AIの偏見、認識されつつも未解決の難題とは?

AIテクノロジーを人類最大の問題を解決してくれるものと賛美する人もいれば、AIは人類存続の危機をもたらす悪魔と恐れる人もいる。もちろんこれらは、さまざまな考えの中の両極端に位置するものだが、AIが未来に向けた胸躍る好機をもたらすものであり、同時に克服しなければならない難題を孕んでいることに変わりはない。

近年、多くのメディアの関心を惹きつけている問題点のひとつに、AIに生じた偏見がある。それは、2年以上も前に私がTechCrunchに書いた「Tyrant in Code」(コードの中の暴君)のテーマでもあったが、論議は、ますます激化している。

あの当時、Googleは、ユーザーが「hand」(手)と画像検索すると、ほとんど白人の手が現れ、「black hands」(黒い手)と画像検索すると、白人の手が黒人の手に何かを施していたり、黒人の手が土をいじっていたりなど、じつに侮辱的な画像が「hands」の場合よりもずっと多く示されるとの調査結果から炎上の真っ最中だった。これは大変にショッキングな発見であり、AIテクノロジーは社会の分断を解決するどころか、それを恒久化してしまうという主張を生み出した。

2年前に私が断言したとおり、そうした事態は杞憂ではない。少なくとも2017年当時、米国におけるAIアルゴリズムの開発は、大多数が白人男性の手によって行われていた。その人たちがマイノリティーに対する偏見を持っている兆候は見られなかったものの、彼らが作り上げるAIには、生来の、無意識の偏った意識が植え込まれる可能性は十分にある。

偏ったAIアルゴリズムによって危機にさらされたのは、Googleのアルゴリズムだけではない。あらゆる産業にAI技術が当たり前のものとして普及してゆくのに従って、そのテクノロジーから偏見を取り除く重要性は、ますます高まっている。

問題を理解する

2年前、AIは多くの産業やアプリケーションにとって、非常に重要で不可欠な存在だったが、その重要性は、予想どおり、以来ますます高まっている。AIシステムは、今では求人の際に有能な人材を特定したり、顧客がローンを組めるかどうかを判断したり、受刑者が再び罪を犯すかどうかを慎重に審査する場面にまで使われている。

たしかに、AIやデータを使えば、より多くの知識に基づく判断を人が下せるようになるが、AIテクノロジーが偏っていたなら、結果もそれに引きずられる。もし、私たちがこのまま排他的なグループのためのAIテクノロジーの未来を信頼し続けるならば、この社会の弱い立場の人たちは、就職口を探したり、ローンを申請したり、合法的に生きようと努力するといった、さまざまなことが難しくなってしまう。

AI革命は
望むと望まざるとに
関わらず進行する

幸いなことに近年、偏見にまつわるこの問題が表面化し、大きな影響力を持つ人、組織、政治団体などがこれを深刻にとらえ、対処策を考える人たちが増えてきている。

AI Now Instituteは、そうした団体のひとつだが、社会に対するAIの影響を研究している。科学者ケイト・クロフォード(Kate Crawford)氏とメレディス・ウィテカー(Meredith Whittaker)氏によって2017年に設立されたこの団体の研究対象は、人権と労働に及ぼすAIの効果、さらにAIの安全な導入方法、AIテクノロジーから偏見を排除する方法などだ。

昨年5月、欧州連合は一般データ保護規則(GDPR)を施行した。欧州の市民がインターネット上で利用される個人情報を自分で管理する権限を強化するための規則をまとめたものだ。これはAIテクノロジーの偏見に直接対処するものではないが、欧州の組織(または欧州に顧客を持つすべての組織)は、AIアルゴリズムの使用法を、一層透明化するよう求められる。企業は、自社が使用するAIの出自について、しっかりとした信頼を示さなければならないという大きな圧力を受ける。

2017年12月の時点では、まだ米国にはデータ利用とAIに関する同様の規制はないが、AIテクノロジーが刑事裁判の判決に人種的偏見をもたらすとの報告を受けて、ニューヨーク市議会と市長は、AIの透明性を求める法案を通過させた

研究グループや政府機関は、偏向したAIが社会に与える破壊的な役割に関心を抱いているが、その責任の大半はAIテクノロジーを開発した企業にあり、根本的にその問題と取り組む覚悟が求められている。幸いなことに、過去にAIの偏見を見過ごしてきたとして非難を浴びたものも含め、最大手のハイテク企業も、この問題の解決に乗り出している。

例えば、Microsoft(マイクロソフト)は、アーティスト、哲学者、小説家を雇い入れ、微妙な言語表現の「ありなし」をAIボットに教えている。不適切なスラングを使わない、不用意に人種的または性的批判をしないといったものだ。IBMは、自社のAIシステムの公正さを判断する、独立した偏見評価基準をAIマシンに適用し、偏見の緩和に努めている。また昨年6月には、GoogleのSundar Pichai(サンダー・ピチャイ)氏は一連のAI原則を発表した。業務や研究において、同社のアルゴリズムに偏見を植えつけたり助長したりしないことを目指している。

AIに作用するデモグラフィック

AIの偏見に対処するためには、個人、組織、政府が、この問題の根源を真剣に考える必要がある。しかし、その根源は、多くの場合、そもそもAIサービスを開発した人間の側にある。2年前に私が書いた『Tyrant in the Code』でも話したとおり、右利き用のハサミや帳簿や缶切りで苦労している左利きの人たちは、それらが発明者の都合のよいように作られていることを肌で知っている。AIシステムにも同じことが言える。

米国労働統計局が発表した最新のデータによれば、AIプログラムを製作したプロの開発者は、今も大半が白人男性だ。また、昨年8月にまとめられたWiredとElement AIによる調査では、主要な機械学習研究者に占める女性の割合は、12パーセントに過ぎない。

しかしこの問題は、AIシステムを開発する技術系企業がまったく見落としているわけではない。たとえば、Intelは、同社の技術職の性的多様性の改善に積極的に乗り出している。最近のデータでは、Intelの技術職の女性の割合は24%に達している。業界の平均値よりもずっと高い。Googleは、次世代のAIを牽引する人間を育てるためのAIサマーキャンプ“AI4ALL”に出資し、この技術分野では少数派である女性やマイノリティーの若者に教育の手を差し伸べようとしている。

とは言え、AIテクノロジーから偏見を追い払うのに必要なレベルの多様性をAIが勝ち取るまで、まだまだ先は長いことを統計データは示している。一部の企業は個人の努力とは裏腹に、技術系企業はいまだに白人男性が圧倒的多数で占められているのだ。

AIの偏見問題を解決する

もちろん、大手AI企業の多様性改善策は、AIテクノロジーの偏見解消に大いに貢献するはずだ。社会に大きな影響を与えるAIシステムの普及に責任を持つ大手企業は、AIテクノロジーの偏見を監視でき、倫理基準に準拠できるよう、そして、そのアルゴリズムは誰をターゲットに想定しているのかを深く理解できるよう、世間一般に向けた透明性を提供する必要がある。

政府も業界リーダーも真剣に自問

しかし、政府機関による規制がなければ、こうした解決策は、有効であったとしても、効果が現れるまでに時間がかかるものだ。いろいろな意味でAIの偏見を緩和させるGDPRをEUは施行したが、米国には直ちにこれに追従する確かな兆候は見られない。

政府は、民間の研究所やシクタンクと協力して、素早くその方向へ舵を切り、アルゴリズムの規制方法と格闘している。さらに、Facebookなどの企業も、規制は有益だと主張している。だが、ユーザー作成コンテンツ用プラットフォームに強い規制をかけてしまえば、市場に新規参入するスタートアップの競争力が阻害され、Facebookのような企業を利することにもなりかねない。

大切なのは、イノベーションを押さえ付けない程度の、ちょうどよい政府の介入加減だ。

規制はイノベーションの敵であり、ゲームの流れを変える可能性を秘めた若いテクノロジーの育成のためには、一切の障害物を何が何でも取り除くべきだと、多くの起業家は訴える。しかしAIは、望むと望まざるとに関わらず、今後も継続する革命だ。無数の人々の生活を、これから変えてゆくものだ。だからこそ、倫理的で偏見のない方向に向かわせる必要がある。

政府も業界のリーダーも、真剣に自問しているが、考えている時間はあまりない。AIは急速に開発が進むテクノロジーであり、優柔不断では置いていかれる。倫理感が薄く、排他的な開発者によるイノベーションが野放しになってしまえば、米国のみならず世界中で分断が進んでしまう。

【編集部注】著者のCyrus Radfar(クリス・ラドファー)氏は、V1 Worldwideの創設パートナー。

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(翻訳:金井哲夫)

格闘技ジムでインクルーシブな文化の構築方法を伝授された話

いきなり、体全体が不安感の波に飲まれた。全身タトゥーの巨漢たちが重いサンドバッグにパンチをめり込ませるたびに、激しい息づかいと唸り声が周囲に響く。これが、数年前、ニューヨークの格闘技ジムFive Points Academyに初めて足を踏み入れたときの状況だ。温室育ちの私は(最後に喧嘩したのは幼稚園のときだった)、ここに溶け込めるのかと心配になった。

すぐにインストラクターのEmily(エミリー)が現れて、ムエタイの基本的な動きを見せてくれた。そのクラスはパッドワークが中心だったので、受講者はペアを組み、それぞれタイ式のパッドを装着して動きの練習をした。受講中、エミリーは、私を次々と違う相手と組ませ、パッドを叩くときの感触を味合わせてくれた。そして私は夢中になった。

1年前、私の友人Diane Wu(ダーニー・ウー)が書いた素晴らしい記事の中に、こう論じられている。「インクルージョン(包括性)は原因であり、ダイバーシティ(多様性)はその効果だ。インクルーシブな意識が備われば、ダイバーシティは自然に付いてくる」。Five Pointsでの経験には、この考え方が滲み出ている。伝統的に男社会であった格闘技の世界だが、インストラクターの40%、ファイターの半数、会員の半数は女性だった。そこはニューヨークでも、もっともインクルーシブで、いちばん男臭くない格闘技ジムとして広く知られているため、単なる偶然ではない。

技術業界が男の支配する世界であったのは、ここ数十年のことに過ぎない(1940年代の最初のプログラマーは女性だった)。それに対して、格闘技の世界は数千年間にわたり男が独占してきた。格闘技ジムが、そんな根深い障壁を乗り越えられたのだから、技術業界はもっとうまくやれるはずだ。私は、ジムのオーナー、コーチ、ファイター、会員たちから話を聞き、いかにして彼らがインクルーシブなコミュニティを構築できたかを学んだ。それを紹介しよう。

文化はトップから始まる

文化はリーダーシップから根を下ろしてゆくという調査結果があるが、それはFive Pointsの3人のオーナー、Steve(スティーブ)、Simon(サイモン)、Kevin(ケヴィン)が実際に体現している。Steveののんびりした態度、サイモンの英国風ユーモア、ケヴィンの常にフレンドリーな姿勢が、Five Pointsの家族的な雰囲気を大いに支えていると、多くの会員が口を揃える。スティーブは「脅されるのではなく、反対に励まされることで、人はより多くを学びます」と説明していた。この、トップを中心とした、誰でも快く受け入れる文化は、たしかに、幅広い人たち、とくに軽い気持ちで楽しんでいるファイターたちの参加と成長を促している。

トップから文化が築かれていくという点においては、企業も同じだ。もし、インクルージョンを一番に考えるなら、経営幹部たちが態度で示すべきだ。

私は、ある企業のCEOが企業の中心的な価値観の構築を支援する委員会を立ち上げたものの、対話は行われずCEOが個人的に思いついた文化的価値観の評価を従業員に求めるアンケートを行っただけというケースを見たことがある。すると次第に、考え方の異なる従業員は会社を去り、職歴、性別、民族の面で同じ背景を持つ圧倒的多数の人たちだけが残った。結論として、インクルーシブな文化を確立するためには、経営幹部が責任を持って引き受け、本当の意味で最後までやりとげることが必要だ。さもなければ、継続は難しい。

「インクルージョン」はすべての人を受け入れる

Five Pointsは、特定の性別の人たちを呼び込んだり、特定グループの市場を狙ってスタートしたわけではない。むしろ、あらゆる人たちを暖かく迎え入れるコミュニティを作ることに専念していた。サイモンが、そこをうまくまとめて話してくれた。「インクルーシブな文化は、あらゆる人を受け入れます。正しい文化を持っていなければ、人にそっぽを向かれます。女性だけではありません。男性もです。そこに、ジムを直接改善する力があります」。彼は、さらにこう説明した。「女性が嫌がるだけでなく、男性をも敬遠させてしまう愚にも付かない文化はいりません」

その違いは重要だ。例えば、友愛会的なジムの文化を押しつけようとすれば、女性を遠ざけることになる。しかし、そうした文化を嫌う男性も多い。人を十把一絡げにするのではなく、それぞれの個人をよく知り、こう自分に問うべきだ。「この人を受け入れるには、どんな環境を整えればいいか?」と。例を挙げるなら、ケヴィンは、会員になりそうな人のことを、時間をかけて知ろうと常に努力している。施設内を案内して、ジムとして、彼らの望みをどのように叶えられるかを話し合っている。

この考え方を発展させてみよう。表面的な特徴は、より深いところにある特性の仮の姿であることが多い。ならば、直接、本質と向き合うべきだ。他のジムのムエタイ教室に参加すると、インストラクターがよくこう言う。「男の人は、女の子と組んだときは手加減をするように」と。このように、性別で人の特性を一括りにしてしまうと、本来の特性、つまり体格を無視することになる。Five Pointsのインストラクターなら、こう言う。「男の人(そして女の人)たちは、自分よりずっと体の小さい人と組んだときは、相手の安全を考えて力を加減してください」と。自分よりも大きな人間と対戦するときは、自分が認識している自身の性別とは関係なく、誰だって身の安全が気になる。

技術業界では、あまり注目されない少数派のデモグラフィック属性の人々のための、よりインクルーシブな環境を確立しようという議論が数多く持たれてきた。そうした取り組みを強化することで、さらに効果を高めることができると私は信じている。「女性が会議にもっと貢献しやすくするにはどうしたらいいか?」と考えるのと同時に「すべての従業員が会議にもっと貢献しやすくするにはどうすればよいか?」と考える。これは、男性の考えに比べて女性の考えが軽視される傾向があることをその研究が示している。

その結果、多くの女性は会議のメンバーには選ばれず、自分の考えを男性社員に託して発表してもらっている。「どうしたら少数派を支援する仕組みを提供できるか」を話し合うのと同時に「どうしたら、米国の企業文化に不慣れな従業員を支援する仕組みを提供できるか」を話し合う。このようなハイブリッドなアプローチによって、より幅広い人々をカバーでき、それをもっとも必要としている人たちに、確実に支援の手が届くようになる。

例えばAscend Researchによれば、アジア系の幹部パリティ指数は最低で、黒人やヒスパニック系よりも低い。しかし、彼らは「過小評価された少数」とは見なされておらず、昇進に関して若いアジア系専門職にはほとんど指導が行われない。

みんなを平等に扱う

私が話を聞いた女性コーチと女性会員の共通した意見は、受講中は性別を意識することがなかったというものだ。インストラクターは全員を平等に扱っていると、何人もの会員は話していた。たとえば、遅刻したときは、デモグラフィック属性や技能レベルに関係なく、誰もが腕立て伏せ30回を言い渡される。なお、身体的な制約のある人は、膝を突いて腕立て伏せをしたり、他の運動で代替するなどの処置がとられる。

全員の基準を同じにすることで、「エイミーは女だから軽い罰で済んだ」などという非難や陰口を予防できる。

ムエタイの初心者向けクラスでは、パワーレベルを下げて、技術に焦点を当てている。エミリーのムエタイ初心者クラスにスティーブが参加して、パートナーを少し強く殴ってしまったことがある。エミリーはすぐさまスティーブにこう言った。「今のは強すぎよ」と。スティーブがオーナーでも、エミリーが雇われる側でも関係ない。クラスのインストラクターとして、すべての受講者に同じルールを当てはめるよう彼女は努めているのだ。

同様に、すべての人を最初から平等に扱うことが大切だ。例えば、就職審査のときからだ。私はよく「レベルを下げずにダイバーシティを高めるにはどうしたらいいか?」と聞かれる。そこで私が提案しているのは、すべての就職希望者が示すべき能力の種類を定めるという方法だ。例えば、生産性ソフトウェアのエンジニアは、アルゴリズム、システムデザイン、コミュニケーション、チームワーク、問題の解析力に長けていなければならない。審査では、この5つの能力を公平に評価する。

残念なことに、最初の2つしか評価していない企業が多い。それは、多様性に欠けるばかりか、仕事に必要な技能が完全に揃っていない従業員のグループを生み出してしまう。基準を透明にして伝えることで、すべての従業員が帰属意識を持ち、コミュニティの平等な一員であることを自覚できるようにしなければならない。

細部に気を配る

細かいところに、文化の創造に対する思慮深さが表れる。カリ(武器を使う武術)のインストラクターで元ファイターのティンは、こう説明する。「格闘技ジムは、汚くて汗臭いのが常ですが、Five Pointsは、細かいところに気をつけています。女性のロッカールームにはヘアタイや、何台ものヘヤードライヤーを置いています。マットは、クラスの合間に毎時間モップ掛けをしています。こうしたことが、格闘技を始めたいと思っている女性の、余計なストレスを取り除きます」

言うまでもなく、クラスそのものにも細かく気を配っている。新しい会員が私に話してくれた。「エミリーのムエタイのクラスが終わって、スティーブと個人レッスンをしようと準備を整えたとき、エミリーがスティーブのところにやってきて『もう少し左ラウンドハウスキックの練習をしたい』と告げました。もちろん、スティーブは私に、30分ぶっ続けの左ラウンドハウスキックの練習をさせてくれました」

内心不満を持っていたとき、エミリーの気遣いが有り難かったと言う会員もいた。長い間カリを習っていたソーニャも、特定の練習に不満を抱くと、サイモンがよくそれに気づいてくれたと話していた。古典的な英国風ユーモアで、彼はよく「バケツの中に水を入れすぎたかな?」と言い、習ったことがしっかり頭に入るように配慮し、練習が台無しになるのを防いでくれたという。

大切にされていると従業員に感じてもらうために、経費をひとつもかけずに企業が行えることがある。たとえば、以前私が務めていたPalantirの設立当初のころは、従業員にストックオプションの期限前行使を行うよう積極的に促していた。また、税理士を招いて、代替ミニマム税(AMT)の使い方の説明会を開いていた。しかし、60歳以上の従業員がいる会社でも、期限前行使できないところが多い。それを許したところで、企業の経済的負担は実質的にはゼロであるにも関わらずだ。

変化を受け入れ積極的に改善する

Five Pointsが誕生した当初は、一生懸命スパーリングするという西洋式ボクシングの考え方に従っていた。その精神論では、ファイターはタフな存在で、ボコボコにやられて帰ってきたときに、もっと強くなりたいと必死になるものと定義される。しかし時が経ち、スティーブとサイモンが体に旅行したとき、違う種類のスパーリングを目にした。ファイターたちのスパーリングは軽いもので、技術やタイミングに重点が置かれていた。

彼らは、スパーリングのクラスを基本的に「タイ式のテクニカルなスパーリング」に組み立て直し、それとは別に「ハードなスパーリング」のクラスをいくつか設けた。一部のファイターは混乱したが、スティーブとサイモンは、これが正しいアプローチなのだと彼らを説得した。スティーブは、「古いスタイルはタフな人たちを集めるのに役立ちますが、それが最高の人たちとは限りません」と話す。さらに、最高のファイターと言っても、体格も性別も背景もそれぞれだ。初日に戦いたいと訪れる「タフな人」ばかりとは限らない。

このような考え方が、それ以外の方法では埋もれていたであろう優秀なファイターを数多く掘り出すことになり、コミュニティのダイバーシティを高める。Five Pointsにやって来たファイターの中には元モデルで女優という人もいるが、戦うようになるとは夢にも思っていなかったという。居心地のいい環境と、技術を重視したスパーリングによって、彼女は技術が向上するごとに安全を実感できるようになった。そして彼女は格闘技の虜になり、全米キックボクシング協会国際選手権で何度も優勝するまでになった。

このような、人を受け入れる意識は、他の分野にも応用が利く。Googleの就職面接を受けたとき、面接官のひとりが、長い間Googleは超難問やアルゴリズムのパズルに重点を置いてきたと聞かせてくれた。その結果、チームの仲間とランチをすると、そこにいるのはプログラマーの職歴を持つ白人とアジア系の男性エンジニアばかりで、超難問やアルゴリズムのパズルの話に終始するとのことだった。

やがて、Googleの経営陣は、超難問やアルゴリズムのパズルと、人の能力とには相関関係がほとんどないことに気が付いた。そして彼らは、面接のやり方を改め、チームのダイバーシティが改善された。たしかに、まだ改良の余地はあるが、問題に気付き、新しい発見を受け入れることができる力は、インクルーシブな文化を育むうえで重要だ。

必要なときにルールを公正に適用する

多様でインクルーシブな格闘技コミュニティを構築する道のりは、決して平坦ではなかった。コミュニティが成長するに従い、どうしても悪役が現れる。そのときのリーダーの対応が、文化の発展の色合いを決める。

エミリーは、体が大きく経験も豊富なファイターが、自分よりも小さく経験の浅い受講生を叩きのめすような人物を、何度となく追い出している。その乱暴者が、いかに高い技術を持ち、ジムのために貢献してくれたとしても、関係ない。彼女はすべての人に公平にルールを適用する。また同じように、体重90kgを超える経験豊富な男性が、ムエタイのスパーリング中に他の会員を繰り返し殴り続け、ブラジリアン柔術のクラスでは絞め技を外そうとしなかったため、スティーブが彼にジムを脱会するよう要請した。

反対に、仕事環境では、会議中、経営幹部もいる中で、同僚をずっと怒鳴り続ける男がいたのを見たことがある。それはとても不快な出来事で、各部署から参加していた4人の社員からプロジェクトから外して欲しいと依頼があった。あの人間とは仕事をしたくないというのだ。経営幹部にとって従業員は大切な存在だとは言うものの、彼らは人を怒鳴り続ける彼を黙認して、会議の間、何の対処もしなかった。

文化は、会議室の壁に貼られた単なるスローガンではない。カリフォルニア大学ロサンゼルス校の精神医学教授であるCameron Sepa(キャメロン・セパ)氏は、こう言っている。「企業の文化とは、誰を雇い、誰をクビにし、誰を昇進させるかだ」と。先日、Googleを辞職した人の退社理由のひとつに、性的違法行為を申し立てられた元幹部に、その後も数千万ドルの報酬を支払っていたという問題があった。不適切な行為は迅速に公正に対処しなければならない。インクルーシブな文化を育てるうえで、それは絶対に欠かせない。

成功が成功を生む

新たな取り組みが早々に牽引力を発揮すれば、その勢いはずっと楽に保てるようになる。文化も同じだ。Five Pointsが2002年にオープンしてから、すでに3人のハイレベルな女性ファイターを生み出している。そのひとりがエミリーだ。ムエタイの世界選手権にも出場している。早期にダイバーシティを獲得したことで、ほとんど見向きもされない経歴の持ち主だが格闘技に興味があるという会員に、良い目標を示すことができた。

ひとたびインクルーシブな文化が確立されるや、コミュニティのメンバーは、その後もインクルージョンを重んじ、他の人たちも参加したいと思うようになる。コーチでファイターのジャンナはこう話していた。「新人のころも、私に嫌な思いをさせる人は、誰ひとりいませんでした。だから、他の新人たちにも嫌な思いをさせないように気をつけています」

カリのもうひとりの受講生ソーニャは、自分のことを「女々しい女」と呼んでいる。ほぼすべての会員はスポーツの経験があるのだが、彼女にはない。そのため、人一倍スキルを磨かなければならなかった。しかし、サイモンは根気よく彼女を指導した。彼女が理解するまで、何度も丁寧に技術を解説していた。当時を振り返り、会員が心地よくいられるよう細心の注意を払ってくれたサイモンに、彼女は最大の感謝の念を抱いている。今、彼女は、女友だち全員をカリに誘っている。なぜか?「女々しい女でも、ここなら歓迎してくれことを知って欲しいから」。

同じことが技術業界にも当てはまる。従業員の男女比がアンバランスだったので(女性が15%)、もっと多くの女性を雇いたいと奮闘していたシリーズAの50人規模の企業があった。しかし、会社が成長すると(10パーセント)、男女比はさらに悪くなった。一方、これも私がかつて務めていた企業のFlatiron Healthは、設立当初からダイバーシティとインクルージョンを重視して、早い時期に、あらゆる職種から年配の女性リーダーを雇い入れた。私が在籍していたころ、女性従業員の比率はおよそ50%、女性管理職もおよそ50%だった。

インクルージョンからダイバーシティへ

Five Points Academyは、最初から女性会員50%を目指し、あらゆる民族、社会経済的背景の人たちを集めようとしていたわけではない。実際のところ、オーナーたちは、誰でも入れて、誰でもコミュニティの一員として楽しめるジムを作りたいと考えていただけだ。インクルージョンでスタートしたら、ダイバーシティがついて来たわけだ。

私は何も、ダイバーシティへの取り組みを否定しているわけでは決してない。ダイバーシティに注目するのは大切なことであり、多くの企業がそれに取り組んでいる。しかし、Fibe Points Academyのように、インクルーシブな文化に投資して、企業で従業員たちが能力を伸ばし成長するのを手助けすることも大切だ。そうすることにより、さらに多様な従業員が集まってくる。

【編集部注】著者のKen Kao(ケン・カオ)氏は、Airbnbのエンジニアリングマネージャーとして、プラットフォーム上で起業家たちがホスピタリティを提供できるようにする製品の開発を行っている。私生活では、ムエタイ、ペキティ・ ティルシャ・カリ(フィリピンの棒とナイフを使う武術)、料理、執筆を楽しんでいる。

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(翻訳:金井哲夫)

10億ドルを調達できるユニコーン企業がなぜ多様性と包括性を持てないのか

2000年代の初めごろ、Hasbroは」「マイリトルポニー」というオモチャのシリーズを復活させた。ポニービルに暮らすカラフルな生き物たちの中でも、私の一番のお気に入りはユニコーンのポニーだった。ユニコーンのポニーは魔法の生き物で、気まぐれで、珍しい存在だ。私はその珍しい部分に自分を重ねていた。

そのとき私は13歳。数学と科学とコンピューター科学の特別強化プログラムに選抜されたばかりだった。このプログラムには100人の生徒が参加していたが、黒人の女の子は私ともう一人だけだった。しかし、私はラッキーだった。「現世」のポニーたちがユニコーンを受け入れたように、白人とアジア人のクラスメイトも、私に温かく接してくれた。

この先、ハイテク業界で働くようになっても、このままであってほしいと私は願った。

ハイテク業界に多様性がないのは、私が13歳のころから変わっていない。それでも、多様性と包括性をもっと強化すると約束するハイテク企業は増えている。

ではなぜ、その約束がポニービルにつながらないのだろう?

さようならポニービル、現実よこんにちは

6年間、数学と科学とコンピューター科学の特訓コースで徹底的に学んできた私は、MITに進学する準備をほとんど整えていた。多変数微積分は? 大丈夫。学校で自分が一等賞でなくても落ち込まない? 大丈夫。クラスメイトから差別を受ける心配は? それはわからない。

こんなことがあった。大学4年生のとき、新しい医療機器を開発するという活動で、私はその他21人の学生と一緒に行動した。そこではチームメイトの評価が自分の成績に影響を与えるため、ちょっと心配だった。黒人女性に対する偏見で評価が低くなってしまうことを、私は恐れていたのだ。私は、知的だが威圧的でない、自信に満ちているが攻撃的でない、親しみやすいが鬱陶しくない自分でいなければならないと、常にプレッシャーを感じていた。

大半は好意的な評価をもらったが、一人ならず二人のチームメイトから「もっと穏やかに」と言われてしまった。私は他の黒人のクラスメイトの話を聞くまで、孤立した気分になり、気落ちしていた。彼らはチームミーティングから外され、もっともつまらない作業を押しつけられていたそうだ。

こんなことがMITで起ころうとは。多様性と包括性を誇るイノベーションの中心地で。人は差別するものだ。学校は差別を容認している。人々は自分に対する差別を許容することを学ぶ。わかりやすい悪循環だ。学校も企業も、これに対抗するようには作られていない。MITを卒業してからの3年間、「少数派」として扱われることにう私はうんざりしていた。今こそユニコーンを探すときだ。

ユニコーン(名詞) uni·corn | ˈyü-nə-ˌkȯrn

体は白い馬に似て、優美な長いたてがみと尾を持ち、額の中心から螺旋模様の長い角が生えた姿で描かれることが多い空想上の動物。多様性と包括性のあるハイテク企業。

虹の道を辿って

ユニコーン探しは楽ではなかった。Googleで検索すると10億ドル以上の評価額のスタートアップ企業がたくさん出てくる。だが、多様性と包括性のある企業はほとんどない。

ニューヨークの業務用IoTスタートアップであるTembooに惹かれたのは、そのためだ。

  • 有色人種の女性がトップにいるハイテク企業である。
  • エンジニアリングチームには男性と女性が同数在籍している。
  • プログラミングの取っつきやすさと民主化に重点を置いた製品を作っている。
  • 従業員は、さまざまな文化的背景を持つ多様な人々である。
  • とりわけ感心したのは、最初の面接に訪れたとき、強くハグしてくれたこと。そこはニューヨークだ。やたらにハグをする習慣はない。

私が会ったすべての人には、それぞれ独特な背景や興味があった。私が面接を受けたすべての企業のなかで、前の会社で黒人従業員のリソースグループを率いる役職を選んだのはなぜかと聞いてくれたのは、Tembooだけだった。その会社の物理的環境も、他のハイテク企業とは違っていた。マンハッタンのトライベッカ地区の中心地に、独立したオフィスが置かれていたのだ。

この会社に入ろうと決めたとき、私は希望に満ちていた。ここなら、本来の私を尊重して正当に評価してくれるだろうと。

マイリトルポニー・ニューヨーク編

勤め始めてから数カ月間は過去の教訓を活かして、同僚に受け入れられるバージョンの自分で過ごさなければいけないと自分に言い聞かせていた。しかし時間が経つと、TambooではありのままのSarahで十分なんだと感じるようになった。

私の縮れ髪は三つ編みにもアフロにもできるけど、ヘアースタイルは自分の知性の評価には関係がない。業務用IoTのカンファレンスに参加したときなどは、多様性の欠如を大っぴらに批判し、同意の喝采を得た。

たしかに、何度か不当に非難されたと感じたことはある。マイナーなリアリティ番組カボチャ味の食品を溺愛する意味がわからないと。

私はユニコーンを見つけた。そしてそれに満足している。今は、ハイテク産業で働くすべての人に、自分のユニコーンを見つけて欲しいと思っている。そこで、他の人たちにバトンを渡す方法を探る準備を開始した。

男だけのニューヨークビルで立ち往生

ハイテク企業が、多様性と包括性を高めようと従っている方針は、どこもたいてい同じだ。

  1. 人材プールを多様化する。
  2. 従業員のリソースグループのコミュニティを作る。
  3. 業績評価を多様性と包括性の目標に結びつける。
  4. 多様性の欠如を注意する。

中規模のハイテク企業の例を紹介しよう。そこは従業員のリソースグループを改善するための準備をしていた。私はそこに講演者として招かれ、前の会社で黒人従業員のリソースグループを統括していたときの教訓を話した。

たとえば、私のチームは「マイクロアグレッション(自覚なき差別)認知週間」を設けた。これには手応えがあった。翌週の幹部会議で、一人のシニアマネージャーが同僚を呼び止め、彼の話に自覚のない差別的な発言がなかったかを尋ねていた。

しかし私たちは、業績に多様性と包括性を結びつけるという目標を、その会社の求人担当者たちに持たせることはできなかった。彼らは重い責任を負いたがらなかったのだ。それどころか私たちに、多様な才能を惹きつける、もっと別のアイデアはないかと聞いてきた。

もう一人の講演者は、彼女が50歳のときに職場でカミングアウトした経験を話していた。Fortune 500に選ばれた企業の上級管理職として18年間勤めた後、彼女は小さなハイテク企業に転職した。職場の雰囲気はまったく違っていた。そこでは人の性的指向をからかうのは無作法とされ、会社ぐるみでニューヨーク市のプライドパレードに特別な車を作って参加したりもしていた。30年間のキャリアで、彼女はようやく、ありのままの自分で安心して働けるようになったという。

講演会は励ましの言葉で幕を閉じたが、問題は残ったままだ。その会社のある従業員は、差別を避けるためにイギリス風のミドルネームで通していると私に話してくれた。彼は、多様性と包括性の推進責任者だ。

角を生やす方法

ステレオタイプ化、ハラスメント、自覚なき差別といった不当な行為が、ハイテク企業から人材が離れる第一の原因になっている。女性、社会的少数者、LGBTQの従業員が差別の攻撃に耐えてる(Kapor Centerの調査による)。

多様性と包括性のあるハイテク企業は、離職率も低く財務実績もいい。マッキンゼーは、企業の多様性を高めようとする姿勢と財務実績との関係を、20142017に調査しているが、性的多様性でトップ4分の1に入る企業は、下から4分の1の企業と比較して、平均を15〜21%上回る収益性を示す傾向があった。民族と文化の多様性のある企業は、収益性が平均よりも33〜35%高い傾向がある。

多様性と包括性のある企業を作るには、まず個人から手を付けることだ。管理職から新人社員に至るまで、全員が継続的に見直しを行い、先入観を捨てて新しい概念を学ぶ必要がある。

個人的な偏見を見直す。差別的な習慣を捨てる。自分とは異なる人を尊重する方法を学ぶ。

企業は、それを許さないという姿勢を示すことで、職場の差別を減らすことができる。Tembooの文化と行動は素晴らしいお手本だ。ユニコーンは魔法の生き物だが、多様性と包括性のあるハイテク企業は現実に存在する。そこでは、従業員たちに「普通」の考え方を再定義するよう求めている。

【編集部注】著者のSarah McMillian氏は、Tembooのセールス主査。母校のMIT、Complex誌、The Roots誌から多様と包括のリーダーとして認められている。またハイテク企業に多様性と包括性をもたせるためのアドバイスも行っている。

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(翻訳:金井哲夫)

Twitterは2019年中に従業員比率の5%が黒人、5%がラテン系を目指す

先週Twitterは最新の多様性レポートを公開し、新しい生活体験担当副社長兼ダイバシティー&インクルージョン(I&D)責任者を発表した。「I&Dと人間の本質的機能の両方に決定権を持つ一人のリーダーのもとで統合するために」同社はDalana Brand氏を生活体験担当副社長兼ダイバシティー・インクルージョン責任者に昇進させた、とTwitterのCMOであるLeslie Bertland氏が米国時間3月14日にツイートした。

同社のレポートによると、Twitterの従業員比率は現在、40.2%が女性、4.5%が黒人、3.9%がラテン系だ。これらの数字は昨年より改善されている。

管理職クラスでもTwitterの女性、黒人、ラテン系の比率は改善された。

一方Twitterで2018年に置きた人員の自然減を見ると、女性が39.6%、黒人が3.9%、ラテン系が4.2%だった。

Twitterは管理職クラスでの各グループの目標も設定した。これは人材を引きつけ、維持し、活躍させるための方策だ。Twitterの人種・性別分布の詳細は以下の通り。

「この図に現れていないのが、性的指向と性自認(ジェンダー・アイデンティティー)で、これはこのカテゴリーの自己認識に関する当社の調査が不十分だったためだ」とTwitterはブログ記事に書いた。「われわれの自己認識に対する一新した取り組みと匿名調査によって、今後は当社の正確な状況を公表できるようになると信じている。これは、当社が障害のある人々や軍事的地位のある人々についても報告するようになることを意味している」

今後Twitterは、このレポートを年次ではなく四半期ごとに発行し,賃金や昇進の平等性に関するデータも公開する計画だ。今日のツイートでBerland氏は、同社が現在分析を行っており準備ができ次第結果を報告すると言った。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Googleは黒人/ラテンアメリカ人/先住アメリカ人社員の定着に苦戦

信じられないかもしれないが、Google における黒人およびラテンアメリカ人従業員の定着率は2018年の方が2017年よりもよかった。しかし、Googleの黒人・ラテンアメリカ人の減少率(年間に辞めた社員の割合)は未だに全国平均よりも高い。

先住アメリカ人従業員に関して、Googleの減少率は前年から著しく増加した。念のために言うとこれは悪くなったという意味だ。なお、どう解釈すべきかわからないがGoogleは白人従業員の定着率も決して芳しくない。

Googleはデータを加重指数で表しており、平均減少率を100としている。各グループが100に近いほど、Googleは平均に近い。あるグループの指数が90なら、定着率が平均より10%低いことを意味している。

「好ましい傾向もあるが、やるべき仕事はまだある」と、多様性受容・平等担当グローバルディレクターMelanie Parkerがブログに書いた。「特に、先住アメリカ人の減少率が悪化した。黒人およびラテンアメリカ人社員の数値は改善したが、まだ平均に達していない。これはいずれも当社が今年力を入れている領域だ」、

Googleは昨年初めて多様性報告書を公開し、年間何人の従業員が会社を去ったかを明らかにした。昨年のデータを見ると、Googleは黒人および褐色人種(brown)の維持に最も苦労した。実際、Googleでは黒人と褐色人種が全国平均以上の速さで退職した。

当時Googleの多様性担当VPだったDanielle BrownはTechCrunchに、黒人とラテンアメリカ人の減少率は「明らかに良くない」と言っている。

しかし、注目すべきなのは、女性がGoogleを辞める率は平均より低いことだった。そして2018年のデータは前年よりわずかに改善され、減少指数は94から90になった。しかし、最近のGoogleにおける騒動(ハラスメント、ストライキなど)の波を踏まえると、2019年の数値がどうなるのか予断を許さない。

Google、反多様性メモ発覚後初の多様性報告書を発表ー黒人とヒスパニック系の従業員確保が課題

Googleは、悪名高いJames Damoreのメモ(これによりDamoreはGoogleを離れることとなった)の一件後では初となる、同社従業員の多様性についての報告書を公表した。このメモの件は語ると長いが、要約すると、Damoreは性差別的な考えをメモに記し、これが社内外に広まったというものだ。Damoreはクビになり、この解雇について彼はGoogleを訴えた。しかしこの訴えは2月に労働関係委員会により調停が行われた。それからほどなくして、他の社員の件が明らかになった。2月下旬のGizmodoの報道にあるように、Tim Chevalierが多様性を唱えたことで解雇された、と主張している。ChevalierはGoogleを告訴している。

「私は、Googleの職場で見られる白人の特権や性差別を指摘したことで、報復を受けた。これは間違っている」。Chevalierは数カ月前、TechCrunchに対し、なぜGoogleを告訴しようと決めたのかこう語っている。「私はこの件を公にしたかった。Google内で人種的少数派の人たちがどのように扱われているかを社会に知ってほしかったからだ」。

Googleはこの件を調停に持ち込もうとしている。2018年6月11日付けの裁判所の記録文書によると、今月初め、Googleの弁護士は、Chevalierは最初の申し立ての中で“この件を調停とすることに書面で同意している”と述べている。

さて、Googleの多様性や構成の現状を要約して説明しよう。ここに実際のレポートがある。多様性についてのレポートとしては5回目となり、最新かつ最も網羅しているものだ。今回初めて、人員損耗率やインターセクショナリティについても情報を公開している。

最初に、ハイレベルな数字から。

・30.9パーセント グローバルでの女性の割合

・2.5パーセント 米国における黒人の割合

・3.6パーセント 米国におけるラテンアメリカ系の割合

・0.3パーセント 米国における先住民の割合

・4.2パーセント 米国における混血の人の割合

Googleはまた、ジェンダーについてのレポートが“社内の性的マイノリティの人たちの存在を反映していない”ことを認め、ジェンダーについての今後の調査手法を模索している。Googleが自ら指摘しているように、女性や黒人、ラテンアメリカ系の人たちの割合は増えてきている。昨年、Googleにおける女性の割合は30.8パーセント、黒人は2.4パーセント、ラテンアメリカ系の人は3.5パーセントだった。

管理職レベルでも、前年に比べると数字は良くなっているが、高い職位の従業員は74.5パーセントが男性で、66.9パーセントが白人だ。改善は喜ばしいことだが、これでは不十分で次回のレポートではさらなる改善を期待したい。

話を先に進めると、Googleにとっての最終目標は過小評価された能力を掘り起こすことだとしている。それがどういうことなのは今ひとつ明らかではない。Googleで多様性を担当する副社長のDanielle BrownはTechCrunchとのインタビューで、Googleは専門の学位を取得していながら過小評価されている人たちのスキルや仕事、センサス・データを見る、と明らかにしている。しかし、こうすることで構成割合の数字がどんなものになるのかはわからない、とも述べている。理想の姿について尋ねたところ、彼女の答えは以下のようなものだった。

ご存知の通り、これは長期にわたる取り組みだ。これまで我々はうまくやってきただろうか。私にはわからない。しかし我々は状況を改善していけると、楽観視している。1晩で解決できるチャレンジだとは思っていない。全体にかかるものだからだ。長期的な取り組みになるが、私たちのチームは達成可能だと楽観視している。

前述したように、Googleは今回初めて、人員損耗率についても公表している。黒人とラテンアメリカ系の人で人員損耗率が2017年最も多かったが、これは、少なくとも私にとっては、驚きではない。はっきり言うと、人員損耗率というのは、つまるつころ何人が社を去ったかという指標だ。管理職に黒人やラテンアメリカ系の人が少ない企業で働くとき、一般的にそうした企業内で排他的な扱いや攻撃、差別を受けるのはよくあることだ。

「明らかに、女性、男性ともに米国における黒人、ラテンアメリカ系の人員損耗率は良いものではない」とBrownはTechCrunchに語った。「この分野こそ、我々が集中して取り組んでいるところだ」。

それから彼女は、Googleの内部調査のデータから、従業員は自分たちが仲間に入れていないと感じた時に会社を辞める傾向があることが明らかになったことも付け加えた。だからこそ、今Googleは従業員同士のつながり、「いいつながりとはあなたにとってどういうことか」ということに取り組んでいる。

「私たちが学んだことの一つに、無意識の偏見のトレーニングをやめると、意識した行動を起こせないというものがある。必要な行動を起こせなくなる」と彼女は語った。

人員損耗率から離れると、Googleがうまくやっているのは女性の定着率だ。テクニカル分野、非テクニカル分野ともに男性より女性の方が長期間Googleで働いていることが明らかになった。一方でBrownは、大きな問題となる前に対処できるよう、CEOのSundar Pichaiと彼の経営チームに隔週で人員損耗率の数字を1月から報告している、と明らかにした。

前述したように、Googleがインターセクショナリティについての情報を明らかにするのは今回が初めてだ。Googleのデータによると、人種ごとにみたときの女性の数は全人種において男性よりも少なかった。それも、前回同様にさほど驚きではない。従業員の3パーセントが黒人だが、黒人女性の割合は1.2パーセントにすぎない。ラテンアメリカ系の女性に目を向けると、ラテンアメリカ系全体の割合が5.3パーセントだったのに対し、女性の割合は1.7パーセントにとどまる。つまり、Googleが言うように、Googleにおける女性従業員の増加は、主に白人とアジア系によるものということになる。

Brownは昨年6月にIntelからGoogleに移ってきたが、以来多くのことに直面した。8月にDamoreの反多様性メモが問題となったが、これはBrownがGoogleに移ってきて数カ月後のことだ。「オープンで包括的な環境というのは、異なる政治的意見を含めたさまざまな考え方をする人々が自由闊達に意見を交わせる文化の形成を意味する。しかしそうした自由な意思表明は行動規範、ポリシー、反差別法に記されている平等な雇用機会の原則に沿ったものでなければならない」と語っている。

Brownはまた、このドキュメントは「私や会社が推奨・奨励する見方を反映しているものではない」とも述べている。

今日、Brownは反多様性メモの件について、「私にとってGoogleの企業カルチャーやGoogle従業員がどう考えているのかを学ぶ、非常に興味深い機会となった」と話した。

「このレポートで強調されたことが公約となれば」とも語った。「Googleだけでなくテック産業全体としても、私たちは一丸となって長期的に取り組むべき課題を抱えている」。

Brownによると、Googleの従業員全員が社の考えに賛同しているわけではないという。しかし彼女は、ポジティブな見方、ネガティブな見方どちらでも従業員に積極的に議論に参加してほしいと切に願っている。しかし、他の企業同様「なんでもありというわけではない」。

Googleの行動規範に従わない場合は「慎重に対処しなければならない。そして、政治的な見方にとらわれずに判断を下す」と彼女は語った。

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(翻訳:Mizoguchi)

 

女性創業者グループによる女性起業家支援

テクノロジーのスタートアップシーンが男性の創業者や投資家によって席巻されていることは広く知られている。もしお疑いなら、2017年の数字を見てみよう。Crunchbaseによれば女性起業家を擁する企業はわずか17%に過ぎない。そしてその数字は過去5年間変わっていないのだ。そして、少くとも創業者のⅠ人が女性である企業が、2016年に後期ステージの資金として調達した金額は全体の8%に過ぎない。数字は嘘をつかない。そしてその状況に一石を投じようと、昨年11月に、とある女性ベンチャーキャピタリストのグループが、FemaleFounders.orgを発足させた。

このグループは、ボストン、ニューヨーク、サンフランシスコ、ロサンゼルスの有名な女性投資家たちで構成されている。彼女たちはみな、現状にうんざりしていて、より多くの女性たちに起業を促したいと考えているのだ。マサチューセッツ州ケンブリッジにある、MIT系列の2億ドルのベンチャーファンドであるThe Engineの、マネージングディレクターであるKatie Raeによれば、昨年の#MeToo運動を中心に巻き起こった数々のイベントが、このアイデアを実現に向かわせたのだという。

「私たちの考えはシンプルです。女性の創業者と投資家を結びつけて、強力なコミュニティを作りたいということです。お互いに助け合いたいと願う人たちの緊密なコミュニティに、起業家たちが参加しているときには、信じられないような事が起きるということを、私は何度も何度もこの目で目撃してきました」と、Raeはグループ発足を公表するMediumの投稿に書き込んでいる。

この目標を達成するために、グループは、起業家と投資家のネットワーク構築の第一歩として、起業に興味ある女性たちが雑談をして関係を始めるための、「オフィスアワー」(相談事などを特定の時間/場所で受けること)を設けることにした。

「私たちは理解を深めるための様々なアクティビティを考えました。そのうちの1つは簡単なものです。ただ女性創業者とVCたちに知り合って貰うために、オフィスアワーを提供するという方法です」とRaeはTechCrunchに語った。彼女は、これらはプレゼンを行うためのものではなく、起業家たちに女性投資家たちを知って貰いコミュニティを築くためのものだということを強調した。

写真:Ron Miller

彼女によれば、これまではベンチャーキャピタルの中には、事を起こすために十分な数の女性は集まっておらず、女性たちはVCファームの中でしばしば孤立して働いてきたのだと言う。「残念なことですが、女性のVCたちが任されている金額はとても少ないのが事実なのです。多くの場合彼女はファームの中で唯一の女性VCです。そしてその場合、女性創業者たちを支援することはますます困難になります。他のパートナーたちの利益を守りつつ、なぜ女性創業者たちを支援しなければならないのかを説明しなければなりません」と彼女は語った。

彼女は、しかし、これは単に女性たちだけの運動ではないと強調した。彼女は協力を申し出ている多くの男性同志たちとも対話を重ねていると語る。「予定の一部を割いて、ただ女性起業家たちと会って、理解を広げようとしている男性VCもいます。これらすべての小さなステップが、変化を生み出すのです」と彼女は言う。

そして彼女は、それこそがシステム全体を見る必要がある理由だと語る。「リミテッドパートナーを如何に巻き込むのか?女性VCのために、どのようにより多くの資本を獲得するのか?どのようにより多くの顔出しを行い深い知己を得るのか?」Raeは彼女の世界観はかなりシンプルだと語る「何かを変える力がある場所に、自分の力を注ぎます。私の経験では、物事を積極的に押し進めれば自然と協力者が集まってきます。多くは男性ですが」と彼女は言う。

彼女自身が”The Engine”にいるように、より多くの女性たちがVCに参加してキーメンバーとなっていけば、この流れは自然に永続化できるものとなるだろうと彼女は言う。女性VCたちが女性創業者たちを支援し、その創業者たちが企業を立ち上げて、そして売却し、より多くの資本を得て、さらに多くの女性創業者たちを支援するようになる。

実は最初の交流イベントは、本日(米国時間2月27日)、The Engineのオフィスで開催され、40人の女性起業家たちがFemaleFoundersのボストン在住メンバーたちと朝食時間に集まることになっている。朝食後、いくつかの発表があり、その後グループは分かれて起業家と投資家の間の1対1のセッションが設けられる予定だ。最後に交流のためにまた大きなグループとして集まることになっている。

彼女はこれは出発点に過ぎないと考えていて、この手のアウトリーチを全国に広げ、女性が率いるスタートアップをより歓迎し、支援するシステムを構築したいと考えている。彼女が月に1度の開催を考えているこうしたミーティングは、そのための1手段に過ぎない。

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(翻訳:sako)

FEATURED IMAGE: FRANCKREPORTER/GETTY IMAGES

SignAllはゆっくりと、しかし着実に手話通訳プラットフォームを構築中

翻訳は難しい作業だ。2つの言語の距離が遠くなるほどそれは難しくなる。フランス語からスペイン語?それほど問題はない。古代ギリシャ語からエスペラント?かなり難しいだろう。しかし、手話は独特だ。そしてその翻訳の難しさも独特である。なぜならそれは話されたり書かれたりしている言語とは、根本的に異なるものだからだ。こうした事情から、SignAllは、アメリカ手話(American Sign Language:ASL)の正確でリアルタイムな機械翻訳を実現するために、何年も努力を重ねてきた。

AIとコンピュータビジョンに現在起きている進歩を考えれば、このような解くのが面白くて有益な問題は、既に一流中の一流どころが一斉に取り組んでいることだろうと想像するかもしれない。シニカルな市場拡大の観点から考えても、手話を理解できるEchoやテレビは何百万人もの新しい(そして感謝を捧げてくれる)顧客を引きつけることだろう。

しかし残念ながら、そうしたことは起こっていないようだ。それがこのブタペストを拠点とする小さな企業であるSignAllのような会社に、不自由な人びとへの利便性を提供するこの難しい仕事が残された理由だ。そして、手話をリアルタイムで翻訳することは、思われていたよりも複雑な作業であることが判明したのである。

CEOのZsolt Robotkaと最高研究開発責任者のMártonKajtárが、今年のCESに出展を行っていた。私はその場で、会社のこと、彼らが挑戦している課題、そしてこの分野がどのように発展していくのかについての話を聞いた(私は彼らが2016年のDisrupt SFにも出展していたことを知って嬉しくなった。残念ながらその時は彼らに会うことはなかったのだが)。

おそらく、このビジネスの中で私にとってもっとも興味深いことは、彼らが解決しようとしている問題がどれほど興味深く、そして複雑なものであるかということだ。

「これはマルチチャネルコミュニケーションなのです。実際に、大切なのは形や手の動きだけではないのです」とRobotkaは説明する。「手話を本当に翻訳したいのならば、上半身の動きと顔の表情をすべて追跡する必要があります。このことはコンピュータービジョンの部分を非常に難しいものにします」。

ちょっと考えただけでも、それは大変な作業である、わずかな動きも追跡することを考えるとそれは膨大な量となるだろう。現在のシステムはKinect 2を中心に置いて、3台のRGBカメラを1〜2フィートの位置に設置している。誰の話し方も少しずつ違っているように、ASLユーザーも少しずつ違った動作を行う。このためシステムは新しいユーザー毎に再調整をする必要がある。

「この複雑な構成設定が必要なのは、こうすることで異なる視点を持つことができ、そのおかげで時間と空間(リフレッシュレートとピクセル数)に対する、解像度の不足を補うことができるからです」とKajtárは語る。「ASLでは非常に複雑な指の動きを行うことができますが、手を骨格として捉える従来の手法は役に立ちません。何故なら指同士が重なるからです。そこで、サイドカメラを使用してこの重なりを解決しています」。

それでは十分でないと言うかのように、顔の表情やジェスチャのわずかな変化も、伝えられていることに加わる。例えば感情の追加や方向の指示などだ。そしてさらに、手話は、英語や他の一般的な話し言葉とは根本的に違っているという事実がある。これは単なる置き換えではなく、完全に翻訳なのだ。

「手話の本質は、連続した身振り(サイン)です。この性質から、いつ1つのサインが終わり、そしていつ次のサインが始まったかを区別することが難しいのです」とRobotkaは語る。「そして、それはまた非常に異質の言語でもあるのです。語彙から拾い上げて、単語単位で翻訳をすることはできません」。

SignAllのシステムは、順番に提示される個々の単語だけではなく、完全な文章を対象に動作を行う。サインを1つずつキャプチャして、翻訳していくシステム(性能が限定的なバージョンは存在している)は、言われていることに対して、間違った解釈や、過度に単純化された表現を生み出しやすい。行く方向を尋ねるような単純なコミュニケーションに対しては十分かもしれないが、本当に意味のあるコミュニケーションは、検知され正確に再現されなければならない、何層にも重なった複雑な階層で構成されているのだ。

これらの2つのコミュニケーションレベルの間のどこかを目指して、SignAllはギャローデット大学で、最初の公開パイロットプロジェクトを行おうとしている。このワシントンDCにある聴覚障害者のための学校は、ビジターセンターのリノベーションを行っている最中だが、SignAllはここに、訪問した健聴者が聴覚障害スタッフと対話できるようにできる翻訳ブースを設置する。

ギャローデット大学のビジターセンターに置かれたAignAll装備デスクの想像図

Robotkaは、これはシステムのテストを行うための良い機会だと語る。通常は情報提供は逆方向で、聴覚障害者の方が健聴者から情報を貰う立場だからだ。手話ができない訪問者は、喋ることもできて、(もしスタッフが読唇術を使えない場合には)その質問はテキストに変換される。そしてスタッフによる手話による応答はテキストに変換され、音声合成が行われる。

これは複雑なやり方に聞こえるし、実際技術的はとても複雑だが、現実的にはどちらの側の人間も普通にやっていること以上のことを行う必要はない。それで相手には理解して貰えるのだ。少し考えてみれば、これがどれほど素晴らしいことかが分かるだろう。

パイロットテストの準備のために、SignAllとギャローデット大学は協力して、現在使われているアプリや、大学固有の状況に関するサインのデータベースを作成している。全ての手話サインを表す包括的な3D表現は存在しない、そのため当面システムは配備された環境に応じて提供される。ドメイン特有のジェスチャーが順次データベースに追加されていくことになる。

ギャローデット大学の学長のRoberta Cordano(中央の灰色のセーターの人物)が、ブダペストのSIgnAllのオフィスを訪問したときの様子。彼女の向かって左後ろに立つのがRobotka、右端に居るのがKajtár。

「これらの3Dデータを収集するのは本当に大変でした。彼らの協力を得て、丁度作業が終わったところです」とRobotkaは語る。「インタビューを行い、そこで発生した会話を集めて、すべての言語要素とサインが集められるようにしました。私たちは、最初の2、3のパイロットプロジェクトで、同じようなカスタマイズ作業を繰り返すことになると考えています」。

この長期間にわたるプロジェクトは、技術の可能性と限界の両方を冷静に思い出させるものだ。もちろん、手話の自動翻訳が、コンピュータビジョン、機械学習、イメージングの進化によって可能になったことは間違いない。しかし、他の多くの翻訳やコンピュータービジョンタスクとは異なり、基本的な正確性を達成するだけでなく、人間中心主義の側面が確実に含まれるようにするために、大量の人間からの入力が必要とされるのだ。

結局のところ、こうした活動は単に私たちが外国のニュース記事を読んだり、海外でコミュニケーションを行う際の利便性に留まる話ではなく、多くの人が対面コミュニケーションとして考えている「会話」という手段から締め出されている人たちの、利便性に関わる話なのだ。彼らの運命を良くして行くことは、待つだけの価値がある。

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(翻訳:sako)

Google CEO:差別メモを書いたJames Damoreの解雇を「後悔していない」

GoogleのCEO、Sundar Pichaiは、 James Damoreを解雇したことは適切だったと今でも信じていると語った。 Pichaiは、RecodeのKara Swisherと、MSNBCのAri Melberからのインタビューの中で「私はそれを後悔していません」と明言した。

YouTubeのCEOであるSusan Wojcickiも壇上で「正しい決断でした」と繰り返した。

いわゆる「ジェンダー間の差異」について述べ物議を醸したメモを書いたエンジニアを、同社が解雇してから約6ヶ月が経過しようとしている。その10ページにも及ぶ暴論で、Damoreは、Googleの多様性イニシアチブに反対する一連の批判を行ったが、そのいくつかは、あたかも科学的根拠があるもののように装われていた

Damoreを追放した決断は、沢山の称賛を受けたが、同時に多くの非難も集めた。そして今、Damoreは集団訴訟を起こそうとしている、彼が保守的意見と呼ぶものに対する差別を訴えるためだ(なお、法人としてのGoogleは、保護されているクラス(protected class)を差別しない限り、”at-will”従業員(自由解雇できる従業員)をどのような理由でも解雇する権利を持っている)。

「このような決定を私たちが行うことは、政治的な意味あいを帯びています」とPichaiは主張した。 最終的に同社は、Googleにとっては「女性をより支持し、その参画を促す」ことが重要であると判断したということだ。

Wojcickiは「 もし何かが私たちの行動規範に抵触したならば、それに対して対処することができる筈です」と続けた。彼女は、Damoreの書いたメモは、規範に背くものだと語った。彼女自身そのキャリアを技術に捧げ、他の女性たちにもその後に続くように支援してきたからだ。

彼の発言は「多くの点で私たちをただ後退させたように見えました」。

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(翻訳:sako)

ベテラン女性VCから女性ファウンダーへのアドバイス

5月にニューヨークで行われたTechCrunchのイベントDisruptには、Harvard Business Reviewのリサーチャーが観客として参加し、イベントの様子をノートにとっていた。その際に気づいた事項と、VCとファウンダーが参加したQ&Aセッションの書き起こし内容の解析結果から、彼らは興味深くも気がかりな結論を導き出した。

イベントに参加した投資家(40%が女性)は、男性のファウンダーには成功の可能性について尋ねることが多かったのに対し、女性のファウンダーには失敗の可能性について尋ねることが多かったということが彼らの調査からわかったのだ。

ベテランVCのAileen Leeにとって、この結果は驚くほどのことではなかったようだ。彼女はKleinerやPerkins、Caufield & Byersで合計13年近い経験を積んでから、2012年にCowboy VenturesというシードVCを立ち上げた。これまでに女性のファウンダー(TextioBrit & Co.Accompany)だけでなく男性のファウンダー(AugustDollar Shave ClubPhilz Coffee)にも投資してきた彼女は、投資先企業へのアドバイスや、追加資金の調達に関する議論を男性VCに囲まれながら何度も行ってきた。

先週サンフランシスコで行われた、第四回目となるY CombinatorのFemale Founders Conferenceで、LeeはHBRの研究や彼女が毎日目にしているバイアスについて語った。さらに彼女は資金調達を考えている女性のファウンダーに向けて、以下のとても具体的なアドバイスを送った。

1)良い語り手であれ。そして、自分は話がうまくないと思っていても心配するな。「もしも現時点で話すのが下手でも、良い語り手になることはできる。必要なのはフィードバックと練習のみ」

2)どのプレゼンにも欠かせない、基本的だが重要な要素がある。以下を必ず盛り込むこと。

a)自分の会社のミッションとビジョン

b)狙っている市場の規模

c)解決しようとしている問題

d)チームメンバーの情報とその人たちを選んだ理由

e)プロダクトもしくはそのワイヤーフレーム

f)トラクションやユーザーからのフィードバック

g)ビジネスモデルの概要

h)調達資金の使途

3)これまでの自分の経歴や、なぜ自分が今そのビジネスを始める上で最適な人間なのかという情報を忘れずに入れておく。

4)自信を持ちつつも、背伸びはしない。「ちょっと横柄な態度を見せたり、何かを誇張したりすると、(男性投資家は)あなたのことを大げさな人だと考え攻撃的になる」

5)遠慮し”すぎない”。使い古された言葉に鳥肌が立つかもしれないが、この点について女性は微妙なバランスを維持しなければならない。「男性は(遠慮がちでも)『あぁ、彼は内気なんだな』で済む」が、残念ながら女性の場合、後々大きな問題につながる可能性がある。

6)数字をしっかりと把握する。いら立たしいことだが、女性が力を認めてもらうためには、男性の2倍働かなければいけない。「もしも誰かが『あなたの会社のCAGR(年平均成長率)は? LTV(顧客生涯価値)は? マージンは? 来年の売上収益額は?』と聞いてきたら、すぐに答えられなければいけない。これも練習あるのみ」

7)フォローアップをしっかり行う。「誰かが(プレゼン中に)質問したらノートをとって、翌日には『以下が昨日話し合った内容で、この点について追加でご連絡します』という内容のフォローアップメールを送り、きちんと自分のビジネスを管理できているということ、そして誠実さをアピールする」

8)コネクション作りに力を入れる。特に女性のファウンダーや投資家とのコネクションは重要。

参加者のほとんどが女性だったこのイベントで、Leeはどうすれば女性のファウンダーが、日常的に発生するマイクロアグレッションを乗り越えて、テック業界で前進していけるかというテーマを中心に話を組み立てていた(最近目にすることの多い、女性ファウンダーに対する男性VCの不適切な行為については「かなりいら立っている」とも語った)。

また、女性差別に対する建設的な解決策についても話していた彼女。そのうちのひとつは、男性ばかりがジェネラルパートナーの座についているVCへ警鐘を鳴らすことになるだろう。

前の週に、他のVCでパートナーを務める女性たちと朝食をとっていたLeeは、どうすればもっと女性のジェネラルパートナーを増やすことができるかについて彼女たちと議論していた。Lee曰く、その場にいた人たちが在籍するVC(Cowboy Venturesを含む)は、特に将来が期待されているポートフォリオ企業に対して「女性や有色人種の人たちが投資判断のできるポジションに就いている現代的なVC」から資金を調達するよう勧めているというのだ。

その背景には個人的な考えも関係していると彼女は認めたものの、Cowboy Venturesが投資している企業のCEOも同じような考えを持っており、「ポートフォリオ企業のファウンダーたちも、もし選べるのならば、現代的な考えを持つVCを選ぶだろう」と付け加えた。

その考え方は次の極めてシンプルな問いに詰まっている。「なぜ、ろくでなしのためにお金を稼がなければいけないのか?」

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

FordのCEOと会長が、トランプ大統領の入国制限命令を批判

US President Donald Trump greets Ford President and CEO Mark Fields (C) prior to a meeting with automobile industry leaders in the Roosevelt Room of the White House in Washington, DC, January 24, 2017. / AFP / SAUL LOEB        (Photo credit should read SAUL LOEB/AFP/Getty Images)

FordのCEOであるMark Fieldsと、取締役会長のフォードCEOのBill Fordが、ドナルド・トランプ大統領による入国制限命令に対する声明を発表した。これは米国の主要自動車メーカーが行なった、初の公式コメント及び立場の表明である。声明は以下のようなものであり、プレスへの公開と同時にFord社内でも共有されている。

全ての人びとを尊重することがFord Motor Companyのコアバリューです。私たちは、米国でそして世界で、豊かな多様性を誇りとしています。これこそが、私たちが、今回のポリシー並びに私たちの価値に反する全てのものを支持しない理由です。これまでのところ、このポリシーに直接影響を受けたFordの従業員は確認できていません。私たちはこの先も職場におげる敬意と一体感の価値を守るため、私たちの従業員の幸福の確保へ向けた努力を続けます。

これは、FieldsとFord会長からの、トランプのホワイトハウスに対する、看過することのできない異議申し立てだ。この2人は過去のコメントではトランプ擁護の立場をとっていた。 Fieldsはトランプの製造協議会のメンバーであり、これまで何度もホワイトハウスで会談を行なっている。そうした会談には他の米国自動車メーカーの幹部や、TeslaのCEO兼創業者のイーロン・マスクが同席していたこともある。一方Bill Fordは、トランプを今月はじめのインタビューで、「気さくで」「とても話しやすい」と評している。同時に彼はトランプと「頻繁に」話し合っているとも述べている。

私たちは、この命令に対するコメントを、GMとFiat Chryslerに対しても求めた。GMはまだ返答していない。Fiat Chryslerは日曜日の時点ではまだ返すべき声明はないとの返答だった。

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(翻訳:Sako)

FEATURED IMAGE: SAUL LOEB/GETTY IMAGES