スマホ1台で完結する写真・動画加工アプリ「Picsart」はデジタル化が進むこれからのクリエイティブを支えるツールになる

YouTubeやSNSの成熟が進み、クリエイターが個人として活動する機会が増えている。それまで無名だったクリエイターがひと晩で有名になるといった話も珍しくない。インターネットの世界で一旗揚げたい若い世代のクリエイターに選ばれるサービスがPicsart(ピクスアート)だ。

Picsartは写真や動画の編集、加工ができ、サービス上で作品のシェアも可能。さらに他のSNSで投稿することができるサービスだ。すべてをスマホアプリ(もしくはウェブブラウザ)上で完結するのが特徴であり、AIにより誰でも簡単に作品づくりができるだけでなく、他のクリエイターの作品を「Remix(再編集)」して自分の作品をつくることもできる。

現在もZ世代を中心にユーザー数を増やしているPicsartを提供する同社の日本・韓国担当のゼネラルマネージャー石田直樹氏にサービスの現在、そしてクリエイターを支えるサービスであるPicsartのこれからについて話を聞いた。

現在、Picsartはどのような時期になるのでしょうか?新型コロナウイルスの影響は受けましたか?

「アプリは2011年に登場、日本には2019年に上陸しており、現在は成長フェーズ、投資モードにあります。新型コロナの影響もあり、アクティブユーザーが増えました。メインはやはり趣味のためのユーザーですが、クリエイターやインフルエンサーをはじめオンラインビジデスでビジュアルが必要な方も増えました。また、美容師の方がInstagramにアップする写真をPicsartでつくるといった例もあります。ビジネス目的で利用される方が増えており、戦略的にはそんな『プロスーマー』を取り込もうとしています」。

ビジネス目的ではあれば、有料ユーザーも増えているのですか?

「そうですね、たしかに有料率は上がっています。しかし、無料であってもPicsartのメインコンテンツであるパワフルな写真や動画編集のツール、そしてフリー画像やテンプレートが使えるためそれで満足している方がやはりほとんどですが、さらに豊富なストック画像を利用でき、ライセンスも増やすことができる有料版にバリューを感じていただき契約していただいている方も増えています」。

画像クレジット:Picsart

写真・動画加工アプリはたくさん存在していますが、強み、選ばれる理由は何でしょうか?

「Picsartには3つの特徴があります。1つはテクノロジー。背景除去や人物のキリヌキ、レタッチなど現在、AIを利用した機能が3000以上も用意されています。会社には800名以上の社員がいますが、その70%となる大量のエンジニアが、日々、スピード感を持って新しいツールや機能を開発しています。

2つ目がコンテンツ数で、Picsartにはすでに3億以上もの作品があります。それらは眺めて楽しいのはもちろんですが、ただ参照してアイデアの素にするだけでなく「Replay(リプレイ)」で、その編集手順を自動で再現できるので、次々に新たな作品が作れます。ユーザーが簡単にその作品をベースにした自分の作品をつくれるので、ブームも起きやすい。さらにステッカーやテンプレートも豊富です。

3つ目がコミュニティ。Picsartはコンテンツを共有する場でもあり、そのままシェアできます。ユーザー数も増えているので、反響も大きい。もちろん他のSNSなどに作品を投稿することができます」。

どのようなツールが人気ですか?

「人物や顔、服、空など、AIを活用し対象を指定するだけできれいに処理される自動切り抜きツールはよく使われています。フィルターは100以上も用意されており人気です。また、フォントも人気ですね。日本語フォントはかっちりしたものから手書きっぽいものまで、30種類以上用意されています。色を変更したり立体感を出したり、文字列をカーブさせたりする機能などもあり、こちらも人気です」。

やはりZ世代のユーザー向けのサービスなのでしょうか。

「たしかにZ世代はコンテンツの消費と生産の垣根が低い人たちで、スマホ1台で制作から共有まで完結するPicsartは親和性が高いサービスだと思います。そのためZ世代のユーザーも多い。しかしPicsartは『Z世代ありき』のではありません。私たちは、もっと広くビジュアルコミュニケーションで使われるサービスでありたいと考えています。モバイルアプリだけでなくウェブブラウザも提供しています。ビジネスでコンテンツを作る人「プロスーマー」に支持してもらえるツールを目指しています」、

日本と海外でユーザーに違いはあるのでしょうか。

「InstagramやYouTube、TikTokiがあるのでユーザーの情報量も同程度になり、流行の時差はほぼありません。ただし国が違えば好みも違うため、例えば一時、被写体の顔を隠すためにうずまき加工を行うというブームがありましたが、これは日本だけのものでした」。

画像クレジット:Picsart

写真・動画編集アプリ、サービスは今後、どう進化していくのでしょうか?

「人々の活動は現在よりもさらにオンライン上に移っていきます。そこで生まれるのではデジタルな写真・動画へのニーズであり、クリエイターへの需要も増え、その数も増えていくと思います。NFTなど新たな技術の上にあるサービスも登場し、デジタルなビジュアルがマネタイズできる機会も増加します。そこで活躍するクリエイターにPicsartは選んでもらえるツールになっていければと考えております。

Picsartが得意なことはもっと得意に。機能の豊富さがPicsartの特徴ですが、それらはさらに増やしていき、寄せられるユーザーからのニーズは大量のエンジニアたちの力で迅速に応えていきます。また、AIに注力しているため、今後、AIで強化された機能が増えていくでしょう。

たくさんの機能があれば、私たちが意図していなかった使い方をしてもらい新たなクリエイティブが生まれる機会も増えます。Z世代を含む、これからのクリエイターを支えるサービスを提供していきます」。

写真やビデオのデジタル創作プラットフォームPicsart、新APIで開発者向けにクリエイティブツールを提供

デジタルクリエイションプラットフォームであるPicsart(ピクスアート)は、新しいAPIプログラム「Picsart for Developers」を開始したと米国時間2月9日に発表した。Picsartは、消費者とプロフェッショナルの両方を対象に、写真やビデオの編集をより楽しく、より身近にするためのデジタル制作・編集ツールを提供している。同社によると、世界中の消費者がカスタムビジュアル製品や体験をビジネスに求めている中、PicsartはAPIの新規提供により、あらゆる規模の企業がそのニーズに応えられるよう、同社の技術にアクセスできるようにしているという。

これらの新しいAPIにより、企業はPicsartのAIを活用したクリエイティブツールを自社のプラットフォームに直接実装できるようになった。AIを活用したAPIには、背景除去機能、品質を落とさずにコンテンツを拡大・強化するアップスケール機能、任意のソース画像の見た目を転送してスタイルを格上げするスタイルトランスファー機能などが含まれる。画像処理APIには、写真を際立たせるためのフィルターや、明るさやコントラストなどの設定を変えることができるアジャスト機能がある。また、画像処理を高速化するアップロード機能も搭載している。

