フェイスブックに対する米連邦取引委員会の独禁法訴訟は棄却、しかし完全には敗訴せず

FTC(連邦取引委員会)といくつかの州がFacebookを提訴した反トラスト法違反の訴訟は、米国時間6月29日、連邦判事により、同社がソーシャルメディアを独占的に支配していることを示す十分な証拠を原告が提示していないとの判決が下された。しかし、裁判所は、InstagramとWhatsAppの買収を再検討することには前向きで、本件は規制当局が再度検討する余地を残している。

この判決は、訴訟を棄却せよというFacebookの動議に対する答えだ。ワシントンD.C.巡回裁判所のJames Boesberg(ジェームズ・ボーズバーグ)判事の説明では、独占および反トラスト違反の証拠として提出されたものは、「前進するにはあまりにも推測的で結論的である」という。もっと普通の業界のものであれば、これで十分かもしれないが「本件は、普通のあるいは直感的な市場ではない」と彼は認めている。

原告は、Facebookが市場の60%を支配しているという主張を、明確かつ膨大なデータと、その市場が具体的にどのように構成されているのかを説得力のある形で裏づける必要があったが、それができなかったとボーズバーグ氏は記している。そのためボーズバーグ氏はFacebookの法的な主張に従って訴えを却下した。

Facebookは声明の中で「本日の決定が、政府の申し立ての欠陥を認めたことを喜ばしく思う」と述べた。

一方、ボーズバーグ氏は、記録に証拠がないからといって、その証拠が存在しないということにはならないと考えている。そこで彼は、FTCと各州に30日間の修正期間を与え、その後に苦情の再評価を行うことにした。

判事はまた、問題は証拠だけであり、Facebookの訴訟棄却の論理には、論争を招いている肝心のInstagramとWhatsAppの買収に対する申し立てそのものを棄却する論理はないと考えている。

Facebookの主張では、これらの買収が問題含みであったとしても、FTCにはこのような「長きにわたる行為」を訴追する権限はなく、規制の対象は直近の問題に限られるとしている。それに対してボーズバーグ判事は、そのような買収が存在するかぎりにおいては法的に現在と認められ得るという判例を見つけて反論している。そのため政府は、疑義さえあればいつでもそれらを再訪できる。ただしこれはFTCが絡む国の訴訟についてだが、州の訴訟は事後があまりに長いときには彼が今回そうしたように棄却される。

これは、独占禁止法全般および過去の買収に関して強硬な規制姿勢をとってきたFTCの新委員長Lina Khan(リナ・カーン)氏の計画である可能性が非常に高い。承認公聴会で彼女は、合併の承認は完全な情報なしになされたかもしれないとコメントし、そのため、理解し周囲のルールを構築するための「機会を逸した」ことを表した。

FTCの関係者は「公取委が意見を綿密に検討しており、最善の案を検討している」と述べている。

米国時間7月1日に開催される政府機関の会議では、さらに詳しい情報が得られるだろう。裁判官は、文字どおり、より多くの情報を元に訴状を書き直すよう求めているため、30日間の猶予は、カーン氏にとって彼女のアイデアを実践する絶好の機会となるかもしれない。彼女とFTCが説得力のある訴えをまとめるのに十分な材料を持っているかどうかはまだわからないが、1つ確かなことがある。Facebookは、少なくとも今のところは、シャンパンを冷蔵庫に戻すべきだ。カーン氏は平手打ちを食らうことはないだろう。

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hiroshi Iwatani)

新たなテックに懐疑的なFTCがアマゾンのMGM買収を審査するとの報道

Amazon(アマゾン)によるMGMの買収は、Amazonに対する批判で有名なLina Khan(リナ・カーン)氏が新たに委員長となったFTC(米連邦取引委員会)の精査を通過しなければならないとThe Wall Street Journalが報じた。84億5000万ドル(約9300億円)の合併は止められそうにないが、今回のような買収で複数の業界を統合する巨大企業に対するアプローチを、FTCがどのように見直すかを示す初期の指標になるかもしれない。

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この買収案は2021年5月に発表された。MGMの4000本の映画と1万7000本の番組がAmazonのライブラリーに加わることは、プライム・ビデオにとって強力な加勢となりそうだ。プライム・ビデオは、Amazonの店先と同様、顧客がオンデマンドメディアを利用する際のデフォルトの手段となることを目指している。

権利が持ち札を変え、企業が戦術を変えると、ストリーミングを取り巻く状況も刻々と変化する。Netflix(ネットフリックス)がオリジナルコンテンツに注力し(Amazonも負けてはいない)、Disney(ディズニー)が独自の定番作品を持つ中で、他の企業は番組や映画のコレクションをバラバラに入手し始め、それがストリーミング業界における収益性の高いロングテールを形成している。

しかし、規制当局の間では、MGMのようなコンテンツ会社がAmazonのようなプラットフォームに所有されるべきかどうかという正当な疑問がある。映画やテレビの独立したプロデューサーであるMGMは、独自のライセンス契約を結ぶことができ、同種の企業と直接競合することができる。しかし、Amazonの子会社になると、おそらくかなりの部分で小売・ウェブの大手企業の社内制作会社になり、製品の良し悪しによってではなく、複数の業界にまたがる帝国の一部として競争に臨むことになる。

