Kintoの設立は数年前から始まっていた新しい形の自動車利用へのシフトを明確化するものだろう。世界の自動車メーカーはサブスクリプション・モデルを各種実験している。ただし結果は成功ばかりではない。VolvoのCare by Volvoはもっとも成功した例だが、キャデラックはBook by Cadillacサービスを中止している。ただしGMでは再開の方策を検討しているという。
ロサンゼルスが例外なのではない。アリゾナでは子どもたちの通学に、フロリダでは老人ホーム周辺の高齢者の移動に、北カリフォルニアの無限ループと呼ばれるかの環状道路では、ジャーナリストの一団を運ぶために自律走行車両が使われている。Starshipの配達ロボットは100以上のコミュニティーに展開され、スコッツデールのKrogerの利用者には、今日もNuroが牛乳を届けている。世界中のドローン企業は、バンや自転車に代わる即時配達サービスにドローンを使う認可を請求している。さらに、30近くの街が、空飛ぶ車の実用化を目指すUrban Air Mobility Initiative(都市航空移動イニシアチブ)に加盟した。
米連邦運輸省は、そうしたエコシステムと、そこからもたらされる教訓の価値を認識している。昨年、米運輸省はドローンのIntegration Pilot Program(統合パイロットプログラム)を立ち上げ、数多くの州、地方、部族政府が企業と協力して、高度なドローンの運用をテストできるようにした。これには、ドローン運用に関する規則の最適なバランスを探るという目的もある。このプログラムが早期に成功したことから、米運輸省は、同様のプログラムを自律走行車両にも実施すると発表した。このような柔軟な環境が、最先端テクノロジーを生み出す企業と規制当局との大変に重要な協力関係を促進する。新しい規制は、密室で立てられる仮説にではなく、実社会での実験に基づいて構築されるのだ。
TeslaとSpaceXのCEO、イーロン・マスクは本当にトンネル掘削会社をスタートさせる。会社の名前もThe Boring Companyだという。この会社の頭文字はTBCになるが、ご存知のようにこれは「次回に続く(to be continued)」の略語としても知られている。マスクはトンネル掘削に賭ける野心をまずTwitterに投稿し、続いてデモがBloombergの特集記事になった。
Traffic is driving me nuts. Am going to build a tunnel boring machine and just start digging…
信じられないかも知れないが、空飛ぶ車の誕生から既に70年以上が経っている。1904年にJules Verneが発表した小説Master of the Worldの中に空飛ぶ車が登場して以来、技術者は何世代にも渡ってその実現に向けて努力を重ねてきた。1940年にはHenry Fordが、飛行機と自動車を組合せた乗り物がそのうち誕生すると予言していた。当時の飛行機と自動車は、機体の価格が低下する一方、技術力は向上し、普及率も上がってきていた。そのため、近いうちに車と飛行機を組合せた乗り物が登場すると思われていたのだ。Fordの予言は正しく、彼の予言から数年後に、航空エンジニアのTed Hallが世界初の完全に機能する空飛ぶ車を完成させた。
VTOL機とは垂直離陸機(Vertical Take Off and Landing vehicles)のことを指している。要するに、今日のドローン革命を起こしたテクノロジーを使って、将来人間を運べるような空飛ぶ車をつくることができるかもしれないのだ。翼や車輪のことは一旦忘れ、宇宙家族ジェットソンが乗っているような空飛ぶ車や、DJIのドローンを人間が乗れるように大きくしたものを思い浮かべてみてほしい。
著書「From Zero to One」の中でPeter Thielは、私たちはもう革新的な世界に住んではいないと述べ、物議を醸した。産業革命の結果、電気や家電、超高層ビル、自動車、飛行機といったさまざまなイノベーションが誕生した一方、現代のイノベーションのほとんどは、ITや通信の世界に留まっていると彼は主張しているのだ。Thielの指摘通り、ライフスタイルが1950年代から不思議なほど変わっていないという事実に、私たちはスマートフォンのせいで気づいていないだけなのかもしれない。