Picsart for Developersは、デジタル広告、ウェブサイト構築、カスタムマーチャンダイジングなどのクリエイティブ企業を含む8社のパートナーとともに開始される。パートナーは、Photobook(フォトブック)、TPS Engage(TPSエンゲイジ)、Clos(クロス)、Amaze(アメイズ)、Make Your Move(メイク・ユア・ムーブ)、The Flat Lay(フラット・レイ)、Etch4U(エッチ・4U)、Smiley(スマイリー)の8社。Picscartによると、これらの企業との統合は現在稼動している。今後数カ月の間に、招待制でさらに多くのパートナーを追加する予定だ。

「私たちのビジョンは、あらゆるクリエイターをエンパワーすることであり、Picsartは革新的なAI、写真、動画編集機能で市場をリードしています。APIを通じて当社の技術を開発者に提供することは、活況を呈するクリエイター経済を支援できるエキサイティングな方法です」と、Picsartの創業者兼CEOであるHovhannes Avoyan(ホバナス・アボヤン)氏は述べた。「デジタル創作のスピードや、特にジェネレーションZからのコンテンツをパーソナライズし、他と差をつけたいという要望は、より深いクリエイティブな体験を提供することが、あらゆる企業に求められているということを意味します。我々のAPIはそれを可能にします」。

画像クレジット:Picsart

Picsartは2018年にEFEKT(旧D’efekt)を買収して動画市場に参入し、動画を活用するソーシャルメディアクリエイターやeコマースショップを中心に、近年利用者が急増している。2021年12月、Picsartはアプリ内で編集された動画が1億8000万本以上となり、前年比70%増を記録したと発表している。

今回の発表は、Picsartが先日、研究開発会社のDeepCraft(ディープクラフト)を買収したことにともなうものだ。この買収は、現金と株式の両方を組み合わせたもので、7桁台の金額(数億円)だが、正確な条件は明らかにされていない。Picsartは、DeepCraftのAI技術人材と、コンピュータビジョンと機械学習におけるその躍進が、Picsart自身のAI技術を強化し、同社のサービスにおける最近の動画作成の増加をよりよくサポートするのに役立つと述べた。また、同チームは、PicsartのAI研究開発部門であるPAIR(Picsart AI Research)にシニアリソースを追加することで、Picsartを補完することができる。

Picsartは2021年8月、ソフトバンクのVision Fund 2(ビジョン・ファンド2)が主導する1億3000万ドル(約150億円)のラウンドを調達したと発表し、ユニコーンの地位を獲得した。この資金注入により、同社の評価額は10億ドル(約1154億円)の大台に乗った。PicsartのCOOであるTammy Nam(タミー・ナム)氏はTechCrunchに対し、同社には数百万人の加入者がおり、このプラットフォームが成長する余地はたくさんあると語っていた。

画像クレジット:Picsart

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(文:Aisha Malik、翻訳:Yuta Kaminishi)

フェイスブックやツイッターの元幹部が出資するTaggはZ世代向けの「ソーシャルブランディング」アプリ

Z世代は、自分たちが育ってきたソーシャルメディアに満足せず自分たちが使いたいアプリを作っている。クリエイティブな10代、20代の若者向け「ソーシャルブランディング」アプリである「Tagg(タッグ)」は、米国時間12月17日、シードラウンドで200万ドル(約2億3000万円)を調達したことを発表した。出資したのは、Twitter(ツイッター)共同創業者のBiz Stone(ビズ・ストーン)氏、Facebook(フェイスブック)の元インターナショナルグロース担当VPだったEd Baker(エド・ベーカー)氏、TripAdvisor(トリップアドバイザー)の創業者であるStephen Kaufer(スティーヴン・カウファー)氏、Pillar VC(ピラーVC)などだ。

Brown University(ブラウン大学)と近隣のRhode Island School of Design(ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン)の卒業生によって設立されたTaggは、まだプライベートベータ版だが、数千人のユーザーが利用しており、さらに数千人がウェイティングリストに申請している。Taggはいわゆるlink in bio(リンク・イン・バイオ)サービスのようなものだが、若いクリエイティブな人たちがつながり、協力し合い、友人関係を築くことを促進するソーシャルな要素が含まれている。

「デジタルの世界では、あなたのブランドが本物であればあるほど、あなたのつながりも本物になります。現在のソーシャルプラットフォームは、このブランドとつながりの進化する交点に対応できるように作られていません」と、同社は説明している。「Taggは、制限もスティグマ(偏見や差別)もない、自分自身の完全な創造的表現を可能にする環境を構築して、成長させています」。

Taggでは、自分のプロフィールを何に使いたいか(ソーシャルなプロフィールにしたいのか、自分のアートを宣伝してネットワークを広げたいのか)に応じて、アプリにログインしたときに5つのプロフィールスキンから選ぶことができる。そこから自分のページをカスタマイズし、他のSNSアプリでやるように、誰かをフォローしたり、コンテンツを投稿したりすることができる。しかし、Taggでは、投稿に「いいね!」の数が表示されない。これは意図的に選ばれた仕様だ。

「Taggに『いいね!』はありません。コメントやシェア、ビューだけです。なぜなら、クリエイティブな人たちには、自分の好きなものを、スティグマを気にすることなく、好きなように表現することに集中して欲しいからです」と、Taggの共同設立者であるVictor Loolo(ビクター・ルーロ)氏はTechCrunchに語っている。

特にTaggが対象としているZ世代では、ユーザーは「いいね!」の数を必ずしも求めていない。なぜなら「いいね!」の数は、表面的な形で仲間と自分を比較することを助長する可能性があるとわかっているからだ。米国の上院議員であるEd Markey(エド・マーキー)氏(民主党・コネティカット州選出)や、Richard Blumenthal(リチャード・ブルーメンタール)氏(民主党・マサチューセッツ州選出)も、10代の若者の精神衛生に悪影響を及ぼす可能性があるとして、16歳未満のソーシャルメディアユーザーには「いいね!」のカウントを禁止する法案を提出している。

画像クレジット:Tagg

Taggの「ソーシャルブランディング」というマーケティングは、一見すると直感に反したものに思えるかもしれない。また、このブランディングという概念は、自分自身を箱の中に入れてしまうことのように聞こえるかもしれない。しかし、Taggは、ユーザーが自分の居心地の良い場所から抜け出すことを促すようにデザインされている。ユーザーはあらかじめ用意されたスキンを使ってプロフィールを作成するが、これはあくまでも提案であり、もしユーザーが、白紙の状態からプロフィールを作成したり、独自のカテゴリーを作成してコンテンツを整理したいなら、それも可能だ。