先に任命されたばかりのFTC委員長リナ・カーン氏は、後者のビジネスモデルを先頭に立って批判してきた人物だ。同氏の有名な論文「Amazonの独占禁止の逆説」によると、Amazonは、ウェブホスティングにおけるAWSのようなある業界での優位性を利用して、まだ始まったばかりの配送サービスのようなあまり成功していない他の部門を補強していると主張している。前者の支えがなければ後者が失敗してしまうのであれば、Amazonは市場支配力によって可能となる反競争的行為を行っている可能性がある、というのが(大まかな)主張だ。

そうした市場での力と行為が異なる分野に存在するために、最近の反トラスト法の教義の下では(消費者にとって価格が上昇しない限り)Amazonに言い訳の余地があったが、カーン氏はこの論文でその教義に挑戦することを目指した。そして今、国内で最も強力な規制当局の1つとして、同氏はその形を直接変える機会を与えられている。

このような大規模な取引は常に連邦当局が審査するが、今回はFTCが担当すると言われている。おそらくFTCが別件でAmazonに対する反トラスト調査の役割をすでに担っているからだ。FTCはまた長年にわたって何度も揉めてきたFacebook(フェイスブック)も担当しており、FTCの執行パートナーである司法省はGoogle(グーグル)とApple(アップル)の調査を担当している。FTCはコメントを控え、調査の有無については明らかにしないとしている。

今回のケースでは、AmazonによるMGMの買収が阻止される可能性は低いと思わる。この分野では実際に競争が行われており、MGMは独自の道を歩むことができていないため、売却はほぼ避けられないだろう。しかし、それでも審査は行われ、FTCがこの種の合併に対するアプローチをどのように変えるのかが明らかになると思われる。

今回の取引が軽いタッチで承認されたとしても、新しい教義が適用される機会となることは十分に考えられる。例えば、表向きは無関係な市場におけるAmazonの独占的な地位が、これまでのFTCの監督下においてよりも大きな役割を果たすことになるかもしれない。これは、今後のより包括的で積極的な審査の舞台となるかもしれない。また、カーン委員長が明確な可能性として述べているように、過去に承認された合併をひっくり返すことになるかもしれない。

関連記事:テック業界に対するリナ・カーン氏の時宜を得た懐疑論はFTCの承認公聴会を新鮮かつ友好的な方向に導くものだ

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nariko Mizoguchi

テック業界に対するリナ・カーン氏の時宜を得た懐疑論はFTCの承認公聴会を新鮮かつ友好的な方向に導くものだ

近ごろの承認公聴会がどう進むかは誰にもわからない。現状と大企業に挑みながらも重要な地位に指名された若い部外者にとっては特にそうだ。FTC委員のポジションに就く予定のLina Khan(リナ・カーン)氏はまさにそのような人物だが、米国時間4月22日に行われた上院商業委員会の承認公聴会で、意外なほど快適な時間を過ごした。おそらく、反トラストに対する彼女の因習打破的なアプローチが昨今の政策を良い方向に導いているからであろう。

コロンビア大法科大学院の准教授であるカーン氏は「Amazon’s Antitrust Paradox(アマゾンの反トラスト・パラドックス)」という鋭敏な論文を通じてテクノロジー業界で一躍有名になった。(同氏は最近、テクノロジー政策に関する下院の報告書にも寄稿している。)

2018年に同論文が発表されたとき、Amazonが自社の立場を乱用し始めたという印象は、一部の業界では常識化していたが、連邦議会ではあまり認識されていなかった。しかし、自由放任主義や不十分な規制がAmazon、Google、Facebookに(手始めに)モンスターを生み出しているという意識の高まりは、これらの新進企業を元の場所に戻す何らかの方法を見つける必要があるという、超党派の稀有な合意につながった。

それが今度は、目的を共有しているという感覚と、承認公聴会での仲間意識をもたらした。この公聴会はトリプルヘッダーで行われ、カーン氏はNASAの責任者に指名されたBill Nelson(ビル・ネルソン)氏、商務省の法律顧問に就任予定のLeslie Kiernan(レスリー・キーナン)氏とともに、実に有意義な、3時間ほどの短い会話を交わした。

カーン氏はバイデン政権の中で、ビッグテックなど手に負えなくなったビジネスに立ち向かうための新たなアプローチを提示している人物の1人だ。両陣営の上院議員から誠実な印象の質問が寄せられ、自信に満ちたカーン氏から真摯な申し分のない回答が提示された。

セクション230や、不正な委員会、上院議員に関するものを含め巧妙にカーン氏を導くいくつかの動きを避けながら、その回答は主に、こうした秘密主義の強力な企業に対する規制のアプローチにおいて、FTCは十分な情報を得てより先制的な行動を取るべきだという同氏の専門家としての意見を再確認するものとなった。

以下に、いくつかの主要な問題に対する同氏の見解を示す質疑応答を抜粋して紹介する(回答はわかりやすくするために若干編集されている)。

FTCがGoogle、Facebook、ニュースプロバイダーの争いに介入したことについて。

「すべてが議論の対象になる必要があります。明らかにローカルジャーナリズムは危機に瀕しており、新型コロナウイルス感染症を巡る現下の情勢は、信頼できるローカルニュースの情報源がない場合に引き起こされる、民主主義の深刻な緊急事態を浮き彫りにしていると思います」。

同氏はまた、広告市場の集中化や、業界全体に広範な影響を及ぼす可能性があるアルゴリズム変更などの恣意的な性質についても言及した。

画像クレジット:Graeme Jennings/Washington Examiner/Bloomberg / Getty Images

ソーシャルメディア企業は「一般通信事業者」と見なされるべきだというClarence Thomas(クラレンス・トーマス)氏の困惑する提案について。

「それは多くの興味深い議論を引き起こしたと思います」と彼女は極めて慎重に語った。「Amazonの論文の中で、私はこれらの支配的なデジタルプラットフォームについて考える際の2つの潜在的な道筋を特定しました。その1つは、競合法を施行し、これらの市場が競争的であることを確実にすることです」(独占禁止法の使用など)。

「もう1つは、規模の経済やネットワークの外部性があるために、これらの市場が少数の企業によって支配され続ける可能性があることを認識した場合、別のルールを適用する必要があるということです。私たちには、集中度が高い場合にどのような種類の規制を適用できるかについて考えてきた長い法的伝統があり、一般通信事業として捉えることはそうしたツールの1つです」。

「これらの企業の一部は現在、非常に多くの市場に統合されているため、どの特定市場を対象としているかによって、異なるツールのセットに対応する可能性があることを明確にしておく必要があります」。

(これは、一般通信事業や既存の独占禁止規則がこの問題の対処にまったく適さないということを表す非常に丁寧な言い方だ)。

FTCが承認した過去の企業合併を再検討する可能性について。

「同委員会のリソースは、経済の規模の拡大や、同委員会が検討している案件の規模と複雑度の増大に追いついていませんでした」。

「デジタル市場は特に急速に動いているため、市場への潜在的な集中を気にする必要はないという前提がありました。なぜなら、どんな力の行使も参入や新たな競争によって規律づけられるからです。もちろん今では、市場には実際に大きなネットワーク外部性があり、それによって市場をより厄介なものにしていることが理解されています。後から振り返ってみると、これらの合併レビューは機会を逸したものだったという感覚が高まっているのです」。

(ここでは、Blackburn[ブラックバーン]上院議員[共和党・テネシー州選出]がスペクトラムプラン ― 不正な委員会、上院議員について尋ねる前にカーン氏の「ポジション就任における経験の欠如」を指摘するという、数少ないネガティブな瞬間の1つが見られた)。

Facebookに対する指令のようなものを強制することの難しさについて。

「課題の1つは、これらの企業と執行機関や規制機関との間に存在する情報の非対称性です。いくつかのケースでは、当局が根底にあるビジネスの現実や、これらの市場がどのように機能しているかという経験的な現実に追いつくのに少し時間がかかっていることは明らかです。ですから、少なくとも、当局がペースを保つためにできることを確実に行っていくことが重要になります」。

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「ソーシャルメディアにはブラックボックスアルゴリズムという独自のアルゴリズムがあり、実際に何が起こっているのか把握するのを困難にすることがあります。FTCは情報収集能力を活用して、こうしたギャップの一部を緩和する必要があります」。

子どもをはじめとする脆弱なグループに対する保護をオンラインで強化することについて。

新型コロナウイルスのパンデミックにより、家族や子どもたちがこうした[教育に関わりのある]テクノロジーに特に依存するようになっていることを考えると、その危険性は高まっています。そのため、ここでは特に注意を払う必要があります。従来のルールは、離れたところではなく、近いところに置くべきです。

全般的に見て、党派を超えた議論はほとんど見られず、双方において、カーン氏はその職務での実務経験がないとしても(FTC委員のような要職では珍しいことではない)、誰もが求めるような能力を備えた候補者だとの認識が多勢を占めていた。さらに独占禁止法や競合の問題について彼女が高く評価され、かなり断定的な立場をとっていることは、すでに規制の独走状態にあるAmazonとGoogleを一旦は守勢に立たせるのに役立つかもしれない。

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タグ:FTCアメリカ反トラスト法AmazonGoogleFacebookセクション230

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)

FacebookはFTCの反トラスト法違反訴訟にビッグテックの荒削りな戦略で反論

Facebook(フェイスブック)は、独占の定義に対するFTC(連邦取引委員会)の広範なアプローチに疑問を投げかける標準的なプレイブックを通じて、FTCの反トラスト法(独占禁止法)違反訴訟に異議を唱えている。しかし、これまで信頼されてきた「私たちは価格を上げていないので独占ではない」「競争を許していない場合、どうやって反競争的になり得るのか」という考え方自体が、まもなく新しい原則や新政権に揺さぶられるかもしれない。

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Facebookはこの件に関して、米国時間3月10日に提出された文書(この記事の末尾に掲載)の中で、憤慨したような調子で次のように述べている。

反トラスト法上の懸念とはまったく関係のない事柄についてFacebookを容赦なく批判するという厳しい状況の中で、FTCは1票差で、Facebook自身の事前決定、前例の管理、法的権限の制限を無視した訴訟を起こすことを決定した。

そう、ここではFacebookが犠牲になっている。(ちなみに、連邦通信委員会と同様に、FTCも党の方針に沿って3対2に分割するように設計されているため、多くの重要な措置で「1票の差」が見られる。)

