欧米で流行するe-Sports(eスポーツ)が、日本で独自の発展を見せるかもしれない。
eスポーツとは、複数のプレイヤーで対戦するビデオゲームを競技として楽しむジャンルを総称したものだ。人気ゲームになると世界大会が開催され、テレビやウェブで中継されることもある。TechCrunchでもお伝えしたが、昨年7月に行われた「Dota 2」の世界大会は賞金総額が11億円に上り話題となった。
海外ではPCメーカーや飲料メーカーがスポンサーするほどの盛況ぶりだが、日本はそれほどの熱量はない。主な競技種目である、PCゲームの人口が少ないためだ。ならば、日本が強いスマートフォンを舞台に盛り上げようとしているのが、「世界初のモバイルeスポーツ」をうたうワンダーリーグだ。本日、iPhoneとAndroidアプリを正式リリースした。
1位と100位のランキング獲得者に毎日賞金
アプリ上では日替わりでカジュアルゲームのスコアを競い合い、毎日1位と100位のランキング獲得者が賞金5000円を入手できる。欧米で人気のPCゲームをモバイルで再現するのではなく、スマホが普及した日本ならではの、スキマ時間の暇つぶし感覚で楽しめる脳トレやパズルゲームを揃えているのが特徴だ。
プレイ回数は1日5回まで。友達招待やSNS投稿をすれば、無料で追加プレイができる。それでも足りなければ、課金で追加プレイが可能。この課金と広告費がワンダーリーグの収益となる。
賞金の元手は広告費だ。といっても、ワンダーリーグが得る広告費ではなく、支払う広告費を抑えて賞金に回している。
同社の北村勝利社長によれば、開発費が数億円かかるようなモバイルゲームの多くは、アプリのダウンロードと引き換えにAmazonギフト券などの報酬を与える、いわゆる「ブースト」に多大な金額を投じていると指摘。「そういった広告費をユーザーに還元すれば、自ずと人気が出る」と見ている。
超定番ゲームを次々と招致
「糸通し」は2005年の公開以降、「究極の暇つぶし」というキャッチフレーズとともに数多くのシリーズを展開している
ワンダーリーグは有名ゲームを招致する興行主のようなポジションだ。
まずは累計1500万ダウンロードの「糸通し」や、累計700万ダウンロードの「Touch the Numbers」といった定番ゲームを3カ月にわたって配信。期間中にトータルでトップスコアを獲得したユーザーには、ゲーム開発会社が10万円を進呈する賞金イベントも併催する。
近日中にパックマンを配信することも決まっている。ちなみにパックマンは、バンダイ・ナムコの人気タイトル17作品を日本のクリエイターに開放し、二次創作を許可する「カタログIPオープン化プロジェクト」の一環。ワンダーランドは二次創作者として採用されたかたちだ。
ゲーム会社に対してはライセンス料を支払うか、レベニューシェア契約を結ぶ。ゲームはいずれもワンダーリーグ向けにカスタマイズして組み込む「インゲーム方式」を採用していて、ユーザーは1つのアプリで、複数のゲームを日替わりで楽しめる。ゲーム会社としては、過去にヒットしたタイトルで収益を得られるメリットがある。
カジュアルゲームに国境はない、2020年に世界大会を
運営元のワンダーリーグは昨年6月に設立。今年2月にはアドウェイズ、サイバーエージェント・ベンチャーズ、B Dash Venturesの3社から1億円の資金を調達している。
今年50歳を迎える北村勝利社長は過去に、モバイルコンテンツ事業のアイフリークやゲーム事業のバタフライなどでイグジットを経験した起業家だ。2012年8月まで社長を務めたバタフライでは、パチンコ・パチスロ店舗の実機をシミュレーションできるアプリ「モバ7」を手がけ、700万ダウンロードのヒットを飛ばした。「パチンコ・パチスロ人口の3人に1人が利用するほどの人気だった」。
ワンダーリーグの北村勝利社長
なぜ、カジュアルゲームで起業したのか。北村氏はバタフライの社長退任後、世界で勝負できる事業を探していて出会ったのがeスポーツだったと振り返る。「実際に業界研究してみると、モバイル分野では誰もやっていない。我々はスタートアップで資金力がないのでカジュアルゲームで勝負するしかないが、独自のイベントを絡めれば新たな市場を作れると思ったので、やるしかないなと」。
年内には、海外で人気のカジュアルゲームを揃えた英語版もリリースする。日本と同様のタイトルに加え、海外でヒットしたゲームの開発企業とも交渉していく。賞金は海外送金手数料を抑えるために、PayPalとBitCoinのどちらかで送金する。「カジュアルゲームに国境はないので十分に勝機はある」と北村氏。2020年にはワンダーリーグの世界大会を開催したいと展望を語っている。