サイバーエージェントの「藤田ファンド」が復活、投資1号案件はタイミー

サイバーエージェントは、2014年秋に凍結していた「藤田ファンド」を再開し、再開後の投資1号案件としてタイミーへの出資を発表した。具体的には、2018年12月28日にタイミーの第三者割当増資の引受を行った。出資額は非公開。今回は純投資を目的にしており、両社の連携については現時点では未定とのこと。

「藤田ファンド」とは、2013年10月にサイバーエージェント本体内に設置した投資事業本部で、同社代表取締役社長である藤田晋氏が自ら手がける投資。これまで、ウォンテッドリーやクラウドワークス、BASEなどへ投資していた。「藤田ファンド」の方針は経営者の魅力を重視した投資。今後はインターネット業界を中心にアーリーからミドルステージの企業へ投資し、若手経営者の応援とインターネット業界の発展を目指していくとのこと。

タイミーは、日本初のワークシェアサービスを展開するスタートアップ。同サービスを利用することで、ユーザーは面接などの事前交渉が不要でスキマ時間にすぐに働けるのが特徴だ。店舗側では、繁忙期にフレキシブルに人員を増やせるというメリットがある。タイミーは、TechCrunch Tokyo 2018のスタートアップバトルのファイナリストでもある。

サイバー藤田氏「無理な黒字化は事業がおかしくなる」ーー大型投資での成長を狙うAbemaTVのこれから

サイバーエージェント代表取締役の藤田晋氏

11月17日、18日に東京・渋谷で開催したTechCrunch Tokyo 2016。17日の最終セッションには、サイバーエージェント代表取締役の藤田晋氏が登壇した。藤田氏は4月11日の本開局(サービス正式ローンチ)からわずか半年で1000万ダウンロードを突破するなど、快進撃を続けるインターネットテレビ局「AbemaTV」について、サービス開始から今後の展開までを語った。聞き手はTechCrunch Japan副編集長・岩本有平が務めた。

若年層の取り込みに成功。わずか半年で1000万ダウンロードを突破

サイバーエージェントとテレビ朝日がタッグを組んで展開しているインターネットテレビ局AbemaTV。オリジナルの生放送コンテンツや、ニュース、音楽、スポーツ、アニメなど約30チャンネル(2016年12月現在)が全て無料で楽しめる。

4月11日の本開局から、約半年で1000万ダウンロードを突破。順調に成長を続けている。その状況について、藤田氏はこう口にする。

「予想を上回るスピードで1000万ダウンロードを突破することができましたが、そもそもスマートフォンでテレビ番組を観る視聴習慣が整っていない中、フライング気味にスタートしたサービス。なので長期戦になると思っています。そういう意味では何とかなるだろうと楽観的な一方で、予断を許さないとも思っています」(藤田氏)

「長期戦になる」という言葉どおり、藤田氏は2017年、AbemaTVに年間200億円を先行投資すると発表。予算のほとんどをコンテンツ制作と広告に充てるという。

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驚異的なスピードでユーザー数を増やしているAbemaTV。その内訳を見てみると、10代〜20代の若年層がほとんど。“若者のテレビ離れ”が叫ばれて久しいが、スマートフォンに最適化された動画コンテンツを配信することで若年層の取り込みに成功しているのだ。

「もともと狙っていたのが、テレビを見なくなった若年層だったので、この結果は狙い通りです。テレビを見なくなった層が何をしているかというと、スマートフォンを覗き込んでいるので、スマートフォン上にコンテンツを送り込めばいい、と思いました」(藤田氏)

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なぜテレビで勝負することにしたのか?

2016年を「動画元年」と位置づけ、AbemaTVの本開局に踏み切った藤田氏。だが「Hulu」や「Netflix」といった定額制動画配信サービスや、「YouTube」のような動画配信プラットフォームではなく、なぜテレビで勝負しようと思ったのだろうか?