しかし、その必然的な批判に続き、FTCは自身の業務を把握していないとする消極的な説明がなされている。Facebookに対する訴訟は、3つの観点から問題があり、判事の判断を仰ぐべきだと同社は主張している。

第1に、FTCは「妥当な関連市場を提示」していない。結局のところ、独占をするにはその独占力を行使する市場がなければならないが、FTCはこれを示していないとFacebookは指摘し「漠然とした『パーソナルソーシャルネットワーク』市場であり『このような自由商品市場が独占禁止目的のために存在すると裁判所が判断したことはない』。FTCはまた、実際に会社に利益をもたらす『競争の激しい』広告市場を黙殺している」とFacebookは主張している。

つまるところ、Facebookの「シェア」が大きいと主張できる無料サービスに理解しがたい「利用」 市場を構築しようとするFTCの取り組みは、作為的で一貫性がないということだ。

このことは、FTCがソーシャルメディア市場を定義しなかった (そしてFacebook自身もそうしなかった) ということだけでなく、ソーシャルメディアは無料であり、収益は別の市場で作られているので、ソーシャルメディア市場自体が存在しないかもしれないということを意味している。これはビッグテックの典型的な議論のバリエーションで「私たちは既存のどのカテゴリーにも該当しないため、事実上規制されていない」というものだ。いずれにせよ、ソーシャルメディア企業を広告慣行によって規制することはできないし、その逆もできない(ある点では結びついているかもしれないが、概して異なるビジネスである)。

このようにFacebookは、これまでの多くの企業と同様、規制の枠組みの隙間を埋める努力をしている。

これは同社の2番目の主張に続くもので、FTCは「Facebookの製品が無料で無制限に提供されていることを認めているため、Facebookが価格を引き上げたり、生産量を制限していることを証明することはできない」。

製品が消費者に無料で提供されるのであれば、当然のことながら、プロバイダーが独占権を持つことや独占権を乱用することは不可能だというのが、この考え方だ。FTCが、Facebookがソーシャルメディア市場の60%を支配している(もちろんそもそも存在しない)と主張したとき、それは何を意味するのだろうか。ゼロはその60%あるいは100%あるいは20%であっても、ゼロのままである。

第3の主張は、FTCが指摘した行動、すなわち将来有望な競合他社を巨額で買収し、Facebookのプラットフォームとデータへのアクセスを制限することで他社の芽を摘む行為は、完全に合法であるだけでなく、FTCには彼らに対抗する資格はないというものだ。過去には是認しており、現在に至っても指摘すべき特定の違法行為は存在しない。

もちろん、FTCは合併や買収については常に再調査を行っており、たとえば審査の過程で得られなかった新しい情報が明らかになった場合には、ずっと後になってこれらを解消するという前例もある。

「Facebookは2012年に小規模写真共有サービス、Instagramを買収したが [中略]、その後買収はFTCによってレビューされ、全会一致の5対0で承認された」と文書には書かれている。10億ドル規模の買収を「小規模」とする不合理な説明はさておき、買収と同時期に行われた社内での会話のリークや暴露は、この買収をまったく新しい観点からとらえている。当時は今ほど安全性が高くなかったFacebookは、Instagramが自社のシェアを奪うのではないかと驚き、心配していた。

FTCはこの点と、Facebookが最初の申請時に掲載したFAQの中で指摘したその他の多くの点に対処している。

これらの議論のいくつかは少し奇妙に思われたかもしれない。例えば市場が消費者間で交換されるマネーを持っていなくても、それらのユーザーのサービスへのエンゲージメントに応じて他の場所で交換される価値があるとすれば、なぜそれが問題になるのだろうか。そして、プライバシーを侵害する(そしてそのために莫大な罰金を科された)無料製品という文脈での企業の略奪行為が、広告のような隣接市場での行動によってどう判断されるのだろうか。

単純な真実は、反トラスト法と慣行は何十年間にもわたってマンネリ化しており、市場は消費財によって定義され、製品の価格と企業がそれを恣意的に引き上げることができるかどうかによって定義されるという原則によって圧迫されてきたということだ。競合他社を出し抜くことで相手を吸収し、後に唯一の供給者であるときに価格を上げる鉄鋼メーカーはその典型的な例であり、反トラスト法が対抗するために作られた類のものである。

それが不必要に単純化されているように思えるとしても、実際にはもっと複雑であり、多くの状況で効果を発揮している。しかし過去30年の間に、MicrosoftやGoogle、Facebookなどの複雑な複数ビジネスドメインに対応するには不十分であることが示されてきた(もちろん、TechCrunchの親会社であるVerizonは別問題だ)。

Amazonの支配は、反トラストの原則の失敗における最たる例の1つであり「Amazon’s Antitrust Paradox」と呼ばれる画期的な論文に結実した。この論文は、これらの時代遅れのアイデアを嘲笑し、ネットワーク効果がいかに巧妙で効果の低い反競争的慣行につながったかを示した。体制派の声はそれをナイーブかつ過剰なものだと非難し、進歩派の声はそれを反トラスト哲学の次の波だと賞賛した。

この物議を醸した論文の著者であるLina Khan(リナ・カーン)氏が、間もなくFTCの空席となっている5人目のコミッショナー職に指名されると報道されていることから、後者の陣営が勝つ可能性もありそうだ(このパラグラフで最初に述べたように、同氏はまだ指名はされていない)。

