ブレーキライトになるデジタル看板を商用車後部に設置するRoad Runner Mediaが約67億円調達

南カリフォルニアに拠点を置くRoad Runner Media(ロード・ランナー・メディア)が成功すれば、クルマの運転中にも広告をたくさん目にするようになるだろう。

なぜなら、このスタートアップ企業が、技術屋のバンや配達車両、バス、その他の商用車の後部に、デジタルスクリーンを設置しているからだ。これらのスクリーンには広告が表示されるだけでなく、ブレーキランプとしても機能する。同社創業者で会長のRandall Lanham(ランドール・ラナム)氏によると、車両の後部にスクリーン看板を設置するには、ブレーキライト機能が必要だという。

「我々はこれをデジタルブレーキライトであると考えています」と、ラナム氏はいう。確かに、このブレーキライトには広告が表示されているが「ドライバーがブレーキペダルに足を乗せると、広告は中断されます」。この広告スクリーンには、ウインカー、リバースランプ、緊急時のハザードランプも表示することができる(上の画像はモックアップだが、下の動画では実際の映像を見ることができる)。

このアイデアを追求するために、ラナム氏(自身を「回復弁護士」と表現した)は、Chris Riley(クリス・ライリー)氏を最高経営責任者(CEO)に起用した。ライリー氏の経歴には、PepsiCo Australia and New Zealand(ペプシコ・オーストラリア&ニュージーランド)でCEOを務めた数年間が含まれる。そしてRoad Runner Mediaは先週、Baseline Growth Capital(ベースライン・グロース・キャピタル)から6250万ドル(約67億円)のデットファイナンスによる資金調達を行ったと発表した。

移動体に広告を設置するというアイデアは新しいものではない。もちろん、タクシーの屋根にも広告があるし、Firefly(ファイアフライ)のようなスタートアップ企業は、Uber(ウーバー)やLyft(リフト)のライドシェア車両の上部にデジタルサイネージ広告を取り付けている。しかし、Road Runner Mediaの頑丈で高解像度の液晶画面は、サイズ、品質、配置場所の点で大きく異るとライリー氏はいう。

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「(タクシーの屋根に設置されている広告には)色、輝き、鮮明さがありません」と彼は語った。「私たちはスクリーンを使って本物の動画広告を流すことができます」。

ライリー氏によると、広告はGPSと時間帯に基づいてターゲットを設定することができ、最終的には、実際に広告を見ている人のデータを収集するためにセンサーを追加することも、同社では計画しているという。

このような大きくて明るい画面は、後続ドライバーの注意を逸らすことになるのではないかという懸念もあるが、実際にはドライバーの目をあるべき場所に正確に引き付け、見逃すことがはるかに難しいブレーキライトを作り出すものであると、ラナム氏は主張している。

「ドライバーの目線を、床やラジオを見たり、左右を向いたりする動きから、水平方向に固定することになります。これは米国運輸省が望むとおりのことです」と、彼はいう。「目線がダッシュボードの上にあるが、最も安全に運転できるのです」。

実際にラナム氏は、道路をより安全にするという同社の使命に「非常に情熱を注いでいる」と語り、公共サービスのメッセージを広げるために使用できるプラットフォーム作りにも取り組んでいるという。

「私たちには、どんな車両にも取り付けることができ、高速道路をより安全にする能力があります」とラナム氏は語り「私は、実際に、本当に、私たちがこれまで救えなかった命を救うことができるようになると信じているのです」と付け加えた。

同社によると、すでにアトランタ、ボルダー、シカゴ、ダラス、ロサンゼルスで150台のスクリーンを取り付けた車両が走っており、3月にはフィラデルフィアとワシントンD.C.でも起ち上げを計画しているという。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:Road Runner Media広告資金調達

画像クレジット:Road Runner Media

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(文:Anthony Ha、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Facebookがパーソナライズされた広告の利点を訴えるキャンペーンを展開

オンライン広告は、Facebook(フェイスブック)のブランドマーケティング責任者を務めるAndrew Stirk(アンドリュー・スターク)氏が認めたように「不毛な話題」になりがちだ。だが、この巨大ソーシャルネットワーク企業は、その新しいキャンペーンで、中小企業にとって「パーソナライズされた広告がどれほど競争の場を平等化するか」ということを盛り上げようとしている。

この「Good Ideas Deserve To Be Found(見つけられる価値のある良いアイディア)」キャンペーンは、テレビ、ラジオ、デジタル広告で展開される。各企業は、新しく用意されたInstagram(インスタグラム)ステッカーや、Facebook上の#DeserveToBeFoundハッシュタグを使用して、プロモーションを行うことができる。

このキャンペーンでは、Facebook上で特定の中小企業が強調表示される。ハンドバッグや旅行用バッグ・メーカーのHouse of Takuraもその1つで、同社創業者のAnnette Njau(アネットンジャウ)氏は、米国時間2月24日に開催されたプレス向けイベントで、デジタル広告の利点について次のように語った。

「このようなプラットフォームが私たちに可能にしてくれることは、私たちがストーリーを語ることができるようになるということです。私たちのような企業は、テレビや大手雑誌でストーリーを語ることができません。なぜなら非常に費用が高く、そしてそれをどんな人が見るのか、私たちにはわかりません」。

