Republicのメタバース不動産部門が分離独立、Everyrealmにリブランド

2021年にメタバースプラットフォームの上位4社で5億ドル(約580億円)以上の不動産が売却されたことがデータで明らかになっている。DecentralandやSandboxのような仮想世界の土地の区画に権利を主張するために集まっている多くの投資家の中には、従来の不動産会社が含まれている。メタバースブームにおいて、どのプラットフォームやユースケースが勝利を収めるのか、重要な疑問が残るが、1つはっきりしていることは、メタバースに資本が急速に流入しており、いわば「非現実的な不動産」も例外ではない、ということだ。

代替資産クラウドファンディングプラットフォームのRepublic(リパブリック)は、Janine Yorio(ジャニン・ヨリオ)氏が2020年6月から率いるRepublic Realm部門を通じて、メタバース不動産物件への投資を積極的に行ってきた。そして現在、ヨリオ氏はRepublic Realmを独立させ、Everyrealm(エブリリアルム)という私企業にしたが、Republicは少数株主として残るとヨリオ氏はTechCrunchとのインタビューで述べた。

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Everyrealmは「メタバースのエコシステム全体へのゲートウェイ」になることを望んでいるという。同社は25の異なるメタバースに投資しており、現在3000以上のNFT(非代替性トークン)を所有しているとヨリオ氏は話した。

「当初はメタバースに投資していましたが、今ではそれ以上のことをするようになりました。自社をメタバースコンテンツの開発者だと考えていて、ただ受動的に投資して他の人が何かを作るのをじっと待っているわけではありません」と同氏は話す。例えば、2週間前にDecentralandで小売店のコンセプトを立ち上げたが、これは他のメタバースプラットフォームにも拡大する予定だという。実際、この店舗では1万点のバーチャルアイテムが1時間で売り切れたと同氏は付け加えた。

Everyrealmはまた、Somnium SpaceメタバースでRealm Academyというバーチャルキャンパスを運営しており、ユーザーはオンラインコースを通じてWeb3のコンセプトについて多くを学ぶことができる。同氏によると、初回のクラスには1000ドル(約11万6000円)を支払った生徒500人が参加しているとのことだ。

ヨリオ氏は、このような例は、ユーザーがメタバースでの体験に喜んでお金を払うことを証明していると話す。また、同氏はEveryrealmが販売した資産がOpenSeaのようなセカンダリーマーケットのプラットフォームでどのように評価されているかも牽引力の指標として見ている。

メタバースにおけるコンテンツ開発は、そのインタラクティブかつ無限の性質から「ほとんどの場合、ビデオゲームよりもさらに複雑」だと、ヨリオ氏は指摘する。

「これらのプラットフォームがスタートし、成熟するのを待つ間、我々はオンラインコミュニティを構築し、メタバースとは何か、またメタバースでどのように仕事を得ることができるか人々を教育し、彼らが実際に構築者になれるようにしたいのです。というのも、 Web3はコンテンツクリエイターがコンテンツ消費者になることが目的だからです」。

Everyrealmは独立企業となり、成長資金として6000万ドル(約69億円)を調達した。同社によると、これは女性のCEOが率いる企業のシリーズA調達としては最大規模だという。Andreessen HorowitのArianna Simpson(アリアナ・シンプソン)氏が新規投資家としてこのラウンドをリードし、ベンチャー企業のCoinbase Ventures、Lightspeed、Dapper Labs、さらにParis Hilton(パリス・ヒルトン)氏、Lil Baby(リル・ベイビー)氏、Nas(ナス)氏といった有名エンジェル投資家を含む新旧の投資家が参加した。

画像クレジット:Vadmary / Getty Images

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(文:Anita Ramaswamy、翻訳:Nariko Mizoguchi

【TC Tokyo 2021レポート】投資の民主化はスタートアップの成功とイノベーティブな未来につながる

12月2日から3日にかけてオンラインで開催されたスタートアップとテクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo 2021」。1日目午前10時50分にスタートしたセッション「多様化する資金調達」では、開かれた投資のチャンスを提供するRepublicのCEOであるKendrick Nguyen(ケンドリック・グエン)氏が登壇し、さまざまな階層の人が投資することの意義について解説した。モデレーターはOff Topicを運営する宮武徹郎氏が担当した。

米国で投資できるのは億万長者の特権だった

グエン氏は、証券訴訟担当の弁護士としてキャリアをスタートした。その後、スタンフォードのロースクールとビジネススクールで短期間学び、VCやエンジェル投資家向けウェブサイトを運営する米国のスタートアップAngelListに参加した。

「日本には、信用投資家という定義がなく、言ってみれば誰でも民間企業に投資できる。米国の事情についてに教えて欲しい」という宮武氏の問いに「認定投資家は億万長者でなければなれない」とグエン氏は答える。

「自宅を除いて、少なくとも100万ドル(約1億1300万円)の資産があるか、ここ数年の収入が25万~30万ドル(約2800万〜3400万円)あることが求められる。なぜなら、可処分所得が十分にある富裕層なら、投資についても十分な知識があるだろう、という前提のもとに法律が作られているからだ」とグエン氏。

しかし、グエン氏は「投資は誰にでも、しかも賢くできるものだ」という考えを示す。

そして、2016年の法改正を受けて同氏はRepublicをスタートした。これは、資産や収入の多少に関わらず、投資を行えるプラットフォームで、投資先は初期段階のスタートアップからSpaceXのような後期段階のものまで、またテクノロジー、暗号資産、不動産、音楽、映画などジャンルも多岐にわたる。

なぜこれだけさまざまな分野のスタートアップや投資先を揃えているのだろうか。グエン氏は「Republicの目標は、何かに興味を持っている人がそれにかなう投資先をRepublicで見つけられるようにすること。自分がワクワクするものに、いくらでも投資できるようにしたいのだ」と説明した。

同様のプラットフォームが台頭してきたことについては「脅威だと感じない」という。

「むしろ。少額でも投資できることを知らない人がほとんど。同じ目標を持つ、他のプラットフォームも、彼らに対してリーチし、彼らを教育するのに資する。自分たちでも投資に参加できる、と理解した人が、どのプラットフォームを使うかは彼ら次第だろう。地元スーパーで買い物をするのか、Amazonを使うのかはユーザーに任されている。それと同じで、自分たちのお金をどう使うかは、彼らが決定することなのだ。製品の特性や、バックにいるチームの違いを理解して、どこを使うかを決めるのは顧客なのだ」とグエン氏は語る。

宮武氏が、すべての人に投資の門戸を開いたという意味で、グエン氏を「投資の民主化運動のリーダーの1人だ」と紹介したのも納得だ。

個人のファンがコミュニティとなり熱意を持って投資する

投資にはリターンへの期待がつきものだが、グエン氏は「Ownership(所有権)に関する変化が見られる」という。それは「Ownership Economy(所有型経済)という造語で表現されており、情熱的に支持するもの、アートや、新しいテクノロジーなど何でも含まれるへ、自分たちのお金を投資することで、その成功を共有したいという考えだ」と説明する。

グエン氏は「もしかしたら5ドル(約570円)、10ドル(約1130円)といったリターンがあるかもしれないし、もっと多いかもしれない。しかし、それよりも、自分たちを取り巻く世界に関心を持ち、それを変えるものに自分が関わりたい、という情熱が所有型経済という形になって現れている」という。

このような投資という行為が民間に浸透することを「Retail penetration(小売浸透)」または「Retail Revolution(小売革命)」と呼ぶ。「民間市場やその周辺が民主化されている段階だ」とグエン氏。「また、これまで存在しなかったようなバリエーション豊かな投資商品が生まれてくると予想している」。

投資の民主化(一般の人が投資できるようになること)が生じると、事業が軌道に乗る前であっても、ファンとなる人は投資をしたいと考えるようになる。製品(有形無形問わず)のリターンがなかったとしてもだ。

そして、リターンがなかったとしても、それだけ受け入れられているということは「プロダクトマーケットフィットを意味しているため、ネガティブな要素になりえない」とも付け加えた。

グエン氏はそれらを「共有経済としての起業家精神の台頭のようなものだ」という。起業家本人や投資家だけでなく、従業員、顧問、顧客など、ステークホルダーとなる人たちの誰もが株主になれるようにすべきだと。「UberやAirbnbは、IPO(新規上場)する前に、ユーザーやドライバーが投資できるよう、SEC(証券取引委員会)掛け合ったが、現行法で対応するように言われてしまった。でも、今なら関係しているすべての人が早期に投資できる製品がある」。そして「今後数年のうちに、それが主流の認識となるだろう」とも語った。

これは、起業家にとって、何を意味するようになるのだろうか。

投資が民主化されることで起業家の成功も容易に

起業家が資金を調達するには、以前であれば借金、株式投資のいずれかの方法しか取れなかった。しかし現在では「ベンチャー債務、個人投資、収益分配(レベニューシェア)、あるいはそのビジネスの健全性いかんで、その他の資金調達法がある」とグエン氏。「10年前の世界に比べて、今は会社を成功させるのがずいぶん簡単になっている」という。

投資の民主化が起きることにより、ファンコミュニティから投資を受けられる他「名高いトップVCではなくても、莫大な価値をもたらす投資家が生まれてきている」とグエン氏は語る。

それは、トップインフルエンサーと呼ばれる人たちの集団だ。それは、人気歌手や映画スター、スポーツプレイヤーやエンターテイナーなど、大勢のフォロワーを持つ人たちだ。

「莫大な展開力を持つ彼らは、企業が人々にリーチするのを助けられる」とグエン氏。あくまでも、例えとしてビヨンセの名前を挙げつつ「もし、ビヨンセがある会社に投資するたびに、なぜ投資したいと考えたかをファンに共有したら、どうなるだろうか。彼女のファンのうち、わずか1%が100ドル程度を同じ会社に投資したら?その会社は、ベンチャーの一部の大手企業よりも強大な力を発揮するようになるのではないだろうか」と問いかけた。

「しかも、彼女は、莫大な展開力という能力を持つトップインフルエンサーの1人に過ぎない。これは、まだまださまざまなイノベーションが生じる可能性があることを意味している」とグエン氏はいう。

テクノロジーとアート、両端のニーズにもかなった個人投資

では、実際にRepublicを使って資金調達を成し遂げたどのような例があるのだろうか。それについて尋ねられたグエン氏は「Gumroadという企業と、Lil Pumpというミュージシャンの例が思い浮かぶ」と答えた。

Gumroadは、音楽や動画、イラストといったデジタルコンテンツを販売できるプラットフォームで、決済システムも提供している。創業者はSahil Lavingia(サヒール・ラヴィンギア)氏だ。

シリーズCとなる資金調達では、80%を個人投資家から、残りの20%をいくつかのVCやNaval Ravikantのような有名なベンチャーキャピタリストから調達した。

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100ドルから投資できるとあって、7000人以上がエクイティクラウドファンディングに参加。100ドル、500ドル(約5万6800円)、1000ドル(約11万3500円)といった、投資家から見れば少額投資であったが、総額の80%である500万ドル(約5億7000万円)を、わずか1日で調達することに成功した。

Lil Pumpは、ラッパーだ。彼のYouTubeチャンネルの登録者数は1770万人。Soul ja Boyという、有名なラッパーとコラボした新曲のために資金調達を行い、2時間で50万ドル(約5700万円)の調達に成功した。「曲がヒットすれば、収益の一部がセキュリティNFTを通じて還元されるだろう」とグエン氏は付け加えた。

「一方はテクノロジー、他方は情熱的なファンド投資。この2つが融合し重なり合っているし、これからそれは顕著になるだろう。これは、投資の未来を象徴するものだと考えている」という。

未来を変えるお金に変える

Republicは、米国で生まれたサービスだが、世界のどの国からでも投資可能なプラットフォームだ。とはいえ、日本ではRepublicを通じて米国のスタートアップ企業に投資できることはあまり知られていない。

そこで、宮武氏は最後に投資の民主化の未来がどのようになるかといった展望や、東京の起業家たちやこの新しい方法での投資に少しの抵抗感を抱く投資家たちへのアドバイスを求めた。

起業家に対しては「コミュニティを制する者が、その業界を制することを知っておいて欲しい」とグエン氏。

「コミュニティを成長させ、構築するには彼らが投資できるようにするのが最良の方法。エクイティであれトークンモデルであれ、コミュニティにインセンティブを与え、ともに道を歩けるようにする必要がある。これにより、誰もが知るブランドを構築できる」とグエン氏。

また、投資家に対しては「あなたの投資するお金が未来を変える」ときっぱり。

「自分の信念に従って投資して欲しい。投資について本で学ぶだけでは不十分。実際に参加することで、大きな学びが得られる。ただし、大金は投じないように。失ったとしても問題ない額、5ドル、10ドル、20ドルで構わない。

投資のために使うのは、Republicでも他のプラットフォームでもいい。情熱をもって行った投資が、数世紀後の世界経済とイノベーションに貢献することを願っている」と締めくくった。