同氏が承認されるかどうか (明らかに現状に反対する部外者としての激しい反対に直面することは間違いない) はともかく、同氏の指名は、その見解が重要視されていることを裏付けるものだと言える。カーン氏とその支持者たちがFTCのような機関で責任を担うことになれば、FacebookがFTCの訴訟を形式上拒否するために何十年も前から頼りにしてきた仮定が脅かされる可能性がある。

今回の訴訟はどちらかといえば回顧的な性質を持っているため、前述の見解が適用される可能性は低いものの、次のラウンドではその議論が幕を開け、間違いなく新たな展開が始まりはおよそ間違いないだろう。

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)

バイデン大統領は反トラスト法のスターでビッグテック企業批判の闘士リナ・カーン氏をFTC委員に指名へ

選挙期間中、バイデン大統領はテクノロジー企業への攻撃を大きなテーマにはしなかった。しかし最近の行動をみればバイデン政権は明らかに巨大テクノロジー企業を抑制する方向に舵を切った

米国時間3月22日、ホワイトハウスはLina Khan(リナ・カーン)氏を連邦取引委員会(FTC)の委員に指名する意向を確認した。これによりバイデン政権はオバマ時代の親シリコンバレー的な方針から離れることが明確となった。Politicoは2021年3月初めにバイデン大統領ががカーン氏を指名する予定だと最初に報じている。この指名は上院の承認を必要とする。

関連記事:バイデン時代のテクノロジー、オバマ時代のテクノクラシー再燃はなさそうだ

リナ・カーン氏は、巨大テクノロジー企業には規制が必要だとる反トラスト運動のスターだ。カーン氏は、2017年にロースクール在学中に発表した「Amazan社の反トラスト法上の矛盾(Amazon’s Antitrust Paradox)」という論文で一躍有名になった。ここでカーン氏は「独占的と分類されるべき行動」についての基準が、現代のビジネスの手法、ことにハイテク分野の企業行動に大きく遅れを取っていると論じた。

カーン氏は、反トラスト法を現代に活かすには価格の釣り上げや生産量の取り決めなどの伝統的な尺度だけではなく企業の市場支配力を大局的に見なければならないと主張している。

私は21世紀の市場における競争、ことにクラウドプラットフォームなどオンラインにおける競争の実態を正しく把握するには、こうした市場の基本的な特質とダイナミクスを分析する必要があると主張したい。このアプローチでは競争という概念を狭い範囲の物質的数量に限定するのではなく、競争のプロセスそのものを検証していく。このフレームワークの背景には、巨大企業のパワーがもつ潜在的的な反競争性は、企業の本質的構造と市場における役割の実態を考慮せずには完全に理解できないはずだ。この見地からすると、例えば企業の存在そのものがが反競争的な利益相反を生み出していないかを評価せねばならない。例えばあるビジネス分野で圧倒的な市場シェアがある場合、その優位性を別のビジネス分野に流用して不当な利益を得ていないか、また市場の構造そのものが略奪的、反競争的な行為を生み出す動機付けをしたり許容したりするものではないかもチェックすべきだろう。

現在、カーン氏はコロンビア大学ロースクールのアソシエイトプロフェッサーだが、2020年の下院の反トラスト小委員会が発表した包括的な報告書の作成にも大きく貢献している。同報告書は、いわゆるビッグテック企業の無制限の巨大化を抑えるための抜本的な反トラスト法改革への第一歩となった。

テクノロジー企業に関する反トラスト法強化を求める活動家はもちろんカーン氏だけではない。バイデン政権下で注目を集めている専門家としてははコロンビア大学ロースクールのTim Wu(ティム・ウー)教授がいる。2021年3月上旬、バイデン大統領はウー教授を、国家経済会議の技術・競争政策担当者に指名した。ウー教授は「ネット中立性」という用語を案出し、開かれたインターネットの提唱者として知られている。2018年にウー教授は「The Curse of Bigness:Antitrust in the New Gilded Age(巨大であることの呪い:新しい金権社会と反トラスト法)」を執筆し、テクノロジー分野での無制限が企業統合が現実的の政治的、経済的脅威となりつつあることを訴えている。

上院反トラスト法小委員会でハイテク分野の反トラスト法改革を主導しているエイミー・クロブシャー(Amy Klobucha)議員は、Khan氏の指名を歓迎してTechchCrunchに対し、世界最大のの独占企業に対抗するためにはすべての人々の協力が必要でありバイデン大統領が新しい競争政策へのコミットメントを明確にしていることはすばらしいとして次のようなコメントを寄せた。

リナ・カーン氏は議会とFTC(連邦取引委員会)の双方に関わった実績があり、法執行を含めた消費者保護の取り組みを進め健全な市場競争の維持するために重要な役割を果たすでしょう。

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タグ:ジョー・バイデンFTC反トラスト法

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:滑川海彦@Facebook

P&Gは米連邦取引委員会の訴訟を受けて女性向けカミソリのスタートアップBillie買収を断念

Procter & Gamble(プロクター・アンド・ギャンブル、P&G)は、以前から計画していた(Businesswire記事)女性向け美容製品のスタートアップBillie(ビリー)の買収を、米連邦取引委員会(FTC)からの中止を求める法的措置を受けて断念した。2020年12月、FTCはニューヨークのスタートアップBillieのP&Gによる買収を阻止しようと起訴(未訳記事)。Billieは女性向けのカミソリやその他の美容品を製造しているが、この2社が合併すればカミソリを使ったウェットシェービングの市場に競争がなくなってしまうという理由からだ。

米国時間1月5日、P&GとBillieは共同声明を発表し、この取引を解消に追い込んだ合併を阻むFTCの措置に苦言を呈した。

私たちはFTCの決定に失望し、BillieとP&Gの合併には世界中のより多くの消費者によりよい製品を提供する素晴らしい可能性があると主張しました。しかしながら熟考の末、長期におよぶ法的異議申立に勢力を費やすことはせず、今回の取引を解消し、私たちが本来専念すべき事業に資源を集中することを双方で合意しました。

Billieは女性向けカミソリの市場における、いわゆる「pink tax(ピンクタックス)」を排除したことで有名になった。ピンクタックス(ピンク税)とは、同等の製品でも男性向けよりも女性向けのほうが高い価格帯で販売されることを指した言葉だ。近年では、自然志向が強い美容市場にも幅広く行き渡っている。つまり硫酸エステル、パラベン、ホルムアルデヒド、科学調味料、アルコール製剤、合成着色料、香料、安価な発泡剤、不安定なシリコン、酸化防止剤などを使用しない製品だ。

またこのスタートアップは、そのミッションとソーシャルメディアやウェブの世界での現代的で、ときには進歩的なマーケティング手法に反応した、Z世代やミレニアル世代などの特に若い消費者の取り込みに成功している。その広告では、体毛を露わにした女性を使うなど、昔ながらの社会的期待を逆なでするようなメッセージを発している。広告に登場する女性は、カミソリの宣伝であったとしても、最初から毛のない滑らかな肌を見せるものとされてきた。

Billieは、女性は自分の体毛を好きなように扱うべきだが、剃りたい方には手頃な価格のカミソリを喜んでお売りしますと宣伝している。

もうひとつBillieでおもしろい点は、そのビジネスモデルだ。同社は替え刃をサブスクリプションで消費者に届けている。これにより収益は増大し、顧客ロイヤリティも向上した。

P&Gとの買収より前に、Billieは販売実店舗の拡大を計画していた。それによってBillieのブランドはP&G製品との直接的な競合相手になるはずだったとFTCはいう。

「売上げが伸びれば、Billieは実店舗を増やしてP&Gの強敵になるはずでした」とFTC競争局長Ian Conner(イアン・コナー)氏は、2020年12月に発表された声明で述べていた。「もしP&GがBillieの強敵としての急成長を食い止めることに成功すれば、消費者は高い商品を買わされる羽目になります」と彼はいい加えた。

FTCによる訴訟の結果、両社は法廷闘争は行わず、合併計画を中止することに決めた。

FTCは本日発表されたリリースで、この判断を賞賛している。両社の合併断念の判断をReuters (ロイター)も報じている

「Procter & GambleのBillie買収断念の判断は、低価格で高品質で革新的な製品を評価する消費者にとって、良いニュースだった」とFTCは声明で述べている。「Billieは、他と同等のカミソリを上乗せ価格で買わされることに嫌気がさしている消費者を広告のターゲットとする直販業者だ。FTCは、Billieから活力ある競争を排除してしまう恐れがあることから、その合併に法的措置を講じる決断をした」。

これは、FTCが2020年に行った2つめの独占禁止訴訟となる。これ以前に、Schick(シック)のカミソリを製造しているEdgewell Personal Care(エッジウェルパーソナルケア)が、これもまたカミソリの直販ブランドであるスタートアップHarry’s Inc.(ハリーズ)を13億7000万ドル(約1400億円)で買収(未訳記事)しようとしたところをFTCは訴訟で阻止している。その結果、この合併話も流れた。

カテゴリー:その他
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画像クレジット:Billie

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(翻訳:金井哲夫)

FTCからの独占禁止法違反訴訟を受けてRentPathがCoStarとの買収合意を取り下げ

「Rent.com」や「Apartment Guide」といった物件検索サイトを運営するRentPath(レントパス)が、米国時間12月30日、CoStar Group(コスターグループ)からの買収合意をキャンセルした(PR Newswire記事)ことを発表した。米国連邦取引委員会(FTC)から取引阻止の訴訟を受けたためだ。

Apartments.comやApartmentFinder.comなどの物件検索サイトも運営する商用不動産データ・分析会社のCoStarは2020年2月に、RentPathを5億8800万ドル(約606億5000万円)で買収することで合意していた(The Wall Street Journal記事)。全額キャッシュでのこの取引は、RentPathが連邦倒産法第11章の適用を始めると公表したあとで発表された。RentPathはその時点ですでに、6億5000万ドル(約670億4000万円)以上の負債を整理するために財務アドバイザーを雇っていたと、ウォール・ストリート・ジャーナルは報じている

しかし2020年12月初めになって、米国連邦取引委員会(FTC)はその買収を、連邦裁判所に対して、独占禁止法違反として提訴した。FTCの競争局の副局長であるDaniel Francis(ダニエル・フランシス)氏は声明の中で「今回の買収は、賃貸人とプロパティマネージャーの両方に利益をもたらしている価格と品質の競争を阻害する」と述べた(FTCサイト)。これまでCoStarとRentPathのライバル関係が、最も人気のあるリスティングサイトのいくつかを含む、彼らのプラットフォーム上の広告料金を低く保っていたからだ。

12月30日の発表の中でRentPathは、その破産手続きが、融資の貸し手によってまだ支えられていると語っている。そのような業者には「類似の状況下のビジネスへの投資を成功させてきた実績のあるオルタナティブ・アセット・マネジメント会社」も含まれているという。

FTCの訴訟や、RentPathが買収契約から手を引く決定が下された理由は、世界の多くの国々が技術的な統合を取り締まるようになってきたからだ。米国は独占禁止法違反規制の面で、他国の政府に遅れをとってきたものの、この状況は徐々に変化している。たとえばAmazon(アマゾン)、Google(グーグル)、Facebook(フェイスブック)が法的な精査を受けていることや、最近では米国46の州が、Facebookが市場での力を増すために「違法に」競合他社を買収したという提訴を行っている

RentPathとCoStarの取引の運命は、米国の不動産テックに対するさらなる独占禁止に関する精査を促す可能性がある。CoStarは、過去10年間に、現在も進行中の様々な買収を通じて事業を構築してきた、たとえば先月FTCの審査を通過した(Business Wire記事)物件検索サイトHomeSnap(ホームスナップ)や、不動産分析会社CoreLogic(コアロジック)への入札が報告されている(Reuters記事)。CoStarとRentPathの競合であるZillow(ジロー)も、2014年に35億ドル(約3610億円)で行ったTrulia(トゥルリア)の買収を始めとする一連の買収を通じて、事業を拡大して(Crinchbase記事)きたことで知られている。

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(翻訳:sako)

米連邦取引委員会がByteDance、Facebook、Snapらにユーザーデータの扱い方の説明を命令

FTC(米連邦取引委員会)は、大手のソーシャルおよびビデオのプラットホームを運営する企業の多くに、彼らがユーザーから集めたデータの集積をどのように利用しているかについて、説明するよう命じた。Amazon(アマゾン)、TikTokを保有するByteDance、Facebook(フェイスブック)、WhatsApp、Discord、Reddit、Snap、Twitter(ツイッター)およびYouTubeらにその命令は送られ(FTCリリース)、締切は45日後とされている。

FTCの関心は、これらの企業による「個人情報の集め方、利用と提示の仕方、彼らの広告とユーザーエンゲージメントのやり方、そしてそのやり方が子どもたちと10代に与えている影響」にある。FTCの4名の委員がこの命令に賛成し、Noah Joshua Phillips(ノア・ジョシュア・フィリップス)委員は反対した。

命令に賛成したFTC委員のRohit Chopra(ロヒト・チョプラ)氏、Rebecca Kelly Slaughter(レベッカ・ケリー・スローター)氏およびChristine S. Wilson(クリスティン・S・ウィルソン)氏は、共同声明で次のように述べている。「国民の日々の生活の中で中心的な役割を演じているにも関わらず、突出して大きいオンラインプラットフォームが消費者および消費者データに関して行っている意思決定は秘密のベールの下に隠されている」。

「政策立案者と公衆は、ソーシャルメディアと動画ストリーミングサービスがユーザーのデータと関心をどうやって捕捉し販売しているかに関して闇の中にある。企業が私たちに関してとても多くを知っていても、私たちは企業に関してほとんど何も知らない。この状況が、私たちを不安にさせる」。

FTCによるこの実態調査は、テクノロジーを標的とする国の最近の活動の一環だ。先週、同委員会がフェイスブックを独禁法違反で提訴するというニュースが流れている。この命令はFTC法6条b項に基づいて発せられ、テクノロジー業界の実践慣行に対する調査研究事業として遂行される。それは、いかなる法執行行為もともなわないが、委員会は発見した事項によっては、法の執行が求められることもある。

2019年FTCは、特に反トラスト法(独占禁止法)との関連で、テクノロジーへの関心を強めた。同委員会は、目的を特定したテクノロジー関連作業部会を立ち上げ、買収をはじめ、彼らに懸念をもたらすような反競争的振る舞いを監視していくことになった。2020年の初めにFTCは、AlphabetとアマゾンとApple(アップル)、フェイスブック、Microsoft(マイクロソフト)が最近の10年近くの間に行ってきた買収を調べる、大規模な調査(未訳記事)を開始した。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Faccebookの独占禁止法違反を米連邦取引委員会が主張、買収した企業を切り離すよう要求

米国連邦取引委員会(FTC)は米国時間12月9日、Facebook(フェイスブック)に対する新たな反トラスト法(独占禁止法)違反訴訟を発表した。このソーシャルネットワークが「深刻な競争上の脅威を抑圧し、無力化し、抑止する目的で」独占的地位を利用していると主張し、これを破棄しなければならないとしている。なお、この訴訟とは別だが、全米48州・地域の司法当局の1つも協調して調査を行ったと同日に発表した(未訳記事)。

どちらの訴訟も、Facebookが違法な行為に関与していると主張しており、州と連邦政府の調査官が協力してその特徴を明らかにした。しかし、州訴訟は州法レベルでの違反に関係しているが、FTCは連邦法の違反を主張している。そのため2つの訴訟は、Facebookによる同じ行動に異議を唱えながらも、別々に追求され、裁かれることになる。

どちらの申し立ても似たようなものだ。すなわち、FacebookによるWhatsApp(ワッツアップ)とInstagram(インスタグラム)の買収は、新興他社の競合を封じる違法な反競争的行為に等しく、Facebookはそのプラットフォームを、競合他社の台頭を防ぐために利用しているというものである。

FTCと州の訴訟はいずれも、InstagramとWhatsAppの買収を遡って違法と判断し、それらの企業のFacebookの本体から切り離すように求めている。

この分割に加えて、Facebookは今後のすべての合併・買収について、FTCと州当局の両方に事前通知と承認を求めることが義務づけられ、競合機能を提供しないようにAPIアクセスを停止させることなど、さまざまな行為も禁止されることになる。

Facebookはツイートで今回の訴訟について調査中と述べているが、「政府は現在、この前例が広範なビジネスコミュニティに与える影響を考慮せずにやり直しを望んでいる」と、この訴訟を軽蔑している。

確かに当然の疑問である。政府がInstagramとWhatsAppの買収を承認し、さらにそれらを遡及的に不承認するとなれば、FTCと他の規制機関の監視メカニズム全体に対する疑問を呼び起こすことになるだろう。

FTCがこの訴訟に関するQ&A(FTCリリース)で指摘しているように、これは実際には前例がないわけではないし、予想外のことですらない。ある企業が他の企業に買収されることを承認するプロセスは、その時点では明らかな違法性を感じさせないかもしれないが、裏では多くの違法性が絡んでいる可能性がある。たとえば承認されて完結した合併が、後になって偽りの口実で実行されたことが判明した場合、あるいは今回のケースのように、後になって違法行為のパターンの一部であることが判明した場合には、承認されて完結した合併が取り消される可能性があるのだ。

「我々の執行措置は、買収だけでなく、それ以上のことに異議を唱えるものです」と、FTCは説明する。「我々はパーソナルソーシャルネットワーキング市場の独占を構成する複数年に及ぶ行為に異議を唱えているのです。【略】FTCは、消費者取引が法律に違反している場合には異議を唱えることができるし、しばしば異議を唱えています。実際、反競争的な消費取引を特定することは、2019年2月にテクノロジー・タスクフォースとして執行部が設立されて以来、その任務の重要な部分となっています」。

今回の訴訟は、ほぼ確実に複数年におよぶプロセスの最初の一部に過ぎない。それは2つの政権にまたがることになり、そのため手続きが遅くなることは間違いない。次のステップはおそらく、無実を説明するFacebookからのPR攻勢になるだろう。

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(翻訳:TechCrunch Japan)

Zoomがセキュリティを巡る「虚偽」主張問題で連邦取引委員会と和解

連邦取引委員会(FTC)は、Zoom(ズーム)と和解したことを発表した。同委員会はビデオ通話の巨人が、自社の暗号化を実際よりも強力であると主張するなど「一連の虚偽および不公正な行為によってユーザーの安全を脅かした」として告発していた。

思い出して欲しい。パンデミックによる都市封鎖で無数の人々が自宅での仕事や勉強を余儀なくされ、仕事の会議やリモート学習でZoomに頼った。当時Zoomは、ビデオ通話は「エンド・ツー・エンド」暗号化で保護されており、誰にも、Zoomでさえも傍聴はほぼ不可能であると主張していた。

しかし、一連の主張は嘘だった。

「現実には、Zoomは自身が顧客の会議内容をアクセスできる暗号化キーを保持しており、Zoomミーティングを、約束していたよりも低いレベルの暗号化で保護していた」とFTCは米国時間11月9日の声明で指摘した。「Zoomの虚偽の主張はユーザーに誤ったセキュリティ感覚を与えるもので、同社のプラットフォームを医療、財務情報などの繊細な話題の議論に使っていた人々にとっては特に問題です」。

Zoomはただちに誤りを認め、エンド・ツー・エンド暗号化の提供を含む修正を90日以内(未訳記事)に提供すると発表した。その修正は最終的に1カ月遅れた10月末に公開されたが、当初Zoomが無料ユーザーはエンド・ツー・エンド暗号化を使えない、と発言したことで新たな反発を買った。

FTCは告発状の中で、Zoomが一部の会議の記録を暗号化なしで最大2カ月間サーバーに保存していたこと、およびユーザーがミーティングにすばやく参加できるためにユーザーのコンピューター上にウェブサーバーを無断でインストールしてユーザーのセキュリティを脅かしたことも指摘した。これは「不当でありFTC規則に反する」とFTCは述べた。Zoomはウェブサーバーを削除するアップデートをプッシュ配信したが、顧客のコンピューターから脆弱性のあるソフトウェアを削除したこの配信にはApple(アップル)も介入していた

FTCは声明で、同委員会は今後Zoomがセキュリティおよびプライバシーにかかわる慣行を不正確に伝えることを禁じ、Zoomは脆弱性管理プログラムを開始し、社内ネットワーク全体に強力なセキュリティーを実装することに同意したと語った。

Zoom広報担当のColleen Rodriguez(コリーン・ロドリゲス)氏は、外部の危機管理会社であるSard Verbinnenを通じて、Zoomは「FTCが特定した問題にはすでに対処した」と声明で語っている。

Zoomの株価は午後の市場で14%下がった。

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:ZoomFTC

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook