欧州のJust Eat Takeawayが米フードデリバリーのGrubhubを7800億円で買収、Uberは独禁法懸念で交渉打ち切り

オンデマンドの食品注文と配達の世界での統合が急速に進んでいる。米国時間6月10日、今年の4月に規制当局より78億ドルの合併が許可されたばかりのヨーロッパ企業であるJust Eat Takeaway(未訳記事)が、73億ドル(約7800億円)の評価額で米国のフードデリバリー企業のGrubhub(グラブハブ)を買収する合意に達したことを正式に発表した。

同社によれば、2019年には合計で5億9300万回の注文を処理したこの事業は、この先世界中で7000万人を超えるアクティブユーザーを集めることになると言う。

取引条件に基いてGrubhubの株主は、所有するGrubhubの1株と引き換えに0.6710株ぶんのJust Eat Takeawayの普通株式に相当する米国預託証券(ADR)を受け取る権利を得る。これはGrubhubの各株式に対して75.15ドル(約8038円)の価値を与えるものであると両社は述べている。算定基準は、2020年6月9日のJust Eat Takeawayの終値である98.602ユーロ(約1万1976円)。これは、Grubhubとっては、完全希薄化ベースで73億ドル(約7800億円)相当の資本となる。

GrubhubのCEO兼創業者であるMatt Maloney(マット・マロニー)氏は、Just Eat Takeawayのマネジメントボードに参加し、北米全体の統合化されたグループのビジネスを率いる。Just Eat Takeawayの創業者で最高経営責任者を務めるJitse Groen(ジーツェ・グルーン)氏は、合併後のグローバルビジネスを率いる。

「マットと私は、食品配達セクターで生き残った2人のベテランです。2つの異なった大陸ではありましたが、世紀の変わり目にそれぞれの事業を開始したのです。私たち二人は、高品質で利益を伴う成長をする企業だけが、このセクターで持続できるという固い信念を持っています。中国を除く世界最大の食品配達ビジネスを生み出すことができることを、とても嬉しく思います」とグルーン氏は声明の中で語った。「私たちは、マットと彼のチームを私たちの会社に迎え、将来彼らと働けることを楽しみにしています」。

「GrubhubとSeamless(シームレス)の創業時、オンラインテイクアウト業界は米国には存在しませんでした。私のビジョンは、配達と集荷の注文体験を変革することでした。ほかの多くの起業家のように、私たちは控えめに始めました、シカゴ近隣のレストランを1軒1軒増やして行ったのです。現在、Grubhubは北米全体のリーダーです」とマロニー氏は声明で述べている。

「私は2007年からジーツェさんを知っていますが、彼のストーリーは私のものによく似ています。それを始めた企業を1つにすることは、2つの先駆的なスタートアップが1つの明確なグローバルリーダーになったことを意味するのです。私たちは独立系レストランのボリュームに付加価値を与え、利益性の高い成長を推進するハイブリッドモデルに焦点を当てています。Just Eat Takeawayのサポートを得ることで、北米および世界中のお気に入りの地元のレストランから食べ物を注文するための、最速、最高、そして最も報いられる方法になるという使命を加速するつもりです。これ以上ワクワクすることはありません」。

今回の取引は、マロニー氏が指摘したように別のライバルだったSeamlessとの合併を通して生まれたGrubhubの激動期を締めくくる。同社は数カ月前から活動しており、Uberとの買収交渉を行っていた。取引に詳しい筋によれば、UberはGrubhubと約1年間話し合いを続けていたという。Uberは米国時間6月10日の朝の時点ではまだGrubhubと交渉中だった。

しかし、情報筋はCNBCのPeter Faber(ピーター・フェイバー)氏に対して、Uberは独占禁止法の懸念から契約交渉を打ち切る準備をしている(CNBC記事)と語ったという。最終的には、予想される規制当局による精査などの、さまざまな懸念事項に基き、交渉が打ち切られたと情報筋はTechCrunchに語った。

Uberが取引から手を引いたことを正式に表明した直後に、GrubhubはJust Eatとの提携を発表した。Uberは合併の詳細についてコメントしていない。しかし、公式声明を見る限り、Uberは依然としてフードデリバリー業界の統合を利益確保への道だと考えている。