デジタル証券の第二取引市場を目指す投資プラットフォームRepublicが171億円超を追加調達

スタートアップの世界では、デジタル資産が米国証券取引委員会にとって、いつ有価証券と見なされるか否かについて、山ほど不満が募っている。

多くの人々が規制の暗雲を感じる分野で、創業5年のニューヨーク拠点の投資プラットフォームであるRepublic (リパブリック)が機会を伺っている。多くの企業が特定のデジタル資産と距離を置くべきかどうか悩んでいる中、Republic(CEOのKendrick Ngyueyn[ケンドリック・グエン]氏はGoodwin Procterでの証券訴訟が最初の仕事だった)は「compliant tokenization(規則に準拠したトークン化)」とグエン氏が呼ぶものの第1人者になることを創業時から目指してきた。

そして今同社は、すでに構築したデジタル「証券」の購入と再販のためのコンプライアンスを重視したマーケットプレイスを拡大する大きな野望をほのめかしている。

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グエン氏は先週TechCrunchとの電話で「米国内の主要な取引所でデジタル証券トークンを扱っているところはありません」と語った。つまり、製品やサービスに利用できるユーティリティトークンではなく、その価値が不動産のような外部の取引可能な資産に連動しているトークンのことだ。

扱わない理由の1つは、SECが、Ripple Labs(リップル・ラブズ)が開発した暗号資産であるXRPを、(通貨ではなく)Coinbaseなどの取引所が販売していない「証券」とみなしていることを極めて明確に示したからだ。

グエン氏は、Republicは「有能で良いカスタマーサービスを提供し、米国で証券とデジタル証券の第二の活発な市場を可能にする」取引所があれば「今すぐ提携する」意志があると語った。しかし、そんな取引所は存在しないため「あと1年ソリューションが見つからなければ、Republicはデジタル証券の二次的取引所に投資するか関連会社を通じて直接設立するつもりだ」と語った。

これはRepublicが運営している中で最も野心的なサービスであり、100万人以上のユーザーを集め、大規模な資金調達も行っている。

本日、米国時間10月20日、同社は1億5000万ドル(約171億円)のシリーズBラウンドをValor Equity Partnersのリードで完了したことを発表した。これは2021年3月に発表したGalaxy Interactive、Motley Fool Ventures、HOF Capital、Tribe Capital、およびCoinFundらが参加した3600万ドル(約41億円)のシリーズAラウンドに続くものだ(なお、これらの既存投資家は今回も参加し、Pillar VC、Brevan Howard、Golden Tree、およびAtreidesが新たに加わった)。

現在Republicの従業員は200名で、最新ラウンドの前に、新株発行で5000万ドル(約57億円)以上を、トークンの販売で2000万ドル(約23億円)以上を調達している。

会社はさまざまな調整に忙しく動いている。Republicはすでにいくつかの事業部門からなっており、10ドル(約1140円)から始められる人気の個人投資プラットフォームや、10億ドル(約1141億円)近い資産を管理し、認定投資家をふるいにかけてスタートアップに紹介する民間資本部門から、技術、財務、流通、およびトークン化サービスを提供するブロックチェーンコンサルタント部門まである。

さらにRepubliには、現在スタートアップや暗号資産プロジェクトに資金を配分するクローズドエンド型投資ファンドが2件ある他、Republic Realm(リパブリック・レルム)の名前で運用しているメタバース(仮想空間)とNFT(非代替性トークン)に特化したデジタル投資部門もある。

Republicがどうやってすべてをコントロールしているのかを聞かれたグエン氏は「異なるプラットフォームがあるとは考えていません」として、関心事や預金残高に関わらずあらゆる人にサービスを提供できる会社と考えていると語った。「もし億万長者がRepublicにやっきてきて、100ドル投資するのに時間を使うより10万ドルを配分したいというなら、我々はその機会を提供します。もしあなたが20歳で、20ドルをビデオゲームか不動産か女性起業家に投資したいなら、そのための機会もあります」。

目指しているのは「全人口」の要求に応えることだと彼は述べ、Republicなら培った技術力を駆使して成功できると強く思っている。そこにはある基本理念がある。それは「DeFiとNFTを含めほとんどのトークンは証券である」というRepublicの強い信念だ。その結果「私たちはRepublicのやっていることのすべて、触れるものすべてをなんらかの証券として扱い、米国証券法の既存の枠組みに適合させています」と彼は言った。

他の投資プラットフォームがSECに抵抗したいのならもちろんそれは彼らの権利です。Republicとしては「自分たちの仕事をするために新しいルールや規制を求めません。私たちのやり方は既存の法律、強固な法的根拠に基づいています」。

画像クレジット:Kendrick Nguyen / Republic

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(文:Connie Loizos、翻訳:Nob Takahashi / facebook