「最初はテレビ型にするかどうかを決めず、動画事業に参入することだけを決めていたのですが、自分の中でAppleのiTunesが伸び悩んでいたことが決定打となりました。好きな音楽を好きなときに聴けるiTunesの仕組みは個人的にすごく良かったのですが、好きなもの以外を見つけるのが面倒くさいんですよね。受け身で音楽が聴けるストリーミングサービス『AWA』を始めたとき、やっぱり人は受け身で探す方が楽なんだと痛感しました。数ある映像が並んでいても、自分で選んで再生するというのは結構億劫なもの。受け身のサービスの方が人は楽なんじゃないかという前提に立って、テレビ型にすることを決めました」(藤田氏)

“受け身”というように、AbemaTVは暇があったら開く状態を目指している。例えば、1チャンネル目にニュースを持ってきて新鮮な情報を提供していることを打ち出したり、会員登録をなくしたり、とにかくユーザビリティの向上に注力しているそうだ。

「簡単で使いやすくすることで手が癖になり、アプリを立ち上げてくれるかもしれない。FacebookやTwitterといったコミュニティサービスに勝てるとは思っていませんが、SNSを見尽くして、やることがなくなったときに見てもらえるメディアであればいいと思っています」(藤田氏)

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Netflixの日本上陸がAbemaTVの立ち上げの契機に

もちろん、テレビである以上、使いやすいだけでなくコンテンツも面白くなければユーザーに観てもらえない。その点、AbemaTVはテレビ朝日と提携することでクオリティの高い番組が作れているといってもいい。

堀江貴文氏がフジテレビを買収する、三木谷浩史氏がTBSを買収する騒動があった10年前には想像できなかったかもしれないが、テレビとネットの関係性は劇的に変化している“今”だからこそ、サイバーエージェントとテレビ朝日の提携が実現したという。

「昔から通信と放送は融合すると言われ続けていましたが、まだスマホも登場していなかったので実感値が全くなかった。だからこそ、コンテンツは独占してこそ価値があるものだと思われていましたし、テレビ以外のデバイスに映すのはもってのほかだった。そんな状況を大きく変えたのがNetflixの日本上陸。ワールドワイドで収益を上げ、膨大な制作資金をかけてドラマを作っている会社が日本に来るということで、各テレビ局が対応を迫られることになった。この出来事がAbemaTVが生まれるきっかけにもなりました」(藤田氏)

 

Netflixの上陸だけでなく、Apple TVやChromecastといった端末も登場してきた。テレビは今後どうしていくのかを、たまたまテレビ朝日の審議委員会で話していた(藤田氏はテレビ朝日の番組審議委員を務めていた)こともあり、テレビ朝日側に立って出した答えがサイバーエージェントとテレビ朝日の提携だったそうだ。

まさにNetflixの日本上陸がAbemaTVを立ち上げる契機になったと言えるが、運営していく中で自社でコンテンツを作っていく考えはなかったのだろうか?

「自社でコンテンツを作れるのではないか、という考えも頭をよぎりました。例えば映画の買い付けや放映権の取得などお金を出せば何とかなりそうかなと思ったのですが、それは大きな間違いでした。テレビ局と組むことが必須だったんです。主要な映像コンテンツは基本的に全てテレビ局に集まっていますし、映像制作のクオリティがすごく高い。よく視聴率がとれる番組は制作会社が作っていると思われがちなんですけど、それは全然違う。クリエイティブディレクションをやっているのはテレビ局の人たちなので、彼らと組む以外、道はなかったと思います」(藤田氏)

無理に黒字化しようとすると事業がおかしくなる

様々な動画サービスが立ち上がっていることもあり、今後、テレビ局がネット企業と手を組むなど、AbemaTVの競合が出てくる可能性は十分に考えられる。その点、藤田氏はどう考えているのだろうか?

「AbemaTVは世界的にも見たことがないサービス形態になったのですが、有り無しがまだ分からない。もちろん、有りだと思い込んでやっているんですけど、マスメディアに出来るかは全くの未知数。こんな状態で競合は出てきてほしくないのが本音ですが、テレビ朝日が社を挙げて全面的に協力してくれている。こんな奇跡的な状況の会社はそうそう無いと思っているので、競合は来ないんじゃないかなと思っています」(藤田氏)

先ほど、「テレビ局の協力が必須だった」と述べていたように、テレビに進出する時にテレビ局の協力、ネットに進出するときはネット企業の協力が必須だという。だからこそ、同じような形でサービスを立ち上げてくる可能性は少ないと考えているようだ。

約半年で1000万ダウンロードを突破したAbemaTVの今後の展開について、「いつまでに黒字化する、いつまでに◯◯ユーザーを獲得するといったことは絶対に言いません。無理に黒字化させようとすると事業がおかしくなるので」と前置きをした上で次のように語った。

「これからAndroid TV、Apple TVにも対応していきますが、Amazon Fire TVなどを使った視聴体験が思った以上に素晴らしいので、そこのマーケティングは強化していく予定です。あと、年明けにはバックグラウンド再生と縦画面でも開けるようにして、より気軽に使えるようにしていきます。コンテンツ面ではニュースに力を入れていき、大事なニュースがあったらAbemaTVをつける習慣を作っていくことを考えています」(藤田氏)

サイバーエージェント藤田社長がTechCrunch Tokyoに登壇、ネットテレビ局「AbemaTV」のこれからを聞く

開催まで1カ月を切った日本最大級のスタートアップイベント「TechCrunch Tokyo 2016」。ここでまた新たな登壇者をご紹介したい。サイバーエージェント代表取締役の藤田晋氏だ。

藤田氏はインテリジェンスで活躍した後、1998年にサイバーエージェントを設立。2000年には当時最年少となる26歳で東証マザーズ市場に上場した。2014年には東京証券取引所市場第一部に市場変更を実施している。

広告営業の代理店業からスタートしたサイバーエージェントだが、当時堀江貴文氏が率いていたオン・ザ・エッヂとの協業でネット広告事業に進出。広告事業を走らせつつ、ブログサービスの「Ameba」、FX(2012年にヤフーに譲渡)、アドネットワーク、アバターサービス「アメーバピグ」、モバイルゲームやアプリ、定額制音楽配信サービス「AWA」など、グループ会社を含めてさまざまな事業を展開してきた。

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サイバーエージェント代表取締役の藤田晋氏

ブログやアプリなど、これまでも注力する領域を見つけては一気に踏み込み、事業を成長させてきた印象もあるサイバーエージェント。そんなサイバーエージェントが今最も注力しているのが、テレビ朝日と組んで展開するインターネットテレビ局「AbemaTV」だ。AbemaTVでは現在27のチャンネルで情報番組からニュース、アニメまでさまざま番組を配信している。4月の開局(サービスローンチ)から6カ月で、スマートフォン向けアプリのダウンロード数は900万件を突破している。

2016年は動画サービスが躍進した1年でもあった。エブリーの「DELISH KITCHEN」、delyの「Kurashiru」、スタートアウツの「もぐー」といった国産の分散型料理動画メディアが勢いを増し、その一方では、海外で潜行する料理動画メディア・Buzzfeedの「Tasty」が日本版をローンチした。また女性に強いC Channelの「C Channel」、HowTwoの「HowTwo!」、10代の支持を集めるDonutsの「MixChannel」、さらに動画広告プラットフォームのOPEN8やFIVE、YouTuberを束ねるUUUMやスリーミニッツなど、動画に関わるスタートアップの活躍がいろいろと聞こえてきた。AbemaTVはそんな各社の動きとは異なり、テレビ局と組み、リアルタイムでオリジナルコンテンツなどを配信する「インターネットテレビ局」というアプローチを行っている。

このセッションでは、AbemaTVの話を中心に、動画ビジネスを取り巻く環境、そしてサイバーエージェントの今後の展開について聞いていきたい。藤田氏はTechCrunch Tokyo 2016初日の11月17日午後に登壇予定だ。

「著名人と話せるメディア」から「コミュニケーションサービス」に——755刷新にかけるサイバー藤田氏

サイバーエージェント代表取締役社長の藤田晋氏

サイバーエージェント代表取締役社長の藤田晋氏

ITバブル期、渋谷を中心にしたITベンチャー(当時は「スタートアップ」なんて言葉はなかった)のムーブメント「ビットバレー」が活発だった1998年に設立されたサイバーエージェント。同社は1月28日に2016年9月期の第1四半期(2015年10〜12月)の連結決算を発表したが、売上高740億円(前年同期比16.7%増)、営業利益129億円(同3.6%増)、経常利益128億円(同0.9%増)、最終利益59億円(同7.0%減)で、売上高と営業利益は過去最高を更新した。

