世界最大のeコマース企業2社が手を組む。中国の大手オンライン小売JD.com(JDドットコム)は、世界のブランドが中国の膨大な輸入品に対する需要を開拓し、また中国の販売業者の海外販売を支援することを目的に、オタワに拠点を置くShopify(ショッピファイ)と戦略的パートナーシップを結んだ。
このニュースは、中国のクロスボーダーeコマースコミュニティで注目を集めている。提携により、JDとShopifyの同盟はまずAlibaba(アリババ)と直接競合することになる。JDの宿敵は大きな輸入事業を抱え、取り扱うブランドは直近では世界3万5000にのぼる。2021年は6000超のブランドがAlibaba経由で中国に進出した。
JDは何年も前から中国に商品を輸入しているが、既存のブランドオンボーディングプロセスは1年もかかることがある。JDは物流に多額を投資してきたため、しばしば中国のAmazon(アマゾン)と呼ばれているが、Shopifyを採用しているブランドが最短4週間でJDの5億人のアクティブバイヤーに販売を開始できる高速トラックを構築する予定だ。プラットフォームでは、販売者側の準備を整えるのに自動翻訳や価格交渉などのツールを使い、まずは米国と中国を結ぶ貨物航空便で商品を輸送する。
JDは、ブランドの中国でのマーケティングと販売を支援することだけを意図しているわけではない。同社はShopifyのストアオーナー向けに、JD Sourcingと呼ばれるサプライヤーソーシングサービスも展開している。販売者はJD Sourcingを通じて商品のリクエストを出し、JDがその商品の在庫を確認すると、商品を倉庫から取り寄せ、Shopifyストアに掲載し、ドロップシッピングで消費者に送る準備を整える。
今回の提携のもう1つの目的は、Shopifyの消費者直販ソリューションを通じて中国製品を海外に届けることだが、これは非常に競争の激しい分野だ。Amazonは、中国の輸出業者のためのゲートウェイとして自らを成長させ、中国内でスタッフを雇用して販売業者の精査と管理を行っている。同社が最近行った偽レビューの取り締まりは中国のeコマース業界に衝撃を与えたが、同社はその市場支配力のおかげで、輸出業者にとって非常に魅力的なチャネルであることに変わりはない。
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より厳しいプラットフォーム規約に対応するため、多くのAmazon出品者は商品デザインやブランディングにますます投資するようになっている。また、Amazonのロールアップと呼ばれるブランドアグリゲーターからの買収オファーを受けることを選択する販売者もいる。
JDとShopifyのコラボレーションは、中国の輸出業者に新しい選択肢を提供する可能性がある。Shopifyは長い間、ブランドを拡大したい人のためのオプションだったが、自動化にはより多くの仕事がともない、販売者はマーケティングと物流により手をかけなければならない。
JDはShopifyとの提携を通じて「欧米市場の消費者に訴求する中国のブランドや販売者のためのアクセスとコンプライアンスを簡素化」し「Shopify を通じてDTCチャンネルを立ち上げる」ことをサポートすると約束している。クロスボーダーの配送はJDが担当する。
このeコマース大手2社は、Shopifyが商品の幅を提供し、JDが広範なグローバル倉庫と配送インフラを提供するというように、互いにうまく補完し合っているようにみえる。注目すべき提携だ。
画像クレジット:composite by TechCrunch
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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko MIzoguchi)