アトラシアンが自然言語理解のための独自のAIエンジンを開発するPercept.AIを買収

Atlassian(アトラシアン)は米国時間1月27日、Percept.AI(パーセプトエーアイ)を買収したことを発表した。Percept.AIはY Combinator(ワイ・コンビネーター)の2017年夏のバッチに参加したAI企業で、自然言語理解のための独自のAIエンジンをベースに、自動化されたバーチャルエージェントサポートソリューション(基本的にはチャットボット)を提供する。Atlassianはこのバーチャルエージェント技術を、ITチームが従業員や顧客に対してより良いサービスを提供するためのツールであるJira Service Management(ジラ・サービス・マネジメント)に統合する予定だ。

Crunchbase(クランチベース)によれば、Perceptは今回の買収に先立ちシードラウンドを実施し、Hike Ventures、Builders VC、Cherubic Ventures、Amino Captial、Tribe Capital、Y Combinatorなどから金額非公開の資金を得ていた。両社は、今回の買収の金額的詳細については明らかにしていない。

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AtlassianがJira Service Managementに多大な投資をしていることは間違いない。2020年には、企業のアセット管理を行うMindville(マインドビル)に加えて、Slack(スラック)ファーストのヘルプデスクチケッティングサービスを提供するHalp(ヘルプ)を買収した。また2021年にはAtlassianは、Jira Service Managementを強化するために、ノーコード / ローコードのフォームビルダーであるThinkTilt(シンクティルト)を買収した(これは、近年のJiraエコシステムに関する数多くの買収に続くものだ)。

AtlassianのIT ソリューション製品責任者である Edwin Wong(エドウィン・ウォン)氏は、サービスを拡大するためには買収だけに賭けているわけではないと語った。

「無機質な投資を行うだけではありません。私たちが行ってきたことは有機的に統合されているのです」とウォン氏はいう。「何かを買ってきて接続するだけではなく、もっと考え抜かれた戦略が必要です。何がフィットするかを考え、これまでに作られたものの上に構築して、1つの製品として統一された体験を生み出すのです。ですから『6つの異なるものを用意しました』と差し出して、お客様に『これらをまとめるには何が必要なのだろうか?』と考えていただく必要はありません。私たちが目指しているのは統合された体験を生み出すことなのです」。

画像クレジット:Atlassian

しかし、ITチームは、パンデミックの厳しい影響下でも、これまで以上に優れた顧客サービスを提供しなければならないというプレッシャーにさらされていることは間違いない。いまや企業顧客であっても一般消費者のような体験を求めているからだ。理想的にいけは、Percept.aiのような製品は、サポート質問の大部分を処理しつつユーザーにすばらしい体験を提供し、ITチームがより複雑なタスクに集中できるようにすることができるだろう。

それがJira Service Managementのような製品の目標であり、ウォン氏が述べたように、このサービスは現在、ほぼすべての業界から3万5000以上の顧客を集めている。

ウォン氏は、チームがPerceptに惹かれた理由として、サポートクエリの背後にある多くの文脈を理解できるエンジンの能力を挙げている。エンジンは内容、意図、感情を分析し、ユーザーのプロファイルと組み合わせて、パーソナライズされた応答を提供することができる。バーチャルエージェントが応答の限界に達すると、自動的に人間にインタラクションを移行する。チームは、ノーコードツールを使ってサービスの設定や調整を行うことができるが、これもPerceptがアトラシアンにとって魅力的である機能の1つだ。

今後その技術を、Jira Service Managementの中にネイティブに統合していく予定だ。一方、Atlassianはこのサービスの機能を拡張することも計画している。

「もう少し先を見据えた私たちのより広いビジョンは、あらゆる形態のサポートやサービスデスクのための統一プラットフォームを作ることです。それが私たちの究極の目標なのです」とウォン氏は説明する。「私たちは、そうした拡張が本当にさまざまな種類の製品、さまざまな機能をカバーすると信じています。例えばConfluence(コンフルエンス、JiraのWiki)スペースやそこに書かれた記事の知識を利用して、さまざまな質問に答えることはできないでしょうか?例えばTrello(トレロ、タスク管理)ボードなどの情報を利用することはできないのでしょうか?今回の買収はもちろん、お客様に優れたエクスペリエンスを提供するという、Atlassian全体のより広範な長期的ビジョンの一環なのです」。

今回の買収は短期間で行われたため(ウォン氏によると、両社は2021年末に話を始めたとのこと)、Percept.AIの既存顧客が今後どうなるかはまだわかっていない。

関連記事:AtlassianがHalpを買収、JiraやConfluenceとの統合を進める

画像クレジット:Peter Dazeley/Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:sako)

グーグルがGmailに自動化サービス「AppSheet」導入、JiraがChatとSpacesをサポート

Google(グーグル)は米国時間10月12日、同社の自動化サービス「AppSheet」の新機能を発表した。Googleのノーコードプラットフォームを利用する開発者は、Gmailと直接やり取りするカスタムアプリケーションや自動化機能を作成できるようになる。開発者は、動的メールを利用して、ユーザーがGmailの受信トレイの中で起動・実行できるアプリケーションを開発することができるようになる。2019年にGoogleが動的メールを発表して以来、それが可能なことはわかっていたが、多くの開発者がこの機能を実際に利用しているとは言えない状況だ。

AppSheetの開発者は、例えば、ユーザーがメール上ですぐに更新できる承認ワークフローや資産管理システムを開発できるようになる。

AppSheetの創業者で、同社をGoogleに売却したCEOのPraveen Seshadri(プラビーン・セシャドリ)氏は、AppSheetのミッション全体の中で今回のステップは小さいながらも重要だと述べた。同社のミッションは、多くのユーザーが自分のアイデアを実用的なソフトウェアに変換したり、開発者(同氏は「クリエイター」と呼ぶ)がユーザーにリーチしたりすることを可能にすることだ。

「今、私たちが取り組んでいるのは、言ってみれば『どうすればクリエイターと呼ばれる人々、つまり、物事をより良く動かす方法や自動化する方法などのアイデアを持つ人々に、それらを開発してもらうか』ということです。従来はアプリを作っていましたが、最近では『アプリをいかにエンドユーザーの体験に深く統合するか』ということを目指しています。これは、開発者がワークスペースプラットフォームを使って行ってきたことであり、今はそれを非開発者にまで広げようとしているのです」とセシャドリ氏は語る。

画像クレジット:Google

一般的に、ビジネス上の問題に最も近いのはビジネスユーザーであり、セシャドリ氏が指摘するように、彼らは通常、自動化ソリューションに何を求めているかを知っている。同氏は、ビジネスユーザーは自分でコードを書けないかもしれないが、AppSheetが宣言的アプローチに重きを置いているため、ユーザーは「その成果を達成するための非常に退屈なステップ」ではなく、成果に集中できると主張する。しかし同氏は、ほとんどのビジネスで、ノーコードのユーザーと従来のエンジニアが一緒に働いているとも指摘する。ノーコードアプリケーションの基盤となるデータベースを誰かが構築し、維持しなければならないからだ。

チームが現在注目しているのは、AppSheetプラットフォームの機能拡張に加え、それがエンドユーザーにどのように利用されるかということだ。

「従来は、アプリケーションを開発する場合、アプリケーションにアクセスして、そこで何かをしなければなりませんでした」とセシャドリ氏はいう。「私が経費精算レポートを作成しなければならないとします。そのために、経費精算レポートのアプリケーションを開きます。それは、ウェブページか何かでしょう。そして、それを実行します。さて、次に採用活動に関して何かをしなければならないとします。それを扱うアプリケーションにアクセスするでしょう。ありがちなのは、あらゆる場面で、ユーザーの文脈を変えてしまうということです。私たちが今取り組んでいるのは、クリエイターが作ったAppSheetアプリケーションをGmailに取り込むことです。そうすれば、ユーザーはその時の文脈から離れずに済みます。仕事の方からユーザーにやって来たり、アプリケーションの方がユーザーにやって来たりするわけです」。

セシャドリ氏は、Google Workspaceの中ではGmailが明確な出発点だというが、全体的な目標は、ユーザーの側に寄っていき、可能な限りユーザーが現在の仕事の文脈から離れないようにすることだ。

画像クレジット:Google

上記と関連して、次のことも注目に値する。Googleは、Atlassian(アトラシアン)と新たに統合し、その結果、JiraがGoogle ChatとSpaces(旧称「Rooms」)に組み込まれる。ユーザーはChatやSpaceからJiraの新しいチケットを作成したり、チケットのプレビューを見たり、アクティブな課題を追跡したりすることができる。Slack(スラック)やMicrosoft Teams(マイクロソフトチームズ)のユーザーはすでに利用している機能であり、Googleは単にツールボックスの足りない部分をを埋めたにすぎない。

「現代の仕事では、人々はこれまで以上に文脈やツールをすばやく切り替える必要があります」とAtlassianのチーフプロダクトオフィサーであるJoff Redfern(ジョフ・レドファン)氏は話す。「私たちは、ユーザーが日々頼りにしているツール間のオープンなエコシステムと緊密な統合が、彼らの成功に不可欠であると考えています。2017年以降、Gmailと統合した当社のTrelloは700万人以上にインストールされました。本日、AtlassianとGoogleの連携に基づき、JiraとGoogle ChatおよびSpacesが統合され、職場での協業をさらに推進できることをうれしく思います」。

画像クレジット:Sean Gallup/Getty Images / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Nariko Mizoguchi

AtlassianがJiraに新DevOpsメトリクスを導入、プロジェクトマネージャーや開発者はより深い考察が可能に

米国時間12月3日、Atlassian(アトラシアン)はユビキタスなプロジェクト追跡サービスJira(特にJira Software Cloudバージョン)のアップデートし、コードが開発パイプラインをどのように動くかを視覚・測定するための新機能を追加した。これにより、プロジェクトマネージャーと開発者は、コードチームが作業しているコードや、そのコードが配置パイプラインのどこにあるかについて、より深い洞察を得ることができる。Jira Software Premiumのユーザーは、サービス内で展開の頻度とサイクルタイムを追跡することもできる。

「『洞察』という神話に近い世界に到達しようとする中で、多くのチームは統合をコントロールと間違えている。しかし課題はツールの数ではなく、統合されほうだ。アジャイルソフトウェアチームが必要とするすべてのプロダクトを提供するベンダーは1社も存在しないため、点と点を手作業でつなぐ仕事がこれからもチームの重荷になる」とJiraのチームは今回の発表で述べている。

画像クレジット:Atlassian

Atlassianによると、今回のアップデートそのためのものだという。ほとんどのチームにとって、Jiraは既に各作業が何らかの形で文書化されている中心的なリポジトリであり、その作業の一部はAtlassianのツールを使うが、そのほとんどはサードパーティのサービスのコンテキストで行われる。この度のアイデアは、このDevOpsワークのすべてを統合して、それにより多くの可視性と、その企業の開発パイプラインの状態に対するインサイトを提供するというものだ。

具体的に4種のアップデートがある。最初の「Jiraでコードを書く」はJiraの中でコードを書けるという意味ではなく、BitbucketやGitHub、GitLab、あるいはGit Integrationの中の、どのJira用リポジトリに対して現在、アクティブに仕事をしているのかを見ることだ。「デプロイメント」という新しい機能でユーザーはいまや、Bitbucket PipelinesやJenkins、Azure DevOps、Circle CI、Octopus Deploy、JFrogなどのCI/CDサービスのすべてにわたる、デプロイ情報をリアルタイムで見ることができる。

画像クレジット:Atlassian

「どの機能がどの環境へデプロイされたかを知りたいプロジェクトマネージャーでも、プロジェクトの中でチームがアイデアからプロダクションへ移行するのに要する平均時間を知りたいチームリーダーでも、Deployments in Jiraのタブに回答が表示されます」と同社は説明する。

最後の2つの機能は、料金が高くよりエンタープライズ的なJira Software Premiumにしかないが、デプロイの導入頻度とサイクルタイムに関する詳細な測定基準を提供する予定だ。ここでの目的は、チームがトレンドをよりよく理解し、プロセスの異常値を特定するのに役立つ、より多くのメトリックを提供することだ。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:AtlassianJira

画像クレジット:Karen Dias/Bloomberg via Getty Images/Getty Images

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

SlackとAtlassianが連携を強め、製品の統合をさらに進める

テック企業間の「パートナーシップ」の多くはプレスリリースの内容を大きく超えることはなく、大して身の入らない共同販売の試みのようなものだったりする。2018年にAtlassianがチャットサービスをSlackに売却したとき、両社は新しいパートナーシップを作っていくと述べた(Atlassianのブログ)。Atlassianがチャットのサービスを終了し、多くの人がその真の意味を懐疑的な目で見ていた。

それ以降、両社のコラボレーションについてはあまり聞こえてこなかった。しかし米国時間8月13日、両社はこれまで取り組んできた深い統合、特にSlack内での統合について発表した。

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この2年間でSlackとAtlassianは11のプロダクトの統合をリリースし、現在では毎月のアクティブユーザー数はおよそ100万人となっている。最も多く使われているのはJiraとの統合で、Atlassianが2020年5月に買収したHalpがそれに続く。

Atlassianは毎月4200万件のJiraの通知をSlackに送っており、その数は増え続けている。

両社の統合の要は、Slackのダイレクトメッセージでも公開チャンネルでもプライベートチャンネルでも、Atlassian製品へのディープリンクをリッチに展開できることだ。この展開の機能はまもなくSlackのデフォルトの機能となり、Atlassianのユーザーになっていなくても展開したものを見られるようになる。

Slackの事業開発および経営企画担当VPであるBrad Armstrong(ブラッド・アームストロング)氏は「現時点では、Jiraのユーザーでない場合、あるいはユーザーであっても認証はしてはいない場合、Jiraのリンクをチャンネルに送信すると単にリンクだけが表示される。展開の利点を活用することはできない。そこで、ログインしているかどうかに関わらず、さらにはAtlassianの顧客であるかどうかに関わらず、展開したものを誰でも見られるよう取り組んでいる」と述べている。

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両社はプロダクト間を容易に切り替えられるようにすることについても緊密に連携してきた。例えばJiraのユーザーであればSlackでリンクをクリックでき、Atlassianのアカウントにログインしていない状態であれば自動でログインされるようになる。両社は連携をさらに進め、Slackから来たユーザーには自動でJiraのアカウントを作成できるようにする。

アームストロング氏は「ユーザーでなくても、リンクをクリックすればSlackからのマッピングでJiraのユーザーアカウントを自動で作成してプロビジョンし認証するので、即座にJiraのユーザーとしてSlackのコンテンツの一部を共同作業で利用できるようになる」と説明する。

このようにして、SlackがAtlassianのプロダクトスイートにアクセスするためのパスポートのようなものになると両社は説明している。そうなれば、新規ユーザーもこれまでよりずっと簡単に使い始めることができるはずだ。

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Atlassianのプロダクトパートナーシップ責任者であるBryant Lee(ブライアント・リー)氏は「おそらく想像がつくと思うが、使い始めることは大変だ。役割やチームの規模など異なる要素がたくさんあるので難しい。認証の問題もあり、検出した情報を展開するには何が実践されているのかを理解する必要がある。しかし我々が見ているのは、単にプロダクトではなく人とプロダクトと実践だ。つまり我々は、人を理解して最適化しようとしている」と述べた。

こうした新たな統合はまもなく公開されるが、さらに両社は共同マーケティングの取り組みも拡大し、まずはSlackを利用したいAtlassianユーザーに対して50%の割引を提供する。

Slackの共同創業者でCEOのStewart Butterfield(スチュワート・バターフィールド)氏は「我々はこの2年間、パートナーシップを成功させるための強固な基盤を作ってきた。その結果、ともに顧客獲得に大いに弾みをつけ、影響力のあるプロダクトの統合を成し遂げてきた。SlackとAtlassianの戦略的な提携により、両社は開発者チームに最適なテクノロジースタックになった」と述べている。

関連記事:AtlassianがHalpを買収、JiraやConfluenceとの統合を進める

カテゴリー:ネットサービス

タグ:Atlassian Slack JIRA

画像クレジット:Andrei Stanescu / Getty Images

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(翻訳:Kaori Koyama)