【コラム】核廃棄物のリサイクルはエネルギー革新の最重要手段だ

編集部注:本稿の著者Tristan Abbey(トリスタン・アビー)氏は、Comarus Analytics LLC社長。米国上院エネルギー天然資源委員会の上級政策アドバイザー、および国家安全保障会議の部長を務めた。

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米国のエネルギー・環境政策を語る上で、核廃棄物ほど悩ましいものはない。そう、気候変動は邪悪な問題かもしれないが、一方で膨大な数の苦悩を打ち消す話題が注目を浴びている。

この話題を正面から語るのは難しい。まず、物語の3つの要素から始めよう。

第1に、米国内の原子力発電所は年間約2000トンの核廃棄物(「使用済み燃料」とも)を生み出している。それらは生来の放射能ゆえに、国内のさまざまな場所に、注意深く保管されている。

第2に、これをどうすべきかの責任を負っているのは連邦政府である。実際、原子力発電事業者は核廃棄物基金に400億ドル(約4兆3900億円)以上をつぎ込んでおり、そのおかげで政府は対応が可能になっている。それは、ネバダ州ユッカマウンテンにある「地層処分処理場」に埋めるという考えだったが、政治的に不可能であることが証明された。にもかかわらず、事前調査やヒヤリングなどに 150億ドル(約1兆6470億円)が費やされた。

第3に、エネルギー省の廃棄物管理能力欠如のために、核廃棄物は蓄積される一方である。同省の最新公表データによると、およそ8万トンの使用済み燃料(数百万本の燃料棒を擁する数十万基の燃料集合体)が最終目的地を待っている。

そして、予想外の結末はこれだ。問題の原子力発電事業者らは政府を契約違反で訴え、2013年に勝訴した。毎年何億ドル(何百億円)という賠償金が、一連の和解と判決の一環として米国財務省から支払われている。支払総額は80億ドル(約8780億円)を超えている。

このストーリーが少々どうかしていることに私は気がついている。私は次のようなことを本当に言っているのだろうか?米国政府は核廃棄物を処理するために数十億ドル(数千億円)を集め、次に数億ドル(数百億円)を実現可能性調査に費やしながら埃をかぶらせ、今度はこの失敗のために数十億ドルの上を行く金額を支払っている。そのとおり、そう言っている。

幸い、集められた廃棄物のすべては比較的少ない場所を占めており、一時的保管場所は存在している。行動を起こす緊急な理由がなければ、政策立案者は動かないのが普通だ。

長期的保管場所を見つける試みを続ける一方で、政策立案者はこの「廃棄物」を使用可能な燃料にリサイクルすることを考えるべきだ。実はこれ古くからあるアイデアだ。発電のために消費されるのは核燃料のごく一部でしかない。

再利用推進者らは「再処理」使用済み燃料を使って燃焼後に残ったエネルギーの90%を抽出する原子炉を構想している。批判派たちさえも、リサイクルを支える化学、物理学、および工学は技術的な実現可能であることを認めており、批判の矛先は、経済性の疑問と安全性の潜在リスクに向けられている。

いわゆる第4世代原子炉と呼ばれるものが、あらゆる形とサイズで存在する。その設計は古くからあるが(ある部分は核エネルギーの夜明けにさかのぼる)、政治、経済、および戦略的理由によって軽水炉がこの分野を支配してきた。例えばSouthern Company(サザン・カンパニー)がジョージア州で建設中の2基の従来型加圧水型原子炉は、それぞれ1000MW(1GW)をわずかに超える能力を有しており、これはウェスティングハウスのAP1000設計の標準的な値である。

それに対し、次世代原子炉設計は大きさも容量も数分の一で、さまざまな冷却方法を利用可能だ。オレゴン拠点のNuScale Power(ニュースケール・パワー)の77MW小型モジュール式原子炉、カリフォルニア州サンディエゴ拠点のGeneral Atomics(ゼネラル・アトミックス)の50MWヘリウム冷却高速モジュール式原子炉、カリフォルニア州アラメダ拠点のKairos Power(カイロズ・パワー)の140MW溶融フッ化物塩冷却炉など、企業や政策の目的に合わせてさまざまな構成が可能だ。

多くの第4世代設計が、再生使用済み燃料専用あるいは使用する構成が可能になっている。米国時間6月3日、TerraPower(テラパワー、ビル・ゲイツ氏が出資)、GE Hitachi(日立GE)、ワイオミング州の3者は、ナトリウム冷却高速炉である345MW Natrium設計の実証炉建設に合意した。