このような考え方は、2020年Facebookが、Apple(アップル)のApp Tracking Transparency機能に反対して起ち上げたキャンペーンと似たものだ。このAppleが今後導入を予定している機能では、ユーザーが許可しない限り、アプリは広告ターゲティングのためにユーザーデータを共有することができなくなる。Facebookはこれに反応し「すべての中小企業のためにAppleに抗議する」と主張。とはいえ、このような変更は、2021年直面することが予想される「広告に対する著しい逆風」の1つになるだろうと指摘した。対照的にAppleのTim Cook(ティム・クック)氏は、これらの変更は消費者が求めている制御を提供するものだと述べている)。

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今回のキャンペーンは、Appleとの論争を拡大するものになるのかと尋ねられたスターク氏は、Facebookは公にAppleの変更に反対しているが、このキャンペーンは同社が中小企業のために行っている長期的なサポートの一部であると語った。

「実際にある程度の緊急性があります。中小企業は今、苦しんでいるのです」と同氏は述べた。

Facebookのビジネスプロダクト責任者を務めるHelen Ma(ヘレン・マ)氏は、これは「新型コロナウイルス感染流行のごく初期から我々が製品サイドで行ってきた取り組みの延長そのもの」であると付け加えた。その取り組みには、他に「Businesses Nearby」機能の導入や、#SupportSmallBusinessのハッシュタグなどが含まれる。

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Facebookは同日、このキャンペーン開始に加えて、製品におけるいくつかの仕様変更も発表した。広告マネージャを使いやすく簡素化したことや、レストランがその食事体験に関してさらに詳細な情報を提供できる新しいオプションを設定したこと、そしてFacebookのBusiness Resource hub(ビジネスリソースハブ)とInstagramのProfessional Dashboard(プロフェッショナルダッシュボード)で、パーソナライズされた広告に関する詳細情報を提供することなどだ。

また、同社はFacebook Shops(Facebookショップ)のCheckouts機能を通じた取引手数料の免除を2021年6月まで延長し、少なくとも2021年8月までは有料オンラインイベントで支払われた料金についても同様の措置を取ることも発表した。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Facebook広告Apple

画像クレジット:Facebook

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(文:Anthony Ha、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

モバイル広告のironSourceがビデオ広告・プレイアブル広告プラットフォームのLuna Labsを買収

モバイル広告企業のironSourceが、2021年2件目の買収を発表した。今回買収するのは、アプリ開発者がビデオ広告およびゲームを試用できるプレイアブル広告を作成し管理するプラットフォームを構築しているスタートアップのLuna Labsだ。

筆者が2019年に初めてLuna Labsについて記事を書いた際、同社の重要なセールスポイントは多くの開発者が利用しているUnityのゲームエンジンから広告を直接作れることだった。それ以降、同社はプラットフォームを拡張してプレイアブル広告とビデオ広告の両方の作成(ゲームプレイビデオのバリエーションは無制限)、広告ライブラリ全体の管理、パフォーマンスの分析、さらにはインストールデータに基づく広告の自動最適化に対応している。Luna Labsを利用する顧客にはCrazy Labs、Supersonic Studios、Lion Studios、Kwalee、Voodooなどがある。

一方のIronSourceはモバイルユーザーを増やし収益化するプラットフォームを構築している。直近のラウンドでは10億ドル(約1054億円)を超える評価額で4億ドル(約421億6000万円)以上を調達し、2021年1月には広告測定企業のSoomlaを買収すると発表した。

今回の買収の発表で、ironSourceの共同創業者で最高収益責任者のOmer Kaplan(オマー・カプラン)氏は次のように述べた。

ironSourceのビジョンはアプリ開発者向けに包括的な成長プラットフォームを構築し、開発者がコンテンツ制作と優れたユーザーエクスペリエンスの構築に集中できるようにすることです。ビジネスを拡大するためのインフラストラクチャは我々が提供します。そのためにはクリエイティブが鍵となり、ユーザーの注目を集めようとする競争が激しくなる中でその重要性は増すばかりです。しかし広告のクリエイティブを開発し大規模にテストするのは、極めて困難で多額のコストがかかります。Luna Labsはアプリ開発者にエンド・ツー・エンドの高品質な広告制作管理を提供してこの問題を解決します。我々はこの機能をironSourceのプラットフォームに追加でき、たいへん喜んでいます。

買収の条件は公表されていない。ironSourceによれば、現在英国を拠点としているLuna Labsのスタッフはそのまま現在のオフィスに留まり、「ironSource傘下」でテクノロジーの開発を続けるという。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:ironSourceLuna Labs買収広告

画像クレジット:fanjianhua / Getty Images

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(文:Anthony Ha、翻訳:Kaori Koyama)

Spotifyがオーディオ広告マーケットプレイス「Spotify Audience Network」を開始

Spotify(スポティファイ)は米国時間2月22日、ポッドキャストへの投資を収益化する計画について詳細を明かした。同社は、新しいオーディオ広告マーケットプレイス「Spotify Audience Network」を立ち上げると発表し、これにより広告主は、同社独自のプログラムであるSpotify OriginalsとExclusives、さらにはMegaphoneや作成ツールAnchorによるポッドキャストや、広告付きの音楽などのリスナーにリーチできるようになるという。また同社は、セルフサービス広告プラットフォームであるSpotify Ad Studioでもポッドキャストを提供する計画で、米国ではSpotify OriginalsとExclusivesを皮切りに、ベータテスト段階での提供を開始すると述べている。

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これは将来的にはサードパーティ制作のポッドキャストにも拡大していく予定だと、同社は22日のオンラインライブイベント「Stream On」の中で述べた。

現在、Spotify Ad Studioは2017年のサービス開始後、22の市場で広告主に利用されており、音声広告と動画広告の両方でSpotifyの音楽リスナーにリーチしている。Spotifyは、同サービスが最も急成長している購買チャネルであると述べたが、その成長を詳細に示す具体的な数字は提供しなかった。

画像クレジット:Spotify

しかし、広告サイドの大きなニュースは、新しいオーディオ広告マーケットプレイス「Spotify Audience Network」の立ち上げだった。将来の見通しに関する他のいくつかの発表と同様、Spotifyは、実際にSpotify Audience Networkがどのように機能するかの詳細については触れたがらなかった。同社は「サービスを開発する初期段階」にあるということ、そして後日、より多くの情報を共有できるだろうとだけ述べた。

しかし、特に広告で収入を得ようとしているポッドキャスターや、Spotifyの内外から、同社の数億におよぶオーディエンスにリーチしたいと考えている広告主にとっては、同社はこのマーケットプレイスを「ゲームチェンジャー」だと位置づけている。

このニュースは、2021年の初めにThe Vergeが報じた調査レポートに続くもので、それによれば、同社は小規模なポッドキャスターのためにスポンサーを見つけると約束したにもかかわらず、実はSpotifyが現在までのAnchorの広告のメインスポンサーであることがわかったという。Spotifyはそうした約束を果たすために広告マーケットプレイスとツールを構築する過程で、広告主へのアウトリーチを優先していなかったように見受けられる。

画像クレジット:Spotify

またSpotifyは、最近Megaphoneを買収したことで、2020年初頭に開始したストリーミング広告挿入(Streaming Ad Insertion、SAI)技術を、自社のオーディオ番組OriginalsやExclusives以外のパブリッシャーにも拡大していくことが可能になると明らかにした。現在、SAIは米国、カナダ、ドイツ、英国で利用可能だが、2021年には他の新しい市場にも拡大する予定だという。

SAIはデビュー以来、オーディエンスベースのバイイング、ネイティブ広告プレイスメント、クリエイティブパフォーマンスのレポートなどの新機能を展開している。2021年後半には、Megaphoneのポッドキャストパブリッシャーや「主要な」AnchorのクリエイターがSAIを利用できるようにするとSpotifyは述べている。

しかし、Anchorのクリエイターが収益を伸ばす方法は広告に限られない。

TechCrunchが以前報じていたように、数カ月以内に、Anchorクリエイターが最も熱心なファンに向けて有料のポッドキャストコンテンツをSpotifyで公開できるようにする新機能のベータテストを開始すると、Spotifyは簡単に述べた。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Spotify広告ポッドキャスト音楽ストリーミング

画像クレジット:Stockcam / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Aya Nakazato)

エレベーターホール向けデジタルサイネージ「東京エレビGO」を手がける「東京」が3.6億円を調達

エレベーターホール向けデジタルサイネージ「東京エレビGO」を手がける「東京」が3.6億円を調達

エレベーター向けスマートディスプレイを設置し、広告配信事業を行う「東京」は2月15日、シリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資による総額3億6000万円の資金調達を発表した。引受先は、リード投資家の三菱地所、XTech Ventures(XTV)およびエンジェル投資家。

調達した資金は、主に機器設置費用・営業費用に充当し、より多くのオフィスビルの物件価値向上を目指す。また、放映コンテンツ開発および他メディアとの連携にも注力し、広告視聴者にとって有益なコンテンツ配信を進めていく。今後、オフィスワーカーが情報に触れるタッチポイントを増やし、成長産業であるデジタルサイネージ業界をより一層活気溢れるものとすべく邁進していくとしている。

2017年2月設立の東京が手がける「東京エレビGO」は、エレベーターホールに独自開発のデジタルサイネージを展開する「無人コンシェルジュ」サービス。エレベーターホールに配置したスマートディスプレイを通じて、快適性向上のためのコンテンツ放映やビル管理者からのお知らせを配信可能。東京都心部のオフィスビルを中心に合計700台以上設置しており、2021年12月末までに累計2000台の設置を目標としているという。

東京エレビGOは、端末費、設置工事費や保守などの運用費は無料としており、付加的な設備や長時間の工事なども不要。ウェブベースのインターフェイスにより誰でも手軽にコンテンツを配信・管理できるとしている。

また同社は2019年11月、三菱地所とspacemotionを設立し、日本初となる「エレベーター内プロジェクション型メディア事業『エレシネマ』」を展開。エレベーター外・エレベーター内の両面から顧客体験の向上を目指している。

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カテゴリー:IoT
タグ:広告 / アドテック(用語)資金調達(用語)東京日本(国・地域)

Appleのティム・クック氏がアドテックは社会の破滅をもたらすと警告、同社アプリトラッカーのオプトイン機能を擁護

Apple(アップル)のTim Cook(ティム・クック)CEOは2021年1月に「Computers, Privacy and Data Protection(CPDP)」カンファレンスで基調講演を行い、欧州はプライバシー保護を強化するべきだという考えを明らかにした。同氏は2年前にもブリュッセルで生講演を行い、アドテック業界によるインターネットユーザーの大量監視を支えている「data-industrial complex(データ産業複合体)」を激しく非難したが、今回の講演でもほぼ同じ主張を繰り返した。

この講演でクック氏は、現世代のアドテックの改革は今や人道的に必要不可欠なものだと述べ、遠回しにFacebook(フェイスブック)に対する批判を繰り返した。

「2年前にもブリュッセルで話したとおり、包括的なプライバシー保護法を米国で策定するだけでなく、データの最小化、(自分の情報利用に対する)ユーザーの知識、ユーザーによるデータへのアクセス、データのセキュリティという原則をグローバルに実践するための、世界規模の法律と新しい国際合意を策定すべきときだ」と話した。

「我々は何を許容すべでないか、何を許容しないか、という点でユーザーの個人情報に対する権利を主張する人々に、普遍的かつ人道的に応答しなければならない」とクック氏は付け加えた。

Appleは現在、トラッキングについて事前にユーザーの許可を求めることを開発者に義務づけるという世界初の試みへと舵を切る準備を進めている最中だ。前述のクック氏のメッセージは、同社にとって極めて重要な時期に発表された。

Appleは2021年1月下旬に、iOS 14の次期ベータリリースでApp Tracking Transparency(アプリ追跡透明性、ATT)機能を有効にすることを改めて発表している。正式な導入は2021年の春先になる見込みだという。

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Appleはこの機能を2020年から運用開始する予定だったが、開発者側に対応準備期間を与えるために予定を延期している

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この動きに対してアドテック大手のFacebookは以前から強く反論しており、サードパーティによるトラッキングを拒否する権限をAppleがユーザーに与えると、広告ネットワークを使用しているパブリッシャーは重大な影響を被ることになると警告している

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先に、Facebookは第4四半期の決算を発表し「広告部門での逆風が強まっており」2021年の収益が低下すると警告を発し、AppleのATT(および「変化する規制当局側の姿勢」)をリスクとして挙げた。

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クック氏はまた、データ保護とプライバシーに関する別のカンファレンス(通常はブリュッセルで開催されるが2021年はパンデミックの影響でオンライン開催となった)で行った講演で、ATTとプライバシーに対するAppleの姿勢をかなり強い言葉を使って擁護し、導入が間近に迫ったトラッキングのオプトイン機能は「ユーザーにコントロール(制御権)を返却する」ものであること、アドテックによるインターネットユーザーの監視によって、陰謀説、過激主義、物理的な暴力などの拡大をはじめとするさまざまな悪影響が生じていることを指摘した。

同氏はATTについて「ユーザーはこの機能を長い間待ち望んでいた」と述べ、次のように語った。「我々は開発者と密接に連携して、この機能を実装するための時間とリソースを彼らに与えてきた。また、我々自身も、この機能によって事態がすべての人にとって良い方向へと変化する可能性が高いと考えており、熱意を持って取り組んでいる」。

フランスでは、Appleのこの動きに対して不当競争の疑いがかけられており、2020年10月、4つのオンライン広告ロビー団体が「開発者がアプリユーザーに対してトラッキングの許可を求めることをAppleが強制するのは同社による市場支配力の乱用である」として、独禁法違反でAppleを告訴している(英国でも、GoogleがChromeブラウザでトラッキング用サードパーティCookieのサポートを打ち切ることについて同様の提訴があり、規制当局による調査が始まっている)。

また、The Informationによると、Facebook側もAppleを独禁法違反で告訴する準備を進めているといい、司法の場での争いがヒートアップしている(実はFacebook自身も、長年にわたる反競争的行為によってソーシャルネットワーク市場を独占してきたとしてFTCから提訴されている)。

クック氏は同講演で、プライバシー保護に関する別の新たな取り組みとして、App Storeに出品されるアプリについて、データ収集に関する情報を食品成分表のようにわかりやすく示す「privacy nutrition(プライバシーラベル)」の表示をiOSアプリの開発者に義務化していくと述べた。すでに別の記事で伝えたとおり、このラベルと、近く導入されるATTはサードパーティだけでなくApple製のアプリにも適用される。

クック氏によると、この2つの動きは「ユーザーの役に立ち、ユーザーの幸福を目指す」テクノロジーを創造するというAppleの核をなす製品哲学に沿ったものであり、人々がオンラインで実行するあらゆることについて情報を収集しそれらを大衆操作ツールとしてユーザーに不利になるように利用する、強欲な「データ産業複合体」のアプローチとは対照的であると語った。

「そもそも、プライベートな情報や個人情報はすべて、監視や収益化、あるいは集積してユーザーの生活を丸見えにすることにつながっているように見える」とクック氏は警告する。「こうしたアプローチの行き着く先は顧客の製品化である」。

「ATTが本格的に導入されると、こうしたトラッキングに対してユーザーはノーと言えるようになる。トラッキングに必要な程度の情報であれば、ターゲット広告の精度を上げるために提供してもよいと考える人もいるかもしれない。しかし、多くの人はそう考えていないようだ。というのは、同様の機能をSafariのウェブトラッカー制限に組み込んだところ、大半のユーザーから良い評価が得られたからだ」と同氏は述べ、「こうしたプライバシー中心型機能とイノベーションは、Appleが果たすべき責任の中核をなしている。今までずっとそうであったし、これからも変わらない」とつけ加えた。

過去には、プライバシーに反した大量監視などなくても広告業界が繁栄していた時代があった、とクック氏は指摘する。「テクノロジーは多数のウェブサイトやアプリから寄せ集められた膨大な個人データなどなくても成功できる。そんなものがなくても、広告は何十年も存続し、繁栄してきた。最も抵抗の少ない道を行くことが賢明な選択であることはめったにない。我々が今日のような立場を取っているのはそのためだ」。

クック氏はまた、いくつかの点でFacebookを遠回しに厳しく批判した。Facebookの名前こそ出さなかったが「ユーザーの監視」「データの搾取」「選択の余地のない選択」を基盤とするそのビジネス手法を酷評した。

「このような組織は我々の称賛に値しない。改革に値する」と同氏は続けた。また、同じ講演の前の部分で欧州の一般データ保護規則(GDPR)がプライバシー保護の強化に果たす役割を称賛し、そのような法の執行を「継続する必要がある」とカンファレンス出席者に訴えた(まさにこの継続性がGDPRの弱点となってきたが、現在2年半が経過して、やっと執行体制が軌道に乗ってきたようだ)。

クック氏は、Facebookに対する厳しい批判を続け、膨大なデータを吸い上げる、エンゲージメント偏重のアドテックのせいでデマや陰謀説が拡散されているとし、こうしたアプローチによってもたらされる影響はあまりにも深刻で、民主社会が許容できるものではないと主張した。

「大局的な見地を見失ってはならない。アルゴリズムによってデマや陰謀説が蔓延している今、可能な限り多くのデータを収集するために、エンゲージメント率を上げさえすればよい、ユーザーの滞在期間が長いほどよいというテクノロジーの考え方に対して見て見ぬふりをすることはできなくなっている」。

「多くの人たちが今でも『どの程度の罰金で済むだろうか』という話をしている。考えるべきなのは、どのような影響がもたらされるかという点だ。単にエンゲージメント率が高いという理由で陰謀説や暴力行為の扇動が優先されたら、どのような結果になるだろうか。命を救うワクチンに対する大衆の信頼を弱体化させるコンテンツを許容するだけでなく、そのようなコンテンツに報酬を与えるならどうなるだろうか。数千人のユーザーが過激グループに参加しているのに、そのグループへの参加を推奨するアルゴリズムを存続させたらどうなるだろうか」と、同氏は続け、Facebookのビジネスが直接の原因として批判されているさまざまなシナリオを挙げて説明した。

「こうしたアプローチに犠牲がともなわないふりをすることは、すぐにでも止めるべきだ。犠牲とは格差であり、信頼の喪失であり、そしてもちろん暴力だ。社会的ジレンマが社会的大惨事につながるのを許してはならない」とつけ加え、Facebookによるソーシャルネットワークのイメージを一撃で一変させた。

Appleが、ATTに反対するアドテック大手との戦いを推し進めるために欧州のデータ保護専門家に働きかけていることには理由がある。EUの規制当局には、ATTによるアプローチを後押しする法律を施行する権限があるからだ。ただし、現時点では規制当局はまだそこまでは踏み切れていない

Facebookに関するデータ保護監視を主導するアイルランドのデータ保護委員会(DPC)は、いわゆる「同意の強制」(サービスを使いたいなら広告ターゲティングによってトラッキングされることを承諾する以外に選択肢がないこと)を含め、Facebookのさまざまなビジネス手法に関する調査をまだ行っていない。

ユーザーに選択肢を与えないこのような手法はAppleがApp Storeで進めている変革とは対照的だ。App Storeでは今後、すべての企業はトラッキングに関してユーザーの同意を得る必要がある。Appleのこの動きは欧州のデータ保護法の原則に沿ったものだ(一例として、同法には、法的に有効であるためには一切の条件を提示することなく人々のデータに対する処理の承諾を得る必要がある、という原則がある)。

同様に、ユーザーに選択肢を与えることを引き続き拒否するFacebookの姿勢は、EUの法律と真っ向から対立しており、GDPR(一般データ保護規則)の規制対象となる可能性がある(クック氏が講演の中で訴えていたのはこの点だ)。

2021年はこの論争が決着に向かう重要な年になりそうだ。2020年末、アイルランドが他のEU加盟国のデータ保護当局に決定案を送付したことで、WhatsAppとFacebook間のデータ共有の透明性に対するDPCの長期にわたる調査が2021年、法執行に向かって動き始めている。

Politicoの報道によると、WhatsAppはこの1件のみで3000万~5000万ユーロ(約38億~64億円)の罰金を科せられる可能性があるという。それだけではない。WhatsAppは2019年にプライバシー保護違反に関する件でFTCに50億ドル(約5277億円)の罰金を支払ったが、そのときは広告ビジネスの運営方法について具体的な変更を行う必要はなかった。今回は、ユーザーデータの扱い方を変更するよう命令される可能性がある。

特定の種類のユーザーデータの処理中止を求める(またはデータを使用する前にユーザーの同意を得ることを強制する)命令が当局によって出されれば、これまでよりはるかに大きな影響がFacebookのビジネス帝国におよぶことは間違いない。

Facebookは2021年中に、欧州のユーザーデータのEU圏外への転送を合法的に継続できるかどうかについても最終判決を言い渡される。

Facebookがこのようなデータフローの停止を命令されれば、同社のビジネスのかなりの部分が大きく混乱することになるだろう。2019年の第1四半期時点で欧州のDAU(1日あたりの利用者数)は2億8600万人だった。

要するに、Facebookのビジネス運営をめぐる規制当局側の姿勢は明らかに「変化している」ということだ。

Facebook側もAppleによるプラットフォームレベルでのプライバシー保護執行が迫っている事態に対抗し、法律の専門家を投入して、Appleの動きは反競争的だと主張する構えを見せている。しかし、EUの立法担当者も、プライバシー保護執行に対抗するツールとして独禁法を持ち出す利己的な動きには目を光らせているようだ。

(クック氏が同講演でプライバシーの「イノベーション」に触れたことは注目に値する。同氏は「我々の生活をより良く、満たされた、人間的なものにするイノベーションの先にこそ未来があるのではないか」と聴衆に問いかけた。これは、プライバシー対独禁法規制の論争においてまさに鍵となる問いかけだ。)

2020年12月、コミッションのEVPで競争担当責任者のMargrethe Vestager(マルグレーテ・ベステアー)氏はOECD Global Competition Forumで、独禁法の執行担当者は、プライバシーが競争を抑え込む盾として使われないように用心する必要があると指摘した。とはいえ、同氏はドイツにおけるスーパープロファイリング訴訟でFacebookに有罪判決が下されたことに支持を表明しており、同氏の言葉にはデータ産業複合体に対する皮肉も込められていた。

この訴訟(ドイツFCOによって引き続き係争中)では、プライバシーと競争を新しい興味深い方法で組み合わされている。規制当局が勝訴すれば、Facebookのソーシャル部門がデータレベルで構造的に分離される結果になる可能性がある。いわば、「すばやく行動してマンネリを断ち切る」(Facebookの有名なモットー)の規制当局版だ。

ベステアー氏が規制のイノベーションを「刺激的で興味深い」と形容したことは注目に値する。欧州のデジタル政策と競争を監督する人物も、規制のイノベーションに対して、非難するどころか、むしろ信任票を投じているようだ。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:AppleFacebookEUアドテックGDPR

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

Google検索のオーストラリア撤退警告に対し、マイクロソフトがBingで穴埋めと政府に申し出

Google検索によるオーストラリア撤退警告に対し、マイクロソフトがBingで穴埋めと政府に申し出

現在(2月1日時点)Googleはオーストラリア議会に提出された法案に反発し、現地から検索エンジンサービスを撤退すると警告しています。この事態に対して、マイクロソフトが自社の検索エンジンBingを提供して穴埋めするとオーストラリア政府に申し出た、と報じられています。

この問題の発端は、オーストラリア政府がGoogleやFacebookなど大手テクノロジー各社に対し、ニュースコンテンツを提供する企業にロイヤリティーを支払うよう義務づける法案を提出したことです。要はGoogleの検索結果やFacebookのニュースフィードに国内の出版社や放送局のコンテンツが含まれている場合は、広告収入を分かち合えというわけです。

これに対してGoogleのオーストラリア・ニュージーランド担当マネジングディレクターのメル・シルバ氏は議会公聴会で「実行不可能だ」と語り、法案が成立した場合は「オーストラリアでGoogle検索の提供を止めるしかない」と述べています。つまりGoogleが検索サービス撤退の可能性によりオーストラリア政府を脅している、との見方もあります。

しかし現地メディアのオーストラリアン・ファイナンシャル・レビュー(主にビジネスと金融を扱う全国紙/Ausdroid経由)によれば、MSのサティア・ナデラCEOはオーストラリアのスコット・モリソン首相と直接会談したとのこと。そこで自社のBingによりGoogle検索が撤退した空白を埋められると助言したとの観測が伝えられています。

さらにReutersはモリソン首相がナデラCEOとの会談を認めた上で「Googleが検索エンジンを撤退した場合、Bingでギャップを埋めることができると確信している」との発言を報じており、事実である裏付けが取れています。

その可能性がどれほどかはさておき、モリソン首相はGoogleが撤退をちらつかせても譲歩するつもりはない模様です。「ハッキリさせておきましょう。オーストラリアでは、オーストラリアで可能なことのルールを決めています。それは議会で行われ、政府によって行われます。それがここオーストラリアでの仕事の作法です。オーストラリアで仕事をしたい人は大歓迎ですが、我々は脅しには応じません」と決意の程を語っています。

が、Googleも孤立しているわけではありません。1月15日には米国通商代表部が公式文書で「我々はオーストラリアに対し、指定されたプラットフォームに課せられる潜在的な義務の程度がAUSFTA(米・豪自由貿易協定)と一致しているかどうか検討するよう強く求める」と表明しており、米国政府の後押しを受けている状態です。

標準検索サービスがGoogleがBingに置き換えられた未来には興味深いものがありますが、依然として事態は流動的であり、もしかするとGoogleとオーストラリア政府が電撃的に和解することもありうるのかもしれません。

ともあれ、ライバル企業が大きな市場を手放す可能性があると見るや、すかさず動き出すIT巨人のフットワークの軽さは、日本の企業にとっても学べるところがありそうです。

Engadget日本版より転載)

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eコマースの広告効果アップを目指すShopalystが新プラットフォーム立ち上げ

インドのShopalystは、ブランドや企業がデジタル広告の広告効果を最大化することができるDiscovery Commerce Cloudという新しいプラットフォームを立ち上げた。

共同創業者でCEOのGirish Ramachandra(ギリッシュ・ラマチャンドラ)氏によると、Shopalystは広告からeコマースを横断した「買い物客が1つのシームレスな旅」ができるよう開発されたという。現在のシステムではそれはサポートされていない。

同社初のプロダクトは「ユニバーサルな購入ボタン」であり、Shopalystは2020年にベータテストを行ってきたクロスプラットフォーム広告用の幅広いツールセットに「自然に進歩した」とラマチャンドラ氏はいう。

Discovery Commerce Cloudは5つのモジュールで構成されており、ラマチャンドラ氏によれば合わせて利用するのがベストだが、個別でもよいという。モジュールは、以下のとおりだ。

  1. 消費者が何を探しているか、メディアやeコマースプラットフォームで何が人気があるかについての情報を得ることができるマーケットインテリジェンスプトダクト
  2. オーディエンスの関心、行動、購買意図に基づいて広告をターゲットにするオーディエンスインテリジェンスプロダクト
  3. Google Ads、DV 360、Facebook、Instagram、Amazon Ads、Twitter、TikTokに広告を配信するユニバーサルアドマネージャー
  4. ブランドの消費者向けサイトでの即時チェックアウト、eコマースマーケットプレイスでの比較ショッピング、即時配送、実店舗の検索をサポートするランディングページビルダー
  5. 顧客ファネル全体を測定するリアルタイムのメトリクス

画像クレジット:Shopalyst

ラマチャンドラ氏によると、上記のUniversal Ads Builderで作った広告は各プラットフォーム向けに最適化され、オーディエンスのデータに基づいて動的に生成されるクリエイティブを使用しているという。またランディングページビルダーを使うことで、ブランドは視聴者の「ショッピングでの行動」に関する新しいデータを収集することもできる。

「以前は小売業者はデータを共有していないため、ブランドはショッピングでの行動を知ることはできなかった。それはすべて変わりました。ブランドはShopalystでファーストパーティデータの取得が可能になり、今後の適切な広告キャンペーンを行うことができます」とラマチャンドラ氏はいう。

Shopalystの顧客にはUnilever、Nestle、Diageo、Nivea、L’Oreal、Estee Lauderなどがいる。同社は最初、インドの市場に焦点を当てていたが、現在では30カ国で利用になっている。

Shopalystによると、ベータテストではDiscovery Commerce Cloudを使ったキャンペーンは、ターゲティング適正率は3倍に、オーディエンスの注目度は5倍に、広告に影響されたショッピングは8倍に向上したという。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Shopalyst広告eコマース

画像クレジット:Shopalyst

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(文:Anthony Ha、翻訳:Hiroshi Iwatani)

アップルのApp Tracking Transparency機能はデフォルトで有効に、早春にiOSで実装

Apple(アップル)は、iOS 14で散々議論されているプライバシーポリシーの変更について、さらにいくつかの詳細を明らかにした。同社は2020年6月に行われたWWDCの発表で、複数のプロパティを横断する広告ターゲティングのためにIDFAを追跡し共有するためには、開発者はユーザーに許可を求めなければならない、としている。一方、2020年秋にiOS 14が登場した際、Appleは2021年まで追跡制限を延期し、開発者が必要な変更を加える時間を増やしたいと述べている。

そして、もう少し具体的なタイムラインが明かされた。計画では、これらの変更を今春の早い時期に公開し、機能を実装したバージョンは、次のiOS 14ベータリリースで公開する予定になっている。

Appleは新システムを次のように説明している。「ユーザーは『設定』でどのアプリが追跡許可をリクエストし、そのための変更をしたかを確認することができる。要求は今春の初めに幅広く展開され、今後のiOS 14とiPadOS 14とtvOS 14で実装される。この変更は、世界中のプライバシー擁護派からの支持を得ている」。

特に重要で基本的な要求をリストアップすると、次のようになる。

  • App Tracking Transparency機能は、IDFAの共有をユーザーがそれぞれオプトアウトしなければ無効にならない従来の方法から、デフォルトで無効、有効にするためにはオプトインしなければならない方法に変更する。ネットワークやデータブローカーなどのサードパーティやユーザーのIDFAを共有したいアプリは、事前にその許可をユーザーに求めなければならない。
  • この機能が最も目立つ証拠は、新しいアプリの起動時に通知があり、トラッカーが何に使われるのかを説明し、それにオプトインするように求めてくることだ。
  • IDFA共有はいつでもアプリごとに切り替えることができるようになった(以前は単一の切り替えだった)。「アプリに追跡のリクエストを許す」を無効にすると、どのアプリからもトラッキングの使用を求められなくなる。
  • Appleは、データ共有契約を含むすべてのサードパーティデータソースに対してこれを強制するが、プラットフォームはサードパーティデータを利用して広告を行うことができる。
  • Appleは開発者が、アプリで使用するAPIやSDKがユーザーデータをブローカーやその他のネットワークに提供していることを理解し、もしそうであるならば通知を有効にすることを期待している。
  • Appleは自社アプリに関しては規則を遵守し、もしそのアプリが追跡を行うのであればダイアログを表示して「アプリに追跡のリクエストを許す」の設定に従う。現時点では、多くのアプリが追跡を行っていない。
  • ここで重要な注意点は、パーソナライズされた広告の切り替えは、具体的にはApple自身が広告を提供するために独自のファーストパーティのデータを使用することを許可するか、または許可しない別の設定であるということだ。つまりAppleのデータのみに影響するオプトアウトの追加レイヤーだ。

Appleはまた、Adtribution APIの機能を強化しており、より良いクリック計測、動画コンバージョンの計測、アプリからウェブへのコンバージョンの計測を可能にしている。

このニュースはData Privacy Dayに発表され、CEOのTim Cook(ティム・クック)氏が米国時間1月28日の朝、ベルギーのブリュッセルで開かれたComputers, Privacy and Data Protectionカンファレンスでこの問題について講演を行った。同社はまた、平均的なアプリには6つのサードパーティのトラッカーがあることを示す新しい報告も発表している。

今回の変更はプライバシーの観点からは歓迎すべきものだと思われるが、広告業界からは批判もある。たとえばFacebookは、小企業への影響を強調したPRキャンペーンを始め、またこの変更を2021年に直面する「広告への最も大きな逆風の1つ」と指摘している。Appleのスタンスは、広告主中心のアプローチであり、ユーザー中心のデータプライバシーのアプローチをするというものだ。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Apple個人情報広告Facebook

画像クレジット:Apple(スクリーンショット)

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(文:Anthony Ha、Matthew Panzarino、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Lauraが国内初の車窓型動画メディア「CarWindow」β版をリリース、トライアルユーザー募集開始

Lauraが国内初の車窓型動画メディア「CarWindow」β版をリリース、トライアルユーザー募集開始

Laura(ローラ)は1月26日、国内初の車窓型動画メディアサービス「CarWindow」のβ版リリースに伴い、トライアルユーザーの募集開始を発表した。

2020年創業のLauraは、ディスプレイ技術の研究開発、および屋外メディア事業の立ち上げを行うスタートアップ企業。革新的なテクノロジーにより、事業開発からマーケティング・販促・広報といった事業活動全体の支援を行っている。

CarWindowは、最新のディスプレイ技術を活用した車などの窓面をスクリーンのように活用できる、新しい屋外メディアサービス。夕方から夜間に屋外移動するアクティブな生活者にリーチできるとしている。

同社は、新型コロナウィルスの影響により、屋外を移動する生活者に向けて情報発信を行う屋外メディアの意味も大きく変わったと指摘。

このような状況だからこそ、顧客との接点を失ってしまった店舗事業者や、ライブ・イベント・旅行など対面での娯楽を提供していたエンタメ事業者、青春の機会を失ってしまった学生など、コロナ禍でも活動を続ける人や企業を応援するため、トライアルユーザーの募集を開始したという。

今回のトライアルプランでは、「先行一社限定」で無償枠を用意し、街に元気を与えるような動画コンテンツやサービス事業者とのタイアップを予定しているとした。

トライアルプランの詳細

同社は現在、都内を中心にタクシー車両への実装を進めており、時間や位置情報に応じた動画コンテンツを複数車両へ一斉配信できる状態を目指している。

今後もIoT、MaaS、OMOといった言葉が台頭するように、オフラインメディアのデジタル化によって、「オンラインとオフラインが掛け合わされた豊かな生活体験」を実装し、「未来の東京らしい街並み」をデザインしていくという。

これまで屋外広告市場は「デジタルサイネージ元年」といわれた2007年以来、ディスプレイ技術の大きな革新がなく、新たな媒体開発が進んでいなかったそうだ。また、媒体としての広告効果測定も、駅改札の利用人数や店舗来客数、人力での交通量調査により、想定視聴人数を計測する手法がベースとなっており、ウェブ広告でいうインプレッションのような定量的な統一手法がない状態とされる。

CarWindowでは、自動車が停車すると、車窓がディスプレイになり、動画が配信される新しいデジタルサイネージ。駅前や信号待ちで並ぶ複数車両に動画を一斉配信することで、今までにないプロモーションが可能という。また、想定視聴者人数だけでなく、独自技術によりリーチ数(接触人数)、フリークエンシー(視認回数、視認率)など、実際の視聴者数を計測し、インプレッションを算出することで、デジタル広告と効果的に連携できるとしている。

Lauraが国内初の車窓型動画メディア「CarWindow」β版をリリース、トライアルユーザー募集開始

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カテゴリー:IoT
タグ:広告 / アドテック(用語)位置情報(用語)OMO ロケーションテック(用語)日本(国・地域)

検索広告のAdthenaがKantarの有料検索事業を買収

検索広告のコンサルタントAdthenaが、マーケットリサーチ企業Kantarとのパートナーシップを拡張して、Kantarの有料検索事業を買収することになった。

両社は2021年1月初めに合意を発表。それによりAdthenaのデータがKantarのインテリジェンスプロダクトに統合される。この買収により、Kantarの検索クライアントはAdthenaの一連のプロダクトにアクセスできるようになる。

Kantarは、2012年にAdGoorooを買収して有料検索ビジネスに参入した。当然ながら買収により、AdGoorooというブランド名は生き残らなかった。

AdthenaのCEOであるIan O’Rourke(イアン・オルーク)氏は声明で次のように述べている。「検索は広告効果を測定するバロメーターになりつつあるため、できるかぎり最良のインテリジェンスにアクセスできることが何よりも重要だ。Kantarの有料検索能力を獲得できたことは、同社とのパートナーシップと相まって、弊社が企業や代理店との新たな商機を開拓できることを意味している。それにより、弊社の成長も継続できるだろう」。

オルーク氏は以前、Adthenaが傑出しているのは、人工知能を活用し企業とその競合他社を見つけるために有料検索とオーガニック検索の両方で使われているすべてのキーワードを視覚化する同社の「市場の全体を展望する視点」のためだと語っている。

買収の財務的条件は公表されていないが、Adthenaによると、Kantarのチームのメンバーは同社に加わるという。

カテゴリー:その他
タグ:Adthena広告買収

画像クレジット:sesame/Getty Images

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa