音楽ストリーミングが2020年の米レコード業界収益の83%を占める、CDは衰退しアナログ盤好調

音楽ストリーミングが2020年の米レコード業界収益の83%を占める、CDは衰退しアナログ盤好調

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音楽市場はここ数年でほぼ物理メディアからストリーミングへと移行した感があります。米RIAAが発表した2020年末のレコーディングされた音楽による収益は、新型コロナ禍もあり自宅で音楽を聴く人が増えたのか、前年比9.2%増の122億ドルになりました。そのうちSpotifyやApple Musicといった定額音楽ストリーミングからの収益が14.6%増の70億ドルとなっており、CDなどの物理メディアによる販売やダウンロード販売などもあるなかで2018年以来連続でトップを走っています。

年間のサブスクリプション加入者数は2019年の6040万人から2020年は7550万人となり加入者の増加も過去最大の上げ幅を記録しました。また新たに包括的ライセンス契約を行ったFacebookやPerotonも収益増を後押ししたとみられます。

ストリーミングとは対照的に、物理メディアでは例年、CDの衰退が伝えられるようになっていますが、2020年の収益も23%減の4億8300万ドルになりました。一方でアナログレコードが約29%の伸びを示して6億2600万ドルに達し、CDよりも収益の多いメディアになっています。またアナログレコードの好調のおかげで、物理メディア合計の収益は0.5%の減少で踏みとどまりました。

音楽ストリーミングの収益増は音楽業界全体にとっては良いことのはずですが、その反面、お金の行き先が不透明です。物理メディアやダウンロード販売の場合は売り上げに対し一定の割合の収入がアーティストに分配されますが、ストリーミングの場合はいわゆる大物アーティストには収益が発生しやすく、再生回数の少ないアーティストにはなかなか分配が行き渡りません。

物理メディア時代も構造そのものは大きく変わらなかったものの、プロモーションなども収益が見込める大物に集中するようになっており、音楽ファンも自ら積極的に新譜情報を仕入れるようにしなければ、ストリーミングだけでは常に似通った音楽ばかりがレコメンドされるため、偏りが顕著になっているとも考えられます。偏りの改善のためには、もっと公平なビジネスモデルを模索し転換していく必要があるかもしれません。

(Source:RIAA(PDF)Engadget日本版より転載)

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:音楽(用語)音楽ストリーミング(用語)全米レコード協会 / RIAA(組織)

Spotifyが要望の多かった高品質サブスクプラン「Spotify HiFi」を提供へ

Spotify(スポティファイ)は米国時間2月22日、新コンテンツの契約やクリエイター向けの機能といったものと合わせてSpotify HiFiというハイエンドなサブスクサービスを提供する計画を発表した。同社は2021年後半にいくつかのマーケットでSpotify Premium購読者向けに「Spotify HiFi」の提供を開始、このサービスでは「CD品質、オーディオフォーマット圧縮なし」で音楽を聴くことができると述べた。

このニュースはSpotifyのオンラインイベント「Stream On」で発表された。

高品質の音楽ストリーミングは常にユーザーが最も要望していた機能の1つだったとSpotifyは述べ、ライブストリーミングイベントでSpotifyに代わってBillie Eilish(ビリー・アイリッシュ)氏が高品質オーディオのパワーを宣伝した。

画像クレジット:Spotify

Spotifyはまた、HiFiサービスはSpotify Connectが利用可能なスピーカーを含むデバイスでも利用できると説明。そしてSpotify Connectを介してSpotify HiFiをより多くのファンが利用できるようにするために世界最大のスピーカーメーカー数社と協業していることも明らかにした。

しかしこのSpotifyのニュースには、料金やサービス開始日、どのマーケットで展開されるのかなど、ユーザーが本当に知りたい情報が不足している。明らかにサブスクがPremiumサービス料金を上回ることは理解しているが、正確な料金はマーケットによって異なるだろう。Premiumの「アドオン」として展開されるかもしれない。

Spotifyは既存のアーティストプログラムもアップデートした。初めてプレイリストに7万6000人ものアーティストを加え、編集とマーケティングをサポートするRadarプログラムを通じて新進気鋭の175人のアーティストを特集した。また、いかにアーティストがEnhanced Albums、Stories機能、より多くのアーティストに間もなく提供されるClipsといった新しいツールを使っているかも特集した。加えて、曲をともなうルーピングビジュアルを全Spotifyアーティストが利用できるようになっている、とも話した。