Natrium設計は、再生燃料を発電に使用する技術的能力をもっている。すでにカリフォルニア州拠点のOklo(オクロ)は、Idaho National Laboratory(アイダホ国立研究所)とともに、使用済み燃料を使う1.5メガワット「マイクロ原子炉」の運用で合意している。ニューヨーク拠点のElysium Industries(エリシウム・インダストリーズ)による溶融塩炉設計は、自称「優先燃料」として、使用済み核燃料を使用しており、アラバマ州拠点のFlibe Energy(フライブ・エナジー)は、自社のトリウム原子炉設計の廃棄物燃焼能力を宣伝している。

次世代原子炉の成否は、行き詰まり状態にある核廃棄物問題の解決には依存してない。新たな原子炉は使用済み燃料を消費する能力をもってはいるが、必ずしも使わなくてはいけないわけではない。それでも、廃棄物リサイクルを奨励することで経済性を改善できるだろう。

ここでいう「奨励」は「金」を意味している。政策立案者は、再生燃料を使ったほうが、カナダやカザフスタン、オーストラリア、ロシアなどの諸外国から燃料を輸入するより発電所が儲かる仕組みを政府が作る方法を考えるべきだ。

リサイクルを含む次世代核技術に対する政治的支援は、想像以上に奥が深い。2019年、上院はRita Baranwal(リタ・バランワル)博士をエネルギー省(DOE)原子力エネルギー担当次官補に任命した。材料科学の教育を受けた同氏は、すぐリサイクル推進者なった

バイデン新政権は、新型原子炉に対する支援を広く超党派的に継続してきたことに加えて、会計2022年度予算要求ではエネルギー省原子エネルギー部の予算を3億5000万ドル(約384億2000万円)近く増額する提案を出した。提案には原子炉コンセプトの研究開発(3200万ドル[約35億1000万円]増)、燃料リサイクルの研究開発(5900万ドル[約64億8000万円])および新型原子炉実証実験(1200万ドル[約13億2000万円]増)、多目的試験炉の予算3倍増(前年の4500万ドル[約49億2000万円]から1億4500万ドル[約159億2000万円]へ)など具体的な予算増が盛り込まれている。

2021年5月、エネルギー省のエネルギー高度研究計画局(ARPA-E)は、高度原子炉の廃棄物処理「最適化」の研究を支援する4000万ドル(約43億9000万円)の新たなプログラムを発表した。重要なのはこの発表が、現在の核廃棄物ソリューションの欠如が、第4世代原子炉の未来に「難題を突きつけている」ことを明確に表明していることだ。

この議論は、一般にリサイクルが非常に厄介なプロセスであることのリマインダーである。それは化学、機械、エネルギーすべてが集約されたプロセスだ。希少鉱物からPETボトルまで、あらゆるリサイクルは新たな廃棄物も生み出す。現在、連邦および州政府はさまざまな廃棄物のリサイクルに極めて積極的だが、核廃棄物にも同じように関与すべきだ。

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カテゴリー:その他
タグ:原子力 / 核電力エネルギーアメリカコラム

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(文:Tristan Abbey、翻訳:Nob Takahashi / facebook

水素貯蔵・発電システムをディーゼル発電機の代わりに、オーストラリア国立科学機関の技術をEnduaが実用化

水素を利用する発電機は、従来のディーゼル燃料発電機に代わる環境に優しい発電機だ。しかし、その多くは太陽光や水力、風力に頼っており、いつでも利用できるとは限らない。ブリスベンに拠点を置くEndua(エンドゥア)は、電気分解によってより多量の水素を生成し、それを長期貯蔵することで、水素を利用する発電機をもっと使いやすくしようとしている。Enduaの技術は、CSIRO(オーストラリア連邦科学産業研究機構)によって開発されたもので、CSIROが設立したベンチャーファンドのMain Sequence(メイン・シーケンス)とオーストラリア最大の燃料会社であるAmpol(アンポル)によって商業化される。

Main Sequenceのベンチャーサイエンスモデルは、まず世界的な課題を特定し、次にその課題を解決できる技術、チーム、投資家を集めてスタートアップを起ち上げるというものだ。このプログラムを通じて設立されたEnduaの最高経営責任者には、電気自動車用充電器メーカーのTritium(トリチウム)の創業者であるPaul Sernia(ポール・セルニア)氏が就任し、Main SequenceのパートナーであるMartin Duursma(マーティン・ダースマ)氏とともに、CSIROで開発された水素発電・貯蔵技術の商業化に取り組んでいる。アンポルはEnduaの産業パートナーとしての役割を担うことになる。

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Enduaは、Main Sequence、CSIRO、アンポルから500万豪ドル(約4億2000万円)の出資を受けている。同社はまずオーストラリアで事業を展開し、それから他の国々へ拡大していく計画だ。