「配車サービスと同様に、フードデリバリー業界も消費者とレストランの可能性を最大限に引き出すために統合が必要になるでしょう」とUberの広報担当者はメールでの声明で述べている。「とはいえ、それは私たちが、相手を問わず、どんな価格でも、どんな取引にでも興味を持つということではありません」。

今回の取引に対する投資家の反応はまちまちだった。Grubhubの株価は、終値よりも約6.2%の高値に落ち着く前に、時間外取引中最大9%上昇した。逆にJust Eatの株価は10.79%下落した。一方、4.81%下落して34.83ドル(約3731円)で取引を終えたUber株は、時間外取引でさらに1.38%下落した。

オンラインでの食品配達は厳しい仕事だった。消費者に非常に人気がある一方で、企業が顧客を獲得して維持していくために莫大なコストを費やす必要がある、極めて日常化された競争の激しいビジネスなのだ。

その営みに対する1つの解決策は、ライバルを排除し、規模の拡大によって経済性を改善することだった。これが、現段階でJust Eat TakeawayとGrubhubの組み合わせが狙うルートであり、両社が1つになることで利益を出し、マージンの改善に向けてさらに注力できると述べている。

しかし、この業界のほかの人々にとって気になる次の大きな疑問は、次に合併するプレイヤーはどこか?というものだ。米国では、Uber Eatsに加えてPostmates(ポストメイツ)とDoordash(ドアダッシュ)もあり、一方のヨーロッパ市場にはDeliveroo(デリバルー)がある。それに加えて両方の市場には多数の小規模プレイヤーがいる。

画像クレジット: Africa Studio (opens in a new window)Shutterstock

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(翻訳:sako)

米国の料理配達スタートアップGrubhub買収を巡り、本命のUberに加えて欧州2社が名乗り

米国の料理配達スタートアップのGrubhubの買収を巡って「これまで本命とされていたUberに対抗して米国進出を図る有力なヨーロッパ企業2社が名乗りを上げた」とCNBCが報じた。参戦したのは、TakeawayがJust Eatを買収して誕生(Iindependent記事)したJust Eat TakeawayとDelivery Heroだ。

名乗りを上げた2社は米国市場への大々的参入を図っているヨーロッパ企業だ。Just Eat Takeawayは英国とオランダを本拠とし、Delivery Heroはドイツ企業となる。Crunchbaseによれば、Just Eat Takeawayは双方合計で10億ドル(約1096億円、両社は現在単一企業となっている)を調達し、Delivery Heroも数十億ドルの資金を集めている(Crunchbase記事)。

提示金額は今のところ不明だが、株式市場は「両社はかなりの額を払う用意があるはず」と楽観的に想定している。 Uber以外に有力な買収提案があったらしいという情報にGrubhubの株価は急上昇し7%アップで引けた。

競争になれば、当然Grubhubの買収価格は上がる。UberとGrubhubは後者の適切な買収価格を巡って折衝を重ねている(MarketWatch記事)と報じられている。 UberのUber Eatsは米国の料理宅配市場ではGrubhubの最大のライバルだ。それだけにUberのビジネスにとってはGrububの買収は魅力的かつ重要だ。Uberが最大のライバルの1つを買収し、そのシェアを自分のものにできれば、主要事業の配車サービス以上のキャッシュをフードデリバリーから得られる可能性が出てくる。Uberの累積赤字を減らすことに役立つかもしれない。

今後どれほどのレストランが、フードデリバリー業者や総合的サービスを提供するフードアグリゲーターを利用するようになるのかは明らかでない。

しかし米国のフードデリバリー市場の主導権を巡る戦いはまだ当分決着がつきそうにないことだけははっきりしてきた。もしヨーロッパ生まれの2社のどちらかがGrubhubの買収に成功した場合、飲食店のキッチンから消費者の家に料理を運ぶ役割を得るための競争に新たな燃料が投下されることになるだろう。Uber EatsのライバルであるGrubhub(とそれを買収した企業)に加えて、地域のロジスティクス全般を担当するPostmates、ソフトバンクが出資するドア・ツー・ドア配送のDoorDashなども巻き込んだ激しい争いになりそうだ。