その売上を牽引しているのはもちろんゲーム事業だが、「ゲームの次」の領域として積極的に投資しているのが、動画や音楽といったメディア関連の新規事業だ。

メディア関連の新規事業に注力

テレビ朝日と組んだ動画配信サービス「Abema TV」は今月中にも先行配信を開始。4月には約20チャンネルを用意し、本格的にサービスを展開していく。1月にスタートしている動画配信サービスの「Ameba FRESH」も200チャンネル1000番組を配信。まだ数字を発表できる段階ではないようだが、「初速は好調」(サイバーエージェント代表取締役社長の藤田晋氏)だという。

AWAの状況(サイバーエージェント決算資料より)

AWAの状況(サイバーエージェント決算資料より)

また2015年9月にリリースしたサブスクリプション型音楽配信サービス「AWA」も成長中だ。こちらもまだ具体的な数字は開示されていないが、月間利用時間ベースではApple、Amazon、Google、LINE各社が提供する競合サービスをおさえて月間利用時間で1位になっているという(2015年12月にApp Annieで調査。調査対象はAndroid端末のみということなので、Apple Musicについてはなんとも言えないところがあるが…)。

ただしAWAのマネタイズにはまだまだ時間が掛かるというのが同社の認識。サイバーエージェント代表取締役社長の藤田晋氏は「着々と伸びている。黒字転換するするというのはもともと分かっていたことだが、日本でサブスクリプションサービスをやるのは何年かかかる。サービスを磨き上げていく」と語る。

755は「メディア」から「コミュニケーション」に

そんな中で今回フルリニューアルするのが、子会社7gogoで展開するコミュニケーションアプリの「755」だ。755は「トークルーム」と呼ぶタイムラインをユーザーそれぞれが作成。そこに自身が投稿したり、他のユーザーがコメントを付けたり、Twitterのリツイートにあたる引用利用の「リトーク」といった機能をそなえる。

今回のリニューアルではアプリのデザインを一新したほかウェブにも対応。また、SNS「mixi」ライクな足あと機能を導入することで、ユーザー間の回遊を活性化する。昨年末にはニュースの閲覧(とそれもとにした投稿)機能もつけた。今後はTwitterほか外部SNSとの連携機能も強化する。

ユーザーごとの「トーク」が表示される755のトップ(左)とトーク内(中央)、足あと(右)

ユーザーごとの「トーク」が表示される755のトップ(左)とトーク内(中央)、足あと(右)

「これまでは有名人と一般ユーザーによる『1対n』のコミュニケーションアプリだった。だがユーザー同士がコミュニケーションする『n対n』のためのサービスにシフトしている」——藤田氏はこう語る。

僕は以前に755の話を藤田氏と、7gogoファウンダーの堀江貴文氏にサービスの話を聞いたことがあるのだが、そこで目指すのは「コミュニティではなくメディア」だと聞いていた。AKB48のメンバーをはじめとした著名人が755にルームを開設して自らの情報を発信。また並行して2014年末から2015年初にかけては10億円とも言われるテレビCMを出稿してダウンロード数も伸ばしたが、満足いく成功とは言えなかった。そこで改めてユーザー間のコミュニケーションサービスとしてリニューアルさせたのが、新生755だという。

著名人ではなく、ユーザー同士が話すのであればTwitterでもFacebookでもいいのではないか?

各種SNSと755との差について、藤田氏はタイムラインの「オープンさ」の違いを挙げる。「ツイッターでもユーザーごとのつぶやきは閲覧できるが、通常のタイムラインにはほかのフォロワーのつぶやきが流れる。そんな『他人のフィールド』で聞かれてもいないようなことをつぶやくことのには『差し出がましい』と思ってしまうようなこともある」(藤田氏)。755はユーザーごとにルーム(タイムライン)を持つことになるので、他のサービスに比較してクローズであり、「ほかのSNSよりも『自分のフィールド』で自由に話すことができる」のだという。たしかにTwitterで独り言を延々つぶやくようなことは苦手だという人は少なくないだろう。

またそんな755での独り言を誰が読んでくれたか分かるように足あと機能を導入した。「(足あとは)賛否両論あると思うが、スムーズにチェックできるようUI/UXにも配慮している」(藤田氏)

ではコミュニケーションサービスとしての755の勝算はどうなのか。藤田氏はこう語る。
「当たれば100億、1000億円規模のビジネスになるが、はずれればゼロ。(TVCMに)10億円出したからといって10億円を回収するようなモノではない。SNSでそういう(1000億円規模の)ビジネスを作る価値はあるが、成功するモノはものすごく限られている。だが755はそうなる可能性を持っている1つのサービスだし、少なくとも僕個人としてはそう思ってサービスを作っていく」

“毛穴が見えない”美肌フィルター搭載で「リア充」の取り込みをねらう—サイバー子会社がライブ配信アプリ「宅スタ」

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ライブ配信サービスのツイキャスこと「Twitcasting」。サービス開始から5年で登録ユーザー数1000万人(4月時点)、累計配信回数で1億5000万回(3月時点)と大きく成長した。ディー・エヌ・エーの「Showroom」など競合サービスもあるが、アタマ1つ抜けた状態にあると言っていい。そんなライブ配信の分野にサイバーエージェントが参入した。

サイバーエージェント子会社のタクスタは7月9日、ライブ配信アプリ「宅スタ」を公開した。iOS、Androidに対応しており、App StoreおよびGoogle Playから無料でダウンロードできる。

宅スタは個人向けのライブ配信アプリ。Twitterのアカウントさえ登録すれば誰でもスマートフォン1つでライブ配信が可能になる。視聴のみのであればTwitterアカウントも必要ない。現時点ではAmeba IDとの連携は行っていない。

「宅スタ」の視聴画面

「宅スタ」の視聴画面

“初めての自撮り”に配慮した「フィルター」機能

最後発のライブ配信サービスとなる宅スタの最大の特徴は、動画の「フィルター加工」が可能なことだという。フィルターを使うことでユーザーは自分好みの映像でのライブ配信が可能になるとしている。

「初めての『自撮り』に配慮している」——タクスタ代表取締役社長の田久保健太氏はこう語る。ライブ配信の経験をしたことのないユーザーが宅スタのアプリを立ち上げ、配信ボタンをタップする。するとインカメラで自分の顔がどアップになるのだから、抵抗があるユーザーだっているだろう。

これを少しでも緩和するためにフィルターを導入した。配信ボタンをタップすると、デフォルトで「美肌」なフィルターがかかった状態になる。「どの距離で毛穴が見える、見えないというような細かいところまでバランスを調整した」(田久保氏)

また、あらかじめ撮影した静止画像と音声のみで配信する「静画モード」を用意。動画で配信したくない場所、もしくはタイミングでこのモードに切り替えることも可能だ。Twitterアカウントは複数登録して切り替えることも対応。「実際に原宿で女子高生にヒアリングしたが、多くの回答者が『本アカ(メインのアカウント)』『裏アカ(匿名など、メインアカウントでは言えないようなことを発信するアカウント)』『共通アカ(友人らと運用するアカウント)』の3アカウントを持っていた。このTwitterの利用スタイルに合わせた」(田久保氏)

タクスタ代表取締役社長の田久保健太氏

タクスタ代表取締役社長の田久保健太氏

住所や実名が投稿されないようにする「禁止ワード」の設定も可能。「Ameba同様の監視はするが、リアルタイムで何が起こるか分からない」(田久保氏)とのことで、可能な限り配信者の安全性には配慮したという。また低回線でも利用できるよう、画質とフレームレートを落とした低画質再生モードも備える。同社によると利用可能なデータ量を超過し、通信速度制限がかかった状態でも視聴可能とのこと(一応お伝えしておくと、音声のみの配信やNGワード設定などは競合にも用意されている)。

インターフェースはスマートフォンのスクリーン全部に画像が映る「縦画面」となっている。この画面下部、動画に重なるかたちでコメントや各種の通知が表示される。

また、視聴者は配信者に対して「エール」を送ることができる。画面右下のエールボタンをタップすると、配信画面に星が飛び出すエフェクトがかかる。エールは1日300回までに制限されている。将来的には星以外のエフェクトも用意する予定だそうで、ここでのマネタイズを検討しているようだ。

さらに配信者には「○○さんが入室した」「○○さんが最初のコメントをした」、視聴者には「今なら(他のコメントが少ないので)質問すれば回答がもらえるかも」といったニュアンスでコミュニケーションのきっかけを与える通知をすることもできる。配信後は配信回数やコメント数、エール数、配信時間などを知らせる簡単なアナリティクス画面が表示される。配信した動画は60日間保存されるが、設定によって無期限保存も可能だ。

ライバルはツイキャスとPeriscope、強みは「リア充」の取り込み

田久保氏は競合についてツイキャスと、Twitterが買収したPeriscopeだと明言する。

タクスタは2014年11月の設立。その以前はアメーバピグ事業を統括していたという田久保氏。競合サービスとの比較について聞くと、「アメーバピグを通じて、ローリテラシーで若い人たちの文化というのが分かってきた。(リテラシーは低いが)リア充なユーザーを無視してはいけない。言葉は悪いが、『暇なリア充』に使ってもらえば、大きくサービスが広がると考えている。そこをどう取り込むかがサイバーエージェントグループのプロデュース力ではないか。もちろんユーザー自ら移行することもあるだろうが、自分たちで配信者を育てていきたい」と答える。ただし、あくまで配信者の中心は一般ユーザー。現時点ではAmebaブログのように芸能人を積極的に取り込むことはしないという。

マネタイズについては未定だが、タイアップの動画配信などは検討しているという。また前述の通り、エールに関する課金の可能性もありそうだ。当面の目標については「半期が終わる2016年3月時点で日本一の動画メディアになりたいとは思っている。だがまずは質のいい配信者と配信内容が集まることが大事だと考えている。7月はユーザーに『アツい』と思ってもらえる空間作りをしていく」(田久保氏)

サイバーエージェントではAmeba、広告、ゲームに続く新たな事業の柱として「動画」を掲げている。タクスタ以外の動きとしては、3月にはテレビ朝日と新会社を設立。定額制動画配信プラットフォーム「Abema」を提供するとしているほか、直近の7月6日には、東京・原宿の竹下口に公開スタジオ「AmebaFRESH!Studio」をオープン。今秋リリース予定の生放送アプリ「AmebaFRESH!」向けの番組を配信する。なお今後は宅スタでもこのスタジオを使った配信・イベントなども検討している。

アイドル×コミュニケーションは、マネタイズの次なるフロンティアとなるか

「人と人のつながりを大事にするミクシィなので、アイドルやアーティストとも1対1でつながりを持てるサービスを作った」——ミクシィがそう説明するのは、3月17日に正式サービスを開始した「きみだけLIVE」だ。

きみだけLIVEは、アイドルやお笑い芸人、アーティストと1対1のライブコミュニケーションができるサービスで、事前の抽選に当選したファンは、Skypeを使って10分間のライブや会話を楽しめる。ミクシィはプレスリリースで「ファンはその時間アーティストを独占することができます」とうたっているが、ファンにとってはたまらないものだろう。

ちなみに1アーティストごとのライブは休憩時間も含めて合計2時間程度で、当選するファンは5人ほど。なかなか貴重な体験になるようだ。また抽選に応募すればもれなくアーティストからメッセージが届くほか、限定グッズの引換券などを入手できるという。

きみだけLIVEには「ハート」と呼ぶ仮想通貨があり、新規登録時に20個、またサービスへのログインで1日1個付与されるほか、1個100円で購入できる。そのハート5個でライブへの応募が可能。複数応募にも対応する。ちなみにライブへの応募数に応じて、アーティスト別のファンランキングも表示されるのだそうだ。

さらに「推しメーター」と呼ぶメーターを備える。これは1日1回押すことで10%ずつパラメーターが増加。ライブの当選確率が上がるのだそう。メーターは最大300%まで増加。ライブに5口で応募した場合、5口+15口(応募口数×推しメーター値)で20口の応募となる)。

仮想通貨による課金、抽選というガチャ的要素、ランキングによるファンの可視化、メーターによる継続アクセス——ソーシャルゲームのノウハウをつぎ込んだなんともすごいサービスだ。ちなみにこのきみだけLIVE、ノハナやDeploy Gateを生んだミクシィの新規事業プロジェクト「イノベーションセンター」発のサービスで、2014年11月から試験的にサービスを提供していた。

フォッグのCHEERZは課金も含めて「想定以上」

とはいえ、こういったアイドルコミュニケーションという領域では、ミクシィは後発組だ。ディー・エヌ・エーは2013年12月に「SHOWROOM」を立ち上げたし、ユナイテッド子会社のフォッグは2014年12月に写真をベースにした「CHEERZ」を立ち上げている。メッセージベースのサービスだがサイバーエージェントの「755」なんかもある。ニコニコ生放送やTwitCasting(ツイキャス)なんかでも、サービスの公式・非公式を問わずアイドルやアーティストがユーザーと直接コミュニケーションをとっている。

フォッグにCHEERZの話を聞いたのだけれども、サービスは非常に好調だそう。CHEERZは、250人以上の若手アイドルが自らの写真をコメントとともにアップロード。ユーザーはその写真に対して、Facebookの「いいね!」同様の「CHEER」を送ることができる。このCHEERはログインや時間経過で回復するほか、ポイントを購入して回復することができる。ソーシャルゲームによくある体力とかスタミナという項目と同じような仕組みだ。

アイドルにとってもファンにとってもきわめてシンプルなサービスだったこともあり、積極的な写真投稿、そしてそれに対するファンからのCHEERがものすごい勢いで付いているそう。ユーザーから送られたCHEERの数は、サービス開始から3日で100万件を達成。サイト上で公開している数字は5100万件以上になっている(ちなみに記事を書いている間にも数万件のCHEERが増えていてびっくりした)。

ダウンロード数は数万件と聞いているし、実際Google Playでは5000〜1万件のレンジとなっている。ダウンロード数だけ見れば決して大きくないが、DAUは非常に高いのだそうだ。また課金についても「想定以上の数字」(フォッグ)をたたき出しているとのこと。売上に関しては、ストアの手数料を引いたところから、フォッグとアイドルの所属する事務所がレベニューシェアするのだそう。

フォッグではCHEERZの海外進出も進めており、1月には日本のガールズポップカルチャーを英語で配信する「Tokyo Girls’ Update」の運営元であるオールブルーと協業を開始。アプリも英語、中国語に対応した。さらにCHEERZに登録するアイドルの写真集「CHEERZ BOOK Vol.1」も発売している。あと、CHEERZについてはそのサービスのモデルを特許出願をしているとのことだった。

サイバーエージェントの755は年内1000万ダウンロードを目指す

メッセージベースでアイドルや著名人とコミュニケーションを取れるサイバーエージェントの755は、3月に入って400万ダウンロード突破を発表。2014年末から年始にかけてはAKB48やE-girlsといった著名アイドルを起用したテレビCMを実施していたが、今度は乃木坂46によるテレビCMを放映する。

プロモーション施策にに加えて通知機能やアルバム機能なども好調らしく、関係者からは「年内1000万ダウンロードも見えている」という声が聞こえてくる。マネタイズはこれからのようだが、今夏以降はテスト的に広告配信なども検討しているようだ。


アメブロの再発明ではない-サイバーの新サービス「Ameba Ownd」はお手軽なサイト作成サービス

サイバーエージェントのブログサービス「アメーバブログ(アメブロ:Ameblo)」と言えば、芸能人や著名人の公式ブログを筆頭に——「改行がありすぎ」なんて揶揄されるような若い世代の日記などが話題になったこともあるが、そんなブログもひっくるめて——幅広い層に支持されているブログサービスの1つだ。

そんなAmebloを提供しているサイバーエージェントが3月に入り、「Ameba Ownd(アメーバオウンド)」なるブログ風なサービスのスタイリッシュなティザーサイトを公開している。同サービスがいよいよ3月18日、正式オープンした。

このAmeba Ownd、ブログのような日記も、企業紹介のような静的なページも作れるし、TwitterやInstagram、Facebookなどのソーシャルメディアと連携して、サイト上に集約して表示できる。ではこれはブログサービスと考えていいのか? サイバーエージェントでAmeba事業を統括する堀浩輝氏いわく、Ameba Owndは「誰でも無料でオウンドメディアを作れるサービス」なのだそう。

シンプルなUIでブログから企業サイトまでを作成可能

Ameba Owndでは、3ステップでサイトの開設が可能。カラーバリエーションを含めて100点以上のデザインから好みのものを選択し、サイト名などを入力してやればよい。Ameba Ownd上でブログのようなフロー型のコンテンツを書くこともできるし、Amebloと連携して、Owndのページ上にAmebloで書いているブログを表示することもできる。レスポンシブデザインでサイトを作成するため、スマートフォンでの閲覧にも対応している。

投稿画面は非常にシンプルにしており、1つの画面で前述のブログライクなページの投稿も、TwitterやFacebookの投稿も可能。ただしInstagramは外部サービスからの投稿ができないため、連携してもOwnd上での投稿はできない。また、正式サービスの開始に合わせて、サイトの作成、更新、閲覧が可能なスマートフォンアプリも提供する。簡易的な解析機能を自前で提供するだけでなく、Google アナリティクスにも対応。さらにEC向けのカート機能なども今夏をめどに提供する予定だ。

堀浩輝氏

「ブログの再発明」ではなく「ウェブサイト」

サイバーエージェントらしい点なのだけれども、著名人やアーティスト、クリエイター、企業などに対しても利用を促しているそうで、正式公開前からスターバックス コーヒーやヘアサロンのSHIMAがサイトを開設していたほか、クリエイティブ・ディレクターのNIGO氏、ディレクターの夏木マリさん、俳優の水嶋ヒロさん、ミュージシャンのZeebra、MISIA、ゲスの極み乙女。など約50のサイトが開設される。

Ameba Owndで作成されたスターバックスのサイト

ほかにもサイト開設は進んでおり、4月中にも100サイトを突破する見込みだそうだ。ただし著名人に関しては「Amebloとあまりかぶらないようにしている。アーティスト、クリエーター、美容サロンなどを中心に打診している」(堀氏)ということだった。

これまで芸能人をはじめとした著名人ブログが1つの価値になっていたAmeblo。でもAmebloのサービスだけでは、自己紹介のような静的ページを作るのは難しいし、デザインこそ変えても、サイト構造を大きく変えることはできない。またソーシャルメディアのフォロー数を増やすような施策をしたくても、そこまできっちり連携できるわけでもない。

そういった既存サービスで実現しないことの課題感、それと同時にmediumStrikinglyのような海外で新しいCMS、ブログシステムが台頭してきている一方で、国内からはその手のイケてるサービスがまだ登場していないといった背景もあってサービスを開発するに至ったのだそう。

ただ、Ameba OwndはAmebloの次、次世代のブログサービスという位置づけではないと堀氏は強調する。「Owndはブログサービスでなく、ウェブサイト。Amebloと連携して補完できるものだし、ブログサービスの再発明ではない。もちろんデザイン性が高いブログを使いたい人にとってはブログサービスと思ってもらって構わないが、ライトな層にとっては機能が多すぎる。それならば引き続きAmebloを使ってもらいたい」(堀氏)

単体でマネタイズしなくたっていい

Ameba Owndのマネタイズはまず、「とにかく規模を作る」ということだそう。とにかくユーザーを増やし、トラフィックを増やしさえすれば、サイバーエージェントグループで広告商品を作ってマネタイズしていけるという。すでに企業の利用も始まっているが、何かしらのキャンペーンと合わせてOwndのサイトを開設するということでもビジネスになるという考えだ。

また、「そもそもOwnd単体で黒字化する必要はない」という考えもあるそう。AmebloやOwnd、ゲームなどを含むサイバーエージェントのコンシューマ向けサービス群を指す「Ameba」は、会員数が約4000万人(2014年8月時点)、月間流入数が約6億セッション。スマートフォンだけでも見ても会員数が約2400万人(2015年2月時点)、MAUが約460万人(同月)という数字だ。このトラフィックを生かしてOwndに集客したり、逆にOwndから何かしらのマネタイズエンジンとなるサービスに送客したりすればいいと考えているそうだ。

サイバーエージェントと言えば、2014年夏に体制変更を発表し、Ameba事業の従業員数を1600人から800人に半減。Ameba事業から離れる800人で新規事業を立ち上げるとしていた。その新規事業部門やAmeba事業部から、新規サービスが続々リリースされる予定なのだそう。これらとOwndがどう連携していくのだろうか。