「プロフィールはいかようにも見せることができる、それが魅力です。私たちは、すべてのソーシャルアプリに備わる伝統的で制限の多い、型にはまったプロフィールから脱却したいと考えました。なぜならZ世代の私たちは、表現の自由と独自性に大きな価値を置くからです」と、ルーロ氏は説明する。「私たちは、伝統的なプロフィールと真っ白なページの間で、心地よくユーザーフレンドリーな場所を見つけたかったのですが、それは多くの人にとって難しいことでした。そこで私たちは、プロフィールスキンを採用することにしたのです」。

Taggは、ブラウン大学でフットボール選手だったルーロ氏自身の経験からインスピレーションを得たものだ。同氏は当時、学生アスリートとしてのアイデンティティ以外で、自分を定義することは難しいと感じていた。そのことが、共同設立者のBlessing Ubani(ブレッシング・ウバニ)氏とSophie Chen(ソフィー・チェン)氏とともに、Taggを起ち上げる切っ掛けとなった。

「人は1つの枠にはめられてしまうものです。例えば、私がTikTok(ティックトック)で料理動画を配信しているとしましょう。そうすると、人は私のことを『料理動画を配信している男』という枠にはめて見ますが、しかし、私は同時に、ビデオゲームやその他のことを楽しんでいるかもしれないのです」と、ルーロ氏はTechCrunchに語った。「私たちは、そのような状況を打破し、クリエイティブな人たちが自分自身をより全体論的に表現できるようにしたかったのです」。

画像クレジット:Tagg

Taggのユーザーは現在、このプラットフォームに参加することでポイントを獲得するようになっている。このポイントは今のところ、特に価値のない機能に過ぎないが、ルーロ氏はこれをアプリの将来的な可能性として捉えている。

「Taggは現在、分散化やトークン化されていませんが、私たちのプラットフォームの原則は、Web3.0の価値観を反映しています」と、ルーロ氏は語る。「私たちの目標の1つは、コンテンツ共有やコミュニティへの参加から直接報酬を得られることが、クリエイター経済の問題を解決する手段であると、クリエイティブな人々に理解してもらうことです。それは、現状のクリエイターに対する支払い不足や、一貫性のないブランドとの提携とは相対するものです」。

将来的にTaggは、ユーザーが価値のあるコインやトークンを獲得できるようになる可能性もある。しかし今のところ、Taggはウェイティングリストからより多くのユーザーを参加させること、より多くのユーザーを獲得することに注力している。

2020年に大学を卒業した後、チームはベイエリアに移り、そこでアプリの開発を続けてきた。今回調達した資金を使って、Taggはチームを拡大するために採用活動を行っている。最近では、15年のエンジニアリング経験を持つSteven Fang(スティーブン・ファン)氏が、CTO兼共同設立者としてTaggに参加した。

画像クレジット:Tagg

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

アドビ、同社コアアプリの機能やAIツールをそれぞれ必要十分なだけ利用する新ツール「Creative Cloud Express」を発表

Adobe(アドビ)は米国時間12月13日、Creative Cloud Expressの提供を開始した。これは、広範をカバーするCreative Cloud SuiteとAcrobat PDFツールの優れた機能を1つに統合したモバイルとウェブの新アプリで、ソーシャルメディアへの投稿からプロモーション用のポスターや動画まで、あらゆるものをすばやく作成することができる。

Creative Cloud Expressは、テンプレートファーストのアプローチを採用し、ストック画像やその他のアセットへのアクセスが組み込まれているため、個々のCreative Cloudアプリよりもはるかに利用しやすいものとなっている。このアプリには、無料版と、より複雑なテンプレートのライブラリや機能を追加した月額9.99ドル(約1130円)の有料版が用意されている。この新しいアプリへのアクセスは、AdobeのCreative Cloud All Appsとフラッグシップのシングルアプリプランにも含まれる。

画像クレジット:Adobe

ウェブアプリの他に、無料のアプリがAppleのアプリストア、Google Play、Microsoft Storeで提供されている。

Creative Cloud Expressの一般的な考え方は、プロではない人に自分のビジョンに命を吹き込むために必要なツールを提供することだ。AdobeのAshley Still(アシュリー・スティル)氏が指摘したように、同社は近年、プロではないユーザーを増やしてきた。しかし、これらのユーザーの多くは、最初はCreative Cloudのフルアプリの精度とコントロールが欲しいと考えるかもしれないが、実際には同じタスクを迅速かつ簡単に実行できる方法を求めていることが多い。

「Creative Cloud Expressで行っていることは、幅広いウェブアプリやモバイルアプリ、そしてPhotoshopや画像、動画などのCreative Cloudのコアテクノロジーから得られた知見を、Creative Cloud Expressという統一されたサービスに集約することです。これは、プロセスではなく結果を重視する人たちのためのものです。彼らは真っ白なページからではなく、1億7500万ものAdobe Stockライブラリから画像を選んで始めたいのです。フォントを作成するのではなく、Adobe Fontライブラリにある2万種類のすばらしいフォントにアクセスするのです。チラシを作るために複数のアプリを使い、そして印刷できるようPDFを作成したりはしたくありません。1つの場所ですべての作業ができるようにしたいのです」。

画像クレジット:Adobe

実際には、膨大な数のテンプレートにアクセスできるようになるだけでなく、画像から背景を削除したり、Photoshopスタイルのフィルターやエフェクトを適用したりするツールも利用可能だ。また、Creative Cloud Librariesとの統合により、同僚が作成したPhotoshopやIllustratorの作品を、Creative Cloud Expressアプリで再利用することもできる。

また、動画をGIFに変換したり、文書をPDFに変換したりするツールもある。ここで興味深いのは、Adobe Stockの統合だ。Adobe Stockには無料プランはないが、Creative Cloud Expressの無料版に(いくつかの制限付きで)統合されている。無料プランのユーザーは、約100万点の画像やその他のアセットにアクセスできる。プレミアムプランのユーザーは、1億7500万点のAdobe Stockの写真、2万点のフォント、Photoshop ExpressとPremiere Rushへのアクセスが可能になる。

「Creative Cloud Expressでは、『Less is more(少ない方が豊か)』です」とスティル氏は話す。「Photoshopですべてのことができる必要はありません。例えば、ニューラルフィルターは必要ではなくても、背景の削除や画像の簡単な編集など、いくつかの簡単なことができなければなりません。Acrobatでは、PDFをパスワードで保護する必要はなく、PDFを作成したり編集したりすることができれば十分です。シンプルさの多くは、人々が達成しなければならない最も重要なことは何かということを、私たち自身が編集することで実現しています。彼らの意図は何なのでしょう?」。

Creative Cloud Expressは、ソーシャルグラフィックスや短編動画、ウェブサイトを構築するツールであるSparkを少しだけ進化させたようなもののように感じるかもしれない。Adobeはそうは言わないだろうが、もしSparkが強化されたものとあなたが考えるなら、それは大きな間違いではないと筆者は思う。なぜなら、Creative Cloud Expressは、ユーザーインターフェイスのデザインや全体的な哲学の多くを共有しているからだ。実際、発売前にadobe.com/expressにアクセスすると、Sparkのホームページにリダイレクトされていた。

