デバイスを薄くするのは難事業だ。最近、バッテリーの薄型化が進んでいるが、ディスプレイは依然としてデバイス中で非常に大きな空間を占めている。eインクなどのフラットディスプレイは読書端末を除いては液晶ディスプレイを代替できない。しかし、量子ドット・テクノロジーがこの状況を大きく変えるかもしれない。量子ドット・ディスプレイはナノ結晶を利用して所望の波長の光を高効率で得るテクノロジーだ。
量子ドット・ディスプレイは画期的に薄くなり、かつ標準的なインクジェット方式で「プリント」できる。ソニー、Samsungなどのメーカーは今年のCESでコンセプトの実証モデルとなる製品を発表している。ただしこれらは量子ドット・テクノロジーをバックライトの光源に用いており、ディスプレイそのものを量子ドット化していない。これまで液晶ディスプレイと同様に映像やテキストを表示できる量子ドット・ディスプレイは存在しなかった
しかしイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の研究グループは、量子ドットのナノ結晶を電磁的インクジェット方式でフィルムに印刷する方式を開発してきた。これはタンパク質などの複雑な物質を合成するために用いられるテクノロジーの応用だという。 研究概要によれば―
この論文では量子ドット(QD)をナノメートルレベルで精密に制御して多層印刷することにより、発光量子ドット(QD LED)が製造できることを実証する。
つまり、量子ドット素材となるナノ結晶を多層印刷することによってほとんどあらゆる素材の表面に発光LED層を形成できるわけだ。さらに発光層を重ね、RGBの各ピクセルの発光を調整することによって極めて薄く、色再現性の高いフルカラーのディスプレイが可能となる
このテクノロジーはあと数年で商用化されるところまで来ている。デバイスの小型化に大きなインパクトを与えるだろう。こちらにさらに詳しい記事がある。
via Spectrum
〔日本版〕電子を極めて微細な領域に閉じ込めると量子的性質が現れる。量子ドットに青色LED光を当てるとナノ結晶が微細なレーザーの役割を果たし、高効率で波長が変換され、所望の色の光が得られる。現在話題になっている量子ドット・ディスプレイは、記事中にもあるように、通常の液晶ディスプレイのバックライトに量子ドットを利用した白色光源を用いるタイプのもの。スペクトルが太陽光に近いため、色再現性が向上し、省エネにも貢献する。上の記事で紹介されているのは、量子ドットそのものを直接ディスプレイに用いるQD LEDテクノロジー。参考
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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+)