Grubhubがヨーロッパ企業に買収された場合、潤沢なキャッシュによって新たに活力を得た同社との戦いはUberにとって非常に高くつくものになる。そうした事態を避けるために、Uberは提示する買収金額を渋々引き上げることになるかもしれない。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

Uberがフードデリバリー大手のGrubhubと買収交渉、成立すればDoorDashを抜き米国シェア1位に

Uber(ウーバー)は、全額株式交換によるGrubhub(グラブハブ)の買収に付いて交渉中であるとThe Wall Street Journal(ウォール・ストリート・ジャーナル、WSJ)が伝えた。同紙の情報筋によると、Grubhubは同社の1株に対してUberの2.15株を要求している。

Uberが最初にGrubhubに接近したのは今年の初めだったが「両社の交渉はいまも続いている」とWSJは書いている。Bloomberg(ブルームバーグ)は、今月中には契約がまとまるのではないかと報じている。今から数カ月前にGrubhubは、UberやDoorDash(ドアダッシュ)などの会社に売却を持ちかけている(未訳記事)という話が持ち上がった。

新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックの中、フードデリバリー業界が熱い。第1四半期、Uber Eats(ウーバーイーツ)は総取扱高46.8億ドル(約5017億円)、前年比52%増と大きく伸びた。一方Grubhubも食料品総売上が16億ドル(約1715億円)と前年同期の15億ドル(約1608億円)から上昇した。

しかし、Uber Eatsの市場シェアは2020年3月現在20%でGrubhubは28%、一方DoorDash(ドアダッシュ)のシェアは42%であると調査会社のSecond Measure(セカンド・メジャー)は報告している。Uber EatsとGrubhubが合併すれば、オンデマンドフードデリバリー分野におけるUberの優位性が高まることは間違いない。

今月、Uber Eatsがフードデリバリーサービス市場でトップか少なくとも2位を目指していることが明らかになった。5月初め、Uber Eatsは、チェコ共和国、エジプト、ホンジュラス、ルーマニア、サウジアラビア、ウルグアイ、ウクライナの各国から撤退した。またアラブ首長国連邦では、現地のライドシェエリング完全子会社であるCareem(カリーム)にフードデリバリー事業を移管した。

「一連の決定は、Uber Eats市場全体で1位または2位を目指すという当社の現行戦略の一環であり、一部の国への投資を強化する一方、一部からは撤退する」とUberが提出書類に記載した。

現在Uberの株は7.65%高の34.05ドル、Grunhubは28.61%高の60.23ドルでそれぞれ取引されている。Grubhubは本件に関するコメントを拒んだ。Uberからはまだ返答がない。

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画像クレジット:Anindito Mukherjee / Bloomberg / Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

レストラン向けデリバリー管理の「Ordermark」が20億円調達

ロサンゼルスに拠点を置くOrdermarkは、レストラン向けのオンラインデリバリー管理サービスを提供するスタートアップだ。家族経営の有名なレストランであるCanter’s Deli(カンターズ・デリ)の御曹司が設立。同社は新規ラウンドで1800万ドル(約20億円)を調達したと発表した。

このラウンドは米国コロラド州ボールダーのFoundry Groupが主導した。これまでOrdermarkに投資した投資家はすべて今回も参加した。参加した投資家は、TenOneTen Ventures、Vertical Venture Partners、Mucker Capital、Act One Ventures、そしてシリーズAを主導したのはNosara Capital

Alex Canter(アレックス・カンター)氏は声明で「我々は家族が経営するレストランがモバイルデリバリー時代に対応し、成長できるように、Ordermarkを設立した。その後、企業として、同じ課題に直面しているほかのレストランをサポートできることに気づいた。我々は米国全土のレストランの顧客からよい成果を上げたことを喜ばしく思っている」と述べた。

レストラン経営の4代目のカンター氏は、家族が経営するデリのニーズからテクノロジーを構築した。POSシステム、キッチンのディスプレイ、会計ツールが統合され、ラストマイルの配送業者と連携する。

同社は声明で「事業の拡大に伴い、Uber EatsやSeamless/Grubhubなど、クラウドキッチンとデリバリーサービスで運営されているバーチャルレストランからの売上を増やしていきたい」としている。

利益は出ていないが、現在、Ordermarkは3000軒以上のレストランで使われ、50種以上の注文サービスと連携している。

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(翻訳:Kaori Koyama)

米国のアマゾンレストラン事業はまもなく終了

アマゾンは11月にロンドンでフードデリバリー事業を閉鎖したのに続き、米国でも運営を終了する。これはプライム会員向けに2015年秋に始まったサービスで、商品や食料品ではなく食事を提供していた。

食事を提供するサービスには競合が多い。米国にはGrubhub、Uber Eats、DoorDash、ロンドンにはDeliveroo(これにはアマゾンが投資した)など、たくさんある。こうした企業はシェアを獲得するために割引をすることもある。一方、アマゾンはフードデリバリーの世界で、シェアにおいても消費者の認知度においても、地位を確立することができなかった。ランチやディナーの料理を注文しようとする人にとって、アマゾンはまっさきに思い浮かぶ名前ではない。また、温かい料理をタイミングよく配達する体制は、アマゾンのメインの事業とは異なる課題があった。

GeekWireが報じたところによると、アマゾンはこの閉鎖と関連して、職場向けランチデリバリーサービスのDaily Dishも終了するという。

アマゾンはフードデリバリーをやめて、成長を続けている食料品配達ビジネスにさらに力を入れるものと考えられる。

TechCrunchはアマゾンの事業終了に詳しい関係筋から情報を得た。アマゾンは米国のAmazon Restaurantsを閉鎖し、6月24日に営業を終了すると認めた。解雇についても示唆し、アマゾン社内で別の仕事に就く社員もいれば、社外での再就職のサポートを受けている社員もいるとした。

アマゾンの広報は次のように述べた。「6月24日をもって米国のAmazon Restaurants事業を終了する。この決定により、アマゾンの一部の社員が影響を受ける。影響を受ける社員の多くはすでに社内の別の仕事が決まっている。今後、社内外のどちらで働く社員にも個別に対応していく」。

アマゾンがフードデリバリーをやめるという決定は、米国時間6月11日のライバル企業の株価にプラスの影響を与えた。Grubhubの株価は5%以上も上がったと報じられている。

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(翻訳:Kaori Koyama)

Google、レストランの検索結果ページから関連する食料品デリバリーの申し込みを可能に

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Googleの検索結果から、料理デリバリーのオーダーが直接行えるようになった。まず対応するのはアメリカ国内で、Seamless、Grubhub、Eat24、Delivery.com、BeyondMenu、およびMyPizza.comによる料理デリバリーを申し込むことができる。

利用者が、Googleにてレストランの情報を検索したとする。すると検索結果の中に「配達オーダー」(place an order)が表示されるようになるのだ。オーダーする場合には希望するデリバリーサービスを選ぶことになる。あとはそれぞれのサービスの画面にてオーダーを行う。

google food ordering

ご存知かもしれないが、料理のデリバリーサービスは昨年、6億ドルものベンチャー資金を集めている。2012年に2500万ドルであったことを考えれば尋常ならざる成長であると言って良いだろう。ただし依然としてレストランに直接電話をしてオーダーするという人が多い様子だ。そのような中、Googleの検索結果に料理デリバリーサービスが表示されるようになることで、サービスの知名度も上がっていくことになるのだろう。サービスの市場拡大は「歴史の流れ」といってもよいほどに確実なことであり、そのような中で、Googleはサービスに関連したさまざまなデータを手に入れたいと動いているわけだ。

Googleが検索結果に表示しているSeamlessやGrubhubは、複数レストランのメニューを配達するサービスを手がけている。そうすると、他種類の食べ物を扱っていることで、食べたいものを検索する人の検索結果画面に、自社のデリバリーサービスが表示されることも多くなってくる。

検索結果ページでさまざまなデリバリーサービスを表示することで、Googleとしても人気のデリバリーサービスについての情報を集めることができるようになる。また、人気のメニューやレストランの情報もGoogleに集まってくることとなる。こうした情報は、GoogleにとってもEコマースサービスの展開などに役立つこととなるわけだ。

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(翻訳:Maeda, H