日本酒ECの酒ストリートと菊の司酒造が共同開発した醸造アルコール添加工程を体験できる酒セット販売、エシカル・スピリッツCTOの山口氏監修

日本酒ECの酒ストリートと菊の司酒造が共同開発した醸造アルコール添加工程を体験できる酒セット販売、エシカル・スピリッツCTOの山口氏監修

日本酒ECサイトなどを展開する酒ストリートは2月12日、純米酒と焼酎を自分の手でブレンドして醸造アルコール添加の日本酒を作ることができる「すごい!!アル添(あるてん)」を数量限定で販売開始したと発表した。通信販売サイト酒ストリート公式オンラインストアで購入できる。直販価格は6480円(税込・送料込)。

同製品は、創業400年を超える老舗酒蔵・菊の司酒造と共同開発したも。ブレンドの監修は、ジン製造スタートアップ「エシカル・スピリッツ」CTOとして商品開発や蒸留などの技術責任者を務める蒸留家・山口歩夢氏が行っている。

「アル添」とは、「醸造アルコール添加またはアルコール添加の日本酒」の略称。醸造アルコールとは、サトウキビなどを原料とした糖蜜から作られた蒸留酒で、「大吟醸」「吟醸」「本醸造」といった酒の香りや味わいを深め、よりよい酒質を作るためにも使われている。酒ストリートによると、アル添のお酒は「品質が低い」「増量目的」といったネガティブなイメージが深く根付いているものの、現在国内で製造されている酒の約77%、また日本酒コンテスト「全国新酒鑑評会」では出品酒の約78%・入賞酒の約91%はアル添酒という(国税庁「清酒の製造状況等について(平成30酒造年度分)」、酒類総合研究所「平成30酒造年度 全国新酒鑑評会出品酒の分析について」より算出)。

今回発売のすごい!!アル添は、純米酒と焼酎を自分の手でブレンドし、酒に醸造アルコールを添加する工程を疑似的に体験できる商品。こだわりの日本酒と焼酎、それらをブレンドしたアル添のお酒を作ることで、おいしく楽しんでもらうために考案された。商品には計量ショットグラスとスポイトが付属。同梱のリーフレットには、山口歩夢氏によるブレンド解説とペアリングの提案、酒ストリートによるアル添の解説が掲載されており、手軽にアル添のブレンドを試すことができる。

日本酒ECの酒ストリートと菊の司酒造が共同開発した醸造アルコール添加工程を体験できる酒セット販売、エシカル・スピリッツCTOの山口氏監修

共同開発の菊の司酒造は、創業400年を超える岩手県盛岡市の老舗酒蔵。伝統的な製法と革新的な酒質を両立させる高い技術を持ち、国内外で多くの受賞歴を誇る。また同社はは日本酒だけでなく、自社で醸造・蒸留する焼酎「だだすこだん」を製造。その広範な知識と技術をもとにすごい!!アル添の共同開発に至った。

酒ストリートは、すごい!!アル添を通して日本酒の7割以上を占めるアル添酒のおいしさを多くの人に体験してもらいたいという。杜氏や蔵人の技術に触れ、アル添酒を身近に感じてもらうことで、アル添酒に対するイメージを変革したいという。

風味と言語の総合変換を行う日本酒ソムリエAI「KAORIUM for Sake」を京都酒蔵館が導入

風味と言語の総合変換を行う日本酒ソムリエAI「KAORIUM for Sake」を京都酒蔵館が導入

香りを言語化するAIシステムであらゆるものに情緒的な体験価値をプラスする香りのビジネスデザイン集団SCENTMATIC(セントマティック)は、香りと言葉の相互変換を行うAIシステム「KAORIUM」(カオリウム)の技術を用いた日本酒ソムリエAI「KAORIUM for Sake」を、10月1日より、京都42酒蔵の日本酒が楽しめる居酒屋「京都酒蔵館」に関西で初めて導入した。

「KAORIUM for Sake」は、インターネット上の膨大な言語表現、ユーザーの1万件以上の感性データ、酒ソムリエ赤星慶太氏の感性を学習した、日本酒の風味を言葉で可視化するAIシステム。今まで感じ取ることが難しかった奥深い味わいが感じられる体験を提供するという。

日本酒を「すずしげ」、「ふくよか」、「あたたかみ」の3要素のバランスに加え、香りや印象、情景に喩えた表現や言葉で可視化することで、日本酒の特徴がわかりやすくなり、好みの酒が選びやすくなる。SCENTMATICによれば、「キーワードを見ながら言葉を意識して味わうことで、今まで感じることのでき なかった風味や味わいに気付くことができます」とのことだ。同時に、客がタブレットで酒の印象を表す言葉をタップれば、さらにAIの学習が進む。

「接客を頑張りたい」が人的に限界があり悩んでいたという京都酒蔵館は、「KAORIUM for Sake」の画面を見ながら酒を楽しむ客の姿を見て、客と会話ができなくとも日本酒の魅力が伝えられるようになったと話している。

Sakeistが日本酒定期便「Sakeist Box」をリニューアル、5つ星ホテルのシェフ・ソムリエによるオンラインセミナー付き

Sakeistがコンクール受賞酒も飲める日本酒定期便「Sakeist Box」をリニューアル、フランス人ソムリエのオンラインセミナー付き

世界の消費者・ソムリエ・酒蔵をつなぐ日本酒プラットフォーム「Sakeist」(サケイスト)を運営するKhariis(カリス)は8月16日、フランス人ソムリエのオンラインセミナー付き日本酒定期便「Sakeist Box」のプランを8月からリニューアルすると発表した。毎月3300円(税込・送料無料)から利用できるようになる。またサブスクリプションではなく、毎月気になるプランを購入できるというシステムとなっている。

Sakeist Boxは、フランスで開催される日本酒と焼酎のコンテスト「Kura Master」の審査員長グザヴィエ・チュイザ氏が、日本酒の魅力や料理とのペアリングなどを解説するセミナーを聞きながら日本酒が楽しめるというもの(毎回日本語の通訳あり)。同氏は、パリの5つ星ホテル「ホテル・ド・クリヨン」のシェフ・ソムリエでもある。酒蔵が減少し続ける現状に対して自分も力になりたいと思い、2017年にKura Masterを立ち上げたそうだ。

毎月、グザヴィエ氏が選んだ酒蔵から厳選された720ml入りの日本酒が、スタンダード1本プランの場合1本、スタンダード2本プランでは2本が届く。グザヴィエ氏のオンラインセミナーは、毎月最終木曜日の夜にライブ配信される。グザヴィエ氏と蔵元に対して、チャットによる質問も可能という。

プラン概要

  • スタンダード1本プラン:価格3300円(税・送料込み)。720mlの日本酒1本
  • スタンダード2本プラン:価格5900円(税・送料込み)。720mlの日本酒2本
  • プレミアムプラン:価格8100円(税・送料込み)。純米大吟醸などを含む、720mlの日本酒2本

ラインアップ予定

  • 2021年8月「出羽桜酒造」(山形県):吟醸酒で有名な酒蔵。鑑評会や、IWC、Kura Masterなど世界的コンクールで多くの栄冠に輝く、名実ともに業界を代表する名門酒蔵
  • 9月「田中酒造場」(兵庫県):未来を見据えた酒造りを行っている「温故知新」の蔵。今年度のKura Masterでトップ16酒入り
  • 10月「惣誉酒造」(栃木県):先祖が滋賀県日野町から移住し、150年以上栃木県で酒造りを続けている。2001年より生酛造りを復活
  • 11月「永井酒造」(群馬県):ワインと同じように料理に合わせて各スタイルのお酒をペアリングさせる「Nagai Style」というコンセプトで酒造りに取り組む
  • 12月「中野酒造」(大分県):第2回目のKura Masterで最高のプレジデント賞とプラチナ翔のダブル受賞をするなど若手が次世代を担う蔵
  • 2022年1月「八鹿酒造」(大分県):九州に位置しながら、冬場氷点下まで下がる気候と九重連山の伏流水で作られた酒。九州では希有な辛口
  • 2月「八戸酒造」(青森県):青森の米、水、酵母を使い、なめらかな口当たりとみずみずしい甘さ、キレのある後味などを実現
  • 3月「三宅本店」(広島県):1920年、海軍の練習航海にて220日あまりの航海中、何度も赤道を通過したにも関わらず品質が劣化しなかったエピソードを持つ蔵

9月は特別に、2021年「Kura Master」上位16銘柄に選ばれた田中酒造場「Château Shirasagi 65」(名刀正宗 乙天)が、どのプランでも提供されるという。

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「酒粕」廃棄素材によるクラフトジン生産や再生型蒸留所を手がけるエシカル・スピリッツが1.4億円調達

「循環経済を実現する蒸留プラットフォーム」をモットーに、「酒粕」廃棄素材を使用したクラフトジンの生産や、再生型蒸留所を運営する蒸留スタートアップ「エシカル・スピリッツ」は6月16日、第三者割当増資として1億4000万円超の資金調達を実施したと発表した。引受先は、Beyond Next Ventures。

エシカル・スピリッツは2020年3月、日本酒生産工程の最後に生成され本来は廃棄される素材「酒粕」を再蒸留して、クラフトジンを生産・販売。その利益から酒米を酒粕提供元の蔵元に提供し、再度そこから日本酒を生産するという世界初の循環型「エシカル・ジン・プロジェクト」を始動した。

その第1弾のエシカル・ジン「LAST」を同社は「飲む香水」としており、至高のアロマを実現したフレーバード・ジンになっているという。LASTシリーズは生産方法のみならず、ウイスキー業界で最も権威のある品評会WWAのジン部門「World Gin Awards 2021」において、国別の最高賞や、権威ある品評会のひとつ「The Gin Masters」ではゴールドとシルバーを受賞している。なお同シリーズは公式オンラインショップでも購入できる。

また2021年1月には、エシカル生産・消費に特化した世界初の再生型蒸留所「東京リバーサイド蒸溜所」を東京蔵前に建設(7月上旬グランドオープン予定)。東京都で3カ所目となるスピリッツ製造免許を取得した企業となり、蒸留所内には自社で運営するクラフトジンに特化したバーもオープンした。

調達した資金は、新たな再生型蒸留所の建設と海外販路の拡大に主に投資する予定。また現在はベーススピリッツの蒸留をパートナー会社と連携して実施し、自社の蒸溜所でそのベーススピリッツを使用したジンを含むスピリッツを蒸留しているが、今後は「酒粕そのものをベーススピリッツに変える」最新型の設備を導入する。これにより、従来自社でベーススピリッツの生産が難しかった中小規模の酒蔵との連携が可能となり、全国1400の日本酒蔵すべての酒粕がベーススピリッツの対象となる。

他にも、国立森林総合研究所の研究成果を基にした民間事業者としては初となる、「木の酒の蒸溜所」の立ち上げ、「木のお酒『WoodSpirits』」の製品化・販売にも挑んでいる。さらに、国際的なスピリッツ市場のハブである英国に2021年中での拠点開設を目指し、その後にドイツやスペインなどへの展開も予定しているという。

エシカル・スピリッツは、「Crafting the New Luxury」(新たな嗜好価値を象る)をミッションに掲げ、世界をリードするサステイナブルなスピリッツブランドを目指すとしている。

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パリ醸造所を運営し日本酒D2Cブランドを世界展開するWAKAZEが3.3億円調達、ヨーロッパ全土展開と米国進出狙う

パリ醸造所を運営し日本酒D2Cブランドを世界展開するWAKAZEが3.3億円調達、ヨーロッパ全土展開とアメリカ進出を目指すフランス・パリ近郊でSAKE醸造所を運営するWAKAZE(ワカゼ)は6月9日、総額3億3000万円の資金調達を発表した。引受先はジャフコ グループ、ニッセイ・キャピタル、マクアケ、MAKOTOキャピタル。調達した資金により、WAKAZEのビジョンである「日本酒を世界酒に」のさらなる実現に向け、フランスで培ったブランド力を活かし、ヨーロッパ全土およびアメリカにおいても現地醸造のブランド展開を目指す。

調達した資金の用途

  • ヨーロッパ全土におけるブランド認知獲得:全世界ワイン市場規模36兆円のうち半分を占めるヨーロッパにおいて、SAKEでワイン市場の開拓を目指し、ブランド認知獲得を狙う。ポップアップストアなどでも一次認知を獲得するとともに、イギリスやドイツをはじめヨーロッパ諸国からの購入・配送をスムーズに行えるようマーケティングに力を入れる
  • アメリカにおける現地醸造およびブランド浸透:フランスで培った開発力を基に、アメリカ現地での生産を通じてWAKAZEブランドの展開を目指す
  • フランス現地の需要に応える設備増強および醸造効率向上:フランス現地でのSAKEの需要に応えるべくパリ醸造所「KURA GRAND PARIS」の醸造設備増強、テクノロジーを使った醸造効率向上に注力
  • 「商品開発力」強化を見据えた人材採用:WAKAZE顧客の高いリピート率を担う「商品開発力」を、よりグローバルで促進できるよう、造り手人材を積極的に採用および育成する
  • 新規顧客獲得の日本でのマーケティング強化:WAKAZEは、日本国内においても、SAKEが持つ多様性に溢れ奥深い「SAKEのワクワクする世界」を知っている人は少ないと感じているという。「SAKEの世界」の入り口を多くの人に届けるために、マーケティング人材を積極採用し、顧客に直接価値を届けるD2Cを強化する

2016年1月設立のWAKAZEは、「日本酒を世界酒に」をビジョンに掲げ、日本とフランスを拠点に日本酒D2Cブランドを展開するスタートアップ。この言葉には「SAKEが世界中で飲まれ、造られる世界をつくる」という想いがこめられているという。ワンルームのオフィスから出発したWAKAZEは、創業当時からワイン市場の開拓を狙い「食の都 パリでSAKEを造る」という大きな夢を掲げてきたそうだ。

2018年には、東京都世田谷区に自社醸造所「三軒茶屋醸造所」を創立し、日本酒」の概念を飛び越えた新感覚の「ボタニカルSAKE」や「どぶろく」でSAKEの新たな価値を提供。2019年11月には、フランス・パリ近郊に自社醸造所「KURA GRAND PARIS」(クラ・グラン・パリ)を創立した。フランス産原材料にこだわった「フランスならではの酒造り」で、ビジョン「日本酒を世界酒に」を体現したという。

また、2020年2月には現地での流通を始めたものの、直後にコロナ禍に見舞われ対飲食店への流通は激減。WAKAZEはデジタル戦略へ大きく舵をきった。

ブランド立ち上げから1年、オンラインにおける月商は2020年内で60倍に成長。さらにはフランス500店舗と7カ国に展開するフランス最大ワインショップ「NICOLAS」と協業し、すでに250店舗にWAKAZEのSAKEが並んでいるという。オンラインからもオフラインからも、フランスの街中でSAKEが親しまれるシーンを創出するとしている。

パリ醸造所を運営し日本酒D2Cブランドを世界展開するWAKAZEが3.3億円調達、ヨーロッパ全土展開とアメリカ進出を目指す

WAKAZE JAPANのメンバー(三軒茶屋醸造所)

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WAKAZE FRANCEのメンバー(パリ醸造所)

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「日本酒を世界酒に」SAKEスタートアップのWAKAZEが1.5億円を調達、パリに醸造所設立へ

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タグ:酒 / アルコール飲料(用語)日本酒WAKAZE資金調達(用語)日本(国・地域)

高級日本酒ブランド「SAKE HUNDRED」のグローバル化を目指すClearが12.96億円を調達

高級日本酒ブランド「SAKE HUNDRED」のグローバル化を目指すClearが12.96億円を調達

ラグジュアリーな日本酒ブランドとして世界展開を目指す「SAKE HUNDRED」(サケハンドレッド)と、日本酒専門ウェブメディア「SAKETIMES」(サケタイムズ)を運営するClear(クリアー)は5月26日、第三者割当増資による総額12億9500万円の資金調達実施を発表した。引受先には、ジャフコ グループをリード投資家に、既存投資家である三井住友海上キャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、アカツキ「Heart Driven Fund」、OPENSAUCE、その他複数の投資家が名を連ねている。

Clearは「日本酒の未来をつくる」をビジョンに、2013年に創設されたスタートアップ企業。SAKETIMESは2014年から運用を始め、現在の月間購読者は55万人。SAKE HUNDREDは2021年5月26日現在の会員登録者数が5万3109人となっている。「SAKE HUNDREDでは、ラグジュアリーシーンで愛される日本酒ブランドを確立して新たな市場をつくることを、SAKETIMESでは世界における日本酒情報のインフラとなること」を目指している。

今回調達した資金は、SAKE HUNDREDとSAKETIMESの事業を拡大し、新たなステージに引き上げることにあてられる。具体的な今後の展開は、SAKE HUNDREDの海外進出強化、SAKE HUNDREDのブランド投資、サステナビリティーの推進、グローバル展開のための人材採用、SAKETIMESの発展が揚げられている。

海外展開では、これまで香港、シンガポールを中心に行ってきたが、今後は、アメリカ、イギリス、中国、UAEに輸出エリアを拡大し、卸売販売に加えて個人販売も促進してゆく。

SAKE HNDREDのブランド投資では、直営ブティックの開業プロジェクトを推進し、「最高峰のグローバル日本酒ブランド」の味に加え、「お客様の心の充足に貢献するためのブランド体験」を提供してゆく。

SAKE HUNDREDでは、環境に配慮した酒づくりの資材の研究開発、大学や研究機関との協力で日本酒製造時の環境負荷の可視化と低減に取り組み、日本酒産業全体のサステナビリティーな発展に貢献してゆくという。そうした活動は、SAKETIMESで発信してゆくとのことだ。

Clear代表取締役、生駒龍史氏はこう話している。
「自社の売上・利益を上げることを前提に、サプライチェーン全体が潤う起点となること、Clearの事業を通じて、産業全体の未来が拓かれていくことこそが、私たちの目指す未来です」

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「ライバルはラグジュアリーブランド」日本酒スタートアップのClearが2.5億円調達

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飲んだ日本酒からユーザー好みの日本酒を分析・提案する「サケアイ」が資金調達

飲んだ日本酒からユーザー好みの日本酒を分析・提案する「サケアイ」が資金調達

サケアイ(Sakeai)は12月10日、シードラウンドにおける資金調達を発表した。引受先はYJキャピタル、East Ventures。また両社が共同運営するCode Republicに参加すると明らかにした。

調達した資金により、飲んだ日本酒を記録しユーザーに合った日本酒をおすすめする「サケアイ」アプリ(Android版iOS版ウェブ版)のユーザーがより快適に日本酒開拓をしていくための仕組み作りを行い、全国の地酒が購入できるプラットフォームへの成長を加速させる。

同社は2020年5月、「世界中の人がお酒を愛し、お酒を最大限楽しめる世の中をつくる」ことを目指し「サケアイ」アプリの提供を開始。

日本酒の銘柄は数万種類以上あるとされ、その中から自分の好みに合う日本酒を見つけることは難しく、まだまだ知られていない日本酒は数多く存在するという。

その解決のため、飲んだ日本酒を記録、ユーザーに合う日本酒をおすすめ、気になる日本酒を取扱店で購入するといった流れをサケアイだけで完結できるようにした。さらに、2万3000種類以上の日本酒銘柄の情報を閲覧可能という、業界最大規模の日本酒データベースを搭載。酒販店に置いてある日本酒がわかるようになっている。

飲んだ日本酒からユーザー好みの日本酒を分析・提案する「サケアイ」が資金調達

また酒造会社・酒販店との連携のもと、ユーザーへの最新情報の送付も実施。酒造会社は蔵元のおすすめを表示したり、アプリ内の日本酒の情報を自ら更新可能。酒販店は、店舗で取り扱っている日本酒を自ら更新できたり、各店舗おすすめの日本酒をアプリに載せたりできる。提携酒造は、提携酒造会社一覧で公開している。

飲んだ日本酒からユーザー好みの日本酒を分析・提案する「サケアイ」が資金調達

提携酒造一覧(抜粋)

提携酒造(抜粋)

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酒・アルコール飲料資金調達(用語)日本酒日本(国・地域)

「ライバルはラグジュアリーブランド」日本酒スタートアップのClearが2.5億円調達

Clear代表取締役 生駒龍史氏

日本酒スタートアップのClear(クリアー)は2月3日、総額2.5億円の資金調達実施を発表した。Clearは、日本酒に関するWebメディアを運営しながら、プレミアム日本酒のブランド「SAKE100(サケハンドレッド)」を展開。酒蔵と共に開発した高品質・高価格の日本酒をネット経由で販売するなど、日本酒に特化した事業を展開している。

海外で高まる日本酒ニーズによりスタートアップに勝機

ここ数年、国内外でSAKEスタートアップの動きが活発だ。これはしかし、日本酒産業そのものに勢いがあるということではなく、むしろ産業自体はもう数十年、ずっと衰退傾向にある。なぜ、この分野で新興企業に注目が集まるのだろうか。

農林水産省「日本酒をめぐる状況(令和元年10月)」(PDF)によると、日本酒の国内出荷量はピーク時(1973年)には170万キロリットルを超えていたが、近年は50万キロリットル程度まで減少。一方で吟醸酒、純米酒といった「特定名称酒」の比率は増加傾向にあり、出荷量も一般酒と比べれば、そう大きく落ち込んでいない。

また、国内出荷量が減少傾向にある中で、輸出量は日本食ブームなどを背景に増加傾向にあり、2018年の輸出総量は約2万6000キロリットルと10年で倍になった。金額では2013年に初めて100億円を突破して以来増え続けており、2018年には222億円と10年で3倍の伸びとなっている。

さらに、日本酒の海外輸出を促進するため、政府も後押し。輸出向け商品のみを製造する場合に限り、日本酒製造場の新設許可を政府が検討していることが2019年11月、明らかになった。これまでは需給均衡を保全するため、原則として清酒製造免許は新規発行されていなかったのだが、これで国外向け限定とはいえ、日本酒造りに新規参入する道が開ける可能性が出てきた。

こうした状況のもと、パリに醸造所を開設し、世界酒としての日本酒開発を進めるWAKAZEや、地方に眠る酒蔵をよみがえらせ、土地オリジナルの日本酒を蔵と組んで販売する日本酒応援団、AIによる日本酒レコメンドサービスや、SAKEセレクトショップなどを運営するMIRAI SAKE COMPANYといったスタートアップが登場。資金調達や大手企業との提携を実現してきている。そのひとつが、SAKE100などを展開するClearだ。

Clear代表取締役の生駒龍史氏によれば「国外でもSAKEベンチャーは増えている」とのこと。同社の調査では現在、45〜50社ぐらいのスタートアップがあるそうだ。日本酒の海外出荷量は年120%成長を遂げているが、「フランスワインの世界市場は1兆2000億円規模なので、(222億円の日本酒市場は)まだまだ伸びしろがある」と生駒氏は考えている。

「これは歴史的に革命的なことだ」と生駒氏は言う。「これまで日本酒のプレイヤーは減ることはあっても、新たに入ってくることは長年なかった。それが近年、新規参入が始まっている」(生駒氏)

この状況を生んだ理由について「インバウンド訪問者が増え、日本各地で本場の日本酒を飲んだ人たちが、帰国してから『地元でも日本酒が飲みたい』と考えて動き出していることや、ユネスコの無形文化遺産に登録されたことで和食がムーブメントとなり、それに合う食中酒として日本酒が求められていることなどが考えられる」と生駒氏は分析している。

輸出のための酒造免許発行だけではなく、内閣府や国税庁などの関連省庁が中心となった、クールジャパン戦略の枠組みの中で促進する日本産酒類の輸出に関わる予算も、年々増加している。

「日本に1400ある蔵元は、1カ月に3社廃業している。これは赤字だからだ。蔵元は『安くてうまい』酒を追求してきたし、国税庁も金額ではなく、生産する量に対して課税してきた。一方で多様化は進んでいる。(大量生産を想定した)ビジネスモデルが同じようには成立しなくなっている」(生駒氏)

生駒氏は「日本酒業界にはラグジュアリーブランドが求められている」と語る。「海外では、フランスの第1級格付けのシャトーが造るワインのような、最上級の日本酒へのニーズがある。そういう環境では、レガシーなプレイヤーでなく、スタートアップにチャンスがあると見ている」(生駒氏)

世界に認められたプレミアム日本酒「百光」

Clearは2013年2月の設立。2014年にWebメディア「SAKETIMES」をローンチし、その後、英語版の「SAKETIMES International」も立ち上げ、運営している。

Clear代表の生駒氏は「一ファンとして日本酒の情報を集めるときにメディアが必要だったが、それがなかったので自分で作ることにした」とSAKETIMES立ち上げの経緯について話す。「当時は日本酒に関する情報がほとんど、流通していなかった。ちょうどバーティカルメディアの運営がはやっていた頃。2014年にSAKETIMESを立ち上げたときには、取材先の蔵元も『どこの馬の骨か分からないメディアが来た』という感じだったが、地道に取材を続け、2016年ぐらいからは、逆に執筆依頼が来るようになった」(生駒氏)

SAKETIMESのページビューはローンチから5年間伸び続けており、現在は月間90万PV、45万UUと、日本酒専門Webメディアとしては国内でもトップクラスになったという。生駒氏は酒メディア運営の知見をワインやウイスキーなど、ジャンルを広げて横展開するのではなく、「日本酒の未来をつくる」という最初の動機に従い、深掘りしていくことを選んだ。その結果生まれたのが、2018年7月にスタートした日本酒ブランド、SAKE100だ。

SAKE100は、海外で求められる“最上級の日本酒”を酒蔵と共に開発し、販売する。「日本酒のラグジュアリーブランドをつくる」ことを目指す生駒氏は、2018年10月のシード調達から、今回のシリーズAラウンドに至るまで「定量より定性に注力してきた」と、日本酒におけるブランドづくりの重要さについて強調する。

SAKE100ブランドで提供されているプレミアム日本酒の例として、山形県の楯の川酒造と開発したフラッグシップ商品「百光(びゃっこう)」がある。百光は、山形県産の有機栽培で作った酒米を精米歩合18%まで磨いて作る、「上質」を追求した日本酒として、2018年7月にリリースされた。

リリースから1年足らずで、百光は世界的なワイン品評会「IWC(インターナショナル ワイン チャレンジ)2019」の純米大吟醸酒部門でゴールドメダルを獲得。また“フランス人によりフランス人のために開催される”日本酒コンクール「Kura Master 2019」でも、純米大吟醸酒部門でプラチナ賞を受賞している。「同じ年で、2つの賞を受賞することは少ない」と生駒氏はプロダクトの品質に自信を見せる。

その品質の高さから、一流ホテルや有名レストランでソムリエやシェフに認められ、パレスホテルやアマンリゾーツ、星野リゾートなどでも採用されているという、SAKE100の日本酒。ホテル・飲食業界といった業者だけでなく、個人向け販売でも「直近でリピーターは年間8万5000円〜9万円を購入し、年間100万円以上の購入者も2人いる。エンゲージメントは高い」と生駒氏は述べている。なお、販売の99%は消費者向けが占めるという。

蔵とのネットワークを大切にしながら海外展開図る

一般消費者からも認められ、海外および有名店でプロ中のプロによる評価も得たSAKE100に、投資も集まった。今回のシリーズAラウンドに参加した投資家は下記のとおりだ。

  • アカツキ(同社ファンド事業「Heart Driven Fund」から)
  • 朝日メディアラボベンチャーズ
  • SMBCベンチャーキャピタル
  • MTG Ventures
  • OPENSAUCE
  • KVP(既存株主)
  • 三井住友海上キャピタル
  • ほか、複数の投資家

SAKE100の売上拡大策について、生駒氏は「面は広げたいけれど、ブランドとして需給バランスも大事。必要以上に生産を絞って無理に価値を上げることはしないけれども、どんどん作って出すということもしない」と語る。「そもそも製造サイクルに制限がある日本酒は、ブランドづくりと相性が良い。米を仕込んで、冬からある一定の時期酒造りをしたら、その年は造りたくても造れないというところに価値がある」(生駒氏)

2020年からは、調達で得た資金も活用して、SAKE100の海外展開を図ると生駒氏はいう。冒頭で挙げた農水省の資料によれば、日本酒の輸出額で見た輸出先上位国は、アメリカと中国・香港だ。全体の約3分の1がアメリカ、ほぼ同額で中国・香港の合計が続き、残りが他の各国となる。

「フランスへの進出はブランドとしての意義は強いが、マーケットは小さい。中国は市場の伸び率はよい国だが、ラグジュアリーブランドとしての日本酒を展開するにはまだ、少し早いのではないかと見ている。そこで、アメリカのサンフランシスコを中心としたベイエリアで事業展開を図るつもりだ」(生駒氏)

サンフランシスコは、郊外にワインの高付加価値化に貢献した産地・ナパバレーもあり、ミシュラン3つ星レストランはニューヨークより多い美食都市で、高単価のプレミアム日本酒へのニーズも高いと生駒氏はにらむ。「日本と同様、高級店や富裕層へアプローチしていく。進出するなら早い方がいい」(生駒氏)

5〜6年前の投資環境では日本酒スタートアップの旗を掲げても「投資家がピンとこなかった」が「今は変わった」と生駒氏はいう。「グローバルでの成功、ユニコーンを作るといった投資家の課題をかなえるのが、必ずしもWebサービスやB2B SaaSでなくなってきている今、強いのは(リアルな)プロダクトだ。D2C文脈でなくともグローバルに展開できて、富裕層にアプローチできる日本酒は、産業そのものがド真ん中に入りはじめている」(生駒氏)

国内外のほかのSAKEスタートアップと比べて「メディアで培った事情理解があることがClearの強み」と語る生駒氏は、SAKETIMESの運営のなかで、蔵を数百軒まわって誰よりも日本酒についてインプットしてきた、と自負する。「日本酒という産業を背負っていきたい。日本酒への熱意と情熱では誰にも負けない、ということを知ってもらっている、蔵とのネットワークをこれからも大事にしていきたい」(生駒氏)

「競合はエルメスやルイ・ヴィトンといった、ほかのラグジュアリーブランド」という生駒氏。「“心を満たし、人生を彩る”圧倒的な品質の日本酒づくりを通して、(あると暮らしやすさが上がるといった)機能ではない、プレミアムな日本酒のある豊かさ、ライフスタイル、世界観を実現したい」と語っていた。

「日本酒を世界酒に」SAKEスタートアップのWAKAZEが1.5億円を調達、パリに醸造所設立へ

「世界の食卓において醸造酒と言えば、今まではビールかワインのどちらかが一般的だった。そこに第3の選択肢として『日本酒』というものを浸透させていきたい」

そう話すのは2016年1月に設立された“日本酒スタートアップ”のWAKAZEで代表取締役CEOを務める稲川琢磨氏だ。

同社では山形を拠点に「委託醸造」形式で、酒蔵とタッグを組みながら自社ブランド商品の開発・販売をスタート。昨年7月には東京の三軒茶屋で自社のどぶろく醸造所と併設飲食店もオープンし、事業の幅を広げてきた。

「日本酒を世界酒に」というビジョンを掲げるように、当初から海外へ輸出することを前提として「ビールやワインのように、洋食と合わせて楽しめる」独自の酒を開発。今夏にはパリで酒蔵を立ち上げ、現地に本格進出する計画だ。

そのWAKAZEは6月17日、複数の投資家を引受先とした第三者割当増資により総額1億5000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。

この資金を活用してパリでの製造拠点の開設に向けた準備を加速するほか、国内事業においても自社製品のサブスクリプションサービスなど新たな取り組みをスタートする方針。人材採用の強化も進めるという。

なお今回WAKAZEに出資した投資家陣は以下の通り。

  • Spiral Ventures Japan Fund1号投資事業有限責任組合
  • ニッセイ・キャピタル9号投資事業有限責任組合
  • 中島董商店
  • 御立尚資氏(ボストン・コンサルティング・グループ 元日本代表)
  • 長尾卓氏(プロコミットパートナーズ法律事務所 代表弁護士)
  • 永見世央氏(ラクスル 取締役CFO)
  • 非公開の個人投資家1名

最初から海外展開を見据え「洋食に合った酒」を開発

WAKAZEでは現在大きく2つのブランドを展開している。1つがワイン樽を活用して熟成させた日本酒「ORBIA(オルビア)」、そしてもう1つが植物やスパイスを入れて風味づけをした新感覚の酒「FONIA(フォニア)」だ。

「日本酒と聞いて、透き通った飲みやすいお酒をイメージされる方も多いかもしれないが、WAKAZEの場合はそれよりも洋食との相性にこだわっている。そのためにオーク樽で寝かせたり、米の発酵中に柚子や檸檬、山椒など和のボタニカル原料を入れて薫りを調和させたり。脂身の多い食事にも合う酸味や甘味が効いた味わい、ワイングラスに注いで楽しめるユニークな香りなどが特徴だ」(稲川氏)

洋食に合わせることを意識しているということは、WAKAZEの各商品ページで相性の良い料理が紹介されていることからもわかる。たとえばフレッシュな酸味と赤ワイン樽由来のフルーティな香りがウリの「ORBIA SOL」は、ポークソテーなど油脂分や味の濃い料理とよく合うそう。シトラス・ハーバル系の爽快な香りが特徴の「FONIA SORRA」は白身魚のカルパッチョなど前菜とのペアリングも楽しめる。

「美味しい日本酒はたくさんあるけれど、海外にも広めようと思った時に、どうしても日本食などシーンが限定されてしまう。現状だと国内向けに作られた商品がほとんどで、それをそのまま海外に出しているケースが多い。自分たちは最初から海外用に洋食に合った商品を作り、同じものを日本でも楽しめますよという発想で取り組んでいる」(稲川氏)

前例もなく上手くいかないことも多いと言うが、常に新たな商品開発を続けていて2019年には日本酒とお茶を混ぜた「FONIA tea」を発売。サクラなどの花をボタニカルとして取り入れた酒を作ったりもしている。

次々と世にない酒を生み出す上で鍵を握っているのが、昨年三軒茶屋に開設した自社のどぶろく醸造所と併設飲食店だ。稲川氏いわく、この場所を使って「スタートアップで言うところの『リーンな体制』や『アジャイル開発のような思想』」で酒を作る。

4.5坪の限られたスペースの中に醸造用のタンクを4つ設置。普通の酒蔵なら数千リットルのタンクで酒を作るが、三軒茶屋の醸造所は200リットルと作れる量はすごく少ない。一方でこの4つのタンクを用いて年間に48回、1年を通して醸造できるのが特徴。これを活かし、まずは少量の新種を高速で作り続ける。

「量が少ないので予約販売でも売り切れちゃうレベルしか作れない。それを逆手に取って、新しい酒をどんどん作りフィードバックを得る。反応が良かったものは山形の委託先の酒蔵で本格的に生産する仕組みだ。このサイクルを回す上で、併設で飲食店を始めたのも大きい。ここでお客さんに試してもらい、直接感想が得られるようになった」(稲川氏)

まずは高速でベータ版を作り、実際にユーザーに触ってもらいながら改善して、筋が良くなったものを正式ローンチするような感覚に近いだろう。稲川氏によると毎回違うレシピの商品を作っていて、去年の夏からカウントすると現在作っているものは25作目くらいになるという。

事業も徐々に軌道に乗り始めているようで、実際に商品の販売をスタートした2017年の販売本数が1万本。2018年には3万本に増え、3年目となる今年は委託醸造と自社醸造を含めて7万本の販売を見込んでいる。

日本酒専門店や百貨店など国内にある約150軒の販売店が主な販売チャネルだが、Amazonや楽天、STORES.jpの自社ページなどオンライン経由の売上も全体の2割ほどを占めるそうだ。

三軒茶屋の店舗では桜を取り入れた製品など“プロトタイプ”段階のものを、一足早く楽しむことができる

寿司屋で飲んだ日本酒をきっかけに、日本酒プロジェクト始動

もともとWAKAZEは2014年にコアメンバーが集まり「週末起業」のような形からスタートしたのが始まりだ。

代表の稲川氏はボストンコンサルティング・グループの出身。前職時代に訪れた寿司屋で飲んだ日本酒に衝撃を受け「このような美味しい酒をなんとしても世界に広めたい」と思ったことが1つのきっかけになったと言う。

WAKAZEで代表取締役CEOを務める稲川琢磨氏

「原体験として(慶應義塾大学在学中に)2年間フランスに留学していた際、海外では日本酒を含めて日本文化のプレゼンスがあまり高くないと感じた。実家がカメラの部品工場をやっていることもあり『日本ではものすごく良いモノが作られているのに、全然世の中に知られていない。日本のいいモノを世界に届けていきたい』という考えは以前からもっていた」(稲川氏)

当時からの付き合いで、後に共同でWAKAZEを立ち上げることになる今井翔也氏の実家が酒蔵であったため、まずはプロジェクトベースでマーケティングや商品開発を手伝うことに。2015年はクラウドファンディングも活用しながら、飲み比べセットなどの企画などを少しずつ進めていた。

その後2016年1月にWAKAZEを正式に法人化し事業を開始。上述した通り、まずは自社で作ったレシピを協力関係にある酒蔵で作ってもらう委託醸造で実績を積み、昨年より自社の醸造所でも商品開発に取り組んでいる。

「自社で醸造所を持ったことが1つのターニングポイントになったのは間違いない。これによって事業が加速しただけでなく、業界からも『WAKAZEはどうやら本気らしい』と見られ方も変わった。『飲む人がワクワクする、独自の面白い酒を作る』という意味でも、自社ですぐに試せる場所があるのは重要だ」(稲川氏)

日本酒の多様性を取り戻す

もちろんそこに行く着くまでにも、ハードシングスの連続だった。これについては稲川氏のnoteに詳しい記述があるけれど、そもそも日本酒に関しては法規制が特に厳しく、新規で免許を取得し醸造所を開設するのがかなり難しい。

この辺りが近年国内でもベンチャーメーカーが増え、新陳代謝が進むと共に盛り上がりを見せているクラフトビールやワインのマーケットとは異なる部分だという。

WAKAZEの場合はどのようなアプローチを取っているのか。面白いのはボタニカル原料を用いたFONIAは清酒ではなく「その他の醸造酒」に分類されるということ。そして「その他の醸造酒」免許は清酒免許と比べて、一定の条件を満たせば新規取得できる可能性が大きいということだ。

創業メンバーの今井翔也氏。WAKAZEの醸造技術担当で、三軒茶屋醸造所の杜氏を務める

WAKAZEでは約2年に渡って委託醸造を通じた実績が積み上がってきていたため、生産要件と販売要件をクリア。加えてその間に今井氏が秋田の新政酒造などで蔵人として修行を積み、酒造りの知識と技術を取得していたことで、2018年7月にその他の醸造酒の製造免許を取得し新たな一歩を踏み出した。

少し時間はかかったが、稲川氏によるとチームも開発体制も徐々にではあるがバランスよくまとまってきたそうだ。

現在、醸造技術担当を務める今井氏はもともと東京大学の大学院農学生命科学研究科の出身。発酵学にも詳しく、新卒で入社したオイシックス(現 オイシックス・ラ・大地)で事業経験もある。また2017年にジョインした取締役COOの岩井慎太郎氏は楽天に7年間在籍。ネット事業に対する知見に加えて、実家が酒屋を営んでいることもあり、酒への熱量も他のメンバーに負けないという。

「日本にある酒蔵の数は、今でこそだいたい1500くらいと言われているが、20年前は約2倍の蔵があり、もっと昔に遡ると数万軒単位で存在していた。その時代は多様性があり、日本酒も今以上に活気があったように思う。『多様性を取り戻す』というのは自分たちの1つのテーマで、それこそ奈良時代の作り方などを取り入れてみるなど伝統的なやり方に原点回帰しつつ、クラフトビールのように新しい産業の考え方も掛け算しながら新しい酒づくりに挑んでいる」(稲川氏)

WAKAZEのメンバー

海外にローカライズしたSAKEで日本酒マーケット拡大へ

そんなWAKAZEはVCやエンジェル投資家から資金調達をして、今後どんなチャレンジを進めていくのか。稲川氏の話では、調達資金の使途は大きく2つあるようだ。

1つは冒頭でも触れた通り、フランスへの進出に向けた準備費用。並行して実施しているクラウドファンディングでもすでに500万円以上を集めているが、今夏を目処にパリで自社の蔵をオープンする計画だ。

ここでは蓄積してきたナレッジを活用しつつも「完全に現地向けにローカライズさせていく」方針。現地の米と水を用い、現地の食事に合わせた味わいの“SAKE”を開発する。パリで自社製造できる仕組みを作ることで、輸送コストや中間マージンを省き、手に取ってもらい安い価格で販売できるのもメリットだ。

「今まで日本の酒が30ユーロで販売されていたところを、半分の15ユーロで提供していくようなイメージだ。現在フランスではワイン市場がものすごく大きいものの、少しずつ落ちてきている。背景にあるのは新しいカテゴリのジンやクラフトビールなど新種の酒が台頭し始めていること」

「日本酒についてもハイクオリティの商品をミドルレンジの価格帯で提供できれば、爆発的に伸びる余地はあると考えている。ヨーロッパだけで数十兆円のワイン市場の半分ほどを占めるとも言われているが、この市場の一部でもリプレイスすることができれば、日本酒のマーケットももっと拡大できる」(稲川氏)

近年日本酒の輸出額は右肩上がりに成長しているものの、日本の「日本酒輸出額」とフランスの「ワイン輸出額」ではまだ大きな差があるという

投資家の1社である中島董商店が現地でのワイン事業を通じて飲食店や小売店とのチャネルを保有しているため、パリでの展開に関しては同社とも協力しながら進める。オープン前ではあるが「すでに何社かから取引の話はもらっている」そうで、将来的には少なくとも数十万本単位の生産設備も作っていく予定だという。

また海外展開と合わせて、日本でもデジタルを組み合わせた新しい取り組みを始める計画。具体的には自社ECサイトの立ち上げや毎月違うお酒を楽しめるサブスクリプション型のD2Cサービスを準備しているほか、広告を含めたデジタルマーケティング領域にも投資をしていくようだ。

「ビールやワインが世界で数十兆円の市場になっているのであれば、日本酒も数兆円規模になる可能性は十分に秘めているし、そこに対してチャレンジしていくのは自分たちの責務だと思っている。そのためにもまずは自社が大きなSAKEメーカーになり、業界を盛り上げていきたい」(稲川氏)

パリ酒蔵のイメージ図