AdobeのドキュメントサービスでデベロッパーはPDFが扱いやすくなる

この1年、Adobe(アドビ)はデベロッパーが自分のアプリでPDFを使うためのツールを、静かに拡張してきた。2020年4月には、現在PDF Embed APIおよびPDF Tools APIと呼ばれている(Adobeブログ)ものを発表し、それと共にAdobe Document Servicesプラットフォームも公開した。狙いは、アプリケーションとワークフローにPDFを組み入れるための使いやすいツールをデベロッパーに提供することにある。米国時間12月16日、同社はMicrosoft(マイクロソフト)と新たな提携を結び、Document Serviceをマイクロソフトのローコードワークフロー自動化プラットフォームであるPower Automateと統合することを発表した。

「このビジョンは1年半ほど前、『自分たちのアプリを便利にしているものをサードパーティーアプリにも提供するというのはどうだろうか』と話したときに始まりました」とアドビのDocument Service担当上級マーケティングディレクターであるVibhor Kapoor(ビブホル・カプール)氏はいう。「Acrobatの機能をマイクロサービスに分解し、APIとしてデベロッパーやパブリッシャーに提供しようというごく単純な発想で、なぜなら、正直なところデベロッパーやパブリッシャーにとってPDFは、よくいっても苦痛だったからです。それでこうしたサービスを公開することになりました」。

開発チームは、PDFをウェブ体験に埋め込む方法を改善することなどに取り組んだ(そしてカプール氏は、これまでのデベロッパー体験は「あくまでも次善の策」であり、ユーザーにとっても直感的な体験とはいえなかった、と率直に語った)。これからはDocument ServiceとEmbed APIを使えば、JavaScriptを数行書くだけでPDFを埋め込める。

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カプール氏は、一連の機能をSDKやAPIで公開することはちょっとした挑戦だったことを認めた。理由は単純で、もともとチームはこうした利用場面を考えたことがなかったからだ。しかし、技術的課題に加えて、これは発想自体を変える問題でもあった。「私たちはこれまでデベロッパー指向の製品を提供したことがなく、それはデベロッパーを理解し、これらのAPIをどうやってパッケージにして公開するかを考えるチームを作らなければならないことを意味していました」。

新たなPower Automateとの統合によって、PDFを中心とした20以上の操作がPDF Tools APIからマイクロソフトのプラットフォームで利用できるようになる。その結果ユーザーは、たとえばOneDriveフォルダーにある文書からPDFを作ったり、画像をPDFに変換したり、PDFにOCRを適用したりできる。

アドビがこのプラットフォームを公開して以来、約6000のデベロッパーが利用していて、カプール氏によると、使われているAPIコールの回数は「著しく増加」している。ビジネス面では、Power Automateの追加が、新たなデベロッパーを呼び込む新たな経路になることは間違いない。

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サイバーマンデーの米国オンライン売上予想は史上最高の1兆3250億円

2020年の感謝祭とブラックフライデーのオンラインショピング売上は2019年を大きく上回ったが、例年のショッピングの混雑を避けて新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるソーシャルディスタンスと不況を後押しするオンラインショッピングとしてはやや期待はずれだった面もある。

そして現在、みんなの目は「サイバーマンデー」に向けられている。ここ数年4日間セール中最大のオンラインショッピングデーとなっている。Adobe(アドビ)は米国史上最大となる108億ドル(約1兆1270億円)から127億ドル(約1兆3250億円)の消費を予想しており、Salesforceの予測はその中間の118億ドル(約1兆2310億円)だ。全世界の数字は460億ドル(約4兆8000億円)になるとSalesforceはみている。

アドビによる売上の40%がスマートフォンによるという数字は、週を通じて比較的安定している。一方、小規模小売業者の利用が多いShopifyは70%に近い数字を出している。

内訳を見ると、ブラックフライデーが90億ドル(約9390億円、未訳記事)で感謝祭が51億ドル(約5320億円)というのがアドビの数字だ。そして2019年のサイバーマンデーでは94億ドル(約9810億円)が消費された

Salesforceの方が楽観的で、ブラックフライデーのデジタル売上は128億ドル(約1兆3350億円)、全世界では620億ドル(約6兆4690億円)、感謝祭の米国オンライン売上は約68億ドル(約7090億円)で全世界では304億ドル(約3兆1720億円)と予想している。

「サイバーマンデーは過去のオンライン売上の記録を軒並み破る勢いです。消費者がテレビ、おもちゃ、パソコンなどの価格が上がり始める前にディスカウントを利用することは間違いありません」とAdobe Digital InsightsのディレクターであるTaylor Schreiner(テイラー・シュライナー)氏は語った。「買い物客はクリスマスシーズンに向けて価格が高くなる前にプレゼントを買おうこという気持ちになっています」。

本誌はデータが手に入り次第数字の更新を続けていく予定だ。ちなみにアドビは、サイバーマンデー売上の29パー千Mとが太平洋時刻午後7時から11時の間(1日の仕事が終わった後)に生まれるだろうといっている。

2社の数値の違いの一部は集計方法による。アドビは米国のトップ100小売業者のうち80社の数字に基づいており、約1兆回の取引を対象としている。Salesforceは同社のCommerce Cloud(コマース・クラウド)から集めたデータを使って数十億件の買い物と数百万件のソーシャルメディアからのコンバージョンをカバーしており、それらを組み合わせてShopping Indexの分析を行っている。

両者のデータからはっきりいえるのは、サイバーマンデーは最大の日であり続けるだろうということだ。何故か?サイバーマンデーには破壊的状態が起きるからだ。ホリデーシーズンに向けた大セールはやっているがみんな仕事に戻っているので、店に行く代わりにオンラインでショッピングをする。そしてサイバーマンデーの数字は大きくなる。

長い週末の他の日と同様、売上に影響を与える要因の1つは、セールの開始がどんどん早くなっているという事実だ。しかしアドビは、多くの消費者は未だに大安売りは特定の日に設定されていると信じているという。人気の高い商品カテゴリは、パソコン(平均30%値下げ)、おもちゃ(平均20%)、家電製品(21%)、電子機器(26%)などだ。

大企業はオンラインショッピングでも最大の収穫を上げ続けている。大きな理由は、消費者にとって配達、受取り、返品などの選択肢が広いことで、購買層がものわかりのよいアーリーアダプターからより一般的でオンラインショッピングに慣れていない消費者へと移れば移るほど、その優先度は高くなる。年間売上10億ドル(約1040億円)以上の大型小売業者のコンバージョン率は、小規模事業者より平均70%高い。

それでも小企業はここ数年、さまざまなスタートアップやフルフィルメント、配送などで「Amazon(アマゾン)のようになる」ためのツールをつくるShopifyのような会社に後押しされて、追いつこうとしている。アドビによると、最新の感謝祭ショッピングホリデーであるSmall Business Saturdayには、47億ドル(約4900億円)が消費され、2019年を30.2%上回る新記録だった。そして、小企業にとっての厳しい時期が何であるかを象徴するように、今年のSmall Business Saturdayに落とされた金額は10月の1日平均より294%も多かった。

これまでにホリデーウィークエンドで235億ドル(約2兆4520億円)が消費されている。

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2020年感謝祭の米国ネットショッピング売上は前年比42.3%増の6200億円超の見込み

米国時間11月26日、人々が感謝祭の料理を準備したり食べたり、特別な一日をリラックスして過ごすための「仕事」をしている中、祝日にお買い得品を求めてオンラインショッピングに勤しむ人もいる。Adobe(アドビ)は、米国のトップ100の小売業者のうち80社のオンライン販売をリアルタイムで追跡しており(Adobeサイト)約1億のSKUをカバーしているが、初期の数字を見ると、感謝祭の日の電子商取引売上額は60億ドル(約6240億円)を突破するだろうと述べている。一方、Shopifyは、そのプラットフォームに加盟する100万以上の小売商の活動に基づき、カート内の平均金額は全世界では84.50ドル(約8792円)、米国では特に88.30ドル(9188円)だったと述べている。

なお、感謝祭の売上高の数字が入り次第、この記事は更新していく予定。

売り上げ好調が予想されるシーズンに、2020年は消費者がオンラインショッピングで1891億ドル(約19兆6740億円)を消費するとアドビは見ている。

Adobe(アドビ)の60億ドルという数字をいくつかの文脈に当てはめると、ホリデーシーズン全体では2019年比33.1%増という予想が浮かび上がってくる。アドビは2019年に、買い物客が感謝祭に42億ドル(約4370億円)をオンラインで消費したと発表しており、今年、2020年の数字は42.3%増ということになる。そして今日に至るまで、今週の各日は30億ドル(約3122億円)以上の売り上げがあった。

何が起こっているのだろうか?この数字は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた2020年の経済的な落ち込みにもかかわらず、小売業者は少なくとも、伝統的に最も重要な売り上げ期間である次の数カ月間に、損失の一部を補うことができるだろうという希望に満ちた兆候である。

ここ数カ月にわたって我々が報じてきたとおり、全体的に2020年は電子商取引にとって高水位の年となっている。オンラインにおけるブラウジングやショッピングの増加という大きなトレンド(年々増え続けている)を、コロナ禍がさらに後押ししていることは明らかだ。

新型コロナウイルスの蔓延を抑えるために、人と人との距離を開けようという動きは、多くの人を店舗のような混雑した場所から遠ざけるように駆り立てた。私たちは家にいることを余儀なくされ、自宅からインターネットで物事を済ませるようになった。

このような傾向は、すでにオンラインショッピングに慣れている人がより多くのお金を使うようになっているというだけでなく、オンラインショッピングというプラットフォームに新しいカテゴリーの買い物客を導き入れているのだ。

アドビによると、今週のこれまでのところ、全売上の9%が「店舗が閉店していたり、対面での接触によるウイルス感染を避けようと、従来の実店舗の買い物客がオンラインで取引を完了させるようになったことによる正味の新規顧客から発生したもの」だという。

ブラックフライデー(感謝祭の翌日)は、伝統的にホリデーショッピングの始まりとされてきたが、電子商取引の成長により、実店舗が閉まっており多くの人が何もすることなく家の中をうろうろしている感謝祭の日が、より重要視されるようになってきた。今年はその傾向を踏襲しているようだ。

