【次世代SNS編】米国SNSの最新事情とZ世代が新しい場所を求める理由(その3)

【編集部注】本稿は米国スタートアップやテクノロジー、ビジネスに関する話題を解説するポッドキャスト「Off Topic」が投稿したnote記事の転載だ。

この記事では、Z世代が求める次世代SNSについて考察していく。TwitterとSnapchatの最新事情についてこちらの記事、InstagramとTikTokの最新事情についてはこちらの記事を参照してほしい。

Z世代にリーチするために知るべきこと

SNSを見るときに最も重要なのは、若者の行動を観察すること。特に今のSNSがダウントレンドなのか、アップトレンドなのかはZ世代を見るのが一番いい。それは次世代SNSは2つの要素で作られていて、その1つが若者、特に10代から20代が作り上げるカルチャーなのだ。Facebookも大学生の中で人気に、Snapchatは高校生、Musica.lyは中高生の中で人気になってから、それぞれ一般化した。

投資銀行のPiper Jaffray(パイパー・ジャフレー)が2019年に出したレポートによると、Z世代の間ではInstagramが一番使われているSNS、一番好かれているSNSはSnapchat。TikTokは三番手で、フィルターアプリのVSCOは横ばい。Facebookの利用頻度がかなり下がっている。ただし、圧倒的にInstagramとSnapchatに寄っている。

Z世代の「BSメーター」

Z世代はSNSを通して新しいビジネス、文化、政治を学んでいる。これは過去ない現象だ。よりクリエイティブであり、カメラの前にいるのが気にならない。短期間の集中力で、圧倒的な「BSメーター」(デタラメに対しての感度)が高い。SNS慣れしているZ世代はとてつもないコンテンツ量を毎日見ている。そのため、何が広告で何がリアルなコンテンツかを一瞬で判断できる能力を持っている。Instagramなどでは広告やインフルエンサーが多いので、変な商品のプロモーションやマーケティングを見るとそのブランドを信頼しなくなる。さまざまなブランドのオプションがある中、信頼性を切ってしまうと二度と戻ってこない可能性が高い。そのためZ世代ユーザーへリーチしたければブランディングをきちんとやらなければならない。それはブランドの裏の人間のストーリー、会社の立ち上げの話、会社のカルチャーも含めて「完全なる透明性+ストーリー+コメント・DMのエンゲージメント=強いコミュニティーとブランド」だ。

Z世代とミレニアル世代の違い

まず認識しなければならないのは、ミレニアル世代はインターネット世代だがZ世代はスマホ世代と言うこと。もちろんミレニアル世代はスマホと一緒に育っているが、Z世代はスマホの前の世界をほぼ知らない。それによってアプリの使い方、考え方、信頼するブランド、見ているコンテンツやセレブが違う。

ミレニアル世代はハリウッドのレッドカーペットで歩くスターを見ている中、Z世代はTikTokやYouTuberを見ている。そして買い物でも、ミレニアル世代は大手リテーラーと比べてD2Cブランドを多少好む程度なのが、Z世代は圧倒的にオンラインで生まれたD2Cブランドを好む傾向にある。

Instagramの使い方も違う。Z世代の多くは過去の写真をアーカイブする傾向にあり、6枚ぐらいの写真しか見せないことが多い。昨日ではなく、今日の自分を表現したいために直近の写真しか見せない傾向だ。

Z世代が求めているプラットフォームとは

自己表現をクリエイティブにできるプラットフォーム、そして自分の弱みや本性を見せられるプラットフォームがいま最も求められている。フィルターなし、ブレるカメラワーク、磨かれてないグラフィックを求めている。ミレニアル世代で統一された「インスタ映え」とは大きく違う方向性で、ユニークさが今のクールになっている。

そして写真ベースなのは明らか。TikTokは音楽メディアとして報道されていて、実際にTikTok上で新しい音楽が生まれているのは確かだが音楽メディアではない。

Z世代は完全に「今日の自分」にフォーカスを当てている。そして明日の自分は変わってもいい、アイデンティティーの入れ替えと変わった人格・表現力が受け入れられているのが現状だ。TikTokはまさにそう言うプラットフォームであり、その影響なのかYouTube上のインフルエンサーのコンテンツも進化し始めている。YouTuberのEmma Chamberlain(エマ・チェンバレン)さんのコンテンツを見ると編集していない風に見せたり、スッピンで家でダラダラしている姿を見せている。

TikTok上では過去なかったコンテンツが存在し、TikTokのフィードによりローカルの文化やMemeが世界展開するのが普通になった。今後のSNSはこのような世界観を入れ込まなければいけない。

なぜいま米国のVCはSNSへの投資を必死に探しているのか?

米国のVCは最近「次世代SNSを探している」とよく言い合っている。Facebook、Instagram、Snapchat、Twitter、TikTokがある中でなぜそう思うのか?それは全体のSNS市場の流れを見るとわかるのが、今のトップSNSプラットフォームはソーシャルからステータスメディアに変わっていて、このシフトにより新しいSNSが誕生するチャンスが出てきている。

ほとんどのSNSは10年~15年前にスタートして、小さくコントロールされたコミュニティからスタートした。Facebookはハーバードの学生、WhatsAppはプライベートグループメッセージ、Snapchatは友達との1対1メッセージ。今は成長率が減速しているため新しい会社を買収したり、ユーザー成長や売上、マージンにフォーカスしている。SNSのサービスが成熟すると、親密なネットワークから放送・配信ユースケースが一番になる。2019年初めにMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏はFacebookはピークに到達して、これからは「街広場」ではなく「リビング」の立ち位置として戻らなければいけないと語った。SNSが成長する中で、ユースケースがエンタメ、コミュニティ、ユーティリティーから「ステータス」に移行していく。この進化は成熟されたどのSNSにも起こる。

本音が言えなくなるプラットフォームに

例えばTwitterで考えてみよう。2006年にローンチしたTwitterは、エンタメとコミュニティー、会話の要素が強かった。Twitterは面白いアップデートをSMS風にウェブ上で遅れるエンタメ感と、友達を集めてお互いの出来事や思いを共有できるコミュニティーだった。当時はステータスやユーティリティーは一切考えてなかった。

Twitter共同創業者のEvan Williams(エヴァン・ウィリアムズ)氏も「誰がこのアプリが役に立つ必要があると言った?」と発言したこともある。2020年版のTwitterは強調している特徴をかなり変えている。ユーザーはTwitterをかなり役に立つ方法を見つけた。まず、ニュースの場として役に立ち、さらにビジネスが顧客とコミュニケーションできる場にもなった。Twitterは あとあとフォロワー数やリツイート数にてステータスを作るようになった。多くのツイートは公開されているためユーザーはステータスを獲得するのが目標となる。そうすると本音を語れない、もともと友達とシェアしていたものがTwitterでは共有されなくなる。

FacebookからInstagramへ、そしてInstagramからSnapchatやTikTokへという流れは各SNSがソーシャルメディアからステータスメディアへ変わり始めたからでもある。Facebookはよりオープン化(そこまで親密ではない友達とつながった)したおかげで、本音の投稿を出さなくなった。Instagramも「親がInstagramに居るから本音が言えない」と語る大学生や高校生が多かったためSnapchatに移行。そしてInstagramの「インスタ映え」に疲れはじめたユーザーは本来の自分を表現できるプラットフォームを求め、TikTokにたどり着いた。

重要視されたステータスによってのプレッシャー

SNSだとユーザーに対してバリューを発揮する瞬間やKPI(重要業績評価指標)がある。Facebookだと友達の数、Instagramの初期だと5人フォローしたらその「マジックナンバー」にたどり着く。友達がいるから投稿したり、会話をしたくなるので、最低限の人たちとつながるように仕組まれるのは当たり前。面白いのはSNSが成熟したタイミングで逆の事が起こる。SNS内で一定のユーザー数を突破するとユーザーは不思議と投稿したくなくなる。これをソーシャルネットワークからステータネットワークへのティッピングポイントと呼べるだろう。

Facebook、Instagram、Snapchat、TikTokで同じ現象が起き続けている。最初に集まったFacebookだったが、10代の子からすると家族につながっているので、高校や大学でパーティーしている写真はなかなか出せない。これによって何を投稿するのかを考え、投稿のハードルが上がる。

Instagramも「インスタ映え」を目指してライフスタイルを変える人や、「いい写真しかあげられない」プラットフォームとして認識されてしまった結果、投稿回数が減ってInstagramに不満を抱える人も増えている。そもそもInstagramもFacebookから離れたい人たちが始めたプラットフォームだが、最近だとInstagramのフェイクアカウント「Finsta」が増えている。10代の子たちが親や家族に見られて良いアカウントを立ち上げ、別途自分用のアカウントを作っている。Instagramではステータスを求めて詐欺アカウントも出てきている。

SNSのティッピングポイントは本音コンテンツの投稿を戸惑う瞬間。親がいるからFacebookからInstagramへ、そしてSnapchatへ、そして今はTikTokへ。Facebookだと「いいね」、InstagramとTwitterだと「フォロワー」が増えるだけ「ステータス」が上がり、それでビジネスやインフルエンサーとして活動できるため「ステータス」を求めるメディアとなった。

総合的に見ると、少なくともFacebookとInstagramはソーシャルの領域を超えて、今はステータスメディアになっていると思う。

アーリーステージのVCであるCanaan PartnersのLaura Chau(ローラ・チャウ)氏が語るには、ソーシャルとステータスのサイクルには以下の5つのステップがある。

  1. 5つの特徴の中からSNSサービスが生まれる
  2. SNSが成長するに応じてユーザーのステータスを求める需要に応えるように機能設計などを行う
  3. プラットフォームのユーザー数が多すぎるとステータスメディアへシフトする
  4. ステータスメディアになると本音コンテンツや繋がりを求めて新しいSNSが立ち上がる
  5. そのSNSはギャップを埋めながら、新しい世代へステータスを引き寄せる新プラットフォームとなる

ステータスが王となり、会話が犠牲者となる。Twitterだけではなく、ほとんどのプラットフォームはこの流れに入ってしまっている。逆に言えば、SNSがこのようにステータスメディアとしてシフトしていく中で新たなSNSプラットフォームが出てくるチャンスでもあると思っている。

注目されている次世代SNSサービス

米国VCが次世代SNSを探している中で、いくつか候補が出ている。中にはFortnite(フォートナイト)、Minecraft(マインクラフト)、Roblox(ロブロックス)などのゲーム内のSNSや、DiscordやClubhouse、TTYLなどの音声からのSNSが候補として挙がっている。もちろんそれ以外に多く次世代SNSを狙っているアプリはあるが、以下は特に気になっているものを紹介しておく。

シリコンバレーのVCが必死に追いかけているClubhouse

米国のVCは最近「Clubhouse」というアプリで大盛り上がりだ。

Twitterのオーディオ版に似ていて、いろいろな人の会話に入り込み、聞いたり、参加することができる。まだベータ版だが、シリコンバレーの著名VCやテック業愛のトップの人たちが必死にアクセス権を獲得しようとしている。このようなVC業界でSNS系にハマったのは、Meerkat、Secret、Foursqure、Twitter以来な気がする。

このアプリの凄いところは、今のところPMF(プロダクトマーケットフィット)を達成しているように見えること、行動変化を及ぼしていること。何名かのVCにヒアリングしたところ、ちょっとした空き時間でアプリをチェックするようになったり、寝る前、起きた時にまず見るアプリになってきているそうだ。ライブで音声会話を聞ける、特に業界トップの人たちの会話をフィルターなしで聞けるのはなかなかない。そして仕事やタスクをやりながらできる手軽さのおかげで評判が高い。

Twitterやポッドキャストとのポジショニングをかぶらないようにする必要があるが、うまくいくとポッドキャスト市場とイベント市場を潰しに行ける気もする。ライブであることがポッドキャスト市場との大きな違い。いまは録画機能がないので、その場にいない限り会話が聞けない。それが人をこのアプリに引き戻せる力でもある。著名ベンチャーキャピタリストであるMarc Andreessen(マーク・アンドリーセン)氏でさえもClubhouseのユーザーのひとりだ。

そしてClubhouseの一部の魅力は半端ないスピードでプロダクト改善、プロダクトリリースをしていること。2人しかいないのに1日に数回新規リリースしている。Y Combinator共同創業者のPaul Graham(ポール・グラハム)氏も言っているが、新しい機能を出せるスピードは意外にスタートアップの成功率と相関する。

まだ初期段階の会社であり、2名体制なので実際にヒットするかはわからない。そして今は親密な感じでアプリを利用できるが、今後はその親密度を保ちながらスケールできる方法を考えなければいけない。そして最近だと調子が悪いと噂されているTTYLなどを見ると、Clubhouseはなぜうまく行っているかが少し不思議。もしかしたらTTYLはコアユーザーが間違っていたのかも?友達間がメインだったTTYLだと、自分で何十人も集めて会話をスタートしなければいけないのと比べて、Clubhouseは知らない人の会話、特に著名人の会話が聞けるのがポイントかもしれない。

もちろんClubhouseは新型コロナウイルスのパンデミックのタイミングだから伸びていると言える点もある。ほかの人の声を聞きたい需要が増えているからだ。ただそれ以外にも、フェイクニュースの広がりの影響もある気がする。Twitter上で知らない人の声を聞くのが面倒、悪いコメントが多すぎる、そして信頼している人と会話ができない環境がある中から生まれたのもある気がする。

参加型SNS

Facebook、MySpace、Friendsterなど初期世代のSNSは、99%の人が見るだけで、1%の人が書くというプラットフォームだった。誰かのプロフィールに行ってコンテンツを見ることが多かった。コメントや返信など多少はしたかもしれないが、大半は見るだけで終わる。Facebookは進化して行った中でmコメントやニュースフィード、「いいね」ボタン、絵文字でのリアクションができるようにして、書くことによりエンゲージさせようとしている。ただ、一個人が情報・コンテンツを共有することをベースにすると圧倒的にコンテンツを書く人が少なくなる。そこで新しいモデルにFacebookは向かっている。それがFacebook Groupだ。

タウンホールからリビングに移行したいFacebookが、Facebook Groupにかけている理由は明らか。それはGroupだと個人が中心として成り立たないから。そのグループの構成、テーマ、コンテンツに重点が置かれる。今後のSNSはパッシブにコンテンツを受け入れるだけではなく、アクティブにコンテンツを作成できるものとなる。

その中では、Discord、Fortnite、Minecraft、Robloxなどが含まれている。アクティブにプラットフォーム上で参加するのが前提・必須となると、よりそのプラットフォームにいる意味合いが生まれる。MinecraftやRobloxは完全にクリエイター側が中心となっているのはその理由だ。この「参加型」と言うのが今後キーワードになってくる気がする。

結論

Twitter、Snapchat、Instagram、TikTokは争っているものの、各自ポジショニングをしっかりしているため、ユーザーが両立できているように見える。ただ、5年~10年スパンでどんどん新しいSNSが生まれてきて、古いSNSが進化しない限りユーザーが違うプラットフォームに写ってしまう。その中、米国VCはすでに次のSNSを探している。

新しいSNSを作るのは2つのドライバーがある。

  1. 10代~20代前半から生まれる新しい文化
  2. ステータスメディアが生む苦しさ

本音が出せない、そしてステータスを求めるプレッシャーでSNSは成熟するほどコンテンツエンゲージメントが悪化してしまう。広告が収益ベースとなるプラットフォームはそうなる運命である。マーケターはすべてのものを台なしにするという話は事実。Facebook、Twitter、Instagram、そして徐々にTikTokもインフルエンサーマーケティングや企業プロモーションであふれ始めている。そうなると、本来作られたユースケースと離れ、金儲けコンテンツへ走ってしまう。プラットフォームもユーザーが増えるとそのマネタイズを支える人たち、インフルエンサーと企業を喜ばせるプロダクト開発を行うので、ユーザーの不満が大きくなる。

いま米国ではTikTokの次のSNSが見つかってない。その候補としてClubhouseなど盛り上がっているが、まだどこも勝ち抜いてない。逆に今がSNSを作る最大のチャンスであると信じているし、どんなユースケースがハマって急成長するアプリを楽しみにしている。

引用記事
Snapchat will launch Bitmoji TV, a personalized cartoon show(TechCrunch)
What’s trending: Experts decode Gen Z(DIGDAY)
NO. 330: GEN Z ARBITRAGE(2PM)
The Era of Participatory Social(Medium)
The Sound of Silence(Posthaven)
Snapchat launches privacy-safe Snap Kit, the un-Facebook platform(TechCrunch)
Snapchat preempts clones, syndicates Stories to other apps(TechCrunch)
To stop copycats, Snapchat shares itself(TechCrunch)
Clubhouse voice chat leads a wave of spontaneous social apps(TechCrunch)

【Instagram、TikTok編】米国SNSの最新事情とZ世代が新しい場所を求める理由(その2)

【編集部注】本稿は米国スタートアップやテクノロジー、ビジネスに関する話題を解説するポッドキャスト「Off Topic」が投稿したnote記事の転載だ。

この記事では、InstagramとTikTokの活用事例をチェックしていく。TwitterとSnapchatの最新事情についてはこちらの記事、注目の次世代SNSについてはこちらの記事を参照してほしい。

YouTubeの売上をも超えるInstagram

いまやInstagramは、どのプラットフォームよりも人気かもしれない。Instagramの2019年の売上は200億ドルだったとのこと(YouTubeの150億ドル越え)。Facebookの全体の25%以上の売上。Instagramの買収に10億ドル払ったFacebookからすると、18日に1倍の投資額が入ってくるレベルだ。

「インスタ映え」と言うコンセプトも一般化され、Instagramを起点として多くのビジネス、インフルエンサーが立ち上がった。ここではその中でも、新しいInstagramの使い方、お勧めの活用方法をまとめてみた。

活用事例1:インスタ小説
ニューヨーク公共図書館が絶妙なSNSプロモーションを出した。不思議の国のアリスなどのクラシックなストーリーをInstagram Storiesで公開。この「インスタ小説」の使い方は素晴らしい!

まずインスタ小説のローンチする動画もめっちゃいい。明確にメッセージングを伝えている。

こちらが不思議の国のアリスのインスタ小説をプロモーションする動画。テキストだけでもキャラクターの紹介、ストーリー内の話をちょい出しするやり方が素晴らしい。

インスタ小説の素晴らしい点は、

  • カバーのアートとアニメーションがいい
  • Thumb here(ここに親指を置く)ボタンで動画スピードを調整可能
  • Thumb hereのアイコンがページごとに進化する
  • アニメーションが入ったページがあるので飽きない

しかもInstagram Storiesで小説を読むのが難しいと思われる人のためにチュートリアルの動画まで準備している。さらにニューヨーク公共図書館のIG Stories Highlightsでアーカイブされるので、いつでも読み返せる。

活用事例2:Instagram Storiesフィルター
去年末から米国では大人気になったInstagram Storiesでのフィルター。

自分は何の、ディズニー、ポケモン、セレブ、動物、。ヒップホップアーティストなのかなどをランダムで出してくれるフィルターで、そのリアクション動画を撮れるようになっている。このフィルターによって新しいInstagramスターも生まれている。フィルター自体が見つけにくいので、Google(グーグル)で「Instagram filter」の検索する人が増えている。

実際にフランス人のClément Quennesson(クレメント・ケネソン)さんが作ったフィルターが2020年1月2日から1月10日までに100万回以上使われた。彼女は「Which Baby Animal」「Which Hip Hop Artist」「Which Sea Creature」などのフィルター作ったそうだ。Which Hip Hop Artistフィルターは4日間で3500万インプレッションがある。

クレメントさんはInstagramからボットだと思われ、一瞬アカウントがバンされたこともあった。バズった後に数社のブランドから連絡が来て、フィルターを作ってくれと依頼が来ている。このようにInstagramでのセルフィー文化をうまく取り入れてその上にバズりそうなフィルターなどを作ることによってブランド認知の向上にもつなげられる。

事例3:テキスト・プレゼンの新しい共有方法?
Instagramで写真や画像ではなくエッセイを投稿する動きも出てきている。今後、エッセイやパワーポイントなどのスライドをシェアする動きが増えるかもしれない。

1年を振り返るSpotify Wrappedもプレゼン風フォーマットをInstagram Storiesに落とし込んだもの。四季別で聞いたアーティストに分けてくれたり、誰を一番聞いてたかを簡単にまとめてくれる。

既にSpotify Wrappedが人気だったが、Spotifyの素晴らしいところはそれをInstagram Stories用のサイズに自動調整してシェアできるように設定しているところ。

こちらが2013年のSpotify Wrappedだ。

引用:Jack ApplebyのTwitter投稿から

事例4:映画予告のプロモーション
Instagram Storiesで映画や番組をうまくプロモーションする事例。まず「The Gentlemen」(日本では2020年秋公開予定)の映画トレーラーをInstagram広告用にフォーマットしたもの。俳優の映像からはじめるのがうまくて面白く、なおかつ早いカットを使い、メディアからのコメントもうまく使っている。

ディズニーは自社IP(知的財産)を使って見事にDisney+番組のプロモーションをした。ザ・シンプソンズが、マーベル系、スターウォーズ風、ディズニー風のパロディーをした映像をまとめて個々のIGTV動画として出した。

事例5:1年間のまとめ
食品宅配のPostmates(ポストメイツ)は2019年の振り返りインフォグラフィックをInstagramで公開。数字の切り出し方や見せ方がユーモアで、うまくプロモーションできている事例。一番おかしい数字を出してバズらせるのはいいプロモーションだ。

事例6:マイクロインフルエンサーの活用
スターウォーズがInstagram用にイラストレーターを採用して新しい映画公開のためにさまざまなオフィシャルポスターを作ってもらった。クリエイティブのクオリティーがすごい!

この作品は、有名なクリエイティブスタジオのPosterPosse(ポスターポッセ)とコラボした作品。さまざまアーティストをコンテンツクリエイターとして活用しているのは正しい戦略だ。12月のスターウォーズのInstagramアカウントで2番目にいいねされた投稿はアートポスター投稿(53万いいね)だった。唯一勝ったのはBaby Yodaのコンセプトアート投稿だけだ。

これにより、各アーティストは自分のチャネルでも投稿できた。自分のアカウントで投稿できることによって各アーティストのフォロワーにもプロモーションできる。これでうまくクリエイターをマイクロインフルエンサーに変えている。

https://twitter.com/tmiyatake1/status/1207542502078574593https://twitter.com/tmiyatake1/status/1207542502078574593

過去には、「Pacific Rim: Uprising」(パシフィック・リム:アップライジング)の公開時でも似ているプロモーションをしていた。ストリートアーティストをうまく活用するのは今後流行りそうだ。

このまま成長し続けるか?「TikTok」

Bytedance(バイトダンス)はどのSNSよりも早く10億MAUを突破。TikTokはインフルエンサーが主流になってから初めて流行しだしたSNSだ。ただ、その成長は本当なのか、それとも作られたものなのか?

10年前のYouTube、新しいVineとして有名になっているが実際は広告で伸びている。2018年だけで10億ドルの広告費を使い、Snap、Facebook、Instagramでのプロモーションをかなりやっていた。実際に2018年に一番Snap上で広告出したのはTikTokだった。さらに、米国ではMusica.lyを8億ドルで買収によりさらに成長し、最近はSnap、Twitter、Quoraにも買収の興味を持っているらしい。

もともとZ世代のプラットフォームとして知られていたが、ミレニアル世代もTikTokにハマり始めている。しかし、面白いのはミレニアル世代ですらTikTokコンテンツが何故人気なのかがわからない子が多いこと。ただ、実際にみんなTikTokに入り込んでいるのは明らかなので、今後もかなり成長は期待できる。

最近だとFacebookも危機感を感じているのか、Facebook Messengerの広告をTikTok内に出している。

TikTokでウケるコンテンツとは?

おもしろ系やダンス、ふざけた動画、メイク動画などが伸びるが、ほかだと政治や医療系の教育動画も増えている。Z世代はTikTokは単純に遊ぶ場だけではなく、学べる場としても考えている。

ブランドとしてTikTok上でコンテンツを出す際にはかなり慎重にやるべきだ。米国のTikTokユーザーは広告っぽいコンテンツを見た瞬間スキップするので、周りのTikTokコンテンツっぽいものを出さなければいけない。NBA、Chipotle、Washington Postなどはかなりうまくプラットフォームに合わせたコンテンツを出せている。

そしてインフルエンサーを使う際にも気を付けなければいけない。TikTokの強調的ポイントは知名度とは関係なくコンテンツが広がること。コンテンツが面白ければ面白いほど広がる傾向にある。なのでフォロワーが多い人だからバズる確信はまったくない。そのインフルエンサーとうまく、その人にあったコンテンツを作るのが大事。そのため、商品紹介とかの場合は30日間そのプロダクトを使い続けてもらってからインフルエンサーキャンペーンをやるべき、そして一発ではなく何回にも渡ってやるべき。

ただ、まだTikTokインフルエンサーを活用している企業が少ないため、かなりいいチャンスだと思っている。特にコスメ系の会社とかであれば低いCACでキャンペーンを実施した実績も過去にある。

TikTokはまだ新しいので、どんどん新しい活用法が出てくる中で、幾つか面白かった事例をまとめた。

活用事例1:誰もが知りたい非日常体験レポート
Makall Lauren(マカル・ローレン)さんはディズニーのインターンプログラムに参加した際に、あることに気づいた。それはインターンの内部情報をみんなが知りたいこと。マカル氏の最初のディズニー動画がバズったときに、過去のTikTok動画をすべてアーカイブしてディズニーに特化することを決めた。

引用:Makall LaurenさんのTikTokページ

マカルさんのプロフィールに行くと、すぐに何のコンテンツを提供するかがわかる。このような1つの目的があることが重要。彼女のプロフィールを見ると、ディズニーで働いていて、ディズニーについて語るチャネルとなっている。ディズニー好きな人だと、フォローする判断はすぐにできる。

引用:Makall LaurenさんのTikTokページ

彼女の特技は圧倒的な歌唱能力。インターンとしてディズニーの内部ストーリーを語るのだけではなく、それを歌に変えることができるのが素晴らしい。これはまさにTikTokに合ったスキルセット。歌えるかの証拠はこちらの動画で、すでに500万以上の再生回数となっている。

実際に彼女のフォロワー数の成長を見ると、

  • 初期ディズニー動画(2020年1月21日):900人
  • 歌える証拠動画(2020年1月24日):4.5万人
  • フォロー感謝動画1(2020年1月28日):15万人
  • フォロー感謝動画2(2020年2月5日):20万人
  • 現在:34万人超

歌える証拠動画のテキストの使い方がうまい。動画内にオーバーレイで「ディズニーで仕事している動画が人気になった」と入れるだけで、歌える証拠動画を見た後に次に視聴者がマカル氏のページを見てほかの動画をチェックするように誘導している。インターンのストーリーと歌声のフックを作った。

Makall LaurenさんのTikTokページ

Makall LaurenさんのTikTokページ

そして何回も見れらるコンテンツテンプレートを見つけた。引越日などの何かのイベントや瞬間とそのテーマに沿ったディズニーの曲、例えば「アナと雪の女王」の「生まれてはじめて」などをうまくつなげる。

通常のTikTokクリエイターはコンテンツのトレンドに沿って新しい動画を作る。米国だとダンスや曲のカバーをしている。ただ本当のクリエイティブの人たちは新しい、ユニークな体験をオファーする。TikTokでは次の動画を見たがる、「続きは次の動画で」などのいわゆる「クリフハンガー」をよくやる。マカル氏はそれが自然とできている。各投稿は彼女のインターンとしての生活を表しているので、何が起こるのかがみんな気になるのだ。

事例2:シェアしやすい動画のダウンロード機能
ほとんどのSNSプラットフォームがエコシステム内の動画や写真をダウンロードするのを難しくしている中、TikTokは簡単にして、なおかつTikTokロゴとクリエイター名をウォーターマークを自動にして共有しやすくしている。

事例3:TikTokからの新しいソーシャルコマース
去年話題になった「OK Boomer」だが、流行のきっかけは1本のTikTok動画。ミレニアル世代やZ世代はピーターパンみたいに大人になりたくないと批判しているおじさんに対して「OK Boomer」とコメントを返した動画。

@linzrinzz

mom can you pick me up the old art teacher is going at it again #foryoupage #genz #foryou

♬ original sound – old_school_is_not_so_bad

古い世代の考え方は世界で通用しておらず、逆に多大なる問題を作り上げたとすごく簡単にまとめている。環境問題の責任を負うのは若手世代なのに、環境問題を信じない大人がいる。「世界が変わっている中、我々のやり方で世界を救ってみせる」というメッセージ性もある。

OK Boomerがコメントやミームで流行っている中、マネタイズする人たちも出ている。19歳のShannon O’Connor(シャノン・オコナー)さんがOK BoomerのTシャツをTikTokでシェアしたところ、すぐに100万円以上のオーダーが入ってきた。

引用:Official page for @toasterpancakes ok boomer shirtsから

事例4:チャレンジ文化
過去だとIce Bucket Challengeな(アイス・バケツ・チャレンジ)どバズったチャレンジは多いが、TikTokはそのコンセプトをスケールさせた気がする。ダンスチャレンジとかではよく見るが、それ以外の方法も多くの企業が考えている。中でも人気だったのはChipotleのLidFlipチャレンジだ。

引用記事
Snapchat will launch Bitmoji TV, a personalized cartoon show(TechCrunch)
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【Twitter、Snapchat編】米国SNSの最新事情とZ世代が新しい場所を求める理由(その1)

【編集部注】本稿は米国スタートアップやテクノロジー、ビジネスに関する話題を解説するポッドキャスト「Off Topic」が投稿したnote記事の転載だ。

こんにちは、宮武(@tmiyatake1)です。これまで日本のVCで米国を拠点にキャピタリストとして働いてきて、現在は、LAにあるスタートアップでCOOをしています。Off Topicというポッドキャストでは、D2C企業の話や最新テックニュースを解説しています。まだ購読されてない方はチェックしてみてください!

はじめに

Facebook、Twitter、Instagram、Snapchat、TikTokなど、さまざなSNSが日々使われている中、米国では「次のSNSプラットフォーム」をVCたちが探している。もうすでにSNS市場は成熟していると思う読者もいると思うが、実際は違う。今新しいSNSを立ち上げるには絶好のタイミングなのだ

SNS第1世代と言われるFacebookやTwitterは、2004年~2006年にサービスを開始。第2世代は、2010年~2011年にかけて写真をメインとしたInstagramやSnapchatが誕生した。そしてMusica.ly(現TikTok)が2014年にローンチ。過去の傾向からみると、3~5年の間で新しいSNSが誕生している。その理由は、新しい行動変化や既存のトップSNSへの不満を感じ始めるからだ。その不満については記事の後半で説明する。

まずはFacebookを除いて、今米国でのSNSを見てみよう。各SNSをどう使うべきなのか、どう言う戦略を考えているのかなどをまとめた。この記事では、TwitterとSnapchatの最新事情について紹介する。InstagramとTikTokの最新事情についてはこちらの記事、注目の次世代SNSについてはこちらの記事を参照してほしい。

知識やニュース共有の場「Twitter」

Twitterはエンターテインメントというよりは、知識やニュースの共有場として成り立っている。企業としては今のステータスの共有が出来るし、個人はInstagramやTikTokでは集められない層にリーチして、エンゲージが出来る。ほかのSNSの中でも最も有名人や業界のリーダーとフランクに話し合える場とも言える。いまだと大学の単位よりもTwitterアカウントのほうが価値があると言う人も出てきている。

事例1:スレッド機能で小出しにプロモーション
有名な事例では、Disney+はローンチ時に素晴らしいTwitterのスレッドを展開した。まさにTwitterに合わせたコンテンツで、スレッドで700以上の返信、ローンチ時でリリースする作品を1つずつ紹介。自社のIP(知的財産)の強さと深さをうまく表現するプロモーション方法だ。

公開を少しずつ小出しにしていき、常にタイムラインにDisney+の情報が載るように時間をかけて投稿し続けた。

作品を別々のツイートにすることによって作品のファンがリツイートしやすいようにしている。こちらがそのスレッドをツイートした数日後のエンゲージメントの数字。やはりかなり高いことがわかる。

引用:Convivaデータより

Netflixも似たようなキャンペーンを行った。2020年に公開する映画をツイートスレッドで発表したが、ちょっと物足りなかった。

比較すると違いがわかる。コンセプトアートを含めているDisney+のほうが圧倒的にシェアされる気がする。

NBAの方法にも注目だ。NBAはスポーツ業界の中でSNSを一番うまく活用していることは、去年末に投稿されたツイートを見ればわかる。過去10年のトップ20のダンク集を1つずつ出すスレッドを投稿しで各動画に出たプレイヤーやチームのファンがリツイートできるようにしたのだ。

さらに、YouTubeではトップ100のダンクまとめ動画を公式で公開。YouTubeだともっと長いコンテンツが見られるし、それでより広告収入も得られる。

事例2:著名人への質問を飛ばすQuora的な使われ方
最近TwitterがQuora化している風に見える。Q&AやAMA(Ask Me Anythin、なんでも私に聞いてね)を実施している人が増えている。

事例3:メッセージ性のあるプロフィール名の変更
プロフィール名を変えるだけで、一番伝えたいメッセージを多くのユーザーに伝えられる。過去にWendy’s(ウェンディーズ)、Slack、Airbnb、Chipotle(チポトレ・メキシカン・グリル)など行っている。ウェンディーズでは、人気メニューの復活キャンペーンでプロフィール名を「WENDY’S SPICY NUGGETS ARE BACK!!!」(ウェンディーズのスパイシーナゲットが帰ってきた!!!)と告知した。

Slackではダークモードのリリース時に「Slack *does* have dark mode now, yes indeed.」(Slackにはダークモードが「あり」ます、本当に)と変更。

Airbnbは300以上の新しい動物に関しての体験を提供開始したことを合評した。

直近での面白い事例は、メキシカンチェーン店のChipotleがプロフィール名にSMS(ショートメッセージサービス)の番号を公開。この戦略を使って、ワカモレ(メキシコ料理のサルサの1種)を無料で提供。しかもこれはCTA(行動喚起)が明確で「SMSしたらどうなる?」ときになる人も多いだろう。

事例4:「あえて」ハッシュタグを使わない
マーケティングがうまいApple(アップル)とDisney(ディズニー)の広告を見ると、ハッシュタグを入れてない。意外とハッシュタグを入れたほうが悪い結果になるときちんと理解しているのだ。

入れない理由はいくつかある。まず、多くのブランドがハッシュタグを入れてきたせいでみんな見なくなり、スパム扱いとなっていること。そしてブランド側としては広告を出して自分のランディングページに行かせるのが目的なのに、ハッシュタグを入れると違う場所にユーザーが行ってしまうチャンスを与えるのは意味のないこと。

毎日のコミュケーションのひとつ「Snapchat」

Snapchat CEOのEvan Spiegel(エヴァン・スピーゲル)氏は面白い視点でSNSについて思っている。ミュンヘンで開催された「Digital Life Design 2020」イベントで同氏は、Snapchat、Instagram、TikTokを1つのピラミッドでポジショニングの違いを説明した。

引用:Evan Spiegelの2020年登壇内容を基に作成

このピラミッドの下層、一番キモとなるのは日々起きる友達同士の「コミュニケーション・自己表現」。スピーゲル氏はここにSnapchatが入っていると主張している。Snapchatは、友達間での心地よいやり取りを可能としているプラットフォームだ。

そしてピラミッドを上がるにあたり、「ステータス」のレイヤーに入る。初期のSNSはほとんどここに入っていると説明している。「いいね」やコメントを求めて自分の価値を表すプラットフォーム。ただ「コミュニケーション」レイヤーよりはアピールがなく、よりハードルが高い。それはなぜかというと、ステータスに見合うコンテンツ作成(いわゆるインスタ映え写真)を常に投稿するのは難しい。そうすると頻度が落ちるのとともに、全ユーザーが共感するコンテンツを制作できない。

そして一番上が「タレント」領域。数時間かけてダンスを学ぶ、もしくは数時間かけて面白いネタやストーリーを考えるコンテンツクリエイターがそろっている。そうするとクリエイター側はより狭まる。難しいダンスをわざわざ学びたい人はインスタ映えを撮れる人より少ない。ただ、コンテンツを見ると時間をかけているぶん、「ステータス」レイヤーよりも面白い。そのためTikTokがInstagramを超える可能性があるとスピーゲル氏は話している。ただ、Snapchatに入るには圧倒的に機能の変更とユーザーの行動変化(TikTok上で会話)が必要なため、恐らくスピーゲル氏はTikTokを恐れてない。

同氏の説明を聞きたい読者は以下動画を参照してほしい。

Snapchatはこの「コミュニケーション」レイヤーをまず固めている。1990年代後半~2000年生まれのZ世代の中では使う頻度が多少下がっているかもしれないが、実際には圧倒的にSnapchatは使われている。日常のコミュニケーションツールとして使われている中、Snapchatは去年あたりから本格的に次のステップ、いわゆるFacebookやInstagramを対抗するための秘策を売っている。

その戦略はSnapchatをほかのプラットフォームに広げること。対等にSnapchatはFacebookやInstagramと戦って、かなり苦しんだ。元々Storiesと言う非常にニーズにあったコンテンツフォーマットを持っていたのが、Instagramにコピーされてしまった。そこでスピーゲル氏は別の作戦を採った。過去にFacebookログインのように、Snapchatはここ数年行ったこととは、自社機能をどうSNS以外の成長しているプラットフォームに乗れるか。アイデンティティー、コンテンツフォーマット、そして開発キットをリリースしたのがこの戦略を明確にしている。

Bitmojiからのアイデンティティー共有

過去のNote記事にも記載したが、Snapchatは過去に買収したBitmojiをうまく活用している。Snapchat上で作ったアバターがほかのプラットフォームで見るようになると、Snapchatで作り上げたものが自分のライフスタイルの中心となってくる。その気持ちをうまくキープできるかがSnapchatの今後の見どころ。Snapchatは明らかに通常のSNSからエンタメ(ゲーム・番組制作・AR)にシフトしている。SnapchatはFortnite(フォートナイト)やゲームが次世代SNSになり得ると感づいてこの取り込みをしている気がする。

Facebookもそれに気付き、直近でFacebook Avatarsをローンチした。

関連記事:Facebook Avatars, a Bitmoji competitor, launches in Europe

Snapchat Stories機能の広め方

SnapchatはStories(ストーリーズ)機能を出したときは大ヒットし、そのあとInstagramにコピーされた。その次にFacebookとWhatsappにも同じ機能が出た。そしてStoriesと似た機能がYouTube、Twitter、LinkedIn、SoundCloudなどで開発されている中、スピーゲル氏は去年Snapchat Storiesをほかのプラットフォームで投稿できるように発表、そして2020年3月末にリリースした。

Facebookファミリー(Facebook、Instagram、Whatsapp)が圧倒的な強さを見せる中、ほかのプラットフォームと一緒に組むことで勝ち筋を作りに行っているのはほかのプラットフォームには過去なかった戦略。ただ、Bitmojiをはじめ、Snapchatとしては自然な展開となっている。Snapchatを起点にコンテンツ制作・アバター制作をすると、自然とほかのアプリ・プラットフォームでも同じアバターとコンテンツが出てくる。他社プラットフォームとしてはエンジニアのリソースをStoriesコピーに使わなくてよく、Snapchatのオーディエンスからの送客としても使える。

そしてSnapchatはこれによってどういうアプリにコンテンツやアバターが存在するのかがわかり、よりユーザーのデータを取得。そのデータと、よりコンテンツがさまざまプラットフォームに出ているのでマネタイズ(広告)がしやすくなる。Snapchatは10代から二10代前半のリーチができていて、メッセンジャーを起点とした戦い方を示している。それを加速させるために第三者の開発ネットワークを作った。

Snapchat Kitのすごさ

このStoriesとBitmojiの裏側にはSnapchat Kitと言う開発キットがある。さまざまなパートナーがSnapchatの各種機能と連携して、お互いベネフィットを生み出せる仕組みを作っている。過去には、Netflix、GoFundMe、VSCO、AnchorなどがSnapchatのステッカーを使えるようにしたり、Washington Post(ワシントン・ポスト)の記事をSnapchat上で共有できるようにしたり、Zynga(ジンガ)やZeptoLab(ゼプトラボ)がチャット内でゲームをプレーできるようにもしている。さらにSnapchat Kitの中にはFacebookログインと同じLogin Kitが存在する。

過去1年で最もダウンロード数が上がったアプリを見ると、多くのアプリがSnapchat Kitをベースに作られている、YOLO、Hoop、LMKなど、もしくはSnapchat Kitと連携している、TikTok、Triller、Yubo、Venmo、Audiomackなどがリストに載っていた。

引用:Damir Becirovic氏のTwitterから

買収したスタートアップを機能に落とし込む能力

Snapchat Kitを含め、Snapchatのプロダクトを見ると多くの機能は買収したスタートアップからきた事がわかる。

  • 2億1300万ドルで買収したZenly→Snapchat Map
  • 1億6600万ドルで買収したAI Factory→Cameos
  • 1億5000万ドルで買収したLooksery→Lenses
  • 6500万ドルで買収したBitstrips→Bitmoji
  • 5000万ドルで買収したScanMe→Snapchat Code
  • 3000万ドルで買収したAddlive→Video Chat

今後もSnapchatの買収戦略、そしてプロダクトの広め方、Facebookとの優位性の付け方に注目するべきだろう。

引用記事
Snapchat will launch Bitmoji TV, a personalized cartoon show(TechCrunch)
What’s trending: Experts decode Gen Z(DIGDAY)
NO. 330: GEN Z ARBITRAGE(2PM)
The Era of Participatory Social(Medium)
The Sound of Silence(Posthaven)
Snapchat launches privacy-safe Snap Kit, the un-Facebook platform(TechCrunch)
Snapchat preempts clones, syndicates Stories to other apps(TechCrunch)
To stop copycats, Snapchat shares itself(TechCrunch)
Clubhouse voice chat leads a wave of spontaneous social apps(TechCrunch)

大量の「いいね!」とコメントでインスタを欺く「ポッド」との戦い

ニューヨーク大学(NYU)の研究チームは、Instagramのアルゴリズムを操って露出を高めるために「いいね!」やコメントを組織的に交換するInstagramユーザーグループ(中にはメンバーが数千人になるものもある)を何百個も特定した。さらに同チームは、その研究の一環として、Instagramの投稿にこの手法が使われているかどうかを判断する機械学習モデルのトレーニングも行った。

「ポッド」と呼ばれるこの手法によるアクティビティは、厳密には本物のエンゲージメントとはいえないが、かといって偽のエンゲージメントとも断定できないため、検知や対抗措置の実施が難しい。また、以前は危険度が比較的低いと考えられていたが(偽アカウントやボット使用の問題と比べれば今でも確かに低い)、現在はその規模も影響力も拡大している。

インターネットで検索するとポッドは簡単に見つかる。誰でも参加可能なポッドもある。ポッドの結成場所として最も広く利用されているのはTelegramである。おおむね安全で、チャンネル加入人数に制限がないためだ。ポッド参加メンバーがInstagramに投稿してそのリンクをポッドで共有すると、同じポッドに参加する他のメンバーが「いいね!」やコメントを付ける。すると、その投稿がInstagramの「おすすめ」選定アルゴリズムによって拡散される可能性がはるかに高くなり、オーガニックなエンゲージメントが促進される、という仕組みだ。

互酬性のサービス化

グループのメンバーがお互いの投稿に「いいね!」を付け合う行為は、互酬性の乱用と呼ばれる。ソーシャルネットワークの運用会社もその存在を十分認識しており、この手のアクティビティを削除したことがある。しかし、NYUのTandon School of Engieeringの研究チームによると、この手法が研究されたり詳細に定義されたりしたことはないという。

今回の研究論文の主執筆者であるRachel Greenstadt(レイチェル・グリーンシュタット)氏は、「Instagramはこれまで、他者へのログイン情報提供などの自動化による脅威やボット被害に重点を置いていたのだと思う。我々がポッドを研究したのは、ポッド問題の深刻さが増しており、他の問題に比べて対抗措置を講じるのが難しいためだ」と説明している。

規模が小さければそれほど大きな問題にはならないように感じられるが、同チームの研究ではポッドによって操作された投稿が約200万件、ポッドに参加しているユーザーが10万人以上見つかった。さらに、これは公開されているデータを使って閲覧できる英語表示の投稿のみを調査した結果である。この研究論文はThe World Wide Web Conferenceの発表論文集に掲載された(ここから閲覧可能だ)。

重要なのは、このような互酬的な「いいね!」の付け合いには、形だけのエンゲージメントを増やす以上の効果があるという点である。ポッドに参加している投稿には多数の「いいね!」やコメントが付いたが、これは作為的なエンゲージメントだった。しかしその結果、Instagramのアルゴリズムがだまされてそのような投稿を優先表示するようになり、ポッドに参加していない投稿のエンゲージメントでさえも大幅に増加したのだ。

コメントを求められたInstagramは当初、このような行為は「Instagramのポリシーに違反しており、阻止するために数多くの措置を講じている」と回答し、今回の研究はNYUの研究チームとInstagramの共同研究ではないと述べた。

しかし実際のところ、NYUの研究チームは今回の研究プロジェクトの初期段階からInstagramの不正防止担当チームと接触していた。さらにこの研究結果を見る限り、Instagramがどのような措置を講じているにしろ、少なくともポッド問題に関しては思うような効果が出ていないことは明らかだ。筆者はInstagramの担当者に対してこの点を指摘した。何らかの回答があったら、この記事に追記する予定だ。

ポッド使用は「グレーゾーン」

とはいえ、ポッド禁止に向けてすぐに行動を起こせばよい、というわけでもない。ポッドによるアクティビティは多くの点で、友達同士あるいは興味が似ているユーザー同士がお互いの投稿にリアクションを返すという、Instagramが本来の使い方として意図しているアクティビティと同じだからだ。さらに、ポッド使用が不正行為であると簡単に決めつけられるわけでもない。

グリーンシュタット氏は次のように述べている。「ポッド使用はグレーゾーンで、判断が難しい。Instagramユーザーもそう考えていると思う。どこまでが許容範囲なのか。例えば記事を書いてソーシャルメディアに投稿し、そのリンクを友だちに送ると、その友だちが投稿に『いいね!』を付けてくれる。友だちが記事を書いて投稿したら、今度は自分が同じことをする。これはポッド行為になるのか。お互いに『いいね!』を付けることが問題であるとは必ずしもいえない。コンテンツの拡散・非拡散を判断する上でそのようなアクションをアルゴリズムがどう処理するべきか、ということが問題だ」。

そのような行為を何千人ものユーザーを使って組織的に行い、(一部のポッドグループで行われているように)ポッド参加メンバーに課金まですれば、明らかに不正行為になる。しかし、この線引きは簡単ではない。

それよりも肝心なのは、何をもってポッド行為とするかを定義しなければ線引きすらできない、という点である。今回の研究では、ポッド投稿と通常投稿の「いいね!」とコメントのパターンに見られる違いを精査することにより、ポッド行為の定義が行われた。

「ポッド投稿と通常投稿では、言葉の選択とタイミングのパターンに特徴の違いが見られる」と共同執筆者のJanith Weerasinghe(ジャニス・ウィーラシンゲ)氏は説明している。

容易に想像できることがだが、あまり興味のない投稿にコメントするよう強制されたユーザーは、内容に踏み込んだコメントはせず、「いい写真」とか「すごい」といった一般的な言葉でコメントする傾向がある。ヴィーラシンゲ氏によると、そのようなコメントを禁止しているポッドグループもあるにはあるが、多くはないとのことである。

ポッド投稿で使用される言葉の一覧を見ると、予想通り、フォロワーが多い投稿のコメント欄でよく目にする言葉ばかりだ。とはいえ、このことはInstagramのコメント欄では何といっても全般的に表現の幅が限られることを証明しているのかもしれない。

ポッドで多用される言葉

しかし、何千件ものポッド投稿と通常投稿を統計的に分析した結果、ポッド投稿では「一般的な表現を使った支持」コメントの割合が圧倒的に高く、しばしば予測可能なパターンで出現していることがわかった。

さらに、この分析データを基に機械学習モデルのトレーニングを行い、初見の投稿の中から最高90%の高精度でポッド投稿を特定することに成功した。この方法を使えば次々とポッドを発見できるかもしれないが、それらは氷山の一角にすぎないことを忘れてはならない。

グリーンシュタット氏は「今回の研究期間に、アクセスと発見が容易なポッドをかなりの数、特定できた。しかし今回、ポッド全体の大半を占め、小規模ながら高い利益を生み出してしているポッドを特定することができなかった。そのようなポッドには、ソーシャルメディアにおいて既にある程度の露出実績があるユーザー、つまりインフルエンサーでないと参加できないためだ。我々はインフルエンサーではないため、そのようなポッドに実際に参加して調査することはできなかった」と説明している。

ポッドと、ポッドによって操作された投稿の数はここ2年間で着実に増加している。2017年3月には7000件のポッド投稿が発見されたが、1年後には5万5000件近くまで急増した。2019年3月には10万件を超え、その数は今回の研究データの収集が終わる時点でも増え続けていた。現在、ポッドによる投稿は1日あたり4000回を超えているといっても過言ではなく、それぞれの投稿が、作為的にもオーガニックにも膨大な数のエンゲージメントを獲得している。現在、1つのポッドの参加メンバー数は平均900人で、中には1万人を超える参加メンバーを抱えるポッドもある。

「数人の研究者が、公開されているAPIとGoogleを使ってこのような発見をできたのであれば、なぜInstagramは今まで気づかなかったのか」と思う読者もいるかもしれない。

先ほども触れたが、Instagramは単にポッドを大きな脅威として認識していなかったために、それを阻止するポリシーやツールの開発を進めてこなかっただけなのかもしれない。「偽の『いいね!』、フォロー、コメントを生成するサードパーティ製のアプリやサービス」の使用を禁止するというInstagramのルールがこのようなポッドには適用されないことはほぼ確実だ。なぜならポッド行為は多くの点で、ユーザー間のまったく正当なやり取りと同じだからだ(ただし、Instagramはポッドがルール違反であると明言している)。また、偽アカウントやボットの方がはるかに大きい脅威であることも確かである。

さらに、ポッドが国家による意図的な虚偽情報拡散やその他の政治的な目的で利用される可能性もあることにはあるが、今回の研究中にその種のアクティビティは(それを具体的に探すことはしなかったが)発見されなかった。そのため、現在のところポッドの危険度は依然として比較的低いといえる。

とはいえ、ポッド行為の定義と検知に役立つデータをInstagramが持っていることは明らかであり、そのデータに基づいてポリシーやアルゴリズムを変更することも可能なはずだ。NYUの研究者たちは喜んで協力するだろう。

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Category:ネットサービス

Tags:Instagram 機械学習 SNS

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(翻訳:Dragonfly)