しかし、スティル氏が述べたように、同社はこれをSpark、Photoshop Express、Premiere Rushなどのアプリの代替とは考えていない。これらのアプリはすべて、Adobeのコア機能やAIツールをより利用しやすくするためのものでもある。

また、Creative Cloud Expressの対象ユーザーはもう少し広い。Adobeは、Creative Cloud Expressを、学生から中小企業の経営者まで、誰もが気軽に利用できるコンテンツ制作ツールにしたいと考えている。

AdobeのCreative Cloud部門の最高製品責任者で執行副社長のScott Belsky(スコット・ベルスキー)氏は「誰もが伝えたいストーリーを持っており、誰もが自分のアイデアを表現できるようにすることが我々の使命です。何百万人もの人々が個人やプロフェッショナルのブランドを構築しているこのユニークな時代に、Creative Cloud Expressを発表できることをうれしく思います。創造、コラボレーション、共有のプロセスを統一するシンプルなテンプレートベースのツールで、誰もが簡単に作成できるようになります」。

画像クレジット:Adobe

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Nariko Mizoguchi

アドビ、同社コアアプリの機能やAIツールをそれぞれ必要十分なだけ利用する新ツール「Creative Cloud Express」を発表

Adobe(アドビ)は米国時間12月13日、Creative Cloud Expressの提供を開始した。これは、広範をカバーするCreative Cloud SuiteとAcrobat PDFツールの優れた機能を1つに統合したモバイルとウェブの新アプリで、ソーシャルメディアへの投稿からプロモーション用のポスターや動画まで、あらゆるものをすばやく作成することができる。

Creative Cloud Expressは、テンプレートファーストのアプローチを採用し、ストック画像やその他のアセットへのアクセスが組み込まれているため、個々のCreative Cloudアプリよりもはるかに利用しやすいものとなっている。このアプリには、無料版と、より複雑なテンプレートのライブラリや機能を追加した月額9.99ドル(約1130円)の有料版が用意されている。この新しいアプリへのアクセスは、AdobeのCreative Cloud All Appsとフラッグシップのシングルアプリプランにも含まれる。

画像クレジット:Adobe

ウェブアプリの他に、無料のアプリがAppleのアプリストア、Google Play、Microsoft Storeで提供されている。

Creative Cloud Expressの一般的な考え方は、プロではない人に自分のビジョンに命を吹き込むために必要なツールを提供することだ。AdobeのAshley Still(アシュリー・スティル)氏が指摘したように、同社は近年、プロではないユーザーを増やしてきた。しかし、これらのユーザーの多くは、最初はCreative Cloudのフルアプリの精度とコントロールが欲しいと考えるかもしれないが、実際には同じタスクを迅速かつ簡単に実行できる方法を求めていることが多い。

「Creative Cloud Expressで行っていることは、幅広いウェブアプリやモバイルアプリ、そしてPhotoshopや画像、動画などのCreative Cloudのコアテクノロジーから得られた知見を、Creative Cloud Expressという統一されたサービスに集約することです。これは、プロセスではなく結果を重視する人たちのためのものです。彼らは真っ白なページからではなく、1億7500万ものAdobe Stockライブラリから画像を選んで始めたいのです。フォントを作成するのではなく、Adobe Fontライブラリにある2万種類のすばらしいフォントにアクセスするのです。チラシを作るために複数のアプリを使い、そして印刷できるようPDFを作成したりはしたくありません。1つの場所ですべての作業ができるようにしたいのです」。

画像クレジット:Adobe

実際には、膨大な数のテンプレートにアクセスできるようになるだけでなく、画像から背景を削除したり、Photoshopスタイルのフィルターやエフェクトを適用したりするツールも利用可能だ。また、Creative Cloud Librariesとの統合により、同僚が作成したPhotoshopやIllustratorの作品を、Creative Cloud Expressアプリで再利用することもできる。

また、動画をGIFに変換したり、文書をPDFに変換したりするツールもある。ここで興味深いのは、Adobe Stockの統合だ。Adobe Stockには無料プランはないが、Creative Cloud Expressの無料版に(いくつかの制限付きで)統合されている。無料プランのユーザーは、約100万点の画像やその他のアセットにアクセスできる。プレミアムプランのユーザーは、1億7500万点のAdobe Stockの写真、2万点のフォント、Photoshop ExpressとPremiere Rushへのアクセスが可能になる。

「Creative Cloud Expressでは、『Less is more(少ない方が豊か)』です」とスティル氏は話す。「Photoshopですべてのことができる必要はありません。例えば、ニューラルフィルターは必要ではなくても、背景の削除や画像の簡単な編集など、いくつかの簡単なことができなければなりません。Acrobatでは、PDFをパスワードで保護する必要はなく、PDFを作成したり編集したりすることができれば十分です。シンプルさの多くは、人々が達成しなければならない最も重要なことは何かということを、私たち自身が編集することで実現しています。彼らの意図は何なのでしょう?」。

Creative Cloud Expressは、ソーシャルグラフィックスや短編動画、ウェブサイトを構築するツールであるSparkを少しだけ進化させたようなもののように感じるかもしれない。Adobeはそうは言わないだろうが、もしSparkが強化されたものとあなたが考えるなら、それは大きな間違いではないと筆者は思う。なぜなら、Creative Cloud Expressは、ユーザーインターフェイスのデザインや全体的な哲学の多くを共有しているからだ。実際、発売前にadobe.com/expressにアクセスすると、Sparkのホームページにリダイレクトされていた。

しかし、スティル氏が述べたように、同社はこれをSpark、Photoshop Express、Premiere Rushなどのアプリの代替とは考えていない。これらのアプリはすべて、Adobeのコア機能やAIツールをより利用しやすくするためのものでもある。

また、Creative Cloud Expressの対象ユーザーはもう少し広い。Adobeは、Creative Cloud Expressを、学生から中小企業の経営者まで、誰もが気軽に利用できるコンテンツ制作ツールにしたいと考えている。

AdobeのCreative Cloud部門の最高製品責任者で執行副社長のScott Belsky(スコット・ベルスキー)氏は「誰もが伝えたいストーリーを持っており、誰もが自分のアイデアを表現できるようにすることが我々の使命です。何百万人もの人々が個人やプロフェッショナルのブランドを構築しているこのユニークな時代に、Creative Cloud Expressを発表できることをうれしく思います。創造、コラボレーション、共有のプロセスを統一するシンプルなテンプレートベースのツールで、誰もが簡単に作成できるようになります」。

画像クレジット:Adobe

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Nariko Mizoguchi

アドビ、次世代Creative CloudでもAIの推進を続ける

ここ数年、Adobe(アドビ)はAIに全力で取り組んできた。2021年のMAXカンファレンスでも、同社のAIプラットフォーム「Sensei」を搭載したほぼすべての製品のアップデートが行われ、その成果が披露された。Lightroomのマスキングツールやプリセットの推奨、Photoshopでの画像間の色のトランスファー、Character Animatorのボディトラッカーなど、さまざまな機能がアップデートされている。


Photoshopを使ったことのある方なら、対象オブジェクトを正確に選択して操作することの難しさをご存知だろう。「自動選択ツール(英語だとMagic Wand Tool=魔法の杖ツール)」を使っても、魔法のようにはいかないことが多かった。2020年、AdobeはAIを使った「オブジェクト選択ツール」を追加した。今回のアップデートではさらに一歩進んで、画像内のさまざまなオブジェクトを自動的に認識する「オートマスキング」が導入された。Adobeは、まだすべてを検出するわけではないということをかなりオープンに認めているが、この機能は時間とともに改善されるだろうとも述べている。

画像クレジット:Adobe

同様に、2020年、Adobeは「ニューラルフィルター」と同社が呼ぶ機能を導入した。これにより、古い白黒画像のカラー化、ポートレートの改善、深度ブラーまたは画像のズームアップなどの機能が追加され、ニューラルネットワークが自動的にすべてのディテールを再作成しようとする。

画像クレジット:Adobe

2021年は「ランドスケープミキサー」という機能が導入されている。いくつかのスライダーを動かすだけで、プリセットを使ったり、または自分でカスタマイズして、例えば秋や冬に撮影されたような写真にすることができる。または、前景が少し暗いけれど、緑のイメージにしたいとしたら、青々とした緑の風景が写っている画像を探してきて、そのスタイルをトランスファーすることができる。

画像クレジット:Adobe

また、以前から搭載されていた深度ブラーは、焦点距離を事後に変更できるようになり、画像内のオブジェクトの周囲をすべてぼかすことに主眼を置いていた従来のフィルターに比べて、かなりプロフェッショナルな印象を与える。

一方、Lightroomでは、写真編集者が新機能を使って空を自動的に選択できるようになった(反転させて空以外のものも選択できる)。また、AIとは関係ないが、Lightroomの「見つける」フィードに「リミックス」タブが追加され、写真家が自分の作品を共有し、他のユーザーに自分が行った編集を見てもらうことができるようになった(変更を許可することも可能)。

ビデオグラファー向けには、Premiere Proに、音楽クリップの長さをビデオシーケンスの長さに合わせて自動的に調整することができる新しいAI機能を追加する。Creative CloudスイートのオーディオエディターであるAdobe Auditionで初めて採用された(やや紛らわしいが「Remix」と呼ばれる)この新機能は、シーケンスが終わったときに曲の途中でフェードアウトしないようにする。音楽クリップを短くする際に、曲の最後がシーケンスの最後に残っているようにオーディオを自動的にカットするという。

画像クレジット:Adobe

Creative Cloudのその他のアップデートとしては「Creative Cloud スペース(Creative Cloud Web)」がある。これは、ウェブ上のファイルやライブラリにアクセス、整理、共有するための新しいハブだ。これはまだプライベートベータ版で、Fresco、Illustrator、XD、Photoshopでのみ利用できる。これは、チームがアセットにテキスト、ステッカー、画像を追加できるリアルタイムのコラボレーションスペースを備えている。なお、これはウェブ上のPhotoshopやXDではない。プロジェクトやアセットを話し合うための場に過ぎない。

画像クレジット:Adobe

しかし、絶望することはない。PhotoshopとIllustratorのウェブ版(パブリックベータ版)も発表され、ブラウザ上での基本的な編集ツールをサポートしている。

その他にも、Creative Cloudのすべてのツールにさまざまなアップデートが行われている。明らかなのは、Adobeがクリエイティブプロフェッショナルやホビイストの作業をより楽にするために、AIに大きく賭けているということだ。ある意味では、SkylumのLuminar AIのような、AIをアプリケーションの中心に据えている競合他社に追いつきつつあるとも言える。しかし、Adobeの優位性は、その機能セットの幅広さであり、新規参入者がこれを再現するのは難しいだろう。

画像クレジット:Pavlo Gonchar/SOPA Images/LightRocket / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Aya Nakazato)

クリエイティブ業界の環境改善を目指すプラットフォームContact、女優メイジー・ウィリアムズやZ世代起業家が支援

生活のあらゆる面をデジタル化したパンデミックの影響で、かつてないほどの盛り上がりを見せているクリエイターエコノミーは、今や1000億ドル(約11兆円)以上の市場になっているという試算もある。しかし、モデル、俳優、作家、デザイナーのプロとして生きていくためには、電子メール、手作業の契約手続き、膨大なPDFファイルなど、さまざまなものを処理する必要がある。トップレベルのタレントエージェンシー全体の評価額が200億ドル(約2兆2000億円)に達しているにもかかわらず、クリエイターたちは支払いの遅延や不透明な業界慣習に苦悩している。しかし、モデルとして活躍するタレントが、20~40%ものコミッション料を請求されることがある一方、ソーシャルメディアは、タレントの参入障壁を下げ、タレントにコンタクトしやすくすることで、従来のエージェンシーを徐々に排除してきた。それでもやはり、いうまでもなく、誰もがソーシャルメディアで自分のキャリアを高められるわけではない。

2020年末に登場したContact(コンタクト)は、当初、モデルの契約の代行や、仕事の一部を管理するといったサービスを提供していた。現在は、クリエイティブ業界のキーパーソンたちを巻き込んで新たな資金調達を行い、前述の広範な問題に対処しようとしている。

「Game of Thrones(ゲーム・オブ・スローンズ)」で名を馳せたMaisie Williams(メイジー・ウィリアムズ)氏は、クリエイティブ業界の環境改善を熱心に訴えるとともに、このスタートアップのクリエイティブストラテジスト兼アドバイザーに就いている。

コンタクトは今回、Founders Fund(ファウンダーズ・ファンド)が主導するシードラウンドで190万ドル(約2億1000万円)の資金を調達した。また、LAUNCH(ローンチ、投資家のJason Calacanis[ジェイソン・カラカニス]氏が率いるファンド)、Sweet Capital(スウィート・キャピタル、Pippa Lamb[ピッパ・ラム]氏主導)、Rogue VC(ローグVC、Alice Lloyd George[アリス・ロイド・ジョージ]氏主導)、エンジェル投資家のSimon Beckerman(サイモン・ベッカーマン氏、Depop[デポップ]の共同創業者)、Eric Wahlforss(エリック・ウォールフォース氏、SoundCloud[サウンドクラウド]の共同創業者で、現在はDance[ダンス]の創業者兼CEO)、Abe Burns(アイブ・バーンズ)氏、Joe White(ジョー・ホワイト)氏も参加している。

