AI市場は急成長中だが正確な数字を知るのは難しい

[この記事はCrunchbase Newsの編集者、ジャーナリストのHolden Pageの執筆]

テクノロジー業界の関係者なら誰でも人工知能がホットな話題だと知っているだろう。人間の仕事がどんどん取って替わられるという主張もあれば、逆に能力が誇張されているという懐疑論も聞かれる。AIは新たな軍拡競争をもたらしているという警告も出ている。

しかしCrunch Baseの関心範囲はもっと狭いが、もっと明確だ。この分野におけるスタートアップへの投資額はどれほどか? 投資者は誰か? 現在のトレンドと長期的見通しは?

まずAIスタートアップに対する総投資額について検討することにしよう。AIというバズワードをテコにスタートアップには巨額の金が流れている。投資は対前年比で大きくアップしている。ただし、われわれには正確な成長率はつかめなかった。

2018年にCrunchbaseにに次のような大型投資ラウンドが記録されている。

  • SenseTime:顔認識テクノロジーに優れた中国のスタートアップがシリーズDで10億ドルを調達。CrunchbaseによればAI分野では2018年最大のラウンドだった。さらに驚くべきことに、この会社は1年間に3回のラウンドを実施し、総額22億ドルを集めていることだ。百聞は一見に如かずというが、一顔は10億ドルになるらしい。
  • UBTech Robotics:これも中国のロボット・スタートアップで、シリーズCで8億2000万ドルを調達している。しかしUBTechのウェブサイトを眺めた限りではAI分野のイノベーターというより高級おもちゃメーカーのようだ。
  • Zymergen:シリコンバレーのバイオテック・スタートアップでFortune 500級大企業向けに遺伝子組み換え微生物を提供している。Crunchbaseによれば同社はシリーズCで4億ドルを調達。

普通ならここでグラフとAI市場の外用を400語で載せるところだが、注意深い読者ならすでにお気づきのように問題は「AI市場」にある。どこからどこまでがAIなのか?

たとえば、Zymergenだ。CrunchbaseのタグにはたしかにAIが含まれている。CrunchBase Insightsの記事を引用しているBloomberg,も同意見だしかしZymergenはAI企業だろうか?

しかしZymergen自身のウェブサイトではそうではない。なるほど、AIに関連した機械学習によるオートメーションというバズワードは用いられている。しかしもし私が自由に分類していいならZymergernはバイオテック企業だ。

CB Insightsは2018年1年間ででAI投資は72%アップしたとしている。しかしCrunchbaseだと38%の伸びだ。

つまりAI関連の非公開企業への投資が増加していることは間違いない。しかし、以上の数字を見れば明らかだが、AIスタートアップとしてで定義される範囲についてはコンセンサスが全くない。l

しかし驚くにはあたらない。専門家もどこまでがAIか現在も激しく議論している。ここには動物や植物の分類学のような整然とした体系は存在しない。ty.

AI企業だと必要以上に強調するスタートアップが多いのではないかと密かに疑っている。EWSのAIサービスをバックエンドのどこかに使っているだけでAIスタートアップと名乗っていいのか? 私に言わせれば、ノーだ。しかしCrunchbaseのデータによればそう自称するスタートアップは非常に多い。

定義の問題が出てきたついでに言えば、そもそもテクノロジー企業の範囲も問題だ。食材宅配サービスのBlue Apronの場合、 上場直後に10ドル近い高値をつけた後続落し、現在は1.4ドル台だ。われわれのAlex Wilhelmが分析したとおり、IPO前の株主の評価と市場の投資家の評価は大きく異なる結果となっている。

現在AIスタートアップに強い追い風が吹いているのは間違いない。しかし正確な数字となると不明だ。個々の投資の詳細がつかみにくいという点よりも、AIが意味する範囲にコンセンサスがない点がいちばん大きな問題だと思う。

画像:Paper Boat Creative (opens in a new window) / Getty Images

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滑川海彦@Facebook Google+

世界のベンチャーキャピタルで寡占化が進んでいる――1億ドル以上の超巨大ファンドが主力に

【編集部】この記事はJason Rowleyが寄稿した。JasonはCrunchbase News記者でテクノロジー投資をカバーしている。

2018年のベンチャーキャピタル業界はスーパージャイアントが主役だった。Crunchbaseが記録した昨年のベンチャー投資は件数、金額ともにドットコムバブルの絶頂期さえ上回った。

詳しくはCrunchbase Newsの グローバルVCレポート:Q4と各国の情勢を見ていただきたいが、1年間に投資件数は32%、 額(推計)も55%アップしている。 2018にCrunchbaseが記録した投資額のトータルは3000億ドルだった。実施されたラウンドはエンジェル段階から株式上場を視野に入れた後期までスタートアップのライフサイクルのあらゆる段階をカバーしている。これには2018中に実行されたと推定されるものの公表されていない案件、Crunchbaseには今後記録される予定の案件などが含まれている(上記Crunchbaseレポートの末尾にデータが添付してある)。

2018年のマーケットの拡大は巨大テクノロジー・スタートアップが数十億ドル級の大型ラウンドを実施たことによる上げ潮はなのか、同じ比喩を使うなら、逆に上げ潮ではすべての船が浮かぶという現象なのか? そこで案件ごとの投資額、対象企業の規模を検討することが重要になる。

世界のVC資金の流れは明らかに1億ドル以上の投資案件に向かっている。下のグラフは総投資額に占めるスーパージャイアント案件と1億ドル未満の案件の比率を経年で示したものだ。

 

昨年は総投資額の56%以上がスーパージャイアント・ラウンドに向かっていた。時間とともに集中の傾向は強まり、金額の61%は第4四半期に集中ししている。.

ビッグマネーの存在感が拡大

暦年の2018年は大型投資への集中がもっとも高まった年だった。下のグラフは世界のベンチャー投資市場における小規模(1億ドル未満)の案件が占める金額の割合を示したものだ。上のグラフの下側部分と同じデータだが、こちらは過去10年間の推移を示している。

2018年はこの10年で(おそらくは史上)初めて1億ドル以上のスーパージャイアント投資ラウンドが全投資額の半分以上を占めたことが分かる。

ある意味これは予想されたことだ。Ant Financialが史上最大のベンチャーラウンド シリーズCで140億ドルという天文学的金額のファンドを組成したことでも分かる。巨大ファンドは巨大投資を生む。昨年は100億ドル級ファンドの年だった。SoftBank他テクノロジー投資家、スタートアップCEOの資産も(少なくとも紙の上では)スーパージャイアント級になった。これは小型ファンドや小型のラウンドを必要とする起業家にとって良いことなのか?

2018年に、シード投資、初期段階のスタートアップへの投資は金額ベースでも件数ベースでも増加している。繰り返しになるが、これは上げ潮ですべてが上に動く現象の一例だろう。本当の質問は、ベンチャー投資バブルが破裂したとき、スーパージャイアントと普通サイズのどちらがより深刻な被害を受けるだろうか、という点だ。この点については答えが出ていない。

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滑川海彦@Facebook Google+

求人界のTinder「Teamable」が500万ドルを調達、Simpplerを買収

社員のソーシャルネットワークを活用した求人サービスのTeamableが、500万ドルの資金を調達した。出資したのは新たに参加したFoundation Capitalとすでに投資しているTrue VenturesとSaaStr Fund。

また同社は、Simpplerの照会エンジンとリクルートソフトウェアを買収したことも発表した。Teamableの共同ファウンダーでCEOのLaura Bilazarianは、契約条件の公表を拒んだ。

Crunchbaseによると、買収されたSimpplerはこれまでに320万ドルの株式ファンドをFoundation Capital、Greylock、Vertex Venturesらから調達している。同社は2013年に Vipul Sharmaが設立し、Teamableと同様、既存の社員ネットワークを使って求人紹介プラットフォームを作っている。Sharmaは以前Evenbriteで機械学習を担当し、LinkedInプロフィールによると「昨年Indeedのエンジニアディレクターを務めていた」。

SharmaおよびSimpplerの人員はTeamableに移籍しない。

TeamableはGmail、Facebook、GitHubその他のソーシャルネットワークを利用して社員の連絡先を収集し、リクルーターをより焦点の絞られた採用候補者と結びつける。
Teamableを利用している企業の中にはSpotifyとLyftも入っており、ネットワーク内の従業員と求職者の温かみのあるつながりを支援している。ソーシャルリクルーティングのアルゴリズムによってより効率的で多様性のある雇用が可能になる、と同社は言っている。

「求職者は今のリクルート方法を喜んでいないと思う、とBilazarianがTechCrunchに話した。「彼は履歴書を塀の向こうに投げ入れるだけで返事を聞くことがない。企業も今のやり方を望んでいないと私は思う。なぜなら、求職者は職務記述書を見て憶測するだけなので企業は正しい候補者に巡り合っていないからだ」

「企業の中のわずかな人々が世界中にスパムを送るのではなく、会社をよく知る人たちが手を差し伸べる」と彼女は言う。「Teamableは非常に精度が高い。200人と接触して一人から返事をもらうのではなく、5人に声をかけて一人を採用する。」

昨年の シリーズAで得た500万ドルを含め、Teamableの株式ファンドは総額1000万ドルになった。50名からなる同社のキャッシュフローはプラスで、顧客は200社だとBilazarianは言う。サンフランシスコおよびアルメニアのエレバンに拠点を構えるTeamableは、調達した資金を使ってチームとリクルーティングプラットフォームの拡大を進める予定だ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

世界的に成長中のVCマーケット、主に中国が貢献

ベンチャーキャピタルのビジネスモデルが世界中でみられるようになった。まだ金融業界の特別クラブ的なものではあるが、今やワールドワイドに、そしてそれなりの規模で展開されている。

Crunchbaseニュースが2018年第3四半期に報じたCrunchbase推定によると、世界のVCディールと投資額はそれぞれ空前の記録となった。米国とカナダにおいて、ディールの件数は第2四半期よりわずかに減少したが、膨張しているディールのサイズが総投資額を過去最高へと押し上げた。

このVCマーケットの世界的な成長の大部分は、米国とカナダ以外のマーケットによるものだ。Startup Revolutionと米国起業家精神センターがコラボで行なった最近の研究では、中国・北京が世界のVC投資成長に最も貢献していることがわかった。

地域別を表示したディール件数を下に示している。世界のディール件数が一貫して成長傾向にあるのに比べ、米国とカナダのディール件数の成長パターンはやや途切れ途切れになっていることに気づく。(Crunchbaseがいかに、そしてなぜこのような予測を作成するのかについては、グローバルレポートの末尾にあるMethodologyセクションを参照してほしい)。

中国のような急激に成長しているスタートアップマーケットでは、ベンチャーディールの金額こそわずかに減っているものの(*注記1)、件数は過去最高となっている。アジア太平洋地域全体では、ベンチャーディール件数は昨年同時期に比べ約85%も増えている。レポートされた中国の件数は、4倍以上となっている。

中国のベンチャーマーケットの拡大は、世界都市別の予測でより鮮明だろう。下記に、第3四半期でスタートアップが最もアクティブだったトップ10の都市を示すチャートがある。(グローバルレポートのMethodologyセクションで“レポートされた”データとは何か、どのように使用されたかについての説明がある)。

チャートにある10都市は、3カ国で占められている、ベイエリアの件数を押し上げているシリコンバレーがなければ、北京が生の件数的にはサンフランシスコよりも上にきていたはずだ。(しかし、北京の人口はベイエリア全体の3倍にもなる)。

ディールの件数と金額を活発度合いのバロメーターとすれば(健全度ではない)、VCの動きの広まりはマーケット全体にとってよいことととらえることができるかもしれない。グローバルでのVCの動きの高まりは、世界的に全てのスタートアップマーケットを押し上げるている。しかしながら、そうした成長のほとんどは、いくつかの大きなマーケットに集中している。

シリコンバレーのベンチャーキャピタル投資モデルの世界的な拡大、そして当地での再解釈は、スタートアップ創業者が頭に入れておかなければならない現象となっている。創業者はこれまでになく大規模なラウンドで多くの資金を調達していて、投資家が成長マーケットの多くを買うのにさらに大金を投入することを期待している。同様に、投資家はそうした企業の飽くなきキャピタル欲を満たそうと、これまでにない規模の資金を調達している。

大きなトレンドの中で、変化著しいマーケットの状態に適応できない創業者はマーケットサイクルの終わりに消えていくことになる。

*注記1:金額が減ったのは、第2四半期の金額がAnt Financialによる140億ドルものシリーズCラウンドで大きくなったためだ。これは、これまでのところ最も大きなVCラウンドとなっている。