同社は、今後数日で新たなマーケットに進出して世界の10億人超にリーチできるようになると話し、グローバルで同サービスへのアクセスを拡大する計画だとした。10億人超というとすでにインターネットを使用している人口のおおよそ半分だ。アジア、アフリカ、カリブ、欧州、中南米など新たに世界85のマーケットに進出すると話す。

ポッドキャスト事業に関しては、同社は新しい朝の番組「The Get Up」、Russo Brothersのエンターテインメント会社AGBOとの複数年にわたる新コンテンツ契約、台本なしポッドキャストのためのAva DuVernayとの契約、Higher Groundとの提携によるムスリム教徒の声をピックアップする新ポッドキャスト「Tell Them I Am」に言及した。また、Warner Bros.とDCがテキストのある物語ポッドキャストを展開するとも述べた。

R&Dに関しては、新機能、そしてアルゴリズムや既存のテクノロジーを改良することでポッドキャストのレコメンデーションとディスカバリーを改善する計画を明らかにした。

とある機能では、実際の番組やエピソードの名称を調べなくてもカテゴリーでポッドキャストを特定できる。たとえばユーザーは検索バーに「クッキング」と入力すると、マッチするポッドキャストが表示される。この機能は現在米国でテスト中で、2021年他のマーケットでも展開される予定だ。

ポッドキャスト制作アプリAnchorに関しては、テキストをオーディオに変えたり、ビデオをポッドキャストに加えたり、またリアルタイムのファンとのコミュニケーションを番組に加えるために投票やQ&Aなど新しいインターラクティブな機能にアクセスできるようにするためにWordPressと提携していると話した。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Spotify音楽ストリーミングポッドキャスト

画像クレジット:Bryce Durbin

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

Spotifyがオーディオ広告マーケットプレイス「Spotify Audience Network」を開始

Spotify(スポティファイ)は米国時間2月22日、ポッドキャストへの投資を収益化する計画について詳細を明かした。同社は、新しいオーディオ広告マーケットプレイス「Spotify Audience Network」を立ち上げると発表し、これにより広告主は、同社独自のプログラムであるSpotify OriginalsとExclusives、さらにはMegaphoneや作成ツールAnchorによるポッドキャストや、広告付きの音楽などのリスナーにリーチできるようになるという。また同社は、セルフサービス広告プラットフォームであるSpotify Ad Studioでもポッドキャストを提供する計画で、米国ではSpotify OriginalsとExclusivesを皮切りに、ベータテスト段階での提供を開始すると述べている。

関連記事:Spotifyがポッドキャストのホスティングと広告会社のMegaphoneを約250億円で買収

これは将来的にはサードパーティ制作のポッドキャストにも拡大していく予定だと、同社は22日のオンラインライブイベント「Stream On」の中で述べた。

現在、Spotify Ad Studioは2017年のサービス開始後、22の市場で広告主に利用されており、音声広告と動画広告の両方でSpotifyの音楽リスナーにリーチしている。Spotifyは、同サービスが最も急成長している購買チャネルであると述べたが、その成長を詳細に示す具体的な数字は提供しなかった。

画像クレジット:Spotify

しかし、広告サイドの大きなニュースは、新しいオーディオ広告マーケットプレイス「Spotify Audience Network」の立ち上げだった。将来の見通しに関する他のいくつかの発表と同様、Spotifyは、実際にSpotify Audience Networkがどのように機能するかの詳細については触れたがらなかった。同社は「サービスを開発する初期段階」にあるということ、そして後日、より多くの情報を共有できるだろうとだけ述べた。

しかし、特に広告で収入を得ようとしているポッドキャスターや、Spotifyの内外から、同社の数億におよぶオーディエンスにリーチしたいと考えている広告主にとっては、同社はこのマーケットプレイスを「ゲームチェンジャー」だと位置づけている。

このニュースは、2021年の初めにThe Vergeが報じた調査レポートに続くもので、それによれば、同社は小規模なポッドキャスターのためにスポンサーを見つけると約束したにもかかわらず、実はSpotifyが現在までのAnchorの広告のメインスポンサーであることがわかったという。Spotifyはそうした約束を果たすために広告マーケットプレイスとツールを構築する過程で、広告主へのアウトリーチを優先していなかったように見受けられる。

画像クレジット:Spotify

またSpotifyは、最近Megaphoneを買収したことで、2020年初頭に開始したストリーミング広告挿入(Streaming Ad Insertion、SAI)技術を、自社のオーディオ番組OriginalsやExclusives以外のパブリッシャーにも拡大していくことが可能になると明らかにした。現在、SAIは米国、カナダ、ドイツ、英国で利用可能だが、2021年には他の新しい市場にも拡大する予定だという。

SAIはデビュー以来、オーディエンスベースのバイイング、ネイティブ広告プレイスメント、クリエイティブパフォーマンスのレポートなどの新機能を展開している。2021年後半には、Megaphoneのポッドキャストパブリッシャーや「主要な」AnchorのクリエイターがSAIを利用できるようにするとSpotifyは述べている。

しかし、Anchorのクリエイターが収益を伸ばす方法は広告に限られない。

TechCrunchが以前報じていたように、数カ月以内に、Anchorクリエイターが最も熱心なファンに向けて有料のポッドキャストコンテンツをSpotifyで公開できるようにする新機能のベータテストを開始すると、Spotifyは簡単に述べた。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Spotify広告ポッドキャスト音楽ストリーミング

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(文:Sarah Perez、翻訳:Aya Nakazato)

Spotifyがようやく米国でも歌詞をリアルタイムで表示する機能のテストを開始

Spotify(スポティファイ)は米国時間2月9日朝、Engadgetの報道を受けて、米国市場で歌詞を同期させる新機能のテストを始めたことを認めた。このストリーミング音楽サービスは現在、27もの市場(最近サービスを開始した韓国も含む)で歌詞のライブ配信を行っているが、米国では何年も前から提供されていなかった。代わりにSpotifyはGenius(ジーニアス)と提携し、歌詞と再生中の曲に関するトリビアを合わせて閲覧できる「Behind the Lyrics」機能を提供している。

コメントを求められたSpotifyは、新しい歌詞機能は同日より米国の一部のユーザーを対象とするテストとして提供を始めたと述べた。

「現在、米国内の一部のユーザーを対象に歌詞機能のテストを行っていること認めます」と、同社の広報担当者はTechCrunchに語った。「Spotifyでは、ユーザー体験を向上させるために、定期的にいくつかのテストを行っています。これらのテストの中には、より広範なユーザーエクスペリエンスへの道を開くことになるものもあれば、重要な学習としての役目のみを果たすものもあります」。

同社は計画の詳細を公表することは拒否したが、米国における新しい歌詞機能のパートナーがMusixmatch(ミュージックスマッチ)であることは明らかにした。Musixmatchは、すでにこの機能が導入されている米国以外の市場で歌詞を提供している。

Spotifyが米国で歌詞表示機能を導入するのは、実は今回が初めてではない。もともとSpotifyは、2011年から2016年までの間、Musixmatchと提携していたのだが、その関係を終わらせ、代わりにGeniusと提携を結ぶことになったのだ。歌詞機能の復活を求めるユーザーの継続的な要求にもかかわらず、Spotifyはこの機能を米国で復活させることはなかった。

しかし近年、Spotifyは再びMusixmatchとの関係を復活させた。2020年、Spotifyは東南アジア、インド、ラテンアメリカにわたる世界26の市場でリアルタイム歌詞機能を導入すると発表した。このうち22の市場では、歌詞が提供されるのは初めてのことでタイ、ベトナム、インドネシア、メキシコだけは、他のプロバイダーを経由して、何らかのかたちですでに歌詞がサポートされていた。

米国でSpotifyが歌詞をサポートしていないことは、ストリーミング音楽の競合他社に優位性を与えてきた。たとえばAmazon Music(アマゾンミュージック)は、ユーザーが曲の再生に合わせて歌詞を表示することができ、その機能を音声プラットフォームのAlexa(アレクサ)に結びつけることで、Alexaに歌詞で曲を検索してもらうことが可能だ。一方、2018年のiOS 12で刷新されたApple Music(アップルミュージック)は、単にアーティスト名やアルバム、曲のタイトルだけでなく、歌詞で曲を検索する機能が搭載された。その後、iOS 13では歌詞をライブで同期する機能も追加。Siriに歌詞の一部を伝えれば曲を検索することもできる。

Musixmatchも、米国で行われる新しいテストでSpotifyと提携したことを認めた。

「Musixmatchは、10年間の継続的な投資を行ってきたおかげで、速いペースで成長しています。私たちは今、世界中でオーディオ体験を豊かにし続けるために、より多くのデータを提供することに注力しています」と、MusixmatchのCEOであり創業者であるMax Ciociola(マックス・シオシオラ)氏は、TechCrunchに語った。

今回の歌詞機能はテストに過ぎないため、対象者が限定されており、実際にSpotifyアプリで歌詞を見ることができない人もいるだろう。このテストが拡大される可能性はあるのか、もしあるなら、いつになればさらに多くの人が利用できるようになるのか、ということについて、Spotifyは明言していない。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Spotify音楽ストリーミングアメリカ

画像クレジット:Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

アリババが12年続いた音楽ストリーミングアプリXiamiを閉鎖

かつて中国では、Xiamiを使うことは音楽のセンスが良いことと同義だった。2008年頃にデビューし2013年にAlibaba(アリババ)に買収(Tech in Asia記事)されたXiamiは米国時間1月5日、ストリーミングサービスを終了するとユーザーへの通知で発表した。

中国語で「小さなエビ」を意味するXiamiは、スマートな発見機能、エレガントなデザイン、ソーシャル機能、インディーズミュージシャンのサポートで知られ、中国の芸術的かつヒップスター的なタイプのファンを引きつけるのに役立った。そしてその衰退の始まりは、中国での音楽著作権をめぐる争いと重なった。2016年にTencent(テンセント)がChina Music Groupの株式の過半数を取得(WSJ記事)したことでデジタル音楽業界の巨大グループが形成され、Tencentが音楽取引を独占した。2017年、テンセントの音楽アプリは中国の音楽ストリーミング市場の75%ものシェアを支配(RADII China記事)した。

一方、Xiamiは音楽の権利を大量に失ったため、ユーザーはしぶしぶながらよりリソースの豊富なプラットフォームに移行した。

一方、NetEase Musicのような新規参入者はTencentの音楽帝国との戦いを続けているが、その支配は今日まで続いている。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:AlibabaXiami音楽ストリーミング中国

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(翻訳:塚本直樹 / Twitter

テンセント主導のコンソーシアムがユニバーサル・ミュージックの出資比率を20%に引き上げ

テンセント(Tencent)は、中国の音楽ストリーミング市場を支配し続ける音楽大手、ユニバーサル・ミュージック・グループ(UMG)との関係をさらに強化した。

インターネット大手のテンセントと、音楽事業のスピンオフであるテンセント・ミュージック・エンターテイメント(TME)が主導して構成されるコンソーシアムは、フランスのメディアコングロマリットVivendi SAから、UMGの株式10%を追加購入することになったとTMEが発表した。

今回の取引時点で、UMGの評価は300億ユーロ(約368億ドル/3.8兆円)とされ、コンソーシアムの出資比率は20%に拡大することになる。TMEは引き続きコンソーシアムの10%の持分を保有しており、他のメンバーは明らかにされていない。

TMEは「今回の取引は、UMGとの戦略的パートナーシップを強化するというTMEのコミットメントを強く示すものです。中国の音楽エンターテイメント市場において、アーティストやファンに比類のないサービスや商品を提供するために両社が協力し、UMGとより深いレベルのコラボレーションを続けていけるよう期待しています」と述べている。

この取引は2021年前半に完了する見込みで、規制当局の承認を条件としているとTMEは言及している。

TMEとUMGは8月、中国のアーティストを発掘、開拓し、国内および世界に向けてプロモーションするための共同レーベルを立ち上げると発表していた

テンセントは、同社の音楽に特化したアプリにコンテンツをライセンスしている音楽レーベル大手3社全てと近しくしている。ワーナー・ミュージックとソニー・ミュージックエンタテインメントの両社は、TMEが香港で株式を公開した際、株を購入した。

ワーナー・ミュージックの今年初めのSEC提出書類には、同社がテンセントに少量の株式を売却したことが記載されていた。またテンセントは、2017年にSpotifyと株式を交換する取引をしていたことも留意しておくべきだろう

関連記事:米国の追加経済刺激策に違法ストリーミングを「重罪」にする法案

カテゴリー:ネットサービス
タグ:音楽ストリーミング テンセント

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(翻訳:Dragonfly)

米国の追加経済刺激策に違法ストリーミングを「重罪」にする法案

米国時間12月21日に米議会が承認した新型コロナウイルス流行に対する追加経済刺激策について、TechCrunchではすでにいくつか記事を掲載してきた。その中には、ブロードバンドアクセスを増やすための資金や、新エネルギーへの取り組みのための資金(未訳記事)も含まれる。

