ツイッター、ロシアのユーザーがインターネットブロックを回避できるTorサービスを開始

Twitter(ツイッター)は、ウクライナ侵攻後のロシアでブロックされた数日後、Tor(トーア)オニオンサービスを起ち上げた最新の大手テック企業となった。このサービス開始により、ロシアのTwitterユーザーは、国全体で情報の流れを妨げている政府のインターネットブロックを回避できるようになる。

米国時間3月8日に発表されたこのプロジェクトの背後には、Torネットワークに長く携わってきたサイバーセキュリティ研究者Alec Muffett(アレック・マフェット)氏がいる。Twitterの新しいTorサービスは、マフェット氏が開発した、ウェブサイト所有者が数分で自分のサイトのドメインに「.onion」URLを追加できるEnterprise Onion Toolkit(エンタープライズ・オニオン・キット、EOTK)というツールをベースに、Twitterの「並外れた生産要件」に合わせてカスタマイズされたバージョンとなっている。

「これはおそらく、私が今まで作成した中で最も重要かつ待望されたツイートです」と、マフェット氏はツイートしている。「Twitterに代わって、彼らの新しいTor Projectオニオンサービスを発表できることを、大変うれしく思います」。

マフェット氏によると、このソーシャルメディアプラットフォームのTor版は、同氏がFacebook(フェイスブック)のTorサービス開始を手伝った2014年から、ゆっくりと開発が進んでいたという。Facebookは2016年の時点で、Torブラウザーを使って同プラットフォームにアクセスする人の数が、100万人を突破したと発表している。

Torネットワークは「オニオンルーター」とも呼ばれるもので、インターネットトラフィックを暗号化し、世界中にある何千ものサーバーを経由することで、ユーザーに匿名性と、監視や検閲からの自由を提供する。

Twitter in the Tor browser.

TorブラウザでTwitterを閲覧したところ(画像クレジット:TechCrunch)

TwitterがTorサービスを開始したのは、ロシアが情報の自由な流れを弾圧し続ける中、同国の通信規制当局であるRoskomnadzor(連邦通信・情報技術・マスコミ分野監督庁)によって同ソーシャルネットワークのサービスがブロックされているようだと報道されてから、わずか数日後のことだった。この報道を受け、TwitterはTechCrunchに対し、ロシアのユーザーが同社のサービスに「ますますアクセスしにくくなっている」ことを認め、調査を行い完全なアクセスを回復するよう取り組んでいると述べていた。

Twitterは、Torサービスのタイムリーな開始が、ロシアにおける明らかなブロックと直接関係があるかどうかについては言及を避けたが、Twitterの広報担当者は、ユーザーがよりアクセスしやすいサービスを提供するための取り組みは、同社にとって「継続的な優先事項」であると述べ、Twitterがサポートするブラウザに、現在はTorが含まれていることも指摘した。

TwitterのTorバージョンのアドレスは次のとおり。twitter3e4tixl4xyajtrzo62zg5vztmjuricljdp2c5kshju4avyoid.onion

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

原文へ

(文:Carly Page、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Metaの低価格通信サービスExpress Wi-Fi停止、サハラ以南の国々への影響大

サハラ以南のアフリカ諸国は、Meta(メタ)が5年前に開始した、サービスが行き届いていない地域での接続を促進するための低価格のExpress Wi-Fiインターネットの廃止計画による影響を最も大きく受けている。

Meta(旧Facebook)は、2022年後半にこのプログラムを終了する予定であることを静かに通告した。しかし、ケニアなどの国では、2020年12月中旬からサービスを停止している。

Metaが人工衛星通信事業者のEutelsat Konnect(ユーテルサットコネクト)と提携し、コンゴ民主共和国、ナイジェリア、ケニア、コートジボワール、ザンビア、カメルーン、ガーナ、ジンバブエ、マダガスカル、ガーナ、南アフリカ、ウガンダの一部へと低コストのインターネットサービスを拡大してからようやく1年というところでのサービス停止だ。

その他、マラウイ、ブルキナファソ、ギニア、セネガルなど、アフリカ、アジア、南米の30カ国以上でExpress Wi-Fiは展開された。

「5年以上の運営を経て、Express Wi-Fiプログラムは終了を予定しています。パートナー企業とともに、Express Wi-Fiプラットフォームを通じて、30カ国以上で公衆Wi-Fiアクセスの拡大を支援しました。当社は、他のプロジェクトの開発に集中するために、このプログラムの作業を終了しますが、より良い接続性を提供するために、通信エコシステム全体のパートナーと協業することに引き続き尽力します」とMetaは通知で述べている。

「2022年後半にこのプログラムに関する作業を終了する際、Express Wi-Fiパートナーと密接に連携して、パートナーのビジネスと顧客の接続性への影響を最小限に抑えるようサポートします」。

ソーシャルメディアの巨人Metaは、ISPやモバイルネットワーク事業者などのパートナーと協力し、地方や都市部の市場などの公共の場や学校などの施設で、Wi-Fiホットスポットを通じて、人々がネットに接続できるようにしてきた。パートナーが小売店や代理店が販売するインターネットセット商品の価格を設定する。

このプログラムは、世界で最も接続性が低いアフリカなどの新興市場におけるインターネット格差を埋めるという構想のもとに展開された。2021年のGSMAモバイル経済レポートによると、現在サハラ以南のアフリカでモバイルインターネットに接続しているのは人口の約28%だ。これに対し、ヨーロッパなど他の地域の接続率は80%を超えている。Metaの野心的なExpress-Wifiプロジェクトは、このインターネット格差を埋めることを意図していた。Metaは、低コストインターネット戦略の一環として、4万5000キロメートルの2Africa海底ケーブルをアフリカ、ヨーロッパ、アジアに延長している。

Google(グーグル)も南アフリカ、ナミビア、ナイジェリア、セントヘレナにまたがる海底ケーブルEquianoを敷設中で、これはアフリカとヨーロッパを結ぶものだ。インターネットインフラの整備が進めば、接続性も高まることが予想される。

国際金融公社(IFC)は、アフリカのインターネット経済は、デジタル消費の拡大、都市化の進展、スマートフォンの急速な普及などにより、2025年までに1800億ドル(約20兆7200億円)に達し、アフリカ全体のGDPの5.2%を占める可能性があると推定している。

画像クレジット:Meta

原文へ

(文:Annie Njanja、翻訳:Nariko Mizoguchi

SpaceXが月額約5.7万円の「プレミアム」Starlinkプランを発表、最大500Mbpsの速度を実現

SpaceX(スペースX)は、同社の衛星インターネットサービスStarlink(スターリンク)において、より高いパフォーマンスと目を疑うような価格の新サービスプランを発表したとThe Vergeが報じた。「Starlink Premium(スターリンクプレミアム)」と名づけられたこのサービスは、150〜500Mbpsの速度を20〜40msの遅延で提供するとのこと。従来の50〜250Mbpsから速度はアップし、同じ遅延ということになる。アップロード速度も、標準プランの10〜20Mbpsから、プレミアムでは20〜40Mbpsに向上している。

だが約2倍のパフォーマンスアップのためには、5倍の料金を支払わなければならない。標準プランの月額99ドル(約1万1300円)に対し、Starlink Premiumプランは月額500ドル(約5万7200円)となる。また、アンテナなどのハードウェアには、標準プランの499ドル(約5万7100円)に対し、2500ドル(約28万6000円)が必要となり、Premiumアンテナの予約には500ドル(約5万7200円)の保証金が必要となる。

SpaceXによると、この新サービスは「極端な気象条件」でもより確実に機能し、顧客は優先的に24時間年中無休のサポートを受けることができるという。このサービスは、多くの遠隔地で利用できる高速インターネットの唯一の選択肢となる可能性が高く、そうした環境で優れた耐候性は重宝されるだろう。

SpaceXは、2021年10月にStarlinkのベータ版を発表し、同年11月には、オリジナルの円形衛星アンテナよりもはるかに小さく薄い長方形の新しい衛星アンテナを発表した。新しいPremiumアンテナはそれよりも大きく「ネットワークの使用量がピークに達したときでも、重要な業務のための帯域幅を確保するのに役立つ」とSpaceXは述べている。