セルニア氏によれば、Enduaは「再生可能エネルギーへの移行が直面している最大の問題の1つである、再生可能エネルギーをいかにして大量に、長期間にわたって貯蔵するかという問題を解決するために設立された」という。

Enduaのモジュール式パワーバンクは、1パックあたり最大150キロワットの電気を出力できる。さまざまなユースケースに合わせて拡張することが可能で、ディーゼル燃料で稼働する発電機の代わりとして機能する。蓄電池は通常、停電時などに備えたバックアップとしての役割を果たすが、Enduaが目指しているのは、大量に貯蔵できる再生可能エネルギーを提供することで、送電網から切り離されたインフラや、電気が届いていない地域コミュニティが自立した電源を持てるようにすることだ。

「水素の電気分解技術はかなり前から存在していますが、商業市場の期待に応え、既存のエネルギー源と比較になるほどコスト効率を高めるには、まだ長い道のりがあります」と、セルニア氏は語る。「我々がCSIROと共同で開発した技術なら、化石燃料と比べてもコストを抑え、信頼性が高く、遠隔地でも容易に維持できるようになります」。

このスタートアップは、産業界の顧客に焦点を当てた後、小規模な企業や住宅にも手を広げていくことを計画している。「最大の好機の1つは、地域社会や鉱山、遠隔地のインフラなど、これまであまり取り組まれることがなかったディーゼル発電機のユーザーです」と、セルニア氏はいう。「農業分野では、Enduaのソリューションは、掘削機や灌漑用ポンプなどの機器の電源として使用できます」。また、同社のパワーバンクは、太陽光や風力などの既存の再生可能エネルギーシステムに接続することができ、ユーザーは経済的な切り替えが可能であると、同氏は付け加えた。電気分解のプロセスには水が欠かせないが、必要な量はわずかだ。

「電池は出力を調整しながら少しずつ電力を供給できる優れた方法であり、全体的なエネルギー移行計画を補完するものです。しかし私たちは、地域社会や遠隔地のインフラが、信頼できる再生可能エネルギーをいつでも利用できるように、大量かつ長期間にわたって貯蔵できる再生可能エネルギーの供給に注力しています」と、セルニア氏はTechCrunchの取材に語った。

アンポルは、同社のFuture Energy and Decarbonisation Strategy(未来のエネルギーと脱炭素化戦略)の一環として、Enduaと協力している。同社はEnduaの技術をテストして商品化し、その8万社にものぼるB2B顧客に提供する予定だ。ますば年間20万トンの二酸化炭素を排出しているオフグリッドのディーゼル発電機市場に焦点を当てている。

アンポルのマネージングディレクター兼CEOであるMatthew Halliday(マシュー・ハリデイ)氏は「Enduaと関わりを持てることに興奮しています。これは、エネルギー移行を後押しする新しいエネルギーソリューションを発見・開発することによって、顧客価値提案を拡大するという当社のコミットメントの一環です」と、プレスリリースで述べている。

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カテゴリー:EnviroTech
タグ:水素電力オーストラリアEnduaAmpolエネルギーエネルギー貯蔵

画像クレジット:Andrew Merry / Getty Images

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(文:Catherine Shu、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

テスラ車オーナー向けアプリ「TezLab」を使えば充電する電力の「クリーン度」がわかる

Tesla(テスラ)の電気自動車オーナーは、自分のクルマに供給されているエネルギーの種類を正確に把握することが可能になった。テスラ車のためのFitbit(フィットビット)のような無料アプリ「TezLab(テスラボ)」に、エネルギーミックス(化石燃料による発電と再生可能エネルギーの種類と正確な割合)を表示する新機能が加わったのだ。これを使えば、米国内のSuperchargers(スーパーチャージャー)やサードパーティの充電ネットワークから供給される電気が、どのように発電されたものなのか、その種類と割合を知ることができる。

「私たちはエネルギーに関連するデータの出所を追跡しているため、ツーソンやブルックリン(あるいはどんな場所でも)で充電した時、その電気がどこから供給されているのか、そのエネルギーミックスはどうなっているのか、知ることができます」と、TezLabのCEOで共同設立者であるBen Schippers(ベン・シッパーズ)氏は最近のインタビューで説明している。「その結果、自宅で充電しているか、スーパーチャージャーで充電しているか、またその充電量に応じて、どれだけの炭素が大気中に排出されているかを知ることができるのです」。

