制作、配信までを手がけてきた。同社はソーシャルビデオプラットフォーム上でさまざまなカテゴリの動画コンテンツを提供することを目指し、その第一弾として6月にLive Shop!をリリースしている(立ち上げの背景や構想についてはLive Shop!リリース時に詳しく紹介している)。

Live Shop!の開始から約5ヶ月が経ち、今回新たにブライベートブランドを立ち上げる背景には、ライブコマースとD2Cに高い親和性があるからだという。

Live Shop!はインフルエンサーが着用しているファッションやおすすめのアイテムを、ライブ配信形式で紹介するアプリ。ユーザーはコメントやアンケートなどを通して出演者とインタラクティブなコミュニケーションを楽しみながら、リアルタイムで商品を購入できる。

この「ユーザー属性や傾向、ニーズを直接リアルタイムに収集できる」というライブコマースの特徴は、「自社で企画した商品を小ロットかつ適正価格で製造し、直接ユーザーへ販売できる」D2Cのモデルと相性が良いというのがCandeeの考えだ。

ライブコマースとD2Cの強みを掛け合わせることで、データを元にした商品製造を短期間で行い、商品投入のサイクルやロット数をコントロールできる。Candeeではマーケットインの商品展開により、さらなる販売力の強化、利益拡大を目指す。

なおTRUNK 88は12月19〜21日にLive Shop!および受注会で先行発売を実施し、2018年1月中旬からLive Shop!や公式ECサイトにて正式に販売開始する計画だ。