ベルテクスとエコ・プランナー、年間消費電力を半分にできる高効率な地中熱冷暖房システムを製品化へ

ベルテクスとエコ・プランナー、年間消費電力を半分にできる高効率な地中熱冷暖房システムを製品化へ

実証試験システム概要図(赤字部分が今回の開発成果)

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は12月17日、「新エネルギー等のシーズ発掘・事業化に向けた技術研究開発事業」を通じ、プレキャストコンクリート・メーカーのベルテクスと、地中熱利用などの開発を行うエコ・プランナーとが、「ライニング地中熱冷暖房システム」を開発し製品化を果たしたことを発表した。

これは、地中熱を活用した冷暖房システム。従来は、地中に直径約160mm、深さ約100mの縦坑を堀り、U字に折り曲げた細い管を入れてケイ砂で埋め戻すという方式がとられていた。しかし、それには掘削コストなど膨大な経費がかかり、細い管に水を循環させて地中熱を採取するため採熱効率が低く、普及は進んでいなかった。

これに対して、ベルテクスとエコ・プランナーが、福井大学と共同で2016年から2020年の間に開発に取り組んできた地熱冷暖房システムは、縦坑の壁に樹脂製の袋(ライニング材)を密着させ貯水するという方式で、穴の深さは従来の半分の50mほどで済み、穴を掘る経費も半分で済む。地中熱冷暖房システムの経費のほとんどが、深い穴を掘ることに費やされているからだ。

この「ライニング地中熱交換器」方式なら、貯水による蓄熱効果と、穴の壁に密着させることにより採熱効果が向上する。さらに、エアコンの出力に合わせて熱源の循環水量を調整できる「熱収支制御ユニット」を組み合わせることで、熱交換効率は従来比で3割以上向上したという。またこのシステムを兵庫県加東市の事業所に実装し、消費電力を比較した結果、従来の空冷式エアコンに比べて、年間消費電力量が約50%削減できることも確認できた。

熱収支制御ユニット(プロトタイプ)

熱収支制御ユニット(プロトタイプ)

ベルテクスとエコ・プランナーは、このシステムを発展させて地中熱交換器の設置コストや省エネ性能のさらなる向上をはかり、熱収支制御ユニットを搭載した水冷式エアコンの開発を目指すとしている。

経産省とNEDOがRISC-Vを利用した自動車走行画像認識をテーマに「第5回AIエッジコンテスト」開催

経産省とNEDOがRISC-Vチップを利用した自動車走行画像認識をテーマに「第5回AIエッジコンテスト」開催
経済産業省新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は10月25日、「第5回AIエッジコンテスト」について、SIGNATE(シグネイト)が運営するAI関連コンペティションサイトで開始したことを発表した。

これは「革新的なAIエッジコンピューティングの実現に向けた新しいアイデアの創出や、それらを担う人材の発掘・育成」を目的としたコンテスト。今回は、2020年度に実施した「第3回AIエッジコンテスト」のテーマ「自動車走行画像からの物体追跡アルゴリズムの開発」を発展させ、「RISC-V(リスク・ファイブ)搭載プラットフォームへのAIアルゴリズムの実装」をテーマとしている。つまり、第3回の開発編に対して、今回が実装編ということだ。

内容は、車両カメラで撮影した走行動画上で、予測対象となる物体(乗用車と歩行者)をバウンディングボックスで囲み、同一の物体に一意のオブジェクトIDを割り当て追跡するアルゴリズムを開発し、それをRISC-Vチップを搭載したターゲットのプラットフォームに実装するというもの。「ハードウェア・ソフトウェア(ネットワークモデルおよびシステム最適化)を含めたエッジコンピューティングを意識したハードウェアシステム開発」が課題になる。

実施期間は2021年10月18日から2022年2月15日。参加資格は特になく、個人、団体でも参加可能。参加者にはAvnet製開発ボードUltra96-V2 FPGAが提供される(書類審査必須。上限50名を予定)。これは、自費で購入して参加してもよい。参加者は、SIGNATEに会員登録を行い、コンテストページの「投稿」ボタンから物体追跡結果を投稿すると、リーダーボードに精度評価指標MOTA(Multiple Object Tracking Accuracy)の暫定評価がランキングで示される。最終的に、評価が0.6以上が入賞対象となる。

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NEDOが100平方メートル規模の触媒パネル反応器で人工光合成によるソーラー水素製造に成功

NEDOが100平方メートル規模の触媒パネル反応器で人工光合成によるソーラー水素製造に成功

NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)とARPChem(人工光合成化学プロセス技術研究組合)は8月26日、100m2規模の「太陽光受光型光触媒水分解パネル反応器」と「水素・酸素ガス分離モジュール」を連結した光触媒反応システムを開発。世界初の実証実験に成功したことを発表した。この実験結果は8月25日公開の英科学誌「Nature」オンライン速報版に掲載されている

これは、2019年8月から1年以上にわたって実施された自然太陽光下での光触媒パネル反応システムの実証実験。水を分解して水素と酸素の混合気体を生成し、そこから高純度のソーラー水素を分離・回収するというもの。ソーラー水素とは、太陽光で水を分解して水素を製造する技術のことで、クリーンで持続可能性のあるエネルギーとして注目されている。今回の実験では、ソーラー水素製造を大規模化しても安全性や効率性が保たれることが実証され、実用化とさらなる大規模化への道筋が見えてきた。

このプロジェクトは、NEDOとARPChemが、東京大学、富士フィルム、TOTO、三菱ケミカル、信州大学、明治大学との協力のもとに進めてきたもので、光触媒パネル反応器の開発、分離膜の開発、合成触媒の開発という3つのテーマで構成されている。

人工光合成プロジェクトの概要(今回の成果は「光触媒開発」のテーマ)

  • 光触媒開発:太陽光エネルギーを利用した水分解で水素と酸素を製造する光触媒およびモジュールの開発
  • 分離膜開発:発生した水素と酸素の混合気体から水素を分離する分離膜およびモジュールの開発
  • 合成触媒開発:水から製造する水素と発電所や工場などから排出する二酸化炭素を原料としてC2~C4オレフィンを目的別に合成する触媒およびプロセス技術の開発

光触媒パネル反応器の実証

光触媒パネル反応器は、ひとつのモジュールが3m2。透明なガラス板の下に、25cm角のチタン酸ストロンチウム光触媒シートが並べられている。ガラスと光触媒シートとの間には0.1mmの隙間があり、そこに水を流し込むことで反応が起きる。そこで発生した水素と酸素の気泡がスムーズに流れ、気泡の滞留によって光が散乱しないようにすることが重要となるが、このシステムでは、光の散乱の影響はほとんどなかった。

NEDOが100平方メートル規模の触媒パネル反応器で人工光合成によるソーラー水素製造に成功

光触媒パネル反応器の基本単位(写真左)と紫外光照射時の水分解反応時の様子(写真右)

NEDOが100平方メートル規模の触媒パネル反応器で人工光合成によるソーラー水素製造に成功

3m2規模の光触媒パネル反応器(左)と100m2規模の光触媒パネル反応器から生成した水素と酸素の混合気体(右)

このシステムでは紫外光のみに反応するが、量子収率(光子ひとつが反応を起こす割合)がほぼ100%と高効率を示した。また実験室では、水分解の活性が、初期の8割以上を2カ月以上維持できた。これは、日本の屋外条件では約1年の耐久度に相当する。この光触媒シートは、光触媒を基板にスプレーするだけで簡単に作れるとのこと。

疑似太陽光を昼夜連続照射したときの活性の時間変化

混合気体からのソーラー水素の分離

光触媒パネル反応器で発生した水素と酸素の混合気は、ガス分離モジュールに送られる。そこでは、水素は分離膜を通過し、酸素は通過できずに残留する。今回の実験では、開発中の分離膜ではなく、市販のポリイミド中空糸分離幕を使用したが、擬似実験では、1日分離を行った結果、混合気は、水素濃度約94%の透過ガスと酸素濃度約60%の残留ガスに分離でき、水素の回収率は天候、季節に関わらず73%を達成した。

100m2規模の光触媒パネル反応器に接続されたガス分離モジュールの性能

合成触媒

合成触媒は、水分解で作り出した水素を、工場や発電所から排出された二酸化炭素と反応させて、C2からC4オレフィン(高分子化合物)を目的別に合成するというもの。これはプラスティックの原料として利用される。

光触媒パネル反応システムの安全性試験

ソーラー水素の製造では、非常に燃えやすい水素の管理が課題になるが、1年以上にわたるこの屋外実験では、1度も自然着火や爆発は起きなかった。また、爆発リスクの確認のために、光触媒パネル反応システムの混合気体が存在する場所に意図的に火を点けてみたが、光触媒パネル反応器、ガス捕集用配管、中空糸分離膜を含むガス分離モジュールともに破損は確認できなかったという。

今後は、このシステムの社会実装を目指して、光触媒を可視光に対応させて太陽光エネルギーの変換効率を5〜10%に引き上げ、低コスト化、さらなる大規模化、ガス分離システムの性能とエネルギー効率の向上を目指すとしている。

NEDOがバイオ由来製品生産の実用化に向けスケールアップ実証と人材育成の場を関東圏に提供

NEDOがバイオ由来製品生産の実用化に向けスケールアップ実証と人材育成の場を関東圏に提供

NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は8月23日、バイオ由来製品生産(物質生産)技術を産学で実証する拠点を関東圏に提供し、「バイオものづくり」に携わる人材を育成する事業を開始すると発表した。これは同機構の事業「カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発」の一環として実施され、「実験室レベルの生産性を、商業レベルを想定した環境で再現するスケールアップ検証の場を提供」するとしている。企業、大学、研究機関で行われている基礎研究と事業化とのギャップを埋めて、「商用生産まで到達するバイオ由来製品の増加」を目指すとのこと。

発酵技術に見られるように、微生物や植物の力を借りてものを作る物質生産は、日本が競争力を発揮できる分野だとNEDOはいう。しかし、こうした技術は現場担当者の勘と経験に依存するところが大きい上に、製造拠点の海外進出や熟練者の高齢化が進んでいる。その知見を継承するためには、言語化されていないその暗黙知をデジタル化して、形式知にすることが求められている。そこで2020年、政府の統合イノベーション戦略推進会議は「バイオ戦略2020」をまとめ、バイオとデジタルの融合のための基盤整備、世界の人材と投資を惹きつける拠点作りの推進を掲げた。NEDOはこれを踏まえて、今回の取り組みを開始するに至った。

具体的には、企業、大学、研究機関などで開発された有用な生産候補株(スマートセル)の商用生産を想定したスケールアップ検証の場を提供(2026年度まで整備を継続予定)、2022年度以降はそこでバイオ生産実証を行う企業、大学、研究機関を段階的に公募し、委託または助成を行う予定としている。

主な実施内容は以下のとおり。

バイオ生産実証拠点(バイオファウンドリ)の整備

30Lから300Lまでの発酵槽を備える既存設備(三井化学茂原分工場)に加え、この設備に隣接して最大3000Lの発酵槽を含む発酵設備や前処理および糖化設備、精製設備を含む一連のパイロットスケールのバイオ生産設備を新設。

バイオファウンドリ機能の検証

利用者の菌株や技術情報の機密保持を考慮した運用ルールを整備し、各種法令や規制を遵守する体制を構築。設備を安全かつ効率的に稼働させる。さらに、利用者には事業化に向けた有用なサービスも提供。

バイオファウンドリ機能のための技術開発・技術適用による機能拡張

低コストで省エネなバイオ生産プロセスの開発を可能にする以下の技術を開発。

  • 短期間、低コストで、最適条件決定やスケールアップを可能とする手法とシステム
  • バイオ生産プロセスの低コスト化、省エネ化、低炭素化
  • バイオ生産プロセスに適合したライフサイクルアセスメントによるCO2排出量算出モデル
  • バイオマス残渣の短時間および高効率の前処理

バイオ生産実証拠点での実証テーマの研究支援

上に掲げた項目を、すでに実用化に近いレベルの性能を示している生産菌を使用し、生産実証テストを実施予定。

バイオものづくり人材の育成

パイロットスケールのバイオ生産設備を用いた実習、同事業で開発する技術の研修プログラムを作成、実際に生産を担う人材の研修を実施。

不妊治療のための装着型基礎体温デバイスの研究開発を手がけるHERBIOがNEDO STSで採択

不妊治療のための装着型基礎体温デバイスの研究開発を手がけるHERBIOがNEDO STSで採択

HERBIO(ハービオ)は4月2日、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO)が実施した、2020年度「研究開発型スタートアップ支援事業/シード期の研究開発型スタートアップに対する事業化支援」(NEDO STS。最大7000万円の助成金)にかかる第3回公募において採択されたと発表した。

HERBIOは、直腸温(深部体温)と臍部周辺温度の相関性を確認し、同社開発中のウェアラブルデバイスで取得したデータを基に、体温変動の研究・解析を実施する研究開発型スタートアップ。

妊娠を望んでいる女性・将来的に妊娠を望む女性は、妊活の第一歩として基礎体温の継続的な計測を行う必要がある。ただし毎朝安静状態で計測する必要があり、社会進出が進み、様々なライフスタイルの中で生きる女性にとって難しい状況にある。

HERBIOは、独自技術を活用したウェアラブルデバイスにより、取得した体温の変動データを研究することで、より精度高く妊活に貢献できるサービスの提供を目指している。また、研究により体内時計や現代女性の生活様式に適した行動変容システムをあわせて開発し、早期の社会実装を加速させる。

HERBIOは、研究開発型スタートアップとして、2017年の創立以来「体温」を軸とした事業展開を行い、ウェアラブルデバイスの開発、体温データの変動に関する研究・解析を進めている。従来取得が難しかったデータを同社独自技術を活用することで、現在製薬会社との治験や、教育機関との共同研究がスタートしているという。

同社は、「生きるに寄り添うテクノロジー」というミッションを掲げ、今までにない発見と課題の解決手法を確立し、研究成果による社会課題の解決を目指す。また、世界中の誰もが安心して医療を受けることができ、医療と健康に隔たりがなく健やかに生きることができる状態を実現するとしている。

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タグ:医療(用語)ウェアラブル(用語)資金調達(用語)妊娠(用語)NEDO(組織)HERBIO(企業)日本(国・地域)

超小型衛星用推進機開発の東大発「Pale Blue」が研究開発型スタートアップ支援助成金NEDO STSで採択

超小型衛星用推進機開発の東大発「Pale Blue」が研究開発型スタートアップ支援助成金NEDO STSに採択

Pale Blueは4月1日、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が実施した2020年度「研究開発型スタートアップ支援事業/シード期の研究開発型スタートアップに対する事業化支援」(最大助成額:7000万円。NEDO STS事業)第3回公募において、助成対象として採択されたと発表した。2020年4月の設立後1年で累計調達額は約2億円となった。

これにより、宇宙産業を革新するメガコンステレーションの実現に必要な安全かつ安価な超小型衛星向け水統合エンジンの開発および実用化に挑む。

超小型衛星用推進機開発の東大発「Pale Blue」が研究開発型スタートアップ支援助成金NEDO STSに採択

現在、技術革新によって超小型衛星の市場が拡大している一方で、現状の小型衛星のほとんどは推進機を搭載していないため、能動的に軌道や姿勢を維持して運用寿命を長引かせたり、軌道を離脱させたりすることができず、とりわけ、後者に起因する宇宙ゴミ(デブリ)増大は深刻な問題になっているという。

こうした課題は推進機の搭載により解決可能なものの、大型衛星搭載の推進機は体積・重量・コストの観点から小型衛星への適用が難しく、また高圧ガス・有毒物を推進剤として使うため、環境への配慮や持続可能性の点でも問題があるという。

Pale Blueはこの解決策として、水を推進剤とした小型推進機を開発。従来の高圧・有毒な推進剤から脱却し、低圧貯蔵可能、安全無毒で取り扱い性と入手性の良い水を推進剤として利用することで、前述の課題を解決し、圧倒的な小型化と低コスト化を実現するとしている。

小型衛星実用化のボトルネックとなっている小型推進機にイノベーションを起こすことで、小型衛星群によるビジネスや深宇宙探査を実現し、科学技術による人類の幸福の最大化や文明レベルの向上を目指す。

東京大学は長年にわたって宇宙推進機の研究を行ってきており、推進機内における複雑なプラズマ物理の解明や電気推進の性能評価に関して、世界をリードする研究機関のひとつという。Pale Blueメンバーは、東京大学在籍時から推進機の基礎研究に加えて、高周波電源や高電圧電源の小型化・高効率化に取り組み、成果を上げ、さらに実際の小型衛星に搭載する推進システムの開発を多数経験してきたという。同社は水統合推進システムの実現において、東京大学のエンジン基礎研究の成果を社会実装・実用化する役割を担い、その収益をアカデミアに還元することを目指すとしている。

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