コンタクトの原型は、モデルの世界を対象としているが、その視線ははるかに大きなものを見据えている。コンタクトの共同設立者兼CEOのReuben Selby(ルーベン・セルビー)氏は、ファッションデザイナーであり、ウィリアムズ氏がキャリアをスタートさせた会社の設立チームに所属していたことや、Nike(ナイキ)、Thom Browne(トム・ブラウン)、JW Anderson(JWアンダーソン)などと仕事をしてきたこともある。同氏によると、このプラットフォームは、1042億ドル(約11兆4000億円)規模のクリエイターエコノミー全体のスケーラブルなバックエンドソリューションとなり、世界トップクラスのクリエイティブな才能へのアクセスを「民主化」することを目指しているという。

ルーベン・セルビー氏(画像クレジット:Reuben Selby)

近頃、自閉症の創業者であることを語ったセルビー氏は、自身のレーベルReuben Selby(ルーベン・セルビー)の創業者兼クリエイティブディレクターでもあり、クリエイティブエージェンシー兼コミュニティCortex(コルテックス)の共同創業者でもある。セルビーには、Deliveroo(デリバルー)、Daisie(デイジー)、Government Digital Service(ガバメント・デジタル・サービス)などを手がけたJosh McMillan(ジョシュ・マクミラン)氏がCTOとして加わっている。

大まかに言えば競合他社には、Patreon(パトレオン)Creatively(クリエイティブリー)The Dots(ザ・ドッツ)などが挙げられるが、これらのプラットフォームのさまざまな側面を1つの屋根の下に集めようとするコンタクトのビジョンは、意欲的であると同時に、魅力的であると言えるだろう。

エージェンシーに牛耳られているこの業界で、個人や企業がエージェンシーを介さずに直接クリエイターやクリエイティブなサービスを見つけ出し、契約できるというのは挑戦的な試みだ。

コンタクトはまず、2020年10月にファッションモデルの発掘や契約機能を備えたプラットフォームを立ち上げたが、資金調達後はフォトグラファー、スタイリスト、ビデオグラファーなど、他のクリエイティブ分野でのサービスも展開する予定だ。

画像クレジット:Contact

セルビー氏は、自身がモデル、フォトグラファー、クリエイティブディレクターとしてクリエイティブ業界に参入しようとした経験から、コンタクトのアイデアを思いついたという。同氏は、報酬を得るための安全で確実な方法がほとんどないこと、委託会社には基本的な技術的ツールが欠けていることを知り、さらに「中間業者」と「エージェンシー」がピンハネによって利益をむさぼる黒幕であり、多くの場合サービスのクオリティーも低いことに気づいた。

では、コンタクトはどのような仕組みになっているのだろうか。

クリエイターが登録すると、さまざまなクリエイティブサービスに渡って自身のポートフォリオを公開し、直接オファーを受けられるようになる。

企業は、フィルターを使って人材を閲覧して見つけ出し、クリエイティブな人材を絞り込み、仕事の詳細を伝え、クリエイターと直接契約することができる。クリエイターは、ウェブ上のプラットフォームや、間もなく公開予定のスマートフォンアプリを使って、仕事の受諾や拒否を行うことができる。仕事が終われば、クリエイターにはコンタクトを通じて報酬が支払われる。

モデル業界での限定公開以来、コンタクトは約600人のクリエーターと、デポップ、Farfetch(ファーフェッチ)、Nike(ナイキ)、Vivienne Westwood(ヴィヴィアン・ウエストウッド)、Vogue(ヴォーグ)など1400以上のクライアントを獲得したという。そして、このプラットフォームのユーザー数は、前年同期比で100%増加したとのことだ。

セルビー氏によると、コンタクトはバックグラウンドに徹し、タレントがさまざまな分野で独立してブランディングできるようにするつもりだという。重要なのは、コンタクトがクリエイターからは料金を取らず、委託会社からのみ取引に対して20%の手数料を徴収することだ。

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ファウンダーズ・ファンドのパートナーであるTrae Stephens(トレエ・スティーブンス)氏は「特定の会社を作るために生まれてきたような創業者を見つけると、いつも興奮する。ルーベン氏は、まさにそのような創業者の1人だろう。コンタクトが規模を拡大し、新たなクリエイティブ分野に進出していくのを見ることが楽しみだ」とコメントしている。

また、スウィート・キャピタルのパートナーであるピッパ・ラム氏は「コンタクトのチームは『クリエイターエコノミー』という言葉がバズワードになるずっと前から、クリエイターエコノミーのフロンティアを開拓してきた。コンタクトは、世界レベルの技術的才能と、今最も創造的な精神から生まれる真の革新性を併せ持つ稀有な存在だ。この次の展開に期待している」と述べている。

「ゲーム・オブ・スローンズ」のArya Stark(アーヤ・スターク)役で知られるウィリアムズ氏にとって、スタートアップで働くことは初めてではない。同氏は以前、デイジーのプラットフォームに貢献したことがある。そのプラットフォームは、クリエイター同士を結びつけてお互いのプロジェクトに取り組むことや、クリエイターが自分の作品のための協力者を見つけることを支援している。

しかし「中間業者」に支配されているクリエイティブ業界の構図を破壊したいという同氏の思いは、その経験ではまったく満たされなかった。

ウィリアムズ氏とセルビー氏は、筆者の独占インタビューに答えて、自分たちのビジョンを説明してくれた。

セルビー氏は、現在のモデル市場はほんの始まりに過ぎないとし「ビジョンは、常にクリエーターを中心に据え、クリエーターが自分の仕事に対して報酬を得られるようにすることだ。基本的に、モデル業界という1つの分野からスタートした。そして今、フォトグラファー、メイクアップアーティスト、スタイリストなど、新たな分野に展開しているところだ。しかし、それは全体的なビジョンの中では非常に小さな部分だ」と語る。

また同氏は現在「作品の配信、視聴者との関係構築、収益化の方法」に焦点を当てているという。そして「つまり、物理的な制約の解放だけでなく、創造性を収益化するためのツールキットを提供することであり、今はそれを模索しているところだ。マーケットプレイスはあるが、それはごく一部であって、もっと大きなものを考えている」と述べる。

マーケットプレイスモデルは、企業とクリエイターを直接結びつけることができるが、企業が大きな力を持っていることに変わりはないと、同氏はいう。そして「クリエイターたちは、誰かが何かを与えてくれるのをただ座って待っているだけだ。そのため、クリエイターが自分の作品を配信し、自分のやり方で収益化できる方法を模索している。バックエンドではすべてのロジスティックスが機能し、運用面では当社が構築したサービスを使って、支払いやライセンス、保険を処理している」と述べる。

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ハリウッドの大スターであるにもかかわらず、ウィリアムズ氏は、同氏がよく知るクリエイティブ業界やエンターテインメント業界は、テクノロジー業界が構築し使い慣れているプラットフォームではなく、電子メールやハイパーリンクといった旧態依然とした世界に留まっていると話してくれた。「タレント事務所に所属していたため、オンラインでのやり取りはすべてメールだ。デジタル化されている資産もなく、台本を保管する『オンライン金庫』も、オーディションテープをアップロードする場所もない。いつもメールの中にリンクがあるだけだ。業界標準というものがない。エージェンシーについていえば、彼らが行う仕事はどれもあまり効率的ではなく、方向性も定まっていない」と同氏は語る。

同氏は、それを変える必要があるとし「キャスティングのプロセスがあるが、今はまだ、キャスティングディレクターと俳優、脚本家などの間では、非常に時代遅れな方法が取られている。そのため、もっと効率的なプロセスを構築したいと考えている」と述べる。

コンタクトを支援するために集めた投資家について、セルビー氏は、チームがファウンダーズ・ファンドをリードインベスターとして選んだ理由は、同社のアプローチにあるという。「彼らが創業者と一緒に仕事をする方法は、個人に対して非常に裁量を持たせてくれるものだ。[彼らは]創造的に考えるために、多くの自由とスペースを与えてくれる。そのため、明快な連携を取ることができる」と述べる。

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今回のラウンドに参加した他のエンジェル投資家について、同氏は「エリック・ウォールフォース氏やサイモン・ベッカーマン氏のような人たちは、ファッションや音楽文化全体に渡って大きなコネクションを持っている」という。

一方でウィリアムズ氏は、エンターテインメント業界がコンタクトにどのような反応を示すかについて「俳優は、俳優業以外にもさまざまなことをしている。そのようなことすべてを収益化できるプラットフォームを持てるということは、特に俳優は仕事がない時間も長いため、とても重要なことだ」と述べる。しかし、現在のシステムは「エージェントが受けさせてくれるオーディションからしかチャンスが得られない」仕組みになっていると同氏はいう。そして「これでは意欲が湧かずやりがいもない。だから多くの俳優は、ストリーミングプラットフォームで自分の番組を配信したり、自身のドキュメンタリーを作ったり、他の方法で作品を売ったりしている」と続ける。

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同氏は、コンタクトがプラットフォームを通じてそういった場を作り、クリエーターがより自立できるようにしたいと述べ「映画業界や音楽業界には、さまざまな分野でマルチな才能を発揮する、信じられないほど優秀な人たちが溢れている。しかし、彼らはいまだに、強大な権力をもつエージェンシー、レコード会社、マネージャーらに支配され『萎縮』している。才能を発揮するために、他の多くの手段を提供することは、本当に重要なことだと思う」と語る。

セルビー氏、共同設立者、そしてウィリアムズ氏のビジョンが非常に大きなものであることは明らかだ。問題は、同氏らがそれを成し遂げられるかどうかということだ。

しかし、ハリウッドスターを含めたZ世代の影響力を持つ情熱的なチーム、本格的なテクノロジープラットフォーム、米国の有力な投資家、クリエイティブ業界から集められたエンジェル投資家らの組み合わせは、確かに成功の可能性を示しているといえるだろう。

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(文:Mike Butcher、翻訳:Dragonfly)

【コラム】クリエイティブがグロースマーケティングの決定的なXファクター

今後、グロースマーケティングがプライバシー保護を重視した、ターゲットの曖昧なものに移行するとき、Facebook(フェイスブック)などの有料ソーシャルチャネル上のクリエイティブが最も強力な手段になるだろう。重宝しているiOS 14.5で特定機能が利用できなくなってこの傾向は加速されたが、さまざまなチャネルで広告プラットフォームの自動化に向けた取り組みが強化されている。

それで筆者は、シードステージのスタートアップであれ、Google(グーグル)のような巨大企業であれ、グロースマーケティングを推進する場合は常に、クリエイティブをテストする適切なフレームワークの準備を整えるべきだと思う。

筆者は、Postmates(ポストメイツ)で3年間働き、さまざまなスタートアップのためにコンサルティングをし、直近ではUber(ウーバー)で仕事をして、多くの点でマーケティングが変化する様子を見てきた。しかし、我々が今目にしているものは我々の制御を超えたファクターによって動いており、今まで見てきたどんなものとも異なる変化が始まっている。続いて、有料のソーシャルアカウントでクリエイティブが最も強力な手段として登場した。

基本

クリエイティブの力を活用し、有料のソーシャルマーケティングで成功を収めようと考えているなら、その考え方は正しい。必要なのは、クリエイティブをテストするフレームワーク、つまり新しいクリエイティブアセットをテストする構造化された一貫性のある方法である。

次に、クリエイティブをテストするフレームワークを成功させるために必要な基本要素を示す。

  • 決められたテストスケジュール
  • テーマを構造化したアプローチ
  • チャネルに特化した戦略

クリエイティブのテストは、決められたテストスケジュールに従った、持続的で反復的なプロセスにする。目標と構造は、毎週5つの新しいクリエイティブアセットをテストするシンプルなものにできる。逆に、複数のテーマとコピーバリエーションから成る60の新しいアセットをテストする複雑なものにもできる。

出費があまり多くないアカウントの場合、イベントシグナルが限られているのでクリエイティブのテストは比較的限定的なものにする。出費の多いアカウントの場合はその逆にする。最も重要なことは、次の「優れた」アセットを探す際、テストを継続して目ぼしいものを見つけることである。

4つのテーマ×テーマごとに3つの変化形×5つのコピーバリエーション=60のアセット(画像クレジット:Jonathan Martinez)

テストのスケジュールを設定したら、思いつきのアイデアを大量にテストするのではなく、ビジネスとバーティカル市場の主要なテーマを定義する。これは、コピーや、製品とサービスの主要な価値提案と同様に、クリエイティブアセットにも当てはまる。クリエイティブのデータ分析を始めると、この構造を活用してテストすることで、何を強化し、何をカットするか、簡単に決定できることがわかるだろう。これは、テストの過程を通じて拡張または縮小するワイヤーフレームと考えることができる。

MyFitnessPal(マイフィットネスパル)のようなフィットネスアプリの場合、次のように構造化できる。

  • テーマ(製品のスクリーンショット、製品を使っている人の画像、UGCのユーザーの声、事前・事後の画像)
  • メッセージ(セグメント化された価値提案、宣伝広告、FUD)

チャネルは、クリエイティブのベストプラクティスやテストの機能がそれぞれ異なるので、チャネルに特化したアプローチになっていることを確認することは非常に重要である。フェイスブックでうまくいくことが、Snapchat(スナップチャット)やその他多くの有料ソーシャルチャネルでもうまくいくとは限らない。クリエイティブのパフォーマンスがチャネルによって異なるとしてもがっかりすることはないが、筆者は等価性テストを推奨する。あるチャネル向けのクリエイティブアセットがすでにある場合、残りのチャネル向けにサイズ変更して体裁を整えても問題はない。

何が成功かを判断する

適切なイベント選択と、テスト全体を通じて守る統計的に有意なしきい値は、クリエイティブにとって等しく重要である。クリエイティブのテストに使うイベントを選択する際、CACのレベルによっては、必ずしも自社のノーススターメトリックを使えるとは限らない。例えば百単位のCACで高額のアイテムを売る場合、各クリエイティブアセットで統計的に有意な値に達するには、多額の出費が必要になるだろう。代わりに、ファネル上部寄りのイベントと、ユーザーの転換の可能性を示す信頼性の高い指標を選ぶことができる。

ファネル上部寄りのイベントを使うと、学習の迅速化につながる(画像クレジット:Jonathan Martinez)

使用する統計的に有意な割合を決める際、クリエイティブのテスト全体にわたって一貫した割合を選択することは重要である。経験上、筆者は80%以上の確実性を好む。それによって、十分な確認と決定の迅速化が可能になるからだ。Neil Patel(ネール・パテル)氏のA/Bテスト向け有意性計算ツールは、便利な(無料の)オンライン計算ツールである。

成否を分けるもの

ソーシャルフィードをスクロールしていて、光沢のあるゴールドのペンダントに目が留まったとしよう。しかし、メッセージはブランド名と製品の仕様だけである。注意を引かれはしたが、引き寄せられるものが何かあっただろうか。考えてみて欲しい。人の注意を引くだけでなく「クリエイティブ」、つまり有料のソーシャルグロースマーケティングで成否を分けるファクターを使って、引き寄せているだろうか。

iOS 14.5のデータロスを迂回する

iOS 14.5でユーザーデータがわかりにくくなり、モバイルキャンペーンにおいてクリエイティブのテストは厳しくなる一方だが、不可能というわけではなく、ただもっと賢くなる必要があるということである。クリエイティブのパフォーマンスに関する明瞭なインサイトを得るのに役立つアイデアはいろいろあり、長続きしないものもあれば、ずっと残るものもあるだろう。

プライバシー保護のための制限はたくさんあるが、膨大な数のAndroid(アンドロイド)ユーザーには依然としてアクセス可能であり、これを活用しない手はない。クリエイティブのテストをすべてiOSで実施する代わりに、インサイトを収集する明瞭な方法としてアンドロイドを使うことができる。プライバシー保護のための制限はまだアンドロイドデバイスに課されていないのだ。アンドロイドでのテストで収集されたデータは、次にiOSでのキャンペーンに適用できる。アンドロイドでのデータにも制限が課されるのは時間の問題でしかないので、iOSでのキャンペーンに情報を提供できるこの回避策を活用するのは今である。

アンドロイドでのキャンペーンが実行可能なオプションでない場合、手早く簡単な別のソリューションは、Webサイトのリードフォームを断念し、クリエイティブアセットから記入済みフォームへの転換率を測定することである。ユーザーエクスペリエンスは確かにエバーグリーンコンテンツと比べればまったく驚くほどのものではないが、これを使えば短期間でインサイトを得ることができる(しかも、予算のほんの一部で)。

リードフォームを作成する場合は、エバーグリーンエクスペリエンスの重要な指標となるイベントを完成させるユーザーを見極めて明らかにする質問を考えよう。ユーザーがリードフォームに記入し終えたら、コミュニケーションを取ってユーザーの転換を図り、広告費を有効に使うことができる。

アカウントステージに基づいて取り組む

クリエイティブアセットのタイプに応じたテストの取り組みはアカウントステージアカウントステージによって大きく異なり、模倣、反復、イノベーションの3つに分けることができる。

クリエイティブのテストのタイプは時間とともに変化する(画像クレジット:Jonathan Martinez)

アカウントステージが初期であればあるほど、クリエイティブの方向性が他の広告主によって有効であることが証明されたものに依存する度合いは大きくなる。それらの広告主は、アセットのパフォーマンスの証明に多くの出費をしてきており、そこから強力なインサイトを得ることができる。時間の経過とともに、他の広告主から導き出す速度をわずかに落とし、ベストパフォーマンスの反復に重点を置くことができる。筆者が割合を決めるとすれば、初期段階では取り組みの80%を模倣に置く。成功事例が明らかになるにつれて自然と反復の勢いが増し、イノベーションが大きく遅れて最後の柱になる。

これは、すばらしいアイデアがある場合でも初期段階ではイノベーションを試すことはできないということではが、一般に、十分に成長した企業の方が革新的なアイデアの検証に多額の出費をする余裕がある。また、社内にデザインチームがあるにしても、フリーランスのデザイナーと一緒に取り組むにしても、50の異なる革新的なアセットを考えてデザインするより、50のバリエーションを考える方がはるかに簡単である。模倣と反復により、初期のテストは大幅に効率的になる。

競合他社のインサイトを活用する

ブレインストーミングをして、最高に美しく、目を引いて、人を引き付けるクリエイティブを思い描くことは、必ずしも数秒でできることではなく、数分でも、数時間でもできるとは限らない。ここで、競合他社のインサイトを利用することが関係してくる。

最も充実したリソースはフェイスブックの広告ライブラリである。そこには、プラットフォーム全体であらゆる広告主が使っているすべてのクリエイティブアセットがある。実際のところ、この無料の強力なツールのことを知っている人がほとんどいないことに、筆者はいつも驚かされる。

このライブラリで競合他社やクラス最高の広告主を参照すると、広告主が長く使ってきた具体的なアセットに、優れたパフォーマンスのクリエイティブの証拠を見ることができる。どうしてそれがわかるかというと、便利なことに、広告主がクリエイティブを使い始めた日付のスタンプが各アセットにあるのだ。これは非常に役に立つ。筆者は、何時間でもクリエイティブアセットを調べていられる。それぞれの広告主が、情報とひらめきをさらに提供してくれる。

有料のソーシャルグロースマーケティングで努力を傾ける分野を考えるときは、クリエイティブをリストのトップに置く必要がある。データがますますわかりにくくなるにつれ、アイデアに富んだ考え方をする必要がある。そうした考え方が、成功と失敗の分かれ目になる。実行する戦略のタイプは時間とともに変わるが、変わらないのは、強力なクリエイティブ、つまり成功を左右するファクターの重要性である。

編集部注:本稿の執筆者Jonathan Martinez(ジョナサン・マルティネス)氏は、元YouTuberで、カリフォルニア大学バークレー校の卒業生であり、Uber、Postmates、Chimeをはじめとするさまざまなスタートアップ企業の成長を支援してきた成長マーケティングのオタク。

画像クレジット:MirageC / Getty Images

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(文:Jonathan Martinez、翻訳:Dragonfly)