ロボットに透明な物体をつかませる方法をカーネギーメロン大学が開発

ロボットにとって、透明の物体をつかむのは難しい作業だ。これまでのカメラやセンサーの多くは、つかむ場所を指示するための情報を十分に得ることができなかった。赤外線カメラからの光は処理中に物体を通過し散乱する。デプスカメラは不透明な面がないと形を適切に判断できない。

こうしたことから、ロボットの手が触れるものを図式化しようとする際に高い確率でエラーになってしまう。プラスチックやガラスのボトルはたいてい透明なので、ボトルのリサイクルにロボットを利用したい場合は、このことが問題になる。

カーネギーメロン大学は2020年7月第3週に、一般的な民生品のカメラを使ってこのプロセスを改善する可能性のある新しい研究結果を公表した。研究チームは、色を読み取って透明な物体の形を判断できるカラーのカメラを製作した。まだ完全ではなく、不透明な物体ほど正確ではないものの、研究チームによれば透明な表面をこれまでの方法よりもずっと高い確率でつかめるようになったという。

この発表に関するリリースでカーネギーメロン大学でロボティクスを研究するDavid Held(デビッド・ヘルド)助教授は「ときどきミスはあるが、ほとんどの場合で成果があった。透明な物体や反射する物体をつかむことに関して、これまでのどの方法よりもずっと優れている」と述べている。

研究内容の詳細は、2020年夏の後半に開催されるバーチャルロボティクスカンファレンスで発表される。

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(翻訳:Kaori Koyama)

切られても自らつながる、ターミネーターT-1000のような素材をカーネギーメロン大学と東京大学の科学者が開発

カーネギーメロン大学と東京大学の科学者は、トカゲのシッポやヒトデの腕からヒントを得て開発した、自己修復能力を持つ新たな複合材料のデモを公開している。この素材は、MWCNTs-PBSと呼ばれるもので、ポリボロシロキサン(PBS)と多層カーボンナノチューブ(MWCNTs)を複合したもの。「自己修復UI」の、いわばキモとなる部分だ。

2つに切断したあと、くっつけるようにすると、自ら接合し始める。そして、下のGIFが示すように、つなぎ目も消えてしまう。

ここに示したハート型は、チームが考えるいくつかのシナリオのうちの1つ。この例では、内蔵されたセンサーが、切られたり、つながったりしたことを感知する。このプロセスは、動画から想像するほど早くはなく、完全に元通りになるには6時間ほどかかる。

他にも、ロボットアクチュエータや、「変形するソフトコントローラ」といったシナリオが提案されている。たとえば以下のように使える。

1つのコントローラーは、1本の指で押す動作を検出する。それを2つ組み合わせて、長いタッチボタンを作り、それを複数並べれば、ピアノの鍵盤のように使うことができる。さらに、2組のコントローラーをくっつけたものをユーザーの手首に巻いて、リストバンドのようなスライダーデバイスとして機能させる。友達が3人やってきて、4人でビデオゲームをプレイすることになったら、2個のコントローラーを、それぞれ2つに切り離して4つにする。それぞれ、3つずつのタッチセンサーを備えたハーフサイズのゲームデバイスとして機能する。遊んでから6時間後には、4つのコントローラーは、元の2つに戻る。

その他の役立ちそうなシナリオとしては、再利用可能なギプスもある。怪我をした腕や足の周りに巻くと、自ら整形して怪我を治すことができる。チームは最近になって、これまでの成果を発表した。また、他の分野の科学者と協力して、現実的なアプリケーションを探求する計画も明らかにした。ターミネーターに出てくるT-1000のような柔軟なロボットができるかもしれない。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

カーネギーメロン大学が開発した小型ロボ探査車がNASAのテストに合格、来年には月面へ

カーネギーメロン大学(CMU)は、月面でロボット探査車を活動させることに、また一歩近づいた。同大学の小型ロボットが、重要なNASAの設計評価テストに合格したのだ。このテストは、NASAとAstrobotic(アストロボティク)が共同で実施したもの。Astroboticの月着陸船であるPeregrine(ペレグリン)が2021に計画されているミッションで、このロボットを月面まで運ぶことになっている。

設計評価テスト合格の前提としては、プロトタイプから実際にフライト可能な探査車に移行する段階で、CMUチームが実装することにしていたいくつかの設計変更が含まれていた。もともとは今夏に実施する予定だったものだ。変更後のバージョンは、打ち上げと月への飛行に耐えられるようストレステストを通過させる予定となっていた。その探査車自体が壊れないようにするのはもちろんだが、Peregrine着陸船に積み込まれる他の機材にも悪影響を与えないようにしなければならない。Peregineは、NASAの要求に従って各種の実験機材を月面まで輸送するのだ。

CMUの探査車はIris(アイリス)と呼ばれている。重量は約4ポンド(約1.8kg)で、大きさはちょっと大きめのトースターほどのもの。それでも、月面を探索する最初の米国のロボット探査車になるという名誉が与えられることになる。最終的に、これが「CubeRovers」への道を切り開くことになるだろう。比較的安価で小型の探査車シリーズで、公、民を問わず、一連の科学的な調査、挑戦に低予算で貢献できるもの。

Irisには4つの車輪があり、2つのビデオカメラを搭載している。このロボットの装備としては、それがメインのセンサーだ。カメラの小型化により、小型のロボット探査プラットフォームを使って、高品質の画像や動画データを収集するのが、かなり容易になった。これは、Astroboticのような企業にとっては素晴らしい展開だ。同社も、Peregrineのような軽量で安価な着陸船を使って大気圏外の宇宙を探査するという、民間企業としてまったく新しい市場に打って出ようとしている。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

フェイスブックが新型コロナアンケートシステムを米国で公開、全世界にも拡大予定

新型コロナウイルス(COVID-19)感染の兆候をモニタするアプリはこれまでも無数に開発されてきたが、今回発表されたFacebookのプロジェクトは影響範囲の広さが桁違いだ。

2020年4月初め、Facebookはカーネギーメロン大学(CMU)のDelphi疫学研究センター(Delphi Epidemiological Research Center)と新型コロナウイルス感染症のモニターに関して提携した。今回、Facebookはこのプロジェクトを全世界に拡大するという。同じく4月上旬から同社は米国のユーザーの一部に対し、新型コロナウイルス感染の自覚症状の有無をCMUの方法により自己チェックしてレポートするよう要請し始めている。これは流行が今後どこに拡大するか政府や医療当局が予測できるようにするプロジェクトだ。

Facebookのプロジェクトの拡大についてはメリーランド大学の研究者が協力する一方、CMUのDelphiチームはすべての研究者がデータを利用できるAPIを開発している。

Facebookは収集した調査データを独自の症候追跡マップに表示する。これにより郡(カウンティ)あるいは担当医療区域ごとに新型コロナウイルス感染症の症状を持つ住民が人口に占める割合を一覧することができる。マップには、新型コロナウイルスとは異なるインフルエンザに対する感染症候も表示される。多くの場所でまだ十分な報告が得られず、能力はまだ限られているが、この調査はウイルス感染拡大のトレンドを示すことで流行を予測可能とすることを目指している。

Delphi COVID-19対策チームの共同責任者、Ryan Tibshirani(ライアン・ティブシラニ)氏「我々が算出したリアルタイムの推定は、新型コロナウイルス流行に関する入手可能な最も確実なデータと高い相関があった。これにより、流行が拡大する可能性が高い地域を数週間前に予測して医療関係者に提供できるようになると確信している」と声明で述べている。

CMU Delphiの調査にオプトインしたFacebookメンバーは咳、発熱、息切れ、または嗅覚の喪失が発生しているかどうかを回答する。これら新型コロナウイルス感染の初期症状であり、治療が必要な重症化の前に現れる可能性が高いため医療関係者にとって重要だ。

CMUが月曜に発表した最初のレポートによれば、 Facebookで収集された新型コロナウイルス感染に関するデータは公衆衛生機関からの確認ずみデータと高い相関があったという。研究チームはCOVIDcastと呼ばれるツールを発表した。これは、新型コロナウイルス関連データを地域別に集約する。 Googleもこの調査に協力を始めているので今週後半にはCOVIDcastはFacebookとGoogle双方のアンケートの結果を統合できる。現在までにFacebookで毎週100万件、Googleのインセンティブ付きアンケートアプリ、GoogleアンケートモニターとAdMobアプリを通じて毎週60万件の近くの回答が得られている。

Washington Postの意見コラムでFacebookのファウンダーであるMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)はこう書いている。

「全米で郡ごとに正確なデータを取得することは難しい事業だ。そうした厳密なデータを全世界から取得するとなると困難さははるかに大きくなる。しかしFacebookは膨大な人たちに対してアンケートを行う上で極めてユニークな立場にある」。

プライバシーやセキュリティー上の問題で長らく批判されてきたソーシャルメディアは、新型コロナウイルスとの戦いを機に自らの重要性を再認識させようと努力している。ことにネガティブな報道に苦しめられてきたFacebookは医療専門家からの新型コロナウイルス情報をプラットフォームに掲載するなどいち早く対応を開始した。しかしFacebookや他のソーシャルネットワークは、新型コロナウイルスの場合でもデマ火事場泥棒陰謀論に悩まされ続けており、こうしたノイズを運営者が一掃するのは簡単ではないようだ。

【略】

画像クレジット:Angela Weiss / AFP / Getty Images

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

カーネギーメロン大学のチームがハグするソフトロボットを編み機で制作

人がロボットやオートメーションを恐れるのは、おそらくかわいくないからだ。かわいさは、発展しつつあるソフトロボティクスの分野においてまだ探求されていない側面である。カーネギーメロン大学のチームは編み機を使ってソフトロボットを作ることで、この課題に挑戦している。

かわいさはさておき、この挑戦の本当の目標は、コストがかからず危険性が低く、場合によってはウェアラブルになるロボットのフォームファクターを設計することだ。研究チームは腱を追加する自動化プロセスを設計している。腱によって、動きをつくるための固いモーターをつなぐことができる。たとえば「おなかをつつくとハグするぬいぐるみや、袖が自動で動くセーター」などが冗談ではなくなる。

研究が進めば将来的には、衣類用の市販の編み機で作れる、さらに本格的なソフトロボティクスにつながるかもしれない。

カーネギーメロン大学の博士課程の学生、Lea Albaugh氏はリリースの中で次のように述べている。「私たちの生活の中にある柔らかい物体の多くが、この技術を使えばインタラクティブになる可能性がある。衣類が個人情報システムの一部になることが考えられる。たとえば注意が必要なときにセーターが肩を叩いてくれるかもしれない。椅子の布が触覚インターフェイスにもなり得る。リュックサックが自分で開くようになるかもしれない」。

これは、これまでにもあった3Dプリンタなどの付加製造法の一種であるともいえる。腱として使える可能性のある素材には、ポリエステルが巻かれたキルト糸、絹糸、ナイロンの単繊維などがある。一方、導電糸を使えばロボットに動きの感覚を与えられるかもしれない。

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(翻訳:Kaori Koyama)