だが、テクノロジーやメディアの世界に深刻な影響を及ぼす可能性のある項目が他にもある。その1つが、利益目的の違法なストリーミングを懲役10年以下の重罪(The Hollywoodr Reporter記事)とする軽犯罪ではなく)という、Thom Tillis(トム・ティリス)上院議員(ノースカロライナ州選出の共和党員) からの提案を含む法案だ。

ティリス議員が2020年12月初めにこの提案の草稿を発表したとき、インターネットのオープン標準 / 知的財産に関与する非営利団体Public Knowledge(パブリック・ナレッジ)は声明を発表し、「著作権侵害のための更なる刑事罰」の必要性はないと主張したものの、この法案は「狭く仕立てられており、ユーザーを犯罪化することは避けている」、そして「無認可の作品をストリーミングに含む可能性があるストリーマーを犯罪化しない」ともいっている。そうではなく、その目的は商業的利益のために海賊行為を行う人々を対象としている。

そしてもう1つは、CASE法(少額賠償における著作権代替執行法)案だ。これは米国著作権局内に新たな著作権主張委員会を設け、少額裁判所に代わって著作権の請求を裁き、最高3万ドル(約310万円)までの支払いを命じることができるようにするというものだ。

2019年、米国下院でこのCASE法が議論されていた(The Verge記事)際、賛成派は独立系アーティストが著作権侵害の申し立てを簡単に行えるようになると擁護したが、一方でアメリカ自由人権協会や電子フロンティア財団などの団体は、個人のインターネットユーザーに悪影響を与える可能性があると述べている。

Techdirt(テックダート)のMike Masnick(マイク・マスニック)氏は米国時間12月21日、この法律は「トロール(荒し行為)を減らすために法律を修正する必要があるときに、まさに著作権トロール(金儲けを目当てに著作権侵害の疑いを探し回る人々)を急増させる」と主張した(Techdirt記事)。

下院と上院が承認した現在、この法案はドナルド・トランプ大統領の署名に向けて送られようとしている。全文は米国時間12月21日に発表されたばかりなので、今後数週間から数カ月の間に、その影響について多くの議論が交わされることを期待したい。

【更新】ティリス上院議員もリリース(ティリス議員公式サイト)を発表。この法案はPatrick Leahy(パトリック・リーヒ)上院議員(バーモント州選出の民主党員)が共同で主導したものであると指摘し、「営利目的の商業的な海賊ストリーミングサービス」のみに適用されることを強調している。

「オンラインによるストリーミングコンテンツへの移行は、著作権で保護された素材を違法に配信する犯罪的なストリーミングサービスを生み出し、毎年300億ドル(約3兆1000億円)近くの損失を米国経済に与え、米国人が楽しむ創造的なコンテンツの制作を阻害しています」と、ティリス氏は声明で述べている。「私はクリエイター、ユーザーグループ、およびテクノロジー企業の意見を取り入れて起草されたこの常識的な法案が法律になることを誇りに思っています。これは犯罪組織を標的にしたものであり、個人的なストリーマーが起訴の恐れを心配する必要がないことを保証できます」。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:アメリカ音楽ストリーミング動画配信著作権

画像クレジット:Patrick Foto / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)

Spotifyがアーティストやレーベル自身が曲のプロモーションを行える機能を追加

Spotify(スポティファイ)は米国時間11月3日、同社のプラットフォーム上でどのように音楽が見つけられるかと言う点において、アーティスト自身の意見がより尊重されるようにするための新サービスのテストを開始すると発表した。アーティストやレーベル自らが優先的に売り出したい曲を特定し、その後Spotifyがその曲がパーソナライゼーションアルゴリズムによって浮上するようにする信号を加えるという仕組みである。

この新サービスは有料プロモーションではなく、アーティストやレーベル側は前もって料金を払う必要はないが、同社によるとアーティストやレーベル、権利者は同社がサービスを提供しているストリームに対して「プロモーション用の録音使用料」を支払うことに同意することになるという。ただし、アプリ内の他のカテゴリーからのストリームに関してはこの規約は適用されない。

同サービスの開始直後は、Spotify Radioや自動再生などSpotifyアプリの一部でのみプロモーション料金が適用される。プロモーションされたトラックはアルゴリズムでも編集でもプレイリストに表示されることはない。しかし同社は将来的な拡張を否定しているわけでもない。

「弊社は、あらゆる段階にいるどんな規模のアーティストにもこのツールを提供できるようにしたいと考えていました」とSpotifyのプロダクトマーケティングリーダーであるCharleton Lamb(チャールトン・ラム)氏はこの新サービスについて説明する。同氏によると、これが同社がアーティストやレーベルに前払い料金を要求しない理由である。

「我々はより受け入れられやすく、より民主的で公平なモデルを追求していました。このモデルにより本当に無名のアーティストでも一流レーベルと同じレベルのプロモーションが行えるようになるのです」とラム氏。

画像クレジット:Spotify

このプロモーションによってあるトラックが成功した場合、音楽の人気が高まりプロモーション料金が低いエリア以外での再生回数が増えると、権利所有者は全体的にプラスのROIを得ることができる。このツールにプラスの経済的利益がない場合、アーティストはいつでもプロモーションをオフにすることができる。

同社はプロモーションの使用料の変更に関しては明らかにしていないが、同テストの結果として調整される可能性はあると伝えている。

同社はまた、リスナーの興味の度合いを考慮した上で変更を考えていきたいと強調している。音楽のパフォーマンスが良ければプロモーションを継続するし、そうでない場合は中止されるとのことだ。

「我々はレーベルやアーティストに曲のあっせんを保証するわけではなく、あくまでもリスナーが聴きたいと思うもののみをお勧めするまでです」とSpotifyは発表の中で伝えている

プロモーショントラックは、ユーザーが既にそのジャンルやそのアーティストを聴いている場合に現れるのが通常だが、それ以外にもユーザーがその音楽を気に入る可能性があることを示すシグナルが見られる場合にも提示されるとラム氏は言う。例えばユーザーが既に聴いている音楽と音響的に類似している場合、その類似したプロモーショントラックがユーザーに提示される可能性がある。また、ユーザーが似たようなアーティストを聴いていたり、同じような趣味の人がその音楽を聴いていたりする場合にも、その曲がユーザーに提示されることがある。

その逆もまたあり得る。ユーザーと似たような音楽の趣味を持つ人がセッション中にその曲をスキップしたり、ラジオからのストリーミングの頻度を減らしたりして、プロモーショントラックに否定的な反応を示した場合、その音楽のプロモーションは中止される可能性がある。

「レコメンデーションのせいでリスナーが否定的な反応をしたり、ラジオシステムにあまり関心を示さない場合、推薦の仕方を調整することになります」とラム氏。

また、リスナーへ勧める曲のプールは24時間ごとに更新されるため、このユーザーフィードバックのループはトラックのプロモーション範囲にすぐに影響を与えることができると同氏は指摘する。

現時点ではアーティストやレーベルが一度にプロモーションできる楽曲数に制限はなく、プロモーションの時間枠にも制限はない。

アーティストはいつリリースした曲でもプロモーションを行うことができるが、Spotifyとしてはこのツール最大の焦点は音楽をある文脈に当てはめるカタログ化であると考えている。例えばアルバムのアニバーサリーを祝ったり「文化的瞬間」を利用したいと考えている場合である。

つまり、あるアーティストの古い曲が突然人気を得た場合、このサービスが役立つかもしれない。これはTikTokの存在により最近頻繁に見られるようになった現象だ。TikTok上でのバイラル動画である古い楽曲がBGMとして使用された場合にこういった古い曲が表面化して人気となる場合があるからだ。

例えば、TikTokユーザーで@420doggface208として知られているNathan Apodaca(ネイサン・アポダカ)氏が、バンドFleetwood Mac(フリートウッド・マック)の「Dreams」に合わせてOcean Sprayのクランラズベリージュースを飲みながらスケートボードをしているビデオを録画したところ、1977年のこの名曲が再びチャートのトップに返り咲いたと言う例がある。

@420doggface208Morning vibe #420souljahz #ec #feelinggood #h2o #cloud9 #happyhippie #worldpeace #king #peaceup #merch #tacos #waterislife #high #morning #710 #cloud9♬ Dreams (2004 Remaster) – Fleetwood Mac

TikTokによると、9月25日の動画公開から10月中旬までの間に、TikTok動画内での「Dreams」の1日における平均利用率は1380%に達し、売上は374%、ストリームは89%増しとなったとのことだ。これによりこの曲は43年ぶりにBillboard Hot 100に21位で再登場し、またSpotifyのグローバルチャートと全米チャートのトップ10入りを果たし、Apple Musicでも1位を獲得した。

これこそがSpotifyが今後利益を得ようとしている「文化的瞬間」と言うわけだ。

このサービスはいわゆる「有料再生」モデルではないものの、音楽プロモーションのための有料サービスであり、ストリームが新ツールで「プロモーション」されるとSpotifyは効果的に利益を得ることができるようになる。

Spotifyは数年前から有料再生市場への参入を進めてきた。2019年には、アーティストがレコメンド用の画面を購入して、Spotifyがファンとして特定したユーザーにニューアルバムのプロモーションを行うことができる新機能を導入した。ローリングストーン誌が内部文書を引用して述べたところによると、広告クリック1回あたりのコストは55セント(約57円)だという。

この機能はこういった通知を歓迎する可能性の高いユーザーをターゲットにしてはいたものの、多くの資金を費やすことができるレーベルが最も多くの再生を得ることを意味するため、ある意味での賄賂であると批判されていた。

ここ数年間、Spotifyはプレイリストに賄賂が絡んでいるとして批判の対象となってきた。2018年にはアプリ内のブラウズやプレイリストなどのセクションにラッパーのDrake(ドレイク)の画像やアルバムを次々と並べ、ダンスヒットやポップスなど彼の音楽が一切含まれていないプレイリストにさえにもDrakeの画像を使用したあまりにも大掛かりなアルバムプロモーションでユーザーの怒りを買ったことで有名だ

一方で、この新サービスはすでに気に入って聴いているユーザーにトラックをおすすめするという方法のため、これまでのプロモーションの問題点に対処することが可能となるだろう。ポップアップ広告や過剰なグローバルプロモーションよりも控えめなものとなる。

Spotifyはこれまでに少数のパートナーと技術テストを行なってきたが、今後は米国内でのテストを本格的に開始すると伝えている。

テスト期間中、同社はインディーズとメジャーの両方を含む少数のレーベルと連携し、さまざまなフィードバックを得る予定だ。Spotifyによるとこの機能を今後グローバルに拡大していく予定であるという。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Spotify 音楽ストリーミング

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(翻訳:Dragonfly)

Sonosが月840円のストリーミングラジオサービスを米国と英国で開始

世界には音楽ストリーミングサービスが溢れている。しかしSonos(ソノス)はもう1つ登場させることを決めた。広告が入るSonos Radioの2020年4月の立ち上げに続き、同社はSonos Radio HDという講読料月7.99ドル(約840円)のプレミアム版を発表した。名称から察せられるように、これはSpotify(スポティファイ)やApple Music(アップルミュージック)のような本格的な音楽サービスというよりストリーミングラジオサービスだ。

また名称からもう1つわかることは、ビットレートが高いことだ。通常のラジオが128kbpsなのに対し、Sonos Radio HDは16bitでCDと同等の音質となる。広告が入らないプレミアム版ではまた、Sonos Radioではできない曲送りやリプレイに対応する。

Radio HDでのみ提供されるステーションもわずかながらある。Sonos RadioのThom Yorke(トム・ヨーク)、Brittany Howard(ブリタニー・ハワード)、Jack White(ジャック・ホワイト)、Ludwig Göransson(ルドウィグ・ゴランソン)のステーションに加え、Radio HDではDolly Parton(ドリー・パートン)のSongteller Radioが提供される。筆者が知る限り、みなドリー・パートンが好きなので、Radio HDで聞けるのはいいことだ。そしてアーティストがキュレートする別のステーションも今後投入されることになっている。

他にもいくつかのキュレートされたジャンルステーションや、リラックス、生産性、ホワイトノイズ、ピンクノイズ、ブラウンノイズ、雨、熱帯雨林、ピアノサウンドといった異なるムードに合わせたたくさんの「サウンドトラック」もある。

Sonosによると、オリジナルのSonos RadioはいまSonosスピーカーで利用されているストリーミングサービスの中で第4位という。これには無料であることが貢献しているのはまぎれもない事実だろう。さまざまな選択肢があるなかで、月8ドルというプレミアムサービスは苦戦するのではないと筆者は考えている。

同サービスは11月12日から米国と英国で利用でき、最初の1カ月は無料で試せる。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Sonos音楽音楽ストリーミング

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(翻訳:Mizoguchi