「家族は休日に多くの伝統を持っています。しかし、旅行が制限され、自宅に留まることを要請され、ウイルスの蔓延に対する恐れなどから、米国人はその多くを楽しむことができなくなっています。オンラインショッピングは、オンラインで維持することができる祝祭日の習慣の1つであり、売上高は、贈り物の習慣が今年もずっと愛されている伝統であることを示しています」と、Adobe Digital InsightsのディレクターであるTaylor Schreiner(テイラー・シュライナー)氏は声明で述べている。

もっとも、ブラックフライデーの売り上げが縮小するといっているわけではない。アドビは、今年のオンライン販売における売り上げが103億ドル(約1兆702万円)を突破すると予測している。

何が売れているのか、いくつか掘り下げてみよう。

アドビによると、ボードゲームや「家族に焦点を当てる」その他のカテゴリーが好調で、売上は2019年の5倍に増加しているとのこと。

同様に、私たちがいま、どれほどオンラインで食料品の買い物をしているかということだが、先週の食料品の売上は10月と比較してなんと596%も増加している。人々は長い週末のために食料品を買い込んでいたのだ(家族と一緒に食べるかどうかはともかく)。

その他の多く売れた商品としては、「Hyrule Warriors: Age of Calamity(ゼルダ無双 厄災の黙示録)」や「 Just Dance 2021(ジャストダンス2021)」といったゲームソフト、VTechのラーラングトイ、レインボーハイのファッションドールなどが挙げられる。

アマゾンが今週発表した、今シーズンから配送の選択肢を増やすという発表は、電子商取引が単純な宅配を超えていかに成長しているか、小売業者がビジネスを他者と差別化するために、いかに重要な要素となっているかを物語っている。店頭受取サービスは今週、昨年同期と比べて116%の増加、迅速配送は49%増となっている。

予測通り、スマートフォンの役割もこれまで以上に大きくなっている。アドビによると、11月のこれまでのスマートフォン経由の利用額は255億ドル(約2兆6540億円)で、2019年と比べて48%増と大幅に成長している。これらの数字を基にすると、スマートフォンは電子商取引の全売上高の38.6%を占めることになる。ショッピファイはスマートフォンに対してさらに強気だ。そのプラットフォーム上で、感謝祭の世界的な売上の70%を占めていたと述べているのだ。

アドビは、米国では大手小売業者が人々の買い物の方法を支配し続けていると述べている。ウォルマートやターゲット、アマゾンなどの大手小売業は、合計で年間10億ドル(1000億円)以上の収益を上げるが、10月以降は147%に売上高を伸ばしている。その理由の1つは、コンバージョン率が中小企業よりも100%高い、より洗練されたウェブサイトにあると考えられる(中小企業が競争力を上げるためのツールを構築できる会社にとっては大きな伸びしろが残されているということだ)。

しかし、Shopifyの物語は異なる絵を描いていることに注目すべきだ。そのプラットフォームは、どんなブランドでも電子商取引サイトを構築できる仕組みを提供するもので、多数の小売業者のオンライン売上高の合計、いわゆる「ロングテール」に焦点を置いている。約100万もの加盟店が同社のプラットフォームを使用して受注、販売、決済などを実行しているのだ。Shopifyはブラックフライデーに詳細な結果を発表する予定だが、そのメッセージは、ビジネスの規模がすべてではない、ということになるだろう。つまり、物を売るにはそれを効率良く販売できる仕組みを築くことが重要だということだ。

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(翻訳:TechCrunch Japan)

AdobeがB2B向け顧客データプラットフォーム開発を発表、2021年前半に製品化

顧客データプラットフォーム(CDP)の概念は比較的新しいものだ。これまでは、さまざまなチャネルから個々の消費者に関するデータをスーパーレコードとして収集することに主眼が置かれていたが、理論的にはこれらすべての詳細な情報に基づいて、より意味のあるコンテンツを提供したり、よりカスタマイズされた体験を提供したりすることができる。Adobe(アドビ)は米国時間11月24日、この手のデータ統合が不足している主要市場であるB2B(Business to Business)の顧客向けに、そのような製品を作成する意向を発表した。

実際、この製品を担当することになったアドビのMarketo Engage製品マーケティング担当ディレクターであるBrian Glover(ブライアン・グローバー)氏によると、この種の営業はより複雑で、B2Bの営業やマーケティングチームはCDPを渇望しているという。

「私たちはこの数年間、Marketo EngageをAdobe Experience Cloudに統合することに費やしてきました。現在、私たちが行っていることは、次世代の新しい補完的なB2B製品をExperienceプラットフォーム上に構築することであり、その第1弾がB2B向けのCDP製品です」とグローバー氏は話してくれた。

グローバー氏によると、B2B営業には通常、購買グループが関与しているため、CDPを適応させるには独自の難しさがあるという。つまり、その過程における様々な人々の異なる役割に合わせて、メッセージをカスタマイズする必要があるということだ。

個人消費者は通常、自分が欲しいものをわかっているので、購入の意思決定を促して購入を完了させることができる。しかしB2Bセールスは通常、異なるレベルの調達が関与し、より長く、より複雑なものになる。たとえばテクノロジーの販売では、最高情報責任者(CIO)をはじめ、そのテクノロジーを使用するグループ、部門、部署、財務部門、法務部門などが関与する場合がある。また提案依頼書(RFP)が必要な場合もあり、販売サイクルは数カ月から数年におよぶこともある。