Starlinkは、1月中旬時点で2000基以上の衛星を打ち上げており、約1500基が運用軌道に乗っている。現行システムでは、現在の約3倍となる最大4408基の衛星運用が認められている。Premiumプランは2022年第2四半期に納入開始を予定しており、現在注文受付中だ。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Steve Dent(スティーブ・デント)氏は、Engadgetのアソシエイトエディター。

画像クレジット:Starlink

原文へ

(文:Steve Dent、翻訳:Aya Nakazato)

【コラム】屋上レンタル、米国の不動産所有者は5Gキャリアと手を結ぶべきだ

5Gインフラを敷設する動きが活発になり各社の競争が激しくなるに連れ、レストラン、ホテル、住居用建物、さらには病院や教会の屋上までもがインフラ敷設場所として注目されている。5Gテクノロジーを人口密度の高い地域に確立したいと考えるテレコミュニケーション会社にとって、こうした屋上は急速に重要な不動産ターゲットとなりつつある。

事実、次世代のワイヤレス展開から得られるリース収入は、今後5年間で、米国内のリース収入の大きな部分を占めると考えられており、不動産所有者や事業主にとって大きなチャンスとなる。

バイデン政権は、5Gインフラの拡大を国の主要課題として位置付けている。1.2兆ドル(約137兆円)のインフラ投資法では、農村部やサービスが十分行き届いていない地域でも高速回線を利用できるようにするための財源として650億ドル(約7兆4000億円) が確保されている。5Gは他のワイヤレステクノロジーと比べて高速で大容量のデータを処理できるが、カバーできる範囲は最大で 約1500フィート(約457メートル)と、ぐっと狭い。

5G テクノロジーは、次世代ワイヤレスネットワークとしてはアンテナが短いため、既存の建物の屋上に敷設するのに非常に適している。

大手ワイヤレス通信プロバイダーに加え、5Gの展開競争には新たにケーブル会社やビックテック企業も含まれている。これらの企業は、5Gマクロおよびスモールセルサイトを配備するために、合わせて2750億ドル(約31兆円)を投資すると予測されている。必要な量の配備を効果的かつ効率的に行う唯一の方法は、既存の建物を利用することである。言い換えれば、5G競争を乗り切るには、屋上配備戦略の採用が鍵になるのだ。

歴史的に言って、ワイヤレス通信市場は不動産所有者やその他の事業主にとっては厳しい市場だった。ワイヤレスキャリアとタワー企業が長期契約を結んでおり、不動産所有者にとって有利とはいえない状況になっていたのだ。

多くの地域では、新しいタワーを立てることに強い反対の声があり、さらに建設、ゾーニング、許可プロセスには時間がかかる。しかし、5G テクノロジーは、次世代ワイヤレスネットワークとしてはアンテナが短く、既存の建物の屋上に敷設するのに非常に適している。現在5Gキャリアにとって、ワイヤレスに関する不動産要件を満たすには、タワー企業より大手不動産業者のほうが、迅速に効率よくソリューションを提供してくれる相手となっている。

屋上配備戦略は、5Gキャリアにとっても不動産所有者にとっても互いにメリットがある。キャリアは使用量の多い地域でできる限り迅速にインフラを配備するという目的を達成することが可能であり、一方不動産所有者は、屋上からリース料を得、すでに所有する不動産を新たな方法で収益化するという経済的利益を得ることができる。

不動産所有者の経常利益に与える影響と、30年リースで生み出されるであろう利益は相当なものであり、不動産所有者は資本へアクセスしやすくなる。さらに不動産所有者は、5Gキャリアに屋上を貸すことで使用料を得ることができるだけでなく、高速回線への接続という意味で、テナントにより質の高いサービスを提供することもできる。

5G展開競争で問題になっている事柄

米国にとって、競争に遅れを取らず国際的な競争力を保つためにも5Gインフラの展開は非常に重要である。5Gは高速での接続、キャパシティの増加、ゼロ遅延をもたらすが、5Gにより期待されるのは、自動運転車や遠隔医療の拡大、製造や農業の効率化、サプライチェーン管理の改善まで、さまざまな事業サービスを可能にするイノベーションの推進である。

これらのイノベーションから生み出される利益すべてを考慮すると、5Gは2025年までに米国のGDPのうち、1兆5000億ドル(約170兆円)以上をもたらすと予測される。

またバイデン政権は、5Gテクノロジーとユニバーサルブロードバンドを、地方に暮らす人々に経済的な平等もたらす手段と考えている。政策声明によると、農村部では都市部と比較して信頼のおけるインターネットの利用が10分の1に限られているとのことである。

最近バイデン大統領が署名したインフラ投資法においては、大統領も国会も農村部におけるブロードバンドインフラへの投資を優先し、十分サービスが提供されていない地域でのインターネットへのアクセスを拡大し、デジタル上の分断を是正したい考えだ。このため、農村部の不動産所有者は5Gインフラの展開からより多くの利益を得ることができるだろう。

強力な5Gネットワークを米国内に確立するには時間がかかるだろう。5Gプロバイダーやワイヤレスキャリアと手を結ぶ不動産所有者は、5Gテクノロジーのサイバーセキュリティにまつわる考慮事項について、しっかり情報提供を受け、それを理解しなければならない(これらの考慮事項が、提携の足かせになると考える必要はない)。というのも不動産所有者は5Gインフラを自身の不動産に配備し、そこからのワイヤレスネットワークを入居者に提供することになるからである。

最近2,300人以上のリスク管理者および他の責任者を対象にAonが行った調査では、サイバーリスクは現在のそして将来予想される世界的リスクの第一位として位置付けられた。5Gが普及し接続性が高まることは確実である。つまり、サイバーセキュリティ業界は機械学習や人工知能を改善しそれを広く活用し防御を強化する必要があるのである。

また最近では、不動産業界におけるサイバーセキュリティ強化を促進するためのガイダンスやフレームワークを提供する Building Cyber Securityといった組織も立ち上げられている。

不動産所有者が効率よく屋上を収益化し5G競争に参画するには、政府や民間企業が5G敷設要件の審査をタイムリーに行うことも含め、引き続き迅速な5Gインフラの配備に向け協力して作業を進めていく必要がある。

これに加えて、州や地域レベルでも、5Gアンテナの敷設に関するゾーニングや認可プロセスを改善する作業をもっと進める必要がある。多くの州議会がすでに州民の利益になる5G戦略を策定するための法案を検討中であり、これにより、不動産所有者にも新たな機会が提供されることが見込まれる。

5Gの競争を促進するためは、より多くの政策や技術的な作業が必要だが、不動産所有者が利益を手にする機会は、目の前に手に取れる形で存在している。新型コロナウイルス感染症によって経済的打撃を受けたレストラン経営者やホテル業者が立ち直ろうとする中、屋上の収益化は、店を閉じるしか選択肢がなかった状態との違いを生み出すことになるだろう。

編集部注:本稿の執筆者James Trainor(ジェームズ・トレーナー)氏は、FBIのサイバー部門の元アシスタントディレクターで、Aonのシニアバイスプレジデント。Rick Varnell(リック・ヴァーネル)氏とMatt Davis(マット・デイビス)氏は、いずれも5G LLCの創設者であり、プリンシパル・パートナー。

画像クレジット:skaman306 / Getty Images

原文へ

(文:James Trainor、Rick Varnell、Matt Davis、翻訳:Dragonfly)

SpaceXのStarlinkがインド法人を設立、2022年末までにターミナル20万台の展開を目指す

KDDIがイーロン・マスク氏率いるSpaceXのLEO衛星通信サービスStarlinkをau通信網に採用

関係者によると、Elon Musk(イーロン・マスク)氏が率いるSpaceX(スペースX)の子会社Starlink(スターリンク)はインドで法人登録を行い、現地政府へのライセンス申請の準備を進めている。

Starlinkのインド担当ディレクターであるSanjay Bhargava(サンジェイ・バルガヴァ)氏は、11月1日にLinkedInへの投稿で「SpaceXがインドに100%出資の子会社を設立したことを喜んでお伝えします」と述べた。Starlinkのインド現地法人は、Starlink Satellite Communications Private Limitedという社名で登録されている。

インターネット企業がインドでサービスを提供するためには、現地法人が必要だ。ライセンスを取得すると仮定して、Starlinkは2022年12月までに16万以上の地区で20万台のターミナルを提供することを計画している。これは、8月時点で14カ国でユーザー10万人にターミナルを出荷した同社にとって野心的な目標だ。

PayPalの元幹部であるバルガヴァ氏は、10月初めに新しい役職に就いた。Starlinkはここ数カ月で、AMDのインドにおける政策活動を監督していたParnil Urdhwareshe(パーニル・ウルドワレシェ)氏をインド事業のマーケット・アクセス・ディレクターとして採用するなど、現地で重要な幹部を多数採用してきた。

SpaceXの広報担当者は、バルガヴァ氏の起用について9月に送った問い合わせに回答しなかったが、同社の最高経営責任者であるマスク氏は、週末にツイッターでこうした展開を認めた。

小型衛星を打ち上げて地球低軌道ネットワークを構築し、低遅延のブロードバンドインターネットサービスを提供している代表的な企業の1つであるStarlinkは、インドの農村地域へのサービス提供を目指していると、マスク氏はツイッターで述べ「サンジェイはX/PayPalを成功に導き、賞賛に値します」と付け加えた。

バルガヴァ氏はLinkedInへの別の投稿で「Starlinkは、十分なサービスを受けられない人々にサービスを提供したいと考えています。ブロードバンドプロバイダーの仲間や、志の高い地区のソリューションプロバイダーと協力して、人々の生活を改善し、救っていきたいと考えています」と述べた。週末には、インドの有力シンクタンクであるNiti Aayogと協力して、Starlinkの初期展開に向けて国内12地区を特定すると発表した。

インドでは、5億人以上がインターネットを利用しているにもかかわらず、同じくらい多くの人々がいまだにインターネットを利用していない。業界の推計によると、農村部に住む何億人ものインド人が、ブロードバンドネットワークにアクセスできていない。

「政府の承認プロセスは複雑です。今のところ、政府に申請中のものはありません。我々が取り組んでいる申請については、我々の側にボールがあります」とバルガヴァ氏は述べた。

「全インドでの承認に時間がかかる場合は、パイロット版の承認を迅速に得るというのが我々のアプローチです。今後数カ月のうちにパイロットプログラムの承認または全インドの承認を得られると楽観的に考えています」とバルガヴァ氏は先月話し、もし政府の承認を得られなかった場合、来年末までに配備する実際のターミナル数は目標よりはるかに少ないか、あるいはゼロになる、と付け加えた。

画像クレジット:Joan Cros / NurPhoto / Getty Images

原文へ

(文:Manish Singh、翻訳:Nariko Mizoguchi

【コラム】国家による「インターネット遮断」が政治的な武器に、今こそ武装解除すべきだ

21カ国の権威主義的な政府は、2021年に入ってから少なくとも50回は意図的にインターネットサービスを停止しており、この問題はさらに悪化することが予想されている。ベネズエラでは選挙が行われ、キューバでは抗議活動が行われているが、政府にとってデジタルでの自由を制限することで反対意見を封じ込めることが容易になっており、その方法もますます大胆になってきている。

インターネットを遮断することは、スイッチを入れるだけで簡単にできてしまう。2011年にはホスニ・ムバラク政権下のエジプトでこの方法がとられ、その10年後にはミャンマーで毎日のようにインターネットが遮断される状態が数カ月続き、何十万人もの人々からコミュニケーションの手段を奪い、同国のGDPを2.5%減少させたと言われている。今週、スーダンでは、軍事クーデターが続く中、市民がインターネットへのアクセスに支障をきたしている。

しかし、ほとんどの政府が、微妙な姿勢をとっている。

イラン政府は「緑の運動」が起こった2009年にいち早くウェブサイトをブロックした。また、チュニジアのように、2021年の説明責任の強化を求める抗議活動の中で、特定のウェブサイトのみをブロックした国もある。最近では、政府がインターネットサービスプロバイダをコントロールすることで、特定のドメインを使い物にならない速度まで「スロットル」、つまり減速させるケースが増えている。例えば、ロシアでは最近、野党のAlexei Navalny(アレクセイ・ナヴァルニー)氏に関する「好ましくない」コンテンツの削除を拒否したTwitter(ツイッター)に対してスロットルをかけた。

各国政府は、インターネットへのアクセスを制限する理由についていくつか挙げている。国家の安全保障や、デモの際の暴力への懸念などがその理由として多い。しかし、人々の生活の多くがオンラインで行われるようになった今、政府がインターネットへのアクセスを制限することは、安全、自由、幸福に対する重大な脅威となる。

インターネットが国境を越えたグローバルなネットワークとして発展してきたことは、情報を発見する新しい方法や組織化する新しい手段を提供し、人間の自由に貢献してきた。しかし、真にグローバルで開かれたインターネットに対して、驚くほど多くの政府が反対しており、私たちの生活の多くの側面がオンラインに移行するにつれて、自由がますます損なわれていく危険性があるのだ。

意図的な遮断の問題は深刻化している。国連の特別報告者であるClement Voule(クレメント・ブール)氏は最近、遮断がさらに悪化し、広範囲に及んでいると警告している。インターネットの遮断は、政府が国際社会の怒りを買うことなく反対意見を封じ込め、国民を統制するための主要な手段として、ますます利用されるようになっている。

インターネットの遮断は、通信手段の制限にとどまらず、商業や貿易の停止による経済の停滞、学校へのアクセスの妨げ、人命の危険など、さまざまな影響を及ぼす。しかし、スロットリングのような秘密裏に行われる妨害技術が一般的になるにつれ、遮断の検知はより困難になってきている。ただ、インターネットが複雑化しているため、政府が国民のアクセスを制限したときに何が起こっているのかを判断するのは難しい。そもそも目に見えないものを非難することは不可能でもある。

部分的なインターネットの遮断であっても、それを記録することは、この問題を世界的に解決するための重要な第一歩となる。いかなる政府も、国際社会に知られることなくインターネットを遮断することはできないはずだ。Jigsaw(ジグソー)は、Access Now(アクセス・ナウ)、Censored Planet(センサード・プラネット)、ネットワーク干渉公開観測所(OONI)などの研究者と協力して、情報を公開し、理解を深め、遮断の影響を軽減することを目指している。

インターネットの遮断による影響を軽減するためには、さまざまな手段がある。メッシュネットワーク、仮想プライベートネットワーク(VPN)、そして共有プロキシサーバーを使えば、インターネットが停止している間、人々がオープンウェブに接続するための手段を提供してくれる。また、インターネット全体の標準規格を導入することで、ドメインレベルでのスロットルを難しくすることも可能だ。

しかし、技術は解決策の一部に過ぎない。将来的なシャットダウンを防ぐためには、政治的な行動が必要であり、国際社会の監視のもと、そうした行動自体のコストを高める必要がある。

105カ国、240以上の団体で構成される「#KeepItOn」運動のように、インターネットの遮断を強調する草の根活動は、将来の遮断を防ぐための支持活動、技術支援、法的介入などを行っている。

民主主義政府も団結して行動すべきだ。

世界で最も技術的に進んでいる民主主義国が、T-12や日米豪印戦略対話(Quad)といったグループで技術問題に関する多国間の調整を正式に行う際には、インターネットの遮断をその議題の重要な主軸として優先させるべきだ。経済協力開発機構(OECD)を通じ、米国および志を同じくする国々は、オンラインの自由を約束する35の民主主義国で織りなすフリーダム・オンライン連合の活動を基盤とし、脅威の技術的側面の理解や、技術的および政策的対応を構築するための資金調達を強化することができるはずだ。また、将来的な遮断の際には、連合として非難を表明し、国際人権法上の義務に違反している国に制裁を加えるための「レッドライン」を明確にすることもできるはずだ。

このような課題はあるが、自由で開かれたインターネットを求める声を上げるのは、民主主義国にかかっている。そうして初めて、誰もがアクセスできるインターネットという約束が果たされるだろう。

編集部注:本稿の執筆者Scott Carpenter(スコット・カーペンター)氏はJigsawのPolicy and International Engagementのディレクター。Google以前は、Washington Institute for Near East PolicyのKeston Family Fellowや、民主主義・人権局の米国国務副次官補を務めていた。

画像クレジット:Jonathan Kantor / Getty Images

原文へ

(文:Scott Carpenter、翻訳:Akihito Mizukoshi)

Verizonがアマゾンと提携し米国の農村部に衛星インターネットを提供

Amazon(アマゾン)のインターネット衛星が、農村部におけるブロードバンド提供拡大のために投入される。CNBCの報道によると、Verizon(ベライゾン)はAmazonと提携して、米国の農村部における固定無線インターネット接続を改善しようとしている。この提携ではまず、Amazonの「Project Kuiper(プロジェクト・カイパー)」を「バックホール(基地局と基幹通信網をつなぐ回線)」に利用してベライゾンのLTEおよび5Gサービスを拡大することに注力し、高速データがほとんどあるいはまったくない地域でのカバレッジを高める。


その後、両社はスマートファームや交通機関など、世界中の産業に一元管理されたインターネットアクセスを提供したいと考えている。現時点では、すでに開発されているProject Kuiperのアンテナ技術を用いて、農村部のブロードバンドの技術要件を確立中だ。

両社はこの衛星を使ったサービスのスケジュールについて明らかにしていない。AmazonはこのほどProject Kuiperのためのロケット打ち上げを明らかにしたが、衛星の半分が地球低軌道に乗るのは2026年になると予想している。遅くとも2029年7月には完全なコンステレーションが完成する見込みだ。

2社の提携には「敵の敵は友達」という側面がある。AmazonとVerizonは、急速に発展しているSpaceX(スペースX)のStarlinkサービスに対抗しようと競い合っている。Starlink が強固に足場を固めると、Google(グーグル)などの法人クライアントを含む顧客を失うリスクがあるからだ。とはいえ、米国人にとっては、より多くの地域で高速インターネットが利用できるようになるというのはどうでもいいのかもしれない。FCC(連邦通信委員会)が5Gに数十億ドル(数千億円)を投資しているにもかかわらず、地方におけるインターネット提供は完全とは程遠い。今回の提携により、以前のように農村部に回線を引くことなく、インターネット格差を埋めることができるかもしれない。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者のJon FingasはEngadgetの寄稿者。

画像クレジット:Amazon

原文へ

(文:Jon Fingas、翻訳:Nariko Mizoguchi

農村部や遠隔地の何十億人たちにラストワンマイルのインターネット接続を提供するMesh++が約5.6億円調達

もしあなたがサンフランシスコ湾の水際に立って眺めたとしたら、おそらく6つほどの高速インターネットプロバイダーがあなたにギガビットのインターネットを提供しようと躍起になっていることを知ることになる。しかし、世界の農村地域に住む何十億もの人たちは、もしあるとしても、それ以下のサービスしか受けられないことが多い。その市場こそがMesh++(メッシュプラスプラス)が狙う場所で、同社はこのたびその構想を実現するための資金を獲得した。シカゴとナイロビに本拠地を置くこのチームは、農村や十分なサービスを受けていないコミュニティにインターネット接続を提供することに注力している。

計画されているソリューションはエレガントだ。利用者が無線LANルーターを電源に接続すると、そのルーターは近くにある他のMesh++ルーターを探す。そしてメッシュネットワーク上で利用可能なインターネット接続が共有されるのだ。それぞれのルーターがノードとなって、Wi-Fiの恵みをその土地に広げていくということだ。同社は、1つのノードで10エーカー(約4万500平方メートル)の広さのWi-Fi接続を実現し、最大100人をサポートできるとしている。接続性の問題や停電などで局所的にインターネット接続がダウンしても、ネットワークの他の部分がそれを補うことができる。また、インターネット接続が完全にダウンした場合でも、ネットワーク内のメッセージングやニュースのアラートなどを使った内部のコミュニケーションに利用することができる。

インターネットへの接続は、イーサネット、携帯電話モデム、複数のポイントなど、さまざまな場所を経由して行うことができる。イーサネットや携帯電話モデムのセットをネットワークに配置し、すべてのソースからの帯域を集約することができる。そのため、そのうち1つが故障しても他が補うことができる冗長なネットワークを構成することになる。このやり方が、別途接続を確保する分離したネットワークに比べて賢いのは、とても信頼性の高いネットワークを構成できることだ。例えばファイバーのインフラがすでに故障し始めているような古い街にファイバーネットワークを敷設する場合などにも使うことができる。また、ソースを集約できるこのようなネットワークを持つことで、通常は信頼できないようなソースでも、失敗しても大ごとにはならないので、信頼して使うことができる。このようにして、非常に弾力性のあるネットワークを作ることができるのだ。

すべてが計画どおりに動いている日常的な接続性はもちろん、ネットワークは災害時にも耐えられるものでなければならない。これは2年前に実証されることになった、当時ハリケーン・アイダによってニューオリンズの広大な範囲で接続性が失われた事象が発生したが、同社のネットワークはダウンタイムなしに継続したと主張されている。

もちろん、農村部や遠隔地でのインターネット接続にはさまざまな課題があるが、Mesh++のソリューションは、アクセスと平等の観点から課題に取り組んでいる点が印象的だ。Elon Musk(イーロン・マスク)氏のStarlink(スターリンク)に比べれば、こちらの方がより平等性が高いのは確かだが、同時にインターネットのゲートウェイとして宇宙とつなぐStarlinkと、農村部のインターネット接続のローカル配信のためのMesh++の組み合わせも容易に想像することができる。

Mesh++のCEOであるDanny Gardner(ダニー・ガードナー)氏は「世界中のどこでもギガビットのインターネット接続を提供できる企業はいくつもあります」と語り、Starlinkが実際良い組み合わせであることを示唆している。「そうなれば理想的なパートナーシップですね。そうした企業の多くが直面している課題は、理論上は衛星1基につき数百人の人々にサービスを提供することができるものの、ラストマイルのインターネット接続が課題となっているのです。彼らにとっては、どこへでも接続できる私たちのような技術とパートナーを組むことで、世界に残る30億人の人びとをつなぐことができるでしょう」。

Mesh++は、大手携帯電話事業者さえ凌駕することができると考えていて、LTEや5Gネットワークとの競争にもまったく臆することがない。

「いいですか、T-Mobile(Tモバイル)は6GHz以下の5G接続で米国の大半をカバーすると約束したのです。しかし実際には、4Gでも経済的に見合わないまだカバーが終わっていないとすれば、当然5Gでもそうはならないでしょう」とガードナー氏はいう。

同社は米国の数多くの都市にテストネットワークを構築している他、ナイロビにも5人の子会社を設立している。

「最初に会社を設立したときは、主にインターネットへのアクセスを必要としている新興市場を対象としていました」とガードナー氏はいう。「最初のころ、この問題が米国内でどれほど大きな問題であるかを認識していませんでした。しかし時間の経過とともに、私たちは自分の家の周辺の接続性の問題を解決することにシフトして行ったのです」。

Mesh++は、インパクトインベスターであるWorld Withinが主導する490万ドル(約5億6000万円)の資金調達を行い、新規投資家であるLateral Capital、Anorak Ventures、First Leaf Capital、既存投資家であるSOSV、GAN Ventures、TechNexus、Illinois Venturesが参加した。

「今回の資金調達は、過去数年間の純粋な研究開発主導型の会社から、より販売に注力し、より成熟した組織に変えるという、会社の大きな転換を意味します」とガードナー氏はいう。「資金調達により、お客様や販売店と提携して、できるだけ多くの人とつながり、製品を世に送り出すことができるようになりました」。

同社は、米国のすべての家庭をインターネット接続でカバーできるようにするという、大きな経済の流れに乗っている。特に米国では、ラストマイルネットワークに多くの資金が投入されており、ここ数年では800億ドル(約9兆1000億円)を超えている。しかしそれでもすべての家庭に光ファイバーを届けるには十分ではない。そうしたやりかたは経済的にも物流的にも、人口密度の高い地域でなければうまくいかないのだ。そこで、鍵を握るのはメッシュネットワークになるかもしれない。Mesh++は、同社の技術によって、1世帯あたり400ドル以上かかっていたインフラ設置コストを29ドル程度に削減できるとしている。節約されるのは、オンサイトに設置する必要のあるハードウェアのコストではなく、主に設置のしやすさによる人件費だ。

画像クレジット:Mesh++

原文へ

(文:Haje Jan Kamps、翻訳:sako)