Tomorrow(トゥモロー)のプロジェクトであるElectricityMap(エレクトトリシティマップ)がエネルギーデータを提供し、TezLabはそれを消費者向けアプリに組み込んだ。このアプリはダウンロードすると、テスラのオーナーがいつ、どこで充電しているかを認識することができる。そして新たにアプリに追加されたエネルギーミックス機能が、その電気のクリーン度や汚染度などの全体的な情報を、オーナーに提供する。

例えば、ラスベガスにあるテスラのLinq High Roller Supercharger(リンク・ハイ・ローラー・スーパーチャージャー)は、V3スーパーチャージャーで、1台当たり最大250kWのピーク充電レートに対応している。また、テスラのソーラーパネルとPowerpack(パワーパック)エネルギー貯蔵システムを使用し、充電器を作動させるのに必要な電力を生成・貯蔵していることで注目を浴びている充電施設だ。

TezLabのデータによると、この充電器で供給される電気のエネルギーミックスは、太陽光による発電が1.7%。再生可能エネルギーの主なものはフーバーダムによる水力発電で65.6%。残りの約33%が天然ガスによる発電だ。

カリフォルニア州ホーソーンにあるテスラのスーパーチャージャーは、いち早くソーラーパネルを設置したが、そのエネルギーミックスは、太陽光0.2%、原子力5.5%、天然ガス13.3%、石炭27%、風力49.9%となっている。

ワシントン州のセントレア、レブンワース、モーゼスレイク、シアトルなどの「最もクリーンな」スーパーチャージャーのトップ10は、水力発電のおかげでこの目標を達成できた。太陽エネルギーを最も多く利用しているスーパーチャージャーは、いずれもカリフォルニア州の同じ電力網に位置しており、バーストウ、オックスナード、カバゾン、サンディエゴ、モハーベ、イニョカーン、サンマテオ、シーサイド、サンタアナにあるスーパーチャージャーでは、太陽光が22.7%、風力が15%となっている。残りのエネルギー構成は、蓄電池0.2%、バイオマス2.9%、地熱5.6%、水力6.3%、原子力6.6%、天然ガス40%だ。

TezLabを作り出したHappyFunCorp(ハッピーファンコープ)は、モバイル、ウェブ、ウェアラブル、モノのインターネットデバイス用のアプリケーションを構築しているソフトウェアエンジニアリング会社で、その顧客には、Amazon(アマゾン)やFacebook(フェイスブック)、Twitter(ツイッター)をはじめ、数多くのスタートアップ企業が含まれる。同社共同設立者のシッパーズ氏(現会長)とWilliam Schenk(ウィリアム・シェンク)氏をはじめとするHFCのエンジニアたちは、テスラの主にソフトウェア主導型のアプローチに惹かれた。特にテスラのAPIのオープン性から生まれるチャンスに興味を持ったという。テスラのAPIは、技術的にはプライベートなものだが、エンドポイントは部外者でもアクセスできる。リバースエンジニアリングすると、サードパーティのアプリがAPIと直接通信することが可能になる。

関連記事:TezLabアプリはテスラ車のためのFitbitだ

2018年に配布が始まった当時、TezLabはオーナーが電力消費率や総走行距離を記録したり、ドアの施錠・解錠や冷暖房など、車両の特定の機能を制御できる機能を備えていた。その後、テスラのオーナーがスーパーチャージャー・ステーションを評価できる機能など、主にコミュニティの構築に焦点を当てた機能がさらに追加された。

これらのデータはすべて匿名で集約されている。TezLabはそのデータを販売するつもりはないという。同社はこれらのデータから得られた見解をウェブサイトに掲載しており、例えば、モデル別の所有者の内訳、平均走行距離、平均充電時間などを知ることができる。

TezLabは他の電気自動車の発売に合わせて、Ford Mustang Mach-E(フォード・マスタング・マックE)などをアプリに追加している。

カテゴリー:モビリティ
タグ:TezLabTeslaエネルギー再生可能エネルギー温室効果ガス電気自動車炭素アプリ

画像クレジット:Tesla

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

テキサス大寒波から学ぶ3つのエネルギー革新

本稿の著者Micah Kotch(ミカ・コッチ)氏はURBAN-Xのマネージング・ディレクターだ。

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気候変動の総合的危機に対する個別なソリューションがいくつも登場している。非常用ディーゼル発電機、Tesla(テスラ)のPowerwall、地下シェルターの「Prepper」などがある。しかし、現代文明が依存しているインフラストラクチャーは相互につながり、相互に依存している。エネルギー、輸送、食料、水、ごみのシステムは、気候による緊急時に対していずれも脆弱だ。私たちのエネルギーインフラ危機を救う唯一の孤立したソリューションは存在しない。

2005年のHurricane Catarina(ハリケーン・カタリナ)、2012年の巨大暴風雨SANDY(サンディ)、2020年のカリフォルニアの山火事、そして最近のテキサス大寒波以来、大多数の米国市民はいかにインフラが脆弱であるかを認識しただけでなく、それを適切に規制しその復旧に投資することがいかに重要であるかを思い知らされた。

今必要なのは、インフラを考える際の発想の転換だ。具体的には、リスクをどう評価するか、維持をどう考えるか、気候の現実に沿った政策をどう作るかだ。テキサスの大寒波は、異例の寒波に備えていなかった電気・ガスインフラを壊滅状態にした。もし私たちがインフラへの緊急な(超党派?)投資を、特に異常気象が当たり前になりつつある今行わなければ、この惨劇は今後も続くばかりだ(そして最前線の人たちは特に重荷を背負う)。

テキサスの記録的暴風から1カ月が過ぎ、焦点は生活を取り戻そうとしている数百万の住民を助けることに正しく向けられている。しかし、短期的未来に目を向けには電気自動車への転換点の兆しが見える現在、この国のエネルギーインフラと公共事業の大転換というツケを払うことを優先しなくてはならない。

エネルギー貯蔵の重要性

テキサス州の電気の75%が化石燃料とウランから生まれており、州内で起きた停電の約80%がこれらのシステムに起因していた。同州と国は、時代遅れの発電、通信、および配送技術に依存しすぎている。2030年までにエネルギー貯蔵のコストが75ドル/kWhまで下がると期待されていることから「需要管理」およびグリッドを「(排除しようとするのではなく)支える」分散エネルギー源に今以上に重点を置くことが必要だ。小規模なクリーンエネルギー発電と家庭内貯蔵電力を蓄積、集約することで、2021年は「バーチャル発電所」が全潜在能力を発揮する年になるかもしれない。政策立案者は、家庭のメーターの内側に設置する新たな分散エネルギーリソースを普及させるための刺激策と報奨金制度を施行させるべきであり、カリフォルニア州の自家発電奨励プログラムはその一例となる。

労働力開発への投資

エネルギー大転換が成功するためには、労働力開発が中心的要素になる必要がある。石炭、石油、ガスからクリーンエネルギー源へと移行するためには、企業と政府(国から市レベルまで)は、労働者がソーラー、電気自動車、バッテリーストレージなどの新興分野の高賃金職に就くための再教育に投資すべきだ。エネルギー効率(エネルギー大転換で最も手をつけやすいところ)に関して、都市は株価に基づく労働力開発プログラムを建物エネルギーベンチマーキング条件と結びつける機会を利用するべきだ。

これらのポリシーは、この国のエネルギーシステムの効率と老朽化する建物の利用率を高めてより生産的な経済を作るだけでなく、 21世紀の成長産業における雇用の拡大と労働の専門化にもつながる。 Rewiring Americaの分析によると、国の野心的な脱炭素宣言によって、今後15年の間に2500万の高賃金職が生まれるという。

信頼性のためにマイクログリッドをつくる

マイクログリッド(小規模発電網)は、主要グリッドと繋ぐことも切り離すこともできる。非常時だけでなく、日常の「青空」運用の日々にも運用することで、マイクログリッドは主要グリッドが停止した際に途切れなく電力を供給できる。そして、主要グリッドにつなげた場合、グリッドの制約とエネルギーコストを減らす。かつては軍事基地と大学だけの領域だったマイクログリッドは年間15%成長し2022年の米国市場は180億ドルに達する

グリッドの回復力と信頼性の高い電力源を確保のためには、重要インフラ施設を近隣の住宅と商業負荷と結びつけるコミュニティ規模のマイクログリッドに勝るソリューションはない。実現性調査と高度な設計に資金提供し、コミュニティがゼロコストで高品質な建設プロジェクト実施できるようにすることは、ニューヨーク州が NYプライズ・イニシアティブでやったように、コミュニティをエネルギー計画に参加させ、民間セクターを低炭素の回復力あるエネルギーシステムの構築に携わらせる有効な方法であることが実証されている。

予測不能性と複雑さが急速に高まり、テクノロジーは居場所を見つけたが、それは単なる個別の安全策や偽りの安心感としてではない。テクノロジーは、リスクを高精度で計算し、システムの回復力を高め、インフラの耐久性を改善し、コミュニティの人々同士のつながりを深めるために使われるべきだ。緊急時もそうでない時も。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:コラムテキサス自然災害電力網エネルギー貯蔵エネルギー

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(文:Micah Kotch、翻訳:Nob Takahashi / facebook