アドビはこのような販売でも、またその過程が複雑ならなおのこと、個人向け販売で使用するのと同じカスタマイズされたメッセージングアプローチを使用することができるはずだ、と考えている。B2Bのマーケティング担当者はいま、組織内にデータが分散しているという点で、B2Cのマーケティング担当者と同じ問題に直面している。

「B2Bでは購買グループやアカウントが複雑になることで、データ管理の問題がさらに深刻になります。なぜなら最終的には顧客データに接続する必要があるだけでなく、アカウントデータにも接続して、2つのデータをまとめられるようにする必要があるからです」とグローバー氏は説明する。

購買サイクルにおける各個人のより完全なイメージを構築することで、グローバー氏がいうように、アカウント全体のパンくずをまとめ始めることができるというわけだ。

顧客関係管理(CRM)はこのような複雑性に向けて構築されたものではないので、B2Bのセールスとマーケティングをサポートするために構築されたCDPのような専門のツールが求められていると、グローバー氏は考えている。

アドビはこの製品について初期の顧客と協力して作業を行っており、2020年12月末までにはベータ版に移行し、来年前半にはGA版を完成させる予定だという。

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(翻訳:TechCrunch Japan)

Adobeがマーケティングワークフロー管理のWorkfrontを約1600億円で買収

Adobe(アドビ)は、マーケティングワークフロー管理のスタートアップであるWorkfront(ワークフロント)を15億ドル(約1600億円)で買収すると発表した。Bloombergが米国時間11月9日、この売却取引を最初に報じた

Crunchbaseによると、Workfrontは2001年設立の会社で、これまで3億7500万ドル(約390億円)を調達した未公開企業だ。そのうち2億8000万ドル(約290億円)が2019年に流通市場で調達した資金であったことは注目に値する。

Adobeはこの買収により、同社のExperience Cloudに適合するオンラインマーケティングツールをさらに増やすことができる。企業がマーケティング部門内(または社内の他の部署)で複雑なプロジェクトを管理するのに役立つツールだ。

Adobe Experience Cloudのプラットフォームおよび製品担当副社長であるSuresh Vittal(スレシュ・ビタル)氏は、両社が協働し、お互いの営業チームが顔を合わせることがよくあるという。パンデミックが広がり、分散環境でうまく機能するこの種のツールを会社で使うことが合理的になり、過去数カ月をかけてついに取引が成立した。

「ニューノーマルの下でマーケティングチームやエクスペリエンスデリバリーチームは分散し、リモートで働くようになりました。仕事の管理方法、コンテンツを作り出すスピード、コンプライアンスとガバナンス機能の提供方法などに関する新しいアイデアが出現し始め、あらゆる資産が組織から流出することを防いでいます。そして、クリエイティブやマーケティングチームを経由して外に出て行き、ブランドを正しい方法で表現することになります」とビタル氏は説明する。

WorkfrontのCEOであるAlex Shootman(アレックス・シュートマン)氏は、この取引により大企業への接触が可能になり、計画実行が加速するとみている。「当社はマーケティングの表面にわずかに触れている程度であり、そうした素晴らしい有機的な関係を持つだけで飛躍的に成長できると考えています」と同氏は述べた。

Constellation Research(コンステレーションリサーチ)のアナリストであるHolger Mueller(ホルガー・ミューラー)氏は、この買収でアドビの顧客はマーケティングプロジェクト管理の複雑さを容易に管理できるようになると述べた。「仕事のスケジューリングと管理は企業にとって桁違いに複雑になりました。AdobeはWorkfrontの買収で対応し、仕事の新しい未来のためのより良いツールを提供します」とミューラー氏はTechCrunchに語った。

Workfrontの960人の従業員はAdobeの一部に、そしてAdobe Experience Cloudの一部になる。シュートマン氏は引き続き経営に関与し、Adobeのデジタルエクスペリエンスビジネスのエグゼクティブバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーであるAnil Chakravarthy(アニル・チャクラバルシー)氏に報告する。

Workfrontの顧客には、Home Depot(ホームデポ)、T-Mobile(Tモバイル)、Deloitte(デロイト)が含まれ、Workfrontの合計3000社の顧客のうち1000社は両社共通の顧客だ。実際Workfrontには、マーケターが頻繁にアクセスする同社の製品ファミリーのうち、Adobe Creative CloudとExperience Cloudに接続するAPIがある。

Adobeはマーケティングオートメーションの分野でSalesforce(セールスフォース)、SAP、Oracle(オラクル)と争う中、近年小切手帳を使って追加の火力を獲得している。この買収はAdobeが2018年にMagento(マジェント)に16億ドル(約1700億円、未訳記事)、Marketo(マルケト)に47億5000万ドル(約5000億円、未訳記事)を費やした後に続くものだ。2年足らずで3社に約80億ドル(約8400億円)を使った。Adobe Experience Cloudの一部を社内で開発しているにもかかわらずだ。これらはすべて、Adobeがこの価値の高い分野で前進することにどれほど真剣であるかを示している。

カスタマーエクスペリエンス(顧客体験)は、オンラインでも対面でも常に取引の重要な要素だ。顧客に対し、ブランドとの取引における満足感をもたらすからだ。顧客に繰り返し戻ってきてもらうだけでなく、顧客が会社の大使として行動することを促す。これには信じられないほどの価値がある。

逆に、質の悪い体験は正反対の影響を及ぼす可能性がある。見込み客、ひいては企業にとって良い顧客でさえブランドを見捨て、オンラインで友人に直接悪口をいうようになる。Adobeは新しいマーケティングツールを導入することで、顧客のオンラインでの体験を向上させる可能性を高めることができると期待している。これにより、会社で働くマーケティング担当者は、ワークフローを通じてマーケティングプロジェクトをアイデアから実行に移すことができる。

この取引はAdobeの会計年度の第1四半期に完了する予定だ。例によって、当局による精査の対象となる。

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タグ:AdobeWorkfront買収

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(翻訳:Mizoguchi

AdobeのProject Sharp ShotsはAIで動画内のボケをデブラー処理で鮮明に

Adobe(アドビ)は毎年MAXユーザーカンファレンスで、Creative Cloudアプリに搭載されるかもしれない、あるいは搭載されないかもしれない研究プロジェクトを発表している。近いうちに動画編集アプリに搭載されることが楽しみなのが新プロジェクトのProject Sharp Shotsで、米国時間10月20日のMAX Sneaksイベントで正式発表される。アドビのAIプラットフォームであるAdobe Senseiを利用したSharp Shotsは、AIを使って動画をデブラー(ブレ補正)化する研究プロジェクトだ。

プロジェクトに参加するアドビのエンジニア、Shubhi Gupta(シュビ・グプタ)氏によると、この機能では手ブレや動きの速いカメラのせいで動画がぼやけていても、1回のクリックで動画をデブラー処理できるという。彼女が披露したデモでは、ウクレレを弾いている動画のように比較的微妙な効果が得られることもあれば、下のバイクのように劇的な効果が得られることもある。

Project Sharp Shotsには、従来のようなパラメータによる調整はない。「これはワンクリックで動作しますが、魔法ではありません。単純なディープラーニングとAIがバックグラウンドで働き、各フレームを抽出してぼかしを加え、高品質なぼかしのかかった写真やビデオを生成するのです」。

画像クレジット:Adobe

グプタ氏によると、チームは既存の画像のブレ補正に関する研究に着目し、そのプロセスを動画用に適応し、メモリ使用量と速度を低下させるために最適化したという。

Adobe After Effectsにはすでにデブラーと手ブレ補正のための機能がありますが、それは独自の制限があり異なるアルゴリズムだ。

今回の新しいシステムは、アルゴリズムが前後の複数の関連フレームにアクセスできる場合に最もうまく機能し、ビデオ内の少数のフレームでもその機能を発揮する。

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(翻訳:塚本直樹 / Twitter

Adobeが偽情報を防ぐコンテンツ帰属ツールをPhotoshopベータに搭載

オンライン画像をその出典にリンクさせることができるAdobe(アドビ)の「Chain of Custody(CoC)」に関する取り組みが、徐々に実現に近づきつつある。Content Authenticity Initiative(CAI、コンテンツ認証イニシアチブ)の一部であるそのプロトタイプが、いまや至るところで使われている同社の画像編集ソフト、Photoshopのベータ版にまもなく登場する予定だ。

アドビによると、新たなツールのプレビューはPhotoshopとBehanceのベータリリース(Adobeブログ記事)で数週間後にユーザーが利用できる。同社によるとCAIの実装はオープンスタンダードの「初期的バージョン」であり、今後も引き続いて細部が磨かれていく。

このプロジェクトには、複数のアプリケーションがある。その狙いはクリエイターが作るコンテンツにその名前を付けておくための、より堅牢な方法を作ることだ。しかしCAIの最も強力なユースケースは、そのツールが改ざんを防ぐための業界のスタンダードとして使われ、偽情報の拡散に利用されている画像を見つけていくことだろう。

アドビはこのプロジェクトのミッションを、「クリエイティブと消費者の両方の立場を法的に強力にする、全業界的な作品の帰属の枠組みにより、オンラインの信頼と透明性を増すこと」としている。それの結果は、ディープフェイクなどのいかがわしいオンラインコンテンツの拡散を(究極的には)制限できる技術的なソリューションだ。

アドビのCAIのディレクターであるAndy Parsons(アンディ・パーソンズ)氏は、2020年の初めに「ソーシャルサイトのフィードやニュースのサイトを見るとき、本物でないと思われるものをフィルターして排除できるようになる。しかしCAI自身が何らかの判定をすることはない。私たちがやろうとするのは、透明性と検証可能データの層を提供することだけだ」と語っていた。

この考え方は、EXIFデータの改良版でもあるようだ。EXIFは画像にレンズのタイプや撮影した場所などのデータを付けるオプトイン(付けないことも可能)の埋め込みメタデータだ。しかしアドビによると、この新たな帰属のスタンダードはより堅牢であり、データの改ざんは困難である。そのためいずれはデジタルのフィンガープリントシステムでよく見受けるようになり、オンラインの児童搾取などがEXIFよりも見つけやすくなるだろう。

「コンテンツの帰属データ良い善循環を生み出す。多くのクリエイターが正しい帰属データを付けたコンテンツを配布するようになれば、多くの消費者がその情報を期待し利用して真偽の判断ができるようになり、悪者や欺瞞的コンテンツに騙されないようになるだろう」とアドビのデジタルメディア担当シニアディレクターであるWilliam Allen(ウィリアム・アレン)氏はいう。

関連記事:Facebookの判別コンペはディープフェイク抑止に有望な第一歩

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Adobe Photoshopが新しいAI機能を発表、好きな時間の空に変更するスカイリプレースメントなど搭載

Adobe(アドビ)は、Sensei AIプラットフォームに大きく賭けている。そのため、同社が主力製品のPhotoshopに、AIを活用した機能を組み込み続けているのは当然だ。アドビは米国時間10月20日、主催するMAXカンファレンスで、Photoshop用のいくつかの新しいAI機能を発表した。最もわかりやすい例は、スカイリプレースメント(空の置換)だ。既存の機能を改善したりや写真編集ワークフローの簡素化を行う他のツールに加えて、その他の新しいAI利用機能として、次世代のPhotoshopフィルターの基本となる、新しいいわゆる「Neural Filter(ニューラルフィルター)」や、画像の選択部分に適用できる新規または改善されたツールが登場した。

スカイリプレースメントを提供するツールはPhotoshopが初ではない。例えばLuminar(ルミナー)はすでに1年以上前からその機能を提供しているが、アドビはこの機能を正しく動作させるために時間をかけたようだ。アイデア自体は非常に単純だ。Photoshopが画像内の空を自動的に認識して、それを自分が選択した空に置き換えることができるようになったのだ。空の色はシーン全体にも影響を与えるため、もちろん奇妙な画像になることがある、そこでアドビのAIが、それに応じて画像の残りの部分の色も調整するのだ。

画像クレジット:Adobe

これらすべてがどれだけうまく機能するかは、おそらく画像そのものにも少々依存する。私たちは自分たちで試してみることができなかったが、アドビのデモはもちろん完璧に機能していた。

Photoshopには25種類の空の画像が用意されているが、自分で用意した空を使うこともできる。

ニューラルフィルターは、このリリースのもう1つのハイライトだ。例えばポートレートを改善したり、画像の背景色をすばやく置き換えたりするための、新しい芸術的で修復的なフィルターを提供する。このポートレート機能はすぐに使われることになるだろう。人々が見ている方向を変えたり、光源の角度を変更したり、「髪の毛の太さや微笑みの強さを変更したり、驚きや怒りを追加したり、または見かけの年齢を上下させたり」することができる。これらのいくつかは他のものよりも少々ギミックっぽいが、アドビは微妙な変更を加えるのに最適だと述べている。まあいずれにせよ、こうした変更を行うには通常多くの手作業が必要だが、これからはクリックを1、2回すればよくなったのだ。

画像クレジット:Adobe

他の楽しい新しいフィルターの中には、スタイル転送ツールや、白黒画像の色付けに役立つフィルターがある。より便利な新しいフィルターとしては、JPEGの圧縮アーティファクトを削除する機能が含まれている。

アドビ自身も触れているように、同社はこれらのニューラルフィルターに関してNVIDIAと協力した。ニューラルフィルターはPhotoshop 22.0を実行しているすべてのデバイスで動作するが、グラフィックアクセラレーションが組み込まれたマシンで使用することによって、真のパフォーマンス向上のメリットを得ることができる。もっともこれらの多くが、どれほど計算集約的であるかを考えると、驚きはない。

改善されたオブジェクト選択機能は、スカイリプレースメントや新しいフィルターほど派手ではないかもしれないが、アドビがいうところの「インテリジェントなエッジのリファイン」機能が、まさに写真編集者の正気を保ってくれるだろう。Photoshopの現在のツールを使用して、特に複雑な背景に対して、複雑なヘアスタイルの人や動物を選択しようとしたことがある人は、どれだけの手作業が必要かを知っているだろう。これがいまや新しい「Refine Hair(リファインヘア)」と「Object Aware Refine Mode(オブジェクトアウェアリファインモード)」により、そうした手作業の多くは不要になるはずだ。

その他のPhotoshopの新機能には、パターンを作成するための新しいツール、検索機能が改善された新しいDiscover(ディスカバー)パネル、ヘルプとコンテキストアクション、より高速なプラグインなどがある。

また、すべてのCreative Cloudアプリ用のプラグインマーケットプレイスが新しくなり、開発者がプラグインを簡単に販売できるようになる。

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タグ:AdobeAdobe Photoshop

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(翻訳:sako)

Adobe MaxカンファレンスにLightroom 10登場、カラーグレーディングホィールなど新ツール多数

Adobeは10月20日に開催されたMAXカンファレンスでフォトグラファー必携の写真編集ツール、Lightroomをリニューアルした。新機能のハイライトはカラーグレーディングツールだ。これはAdobe PremiereやBlack MagicのDaVinci Resolveなどのビデオ編集ツールにある色彩調整ツールに近い。また著作権管理のための画像透かしなどの機能も追加された。クラウド版の Lightroomには複数の編集結果の自動保存機能が登場した(デスクトップ版のClassicではサポートされない)。

Adobeではこのカラーグレーディング機能を先月からテストしていた。フォトグラファーの多数が使っている人気アプリに重要な変更を加えるアップグレードだけに慎重を期したのだろう。なんといっても色調調整は写真編集のメインとなる機能の一つだ。

 

新機能は簡単に言えば従来の明暗別色補正(split toning)を強化し3種類のカラーホイールに置き換えるものだ。

AdobeのMax Wendt(マックス・ウェント)氏は今日のバーチャルイベントで「カラーグレーディングは従来の明暗別色補正の大幅な強化です。今までできたことはもちろん全てできます。既存の明暗別色補正のプリセットもすべて保存されるのでユーザーは使い慣れた明暗別色補正からスタートすることができます」と説明した。

従来の明暗別色補正はハイライトとシャドウに色調を導入するツールだ。私の印象ではこれまで明暗別色補正を利用してきたLightroom のユーザーは新しい強力なカラーホイールの使い方を理解するまでに多少の慣れが必要だろうと思う。もっとも新しいカラーホイールの方がはるかに直感的に操作可能だ。現在の明暗別色補正は複雑すぎて無視するユーザーも多かった。

カラーホィールはクラウド版の Lightroomだけでなくデスクトップ版のLightroom Classicと単独のRAW現像アプリ、Camera Rawでも利用できる。

Lightroom 10でAdobe が紹介した新機能には画像による透かしの挿入(Windows、Mac、iOS、iPadOS、Android Chrome OSをサポート)がある。これは従来の文字による透かしを強化するものだ。この機能を設定している場合、ユーザーが画像を共有ないし書き出しすると自動的に適用される。

 

Lightroomユーザーの作業を楽にしてくれる目玉は自動バージョン管理だろう(こちらもWindows、Mac、iOS、iPadOS、Android Chrome OSをサポート)。新機能は複数の編集結果を簡単に複数のプラットフォームに保存し、同期する。ユーザーは多数の編集結果を往復して見比べることができ、必要があれば編集を破棄することもできる。

 

「ベスト写真」機能はAdobe の AI システムを利用している(iOS、iPadOS、Android、Chrome OS、ウェブをサポート)。システムは露光量その他の技術的側面、フレーミングに加えて被写体が人物の場合、顔の向き、赤目やまばたきの有無などをチェックする。ユーザーはスライダーを操作してこれらの条件を厳しくしたり緩めたりすることができる。

キヤノンのカメラのユーザーには朗報があった。Lightroom Classicがライブのテザリング撮影をサポートした。ユーザーは撮影中のテザリング中の映像をライブで見ることができるようになったため複数のメンバーを含む撮影チームの共同作業が容易になる。他のメーカーのカメラも近くサポートされる。

画像:Adobe

【TechCrunch Japan編集部】AdobeサイトにLightroom 10の日本語の紹介が掲載されている。

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滑川海彦@Facebook

AdobeがiPad用IllustratorとiPhone用Frescoをリリース

Adobe(アドビ)は米国時間10月20日、ベクトルグラフィックアプリであるIllustratorのiPad用のパブリックバージョンを公開した。すでに予約受付とプライベートベータが開始されていたことを考えればこれは驚くことではないが、Illustratorユーザーの多くはこの日を楽しみにしていた。

さらにアドビは同日、ドロー&ペイントアプリのFrescoがiPhoneでも利用できるようになったと発表した。これまで同アプリを利用するには、WindowsマシンかiPadのどちらかが必要だった。

iPad用IllustratorはApple Pencilをサポートしていおり、既存ユーザーなら直感的に利用できるはずだ。Photoshopと同様に、アドビのチームはユーザーインターフェースをより小さな画面に適応させ、より洗練されたエクスペリエンスを約束している。

画像クレジット:Adobe

「アプリは一見シンプルに見えるかもしれませんが、作業をしていくうちにより多くの機能があることに気づきます。そしてしばらくすると、アプリが背景に溶け込むような自然なリズムが生まれ、創造性を表現できるようになります」とアドビは述べている。

アドビは今後、iPad用を含むすべてのIllustratorでより多くのエフェクト、ブラシ、AIを活用した機能を搭載していく予定だ。

画像クレジット:Adobe

Frescoについては、小さな画面でユーザー体験がどのようになるかを見るのは興味深い。FrescoはCreative Cloudライブラリを使用しているため、iPhoneでスケッチを開始してから、別のプラットフォームに移動して作業を完了することができる。iPhone用が他のプラットフォームと同じインターフェイス、ブラシ、機能を備えていることは注目に値する。

さらにアドビは同日、新しいSmudge BrushやAdobe Captureのパーソナライズブラシのサポートなどを追加したFrescoのバージョン2.0を発表した。

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画像クレジット:Adobe

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(翻訳:塚本直樹)

アドビがクラウドアプリ開発プラットフォームFireFlywo発表、を強化へ

Adobe(アドビ)は従来もデベロッパー向けにAdobe.ioを運用してきたが、Adobe Developers Liveバーチャルカンファレンスでいくつかの新しいツールを発表した。いずれもAdobe Experience Cloud上でデベロッパーが独自のクラウドアプリを作成することを助けるものだ(Adobe Developers Liveページ)。

Adobeのデベロッパー・エクスペリエンス・ビジネス担当バイスプレジデントのJason Woosley(ジェイソン・ウーズリー)氏は「アドビは新型コロナウイルスの感染蔓延の影響によりデジタル化の推進を従来よりもさらに急ぐ必要があると考えた」という。発表された新しいツール、少なくともその一部はオンラインサービスの開発を促進することを目指している。

TechCrunchに対してウーズリー氏は「我々は優れたオンライン体験を生み出すビジネスに力を入れている。この分野はデベロッパーにとって魅力的でありかつ参入しやすい。アドビはこの分野で新しいツールを発表した」と述べた。

これは広告やマーケティング業務向けのExperience Cloudのツールとデータソースを利用してオンラインアプリケーションを作成することを容易にする総合的なフレームワークを作ることが狙いだ。第一弾として発表されたProject Fireflyは、一歩進んだ高度なオートメーション機能により、デベロッパーがアプリケーションを従来に比べて素早く作成することを支援する。

「Project Fireflyは多数のテンプレートを用意しており、デベロッパーがExperience Cloudを利用して総合的なフレームワークを構築することを助けまし。本日、店舗やウェブサイトなど顧客がビジネスと接する場所はますますデジタル化が進んでいます。アプリケーションは顧客にとって魅力的な差別化のためのカスタマイズを必要とすることになるでしょう」とウーズリー氏。

こうした新しいクラウド体験を幅広いユーザーが使えるようにするため、アドビではReact Spectrumと呼ばれるオープンソースのライブラリと一連のツールを提供する。

ウーズリー氏によれば「セールスやマーケティングのアプリでは、公開を急ぐためにアクセシビリティの観点が後回しになることが多いのです。新しいツールを利用すればターゲットとするユーザーのハンディキャップも含めてさまざまな条件を考慮することができます」とのこと。

Experience Cloudの重要なポイントの1つは、アプリケーションのカスタマイズのために、顧客データなどビジネスが持つすべての情報資産を活用できることだ。アドボではこの観点からウェブアプリ、モバイルアプリ構築のためのデベロッパー向けツールキット(SDK)を発表した。このSDKを利用することで、Experience Cloudのデータをアプリケーションに統合することが容易になる。

Project Fireflyはデベロッパープレビューの提供が始まっている。Adobeアカウントが必要だが、React SpectrumとSDKについても一部が公開された 。今後数カ月かけて内容は拡充される。

画像:Maskot / Getty Images

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(翻訳;滑川海彦@Facebook

PDFをモバイル用にAI自動変更する アドビの「Liquid Mode」とは?

みんなも経験があるだろう。Google(グーグル)検索沼にはまって1時間もスマホと格闘。そしてやっとのことで、自分が探し求めていた情報が確かにあると思われるリンクを発見する。それをタップすると、なんと50ページのPDFだった。画面をつまんで拡大して、どう考えてもスマホの画面に対応していないPDF文書を読み進める。

間もなく誕生から30年を迎えることを思えば、PDFというこのファイル形式がモバイル機器を考慮して作られたものではないことは明らかだ。しかし、PDFもスマートフォンも、今すぐ消えてなくなるとは思えない。そこでAdobe(アドビ)は、双方が仲良く共存できる方法を探ってきた。

米国時間9月23日朝、アドビは「Liquid Mode」(リキッドモード)と呼ばれる機能をローンチした。残念ながら現在のところ日本語未対応だが、同モードはアドビのAIエンジン「Sensei」(センセイ)の力を使ってPDFを分析し、自動的にモバイル画面に合った形に組み直してくれるというもの。機械学習でPDFを細かく調べ、必要な処理を行う。例えば、新しい章が始まる部分でのフォントの設定や、表の中のデータの表示方法を調整し、全体を小さな画面に合わせて流し込む。

数カ月間、密かにテストを続けてきたが、本日iOS用とAndroid用のAdobe Acrobat Readerアプリで一般向けに利用可能となった。いずれデスクトップにも対応させる計画だ。同社CTOのAbhay Parasnis(アベイ・パラスニス)氏は、ゆくゆくはアドビ製品以外のアプリにも同様の機能を与えるAPIを開発中だと話してくれた。

Acrobat ReaderでPDFを開くと、アプリはその文書がリキッドモードでの処理が可能かどうかを判別する。可能だとわかれば、リキッドモードのボタンがタップできる状態になる。ボタンをタップすると、文書はAdobe Document Cloudに送られ処理される。完了した後は、ユーザーによるフォントサイズや行間などの微調整も可能になる。リキッドモードでは、検出したヘッダや文章構造から、元の文書に備わっていなかったタップ可能な目次も新たに生成される。これを使えば、章を簡単に飛ばすことが可能だ。すべては非破壊的な調整であるため、オリジナルのPDFに変更が加えられることはない。リキッドモードを解除すれば元どおりのPDFに戻る。

アドビのこの取り組みについては最初に知ったのは、今年の1月に行われたExtra Crunchのインタビューでのことだ。パラスニス氏は、同社が行うほぼすべてのことにAIと機械学習を導入するという計画の概要を私に話してくれた。リキッドモードは、Senseiに文書を理解させるための第一歩に過ぎないと、パラスニス氏は言う。また、いずれはユーザーがSenseiに30ページのPDFを読ませると、数ページの要約が出来上がるようにしたいとも話していた。

画像クレジット:Adobe

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(翻訳:金井哲夫)