有名企業も利用する検索APIスタートアップAlgoliaがユニコーンの仲間入り

Algoliaが資金調達後の評価額22億5000万ドル(約2479億5000万円)のシリーズDで1億5000万ドル(約165億3000万円)を調達した。2019年10月のシリーズCと比較すると、評価額は4倍以上だ。これで同社は評価額が10億ドル(約1100億円)を超えるユニコーンとなった。

AlgoliaはSearch-as-a-Service製品で知られている。この製品を使うと、開発者フレンドリーなAPIでアプリやウェブサイトにリアルタイム検索を統合できる。Algoliaを利用した検索機能は、MacでSpotlightを使っているような感覚だ。文字を入力するにつれて検索結果が読み込まれ、ほんの数ミリ秒で表示される。

同社の顧客は1万社を超え、その中にはSlack、Stripe、Medium、Zendesk、Lacosteなどの有名企業もある。現在Algoliaは年間1兆5000億件の検索クエリを処理している。ゼロの並びで見たい人のために書いておくと「1,500,000,000,000件」だ。

今回の資金調達ラウンドはLone Pine Capitalが主導し、Fidelity Management & Research Company LLC、STEADFAST Capital Ventures、Glynn Capital、Twilioも参加した。他に、これまでに投資していたAccel、Salesforce Ventures、DAG、Owl Rock、World Innovation Labも追加で支援した。

Algoliaは売上の数字を公表していないが、年間経常収益は前年比180%で成長しているという。

AlgoliaのCEOであるBernadette Nixon(バーナデット・ニクソン)氏は発表の中で次のように述べている。「これからはAPIファーストの時代です。このことはAPIエコノミーにおけるTwilio、Stripe、Algoliaなどの成長を見れば明らかです。我々のこれまでの、そして今後も続く成功は、PLG(Product-Led Growth)戦略で開発者にしっかりと集中していることが大きな要因です。これにより開発者はWebサイトやアプリに検索を組み込み、最も関連性が高くダイナミックなデジタルエクスペリエンスを創出できます。我々は今後もAlgolia Recommend and Predict(おすすめと予測)で検索を超えてさらに拡大し、熱意を持ってお客様の問題を解決していきます」。

Algoliaは検索APIだけでなく他にもリアルタイムのAPIを提供している。例えばeコマースサイトでAlgolia Recommendを利用するとリアルタイムでおすすめ製品を提示できる。これは同社が製品を多角化しようとする戦略の一環だ。

特に同社は、訪問者の意図を分析して何かを買おうとしているかどうか予測しようとしている。企業はその情報を利用してコンテンツを動的に更新し、プッシュ通知を送り、キャンペーンを表示できる。

フランスで創業したAlgoliaはここ数年で目覚ましく成長し、現在は大企業に特化して堅実に経営している。2020年には共同創業者のNicolas Dessaigne(ニコラ・デセーニュ)氏がCEOを退いて取締役になった

同社はここ1年半で多くの経営陣を迎え入れている。元Dropboxで最高収益責任者のMichelle Adams(ミシェル・アダムス)氏、元Alfrescoで最高財務責任者のCarlton Baab(カールトン・バーブ)氏、元Capgeminiで最高事業開発責任者のPiyush Patel(ピヤシュ・パテル)氏、元Alteryxで最高顧客責任者のJim Schattin(ジム・シャティン)氏、元SalesforceおよびAdobeで最高マーケティング責任者のJason McClelland(ジェイソン・マクレランド)氏、元Twilioで最高製品責任者のBharat Guruprakash(バーラット・グルプラカシュ)氏だ。

ご覧の通り才能あふれる人物揃いで、Algoliaはクールなテクノロジーを開発して買収を目指すのではなく息の長い企業になろうとしていることがうかがえる。この先IPOの話を聞いても驚きではないだろう。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Algolia検索APIユニコーン企業資金調達

画像クレジット:Algolia

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(文:Romain Dillet、翻訳:Kaori Koyama)

【コラム】SEO担当者はGoogleアルゴリズムアップデートに慌てる必要はない

編集部 注:本稿の著者Eli Schwartz(イーライ・シュワルツ)氏は、10年以上にわたりB2BおよびB2Cの大手企業で働いてきた経験を持つ、SEOの専門家でありコンサルタント。

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Googleのアルゴリズムアップデートの噂が流れるたびに、SEOコミュニティは大パニックに陥る。皆数字が分析されるまで息をひそめ、アルゴリズム・アップデートを(願わくば)無傷で乗り切ったときには、安堵のため息がもれる。

アップデートが公開され、特にGoogleによる承認があった場合には、Googleが何を変えたのか、新しいパラダイムで勝つにはどうすればいいのかを分析しようとする記事や専門家の分析が相次ぐ。

私はこの悩みはまったくの杞憂だと思う。

Googleアルゴリズムは、あたかも研究室で作られたようなある種の神秘的な秘密のレシピであり、不思議な全知の魔法使いの気まぐれでサイトを盗んだり、サイトに報酬を与えたりするかのように思われている。この時代遅れのスキーマにおけるすべてのSEOとウェブマスターの目標は、この魔法使いを騙して、すべてのアップデートの勝者になることだ。

この考えは、Googleアルゴリズムのアップデートで何が起こるのかに関する根本的な誤解、そしてGoogleに対する根本的な誤解に根ざしている。実際のところ、アルゴリズムは私たちの敵ではない。アルゴリズムは、より良い、より正確なユーザーエクスペリエンスを実現するために設計されているのだ。ここでは、アルゴリズムとの関係を再構築するためのいくつかの視点を紹介する。

Googleは力になろうとしているだけ

まず確認したいのは、Googleは、あくまでも手助けをしようとしているということだ。Googleは、検索する人に快適で高品質なユーザー体験を提供したいと考えている。それ以上でもそれ以下でもない。Googleは魔法使いではないし、そのシステムは恣意的にサイトを奪ったり、報酬を与えたりするためのものでもない。

それを念頭に置いて続けたい。

Googleのアルゴリズムは、大規模で複雑なソフトウェアプログラムであり、実際のシナリオに基づいて常に更新される必要がある。そうしないと、まったくの恣意的なものになってしまうからだ。ソフトウェアのバグが報告されて修正されるように、検索エンジンは何が機能していないかを発見し、解決策を生み出さなければならない。

Googleのアップデートは、他のソフトウェア企業と同様に、自社の製品やサービスを大きく飛躍させるものだ。ただし、Googleの場合は、単なる製品アップデートではなく「メジャーアルゴリズムアップデート」と呼ばれている。

これで、Googleのアルゴリズムアップデートとは何かという知識が身についたことだろう。慌てる必要がないというのはありがたいことではないだろうか?

検索トラフィックが減少しても、必ずしも不利になるとは限らない

大規模なアルゴリズムアップデート後にサイトの検索トラフィックが減少したとしても、それがサイト全体を対象としたものであることはほとんどない。通常、1つのURL群の検索順位が下がっても、他のページは改善されていることが多いようだ。

改善されたページを確認するには、Google Search Consoleを深く掘り下げて、どのURLでトラフィックが減少し、どのURLで増加したかを調べる必要がある。アップデート後にサイトが急激に落ち込むことは確かにあるが、それは通常、そのサイトで勝者よりも敗者が多かったためだ。

トラフィックが減少したとしても、それはアルゴリズムがサイトを懲らしめたからではないことは間違いない。

多くの場合、実際のトラフィックは減少しておらず、クリックに結びついていないインプレッションが減少しただけの可能性がある。最近のアップデートで、Googleは強調スニペットを掲載していたサイトの検索結果を削除した。その結果、インプレッション数は大幅に減少したが、クリック数はほとんど変わらなかった。アップデート後にサイトが勝った、あるいは負けたと決めつけるのではなく、詳細なデータを集めて研究し、より明確な情報を得るようにしたい。

Googleを見習い、優れたユーザー体験を重視する

ユーザーへの高品質ですばらしい体験の提供に注力しているウェブサイトは、アルゴリズムのアップデートを恐れる必要はない。むしろ、アップデートは優れた結果を出すために必要な原動力となることもある。怖がる必要があるのは、ユーザー体験の質が低いために、そもそも検索で上位に表示されるべきではなかったウェブサイトだけだ。

ウェブサイトがユーザーに優れた体験を提供しているのであれば、アップデートによって質の低いサイトが淘汰されるため、アップデートが実際に味方に付いてくれる可能性が高い。

ユーザー体験の質を重視していれば、アルゴリズムの更新でトラフィックが減少するページもあるだろうが、ほとんどの場合、全体としてトラフィックが増加するのが普通だ。何が変化したのかという詳細なデータを調べれば、ウェブサイトはアルゴリズムの更新によって苦境に陥ったり、影響を受けたりすることもなく、特定のURLだけが影響を受けるという見解が裏付けられるだろう。

アップデートは検索エンジンにとっての現実

Googleはアルゴリズムを継続的に更新していくであろうし、そうするべきだ。Googleの一番の目的は、ユーザーを満足させ、維持し続けることができる進化したプロダクトを提供することなのだ。

Googleがアルゴリズムを放置すれば、抜け道を利用したスパマーに蹂躙されるリスクがあることを考えてみて欲しい。スパム的な検索結果を多く提供する検索機能は、AOL、Excite、Yahoo、その他の検索エンジンのように、機能的にもはや存在しないものとなってしまうだろう。Googleは、アルゴリズムを更新することで、関連性を維持しているのだ。

アップデートは検索という行為の一部なのだ。

アルゴリズムではなく、ユーザーを追いかける

オーガニック検索に依存しているすべてのウェブサイトは、必ず変化するアルゴリズムを追いかけるのではなく、もっと重要なところ、つまりユーザー体験に焦点を当てるべきだと私は考える。

ユーザーは、結局のところ検索における顧客だ。サイトがユーザーに貢献していれば、検索体験を保護するために設計されたアルゴリズムの更新に対する免疫がつくだろう。アルゴリズムにおける魔法使いは存在しない。存在するのは、サイトに最適なプロセス、手順、行動を適用する方法を見出したSEOマスターだけだ。

アルゴリズムやアップデートの目的はただ1つ、ユーザーが求めるものを正確に見つけられるようにすることだけだ。サイトがユーザーの役に立っていれば、何も恐れることはない。

【編集部注】この記事は「Product-Led SEO:The Why Behind Building Your Organic Growth Strategy」(製品中心のSEO オーガニック検索における成長戦略を築く際の根拠)からの抜粋となる。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:GoogleSEO検索Google検索アルゴリズム検索エンジンコラム

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(文:Eli Schwartz、翻訳:Dragonfly)

グーグルがEUの圧力を受けAndroid検索エンジンの選択画面オークションを廃止、無料化へ

Google(グーグル)は、欧州連合(EU)で同社が提供する選択画面の基盤となっている、極めて不評なオークション形式を廃止することを明らかにした。これにより適格な検索プロバイダーが無料で参加できるようになる。

このオークションモデルはGoogleが選んだ「是正措置」だった。2018年にEUからAndroid運用に対する反トラスト法の施行で50億ドル(約5500億円)の制裁金を科されたことを受けたものだ。だがTechCrunchが以前報じたように、競合他社はこのモデルはフェアではないと一貫して主張してきた(記事はこちらこちらこちら)。

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Androidの選択画面は、デバイスのセットアップ時(またはファクトリーリセット時)に、デフォルトとする検索エンジンの選択候補を域内のユーザーに提示する。選択肢のうち3つの枠は、いずれかを獲得するためにGoogleへの支払額を競う検索エンジン各社の非公開入札内容に応じて決まる。

Google自身の検索エンジンは、EU市場かどうかに関わらず、選択画面で定番の「選択肢」として存在している。

Googleが考案したこの有料モデルは、小規模な検索エンジン企業(Ecosiaの植林検索エンジンのような代替ビジネスモデルを持つ企業を含む)からひどく嫌われているだけでなく、検索市場シェアにおける競争上のバランスを取り戻す上でまったく効果がなかったことから、Googleがそれを断念せざるを得なかったことは驚くにあたらない。

欧州委員会は変化の兆しを見せており、Bloombergは2021年5月に、EUの競争担当チーフであるMargrethe Vestager(マルグレーテ・ベスタガー)氏が、GoogleによるAndroid上の検索とブラウザの競合他社向け選択画面を有効的に機能させるために「積極的に取り組んでいる」と発言したことを報じていた。つまり、明らかに「ファウル」や「機能していないんだ」という繰り返しの叫び声を聞いたのだろう。そして、ようやく行動に移したのだ。

しかしGoogleは、自らの物語を組み立てる枠組みの中で、EU議会との「建設的な議論」を何年も前から続けている、と記している。その内容としては、同社が表現するところでは「当社がAndroidプラットフォームへの投資と提供を無償で長期的に継続できることを確保しつつ、Androidデバイスの選択肢をさらに増やす方法」についてだという。

それはまた、EUに多少の疑念や非難を投げかけようとしているようにも見える。EUが「促進の機会」(滑稽に聞こえる)と呼ぶものを「委員会と協議して」導入しただけだと言っているのだ。(つまり「政府よ、私たちを責めないで、彼らを責めてくれ」ということだ)

Googleはブログの別の箇所で具体的に「欧州委員会からのさらなるフィードバック」を受けて「いくつかの最終的な変更」を加えていると述べており、その中で「適格な検索プロバイダー」の無料参加について言及している。

「画面に表示される検索プロバイダーの数も増やします。この変更は2021年の9月からAndroidデバイスに適用されます」と同社は付言している。

計画された変更は、適格性を判断するためにどのような基準を使用するかなど、新たな疑問を提起している。Googleの基準は透明になるのだろうか、それとも問題を抱えたオークションのように外部から見えないようにするのだろうか?また、ユーザーに提供される検索エンジンの数はどのくらいになるのだろうか。現在の4つよりも多いことは明らかではあるが。

Google自身の検索エンジンがリストのどこに表示されるのか、またすべてのオプションをランク付けする基準(市場シェアは?無作為割り付けか?)も興味深い。

Googleのブログではそのような詳細について部分的に伏されているが、TechCrunchが欧州委員会に問い合わせたところ、かなりの情報が得られた(後述のコメントを参照)。

完全な実装になった時点で、どこか邪悪でダークなパターン設計の詳細が現れるかどうかはまだわからない。

【更新】選択画面の仕組みの詳細はここで見ることができる。この中にはGoogleが垂直検索エンジンは参加できないとしている適格基準の詳細も含まれている。一般的な検索エンジンのみ選択画面への参加が可能のようだ。また、同一企業が所有する複数の検索ブランドを除外し、1つの検索ブランドだけを表示できるようにする。Googleの検索結果と広告をシンジケートしている企業も対象外となった。

これらの変更が「最終的」であると主張することは、Googleの特権ではないことは注目に値する。EUの規制当局は反トラスト法の順守状況を監視する責任があるため、新たな苦情が流れてきた場合には、監視して対応する義務がある。

GoogleのオークションUターンに対して、プライバシー重視の検索エンジンDuckDuckGoはすでに批判的だった。ただし具体的な内容よりは範囲の方が重要だった。

創設者のGabriel Weinberg(ガブリエル・ワインバーグ)氏は、切り替えが3年遅れたことだけでなく、Googleはすべてのプラットフォーム(デスクトップとChromeも)にこれを適用し、設定やファクトリーリセットのために選択画面を切り替えるのではなく、Androidユーザーがデフォルトをシームレスに簡単に切り替えられるようにするべきだということも指摘している(以前報じたとおりである)。

オークションモデルを長らく批判してきた小さな非営利団体Ecosiaは、検索の巨人との戦いがついに実を結んだことを喜んだ。

CEOのChristian Kroll(クリスチャン・クロール)氏は声明文の中でこう述べている。「これはダビデ対ゴリアテの実話とも言えます。ダビデは勝利しました。重要な日であり、Ecosiaにとってまさに祝福の瞬間です。私たちは数年前から検索エンジン市場の公平性を求めてキャンペーンを展開してきましたが、その結果、市場の公平な競争条件に近いものを得ました。今や検索プロバイダーは、独占的な行動に閉め出されるのではなく、自社製品の魅力に基づいて、Android市場でより公正に競争するチャンスを手にしたのです」。

一方、欧州委員会はTechCrunchに対して、多くの競合他社がオークションモデルに懸念を示した後に行動したことを認めている。広報担当者は「そうした懸念に対処するために、選択画面を改善する手段についてGoogleと話し合いを持ちました」と語った。

「選択画面にGoogleが導入した変更を歓迎します。選択画面への追加は、競合他社の検索プロバイダーに対して無料で提供されます」と広報担当者は続けた。「さらに、選択画面には、より多くの検索プロバイダーが表示されることになります。そのため、ユーザーは選択肢の幅を広げることができます」。

欧州委員会はまた、選択画面のプルダウン表示の詳細を少し明らかにし「ほぼすべてのデバイスで、5つの検索プロバイダーが即座に視認できるようになる」と述べた。

「ユーザーの国における市場シェアに基づいて選択され、ランダムな順序で表示されるので、Googleが常に最初に表示されるわけではありません。ユーザーは下にスクロールすると、さらに7つまでの検索プロバイダーを見ることができ、選択画面に表示される検索プロバイダーの総数は12になります」。

「今回の措置は、我々のAndroidに関する裁定に沿った改善策の実施に向けた前向きな動きです」と広報担当者は付け加えた。

同委員会の働きかけによって、これまでよりもはるかに拡大され、よりオープンになった選択画面が、Googleの検索エンジン市場シェアにおける地域のニーズを動かすのに役立つかどうを見るのは、極めて興味深いことだ。

実に興味をかき立てる時期に来ている。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:GoogleEU検索Google検索オークションAndroid欧州委員会

画像クレジット:Natasha Lomas / TechCrunch

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

欧州のAndroidの「選択画面」はより優れた選択肢を隠し続ける

2018年に欧州委員会によって下された反トラスト法違反の重い制裁を受けて、Google(グーグル)が欧州のAndroid(アンドロイド)で検索エンジンの「選択画面」の枠をオークションにかけ始めてから1年以上が過ぎた。しかし、2年以上前にGoogleに記録的な罰金を科したにもかかわらず、ほとんど何も変わっていない。

Googleの検索エンジン市場でのシェアは依然として低下しておらず、EUでは高い関心を集める代替の検索エンジンがGoogleが考案した「是正処置」によって値付けされている。この是正処置は、GoogleのAndroid OSを搭載したスマートフォン上で、最も多くの費用を支払える検索エンジンを優先し、支配的なGoogle自身の代替手段として掲載するというものだ。

四半期ごとの選択画面の勝者は、ますます変わらなくなってきている。Googleの代替検索エンジンは、またすぐに見栄えのしない「勝者」たちが列挙されるだろう。

2021年第1四半期の結果は、スマートフォンユーザーのほとんどが聞いたことがないであろう広告ターゲティングの検索エンジンオプションの一団で占められていた。ドイツの「GMX(ジーエムエックス)」、カリフォルニアを拠点とする「info.com(インフォ・ドット・コム)」、プエルトリコの「PrivacyWall(プライバシーウォール)」(ウェブサイトに「100%プログラマティック広告」というスローガンを掲げている会社が所有している)に加えて、もう1つは名の知れたアドテック大手の検索エンジンMicrosoft(マイクロソフト)の「Bing(ビング)」だ(*記事執筆時。現在は2021年第2四半期の結果が掲載されている)。

リストの下方では、ロシアの「Google」にあたるYandex(ヤンデックス)が8つの枠を獲得した。また、チェコの検索市場の古参Seznam(セズナム)は2つの枠だ。

大敗となったのは、トラッキング防止機能を備えた検索エンジン「DuckDuckGo(ダックダックゴー」だ。同社は、10年以上にわたってオンラインでのプライバシーを擁護してきたが、獲得枠は1つ(ベルギー)のみとなった。オークション開始時にすべての国でまんべんなく枠を獲得していたのとは対照的に、ほぼ完全に締め出されてしまった。

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広告収入のすべてを植樹活動に寄付する非営利団体の検索エンジンEcosia(エコシア)は、今回もほとんど出てこない。スロベニアのAndroidユーザーの画面に表示される1枠のみだ。しかし、エコシアは12月にiOS(アイ・オーエス)、iPadOS(アイパッド・オーエス)、macOS(マック・オーエス)のSafari(サファリ)にデフォルトの検索オプションとして追加され、世界中で1500万人以上のユーザーに利用されるようになった。

一方、プライバシー保護に焦点を当てた欧州産の検索オプションであるフランスの「Qwant(クワント)」は、わずか1枠にとどまった。それも、自国の市場ではなく非常に小さな国、ルクセンブルクだ。

もし欧州の規制当局が、自ら指摘した重大な反トラスト法違反を受けてGoogle自身が考案した「是正処置」によって、Android検索市場に健全な競争が自然に取り戻せるとでも思っているのなら、ほぞを噛むことになるだろう。Googleの検索市場でのシェアは、へこむどころか、かすりもしていないというのが純然たる事実だ。

Googleは、iPhoneのデフォルトに同社の検索エンジンを設定するために、Appleに毎年数十億ドル(数千億円)を支払っているが、Statista(スタティスタ)のデータによると、2021年2月の欧州におけるAndroidとiOSを合せたモバイル検索市場でのGoogleのシェアは97.07%であり、欧州委員会が反トラストの裁定を下した2018年7月の96.92%から上昇している。

そう、実際にはGoogleは、この「是正処置」を実施してシェアを伸ばしているのだ。

これはどう見ても、EUの競争法執行の壮大な失敗だ。大きなニュースとなったAndroidに対する反トラスト判決から2年半以上経ってご覧の有様だ。

欧州委員会はまた、Googleがこのオークションを行っている間、欧州がテクノロジーの主権を握ることを目標に掲げ推進してきた。Ursula von der Leyen(ウルズラ・フォン・デア・ライエン)欧州委員会委員長は、この包括的な目標を自身のデジタル政策プログラムに結び付けている。

テクノロジーの主権という施策においても、Androidの選択画面は大きな失敗と言わざるを得ない。2020年、検索エンジン付きブラウザーの事業から完全に撤退したCliqz(クリックス)が、その責任の一端は、欧州独自のデジタルインフラを所有する必要性を理解できなかったEUの政治関係者にあるとしているように、Googleに代わる(ほとんどの)欧州産の検索エンジンの助けになっていない。それどころか、最も関心を集め、Googleの代替となるべき欧州の検索エンジンを積極的に埋没させ、広告から資金を得ているGoogleクローンの一群との競争を強いている。

(もしBrave Searchが軌道に乗れば、欧州産でない新たな代替検索エンジンとなる。欧州発の専門知識やテクノロジーの恩恵を受けたものではあるが……)

これは、オークションの仕組み上、Googleに最も多くの費用を支払った企業だけが、Androidのデフォルトオプションとして設定されるチャンスを得られるからだ。

稀に欧州の企業が大枚をはたいて選択リストに掲載されることがあっても(これは検索クリックごとにコストがかかることを意味するようだ)、ほとんどの場合、他の欧州以外の選択肢やGoogleと一緒に掲載されることになり、晴れて選択されるまでのハードルはさらに高くなっている。

このような方法を取る必要はないはずだ。実際Googleは当初、市場シェアに基づいた選択画面を設けていた。

しかし、Googleはすぐに「載りたければ金を払え」モデルに切り替え、ユーザーのデータを追跡しない(または、純粋に環境保護を目的とし広告収入を植林に充て、利益を追求しないエコシアなど)代替検索エンジンの見つけやすさを一気に低下させてしまった。

このような代替検索エンジンの企業のほとんどは、Googleの選択画面オークションに勝つ余裕がないという(このゲームに参加する企業は、GoogleとのNDA締結が必要なため、発言に制限があることも注目すべきだ)。

Googleのオークションの落札者が、Google自身のビジネスの土台である行動ターゲティングモデルにほぼ偏っているのは、明らかに偶然ではない。あらゆるデータ追跡型のビジネスモデルが集結している。そして、消費者の観点からすると、人為的に限定されたGoogleの劣化バージョンしか含まない貧弱な「選択肢」の中からGoogleを選ばない理由があるだろうか。

エコシアがTechCrunchに語ったところによると、同社は現在、オークションプロセスから完全に撤退することを検討しているという。これは、参加するべきと考える前にオークションをボイコットするという、最初の直感に立ち返ることになる。Googleの「載りたけりゃ金を払え」スタイルの「no choice(選択不可)」(と、エコシアはオークションのことを呼んでいる)ゲームを数カ月間プレイしたことで、このシステムは、真正直な検索エンジンプロバイダーには勝ち目がないという見解を固めた。

過去2回のオークションで、エコシアは毎回1つの枠しか獲得できなかったが、ユーザー数には何の好影響も見られなかったという。完全に撤退するかどうかは、次のオークションプロセスの結果が明らかになった後に決定される。(そのオークションの結果は、3月8日に発表され、エコシアは今回も1枠となっている)。

「結局、このゲームをプレイするのが『面白くない』ことに気づいた」とエコシアの創業者であるChristian Kroll(クリスチャン・クロール)氏は語る。「このゲームは非常に不公平で、『ダビデ対ゴリアテ』というだけでなく、ゴリアテがルールを選び、アイテムを手に入れ、望めば途中でルールを変えることさえできる。だから、参加してもおもしろいことは何もない」。

「参加して9ヵ月になるが、欧州の市場全体のシェアを見ると、何も変わっていない。今回のラウンドの結果はまだわからないが、何も変わらないと思っている。いつものお仲間がまた掲載されるだろう……今掲載されている選択肢のほとんどは、ユーザーにとって興味深いものではないが」。

「興味を引く選択肢をすべて画面から消してしまって『選択』画面と呼ぶのは、何とも皮肉なものだ。だから、状況は変わらず、ゲームをするのがますますつまらなくなり、ある時点で、もうこのゲームは止めるという決断を下すことになるかもしれない」と同氏は付け加えた。

TechCrunchが話を聞いた他の代替検索エンジンは、今のところ参加を継続する予定だが、いずれもAndroidの「選択画面」でGoogleが「載りたけりゃ金を払え」モデルを採用していることに批判的だ。

ダックダックゴーの創設者であるGabriel Weinberg(ガブリエル・ワインバーグ)氏は「我々は入札に参加しているが、それはGoogleの出来レースがどれほど酷いものかを欧州委員会の前にさらけ出すためであり、消費者にとって本当に役立つものへと正すために、欧州委員会がより積極的に使命を果たすことを期待している。当社の厳格なプライバシーポリシーのため、前回と同様に排除されると予想している」と述べている。

同氏は、同社が2020年秋に掲載した「根本的に欠陥のある」オークションモデルを公然と非難するブログ記事を紹介し「記事全体はまだ有効だ」と述べている。このブログ記事で同社は、2014年から利益を上げているにもかかわらず「ユーザーからの搾取で利益の最大化を図るという選択肢はなかったため、今回のオークションでは落札に至らなかった」と書いている。

「実際のところ、プライバシーの保護とクリーンな検索エクスペリエンスという当社のコミットメントは、検索1件あたりの収益が少なくなることを意味する。つまり、利益の最大化を狙う他の企業と比較して、より少ない金額で入札しなければならないということだ」とダックダックゴーは続ける。「このEUの反トラスト法に対する是正処置は、消費者が使いたいと思う代替検索エンジンを排除し、掲載される検索エンジンからは、設定メニューで得た利益の大半を奪うことで、モバイル検索におけるGoogleの優位性をさらに強化することにしかならない」と述べている。

「このオークションの形式は、ユーザーの選択ごとに期待される利益を入札価格として入札するという動機を与える。長期的に見ると、選択されたGoogleの代替検索エンジンは、設定メニューから得た利益のほとんどをGoogleに渡さなければならない。Googleのオークションは、検索エンジンプロバイダーがプライバシーを軽視したり、広告を増やしたり、善意の寄付をしなかったりする動機を与えているが、それはそうすることで、より高い価格で入札する資金が得られるからだ」とも述べている。

フランスのクワントも同様に批判的であり、オークションに対して「極めて不満」と述べ「早急な修正」を求めている。また、2018年の欧州委員会の決定を「文面においても、その精神においても」完全に尊重すべきだとしている。

CEOのJean-Claude Ghinozzi(ジャン・クロード・ギノッジ)氏は「当社は、オークションシステムに極めて不満を持っている。Googleに最も費用を払っている3つの選択肢だけでなく、消費者が自分の使いたい検索エンジンを見つけられるように、選択画面の早急な修正を求めている。2018年の決定を、文面でも精神面でも完全に尊重することを要求する」と語る。

「当社はあらゆる選択肢を検討し、四半期ごとに決定を再評価している。いかなる場合でも、Googleが提供するたった3つの代替選択肢に限られることなく、消費者が好みの検索エンジンを自由に選択できるようにしたいと考えている。消費者の利益は常に最優先されなければならない」と付け加える。

ロシアのヤンデックスは、第2四半期のオークションへ参加することを明言した。しかし、Googleの処置について、Androidユーザーに真の「選択の自由」を提供するには至っていないと批判する。

「当社は、高品質で便利な検索エンジンを世界中に提供することを目指している。検索エンジンの選択の自由は、活発な市場競争につながり、各社のサービス向上へのモチベーションを高めると確信している。現在のEUの解決策は、2020年3月以降に発売される端末のみを対象としており、ユーザーの選択の自由を完全に保証するものではないと考えている」とヤンデックス社の広報担当者はいう。

「そのようなデバイスは、現在のEU市場でユーザーが手にしているデバイスの総数に比べて、非常に少ない。正当で実質的な選択の自由を提供することが不可欠だ。サービスプロバイダー間の競争は、最終的には、より良い製品を受け取るユーザーに利益をもたらす」

検索分野に新たに参入したトラッキング防止機能付きブラウザーのBrave(ブレイブ、前述のとおり、ブレイブはクリックスの資産を買収し、近く公開される自社ブランドであるブレイブサーチを立ち上げようとしている)は、オークションに参加することはまったく考えていないことを明らかにした。

「ブレイブは、このオークションに参加する予定はない。当社はユーザーを第一に考えているが、この入札プロセスは、ユーザーの選択肢を狭め、Google Play(グーグルプレイ)ストアの最適化に最も有効な入札者のみを選択し、ユーザーへ最大の利益を提供することを無視している」と同社の広報担当者は述べている。

そして「皮肉なことに、Googleは、ChromeとAndroidを結びつけた反競争的な行為で有罪となったことを受けた自らの是正処置で利益を得ている」と付け加えた。

Androidの選択画面に参加せずにEUでブレイブサーチのシェアを拡大するための戦略について尋ねられた広報担当者は「ブレイブはすでに欧州市場向けにブラウザーをローカライズしている。マーケティングキャンペーンや推薦プログラムで紹介されているクラス最高のプライバシーを提供することで、今後も成長を続けて行く」と述べている。

Googleが自ら策定した「是正処置」は、2018年に欧州委員会が下した反トラスト法上の裁定、つまり記録的な50億ドル(約5480億円)の制裁金と、さまざまな侵害行為の停止命令に対処したものだ。EUの反トラスト規制当局は、現在も同社の実施状況を監視し続けている。しかしクロール氏は、欧州委員会はGoogleに対し、指摘した不正行為を修正させるのではなく、実質的には時間稼ぎをさせているだけだと主張する。

「現時点での見方だが、欧州委員会は、選択画面のオークションは必ずしも是正処置として要求したものではないため、Googleに変更を強制することはできないと考えており、それが自分たちの責任と捉えていない理由かもしれない」と同氏は言い「しかし、同時に、欧州委員会はGoogleに状況を解決するよう要求し、それに対しGoogleは何もしていない」と付け加える。

「欧州委員会はまた、Googleがマスコミやユーザーから信望を得る隙を与えていると思う。Googleが何か対処しているように見えるため、Googleが好きなように動くことを許している【略】本当の選択画面が良い解決策になるかどうかはわからないが、それを決めるのは私ではない。Googleが代替検索エンジンの損害をうまく修復したかどうか【略】また、これまでに与えた損害をいくらかでも補償したかどうかを決めるのは欧州委員会だが、それが成されているようには見えない。[マーケットシェア]の数字を見れば、基本的にはまだ同じ状況が続いていることがわかる」。

さらに同氏はGoogleの現在の「是正処置」についても「全体的に、人気のある選択肢を画面から排除するように設計されている」と主張し「それがオークションの仕組みだ。もちろん、誰もそこに踏み込もうとしないことに失望している。つまり、基本的にGoogleの競合他社同士で殴り合うという不公平なゲームに参加している。どこかの規制当局が介入して、これではダメだと言ってくれることを期待しているが、そうはならない」と述べる。

「今のところ、当社の唯一の選択肢はそこに留まることだが、もし本当に効果がなく、規制当局が介入する可能性もないと判断すれば、完全に撤退して私たち抜きでGoogleに楽しんでもらうという選択肢もある。[現在のオークションモデル]からは何も得られないだけでなく、当然ながらそこに投資もしている。また、NDAを締結しているために制限もあり、その制限さえもちょっとした苦痛だ。つまり、弊害ばかりがあり、何の利益も得ていない」。

NDAによってオークション参加にともなうコストについて話すことは制限されているが、クロール氏は、収益を犠牲にしてリーチを追求しているため、落札者は損をしていると示唆する。

「前回の入札を見てみると、この入札では当社が利益を得ることは難しく、他社も損をするのではないだろうか。これはまさに、勝者がしばしば損をするという、このオークション、というよりむしろほとんどのオークションの作られ方だ。つまり、落札者が過剰な値段を付けるという『勝者の呪い』そのものだ」。

同氏は「当社は非常に慎重に入札したので、損をするというようなことにはなっていない。前回幸運にもスロベニアの枠を落札した。スロベニアは美しい国だが、やはり当社の収益には影響しないし、この落札は予想もしていなかった。これは、基本的にゲームに参加するためのものだが、財務上のリスクはない」とし「当社が落札できることはまずないだろうと思っていたため、[現在オークションに参加しているものの、ほとんどが落札できないエコシアにとっての]財務リスクはそれほど大きくないが、実際に落札した他社にとっては話は異なるかもしれない」と付け加える。

クロール氏は、このオークションモデルによって、Googleは競合企業を弱体化させながら市場シェアを伸ばし続けることができたと指摘する。

「検索によって損をしてでも、シェアを拡大しようとする企業は割りと多くある。そして結局Googleはそのすべてのシェアを獲得し、同時に競合企業を弱体化させている」と同氏は主張し「競合企業はシェアの拡大に費用をかける必要があるからだ。また、少なくともオークションが始まった当初は気づかなかったことだが、本物の検索会社であれば【略】ブランドを構築し、製品を産み出し、そのためにあらゆる投資を行い、本物のユーザーがいるはずだ。そしてそういった状況であり、真の意味での選択画面があれば、ユーザーはそのブランドを自ずと選ぶ。しかし、このオークションモデルの選択画面では、基本的には、すでに獲得しているであろうユーザーのためにコストをかけることになる」と語る。

「つまり、そういう企業は不利になってしまう。ダックダックゴーや当社のような『真のUSP(独自の強み)』を持っている企業がそうだ。Lilo(リロ)、そしてクワントさえも、基本的に検索でより自国民よりのアプローチを取っていれば、そうなる可能性がある。これらの企業は、さらに不利な立場に置かれることになる。これは不公平なことだと思う」と同氏はいう。

オークションの勝者のほとんどは、Googleのように、検索ユーザーのデータを収集して広告ターゲティングで利益を得るという監視資本主義に関わっている。そのため、EUの競争法執行が、ウェブを支配しているプライバシー上好ましくないビジネスモデルを打ち砕く(そして、より健全な代替検索エンジンが参入するきっかけをつかむ)方策として機能することを当てにしていた人がいたとしたら、ひどく失望していることだろう。

広告のために消費者を追跡しない、あるいはエコシアのように完全に非営利のミッションに基づく、より優れた代替検索エンジンは明らかに迫害されている。

欧州委員会は、抗議を聞いていなかったとは言えない。Googleがオークションモデルを発表すると直ぐに、ライバル企業らはそのモデルの欠陥、不公正、不公平、持続不能性を非難し、(確かに、Googleの「広告収益モデルのための行動ターゲティング」を模倣しているわけではないので)競争上不利になると訴えていた。

それにもかかわらずこれまでのところ、最大手のプラットフォーム企業らに対して、公正な事業を保証するための大規模な新規則を大々的に提案しておきながら、欧州委員会は対応する気がない、あるいは、対応できない様子だ。しかし、なぜ欧州委員会は、Googleのようなテクノロジー大手に対して、既存のEU規則をより効果的に行使しないのかという疑問が生じる。

TechCrunchからGoogleのAndroidの選択画面オークションモデルに対する批判を欧州委員会に提起したところ、欧州委員会は月並みな主旨で回答してきた。そこには「選択画面がユーザーの選択を促進する効果的な方法であることは過去に見てきた」と書かれている。

「選択画面は、EEA(欧州経済領域)加盟国のすべての新しいAndroid端末の起動時に、ユーザーに追加の検索プロバイダーを提示することを意味する。これにより、ユーザーは新たに購入したAndroid端末のセットアップ時に、好みの検索プロバイダーを選択できるようになった」と述べ「この決定が完全かつ効果的に実施されるよう取り組む」と付け加えている。

「そのため、選択画面の仕組みの適用状況を注意深く監視している」という。これは、Googleが2018年のEUの裁定を「遵守」し始めて以来の決まり文句だ。

わずかな進展だが、欧州委員会は「市場からの関連するフィードバック」と称し、選択画面の仕組みについてGoogleと協議したことも明らかにした。

同委員会は「選択画面の表示と仕組み、およびライバル検索プロバイダーを選択する仕組み」を中心に話し合ったと述べている。

しかし、時は刻々と過ぎ、Google検索に代わる真の選択肢は市場からますます排除されている。そして、欧州の消費者はプライバシーを侵害するAndroid上での検索に対して有益な代替手段を提供されないままとなっているが、規制当局は何を待っているのだろうか。

欧州委員会でMargrethe Vestager(マルグレーテ・ベスタガー)氏が競争政策を担当して以来(そして2019年からはEUのデジタル政策の重要な決定者でもある)、肝心なところでテクノロジー大手への姿勢が弱腰になっているように思われる。

テクノロジー大手と対峙することを厭わないという評判を得て、過去5年以上に渡りGoogle(およびその他の企業)に対して、注目を浴びる数々の罰金を科してきたにもかかわらず、最近のGoogleの事例に限って言えば、モバイルデバイスでの検索、スマートフォンのOS、検索広告の仲介などで、同氏が市場のバランスを取り戻すことに成功したとは言えない。

それでもなお、同氏は、2020年末のGoogleによるウェアラブルメーカーFitbit(フィットビット)の買収について、このテクノロジー大手がさらなる支配を固めることに多くの反対の声があったにもかかわらず、甘んじて受け入れている。

関連記事:EUがグーグルのFitbit買収を承認、健康データの広告利用を10年間禁止することで合意

その際、同氏は、その懸念に対処するにはGoogleが確約した譲歩で十分だと言い訳がましく主張した(例えば、少なくとも10年間はフィットビットのデータを広告に使用しないという約束をGoogleから引き出した)。

しかし、Googleが一連のEU反トラスト法の裁定を遵守しているかどうかを監視してきた同氏の実績を考えると、Google以外の誰が、同社に対する欧州委員会の命令執行能力や意思を信じることができるだろうか。そうこうしている間に、Googleのやり方に対する不満は、蓄積される一方だ。

欧州委員会の対応についてクロール氏は「聴いているとは思う」と述べ、そしてこう続けた「しかし、見たいのは行動だ」。

関連記事:「Googleに葬られる前に制裁措置を」135の企業や組織がEUの独占禁止法トップに訴える

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タグ:ヨーロッパGoogleAndroid独占禁止法検索Google検索検索エンジン

画像クレジット:Ecosia

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

ウェブの変更をスキャンするVisualpingが2.2億円を調達、ワクチン接種状況なども検出可能

バンクーバーで起業し、トロント証券取引所に小さな会社を公開したSerge Salager(セルジュ・サラガー)氏は、数年前その会社を買いたいという大金持ちの買い手に声をかけられた。うれしく思う反面、この買い手が他には誰と交渉しているのか気になって、サラガー氏は、買収の可能性がある他のターゲットについての価格や機能の変更情報や求人情報などのニュースを、ウェブ上で夢中になって探した。

サラガー氏の懸念は正しかった。その買い手はライバル会社を買収したのだ。だが良いこともあった。このことでサラガー氏は新しいビジネスアイデアを思いついたのだ。それは、ウェブを横断して変更された情報を追跡するために、既存のものよりもはるかに優れたサービスを作ることだった。

こうしてVisualping(ビジュアルピング)が誕生した。16人の従業員を抱える6歳のこの会社は、インターネット全体の変更をモニタリングしている。現在150万人のユーザーを獲得しているが、そのうちの何割か(数字は非公開)のユーザーは、フォローしているウェブページやキーワードの数に応じて、毎月のサブスクリプションフィーを支払っている(1日2回までの検索は無料、最多で1日667回までの検索は月額97ドル、約1万600円がユーザーに課金される)。

ジャーナリストたちには、取材対象となる人物や企業を追跡するのに役立つサービスとして好評だ。法律事務所は、変化する規制やその他の情報を把握するためにこのツールを利用している。また、Apple(アップル)の従業員は、会社に対してどこで何が言われているかを把握するために使っている。

ユースケースはほぼ無限にあるが、Visualpingの持つ優位性は、その明らかな使いやすさにある。ユーザーが、監視したいページや、ページの一部のスクリーンショットやキーワードを指定するだけで、サイトが変更されたり、どこかにキーワードが出現したことを、Visualpingがメールで知らせてくれる。

Visualpingはブラウザの拡張機能を提供しており、今夏にはモバイルアプリもリリースする予定だという。そのVisualpingもまた、パンデミックの恩恵を受けている企業だ。実際、Rite Aid(ライト・エイド)やCVSのような企業のサイトを延々と更新し続ける代わりに、Visualpingを使って新型コロナウイルスの予防接種の実施状況を確認する人が増えている。これは最近このスタートアップをWSJ、CNBC、Fox Newsなどが取り上げたことが大きい。

一方、他のデータ企業と同様に、Visualpingはユーザー求めに従って生成している情報に機械学習を適用することで、常に賢くなり続けているとサラガー氏は主張する。例えばあるページのバナー広告が変更されたときにはアラートを出すことはないし、またユーザーが大幅な価格変更を追跡している場合には、Visualpingはその価格変更が一定の閾値を満たすまでは、アラートの送信を控えることができる。

もちろん、データにはプライバシーの問題がつきものだが、この点についてサラガー氏は、Visualpingはデータ保護とプライバシーに関するEUの法律であるGDPRに完全に準拠していると主張している。

サラガー氏はまた、将来的にはGoogleのように顧客の検索傾向に基づいてターゲット広告を提供することも考えられるが、Visualpingを知ってもらえる企業が増えてきたこともあるので、現在は新たな エンタープライズ製品の構築に全力を注いでいるという。このビジョンは投資家たちにも支持されていており、サラガー氏は、Visualpingが2020年12月にカナダのファンドであるMistral Ventures、そしてN49PとAngelListシンジケートから200万ドル(約2億2000万円)のシード資金を獲得したことを初めて公にした。

これは莫大な資金ではないが、Visualpingが生み出している収益を考えれば、今後2年間を乗り切るのに十分な資金だと彼はいう。ではそのあとは?私たちはサラガー氏に、将来的な提携を考えているかどうか、また、前の会社で起きたことを踏まえて、買収交渉に応じるかどうかを聞いてみた。

彼はどちらの質問にも率直に「はい」と答えた。彼はVisualpingが「Dropbox(ドロップボックス)のような公開企業になる」というシナリオもあるが(Dropboxも消費者向けのサービスを提供していたが、後にビジネス向けのサービスを拡大した)、もう1つ考えられるのは「Googleへの統合です」と付け加える。「私たちの製品はGoogle Alerts(グーグル・アラート)とは非常に相性が良いと思っていますので、Googleによる買収も狙い所の1つかもしれません」。

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タグ:Visualping資金調達カナダ検索

画像クレジット:Visualping

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(文:Connie Loizos、翻訳:sako)

構造化されていないデータを処理しより多くの答えを出すYextのサイト内検索サービス

Yext Answersは、企業が自社のウェブサイトでより良い検索体験を提供するためのサービスだ。そして名前からも想像できるように、本当のゴールは消費者が求めている答え(answers)を見つけることだ。

「検索クエリに対して、リンクを返したら負けだと思っています」と最高戦略責任者のMarc Ferrentino(マーク・フェレンティーノ)氏はいう。

2021年3月17日に「Orion」という検索アルゴリズムのアップデートを公開した後、Yextはもっといい仕事をするようになる、とフェレンティーノ氏は述べた。

それは何かというと、Yextは企業ウェブサイトの構造化されていないページから、直接、答えを抽出できるようになるというものだ。重要なのは、Yextがキーワードを探すだけではなく、ウェブページやブログ記事やヘルプ文書のような構造化されていない文書から「構造化された情報を抽出」できることだと彼はいった。そして、単にリンクや「テキストの塊」を表示するのではなく、質問に本当に答える「内容ある抜粋」をYextは提供する。

画像クレジット:Yext

Googleの検索を知っているだろうか。検索結果に質問と答えのついたウィジェットが出てくるあれだ。フェレンティーノ氏はそれとの比較を歓迎し、おかげでYextユーザーはGoogleの検索体験との「ギャップ」を感じないですむ、と語った。

そのテクノロジーを紹介するためにフェレンティーノ氏は、Yext Answersが大統領の歴史に関するページをクローリングして「2回弾劾された唯一の米国大統領は誰か?」という質問に正しい答えを返すところを見せた。

あるいは、もっとビジネス寄りの(ただし少しメタな)事例として、Yextのテクノロジーについての質問に答えるところを私に見せた。もう1つ別の例で、銀行のウェブサイトを探して、確定拠出年金401(k)と従来型個人退職年金のIRAの違いに関する質問に答えることができるとYextはいう。

また、この変更は企業とその顧客にとっての改善だけでなく、Yextの非営利顧客も恩恵を受けることは知っておくべきだろう。たとえば世界保健機構(WHO)はパンデミック関連の質問にオンラインで解答するためにYextを使っている

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Yext検索

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(文:Anthony Ha、翻訳:Nob Takahashi / facebook

TikTokの中国版Douyinが検索ユーザー数は5億5000万人、検索最大手Baiduに対抗

ショートビデオの進歩は、情報がどのように作成され、広まり、オンラインで消費されるかということを変化させている。洒落た15秒の動画は、エンターテインメントのためだけのものではない。中国のショートビデオアプリDouyin(抖音)とKuaishou(快手)では、人々は毎日のニュースを得たり、料理を習ったり、英語の練習をしたり、仕事を探したり、急速に拡大しているプラットフォームのコンテンツライブラリから実質的にあらゆる種類の情報を探すことができる。

人々は機械が推奨する動画を見ることに慣れてきているが、多くのユーザーはまだアクティブな検索をしたいという欲求とニーズを持っている。Douyinはそれを理解し、2018年半ばに検索機能を導入した。それから2年以上が経ち、この機能は月間アクティブユーザー数(MAU)5億5000万人に達した。同アプリが最後に報告したのは2020年9月のデイリーユーザー数が6億人という数字だったので、月間ユーザー数はそれを上回っているはずだ。それを見ると、Douyinの検索機能にはまだ成長の余地がある。

関連記事:中国版TikTokのライバル「Kuaishou」はオンラインバザールとしても人気

TikTok(ティックトック)の中国版であるDouyinの台頭は、若いプロダクトマネージャーKelly Zhang(ケリー・チャン)氏の功績によるところが大きい。同氏は、今週初めてDouyinの検索ユーザー数を彼女のマイクロブログアカウントで公開した。検索は、中国では長らくBaidu(百度)が独占していた領域だ。2020年12月の時点で、Baiduのフラッグシップアプリの月間アクティブユーザー数は5億4400万人だったため、Baiduと同じくらい多くの人がDouyinで検索していると言って差し支えないだろう。

チャン氏の発言は、オンライン動画分野を制覇し、最終的には人々の情報の受け取り方にまで踏み込もうとするDouyinの野心を物語っている。「前にも言いましたが、私はDouyinが人類文明の動画百科事典になることを願っています。従って動画検索は本に例えれば索引であり、答えを見つけ、新しい知識を得るための入り口なのです」。

同氏はさらに、アプリが検索機能への投資を拡大し続けているため、Douyinの検索エンジンでは新年(中国は旧正月を迎えたばかり)に研究開発、製品、オペレーションのための人材を募集していくと付け加えた。

データ分析会社のJiguangが2020年12月に発表したレポートによると、ショートビデオプラットフォームは、すでに中国のユーザーがオンラインで検索する際に2番目に人気のある方法でBaiduなどの一般的な検索エンジンに次ぐものであり、SNSやeコマースを上回っている。検索におけるBaiduの優位性は、中国のテック大手がサイトやデータへの無料アクセスをお互いにブロックし合うことで築かれた壁に四方から阻まれ、ますます制限されている。ユーザー体験は損なわれるが、この現状はDouyinやAlibaba(アリババ)によるTaobao(淘宝、タオバオ)マーケットプレイスのようなアプリ上の垂直検索エンジンにとっては好都合で、結果的に広告スポンサーからの収益につながる。

ByteDance(バイトダンス)はDouyin、TikTok、ニュースアグリゲーターのToutiao(今日頭条)などのサービスで、機械学習アルゴリズムを使ってコンテンツを推薦することに取り組んできた。このモデルは非常に効率的で収益性が高いことが証明され、BaiduからTencent(テンセント)に至るまでの先人たちが、同様のアルゴリズムを利用したコンテンツフィードを導入するようになった。より長い歴史を持つ検索分野へのByteDanceの進出は、興味をそそる一方で、自然な流れでもある。同社は、デジタルメディア帝国のパズルを完成させ、人々に情報を見つけるための別の選択肢を提供しているにすぎない。ユーザーは機械からのレコメンドを受けたり、必要に応じてコンテンツクリエイターをフォローすることができる。または、頭に浮かんだ検索キーワードがあれば、古き良きやり方で入力もできるというわけだ。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Douyin中国検索

画像クレジット:Douyin creators

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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

三次元オブジェクト検索エンジンPhysnaは現実世界を検索対象にするグーグルを目指す

1999年6月、Sequoia Capital(セコイアキャピタル)とKleiner Perkins(クライナー・パーキンス)は、Google(グーグル)という新しい検索エンジンを開発するアーリーステージの企業に2500万ドル(約26億円)を投資し、オンライン上の知識の整理と共有の方法に革命をもたらした。

Sequoia Capitalは現在、異なる種類の検索エンジンに新たな賭けをしている。消費者向けスマートフォンへの3次元センシング技術の導入が、空間コンピューティングに革命を起こそうとしている。

少なくともそれは、Sequoia CapitalのShaun Maguire(ショーン・マグワイア)氏がオハイオ州コロンバスを拠点とするスタートアップであるPhysna(フィズナ)に対して行った投資だ。

マグワイア氏とSequoiaはDrive Capital(ドライブキャピタル)とともに、同社への2000万ドル(約21億円)の投資をリードした。Drive Capitalは、Mark Kvamme(マーク・クバンメ)氏とChris Olsen(クリス・オルセン)氏という2人のSequoiaの元パートナーが創業したオハイオ州コロンバスを拠点とするベンチャーキャピタルだ。

「数学の未解決問題の1つに3次元検索の方法があります。他の似たような3次元オブジェクトを与える指標をどう定義するのか。これは数学において長い歴史があります」とマグワイア氏はいう。「Physnaの創業者Paul Powers(ポール・パワーズ)氏に最初に会ったとき、彼はすでにさまざまな3次元オブジェクトを比較するための非常に斬新な距離指標を考え出していました。距離指標が1つの場合は、距離が離れている他のオブジェクトを見つけることができます。その根底にある彼の考え方は信じられないほど創造的です。現代数学という言語の中に置いてみれば、実際に機能する非常に高度なアイデアがたくさん含まれているわけです」。

パワーズ氏のアイデアとPhysnaのテクノロジーは長い間待ち望まれていた。

弁護士としてキャリアを積んだが本質的には起業家であるパワーズ氏は、かつて知的財産専門の弁護士としての仕事を通じて3次元検索の問題に出会った。

パワーズ氏が知的財産法を選択したのは、テクノロジーと法律の交差点で働ける最も興味深い分野であり、シリアルアントレプレナーとなる同氏が次にどんな会社を立ち上げるとしても良い基盤となると考えたためだ。弁護士として実務に携わっていたときにパワーズ氏は大きな問題にぶつかった。ソフトウェアやサービスに関する知的財産の盗難は容易に捕捉できたが、製品や部品の実物が企業秘密として盗まれたときにそれを特定するのは困難だった。「2Dの知的財産の盗難はいつも見つけることができました」とパワーズ氏は語る。「しかし、3次元の知財の盗難を捉えるのは難しかった」

パワーズ氏は2015年の創業から2019年まで、共同創業者で最高技術責任者のGlenn Warner Jr.(グレン・ワーナー・Jr)氏と協力して製品開発に取り組んだ。当初の製品は製品設計を盗難から保護することを目的としていた。悲しいことに、Physnaが3次元検索エンジンへの変換を発表する準備をしているちょうどその時、ワーナー氏は亡くなった。

パワーズ氏は、Google Cloudの最高技術責任者兼テクニカルディレクターを務めた後2020年にPhysnaに加わったDennis DeMeyere(デニス・デメイヤー)氏の助けを借りて、同社とその経営陣を再建した。

「転職したとき、機内に預けた2つのバッグとともに飛行機に飛び乗りました。家具つきの家を借りられるようになるまでホテルに住んでいました」とデメイヤー氏は2020年にProtocolに語った

オルセン氏とクバンメ氏が持つシリコンバレーのコネクションのおかげで、他の大物もシンシナティを拠点とする同社に引きつけられた。その中には、GitHubの最高技術責任者であるJason Warner(ジェイソン・ワーナー)氏もいる。ワーナー氏は、Drive Capitalの共同創業者であるクバンメ氏と一緒に、同社の取締役会に議席を持っている。

Physnaでクバンメ氏、マグワイア氏、ワーナー氏はGitHubとGoogleを組み合わせたものを構想している。特に2020年、同社の消費者向けサイトであるThangsが立ち上げられた後はそうだ。

このサイトでは、ユーザーは説明を与えたり、モデルや画像をアップロードしたりすることにより3次元オブジェクトを検索できる。ProtocolのMike Murphy(マイク・マーフィー)氏が指摘したように、Thingiverse、Yeggi、または3Dプリント愛好家が使用するその他のサイトに少し似ている。このサイトでは、各モデルのコラボレーションの歴史と部品をユーザーに表示することができる(オブジェクトが異なる場合)。

つまりGitHubとGoogleの組み合わせだ。また、ユーザーはプロファイルを設定して、独自のモデルを保存したり、パブリックモデルに共同でコメントしたりできる。

マグワイア氏がPhysnaについて目を引かれたのは、ユーザーを無料サイトに引き寄せる方法だ。「毎日何万人もの人々がそれを使用していました」と同氏はいう。これは、多くの成功した企業が製品を販売するために試みるフリーミアムやプロの消費者ハイブリッドアプローチのレプリカだ。「彼らは無料版を持っていて、人々はそれをいつも使い、愛しています。何かを構築するにあたって基盤とすることができます」とマグワイア氏は述べた。

そしてマグワイア氏は、空間コンピューティングの波は誰もが想像するよりも早く訪れると考えている。「新しいiPhoneにはLiDARが搭載されています。これはLiDAR付きの3Dスキャナーが付属する最初の消費者向けデバイスです。3次元が爆発的に広まりそうです」。

Physnaは最終的に、3次元オブジェクトのテクノロジーハブになる可能性がある。ユーザーはそこで、3次元オブジェクトをスマートフォンでスキャンし、仮想オブジェクト、または3Dプリント用ファイルに変換できるものとして、再現のための表現モデルを持つことができる。

パワーズ氏によると、何百もの企業が現在、テクノロジーの応用方法に関してさまざまな要望を携えて同社にアプローチしている。

「新機能の1つは、何かの写真を撮り、それが何なのか、どこでへ行くのかを示すだけではありません。それがアセンブリの一部であってもです。私たちは花瓶を割り、その破片を使って、各々の破片がどのように元に戻るかを示すことができます」とパワーズ氏は述べた。

パワーズ氏によると、同社のソフトウェアの一般的な契約は、企業顧客向けに2万5000~5万ドル(約260~520万円)の範囲だが、Physnaの製品を動かすソフトウェアは単なる1つのアプリケーションではない。

「単なるプロダクトではありません。基礎的なテクノロジーです」とパワーズ氏はいう。「物理的なものとデジタル的なものの間にはギャップがあります」。

SequoiaとDrive Capitalにとって、Physnaのソフトウェアはそのギャップを埋めるテクノロジーだ。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Physna検索

画像クレジット:AkaratPhasura / Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nariko Mizoguchi)

元Salesforceのチーフサイエンティストが「信頼、思いやり、事実」に基づくGoogleに対抗する新検索エンジン発表

元Salesforce(セールスフォース)のチーフサイエンティストで、Einstein(アインシュタイン)AIプラットフォーム(未訳記事)の構築に携わったRichard Socher(リチャード・ソーチャー)氏が、新しくて素晴らしい挑戦を行っている。消費者による検索をあるべき姿にしたいと考えるソーチャー氏は、米国時間12月8日、強大なGoogle(グーグル)に対抗する新しい検索エンジンのyou.comを発表した。

「現在『you.com』を構築中です。すでにそこへアクセスできます。これは信頼できる検索エンジンです。私たちはネット上でのクリック信頼度を高め、クリック詐欺を減らす努力をしたいのです」とソーチャー氏はいう。彼は「信頼」に加えて、それを「思いやり」と「事実」にも基づいて構築することを望んでいる。この3つは価値はあるが、達成の難しいゴールだ。

ソーチャー氏によれば、いくつかの重大な問題が、彼と共同創業者を新しい検索ツールの構築に向かわせたのだと語る。まず、情報が多すぎて、誰もそのすべてを処理することができないのだということ。しかも、この情報を見つけても、何を正確なものとして信用できるのかを知ることは不可能であり、彼はこの問題が社会全体に大きな影響を与えていると考えている。そしれ2020年のインターネットの中では、利便性とプライバシーのトレードオフのバランスをどのようにとるかというプライバシーの問題が、ますます大きくクローズアップされていることだ。

彼は、自身の持つAIのバックグラウンドが、消費者にフォーカスした検索ツールに役立つと考えている。手始めにこの検索エンジンは、汎用ではあるものの、情報を比較するためにいくつかのタブを開かなければならないような複雑な消費者の購入支援に力を注ぐ。

「いま私たちが生活の中で行えることで、最大のインパクトを持つことは、AIと自然言語処理強大な力を使って、人びとの生活の様々な複雑な決断を助けることのできる信頼性の高い検索エンジンを作ることです。最初は複雑な商品購入から始めますが、初めから汎用であることも同時に目指します」。

ソーチャー氏はある程度の詳細についても言及したが、さらなる詳細の共有に関しては、数カ月以内に行われる予定の一般公開まで待つことを望んだ。彼は広告や、ユーザーについて知っていることに頼らないことで、グーグルとの差別化を図りたいと語る。ソーチャー氏は、SalesforceでMarc Benioff(マーク・ベニオフ)氏と一緒に仕事をして学んだことは、お金を稼いでも、製品を購入してくれる人たちとの信頼関係を築くことができるということだという。

もちろん彼は、定着している既存システムに対抗するのは難しいことを認識している。しかし、彼と彼のチームは、自分たちが根本的に異なっていると信じるものを構築することで、古典的な「イノベーターのジレンマ」で既存のシステムを攻撃できると信じている。つまりグーグルが現行の主たる収益モデルを破壊しない限り、真似することができないような何かを生み出すということだ。

彼はまた、グーグルがこの先独占禁止法の問題に直面すると見ており、それがこのようなスタートアップのための突破口を作るのに役立つ可能性があると考えている。「グーグルが行ってきた多くのことを考えると【略】彼らがこの先これまでと同じように、迫りくる独占禁止法の圧を逃れることは、やや難しくなっていくだろうと思います」と彼はいう。

彼は、ソーシャルネットワークが明らかにしたように、信頼と正確さの要素は厄介な要素になる可能性があることを認めている。ソーチャー氏は、彼の検索ツールに組み込む予定のソーシャル共有の要素をほのめかしているが、たとえば共有を促進するために、特別なyou.comのURLをユーザーに与えるといったことが含まれる。

ソーチャー氏は、資金もプロダクトに積極的に取り組むチームもあると語ったが、現時点での資金量や従業員の数については答えてはくれなかった。彼は、ベニオフ氏とベンチャーキャピタリストのJim Breyer(ジム・ブレイヤー)氏が主要な支援者であり、今後数カ月間でより多くの情報を公開できるだろうと語った。

とりあえずのところ、興味があればサイトでアーリーアクセスを申し込むことができる。

関連記事:複数のクラウドサービスに散らばるコンテンツを検索するCloudtennaのモバイル検索アプリ

カテゴリー:ネットサービス
タグ:you.com検索

画像クレジット:nadia_bormotova/Getty Images

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(翻訳:sako)

Googleの2020年検索トレンド米国上位はコロナ、選挙結果、コービー・ブライアント、Zoom

新型コロナウイルス(COVID-19)の発生、選挙、Zoomミーティングが2020年の米国の消費者の関心事だった。Google(グーグル)が米国時間12月9日朝に発表した米国2020年検索トレンドのリストで明らかになった。検索トレンドはグーグルで最も検索された言葉やフレーズを反映しているものではなく、2019年と比較して長時間トラフィック量が急増したものを示している。このトレンドでは年間を通じた消費者の関心の移ろいが正確に示される。

グローバルの検索トレンドのトップリストも似たような結果だった。

米国では選挙結果が検索トレンドの第1位で、その次が新型コロナウイルスだった。

PlayStation 5、Zoom、そして2020年に悲劇的にこの世を去った何人かのセレブの名前もリスト入りした。

2020年検索トレンドの上位は順に、選挙結果、コロナウイルス、Kobe Bryant(コービー・ブライアント)、コロナウイルスアップデート、コロナウイルス症状、Zoom、選挙で誰が勝つか、Chadwick Boseman(チャドウィック・ボーズマン)、そしてPlayStation 5だった。

上位のニュース検索トレンドも似たような傾向で、選挙とパンデミック、それらに関連するものがリストに入った。2020年は自然災害や1929年以来の株価暴落など悪いニュースが多くあり、これらもリスト入りした。

ニュース検索トレンドの上位は順に選挙結果、コロナウイルス、景気刺激策の小切手、失業、イラン、ハリケーン・ローラ、スーパーチューズデー、株式相場、オオスズメバチ、オーストラリア山火事だった。

グーグルの年末検索トレンドはまた人物、俳優、政治家、アスリート、ミュージシャン、今年亡くなった人も採り上げ、米国で最もトレンドとなった人はJoe Biden(ジョー・バイデン、人物検索トレンドと政治家検索トレンドでトップ)、Tom Hanks(トム・ハンクス、2020年に新型コロナに感染した)、Ryan Newman(ライアン・ニューマン)、Shakira( シャキーラ)、Kobe Bryantだった。

テレビ番組、スポーツチーム、曲、映画、ゲームといったテーマでもトレンドとなったものを採り上げた。

これらのテーマでのリストのトップは、Netflixのヒット作「Tiger King(タイガーキング:ブリーダーは虎より強者?!)」、それから「ボストン・セルティクス」「WAP」「Parasite(パラサイト 半地下の家族)」「Among Us」だった。

グローバルでもトレンドの上位はほぼ同じで、検索トレンドの上位はコロナウイルス、選挙結果、Kobe Bryant、Zoom、IPLだった。一方、ニュース検索トレンドのトップはコロナウイルス、選挙結果、イラン、ベイルート、ハンタウイルスだった。

サブトピックでも似たような傾向がみられ、トム・ハンクス、ライアン・ニューマン、Among Us、WAP、パラサイト、ジョー・バイデン、タイガーキングなどが上位にきた。

言葉以外にも、はっきりとしたトレンドがデータから浮かび上がった、とグーグルは話す。2020年も人々は世界情勢を知るためにグーグルに「なぜ」と問いかけを続けた。ただし今年は、「なぜ」の多くは新型コロナに関するものだ。たとえばトイレットペーパーやフェイスマスク、手指消毒剤の購入場所を尋ねるものが「どこで買う」検索トレンドのトップだった。また近所の場所探しでは、新型コロナ検査、期日前投票センター、抗議が「Near Me」検索でトレンドだった。

そしてこれらのすべてにかかわらず、グーグルユーザーが新型コロナによるロックダウンの過ごし方を検索したのに表れているように、人々は楽観的だった。たとえば「sourdough bread recipe(サワードウブレッドのレシピ)」の検索が史上最高を記録した。他に人気のあった食べ物検索は、ホイップドコーヒー(ダルゴナコーヒー)、ディズニーチュロス、ドールホイップなどだった。ハウツー検索トレンドのトップは、外出を控えるために自分自身でやることを学ぶという世界を反映した。髪・前髪の切り方、髪の染め方、それから在宅勤務やバーチャルフィールドトリップ、バーチャルデートの仕方などだ。

Black Lives Matter(黒人の命も大切だ)の検索も2019年の5倍に増えた。

検索トレンド、各マーケットの結果はGoogle Trendsで閲覧できる

カテゴリー:ネットサービス
タグ:GoogleGoogle検索検索

画像クレジット:Google

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(翻訳:Mizoguchi

高度なAIでウェブ検索時のCtrl-F(もしくはCommand-F)を本当に便利にするHebbia

ここ数年、ディープラーニングが大きく進化している。GPT-3のような新しいシステムとモデルが、人の言語の解釈で高い性能を発揮するようになり、それをさまざまな形で応用するよう開発者たちを奮い起こさせている。文章を読み上げるボイスレコーダーや翻訳アプリなどでその結果が見られるが、最近の性能の進歩にはビックリさせられる。

では、このAIインフラが引き出す次なる機能の波は何だろう?Hebbia(ヘビア)はそこを探ろうとしている。

Hebbiaは、現在ではスタートアップだが、そもそもはプロダクトスタジオだった。スタンフォード大学博士課程に在籍し、現在休学中のGeorge Sivulka(ジョージ・シバルカ)氏と、その他3人のスタンフォード大学のAI研究者とエンジニアからなる混合部隊が創設した、いわばAIに関するアイデア帳のような存在だ。彼らは現在使える最新のディープラーニング技術とモデルを使い、知識グラフ、意味解析、AIが最終的に人の生産性に役立つことの限界を押し広げようとしている。

シバルカ氏は、知識経済で働いていた友人の経験を知って刺激を受け、この分野に焦点を当てようと思い立った。「多くの仲間が……、全員が一日中机に向かって膨大な量の情報を読むだけというホワイトカラーの職種に進みます」とシバルカ氏は話す。「金融アナリストになった人たちは、1行か2行の情報を得るために米国証券取引委員会の報告フォームを徹底的に読み込みます。またはロースクールに進んだり法律家になった人たちも、同じことをしています。……文章の壁に挟まれ身動きが取れない状態で、情報の雪崩の中から意味を読み取ることなど不可能です」。

(おっしゃるとおり)

彼自身とその仲間たちが目指しているのは、個々人の知識のパーソナルユニバースの解明を助ける検索と分析と要約のツールを開発して、人の生産性をパワーアップさせることだ。「人々の仕事のやり方を強化するとの方針に従って、Hebbiaがそうした思考のための生産性向上ツールを作るというのが私たちの目標です。具体的にそれは、みなさんが毎日処理している情報のインプットとアウトプットを管理するものです」とシバルカ氏はいう。

野心的なビジョンだ。そのため彼らは、どこかでスタートを切る必要があった。そんな同社の最初の製品が、そのビジョンに私が興奮を覚えたこのChrome(クローム)のプラグインだ。しばらくプライベートなベータテストを行った後、米国時間10月29日、世界に向けてリリースされる。これはChromeの検索機能をアップグレードして、単なるテキストパターンのマッチングを超え、入力されたテキストから、実際に何を知りたいのか、どう答えるべきかを考える。下の動画は、TechCrunchのサイトでこのプラグインを試したところだ。

HebbiaのCtrl-FをTechCrunchのサイトで使っているところ(画像クレジット:Hebbia)

例えばWikipediaのページでCtrl-Fを使い「この人はどこに住んでいた?」と質問すると、プラグインはこの文章は場所を聞いているのだと判断し、そのページで関連情報を含む文章をハイライトする。もちろんこれはAIで、しかも現時点ではまったくのベータ版AIなので、その答えに一貫性がないことも現在のところあり得る。しかし、Hebbiaがこのモデルの精度を高めてテキストの読解力を改善すれば、ブラウザーでの検索は完全にこちらに移行し、生産性が大幅にアップすることが期待できる。

シバルカ氏は、いわゆる神童だった。十代のころからNASAで働き始め、スタンフォード大学の学部を2年半で卒業。その後、修士号を1年ちょっとで取得し、Hebbiaに寄り道をする前に博士課程に進んだ。

Hebbiaのアイデアは、創設から数カ月以内にベンチャー投資家の関心を惹きつけた。Floodgate(フラッドゲート)のAnn Miura-Ko(アン・ミウラ=コー)氏は110万ドル(約1億1500万円)のプレシードラウンドを主導し、Naval Ravikant(ナバル・ラビカント)氏、Peter Thiel(ピーター・ティール)氏、Kevin Hartz(ケビン・ハーツ)氏、Michael Fertik(マイケル・フェルティク)氏、Cory Levy(コリー・レビー)氏がそれに参加した。

Ctrl-Fは、現在Hebbiaの最重要製品であり、知識グラフと個人の生産性がもたらす大きな可能性への入口の役割を果たしていると、シバルカ氏は話す。「これは、コンピューターにできることの最後のフロンティアなのです」とシバルカ氏。コンピューターは、データをデジタル化して処理しやすくすることで、すでに数多くの分野に革命をもたらしたと彼は指摘する。Ctrl-Fに関してはこう話す。「これは基本テクノロジーなので、(私たちは)これを使ってできることの、ほんの上面を引っ掻いているに過ぎないのです」。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:Hebbiaディープラーニング検索

画像クレジット:RapidEye / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

AppleがGoogleに対抗する検索を開発中か、同社検索クローラーの動きが活発に

Financial Timesによると、Apple(アップル)は米司法省と議会の両方で反トラストの機運が盛り上がっていることに乗じて、Google(グーグル)に対抗する検索を開発しているかもしれない。

これは、極めて皮肉な動きといえるかもしれない。というのも、反競争的な行為に終止符を打とうとする努力が既存の企業とより身軽な新興企業との間の競争を活発にするというよりも、すでにテクノロジー業界を支配している巨大企業の間に、さらに激しい競争を作り出そうとしているからだ。

Financial Timesによると、アップルの検索技術への関心の再燃は、iPhoneのオペレーティングシステムの最新バージョンiOS 14の一見些細だが重要な変化と、アップルのスパイダリングツールの活動の増加から察することができるという。「スパイダリングツール」は「ウェブクローラー」とも呼ばれ、ウェブ全体のあらゆる細部を探り検索の性能を上げるツールだ。

現在、ユーザーがiOS 14のホーム画面でクエリ(検索項目)をタイプすると、アップル自身が行った検索の結果が表示され、ウェブサイトのリンクを教えてくれる。この機能は、これまでのiOSのベータバージョンでもポップアップしていたため、よく知られていた機能でもある。CoywolfのJon Henshaw(ジョン・ヘンショウ)氏は、アップルのクローラーによる検索量の増大を8月という早い時点で気づいていた(Coywolf記事)。

Financial Timesが引用している情報筋によると、この変化は、社内的な開発だったアップルの検索が新しい段階に入ったことを物語っている。すなわち同社はこれから、検索に本格的に力を入れていくのかもしれない。

カリフォルニア州クパチーノに本社のある企業には、確かに検索の専門的技術がある。同社は3年ほど前にグーグルの検索のトップだったJohn Giannandrea(ジョン・ジャナンドレア)氏をスカウトした。それは、アップルの人工知能技術の基盤を支え、Siriの音声検索を改良するためだと一般的に思われていた。そのときのアップル社内の組織構造を見ると、ジャナンドレア氏が未来の「検索プロダクト」とSiriの両方をフルタイムで担当していることはあり得なかった。しかし可能性としては、別の機能を手がけているチームを彼の専門知識と技能が助けていたこともあり得る。

どんな検索ツールにせよ、自力開発はアップルが検索を導入するための第三の方法だ。現在、同社はグーグルとの高額契約により、グーグルをデフォルトとする検索サービスを利用している。これもまた、検索をめぐるグーグルのいわゆる反競争的行為に対する司法省の調査の中核にある。市場の他のメジャーな検索サービスだけが、MicrosoftのBingを利用して彼らの検索結果を補強している。

たしかに活動が活発化している兆候はあるが、アップルのクローラーの活動に対しては、企業が秘密裏に行っている開発に対する煙幕であるという説よりも、アップルがすでに相当明確に述べている目標に沿った活動だという説の方が、妥当かもしれない。

アップルが検索でグーグルと正面衝突するという話は、たしかに大きな見出しにはなるが、活動の活発化はもっと合理的に説明できる。それは、Siriが検索のクエリをもっとうまく扱えるようになり、アップルとグーグルやMicrosoft Bingのような検索サービスとの間の仲介ができるようになるためという説だ。このような人間を介さない検索、いわゆる中抜きは、数年前にグーグルが始めて、Siriの同じような機能と競合するために拡張を続けてきた。

その一部は、セマンティクス(意味論)に行き着く。「検索エンジン」という言葉の意味は、「人びとが質問をタイプするウェブサイト」だろうか、それともウェブの結果をホワイトレーベルのように扱って独自の目的に使う音声アシスタントのことだろうか。自分のプラットフォームで、グーグルのような怪物的なブランドにのさばられたくない。どんな分野でもそれが、競合する者の強力な動機だ。Siriの上での検索はSiriのサービスでありたい。

そうやって、Siriだけであらゆる用を済ませたいとアップルが欲するのは、最近の規制によってOS、ここではiOSの初期化においてユーザーが、検索プロバイダーを選べるようにするべきだと声を上げている(Axios記事)ことへの対応でもある。しかしそれは、グーグルの助けにはならない。それでなくてもグーグルはアップルに数十億ドル(数千億円)を払って、世界最大のモバイルウェブユーザーであるiOSユーザーを確保しようとしている。グーグルとしては、人びとが検索を選べるようになっても、依然としてグーグルを使うというだろう。Siriを検索でも出しゃばり屋にしたいもう1つの理由は、それによってグーグルでなくアップルが上になるからだ。

TechCrunchは現在、アップルにコメントを求めている。回答が届き次第、本記事をアップデートする。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:AppleGoogleiOS検索

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa