暗号通貨によるマーケットプレイスZoraが、クリエーターのための持続可能なエコノミーを構築するため200万ドルを調達

Dee Goens(ディー・ゴエンズ)氏とJacob Horne(ジェイコブ・ホーン)氏は、クリエイターのために、フォロワーが参加できる持続可能なエコノミーを作る手段を開発しているが、2人の経歴は、Coinbase(コインベース)、大学での暗号ハッキングプロジェクト、KPMG、Merrill Lynch(メリルリンチ)と、現在彼らの行っていることからまったく真逆のものである。2人はアートとどういった関わりがあるのだろうか?

「信じてもらえるかどうかわかりませんが、私の夢はラッパーになることだったんです」とゴエンズ氏は笑う。「私の作品はいまでもSoundCloud(サウンドクラウド)のどこかにありますよ。音楽への情熱があったので、音楽業界内の仕組みを探りました。私は興奮気味に業界の友人達に良い360ディール(アーティストとレコード会社間のビジネス契約)モデルがないかと尋ねましたが、ひどいモデルしかありませんでした」。

多くのディールモデルは悪意のあるものではないものの、芸術性を搾取する構造になっていることがしばしばある。多くの場合、アーティストの作品所有権のほとんどはレコード会社側に渡ってしまう。「アーティストはなぜ影響力のある方法で彼らのコミュニティから資金を調達することができず、代わりに搾取される危険のある関係を求めざるを得ないのだろうと興味を持ちました。これはひどいと、私は思いました」。

ホーン氏は、ずっとファッションブランドを立ち上げたかったのだと述べた。

「暗号通貨に携わった後は、ファッションブランドを立ち上げたいと常に思っていました。暗号通貨も好きですが、あまりに金融に偏り過ぎているので、いつもなにか足りないような気がしていました。そこで、この2つに対する情熱を組み合わせたらどうだろうと考えるようになり、Saint Fame(セイントフェイム)を立ち上げたのです」。

Coinbaseにいる間、ホーン氏はZora(ゾラ)でのディスプレイに関するアイデアの一部を活用したサイドプロジェクト、Saint Fameのコンピュータープログラムを作成していた。それは、暗号通貨でものを売買し、将来の商品と交換可能な中間媒介変数値のトークンを購入できるマーケットプレイスであった。

「文化自体が、アーティストやそのコミュニティに不利な形に歪んだ古い金融システムをベースに形作られていることがわかりました」とホーン氏は言う。「所有権の運用システムはオランダの東インド会社と初期の国民国家により1600年代に作られたものです。どうしようもないと思いませんか」。

今はインターネットがあり、なにかを作ったらそれを文字通り何十億もの人と一度に共有できる時代であるにもかかわらず、所有権システムは手紙を1通送るのに船で6ヶ月もかかった時代と同じシステムのままです。このシステムを変更すべき時が来ています。インターネット上のコミュニティが資本を持ち寄って集まり、同じビジョンに向かって取り組むことができようにすべきです。それはクリエーターやアーティストが自らが生み出している文化を所有できるようにすることから始まります。長期的には、これは社会的取り組みを行うインターネットコミュニティに移行します」。

この問題を解決しようと彼らが取り組んでいるのが、Zoraと呼ばれるシステムである。これは2つの要素から成り立っているが、背景にある哲学は1つ、クリエーターのための持続可能なエコノミーを作り出すことである。

クリエーターはほとんどの場合、自分の作品に対する報酬を一度しか得られない。しかし、彼らの手の届かないところで第2の経済が引き続き価値を生み出している。例として作品を制作して市場価格で売却したアーティストについて考えてみよう。これはこれで素晴らしいが、その後そのアーティストが将来の作品に注ぎ込み、名前とブランドとフォロワーを築くのに投入される作業のすべては、その作品に付加価値を与えることになる。だがアーティストはそこから一銭も得ることはなく、代わりにその作品が利益を生むように、将来の作品の価値に依存するという形になっている。

画像クレジット: Zora

これが基本的な従来の仕組みだ。著者は展覧会を開いていたことやギャラリー経営に携わっていたことがあり、父は画家なので、この世界に多少の関わりがある。彼が今日油絵を300ドル(約3万1000円)で売り、時間の経過とともに腕を上げ、人気が出て、絵に価値が出ると、その油絵の所有者はその油絵を数百ドル、または数千ドルで再販する可能性がある。私の父はそこから僅かな儲けも得ることはない。父のようなアーティストが、壁の正方形のスペースやキュレーターの名声、あるいは店構えのために作品の価値の多くの部分を削り取っていくギャラリーのシステムにはまってしまうことは決して起きてはならないことだ。

同じことが音楽業界、ファッション、スポーツ、ソーシャルメディアにも当てはまる。多くの仲介者にたくさんの手数料を払わなければならないのだ。そして予想できることながら、文化推進の立役者であるクリエーターが最大の敗者なのは明白である。

Zoraの製品は主に、クリエーターまたはアーティストが作品を売り出し、そして流通市場にも引き続き参加することのできるマーケットである。

以下がZoraからの説明である。

Zoraでは、クリエーターは2つの値段を設定することができます。開始価格と最大価格です。コミュニティメンバーがトークンの売買を行うと、その価格が上下します。市場により適性価格の模索が行われるため、価格は動的なものになります。人々がトークンを買うと、価格は最大価格へ近づき、売れば最小価格へ近づきます。

Jeff Staple(ジェフ・ステイプル)氏のような盛り上がりを見せているコミュニティでは、この新しい動的価格システムのため、彼のスニーカーの価値は急速に上がります、クリエーターとして市場価格で作品を売ることから利益を得るだけではなく、所有する市場から手数料を得ることができます。StockX(ストックエックス)で取引されていたものが、クリエーターが所有する市場で取引されようとしているのです。

さっそく成功をおさめた取引もある。デザイナーでありマーケターでもあるステイプル氏は、Reverseland(リバースランド)によるCoca-Cola(コカ・コーラ)とStaple(ステイプル)のコラボ作品であるスニーカーSB Dunk(SBダンク)を30足限定で売り出しており、価値は発売以来234%上昇している。Benji Taylor(ベンジ・テイラー)氏とKevin Doan(ケビン・ドーン)氏のコラボによるソフビフィギュアは210%の上昇を見せている

今までも趣旨の似通った試みを見たことはある。StockXに創設者のJosh Luber(ジョッシュ・ルーバー)氏がまだいた頃、ブラインドダッチオークションと呼ばれる最初の製品オファーを行った。これは、市場が商品の価格を設定することを可能にするシステムで、その商品の製造者やブランドに、市場価格からの上昇分の一部が還元される仕組みだ。ここでの焦点はブランド対個々のクリエーターだった(彼らはBen Baller(ベン・ボーラー)のサンダルから開始したわけだが)。ブランドが限定商品の流通市場価格から利益を得られるようにするこのシステムは革命的なものとは言えないかもしれないが、趣旨は似ている。当時筆者はこれはよいアイデアだと思ったし、収益を最大化するというよりは民主化するのに使われている点が更に良い。

補足:このチームが、自分たちのTestFlight(テストフライト)グループにおける価値を通して、市場を自分たちでテストするといったおもしろいアイデアをいじり回しているのを好ましく思う。そんな事してもよいのかとも思うが、同時にそれは素晴らしいアイデアであるし、そんな試みを今まで見たことがない。

Zoraは2020年5月(この不確実な時期の真っ最中)に発足した。チームは、ゴエン氏(クリエイター兼コミュニティ)、ホーン氏(製品)、Slava Kim(スラヴァ・キム)氏(デザイン)、Dai Hovey(ダイ・ハヴィー)氏(エンジニアリング)、Ethan Daya(イーサン・デイヤ)氏(エンジニアリング)、Tyson Battistella(タイソン・バティステラ)氏(エンジニアリング)という構成である。

Zoraは、Kindred Ventures(キンドレッド・ベンチャーズ)が主導し、Brud(ブラッド)のTrevor McFedries(トレイバー・マクデュリー)氏、Alice Lloyd George(アリス・ロイド・ジョージ)氏、ジェフ・ステイプル氏、Coinbase Ventures(コインベース・ベンチャーズ)などが参加したシードラウンドで200万ドル(約2億1000万円)を調達した。

トークン化されたコミュニティ

しかし、手に取れる商品だけでなくデジタル作品も価値を蓄えておける有形物であるべきだ、という考えは既存の考えではない。ゴエン氏とホーン氏はZoraの最初の大型新製品である「コミュニティトークン」を用いてこれに挑戦しようとしている。Ethereum(イーサリアム)上で発行された$RACは、Zoraにとって初めてのコミュニティトークンとなる。André Allen Anjos(アンドレ・アレン・アンホス)氏は、芸名RACで活動するポルトガル系アメリカ人のミュージシャン兼プロデューサーで、ウェブ上でストリーミングするリミックス、オリジナル音楽、そして大手ブランドの広告で使用される商業作品を制作している。

RACは人気があり、数万人のフォロワーがいるが、ソーシャルメディア上で絶大な力を持つわけではない。取引やセールスにおけるトークンの分配とそれに続く活動は、純粋に彼のファンの賛同により進められる。この新しいエコノミーに関与している人々が主に学んだのは、生の数字は、ソーシャルメディアにおいて、人々が運転中に見る看板と同等の役割を果たすということである。それに目を奪われることもあるかもしれないが、必ずしもそれが購買行動につながるとは限らない。現代のクリエーターはファンと共に一軒の家に住んでいるようなもので、ファンにDiscord(ディスコード)、Snap(スナップ)、コメントを介してアクセスを提供し、やり取りしている。

画像クレジット: Zora

しかし、そうした家はすべて他人の家であり、これこそがZoraがトークンを立ち上げた理由である。

トークンドロップは次の複数の役割を果たす:

  1. 複数箇所に分立したファンをまとめることができる。ファンはIntsa、TikTok(ティックトック)、Spotify(スポティファイ)、Snapchat(スナップチャット)にかかわらず、トークンを獲得できる。このトークンはファン全員が理解し、中心に据える価値の統一されたコミュニティ単位として機能する。これがアーティストのデジタルな存在を有形な価値をたたえるものとして所有する方法だ。
  2. アーティストが自らを所有し分配できる価値のプールを作り出す。現在、$RACを直接買うことはできない。取得することができるだけである。その一部は忠実な支持者には遡及効果がある。例えば、2009年当時Bandcamp(バンドキャンプ)でRACをフォローしていたとすると、2万5000ものRACのプールの一部を取得できる。RACのファングッズを少し購入したことがある場合はどうか。その場合もトークンでいくらかのクレジットを獲得できる。将来行われるRACの分配は、サポーターやグッズ購入者などへあてられるのだ。
  3. 価値は通貨に散逸するのではなく、アーティストの世界に留まる。トークンはアーティストがフォロワーにインセンティブ、報酬を与え、活気付かせる役割を果たす。RACのミックステープを購入したファンはトークンを取得し、そのトークンはさらに別のグッズを購入する際に引き換えることができる。
  4. トークンは、パフォーマンスアートや、アクティビズム、ごく短いエンターテイメントなど都合よくパッケージ化できないカテゴリーに分類される作品を制作しているクリエーターの柔軟性を高めることができる。これらの作品の場合、お金のかわりとしてトークンを「ドロップ」するのは簡単ではない。しかし、オーディエンスが増え、価値の高まったトークンが出回れば、間違いなくメリットがある。

Zoraがまもなく行おうとしているのは、クリエーターや起業家が直接的なパートナーシップや事前の手続きなしで、自分の製品を発売できるマーケットプレイスのセルフサービスバージョンを立ち上げることだ。たくさんの不確実要素があり、サービスの牽引方法やメッセージの送信方法など、チームは行く手に数多くの課題を抱えている。しかし、前述のような成功事例もあり、背景にある哲学もすばらしく、非常に必要とされているシステムである。クリエーターの世界/情熱のエコノミー(などなど呼び方はなんであれ)は、年齢やファンコミュニティの波がどう上昇するかに左右されるが、彼らによる貢献の価値がどう分配され、コミュニティを構築するための長期に渡る努力が長期的な価値にどのように変換されるべきかを再考する必要があるのは間違いない。

ちなみにRACのテープ「BOY(ボーイ)」の最後の取引価格は3713ドル(約39万円)で、上昇率はなんと1万8465%であった。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:仮想通貨 資金調達

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(翻訳:Dragonfly)

PayPalが仮想通貨の対応やHoneyの統合など2021年のデジタルウォレット計画の詳細を公表

PayPal(ペイパル)は今週、そのデジタルウォレットプラットフォームと、PayPalおよびVenmo(ベンモ)のアプリに関する将来の展望を公表した。米国時間11月2日に行われた第3四半期の収支報告にて、同社は2021年中に、そのモバイルアプリの大幅変更を行い、大量の新機能を盛り込む計画だ。それには口座振り込み、小切手の現金化、予算管理ツール、請求書の支払い、仮想通貨の対応、サブスクリプションの管理、後払い機能そしてHoney(ハニー)の買い物ツールを全体的に統合することなどが含まれる。

PayPalでは、以前からHoneyの機能をPayPalに取り込む計画を明らかにしていたが、CEOのDan Schulman(ダン・シュルマン)氏は、2019年に40億ドル(約4180億円)で買収(未訳記事)した、お得な買い物情報が探せるプラットフォームであるHoneyの統合で何を目指しているのか、またそれやその他のアプリのアップデート計画に関する詳細を公表した。

Honeyの買収によって、PayPalには月間1700万のアクティブユーザーを獲得した。これらのユーザーは、Honeyのブラウザ拡張機能とモバイルアプリを利用し、欲しい商品が最もお得に買える店の検索や価格比較などを行っている。

しかし、いまだにHoneyのサービスはPayPalからは独立した形で運用されている。そこを2021年には変えたいとPayPalは考えた。

シュルマン氏は、同社のアプリをアップデートしてHoneyの買い物ツールを組み込むと語る。欲しい商品を追跡できる「欲しいものリスト」や、割り引きや値下げを知らせたり、クーポンやオマケなどのお得情報を知らせてくれる価格監視ツールなどだ。これらのツールが、PayPalの決算ソリューション本体に統合される。

こうすることでPayPalは、顧客がお得情報の検索を開始した時点からトラッキングを開始できるため、顧客の特定の商品への興味を知り、彼らに的を絞った割り引きなどの特典を示して、商品の代金支払いまでの一連の体験を1カ所で提供できるようになる。

PayPalはさらに、Honeyのツールを利用した顧客のエンゲージメントに基づく「匿名需要データ」を販売業者に提供し、売上げ向上に協力すると話している。

しかもPayPalは、Honeyの統合とその他の計画中のアップデートを、2021年中に実施するようスケジュールを設定している。

Bill Pay(請求書の支払い)は、2020年11月からスタートするとPayPalは話している。デジタルウォレットの利便性に関する大幅なデザイン変更は2021年前半に実施される予定だ。新機能は、そのほとんどが2021年の第2四半期と後半に導入し、変更の大半は来年末までに完了することを目指している。

この変更には、PayPalの仮想通貨への対応も含まれることが、10月末に発表されていた。同社では、手はじめに米国内でBitcoin(ビットコイン)、Ethereum(イーサリアム)、Bitcoin Cash(ビットコイン・キャッシュ)、Litecoin(ライトコイン)に対応する。

収支報告でシュルマン氏は、PayPalがいつ、幅広い利用者や地域に仮想通貨をもたらすかについて投資家に語った。それによると、仮想通貨の購入、販売、保管は、まず米国内で開始し、後に国際市場に拡大、そして2021年前半にVenmoアプリに対応するとのことだ(現在、PayPalでは米国内の利用者を対象にアプリの仮想通貨機能の予約を受け付けている)。

仮想通貨の購入、保管、販売機能といった今後のPayPalのユーザーエクスペリエンス(画像クレジット:PayPal)

この変更によりPayPalの利用者は、同社の2800万件の販売業者から仮想通貨で買い物ができるようになる。その際、業者側には一切の追加的統合の手間をかけることがない。これは、決済プロセスの扱い方によって可能になると同社は説明している。利用者は、PayPal提携業者に支払いを行った時点の相場に従い、即座に仮想通貨を不換通貨に換金できるというものだ。

「このソリューションでは、消費者と販売業者のどちらの側にも、新たに何かを統合する必要や、価格変動リスクや増分取引手数料の心配がありません。基本的に仮想通貨の利便性を高めるものです」とシュルマン氏。「これは、規制当局と協力しながら新しい形態のデジタル通貨を受け入れることから期待されるチャンスの始まりに過ぎません」と彼は言い加えた。

PayPalは、最近になって、代金を4回の分割払いにできる「Pay in 4」(ペイ・イン・フォー)プログラムで「代金後払い」の競争に加わった。このサービスは、今年8月にアメリカに導入される以前に、フランスでスタートしている。その後、イギリスにも導入された(こちらは3回払いのPay in 3)。これも、数カ月以内に同社のアプリに統合される。

2021年の収益が9億ドル(約940億円)に達すると自身が見込むVenmoは、ビジネスプロファイルを拡大させ、より一般的な金融ツール、買い物ツールとしての仮想通貨の可能性を高め、さらには「Pay with Venmo(Venmoで支払う)」による決算体験も改善させることになるだろう。

シュルマン氏は、VenmoとPayPalのアプリを「根本的な改革」として見直す同社の計画も示唆していた。来年1年をかけて行われる変更にともない導入される大量の新機能と新しいユーザーエクスペリエンス、つまりはデザインの変更により、別のアプリを乗り換えたり、デススクトップ版ブラウザを使ったりすることなく、1つのエクスペリエンスから新しいものへ、利用者が簡単に移行できるようにするのが目的だ。

今週発表されたPayPalの収支報告にウォール街は落胆し、2021年度ガイダンスが示されなかったことで株価が落ち込んだ。しかし、PayPalのデジタルウォレットアプリの2021年は、おもしろいことになるはずだ。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:PayPal仮想通貨

画像クレジット:PayPal/Honey

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(翻訳:金井哲夫)

仮想通貨ウォレットアプリZenGoが米国でデビットカードを発行

仮想通貨を管理するモバイルアプリZenGo(ゼンゴー)は、Visa(ビザ)のデビットカードを米国内で発行する。仮想通貨を使うデビットカードはこれが初めてというわけではない。Coinbase(コインベース)は、デビットカードの運用を米国に拡大するとつい先週発表している。しかし、ZenGoの場合は、資産管理権のないウォレットとなる。つまり、自分の仮想通貨資産を自分で管理できるのだ。

取引所に仮想通貨を預けると、他の人がそのアカウントにアクセスして他のウォレットに通貨を送ることができる。もちろん、電子メールによる確認や2ファクター認証などのセキュリティ機能はあるが、基本的には利用する取引所のセキュリティ担当者に依存することになる。

ZenGoをはじめとする資産管理権のないウォレットでは、自分でセキュリティの責任を負わなければならない。自分自身が仮想通貨銀行となるわけだ。ZenGo自身が仮想通貨の送金や換金はできないため、デビットカードの発行はとても複雑な事業となる。

ZenGoは、2021年初頭には独自のデビットカードの発行を目指し、Visaの「Fintechファストトラックプログラム」に加盟した。現在のところカード発行は米国内のみだが、同スタートアップでは他の国々での発行もすでに計画している。

利用者が保有している仮想通貨の種類をZenGoは関知しないため、利用者はまず自身の仮想通貨を米ドルに換金しなければならない。このモバイルアプリでは、資産を米ドルなどの不換通貨に換金し、カードにチャージできる。日常的にカードを使用する場合は、毎週決まった額をチャージするようにもできる。

他の仮想通貨対応カードと異なり、このカードには換金というステップが付け加えられている。「Coinbaseなどはそれを自動で行う場合、どの仮想通貨で支払うかを自由に変えられないという問題があります。最初に彼らが決めるかまたは自分で決めるよう要請され、それが後の取引でずっと使われるようになります」と、ZenGoの共同創設者にしてCEOのOuriel Ohayon(オリエル・オハヨン)氏は私に語った。

さらに、ZenGoウォレットの残金は、このカードでは一切使えない。そのため、たとえカードが奪われるなどの危険にさらされたとしても、暗号資産は安全に保たれる。

ZenGoでは、MoonPay(ムーンペイ)とCoinmama(コインママ)との提携により、同アプリでの仮想通貨の取得をすでに可能にしている。このカードのおかげで、同スタートアップは、不換通貨から仮想通貨へ、また仮想通貨から不換通貨の換金機能により、オンランプとオフランプの両方を手にすることになる。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:ZenGo仮想通貨デビットカード

画像クレジット:ZenGo

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(翻訳:金井哲夫)

仮想通貨取引所Coinbaseが米国でデビットカード発行へ、Visaと提携

仮想通貨取引所のCoinbase(コインベース)はこの冬、米国でデビットカードの提供を始める。顧客はウェイトリストに登録でき、利用可能になり次第、Coinbase Cardを受け取れる。Coinbaseは同カードをすでに英国と欧州で展開している。

Coinbase CardはVisaを扱う決済端末、オンライン決済インターフェース、ATMで使えるVisaデビットカードだ。ユーザーはモバイルアプリで仮想通貨をいくら使うのかを管理できる。米国では、顧客はサインアップした後すぐにバーチャルのカードを取得し、2週間以内に実物のカードが届く。

店舗で仮想通貨を使うのにユーザーは仮想通貨を換金する必要はない。決済が発生したときにCoinbaseがユーザーに代わって処理する。だからこそ、今後の決済のために使う仮想通貨残高をユーザーがアプリ内で選べるようになっている。

Coinbase CardはUSDCを含め、Coinbaseで現在利用できる多くの仮想通貨に対応する見込みだ。Coinbaseは欧州の顧客向けに別のアプリをリリースしたが、米国ではメインのCoinbaseアプリからデビットカードを管理できるようになる。カードは顧客のCoinbase口座から直接カード代金を引き落とす。顧客は別のウォレットにトークンを移さなくてもいい。

米国では、Coinbase Cardユーザーはポイントも付与される。Stellar Lumensでは4%、Bitcoinでは1%のポイントがもらえると同社はいう。貯まったポイントで1度に1つのリワードが選べ、リワードは定期的に更新される。

欧州と異なり、米国では発行手数料を払う必要はない。しかしいくつかの手数料がある。Coinbaseは2.49%の通貨換金手数料を取る。しかし1つだけ例外がある。USDC残高を使用する際は、デビットカードでのUSDCによる支払いに手数料はない。

通貨換金手数料に加えて、海外決済手数料やATM利用制限もある。しかし一部の顧客は利便性を重視するかもしれない。実在店舗で買い物するとき、デビットカードはビットコインウォレットよりずっと使い勝手がいいのは事実だ。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Coinbase仮想通貨Visa

画像クレジット:Coinbase

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(翻訳:Mizoguchi

PayPalが仮想通貨の売買サービスを米国で開始、Paxosと提携

PayPal(ペイパル)は新たなサービス立ち上げで仮想通貨企業Paxos(パクソス)と提携した。米国のPayPalユーザーは間もなく仮想通貨を売買したり保有したりできるようになる。ほどなく米国以外の国でも利用できるようになる見込みだ。

差し当たってはBitcoin(ビットコイン)、Ethereum(イーサリアム)、Bitcoin Cash(ビットコインキャッシュ)、Litecoin(ライトコイン)を取り扱う。ユーザーは仮想通貨の売買でPayPal口座を活用できるようになる。こうした取引や管理の業務は裏でPaxosが受け持つ。

PayPalは2021年初めには仮想資産をPayPalでの買い物に使えるようにしたい考えだ。まず最初に仮想通貨を交換することなく毎日の買い物に仮想通貨を使う良い方法となるかもしれない。

PayPal加盟店は世界中に2600万店ある。客の仮想通貨での支払いでそうした加盟店が影響を受けることはない。決済が行われるとき、全てフィアット通貨に変換される。

今回の取り組みの一環として、PayPalはニューヨーク金融当局から条件付きのBitLicenseを取得した。ニューヨークではPaxosとの提携のもとに仮想通貨サービスの立ち上げが可能になる。

PayPalの仮想通貨サービスは徐々に展開される。関心のある人はPayPalのウェブサイトでウェイトリストに登録できる。来月あたりからは誰でも仮想通貨関連の機能にアクセスできるようになるはずだ。PayPalはすでに仮想通貨取引の一新した手数料について詳細を明らかにした。

フィアット通貨から仮想通貨、そしてその逆の取引も手数料は高くなる。取引額が100ドル(約1万500円)以下の場合その額の2.3%、100〜200ドル(約1万500〜2万1000円)で2%、200〜1000ドル(約2万1000〜10万5000円)で1.8%、1000ドル(約10万5000円)超で1.5%となる。25ドル(約2600円)以下には最低手数料0.50ドル(約50円)が適用される。また、売買価格価格差があるともウェブサイトには記載されている。ただし手数料は2021年までは免除される。

参考までに、Coinbaseは200ドル(約2万1000円)以上の取引には1.49%の手数料を課すが、それ以下の額の手数料は固定だ。デビットカードでの仮想通貨資産の購入の手数料はより高く、取引額の3.99%となる。Square(スクエア)の Cash Appの手数料はさまざまで、Robinhood(ロビンフッド)は市場価格にマークアップを上乗せして隠している。

米国で仮想通貨取引のためにPaxosと提携しているRevolut(レボリュート)は、無料顧客に対し2.5〜3%の手数料を課している。プレミアムユーザーであれば手数料は1.5%になる。

多くの企業が仮想通貨のPayPal的な存在になろうと試みてきた。結局、仮想通貨PayPalはPayPalだったようだ。

画像クレジット:Dan Kitwood / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

暗号資産・ブロックチェーン業界の最新1週間(2020.9.20~9.26)

暗号資産・ブロックチェーン業界の最新1週間(2020.9.20~9.26)

暗号資産(仮想通貨)・ブロックチェーン技術に関連する国内外のニュースから、重要かつこれはという話題をピックアップし、最新情報としてまとめて1週間分を共有していく。今回は2020年9月20日~9月26日の情報をまとめた。

Ultraがアタリと提携、新型ゲーム機「Atari VCS」にブロックチェーンゲーム関連機能を搭載予定

ビデオゲーム界の老舗メーカーAtari(アタリ)とブロックチェーン活用のゲーム配信プラットフォームを提供するUltraは9月24日、パートナーシップ契約の締結を発表した。アタリが今秋発売を予定している新型家庭用ゲーム機「Atari VCS」が、UltraのPCゲーム配信プラットフォームにアクセスできる機能を搭載することを明らかにした。

Ultraがアタリと提携、新型ゲーム機「Atari VCS」にブロックチェーンゲーム関連機能を搭載予定

UltraのPCゲーム配信プラットフォーム

Ultraは、ゲームを総合的に楽しめるエンターテインメントプラットフォームの提供を目指しており、PCゲームの購入はじめ、ブロックチェーンゲームのアイテム交換・売買、配信ゲームの中古販売、収益があげられるゲーム、トーナメントプラットフォームを通じたライブストリーミングへのアクセス、eスポーツのようなゲーム大会の開催、コミュニティなどが可能という。

Ultraでの取引には、仮想通貨EOSからフォークしたUltraブロックチェーンを基盤とするトークンUOSが使用される。また、UOSトークンはステーキングを行うことで、「Ultra Power」と呼ばれるゲーム内のリソースを得られるなど、ブロックチェーンを活用したさまざまな機能が用意されている。これらはゲーム開発者にも提供され、Ultraをベースにゲームを配信する企業や開発者は、ブロックチェーンゲームの開発が容易になるうえに、他の配信サービスよりも多く収入が得られる仕組みが提供されるとしている。すでにUbisoftAMDといったゲームメーカーおよびハードウェアの大手企業とも提携をしているそうだ。

また、今回の提携によりUltraユーザーもその恩恵を受けることができる。ユーザーはAtariの専用コミュニティに参加することで、Atariの往年の名作ゲーム「アステロイド」「センチピード」「ミサイルコマンド」「PONG」「ローラーコースタータイクーン」をプレイ可能になる。

Windows 10、Ubuntuをインストールできる「PCモード」も搭載の家庭用ゲーム機「Atari VCS」

Atariが今秋発売を予定している家庭用ゲーム機「Atari VCS」(旧名:Ataribox)は、2018年に発表され、たびたび発売延期を繰り返してきたもの。本体発売と同時に2000本以上のゲームが遊べるサブスクリプションサービスの提供も発表されており、懐かしの名作ゲームが多数遊べる製品となっている。

Atari VCSは、1977年に発売されたAtariの往年のゲーム機「Atari 2600 Video Computer System」をリスペクトし開発されたもので、CPUとしては、組み込み向けの「AMD Ryzen Embedded R1606G with Radeon Vega 3 Graphics」を採用。またメモリーは32GBで、ストレージは256GB M.2 SSDとなっており、ゲームに特化した小型PCといったおもむきだ。OSとしてはDebian GNU/Linuxベースに開発した「Atari OS」を利用。「PCモード」では、このAtari OSとは別途、Windows 10、Ubuntu、Steam OS、Chrome OSなどをインストールし利用できるという。

Windows 10、Ubuntuをインストールできる「PCモード」も搭載の家庭用ゲーム機「Atari VCS」

Atari VCSでは、UOSトークン、またAtariの独自トークン「Atari Tokens」(ATRI。EthereumのERC-20準拠)を使用しUltraでもゲームなどが購入可能になる。また、AtariはNFT(Non Fungible Token。ノン ファンジブル トークン)フレームワークをはじめとするUltraの技術を利用して、同社の人気ゲームタイトルの多くをアップデートし、名作ゲームのNFT化を試みる予定も明らかにしている。

3Dプリンターで外装を積層造形した上下水道不要の自己完結型公衆トイレが登場、ブロックチェーン活用のスマートロック採用

會澤高圧コンクリートは9月23日、3Dプリンターを用いて外装を積層造形した上下水道不要の自己完結型の公衆トイレを建設し、インドでのトイレ普及を目指すSDGs(持続可能な開発目標)への取り組みについて発表した。インドではスマートフォンが広く普及していることに着目し、トイレの鍵にはブロックチェーンを活用したスマートロックを採用する。

3Dプリンターで外装を積層造形した上下水道不要の自己完結型公衆トイレが登場、ブロックチェーン活用のスマートロック採用

国連サミットで採択されたSDGsは、2030年までに持続可能でよりよい世界を実現するための17のゴールが設けられた国際目標。同社は、SDGsの17のうち6番目の目標となる「安全な水とトイレを世界中に」に取り組んでいる。

同社は、新棟を建設中の深川工場(北海道深川市)敷地内に、ロボットアーム式のコンクリート3Dプリンターを用いて積層造形した国内初の小規模建築物となる公衆トイレを2基建設し、9月16日に一般公開した。2基のうちの1基がインド向けのプロトタイプという。

3Dプリンターで外装を積層造形した上下水道不要の自己完結型公衆トイレが登場、ブロックチェーン活用のスマートロック採用

ブロックチェーンを活用し、自分の前の利用者の利用状況をレーティングできる

建設された2基の公衆トイレは、他社との技術コラボレーションで実現しているという。インド向けに採用されるスマートロックは、メディアスケッチと共同開発している。トイレの鍵の開閉をスマホで行えるだけでなく、ブロックチェーンを活用し、自分の前の利用者の利用状況をレーティングできるという。その仕組みにより「次の人のためにトイレをきれいに使う習慣」を定着させることにつなげる狙いがある。

3Dプリンターを用いて速乾性の特殊モルタルを抽出・印刷し、複雑な構造物を造形可能

「安全な水とトイレを世界中に」を目標とした同社は、女性スタッフを中心とする開発チームをインドに派遣し、現地のニーズや課題などを調査した。調査結果によると、インドでは野外排泄による水質汚染が深刻な社会問題という。トイレそのものが不浄なものとして、家に設置しないこともある。また公衆トイレで襲われるなど治安が確保されないケースもあるという。また、下水道などのインフラは、都市部以外は未整備で、水洗式を全土に普及させるには膨大なコストと時間がかかることがわかったという。

こうしたインドでの課題を解決するには、上下水道不要の自己完結型公衆トイレ(オフグリッド・トイレ)の普及が必要と判断。同社は、バイオによるトイレの処理技術や空気中から水を抽出する技術を持つベンチャー企業などと協業し、3Dプリンターで積層造形した自己完結型のハイテクトイレを試作した。

同社の3Dプリンターは速乾性の特殊モルタルをロボットアームのノズルから抽出し印刷する。従来のモルタルやコンクリートを流す際に使用する型枠は使わずに、複雑な構造物を造形できる。しかし、国内においてはコンクリートが建築基準法上の指定建築材料であることから、特殊モルタルなどの使用には大臣認定などの性能評価が必要となる。そのため今回は、プリントした中空状の外装を型枠代わりに使用し、その中にコンクリートを充填して配筋を施し、鉄筋コンクリート造の構造体としたという。

上下水道が不要になるバイオトイレのモジュール

上下水道が不要になるバイオトイレのモジュールは、正和電工が開発したおがくずを使用するタイプを採用。同モジュールは、スクリュー付きタンクにおがくずを充填しておくと、おがくずが排泄物によって保水される。保水後、タンクに設置されている約50度のヒーターでおがくずを加熱し、スクリューでかき混ぜることにより排泄物の90%の成分である水は蒸発する。残った約10%の固形分は、微生物が分解し発散させるという。

排泄物自身に含まれる腸内細菌と自然界に生息する微生物の働きで、排泄物は水と二酸化炭素に分解処理されるが、蒸発も分解もされない最後に残った無機成分は、粉状態でおがくずに吸着し、肥料として使用できるという。

空気中の湿気から水を生成する水生成装置も装備

また、アクアムホールディングスが開発した、空気中の湿気から水を生成する水生成装置も装備する。空気中の湿気を強力ファンで取り込み、コンデンサーによって冷却し強制的に結露を起こし、水を生成する。水は活性炭、ミネラル、ROフィルターなどでろ過することで安全な飲料水となる。今回は、手洗いとウォシュレット用に使用する。さらに、手洗い水を節約するため、沐羽科技の低圧霧化技術を導入。特殊なノズルとコンプレッサーで、通常の蛇口に比べて約90%の水を節水できる。

LasTrustとサートプロが「資格のDX」を目指し実証事業、ブロックチェーン証明書規格Blockcerts準拠で資格書をデジタル化

LasTrust(ラストラスト)とサートプロは9月25日、「資格のDX」を目指し、サートプロが運営管理する各種団体の資格証明書を、LasTrustのブロックチェーンを活用した証明書発行サービス「CloudCerts」(クラウドサーツ)でデジタル化する実証事業の開始を発表した

LasTrustの提供しているサービスCloudCertsは、あらゆる「証明」をセキュアにデジタル化できるブロックチェーン証明SaaS(オープンソースのブロックチェーン証明書規格Blockcertsに準拠)。今回のデジタル化実証実験では、サートプロが紙で発行・運用を行っていた資格の数々をデジタル化。合格証を合格者に渡すまでのリードタイムや発行・管理コストの改善、有資格者側の利便性向上を目指し、実証実験を行う。

LasTrustとサートプロが「資格のDX」を目指し実証事業、ブロックチェーン証明書規格Blockcerts準拠で資格書をデジタル化

実証実験により、ペーパーレスの実現、環境面への配慮とサスティナビリティ(持続可能性)の確保を行う。また、有資格証明のスマホ管理、デジタル有資格証明書のURL送付、SNSへの連携など、デジタル化による有資格者の利便性の向上を図る。有資格者の実績をブロックチェーンに記録し、個人の実績を永続的かつセキュアに保存していく。それにより、紙代・印刷費・郵送費といった間接費を削減し、削減できた経費を、付加価値を生む業務へ分配することを目標とするとした。

ブロックチェーン技術、またブロックチェーン証明書規格Blockcertsを活用する理由

証明書をデジタル化するだけであれば、JPGやPDFといった画像データでも可能なものの、それだけでは誰でも簡単に改ざんできてしまうため、汎用的な画像データを証明書の原本として使用することには問題があった。

一方ブロックチェーンは、一度書き込んだ情報を変更できないという耐改ざん性を備えている。またブロックチェーン上に分散管理しておくことで、資格提供団体の状態に関わらず半永久的に実績の記録が残る。資格証明書の有効性をゼロコストで検証できるという利点があり、証明書のデジタル化には必須の技術であると判断したという。さらにCloudCertsでは、コア部分において、MIT(マサチューセッツ工科大学)の研究機関Media LabとLearning Machineとが共同開発したブロックチェーン証明書のオープンスタンダード規格Blockcerts(ブロックサーツ)を利用しており、第三者機関による証明書発行システムの信頼性・透明性検証などにも耐えうるものとしている。

実証事業は、10月には証明書デジタル化の予備提供開始と市場調査を行う。その後、資格証明書デジタル化の検証を経て、12月には本格運用を目指すという。

実証事業においてデジタル化の対象とする資格・試験は、IoT検定(IoT検定制度委員会)となる。IoT検定は、IoTに関わるすべての人を対象に、技術的な視点のほかに、マーケティングやサービスの提供、ユーザーの視点から必要となるカテゴリー、スキル要件などを網羅し、それぞれの立場でIoTを企画・開発・利用するために必要な知識があることを認定する検定試験。

実証事業後は、サートプロが管理・運営を行うAndroid技術者認定試験制度、XMLマスター、アジャイル検定、E検定にも順次対応していく予定も明らかにした。

また、資格のデジタル化には留まらず、有資格者のスキルを可視化するなどデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みを強化し、「資格」という社会的資産の価値の底上げに寄与することを目指すという。

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カテゴリー:ブロックチェーン

タグ:仮想通貨 / 暗号資産

暗号資産・ブロックチェーン業界の最新1週間(2020.8.30~9.5)

暗号資産(仮想通貨)・ブロックチェーン技術に関連する国内外のニュースから、重要かつこれはという話題をピックアップし、最新情報としてまとめて1週間分を共有していく。今回は2020年8月30日~9月5日の情報をまとめた。

日本セキュリティトークン協会(JSTA)が、セキュリティトークン活用の新マーケット開拓アイデアを募集

一般社団法人日本セキュリティトークン協会(JSTA)は9月2日、セキュリティトークンを活用したイノベーションの追求を目的に、ビジネスアイデアコンテスト「セキュリティトークンで新たなマーケットを拓け!」の開催を発表した。セキュリティトークンならではの特色を活かした新しいビジネスのアイデアを広く募集する。最優秀賞には賞金50万円と事業化支援金50万円、優秀賞とアイデア賞にはそれぞれ賞金20万円が授与される。募集期間は10月30日まで。

日本セキュリティトークン協会(JSTA)が、セキュリティトークン活用の新マーケット開拓アイデアを募集

同コンテストは、日本国内におけるセキュリティトークンマーケットの裾野を広げることを目的に、セキュリティトークンを活用した新しいビジネスアイデアを募集する。アイデアには、ビジョン・解決したい課題、新規性が必須項目として求められる。「新しいマーケットを拓く」という観点から、システム・法規制・税制面での実現可能性よりも、創造性を重視して審査される。

セキュリティトークンとは、ブロックチェーン上で発行されるデジタルトークンのうち、有価証券その他の資産や価値の裏付けを有するものを指す。2020年5月1日に暗号資産についての新たな法規制である改正資金決済法および改正金融商品取引法(金商法)が施行されて、「電子記録移転権利」という考え方が新設。基本的にブロックチェーンなどで電子的に権利が移転できるものは、第一項有価証券という扱いになったことから、株式などと同じ類型となり、金商法によって規制される対象となった(例外もあり)。

ちなみにJSTAでは、金商法の適用のない資産などに対する権利をトークン化したもの、および当該権利を表示するトークンもまた、広くセキュリティトークンの定義に含むという。

セキュリティトークンは、既存の証券化ビジネスを変革するのみならず、新たな金融商品を生み出す可能性があることから、同コンテストでは、広く一般からアイデアを募集し、そこを狙う。コンテスト入賞者には賞金のほか、JSTA会員との協業検討の機会が提供される予定になっている。

コンテストの応募資格は、同コンテストのコンセプトに共感できれば、個人・法人・グループを問わず、誰でも応募が可能。応募の形式は自由。募集期間は10月30日まで。11月13日に書類審査による一次審査の結果発表が行われ、11月27日に二次審査となる非公開によるピッチ会が開催され、同日結果発表となる。

  • 募集期間: 10月30日まで
  • 応募資格: コンテストのコンセプトに共感いただける方。個人・法人・グループでの応募可、応募形式は自由
  • 必須項目: ビジョン・解決したい課題、アイデアの新規性、セキュリティトークンならではの特色
  • 賞金・入賞特典: 最優秀賞(賞金50万円+事業化支援金50万円)、優秀賞(20万円)、アイデア賞(20万円)、協賛企業賞

JSTAは、セキュリティトークンの知見を集約し、セキュリティトークンエコシステムの健全な発展を推進する非営利団体。セキュリティトークンの技術、制度、ビジネスに関して、調査、研究、普及・啓発活動などを通じて、セキュリティトークンの品質向上を図るなど、日本経済の健全な発展に貢献することを目的に活動をする。

協会加盟企業には、不動産会社から有名コンサルティングファーム、会計ファーム、ブロックチェーン企業、フィンテック企業まで、幅広い分野からの参加が特徴である。

国際教育研究コンソーシアム(RECSIE)が「オンライン学修歴証明ネットワーク」を開始

一般社団法人国際教育研究コンソーシアム(RECSIE)は9月3日、アイルランドに拠点を置くDigitaryと業務提携し、「オンライン学修歴証明ネットワーク」サービスの提供開始を発表した

RECSIEは、日本の大学などの教育機関が卒業証明書などの学修歴証明書をデジタル化し、オンライン上で発行するために、Digitaryと共同でデジタル学修歴証明書の実証実験を9月より開始。2021年の本格運用を目指す。

Digitaryは、学修歴証明書の認証、共有、検証のためのオンラインプラットフォームサービスを提供する。アイルランド、イギリス、イタリア、オーストラリア、インド、カナダにオフィスを構えるDigitaryのプラットフォームは、現在135カ国以上の組織で利用され、何百万人もの学習者に検証可能なデジタル認証証明書として利用されているという。

RECSIEの「オンライン学修歴証明ネットワーク」サービスでは、就職活動や海外留学などで必要とされる大学卒業証明などの学修歴証明書をオンライン取得できるようになる。証明書および検証のためのリンクURLを提出先に送付可能にするデジタルソリューションプラットフォームを提供する。

国際教育研究コンソーシアム(RECSIE)が「オンライン学修歴証明ネットワーク」を開始同サービスの運用により、世界中のどこからでもPCやタブレット端末、スマートフォンを使用し、オンラインでデジタル認証された卒業証明書や成績証明書にアクセス可能になる。日本国内のみならず海外の留学先や就職先にも、検証可能な公式証明書としてデジタル学修歴証明書を送付できるようになる。また、日本の高等教育機関はセキュアなグローバルネットワークを通じて、国内外の学生からの証明書発行依頼を自動化処理することが可能になる。

現在、「世界市民のための電子学生データ・エコシステム」を目的とし、世界30ヵ国が加盟する国際機関フローニンゲン宣言ネットワークが設立され、世界的に学修歴証明書のネットワークを相互接続するなどの国際協調が活発化している。RECSIEは、2020年初頭にフローニンゲン宣言ネットワークに参加、日本の高等教育機関の証明書類のデジタル化に取り組んでいる。「オンライン学修歴証明ネットワーク」サービスの構築は、その一環となる。

暗号資産取引所bitFlyerがアンケート調査、2020年上半期に口座開設した顧客は日米欧共通で20代がメインに

暗号資産取引所「bitFlyer」は、同取引所の日本国内顧客を対象にアンケート調査を実施。2020年上半期に同社にて口座開設した顧客は20代が最も多くを占めていたなど、暗号資産(仮想通貨)にまつわるアンケート調査の結果を公開した。調査期間は2020年8月7日~8月24日。調査対象は2020年1月~6月に口座開設を行った顧客(日本国内)539名。調査方法はウェブアンケート調査。

2020年上半期に口座開設した顧客のうち、20代が全体の36%を占める

bitFlyerグループが事業を展開する米国・欧州連合では20代の口座開設者が最も多くなっており、今回の日本国内アンケート調査でも同様な結果となった。2020年上半期に口座開設した顧客は、20代が全体の36%を占め最も多く、30代が26%と続き、20代・30代だけで62%と過半数を超す結果になっている。

また、同社は2018年上半期と2020年上半期を比較。2018年上半期は30代(32%)・40代(28%)がメインだったが、2020年上半期には30代(26%)・40代(20%)と推移。

一方2020年上半期の20代の顧客割合は、2018年上半期の18%から、2倍以上の36%に増加した。これは日本に限らず、欧米の地域すべてに共通する傾向であるという。

暗号資産取引所bitFlyerがアンケート調査、2020年上半期に口座開設した顧客は日米欧共通で20代がメインに「将来性がありそうだから」「長中期的な運用に向いていそうだから」との回答が多い傾向に

2020年1月~6月に口座開設を行った顧客は、「暗号資産を始めようと思った理由・目的」として、半数近くが「将来性がありそうだから」と回答しており、これが最も多かったという。複数回答が可能な同質問では、「少額から始められる」「勉強・経験になるから」が2位、3位の回答であることも興味深い。

さらには「短期的な利益が得られそうだから」よりも「長中期的な運用に向いていそうだから」の回答の方が上回っていることから、若い世代は暗号資産を短期の投資・投機というよりも将来的な可能性に期待する投資対象と見ているとともに、勉強・経験しておくべきものとして暗号資産を捉えているのも面白い。

暗号資産取引所bitFlyerがアンケート調査、2020年上半期に口座開設した顧客は日米欧共通で20代がメインにその傾向は、「最も期待している暗号資産は?」の質問にも見て取れる。顧客の6割はビットコイン(BTC)を選択。続いては、DeFi(分散型金融)の流行を背景に注目されるイーサリアム(ETH)が2位となった。また、同取引所が2019年12月より取り扱っているXRP(Ripple)、8月より取り扱いを開始したNEM(XEM)、ベーシックアテンショントーク(BAT)がランキング上位に続く。

暗号資産取引所bitFlyerがアンケート調査、2020年上半期に口座開設した顧客は日米欧共通で20代がメインに

暗号資産・ブロックチェーンを取り巻く社会の変化が、取引所における顧客の傾向にも影響することがわかるアンケート調査結果になったのではないか。今後も、その変化には注目していきたい。

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