イメージクレジット: Li-Anne Dias

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(翻訳:Mizoguchi)

世界的に2018年のテック業界のM&Aは伸びなさそうだ

CrunchbaseとMind the Bridgeの最新の調査によると、米国テック企業による買収が依然として世界で最も多いようだ。

この2つのデータでは、2010年以来2万2000件ものイグジットを数えたが、今年はこれまでのところ4200件ほどだ。昨年ほど活発ではないようだが、それでも米国企業は、欧州企業の倍以上のスタートアップ買収を行なっている。

昨年はM&A件数最多を記録したが、 概して今年は伸びはそうなさそうだ。

レポートの概要は以下の通りだ。全容はこちらから閲覧できる。

・米国におけるM&A件数はわずかに減少しているが、欧州においては大幅減となっている。欧州の件数はこれまでのところ前年比11%減だ。

・引き続き世界のM&Aの大多数は米国と欧州の企業が行なっている。取引額とそれにかかる出費の4分の3以上が北米と欧州のスタートアップに係るものだ。

・世界の買収トップ30件のうち22件を米国企業が手がけている。欧州のスタートアップの買収でも、欧州勢がギャップを埋めつつあるものの、買い手として最もアクティブなのは依然米国企業だ。

・Google、Facebook、AppleそしてMicrosoftが世界で最もアクティブな買い手だ。

・欧州企業の中で最もアクティブな買い手はPublicisグループで、世界の買い手ランキングでは20位につけている。これは昨年より1ランクの上昇で、昨年欧州勢の中で最上位だったドイツのSAPは33位となっている。

・欧州企業による買収対象として欧州企業が増えている。今年、欧州企業の買収の81%が域内で行われ、この割合は昨年は75%だった。

・イグジットしたスタートアップの55%が設立5〜15年で、買収額は1000万〜1億ドルだった。

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(翻訳:Mizoguchi)

世界最大級のスタートアップデータベース・CrunchBaseのプレジデントが来日講演

TechCrunchの読者ならCrunchBaseはご存じだろう。CrunchBaseは、2007年にローンチしたWikipediaライクなスタートアップのデータベースだ。TechCrunchの創業者であるMichael Arlingtonの指示のもとで開発された。

CrunchBaseには、スタートアップの概要やそのボードメンバーのほか、シリーズごとの資金調達額、投資家、プロダクトなど、50万件以上の情報が登録されている。まさに世界最大級のスタートアップデータベースだ。CrunchBaseでは、ここに蓄積されたデータをもとに、日々さまざまな分析記事やグラフ、インフォグラフィックスなどがTwitterブログを通じて公開している。例えばこちらの記事はアジア圏における9月のスタートアップの資金調達状況を紹介したものだ。これを見れば、インドでの活発なスタートアップ投資の状況が見て取れる。

また、最近どのジャンルのスタートアップに投資が流れているかなんてことも、こちらのグラフのように一目瞭然だ。これは2014年の第3四半期を、2013年の同時期と比べて伸び率を示したもの。IoTが単なるバズワードではなく、実際の投資額としても前年同期比170%以上も伸びていることが分かる。右端にあるクラウドコンピューティングのジャンルは落ち着いて、いまはビッグデータ解析(左から2番め)にお金が流れている様子も見て取れる。投資が増えているから単なるバズワードではない、という訳ではないが、TechCrunchの記事を読むだけでは印象としてしか見えてこないトレンドがハッキリと可視化されてることがお分かりいただけると思う。少し前の情報になるが、スタートアップの動向を分析した翻訳記事などもあるので、是非とも読んでみて欲しい。

米国のTechCrunchでは、その多くの記事にCrunchBaseの情報が紐付けられている(記事の右側のカラムにある情報だ)。CrunchBaseは現在20人超のチームでサービスを開発しているそうで、2014年4月には(リリースから7年経ってようやくとも言われているようだが)「CrunchBase 2.0」としてサイトをリニューアルしている。API化を進めて、外部サービスとの連携やビジュアライゼーションで活用しやすくなったほか、ほぼ完全なWikipediaモデルに移行して、誰でもソーシャルのIDを紐付けることで情報の追加・編集ができるようになった。

そんなCrunchBaseだけれども、11月18日〜19日に開催予定のイベント「TechCrunch Tokyo 2014」に登壇することが決定した。現在プレジデントを務めるMatt Kaufman氏が、CrunchBaseの豊富なデータをもとに世界のスタートアップの動向を語ってくれる予定だ。

ちなみにこのCrunchBase、現在は日本語を含むマルチバイト文字には対応していないのだけれども、もちろん日本の情報を登録可能だし、実際結構な数の情報が登録されている。例えばこのグッドパッチの記事のように、国内の記事に関しても積極的に情報を紐付けていく予定なので、スタートアップのみんなはどんどん情報を登録して欲しい。11月のKaufman氏の講演にあわせて、日本向けの展開についても紹介できるかも知れないのでご期待頂きたい。

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CrunchBaseデータで見る成功したスタートアップの動向(資金調達額とイグジット額の比較)

(本稿執筆はMark Lennon)

CrunchBaseにも、イグジット関連のデータが蓄積されてきた。成功を収めたスタートアップのデータを詳細に分析して、ベンチャー投資との関連などについて分析してみよう。

まず、アメリカ国内の成功したスタートアップについて見ると、平均で4100万ドルの資金を調達していて、そして2億4290万ドルでのイグジットを果たしている。また、より大きな資金規模でのイグジットを果たした企業は、より多くの資金を調達しているという相関を確認することもできる。ただしファンディングを行う期間の長短により、買収ないし公開というイグジットに繋がるかどうかを示す関連性は認められなかった。

買収と公開という2種類のイグジットで比較してみよう。成功裏に買収された米国スタートアップは、平均で2940万ドルの資金を調達して、1億5550万ドルで売却している。投資家側の利益は7.5倍になるという計算だ(もちろんこれは投資家が全てを所有しているとした場合の計算で、現実的にはあり得ない話だ)。IPOを果たしたスタートアップについては、はるかに多くの資金を受け入れている。しかしそれにともなって多くのベンチャーファンドからの資金を受け入れるようにもなり、リターンについてみれば希釈化の問題もあって一概にはいうことが出来ない。

取り敢えずIPO達成したスタートアップの平均値を出してみれば、調達資金は1億6200万ドルとなっている。最近の大規模IPOもあって、公開時の平均は4億6790万ドルになる。単純に計算すれば、投資家のリターンは2.9倍ということになる(もちろんIPO時点ですべての株式を売却するような投資家はいない)。

今回の分析は、2007年以降、イグジットを果たしかつ投資を受け入れたスタートアップを対象としたものだ。但し、他のデータベースでもそうなのだが、スタートアップとベンチャー投資の関係を示すデータは不十分ないし不正確である場合があることも念頭においておいていただきたい。CrunchBaseは、スタートアップのデータを蒐集する最大級の無料データベースではあるが、それでもやはり不正確な面はあるだろう。

データを見ると、Facebookが最高額となる23億ドルという資金をIPO前に受け入れていて、そして株式公開により、こちらも最高額である約184億ドルを調達している。Twitterの方もIPOにより18億ドルを調達しているが、IPO前の調達額も12億ドルという具合になっている。下の図のサークルにマウスを合わせると、それぞれ詳細なデータが表示さえっるようになっている。

ところで、企業の操業年数というのはイグジットの成否に直接の関係はないようだ。買収された企業の平均操業期間は7年間であり、またIPOを果たした企業はだいたい8.25年ということになっている。繰り返すが、平均がその辺りにあるというだけで、どのくらいの期間でイグジットするのが平均的なのかというトレンドは見えていない。

出資企業がイグジットした件数をベンチャー投資家側から見てみよう。するとSV Angelが首位に立つようだ。他にもSequoia CapitalIntel CapitalAccel Partners、あるいはBenchmarkなどの名前が上がってくる。

CB Insights Venture Capitalの公開しているData Comparisonとも比較してみた。下の表には掲載されていないが、Q3およびQ4期間において、CrunchBaseには255件のイグジットデータが追加されている。毎日のように新しいデータが登録されているのだ。

スタートアップと投資家の関係や、上に述べたような動向が続いているのかそれとも変化の兆しがあるのか。ぜひCrunchBaseのデータを活用して、自分でも確認してみてほしい。2013年11月までのデータはこちらからダウンロードできる。新たな発見があれば、ぜひ教えて頂きたい。

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(翻訳:Maeda, H


アメリカのベンチャーキャピタル投資額、第2四半期中に倍増―依然としてシリコンバレーのシェアが圧倒的

われわれのCrunchBaseの集計によれば、アメリカにおけるテクノロジー産業へのベンチャー投資額は4月の 19億ドルから6月の38億ドルへと第2四半期中に倍増した。このデータはさらに投資ラウンドの種類別、地域別、その他の基準によって詳しく分類されている。

2013年第2四半期のベンチャー投資総額は92億ドルで、1347件のラウンドが実施された。内訳はエンジェル・ラウンドが500件、シリーズAが306件、シリーズBが109件、シリーズC以降が102件、分類不明が330件となっている。

このラウンドにはプライベート・エクイティの投資や上場後の増資などは含まれていない。したがって実際の投資総額はこれより大きい。

依然としてサンフランシスコのベイエリアにおける投資が最大のシェアを占めている。ボストン、ニューヨーク、ロサンゼルスにおける投資額の合計よりベイエリアの投資額の方が大きい。

ベイエリアでの投資額は32億ドル、316件のラウンドが実施された。ボストンは10億ドル、84件、ニューヨークは8億ドル、142件、ロサンゼルスは5億ドル、81件だった。

バイオ関連企業への投資額がトップで、ソフトウェア関連がそれに次いだ。バイオ企業のシェアが月平均で30%、ソフトウェアが19%となっている。

ベンチャー投資家ではTechStarsAndreessen Horowitz500 StartupsSV AngelAngelPadGoogle Venturesの投資件数が多い。

これらのデータはすべてTechCrunchが運営する無料のデータベース、CrunchBaseから得たものだ。CrunchBaseから毎月レポートを受け取ることもできるし、データそのものをダウンロードすることもできる。第2四半期のデータはこちら

注意:資金を調達した企業すべてについて業種分類や地域が記入されているわけではない。ほとんどの企業は記入されているが100%ではない。若干の漏れがある。

この記事のためのデータ分析とグラフの作成はCrunchBaseのEddy Kimによる。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


CrunchBase(テック系企業データベース)の更新情報を、毎日メールで通知するサービスを開始

TechCrunch読者の皆さんなら、CrunchBaseのチェックを日課にしているという方もいらっしゃるに違いない。競合の資金調達状況などをチェックにも利用できる。そのような形で利用している人に向けて、新たにCrunchBase Dailyを立ち上げた。CrunchBaseに登録された最新投資情報をお知らせするものだ。こちらでメーリングリストに登録できるようになっており、また要約をお伝えするTwitterアカウントも用意している。

(本稿の執筆は、CrunchBaseプレジデントのMatt Kaufman)

このCrunchBase Daily、まずは投資情報のみをお伝えすることとなる。ちなみに情報量は本年初頭と比べて倍以上に増えている。情報量が増えたのはCrunchBase Venture Programを立ち上げたおかげもある。6週間前にDisrupt NYでアナウンスしたもので、今では200以上の投資ファームが参加してくれている。CrunchBaseに今月登録された情報の件数は30ヵ国から417ラウンドにもおよぶ件数となっている。資金総額で見ると34億ドルにものぼる。

CrunchBase Dailyには、買収情報、人材の移動(異動)情報なども加えていく予定だ。

ところでCrunchBaseというのはテック系企業や人材、および投資家などを登録しているフリーのデータベースで、誰でも編集できるようになっている。多くの読者からの情報により、投資情報、人物情報、企業のマイルストン達成情報などが更新されている。

関係者による情報更新やマイルストン達成情報などは、多くの場面で活用されている。たとえばTechCrunchでも記事にCrunchBaseの情報を張っているケースが多いし、他のサイトでもCrunchBaseを活用しているところがある。また投資関連企業やビジネス開発チームなどでも活用してもらっているようだ。TechCrunchでは、CrunchBaseの情報を使った記事なども適宜掲載している。

もちろん、さまざまに活用していただくために、CrunchBaseの情報が正確なものであることが大前提だ。もしCrunchBaseの情報に問題がある際には、feedback@crunchbase.com宛にメールを送って頂きたい。

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(翻訳:Maeda, H)