Instagram(インスタグラム)は、Reels(リール)を投稿して欲しいと真剣に考えている。もし運がよければ、Reelsへの投稿に対して最高1万ドル(約114万円)までの報酬を得ることができる。
TikTokの月間アクティブユーザー数が10億人を突破したことで、YouTubeショート、Snapchat Spotlight(スナップチャット・スポットライト)、Instagram Reels(インスタグラム・リール)などの競合プラットフォームたちが、ユーザーに短編コンテンツを自社のアプリに投稿することを奨励している。YouTubeは「ショート」のために1億ドル(約114億円)のクリエイターファンドを創設し、SnapchatはSpotlightチャレンジへの投稿に賞金を提供し、そしていまInstagramは、月次ボーナスプログラムのReels Play(リール・プレイ)を強化する。
しかし、どのような要素がInstagramからのボーナスの大きさを決定するのかについてははっきりしておらず、Instagramもその懸念を払拭しようとしていない。InstagramはTechCrunchに対し、このプログラムは実験的なものであり、まだ初期段階にあると述べている。しかし、その透明性の低さは、これらのプラットフォームを利用して生計を立てているクリエイターにとっては悩みの種となる。今週、このボーナスプログラムに不具合が発生し、対象となるクリエイターたちに「実際には支払いの対象外でした」と伝えられたことがあった。InstagramはTechCrunchに対し、この不具合は修正されたと述べている。
インスタグラムで5万2000人近くのフォロワーを持つMaddy Corbin(マディー・コービン)氏は、1カ月の間に自分のリールに対して1000ドル(約11万4000円)近くの配当を受けた。しかし彼女は、他のクリエイターに別のオファーが行われていることに気がついた。
「私よりも多くのフォロワーがいるのに、600ドル(約6万8500円)しか稼げない人もいたんです」とコービン氏はTechCrunchに語った。より少ないフォロワー数で、800ドル(約9万1400円)を受け取ったひともいた。「報酬がどのようにして生まれたのかを、もっと知りたいと思います。想像するに、過去のリールの見られ方を参考にしているのではないかと考えていますけど」。
コービン氏の半分にも満たない約2万4千人のInstagramフォロワーを持つあるクリエイターがTechCrunchに語ったところによれば、先月、その月に投稿されたすべてのリールの再生回数が170万回に達した場合に、800ドル近くのボーナスが提供されたという。このボーナスはオールオアナッシングではない。このクリエイターが、ボーナス期間中、意図的に1日1リールを投稿し、149万回の再生回数を獲得したところ、689.90ドル(約7万8800円)の配当を得ることができたという。先月Metaが所有する、Instagramを含むすべてのアプリがサーバーの問題で6時間もオフラインになったときには、彼らは残念な思いをした。
だが、今月Instagramはそのボーナスを一段と高めた。現在このクリエイターは928万回の再生で最大8500ドル(約97万1000円)を手にすることができる。先月のレートよりもペイアウト単価が高く、もちろん10倍以上稼げる可能性もある。このクリエイターによれば、自身が3万2千人のフォロワーを持つTikTok(ティクトック)で得られるものよりも、1回あたりの報酬が高いそうだ。
Instagramのボーナスオファーがどのように計算されているかを判断するのは困難だ。あるRedditユーザーは、1カ月で5800万回以上の閲覧回数で3万5000ドル(約399万8000円)近くの報酬を受けている。Instagramのフォロワー数が800人程度のTwitch(トゥイッチ)ストリーマーのMiguel Lozada(ミゲル・ロザダ)氏は、2万4000人のフォロワーを持つクリエイターと同額の8500ドル(約97万1000円)の報酬を受けた。5万9000人のフォロワーを持つ別のユーザーは、今月は850ドル(約9万7000円)のボーナスを提供されたとTechCrunchに語っている。
InstagramはTechCrunchに対して「より多くのクリエイターに報酬を渡せるように、支払いのテストを続けています。まだ始まったばかりなので変化は続きます」と述べている。「私たちは、できるだけ多くのクリエイターを支援できるように、達成可能でそれなりの収益につながる方法でボーナスをデザインしました。目標は、ボーナスが時間とともによりパーソナライズされていくことです」。
ボーナスプログラムに参加したら、自分のリールが注目されなくなったと感じたと報告するクリエイターもいる。
「ボーナスプログラムに参加した最初の3日間は、1日に40ドル(約4571円)くらい稼げていましたが、1週間後には文字どおり暴落して、1日あたり数セント(数円)から数ドル(数百円)になってしまいました」とコービン氏は語る。「コンテンツの出し方をそれほど変えていないのにこうなったことは、興味深いですね」。
Instagramのサポートページによると、これらのボーナスは「ゆっくりと展開している」とのことで、まだすべてのユーザーが利用できるわけではない。そもそも、これらのボーナスは米国内にしか適用されない。
InstagramがTechCrunchに語ったところによると、これらのプロモーションの対象となるのは、ユーザーが18歳以上で、プラットフォームのパートナーマネタイズポリシーを満たしている必要があるとのことだが、これは少し曖昧だ。このポリシーによれば、クリエイターは「十分なフォロワー数」を維持する必要があるものの、Instagramは何をもって「十分なフォロワー数」とするかを数値化していない。TechCrunchは、フォロワー数が800~5万9000人のクリエイターたちがボーナスを支給されたことは確認している。
また、Instagramは今週、ボーナスプログラムReels Surprise(リール・サプライズ)を発表した。このプログラムでは、米国を拠点とするクリエイターたちが特に感動的で楽しいリールを制作した場合に、毎週最大150人に最大1万ドル(約114万円)の報酬が与えられる。対象となるのは、米国を拠点とする18歳以上のクリエイターで、Instagramのコミュニティガイドラインとパートナーのマネタイズポリシーを満たし、1000ビュー以上の既存リールを持ち、まだボーナスを受け取ったことがないことが条件だ。
ユーザーがTikTokのコンテンツを再利用するのを阻止するために、Instagramのアルゴリズムは、他のソーシャルメディアプラットフォームからのウォーターマークがあるコンテンツの評価は引き下げる。しかし、YouTube Shortsは、人気のあるクリエイターを自社のプラットフォームに誘導するために、さらに積極的な戦術をとっている。今週Business Insider(ビジネス・インサイダー)は、一部の人気TikTokプレイヤーが6カ月間で100本のYouTube Shortsを投稿することを条件に5万ドル(約571万2000円)のオファーを受けたと報じた。このプログラムは公開されておらず、YouTubeの1億ドル(約114億円)のShortsファンドとは別のものだ。Business Insiderの取材に応じたタレントのマネージャーによると、クリエイターがYouTubeにショートフィルムを投稿した後、それを他のプラットフォームに再投稿するまでには7日間待たなければならないという。
TikTokは成長を続けているが、Google傘下のYouTubeやMeta傘下のInstagramのような長年の巨人によく対抗している。そうした巨人企業にとっては個々のユーザーの短い動画に1万ドル(約114万円)を投じることは、ビジネス上の大きな出費ではないのだ。
取材協力:Sarah Perez
画像クレジット:Instagram
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(文:Amanda Silberling、翻訳:sako)